光技術の動向調査

ウ. 光技術の動向調査(報告書全体)
2004 年度は自然災害が多発した年だった。この世界各地で多発する地震、津波などの自
然災害を予測し、その被害を軽減する為に、大洋を取り巻く国家間の超高速情報網の早期
整備が叫ばれている。これを実現する手段としての光技術はキーテクノロジーとして欠か
せないものであり、光技術の重要性も更に高まりつつある。
また、昨年世界中を湧かせたオリンピックにおいても、リアルタイム映像が全世界で見
られることは既に当たり前であり、各国の選手達の命運を左右する計測技術にも、その測
定精度から光技術は必須のものとなっている。この様に身近なものから、ナノテクやバイ
オテク、環境、医療、セキュリティに至るまで、今では光技術は 21 世紀の発展を支える技
術である。それと同時に極めて先端的なる技術が開発されるにつれ、光産業界のより高い
倫理観と社会貢献に対する覚悟が求められる。
本光技術動向調査委員会は、光技術の的確な動向を把握することで、将来への指針とす
べく調査を行っているものである。今年度の光技術動向調査委員会は、従来の調査項目(デ
バイス・材料、通信ネットワーク、光メモリ、ディスプレイ、インタフェース、加工・計
測、太陽光エネルギ、並びに時限テーマの医療福祉、及び環境フォトニクス)に加えて、
エジソンの発明以来未だに使用され続けている白熱電球、それと戦後著しく普及した蛍光
灯の両者をも置き換える可能性を持った革命的デバイスが最近注目を集めていることもあ
り、新たな3年の時限テーマとして「照明」分野の調査を行うこととした。報告書全体と
しては、国内外の科学技術全体の流れの中で、調査の継続性と共に新たな方向性を取り上
げ、且つ分析を行うよう心がけた。
また、海外に於ける光技術動向調査のため、昨今の成長著しい韓国に対し、光技術動向海
外調査団を組織して実地調査を行った。更に正月明けの委員会において、特許庁並びにシン
クタンクの方を講師に迎えて、
「特許の質」に関しての講演とディスカッションを行った。
(ア) 光技術動向調査
(i) 光材料・デバイス
a. はじめに
光技術は、光情報通信、光情報記録・処理、ディスプレイなどに代表される通り、情報
技術(IT)による豊かな社会を実現する際の基幹技術である。同時に、光センシング、光加
工、太陽光発電、照明などを通じて、安全・低環境負荷社会の技術基盤を形成する。これ
ら光技術を可能にする光デバイスには、今後ますます高い性能や機能が要求されるととも
に、省エネルギー化、低コスト化が求められる。そのためには、既存の光デバイスを持続
的に高度化する努力と、新たな原理の光デバイスや新たな光材料を探索する努力を怠るわ
けには行かない。光デバイス・材料の技術開発は、光産業を支える最重要なアクティビテ
ィーの一つと言える。
第一分科会では、光デバイス・材料分野の最新の技術動向を把握するための調査を行っ
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た。本年度は例年と異なり、応用領域ではなくシーズに着目して、光材料、発光デバイス、
光導波・制御デバイス、光検出デバイス、の4領域に分けて調査を行った。
b. 光材料
光エレクトロニクス技術の根幹を形成する光デバイス用材料技術について、ニオブ酸リ
チウム等の強誘電体、酸化亜鉛などの II-VI 族半導体、磁気効果との融合を目指すスピン
機能半導体材料、温度に依存しない禁制帯幅を有する半導体材料、光デバイスへの応用が
拡大しつつあるカーボンナノチューブ、進境著しい有機材料、シリコン電子回路との融合
を目指すシリコンフォトニクス、を中心にそれぞれ調査した。
c. 発光デバイス
発光デバイスについては、光通信用レーザの中で特に量子ドットレーザ、面発光レーザ、
1.3μm 非冷却直接変調レーザに関し、また光ディスク用レーザの中では現行 DVD 用 650nm
帯レーザの高出力化・2波長化、次世代 DVD に向けた青紫レーザ、CD/DVD/次世代 DVD を一
括で読み書きするための3波長集積光源に関し、それぞれ研究開発動向を調査した。加え
て、新たな応用分野に向けた青緑レーザ、紫外レーザや、ラマンアンプなどの出現により
一層高出力化する励起用半導体レーザ、センシングや医療応用の期待がかかる新波長域光
源についても調査を行った。
c.1 光導波・制御デバイス
光導波・制御デバイスについては、光通信用に開発の進む石英ガラス系集積光回路、最
近研究が活発化している微小リング共振器、多様な分野に展開しつつある疑似位相整合波
長変換技術について調査を行ったほか、益々重要になる光変調器・光スイッチ、超高速光
信号処理の要となる全光制御デバイス、能動光デバイスの安定動作に不可欠な光アイソレ
ータや、発展の続くモノリシック光集積回路、フォトニッククリスタルデバイス等につい
ても、最近の研究開発動向を調査した。
c.2 光検出デバイス
トピックスの一つは,光ファイバ通信分野におけるアバランシェフォトダイオード(APD)
の活況である。APD によれば光ファイバプリアンプが不要となるため、メトロ系における
受信器の低コスト化に大きなメリットがある。当面は 10Gbps APD が中心であるが、研究開
発としては 40Gbps APD の検討が盛んである。一方,火炎センサ、次世代リソグラフィ装置
応用等に向けて、短波長(特に紫外線)領域の受光素子がクローズアップされてきた。発光
デバイスで実績を積んでいる III 族窒化物材料に基づく受光素子の研究開発が始まってお
り、今後の進展が期待されるところである。
(ii) 光通信ネットワーク
平成 16 年度情報通信白書(総務省)によれば、日本のブロードバンドネットワークは、
世界で最も低廉な料金で高速サービスを提供しており、その契約数は約 1,500 万件、利用
者は 3,000 万人以上にのぼる。
