「今,利益を上げる光通信デバイスは何か?」

月刊オプトロニクス2005年3月号 特別広告企画
「今,利益を上げる光通信デバイスは何か?」
−FTTHは利益を上げているのか。そして光に未来はあるのか?−
㈲オプトマーケティング
1.
本稿は昨年12月7日から本年1月7日ま
での一カ月間,オプトロニクス社営業部
配信の光産業Eメールニュース読者約
6,000名を対象に,Webページで行った
アンケート調査の結果をまとめたもので
ある。
設問が細かかったことと,
「御社で利益
を上げている製品をこっそりと教えて欲
しい」など答えにくい内容だったため,
有効回答数は65件にとどまったが,「光
業界人65人にインタビューを行い,ビジ
ネスの現在,過去,未来を伺った」と考
えれば,十分な回答数といえるだろう。
なお本稿は需要予測が目的ではないので,
計量的な分析は行わない。回答内容を追
いながら,光業界の今のムードや,光業
界人のマインドを考察してみたいと思う。
年末年始の繁忙期にもかかわらず,ご
回答頂いた読者の皆様には心から御礼を
申し上げます。なお執筆にあたって,文
意を損ねない範囲で細かい言い回しを調
整させて頂いている点はご了解頂きたい。
2.
2.
2.1
Q1.
調査の概要
今利益を上げていると思われる
製品
光業界噂話とその実情
「どうやらアノ会社のアノ製品が好調
らしい」は,業界人が集まれば必ず交わ
される会話である。第一問は「他社製品
も含めて今利益を上げていると思う製品
は」で,あくまで主観,さらに「想像も
OK」とした。結果はグラフ1の通り。
FTTH用デバイスが圧倒的だが,実際
に製造していると思われるメーカーのマ
ーケティング担当者から詳細な情報も寄
せられた。同氏は「P2P用は価格破壊,
数量も低減。PON用も数量は減ってい
る。ONU用LD,PDは数量は多いが安価。
利益の出る数量は200k/月だが,有力メ
ーカーでも50k/月程度で利益など出な
い」と断言。筆者もある電機メーカーで
「価格下落に付いてゆけず,せっかく参
入した大手通信キャリア向けONUを自
らギブアップしてしまった」という話を
聞いたことがある。マーケティング担当
氏は局舎側についても「OLT側は価格は
踏みとどまっているが,数量がONUの
1/10。32分岐が進めば比率が離れ,数量
はさらに減る」と,現在そして将来のビ
ジネスの難しさを語っている。
同氏は「ここに至ってしまった過程」
にも考察を加え,「今回の日本のFTTH立
OPTRONICS(2005)No.3
定成
寛
他社の製品も含め、あなたが今利益を上げていると思う光通信デバイスは何ですか?
(複数回答可)
FTTH用パッシブ(スプリッタ、フィルタ、PD等)
FTTH用アクティブ(LDモジュール、メディコン、TRx等)
ない、全くない
無回答、わからない
その他光通信部品(変調器、MEMS等)
非通信用光学製品(レーザ光源、プロジェクタ光源、LED等)
カスタム・高付加価値デバイス、ニッチ製品
昔ながらのレガシー系(MSA TRx等)
イーサネット用デバイス、データコム用TRx等
通信用IC
フィルタ
光学素子(レンズ等)
0
ち上がりに際し,キャリアの意地や無理
が全体を不幸にした。自由競争のもとで,
本当のボトムを真面目に考えていなかっ
たと思うとやりきれなくなる」とまとめ
る。やりきれない結論だが,「市場拡大
を目指すが故にハードのコストを無視し
た」(LEDメーカー),「一度下がってし
まった価格はもう上がることはない」
(光デバイス生産技術)という声も数々
寄せられた。話題のFTTH市場の理想と
現実を観る思いである。その理想すらも
捨て去った超現実論が12名,約18%に
も及ぶ「利益を上げている製品は全くな
い」であろう。
2.2
もちろんポジティヴな噂話も
いきなり暗い話になってしまったが,
もちろんポジティヴな回答も寄せられて
いる。
「高付加価値デバイス,カスタム品,
ニッチ製品はそこそこ売れている」,「意
外にも昔ながらのレガシー系デバイスは
悪くない」などだが,これは一部の光業
界人の間では繰り返し語られていたこと
でもある。具体的には「10G,40G用で
量産化が確立された製品。JDSU,
BookhamのハイパワーLDなど」(輸入商
社)という声があった。弊社のコンサル
タント先の開発状況を見ていると,確か
にハイパワーLDの入手はなかなか困難
で,現時点においてほとんど唯一に近い
「売り手市場」といえる製品かもしれない。
レガシー系については「具体的には
10Gトランシーバなど」という声も複数
あった。自社ではないが「10Gの300pin
MSAトランシーバが1000個/月売れてい
るメーカーもある」(計測器メーカー)
との情報もあった。羨ましい話である。
2
4
6
8
10
12
14
16
18
将来については「一旦XFPが置き換わり,
続けてXFP,X2に集約される」との見
方が示されていた。
さて,こうなると次節にまとめた第四
問「あなたの会社で今利益を上げている
製品は?」が気になってくる。その回答
は…。
3.
