アンケートにみる過去 10 年間の ピアス着用率の変化

アンケートにみる過去 10 年間の
ピアス着用率の変化
「おしゃれ白書 1991 〜 2000」より
過去 10 年で倍増
増えたのは 10 代 20 代の女性
2001 年 10 月 31 日
ポーラ文化研究所
村澤博人/阿保真由美
東京都品川区東五反田5−24−10 テラサキ第3ビル2F
tel.03 ‑5795 ‑0941
1
はじめに
20 年ほど前、日本では耳に飾るものといえば、イヤリング。バネまたはネジで耳たぶに留めて装着し
たが、バネが強くて耳たぶが痛く、外したり、あるいは留め方がゆるくて気が付かないあいだに落とし
てしまったりなどの経験をおもちの方はけっこういらっしゃるようだ。
そんな耳かざりが最近はピアスが当たり前のようになっている。若い人の間では特にそうで、中学ま
たは高校生の娘と親とのピアスの装着の是非についての会話が話題にあったこともあった。
そこで、ポーラ文化研究所の「おしゃれ白書」より、ピアスの装着率の変化を探ってみることとした。
Ⅰ . 目的
「おしゃれ白書 」におけるピアスの装着率の変化に関する調査データを集計分析する。
Ⅱ . 調査概要
「おしゃれ白書 」は、ポーラ文化研究所が1979 年以来継続している調査で3年毎に実施しているが、
ピアスのデータを取りはじめたのが1991 年であるため、その後の2000 年までの4回(1991 年、1994
年、1997 年、2000 年)、10 年間の変化を追うことになる。最新版の「おしゃれ白書 2000」の概要は
以下の通りとなる。それ以前とは調査対象者の人数がその時によって多少異なる程度で、大差はないと
判断している。調査時期も毎回、5月から 6 月である。
調査地域:首都圏30キロ圏内
調査対象者:上記エリア内に居住する 15 歳からから 64 歳までの女性、910 人
サンプルデザイン(単位:人)
15 〜 18 歳(高校生)
70
19 〜 23 歳(学生)
70
19 〜 23 歳(社会人)
70
24 〜 29 歳(未婚)
70
24 〜 29 歳(既婚)
70
30 〜 34 歳(未婚)
70
30 〜 34 歳(既婚)
70
35 〜 39 歳
70
40 〜 44 歳
70
45 〜 49 歳
70
50 〜 54 歳
70
55 〜 59 歳
70
60 〜 64 歳
70
調査対象抽出法:エリアサンプリング法
調査方法:戸別訪問面接聴取法および留置法の併用
調査期間:2000 年6月
2
Ⅲ . 調査結果
Ⅲ ‑1. 「ピアスをしていますか」について「イエス」と回答した人――毎回増加の傾向。
「ピアスをしている」人の率、いわゆる着用率を年代別に経年変化をみたのが、下のグラフである。
(1) グラフの一番左の棒グラフの変化(全体)をみると、1991 年で17%にすぎなかった着用率が、1994年、
1997 年、2000 年と毎回増えていることがわかる。
80
%
ピアス着用率の変化(1991〜2000)
「おしゃれ白書 2000」ポーラ文化研究所
60
56
51
49
43
40
33
33
32
27
25
32
29 29
27
17
23
23
2121
22
2121
20
39
36
33
37
37
17
16
14
17
16
13
12
9
16
10
7
7
一
九
九
一
一
九
九
四
8
5
3
一
九
九
七
二
〇
〇
〇
5 6
1
0
全体
16‑19歳
20‑24歳
25‑29歳
30‑34歳
35‑39歳
40‑44歳
45‑49歳
50‑54歳
55‑56歳
60‑64歳
(2) 年代別にみると、
「16‑19 歳」から「30‑34 歳」までは毎年増加している。
「35‑39 歳」以上となると必ず
しも毎回増加の右肩上がりではないが、1991 年に比べて 2000 年は増加はしている。
(3) 各年代の着用率の割合をみると、1991 年以来、「20‑24 歳」が常にトップで、2000 年には 56%と半数
を越えている。次に高いのが「25‑29 歳」で、2000 年にはかろうじて51%と半数を越えている。以下、
「30‑34 歳」、「16‑19 歳」「35‑39 歳」と続く。
「40‑44 歳」以上では、
「55‑59 歳」までは 2000 年には 15%以上の結果となるが、
「60‑64 歳」では 2000
年で6%と、20 人に1人程度となる。
(4) 約10 年間の調査であるため、世代ごとの10 年間の着用率の変化を見ることができる。たとえば1991年
の調査では21 歳の人は、2000 年では 30 歳となっているので、データも「20‑24 歳」から「30‑34 歳」の
枠を見ることになる。そこで、1991 年と2000 年のデータの差を求めると、次ページの表のようになる。
80
%
同世代での10年間のピアス着用率の変化
同じ世代で見た時、10年経って着用率は増えたか
約10年後
60
56
約10年後
51
49
約10年後
43
40
37
33
33
37
32
27
25
27
17
一
九
九
一
約10年後
23
2121
22
2121
20
39
約10年後
36
約10年後
33
32