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今年度は、特にアクセス系において G-PON 等のギガビット級 FTTH の普及が進み、年度末
には FTTH 加入者数は 250 万に達する見込みであり、ブロードバンド環境の発展は、今後ま
すます加速してゆくものと考えられる。アクセスの大容量化と経済化により、大容量のバ
ルクデータが、インフラとしての光ネットワークを介して、ユーザネットワーク間をダイ
ナミックに転送されるようになってきた。このため、基幹光ネットワークには、さらなる
経済化と大容量化のみならず、柔軟な制御性と高信頼性が要求されている。
以上のような背景の下、光通信ネットワーク分野を下記の8つの項目に大別して調査し、
その技術動向をまとめた。以下に、概要を述べる。
a. 基幹光伝送システム
この分野における実用化フェーズトピックとしては、40 Gbit/s チャネルシステム技術
と、差動位相変調遅延検波技術の進展が挙げられる。前者では、ルータベンダ等で 40 Gbit/s
インタフェースが採用された。また、40 Gbit/s チャネル伝送システムの検討が再び活発
化し、国内では 40G テストベッドの長期運用実験等も報告された。後者では、DPSK 信号を
RZ パルス化した RZ-DPSK 方式を用いて、既設の太洋横断ファイバ伝送路を用いた大容量ア
ップグレード現場試験が報告された。また、基盤技術研究フェーズのトピックとしては、
光ファイバの伝送性能限界を克服し、さらなる帯域利用効率やチャンネル速度の向上を容
易にする種々の技術検討が進んだ。変調フォーマットとして、多値符号化方式の検討が進
み、4値 DPSK 方式(DQPSK)や、振幅と位相の変調を組み合わせた方式(APSK)により、
周波数利用効率向上、波形歪の低減、チャネル速度の高速化の実験検討が進んだ。一方、
光ファイバの波長分散、偏波モード分散等による波形歪の自動補償技術として様々な適応
分散補償技術のフィールド実験が報告された。
b. 光アクセス
この分野における実用化フェーズの関連トピックとしては、日本国内で G-PON(GE-PON)
が本格導入されたことが挙げられる。次世代アクセスシステムへ向けた技術動向では、PON
システムの更なる大容量化への技術トレンドとして、10G-PON 等の高速化検討と WDM-PON
の技術検討が本格化すると予想される。また、ホームネットワーク等の領域では、光空間
伝送の高速化が進み、室内用 1.25G リンクが実用化された。今後、光空間伝送における安
全基準の緩和を背景に、さらなる高速化や応用が進む可能性がある。一方、高速化の別の
技術動向として、RoF(Radio over Fiber)においては、マイクロ波帯での検討が成熟し、
ミリ波帯への適用検討が進展している。
c. フォトニックネットワーク
この分野での実用化フェーズ関連トピックとしては、光ネットワーク制御技術として基
本部分がほぼ完成しつつある GMPLS(Generalized MPLS)の実用化検討が進んだ点がある。
SUPERCOMM2004 では、世界各国の通信会社により GMPLS を用いた大規模相互接続検証実験
が行われた。基盤技術研究フェーズのトピックとしては、光ネットワーク技術の Grid 応用
における検討が進んだ点が挙げられる。これらのデータプレーン転送技術として、光バー
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ストスイッチングや光クロスコネクトスイッチングが注目され、盛んに検討されている。
d. メトロネットワーク
この分野における実用化フェーズに関するトピックとして、任意波長の分岐挿入、ネッ
トワークのプロビジョニングの迅速化を目的として、光スイッチと光フィルタを組み合わ
せた Re-configurable OADM(ROADM)の実用化が世界的に加速されたことが挙げられる。
基盤技術研究フェーズの関連トピックとして、よりダイナミックな波長パスの切り替えの
実現をめざした OXC、Dynamic OADM(DOADM)といったノード構成が提案され、WSS(波長
選択スイッチ)等の新規光スイッチ・フィルタ構成の検討が進んだ。
e. 光 LAN/インターコネクト
この分野における実用化フェーズのトピックは、10G イーサ(10GbE)の普及の兆しがみ
えてきた点である。10 Gbit/s シリアル入出力 PKG である XFP の普及が、今後本格化する
と考えられている。さらには、IEEE802.3 において 10 Gbit/s マルチモードファイバ伝送
に関する新しい規格:10GBASE-LRM の標準化が進んだ。一方、PCI-Express を搭載したブレ
ード化サーバの出荷が予定されており、また、インターコネクト用光モジュールが種々提
案されている。
f. 伝送用光ファイバ技術
この分野での実用化フェーズのトピックは、昨年に引き続き、FTTH 用として曲げ損失の
低減を目的とし、様々な構成で光閉じ込めを強化した光ファイバ構造が提案、実用化され
た事である。また、伝送用光ファイバとして分散フラット化の流れが進み、1460 nm(S 帯)
~1625 nm(L 帯)での波長分散特性が規定され、ITU-T 勧告 G.656 として標準化された。
基盤技術研究の進展としては、ホーリーファイバの低損失化が大幅に進んだ。ガラスコア
では 0.28 dB/km、空気コアでは従来の 1/10 程度の 1.7 dB/km まで低損失化された点が注
目される。
g. 量子暗号通信技術
新規分野として、本年度は、量子暗号通信技術を取り上げた。基本的な考え方の紹介と
共に、様々な研究機関からの種々の量子暗号システム実験について報告した。実際のネッ