3.
御社のヒットをこっそりと
教えて
3.1
レガシーは?FTTHは?
前段に呼応するように,細かい仕様は
秘密だが,「従来からのテレコム用デバ
イス」(デバイスメーカー)を挙げる声
もあった。その理由は「価格が以前の体
系の延長上にあるため,崩壊していない
から」であり,「むしろ,性能・価格が,
最近のアクセス系のものと逆転」という
現象もあるようだ。「2.5G以上の光部品
とトランシーバモジュール」という回答
もあったが,市場は「データコム系の広
帯域需要」ということで,テレコム系で
はない新規市場の確立も確認された。
残念ながら「FTTH用が好調かつ高収
益」という回答は得られなかったが,
「いまだに光通信デバイスは赤字事業で
あるが,昨年あたりから改善の傾向にあ
る」(パッシブデバイスメーカー),「ポ
ンプレーザの市場の在庫が一掃され,よ
うやく回転してきた」(デバイスメーカ
ー) という朧げながら光の見える声も
寄せられていた。赤外LED,センタエミ
ッション型通信用高輝度LEDを挙げたメ
ーカーからは,500万個/月産という情報
が寄せられている。
93
「今,利益を上げる光通信デバイスは何か?」
3.2
僅かながら非通信光の情報も
「自動車用コネクタ・デバイス先行開
発が売れている」という待望の(?)回
答が同製品の製造メーカーから寄せられ
た。他にはレーザ用レンズを挙げたメー
カーもあり,自社販売数量は企業秘密だ
が「ピックアップレンズは世界で約5億
個/年」というヒントが提示されている。
残念ながら自社製品に関する情報はこ
れくらいで,あとは次に記す第五問「あ
なたの会社で今後利益を上げると思う製
品は?」に熱い思いが寄せられていた。
Q2.
他社の製品も含め、あなたが今後利益を上げると思う光通信デバイスは何ですか?
(複数回答可)
FTTH用LD、PD、TRx
VCSEL(可視・近赤、イーサ用、車載用、長波長等)
カスタム・高付加価値デバイス、ニッチ製品
不明、ない
フィルタ
レガシー品(2G以上のTRx、10Gトラポン等)
非通信光源
FTTH用ONU
スプリッタ
フォトニック結晶ファイバ
チューナブルコンポーネント(レーザ、フィルタ等)
(ひょっとしたら)光SW
4.
あなたの会社の将来は?
4.1
大注目のVCSELだが…
0
2
4
6
8
10
12
14
※回答数1件のもの・・・PLC、合分波器、分散補償器、レンズ、EDFA、軍事、公共用デバイス、光イーサ用ルータ、
映像配信用機器、ソフトウェア、R-OADM、VBG(Volume Bragg Grating)、
マイクロレンズアレイ、光ファイバ、携帯基地局向け光デバイス、全光ルータ
最も注目されているのはVCSELであ
った。これはグラフ2の通り第二問の
「他社でこれから売れると思われる製品」
でも高い比率を占めている。寄せられた
意見としては「近赤・可視用VCSELが
数百M〜数Gbpsのリンク用光源として
LDの代替となる。用途はホームネット
ワーク」(デバイスメーカー),「光イー
サ・インターコネクション関連で
VCSEL。数万〜20万個」(光学素子メー
カー),「LAN,SAN,AV伝送市場用短
波長VCSELが100万個/月」などがある。
話題の「情報家電」を軸とした意見だ
が,同時に「PLCなど新しい技術も見え
ており,情報家電もそれにつれて出てく
るとの話もある。しかし実際にどのよう
なものになるかが見えない。業界での意
思統一が必要ではないか」という慎重論
もあった。シンプルなコメントだが,筆
者も同感である。「情報家電で光が復活」
といわれ早5年。まさに「実際にどのよ
うなものになるかが見えない」ではない
か。これと同様に「次のヒット製品は
VCSEL」も早数年。この2つの待望論は,
互いにリンクしながら不完全燃焼を続け
ているとは考えられないだろうか。
4.2
テレコム系はどうか
テレコム系光デバイスについて「将来
有望」という声はさすがに少なかった。
微妙な部分にも触れているのが「全ての
ものは低価格化が激しく,大幅に利益を
あげるものなどなさそう。なんとか利益
が出せる製品は10G以上の製品,DWDM,
CWDM,計測関係か。但し10Gもデータ
コム系は厳しい」(デバイスメーカー)
という回答。「エッジノードでのキーデ
バイス,OADMあたりに期待」(デバイ
スメーカー)という意見もあり,今後の
テレコム市場は幹線,エッジで価格競争
に陥らずどうにか踏みとどまっている製
品が収益源となるのかもしれない。
5.