29 29
23
約10年後
17
16
14
一 一 二
九 九 〇
九 九 〇
四 七 〇
17
13
16
12
9
約10年後
10
7
7
16
8
5
3
5 6
1
0
全体
16‑19歳
20‑24歳
25‑29歳
30‑34歳
35‑39歳
3
40‑44歳
45‑49歳
50‑54歳
55‑56歳
60‑64歳
%
70
年齢別にみたイヤリングとピアスの着用率(1991)
「おしゃれ白書 2000」ポーラ文化研究所
60
表1 世代ごとの10 年後の着用率の変化
50
40
37
30
30
25
20
31
27
22
20
17
「16‑19 歳」 → 「25‑29 歳」
17 % → 51%
+ 34
「20‑24 歳」 → 「30‑34 歳」
37 % → 39%
+ 2
「25‑29 歳」 → 「35‑39 歳」
27 % → 29%
+ 2
「30‑34 歳」 → 「40‑44 歳」
22 % → 23%
+ 1
「35‑39 歳」 → 「45‑49 歳」
14 % → 17%
+ 3
「40‑44 歳」 → 「50‑54 歳」
13 % → 16%
+ 3
「45‑49 歳」 → 「55‑59 歳」
9% → 16 %
+ 7
「50‑54 歳」 → 「60‑64 歳」
12 % → 6%
ー6
イヤリング
ピアス
19
18
17
14
14
20
19
14
13
10
12
9
9
7
3
0
全体
17‑19歳 20‑24歳 25‑29歳 30‑34歳 35‑39歳 40‑44歳 45‑49歳 50‑54歳 55‑56歳 60‑64歳
%
70
年齢別にみたイヤリングとピアスの着用率(1994)
「おしゃれ白書 2000」ポーラ文化研究所
60
50
43
40
ピアス
33
32
30
23
20
33
21
イヤリング
29
27
25
28
23
21
20
21
19
20
17
16
13
10
7
5
1
0
全体
%
17‑19歳
20‑24歳
25‑29歳
30‑34歳
35‑39歳
40‑44歳
45‑49歳
50‑54歳
55‑56歳
60‑64歳
年齢別にみたイヤリングとピアスの着用率(1997)
70
「おしゃれ白書 2000」ポーラ文化研究所
60
50
49
ピアス
40
37
36
32
30
27
18
28
24
23
21
20
31
26
24
イヤリング
13
13
10
15
21
10
8
8
5
5
0
全体
16‑19歳 20‑24歳 25‑29歳
30‑34歳 35〜39歳 40〜44歳 45〜49歳 50〜54歳 55〜59歳 60〜64歳
年齢別にみたイヤリングとピアスの着用率(2000)
%
70
「おしゃれ白書 2000」ポーラ文化研究所
スの着用率の経年変化」――イヤリング
からピアスへ
左のグラフ4点」(グラフ中の○囲い
の部分は10%未満の差。)をみると、
「イ
ヤリング」と「ピアス」の変化がよく見
える。
1991年では全体でも「イヤリング」が
多く、年齢別でも「16‑19歳」と「35‑39
歳」以上で「イヤリング」が高かったの
に比べ、年々、
「イヤリング」の着用が高
い層(10%以上の差)が高齢化し、2000
年では「60‑64 歳」でのみ「イヤリング」
が高い結果であった。
逆に、若い層ではピアスの着用率が圧倒
的に増大していることがこのグラフからわ
かる。
60
56
ピアス
51
50
40
39
33
33
30
29
23
20
23
20
16
イヤリング
10
Ⅲ‑2.「年齢別にみたイヤリングとピア
11
10
7
6
11
17
19
16
14
7
6
4
0
全体
16‑19歳 20‑24歳 25‑29歳 30‑34歳 35〜39歳 40〜44歳 45〜49歳 50〜54歳 55〜59歳 60〜64歳
4
Ⅳ . 考察
20 代では半数を超える女性がピアスをおこなっている結果であった。
ピアスについては、耳に穴を開けることに対して、
「親からもらった身体を傷つける」のはよくないと
する意見をよく耳にする。しかし、調査の結果を見ると、もはや 20 代の女性にはこのような考えは通用
しなくなっているといえよう。
前ページ右上の表1で示したように、過去 10 年の変化は、
「16‑19 歳」から「25‑29 歳」への変化を除
くと、若干のプラス程度の微増である。この微増の意味するところは、10 年前にピアスをした人がその
後も継続していたとすると、その年代で過去10年間の増加(=その間に新たにピアスをしはじめた人)は
あまりなかったということを意味する。
いいかえると、2000 年の時点で 30 歳以上の人でピアスをしている人は、そのほとんどが 10 年前に開
始しており、調査しはじめての10 年間には新たに耳に穴を開けた人はごくわずかであったという解釈が
成り立つ。
一般的にいわれるおしゃれ観、すなわち「10 代から 20 代にかけて形成され、その後はそれほど大きく
変化しない」と一致するように見える。
今回の調査に置き換えると、ピアスの開始年齢は10 代20代がほとんどで、彼女たちはピアスをしたま
ま中高年になっていくが、30 代を過ぎてピアスを開始する人はあまりいない、となる。
5