トワークでの要求条件と量子暗号通信の前提条件の比較、量子暗号通信技術の現在の技術
的到達点と技術課題が明らかになり、今後に進展が注目される。
h. 標準化動向
関連する標準化団体における動向について、今年度の進展を中心にまとめた。ITU-T で
は、メトロ DWDM、及び 10 G イーサ(10G LAN PHY)の広域転送に関する議論が活発化して
いる。IEC では、今後の超高速システムや分布ラマン増幅システム等に関連するハイパワ
ーシステムに関する文書が発行された。IETF では、フォトニックネットワークにおける
GMPLS プロトコルの基本部分の規定がほぼ完成した。OIF では、OXC 等から構成されるフォ
トニックネットワークと、IP ルータ等から構成されるデータ網との制御インタフェースの
標準化が着実に進展した。IEEE802.3 では、10GbE に関する標準化のうちマルチモードファ
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イバ 300 m 伝送を目指した 10GBASE LRM 規格の動向が注目される。
(iii) 光メモリ・情報処理
光ディスクの商品では昨年度、相変化メーカニズムに基づく Blu-ray Disc が初めて発売
され、今年度は世界初の書換形2層ディスクが発売された。また、当初は書換形だけであ
ったが、追記形(BD-R)と再生専用形(BD-ROM)を含む総合フォーマットとして広がりを見
せている。
a. マスタリングとレプリケーション
プロセス・レプリケーションでは、テラバイト光ストレ-ジの実現を目指して、2002 年
度から5年計画で「大容量光ストレ-ジ技術の開発事業」プロジェクトがスタ-トしてい
る。このプロジェクトは 2006 年度までに記録密度 1Tbit/inch2 級の大容量光ストレ-ジ技
術を確立するのが目的である。自己組織化微細プロセスと微細パタ-ンの転写が可能なナ
ノインプリントを組み合わせてナノパタ-ンドメディア作製の研究が行われている。数十
nm オ-ダの微細なピット列の配向制御が実現されている。
b. 青色レーザを用いた光ディスクシステム
昨年度、相変化メーカニズムに基づく Blu-ray Disc(23.3GB 容量)が初めて発売され、
今年度は世界初の書換形 2 層ディスク(50GB 容量)が発売された(2004 年7月)。また、
書換形に限定されていた初期から追記形(BD-R)と再生専用形(BD-ROM)を含む総合フォー
マットとしての広がりを見せている。追記形では4層 100GB、4倍速 140Mbps、再生専用形
では8層 200GB までを見通した報告が行われた。
HD DVD の記録容量は ROM では 15GB/30GB(単層/2層)、書換型では 20GB/32GB(単層/2層)
へと収斂してきた。ROM 開発が先行し、低コスト化を意識した生産技術についての報告が
精力的に行われた。
一方、光磁気技術においては、まだ青色レーザを用いた製品化には至っていないが、赤
色レーザを用いた開発、とくに超解像記録についての研究開発は継続して意欲的に行われ
ている。Hi-MD という MD の後継機種として発売された(容量 1GB/φ64)。
c. 光メモリの将来技術
近接場光学を利用した高密度化技術に関して、SIL では、NA=1.84 の光学系を用いて、
112Gbyte 相当の記録再生の成功、NA=1.9 の光学系を用いて、表面記録する方法や NA=1.5
を用いて、2層ディスクに記録する方法の提案があった。高感度材料の開発に関して、蛍光
によりデータを再生する材料や書換え可能なフォトクロミック材料の開発動向をまとめた。
1度だけ記録可能な記録材料として開発されているフォトポリマーでは、データの記録
時の収縮が問題となっているが、最新の材料では、0.1%以下の収縮に抑えることに成功し
ている。
2光子吸収を用いた多層光メモリ技術について、記録媒体に微細構造を作製することに
よる 2.0Tbit/cm3 の実現、ナノ秒パルス半導体レーザを利用した試みが報告された。また、
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多層膜媒体の新しい作製方法として、粘着シートを用いた手法が提案された。
d. 光メモリに望むこと
ユーザの立場から見た、光メモリの現状の使われ方、今後の普及見込み、要望等の具体
例を以下に記す。
d.1 美術(文化財)
天災や人災により消失してしまう可能性がある有形文化財の幾何情報 (3次元的な形)
や光学情報 (色・艶といった物体の見え) 等のデジタルデータ取得・保存技術の研究が進
められている。
鎌倉大仏やカンボジア・バイヨン遺跡の幾何学情報のデジタル化が行われた。現状光デ
ィスクの利用は、情報漏えい等セキュリティの考慮により、データの受け渡しに CD-R、
DVD-R を利用するのに限定される。
今後、大容量化、書き込み速度の高速化、長期保存が可能となれば、データ保存用のデ
バイスとして有用になっていく。少なくとも、テープデバイスで用いられているオートロ
ーダー機能が、光ディスクで利用可能になれば、現状でも大容量化の問題の解決に役立つ。
d.2 放送
放送局の記録装置としては VTR がトータル性能で他のメモリより優れており半世紀に渡
り使用されてきている。しかし最近の他のメモリ技術の進展、コンピュータやネットワー
クとの親和性の要求から、放送局のテープレス(脱 VTR)化への要望が高まっている。
番組の取材や収録、アーカイブといった分野では、コンテンツを長期間に渡り安定に蓄積
することが求められ、光ディスクがメモリの性格から最適だと思われる。最近、
SDTV(Standard Definition TeleVision)のニュース・番組取材システムとして、光ディス