光市場の現在,過去,未来
5.1
光通信市場は「負け犬」か?
94
自由に意見を述べて貰うべく「何をき
っかけに通信市場が回復すると考えます
か?」,「ここ数年『今年こそは』と言わ
れつつ毎年裏切られる,その原因は?」
そして「光通信市場の現在,過去,未来
についてご自由にご意見をお聞かせ下さ
い」という質問を行った。これらの回答
が非常に興味深く,味わい深く,そして
面白い。
当然いくつかのグループに分けられる
のだが,まず注目すべきは光の将来を極
めて冷徹に見る意見である。例えば「電
気システムの一部をそのまま光に置き換
えても光の特徴が十分出せない上,電気
のままの方がシステムとして親和性が高
く,低コストにできるのは当然。またい
きなり全光システムというのも飛躍しす
ぎ。その中間的なシステムを考えないと,
またもや残るのはファイバだけになって
しまう」(デバイスメーカー),「電気の
高速化が加速度的に進む中,電波と電気
の発展に比べ,光は殆ど新たな技術がみ
えてこない。光の良さを生かせるものな
ど,光屋さんが考える,開発する力がも
うないのでは。未来はあまり明るくない」
等々。筆者も含め光屋が集まれば「光通
信はブロードバンドの最終形。最後に生
き残るのは光」と慰め合っているが,上
述の意見はその妙な安心感に警鐘を鳴ら
すものである。
実は今回のアンケートで「最後に生き
残るのは光」という見方は少なく,無線
に対する危機感を示すものが多かった。
「FTTH,ホームネットワークは無線との
競争。FWA,UWF,ADSLも強敵」(輸
入商社)という意見や,所得との関係か
ら「賃金上昇が期待できず雇用環境が不
安。携帯関係の通信費負担が重荷になる
中,有線通信に割り当てられる費用負担
分が下がり続け,光通信サービスを導入
するモチベーションが上がらなかったの
では?」(デバイスメーカー)とする回
答もあった。もちろん無線のインフラと
なる中継網は光で構築されるであろう
が,アクセス系のいくつかの市場を,電
波と電気に明け渡してしまっても良いの
だろうか。「電波と電気の発展に比べ,
光は殆ど新たな技術がみえてこない」と
まで言われる光技術に未来はあるのだろ
うか。
5.2
光に必要なのは柔軟なフットワーク
未来は十分にあるのである。いくつか
のポジティブな意見から,我々は何を,
どうやって作って行くべきかを考えてみ
たい。
無線や電気との競争が最も熾烈になる
であろうユビキタス市場についても,広
義の光通信がまだまだ生き残るという希
望に満ちた意見がある。例えば「照明な
どの光が光通信の光源を兼ねる日が近く
なって来た。電波の使用は放送と携帯に
限定される日が来る」(光無線装置メー
カー),「ワイヤレスなど通信が多様化し
ているなかで,モビリティの高い光通信
を模索してゆく必要があるが,光通信を
光インターコネクションと広義に解釈し
て行けば裾野は広がってゆく」(パッシ
ブデバイスメーカー),「可視光無線通信
が有望。光タグがうまく行けば化ける市
場である」などだが,いずれも「既存の
光通信の枠組みから飛び出した者に商機
がある」とは考えられないだろうか。
「『単純な通信』だけでなく,これか
ら情報家電も含め色々と作られて行く。
音声電話,テレビ電話,メールやインタ
ーネットだけが通信ではない」(調芯装
置メーカー)というあまりにもあたりま
えの(しかし通信屋には目からウロコの)
提言があった。「単純な通信」というの
は面白いことばだが,考えてみればお風
呂の温度も,電器釜のご飯の硬さまでも
光で伝えることができるのだ。
但し世間で騒がれているユビキタス社
会の到来については慎重案も多く,
「2010年頃にユビキタス時代がやってく
るとの記事等を見るが,私は少々楽観的
ではないかと思う。定義も曖昧。情報家
電とウエアラブル・コンピュータの環境
の中で,基盤ネットワークが完備し,新
しいコンテンツが現れ,さらに最も重要
課題であるセキュリティシステムが 安
全と安心 を保証するシステムとして構
OPTRONICS(2005)No.3
「今,利益を上げる光通信デバイスは何か?」
築されて初めてユビキタス社会と言える
のであって,その様な社会が構築される
までには未だ10年以上はかかると思う」
(コネクタメーカー)とのロジカルな意
見には,私も非常に共感した。「ユビキ