ク、フラッシュメモリ、ハードディスクを記録媒体としたものが相次ぎ製品化された。欧
米ではようやく本格的に使われ始めたといえるが、日本では高精細の HDTV 用記録装置が
すでに必須なため、上記の製品はまだほとんど市場に出ていない。放送用途 HDTV 光ディ
スクの開発が望まれる。
今後の一般番組・アーカイブ用光ディスク実現には、さらなる大容量(高密度)化と高
ビットレート化が求められる。10 層程度の多層記録方式、1Gbps 程度の高速化ができれば
光ディスクの放送応用はさらに本格化すると思われる。
e. 最近の光記録研究報告数の推移
主な学会と論文誌(ODS、ISOM、応物学会、応用磁気学会、JJAP、Opt. Lett.、Appl. Opt.、
J.Opt.Soc.Am.)から最近 6 年間(1998-2003)の光記録研究報告数を調べた。概略すると MO
に関する発表が 90 件から 10 件へ大きく減少した一方で、次世代 DVD が増加して 40 件程で
定着し、ホログラムメモリが減少した後 30 件程度で横ばい などのトレンドが読みとれる。
ちなみに論文数全体としては 500 件前後と横這いである。
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(iv) ディスプレイ
今年度は大型表示ディスプレイの普及が一気に拡大し,今後 SED 方式やプロジェクショ
ン TV の本格の参入も予想され,これら方式に有機 EL 方式を加えたディスプレイ技術全般の
技術動向進展を調査した。
a. LCD
携帯電話、デジタルカメラ用小型パネルには半透過表示(Trasnflective)LCD パネルが採
用されており、より美しい表示に関する技術進展の報告があった。また 65 型 TV の展示が
行われるなど大型化も着実に進んだ。
色再現性では ①導光板,LED 配列等のバックライトの改善による表色範囲に関する技術,
②広視野角を実現する VA(Vertical Alignment)
、IPS(In-Plane Switching)の両モード
の視野角に対する技術、③グレーの色付きを解消する技術と確実な技術進展がみられた。
高速応答性では液晶材料の低粘化による液晶分子動き改善や駆動技術の改善,フレーム間
に黒を書き込む黒挿入駆動やバックライトの順次点灯技術の報告があった。
b. PDP
製品レベルでは 65 型の製品化や 103 型の発表などの大型化,43 型で 306W の実現などの
高効率化」(低消費電力)
,高画質化(高輝度,高階調,高精細,動画),低価格化の技術進
歩がみられた。基礎研究ではダイレクトフィルター構造が実用化され多重反射が改善され
表示画像の鮮鋭度や彩度の改善が行われた。
c. 有機 EL
有機 EL ディスプレイは車載用途や携帯電話のサブディスプレイ向けに市場投入が本格
化し、今年に入りマルチカラーやフルカラー表示品も続々と実用化された。
低分子有機 EL ディスプレイは携帯情報端末のメインディスプレイに最大サイズ 3.8 インチ
フルカラーアクティブマトリックスパネルが搭載されて商品化された。
またフルカラー化技術として RGB3 原色の発光成分を持つ高効率な白色有機 EL 素子の開
発が複数報告された。
高分子有機 EL ディスプレイではインクジェット法により作製した 40 インチ試作品が発
表された。
d. FED
FED はフィールドエミッタアレイ(FEA)を電子源としたナノテクノロジー技術を利用し
た次世代 FPD ともいわれ,
今年度は回転蒸着法(Spindt 法)の改善や転写モールド法による FEA 加工技術の発表が
あり、車載、産業機器,医療機器用としての 4~15 インチサイズや 36 インチプロトタイプ
ディスプレイ製品化計画の発表もあった。
e. 電子ペーパ
今年度の電子ペーパは電子書籍端末の販売とコンテンツ配信サービスが 2004 年に相次
いで開始されており、ビジネス展開が始まった段階といえる。
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今年度、電気泳動表示方式、コレステリック液晶方式などが製品に採用されたが電子ペ
ーパはまだ完成された技術ではなく今後の研究開発に期待される。
f. LED
フルカラーLED ディスプレイの国内市場は公営競技場用やビルボード/インフォメーシ
ョンボード用に大型化とともに市場が拡大しており、2003 年で 300 面、納入表示面積で
5,000 ㎡となった。
高輝度な 3 イン 1 タイプの面実装型 LED の開発や輝度補正・階調制御・色度変換技術の
開発で高精細,高画質化が進んだ。
g. プロジェクション
高精細 MD(マイクロデバイス)PTV は 2007 年には 600 万台まで達すると期待されている。
MD 方式にはライトバルブの種類により HTPS(高温ポリシリコン液晶)方式と DLP(Digital
Light Processing)方式,LCOS(Liquid Crystal On Silicon)方式がある。
技術面で HTPS 方式は透過型 LCD の最小画素ピッチ 10μm と高コントラスト化(5000:1)
の実現,DLP 方式は DynamicBlack 技術と SmoothPicture 技術により 5000:1 のコントラスト
比と 1080p の高精細化を表現,LCOS 方式は WG(ワイヤグリッド)等の角度依存性や熱歪み
の少ない光学部品開発により高画質化の実現等の報告があった。
キーコンポーネント関係ではリアプロ用光源として LED 方式の試作品発表,偏光スクリ
ーンと薄膜スクリーンの投写画像の黒レベル改善によるコントラストの改良,ライトバル
ブの LCoS 素子の耐光寿命を 2 倍にした報告など着実な技術の進展がみられた。
h. 立体ディスプレイ
立体ディスプレイは携帯電話を中心に今年度は色々な方式の立体ディスプレイ技術の進
展がみられた。
二眼ディスプレイ方式は携帯電話をターゲットとした開発が進み NEC より高精細度の 3D
表示システムオングラス液晶ディスプレイ、SAMSUNG SDI より縦横立体視可能な、2.2 型
QVGA LCD、LG Philips より CeBIT 2004 でヘッドトラッキング技術を搭載した 19 型と 23
型ワイドの 3D ディスプレイの発表があった。
多眼ディスプレイは Philips より多眼ディスプレイ用の ON/OFF 可能なアクティブレンチ
キュラーレンズの発表がされた。
超多眼/光線再生方式は光学系を工夫した画素の変形二次元配列の開発が行われ 72 眼
の超多眼/光線再生ディスプレイの発表があった。
i. 無機 EL
無機ELディスプレイ分野では今年度は iFire 社、三洋電機社および大日本印刷社の共
同開発により、色変換方式(CBB: Color by Blue)を利用した 34 型 W-XGA フルカラーEL デ
ィスプレイが試作発表されており、今後カラー蛍光体材料の開発進展により、単純マトリ
クス構造の大画面ディスプレイ、フルカラー透明ディスプレイなど実用化が期待される。
j. TFT 駆動技術
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今年の LCD 駆動技術は高速応答性に優れた OCB(Optically Compensateted Bend)表示モ
ードにおいてフィールドシーケンシャル表示方式の改良が報告され、この OCB モードを使
用して動画表示特性を改善したパルス駆動方式が報告されるなど高速応答性の進展がみら
れた。
有機 EL 駆動技術は ①デジタル駆動として半導体エネルギー研究所とシャープから有機
EL で最もシンプルな 2TFT ピクセル回路で構成する MAS 法(Multiple Addressing Sequence )
の発表 ②アナログ駆動ではサムソン SDI より TFT の特性バラツキその補償方法としての電
流プログラム法と電圧プログラム法の技術改善の発表などコスト低減につながる技術進展
がみられた。
k. 動画表示技術
MPRT (動画応答時間,Moving picture response time) が 14 年度以来提案されており,
実用的な MPRT 測定器も開発されている。16 年度はこれらによる測定データの収集・分析
が進むとともに,測定法としての詳細部分の改善と標準化が進められた。また MPRT 以外の
新たな評価指標の提案もあった 。PDP の代表的な動画質劣化要因,動画偽輪郭(Dynamic
false contour, DFC)の改善に関連していくつかの発表があった。
l. 薄型 TV リサイクル
ブラウン管テレビについては、リサイクルの技術や回収システムなどの社会環境が確立
されているが、薄型テレビについては検討が始まったばかりである。薄型テレビの製品寿
命は 10 年程度といわれ液晶と PDP を合わせて廃棄台数が 100 万台になるのが 2013 年とさ
れリサイクルに配慮した設計やリサイクル手法の技術確立、並びに社会環境整備が急がれ
ている。
(v) ヒューマンインタフェース
本年度は、(1)イメージセンサデバイス、(2) ITS(災害と交通)、(3)光バイオメトリクス
(個人認証への光応用)、(4)画像入力バイス・機器、(5)ウェアラブルコンピュータ、(6)
ユビキタスコンピューテイング、(7) AR(拡張現実感)、 (8)在宅安心・安全サービス関
連技術の動向についてそれぞれの最近の技術動向を調査した。その要旨を以下に記す。
a. イメージセンサデバイス
画素の縮小化が一層進み、CMOS と CCD ではその性能は拮抗している。デジタルカメラと
携帯電話が引き続き牽引役となるが、さらに ITS やセキュリティなどの大きな市場への期
待が高まっている。これらの応用では高機能化が重要となってくる。その点では CMOS イメ
ージセンサが圧倒的に有利となるので、その開発は一層加速される。
a.1 基本性能の向上
画素サイズの縮小化と高精細化が一層進んでいる。画素サイズは CCD では 2μm 台となっ
ている。CMOS では同等画素数で消費電力 1/5 が実現されている。高精細化では、1000 万画
素以上の CMOS センサがデジカメに搭載されるようになった。CCD でも 400 万画素の携帯電
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話用カメラ搭載例が発表されている。
a.2 高機能化
最近イメージセンサの新たな市場として、車載応用、セキュリティ、ID 認証、医療バイ
オ応用などが開けつつある。次の 4 分野への応用が進んでいる。すなわち、(a) 広ダイナ
ミックレンジイメージセンサ、(b) ID 認証用イメージセンサ、(c) 医療・バイオ応用イメ
ージセンサ、(d) 複眼光学系イメージセンサ。
b. ITS(災害と交通)
b.1 高度通信インフラの整備
監視カメラの動画像による広域監視や画像処理センサとしての映像利用のニーズが急増
している。国土交通省は、本省-各地方整備局-事務所-出張所の間を光ファイバで接続
し、現場のデータや映像を収集している。
b.2 情報収集の高度化・多様化
(a) 画像処理:カメラおよび計算機の性能向上と画像処理アルゴリズムの改良により、
道路監視用途に画像処理が使用されるようになってきている。
(b) 光ファイバセンサ:トンネル内に敷設された光ファイバセンサによって、温度分布
を求めることができる。火災検知だけでなく通常時の温度管理にも利用できる。一
方、低温も光ファイバセンサで検知できる。
b.3 情報管理の高度化