タス」ということばが,エンジニアリン
グの現実を超え,独り歩きしていると思
っていたからだ。
光技術による新しいビジネス・モデル
を提唱する意見も多かった。例えば「安
定した需要に結びつけられるアプリケー
ションを発達させる。例えばテレマティ
クスのように自動車という安定市場で,
自動車購入への支出に上乗せされた形で
光産業に資本が流れて来る」(光デバイ
ス・計測器輸入業者)などが興味深い。
もちろん従来の光通信網にも可能性は
ある。「NTTが提唱している波長ルーテ
ィングは狙い目。波長割り振りなどのシ
ステム設計技術も含め周辺技術も整って
きている」(デバイスメーカー),「基幹
系ネットワーク(10G以上DWDMを含
む)はALL光化が進む。メトロ系ネット
ワークでは研究レベルでなく実用レベル
の低消費電力な光バーストルータのアー
キテクチャが開発される」(光伝送装置
メーカー)などの意見もあり,さらには
「ひょっとしたら光スイッチが有望か」
という回答も複数寄せられていた。
また「トランシーバと光アンプを含め
た,制御/論理回路と光部品を組み合わ
せた高付加価値モジュール製品。単一機
能ではなく,メッシュネットワークの初
期的なルーティングに使用されるノード
機能部品。分波SWとVOA等の組み合わ
せ」といった複合化技術に対する期待も
あった。
5.3
光のものづくりはどうあるべきか
筆者自身メーカー出身者なので,
「光の
ものづくり」の将来像も非常に気になる。
日本人の「ものづくりをするDNA」と全
光NWを関連づけた貴重な意見が,パッ
シブデバイスメーカーから寄せられてい
る。
「環境に対する配慮,省エネルギー等
を考え,光技術を駆使した光ルータをは
じめとするオールオプティクスの実現を
夢見ている。日本人はものづくりをする
DNAを持っており,コスト勝負のみなら
ず技術で勝負すべき」というものだが,
こうした環境論と技術論の両方に触れた
意見は多かった。例えば「地球環境や戦
争,自然災害,感染病予防などのために
地球規模の情報インフラが必要。その時
は光ではないと情報不足」
(光デバイス製
造)など。実際に世界情勢を考えれば,
情報化社会の現代においても外界から閉
ざされたいくつかの国があり,自然環境
を考えると国内では新潟の地震,インド
洋の大津波とそれに続く感染病流行の危
険性など,まさに今日的な課題と光通信
は密接な関係にあるように思える。
そんな中,メーカー側の姿勢としては
「各装置ベンダ,部品ベンダの最重要課
題が,低コストに偏りすぎている。本来
次世代技術の足固めを早急に行い付加価
値のある製品を出していくことが必要」
OPTRONICS(2005)No.3
(パッシブデバイスメーカー)という意
見に集約されるだろう。予想されたこと
だが「鉄鋼業界のようなメーカーの淘汰,
選択と集中による市場撤退」(配線部材
営業技術)を市場回復のきっかけとして
挙げた回答もあった。
5.4
光バブルは再来するか
第二次光バブル待望論,確信論もあっ
たが,多くは慎重派であった。例えば
「バブルの幻影を追っているから『今年こ
そ』と思ってしまう。現状が通常の成長
率であるという認識が重要」
(ファイバ製
造)や,
「本来の市場規模と伸び率に『適
正化』しつつある」というもの。また半
導体に倣って「シリコン・サイクル」の
ようなものを期待したが,光には当ては
まらないという意見も多い。確かに何年
待っても「次のヤマ」はやって来ない。
これは「通信設備は携帯電話やデジカメ
のような買い換え商品ではなく耐久消費
財」
(ウエハ製造)と考えれば納得できる。
「今年こそ」が裏切られる原因として
最も面白かったのが「環境分析に希望を
添加しているから」というもの。しかし
続けて「研究開発成果と実用化の間に,
見逃している課題があるのでは」と語っ
ている。テクニカル・マーケティングの
適正化は極めて重要な問題である。
「市場
をよく分析していない」
(輸入商社)など
の自己責任論も多かったが,
「マーケティ
ング会社のいい加減な市場予想」が市場
を混乱させているという回答もあった。
一連の「予想屋さん」達は,光バブル崩
壊後に集中攻撃を受けたが,数年経った
今でも残っている調査会社に対する不信
感の根強さが見てとれる。ちなみに弊社
は全員が光バブル崩壊で地獄を見たメー
カー出身者。技術・拡販コンサルタント
がメインで,需要予測は行っていない。
6. 最後に−光をとりまく世界の
6. 動き
業界復活のきっかけとして,
「北京オリ
ン ピ ッ ク 。 但 し 何 年 継 続 す る か ? 」,
「2008年のアメリカ大統領選」などがあっ
た。後者は当然(?)政権交代に期待す
るものだが,二期目を迎えたブッシュ政
権には「ブッシュ・ファミリーが通信事
業に経営参加すれば良い」というマイケ
ル・ムーア的な逆転の発想も寄せられた。
「国も民間企業もビジョンを見据えるべ
き」という冷静な意見もあった。現状を
「政府のブロードバンド政策は小手先の
改革であり,民間企業のブロードバンド
事業も目先の利益追求のために,加入者
の近視眼的興味にフォーカスしている」
と分析,「国は『生活しやすくなる通信
インフラ』を。民間は本当に訴求力のあ
るサービスを」と続けている。
年末年始の特別な時期にアンケートを
募集したためであろうか,世界情勢をマ
クロに振り返るようなユニークな意見も
数々寄せられた。例えば「世界情勢の不
安定さが引き起こした経済不況の影響。
世界全体が活気がない」と語る光コネク
タ関係者は,「世界を震撼させた事件に
匹敵するような『良い意味での反作用』
がないと一気には解決しない」と続ける。
含蓄の深いことばである。
思い起こせばECOC2001開催直前に
起こった9.11同時多発テロ以降,
OFC2003開催前夜の米軍によるイラク
攻撃などを挟んで,世界は極めてインパ
クトの強い,ネガティヴな出来事に震撼
し続けている。古いロックの曲名ではな
いが,「世界は悲しすぎる」のだ。我々
がこの数年で体験した負のインパクトに
匹敵する,ポジティヴな出来事の発生に
期待して,本稿を締めたいと思う。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
定成 寛(サダナリ ヒロシ)
所属:㈲オプトマーケティング 代表取締役
連絡先:〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿45-25-801
Tel. 03-3473-8261 Fax. 03-3473-8262
E-mail:[email protected]
経歴:1990年古河電気工業㈱入社。情報通信
事業本部(当時)で光コネクタ,光ファイバ
ケーブルの工場建設とマーケティングに従事。
㈱リクルート,駿河精機㈱を経て,2002年㈲
オプトマーケティング設立。光産業専門の技
術・拡販マーケティング・コンサルタントを
行う。著書に『二十一世紀ジャズ読本』(ブッ
クマン社)。
注釈:
1. 引用意見の「」直後の()は回答者の業種。
業種無回答の場合は()を省略。
2. 本稿はWebページで行ったアンケート調査
の結果をまとめたものであり,需要予測的な
側面は一切有しません。また,文中に登場す
る製品の製造量の正当性は保証致しません。
3. 回答数,分量が多かったため,一部ご意見
を省略させて頂きました。
アンケートの設問:
・まずはあなたのお考えで−
Q1.他社の製品も含め,あなたが今利益を上
げていると思う光通信デバイスは何ですか?
Q2.他社の製品も含め,あなたが今後利益を
上げると思う光通信デバイスは何ですか?
2-a.その理由とおおよその生産個数(月産)
は?
2-b.それらのデバイスの市場はどこですか?
(日本,米国,中国,欧州,その他)
Q3.あなたは今後何をきっかけに通信市場が
回復すると考えますか?
・次に御社自身について−
Q4.御社で今利益を上げている光通信デバイ
スはありますか?それは何ですか?
4-a.その理由とおおよその生産個数(月産)
は?
4-b.それらのデバイスの市場はどこですか?
(日本,米国,中国,欧州,その他)
Q5.御社で今後利益を上げると思う光通信デ
バイスは何ですか?
・そして最後に−
Q6.ここ数年「今年こそは」と言われつつ毎
年裏切られる,その原因は?
Q7.光通信市場の現在,過去,未来について
ご自由にご意見をお聞かせ下さい。
設問4,5については製品名の回答よりも状況
分析的なものが多かったので,カウントはせ
ず,本文中に意見として記述した。
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