交通中央は、カメラ映像による交通流、事故や災害などの異常事象の目視管理、気象・
地震センサなどのセンサによる数値管理等の機能を持つ。交通流の把握支援機能として大
型表示装置による情報共有などが行われている。
b.4 情報提供
最近は携帯電話の普及が著しく、情報提供メディアとして使用する例が増えてきている。
c. 光バイオメトリクス
c.1 非接触光学式静脈センサの応用製品
近年、静脈パターンを使った認証が注目されている。近赤外線を照射すると静脈だけが
黒く映るという特性を利用して、撮影画像から静脈パターンを抽出し、あらかじめ登録し
たパターンと照合することで認証を行う。製品例として、(a)手のひらをかざして本人認証
する静脈認証ICキャッシュカード、(b)指を使って静脈パターンを検出するパソコンUS
B接続端末、(c)手の甲静脈パターン認証システム、等がある。
c.2 指紋認証ができるユビキタス製品
個人情報は個人が管理というコンセプトの実現に向け、次のようなパーソナル製品が出
現している。すなわち、(a)ノートパソコンと携帯電話の指紋認証、 (b)USB メモリ、カー
ドと指紋認証、 (c) ID/パスワードの自動入力マウス、キーボード、等である。
d. 画像入力デバイスと機器
画像入力技術の最近の応用動向として、(a)デジタルカメラの光学系、(b)携帯電話用小
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型デジタルカメラの光学系、(c)カメラモジュールの小型化、(d)バイオメトリクスセンシ
ング装置を取上げた。デジタルカメラの画素数増加は、コンパクトカメラで 500~600 万画
素、一眼レフカメラで 1,000 万画素超が目安になってきた。携帯電話用カメラの CCD・CMOS
のチップサイズの小型化は、機器の小型化、コスト低減に大きな効果が見込めるが、単純
な高密度化・小型化だけでなく、SN の向上、撮影画像の処理を含めた画像処理の高速化・
高度化などの開発も必要になる。ここ数年来の画像入力技術は、高密度センサの開発にリ
ンクしたデジタルカメラの新製品開発に牽引されてきたとも言えるが、携帯電話機へのデ
ジタルカメラの搭載による新しい応用製品の出現など、さらに幅の広がりも見えてきた。
e. ウェアラブルコンピュータ
e.1 超小型・双方向無線センサモジュール Ni3
あらゆるセンサに対応できる超小型の無線センサモジュール Ni3 が開発された。Ni3 は、
腕時計サイズのケースに組み込むことができる。ウェアラブル装置として利用することが
できる。電源には、環境負荷を考慮して太陽発電を利用したマイクロ電源を検討している。
e.2 電子本端末
本の形をした端末を使って、書籍データを表示して読む電子本端末の構成技術は、ウェ
アラブルコンピュータを構成する上でも重要な技術である。代表的な2種類の電子本端末
として、(a)電子ペーパを用いた電子本端末(LIBRIe)、(b) 記憶型液晶を用いた電子本端
末(∑Book)
、を取上げた。
f. ユビキタスコンピューティング
f.1 C-Blink:携帯端末とユビキタスシステムの連携に向けた光信号マーカ
実世界におけるユーザや周囲事物の ID と位置を特定するための光信号マーカを用いる
ためには、特殊な光源デバイスをユーザに付帯させる必要があり、この点が実システム構
築時の大きな課題となる。C-Blink は、この課題を解決するために開発された光信号マー
カ方式である。C-Blink は多くのユーザが既に所有している携帯電話などの携帯端末ディ
スプレイを光信号発信源として利用可能とする。
f.2 可視光通信技術
可視光通信は、光の照射範囲を視覚的に把握することができるという特徴がある。可視
光源は様々な場所に設置されているため、可視光源に通信機能を付加するだけでワイヤレ
ス環境の構築が容易である。応用分野として、照明光、ユビキタス、ITS の 3 つの方向性
を可視光通信フォーラムで挙げている。他の照明や太陽光などとの干渉の問題、規格の標
準化やアップリンクの通信手段などの課題が残されているが、光ならではの特徴を持つ通
信方法である。
f.3 人物領域抽出技術―プライバシーに配慮した画像配信
ウェブカメラを街頭に設置し、街頭のライブ映像をインターネット配信するサービスが
行われているが、あまり詳細な映像を配信すると、プライバシー上の大きな問題となる。
そこで、映像から人物の領域を抽出し、自動的にモザイクをかける技術が研究されている。
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これに関して、画像処理を用いた方法が、店舗内の商品棚の監視用に研究されている。ま
た、熱画像カメラを用いた方法が研究されている。逆に周囲の環境を知られたくないとき
のために、背景にモザイクをかける手法の研究も行っている。
g. 拡張現実感
拡張現実感(AR)は基本的に現実の世界を対象としており、その応用範囲は広い。具体
的には、医学、機器保守、情報注釈・情報可視化、建築デザイン、博物館案内、作業計画
支援、エンターテイメント、軍事等、幅広い分野での応用が考えられている。拡張現実感
の要素技術の中でもトラッキング技術はキーテクノロジーと言える。
トラッキング技術はユーザの視点位置・視線方向をリアルタイムで計測する技術である
が、現在までに様々な方法が提案されている。代表的な方法として、(a)信号到達時間差方
式、(b)マーカ方式、(c)自律センサ方式、(d)機械的リンク方式、(e)マーカレス方式、(f)
前者を組み合わせたハイブリッド方式、がある。その中でも,ビデオカメラ等のビジョン
センサを用いたものが主流となっている。ビジョンセンサを用いたトラッキングには,大
別してマーカ方式とマーカレス方式があるが、マーカレス方式は、マーカを環境中に貼付
する必要がないという大きなメリットがあり、実用化に適している。マーカレス方式を実
用化していくためには、小型軽量、高解像度、低歪みレンズの使用、低消費電力のビデオ
カメラと高速な画像処理ハードウェアが必要になる。
h. 在宅安全・安心サービス
「犯罪の増加と生活空間の安全と防犯カメラ」、「自然災害の対応で重要性を増す映像情
報」、「交通事故による災害の軽減と映像情報」、「日本社会の不安の増大と監視カメラの時
代」、について最近の動向を調査した。映像監視装術機器、サービスの事例としては以下の
通り。
h.1 ペットやロボットの視線・視角
(a)ワンダフルショット、(b)ロボット店員、(c)留守番宅を守る「番犬」アイボ、の3つ
を取上げた。
h.2 ネットワークカメラ
ネットワーク上の PC からカメラにアクセスすることにより、Web ブラウザで最大 4 台の
カメラを同時にモニタリングでき、PC や携帯電話からカメラを制御して撮影方向を変えら
れるネットワークカメラが実用化されている。
h.3 車載監視カメラで交通事故と犯罪の予防
Witness センサ CCD カメラは、G センサ、フラッシュメモリを内蔵した自動車版フライト
レコーダであり、運転席前面のバックミラー付近に取り付けられる。専用のレンズを搭載
し、車載用として対光性等の違う特殊 CCD を採用している。加速度センサを内蔵し、約 0.4G
以上の衝撃や急ブレーキ、急ハンドル時などに警告音が鳴り、事故の発生前 12 秒間と発生
後 6 秒間の画像と、速度や衝撃の大きさが自動記録される。
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(vi) 加工計測
加工計測の技術動向調査は、光源技術として「パルスファイバレーザ」、「Yb ドープレー
ザ」、加工技術として「レーザ・アークハイブリッド溶接」、フェムト秒応用の「微小周期
構造応用」、
「微小ドットアレイ」を取り上げた。今回、新たなテーマとして「加工技術の
学会発表動向」を取り上げた。計測技術では、90nm 世代に向けた「マスク検査装置」、「計
測における位相制御技術」を取り上げた。また、光技術動向調査団による韓国の加工計測
に関する報告も紹介した。
a. 加工用光源技術
「パルスファイバレーザ」は、高出力化、高輝度化などの進展、また、製造工程やメン
テナンスの単純さなどの点から、市場の広がりを見せている。ここでは、Q スイッチレー
ザや類似の動作モードのレーザに関して技術例や動向を報告した。ここでは、パルスファ
イバレーザの製品レベルの一覧、変調光源のファイバ増幅器による増幅について、パルス
動作のファイバレーザ発振器について、高出力化の展望などを解説した。
「Yb ドープレーザ」は、高効率・高出力レーザ光源として期待され、多数のホスト材料
が研究・開発されている。ここでは、ホスト結晶として、Yb:YAG レーザ、他のホストの
Yb ドープレーザ、Yb ドープセラミックレーザ、Yb ドープ増幅器について解説した。セラ
ミックレーザは単結晶に比べて大型化が容易であり、各種特性も同等以上であることから
注目されている。
b. 加工技術
「レーザ・アークハイブリッド溶接」は、レーザ溶接、アーク溶接の欠点を互いに補完
し、溶込み深さ増加、溶接速度増加、ポロシティ減少、外観改善、レーザ位置の裕度拡大
などが可能な溶接法として世界的に研究されている。ここでは、YAG-TIG、YAG-MIG 溶接に
ついて、溶接の結果と溶接現象を解説した。
ダイヤモンドライクカーボン膜は広い応用を期待されているが低密着性が課題である。
「微細周期構造応用」では、フェムト秒レーザで形成される微細周期構造がその密着性を
改善する機能について紹介した。
次世代の重要なレーザ加工技術としてフェムト秒レーザを用いた物質加工が研究されて
いる。
「微小ドットアレイ」では、同研究で見出された、微小ドットアレイの作製の概要と
派生技術、応用及び従来手法との比較について解説した。
c. 加工技術の学会発表動向
過去 5-10 年間の応用物理学会、レーザ学会、溶接学会、精密工学会におけるレーザ加工
関連の統計をまとめた。応用物理学会、レーザ学会に関しては、過去 10 年間のフェムト秒
レーザ加工発表件数の推移と各年のトピックスがまとめられている。1997/98 年から発表
数が増加し、ここ 2-3 年は横ばい状態となっているのが分かる。溶接学会、精密工学会に
関しては、フェムト秒加工関連の講演が少ないため、用いられたレーザの種類や加工対象
材料に対する講演件数の変遷がまとめられている。
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d. マスク検査装置
TeraScan シリーズのマスク・レチクル欠陥検査装置を紹介する。従来機が 130nm~90nm
対応だったのに対し、TeraScan は 90nm 世代以降をターゲットとしている。最先端の半導
体リソグラフィは、パターンサイズが露光用光波長の半分以下になっている。そのために
レチクルに対する精度、複雑さなどの要求が厳しくなっており、その厳しさがレチクル検
査装置へも要求されている。本稿では、TeraScan シリーズの基本性能とともに、新たなニ
ーズに対応した機能も紹介した。
e. 計測における移送制御技術
スパイラル位相板(Spiral Phase Plate)は二次元画像のエッジ強調の機能素子やレーザ
ビーム波面変換素子への利用を提案されている。「Spiral Phase Plate とその応用」では、
その構造、それらを利用した最近の技術について紹介した。
「光 Delay Line」(光遅延装置:ODL)は、光計測や超短光パルスの分野で研究されてきた
が、最近では、光波コヒーレンス断層画像測定法の研究進展に伴って、様々な ODL が研究
されている。ここでは ODL を直線走査方式、回転走査方式、ファイバ伸張方式、フーリエ
変換方式に大別して、原理及び特徴について述べた。
f. 韓国における加工計測技術
11 月に光技術動向調査団が韓国の光産業/技術の現状を調査した。この中で、加工・計
測関連として3つのベンチャー企業 EO technics、Huvitz、SNU Precision、および、GIST
(光州科学技術院)を訪問した。大企業を含めた韓国全体を俯瞰することはできないが、
主観的には、加工については何に使えるか具体的に分かったものだけに取り組んでおり、
計測についてはバラエティに富んでいるとの印象である。
ベンチャー3社はいずれも急発展中の企業であり、設計・ソフトウエア・製造に高い意
気が感じられる。製品は輸出が主であるが、光源・光学系などのキーデバイスは日本、欧
米からの輸入にたよっている。
GIST ではレーザ応用として、Ti の微細加工、3次元微細加工、光化学エッチング加工な
ど微細加工、精密計測技術として反射光波の振動モードを解析し、機器の状況を遠隔測定
する研究などが行われていた。また、フェムト秒パルスを用いた科学技術の研究を推進し
ている。ペタワットレーザ(パルス幅 30 フェムト秒)などの設備導入が 6 年計画で進んで
いる。20 TW(テラワット)レーザが既に設置されており、今後、100 TW、300 TW、1 PW
へと増幅器を追加する計画で、長期計画では、自由電子レーザや放射光施設もうかがえる。
完成時は世界で指折りの最先端研究施設になるであろう。
(vii) 太陽光エネルギー
太陽光発電産業は今年も大きな飛躍を遂げ、2003 年末には世界での生産量は 744 MW で
あり、2004 年末には1GW を超えると見られている。日本における総導入量においても 2003
年には 860 MW となり、2004 年には1GW を超えると予想され、2010 年の 4.8 GW の目標達
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成に向けて着実に導入量は伸びている。これらのことから、2004 年は太陽電池の業界にと
ってメモリアルイヤーと言えそうである。国内での需要は引き続き好調であり、国からの
補助金の割合が減少している中でのマーケットの動向は心強いものがある。もちろんこれ
には販売側のコストダウンと商品戦略の努力があることは忘れてはならないであろう。ま
た輸出も好調であり、特にドイツではプレミア価格(設置形態に拠るがおよそ 0.5~0.6
EUR/kwh)で電力を買い上げる制度が始まってから特に大型設備の導入が急激に増え、日本
を追い抜く勢いである。そのおかげで、今国内企業はいずれもフル生産でも受注に追いつ
かないという状態が続いているそうである。太陽電池の内訳は依然として結晶シリコンが
主流であるが、薄膜シリコン系も活気を帯びつつある。今年もシャ-プ、京セラ、三菱電
機、三洋電機等の結晶系シリコン太陽電池メーカが太陽光発電市場を牽引している。シャ
ープは 2005 年度には 400 MW にまで生産力を増強する方針を発表し、三洋電機、京セラ、
三菱電機でも 250 MW 前後まで生産能力を増強する方針を打ち出している。このような増産
体制の中懸念されるのがシリコンの原料問題であり、Solar Grade Silicon の増産体制も
整ってきたとはいえ、ここ 1~2 年で原料不足が起こるのではないかと予想されている。
2007 年までにトクヤマ、ワッカー、ヘムロック社が年産 500~2,000 トンまで生産設備を
拡充すると発表している。
今の技術では 1W あたりに必要なシリコン原料は 10g 強であるので年産 1GW とすると 1
万トン程度のシリコンを要することになる。そこで、今注目されているのは薄型化であり、
従来 350 ミクロン程度あったものが現在 200 ミクロン程度まで薄型化が進んでいる。今後
新たなスライス技術の進展と共に 100 ミクロン以下が射程距離内に入ってくるものと予想
される。
結晶シリコン系は大幅な効率向上はなかなか望めないが今年度多結晶シリコンで実験室
レベルではあるがフランホーファー研究所から 20.3%の効率が、京セラからは量産プロセ
スを用いた 150 ミリ角で 17.7%の世界最高効率を報告した。多結晶で 20%の効率を超えた
のは史上初の快挙である。単結晶では三洋が HIT 構造で量産プロセスを用いながら、基板
表面クリーニング処理およびアモルファス層を堆積させるときのプラズマダメージを低減
することにより 100 ミリ角で 21.5%を達成したと報告した。興味深いのはこのとき Voc の
向上と温度係数の改善が見られていることである。Sunpower 社は 21.5%のセル効率と
18.2%の世界最高効率を有するモジュールを発表し、フィリピンに 125 ミリ角で 20%の効
率のセルの生産を 5 月に開始した。年産は25MW の予定。
薄膜シリコン太陽電池では、カネカが中間層を有するハイブリッドプラスと呼ばれる構
造を有する 910 mm×455 mm の太陽電池モジュールで初期効率 13.5%を達成した。劣化後効
率についてはミニモジュールで 11.7%を達成した。基礎的なところではユニソーラが微結
晶シリコンの劣化が逆バイアス下で起こることを初めて見つけたが、原因は良くわかって
いない。三菱重工は産総研と共同で微結晶シリコンの量産化技術を開発し、40×50 cm2 の
中の要素セルで製膜速度2nm/s で 8.8%の単接合セルの作製に成功した。富士電機もはポ
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リイミド基板を用いたフレキシブル a-Si/a-SiGe 2 層タンデム太陽電池の事業化を 10 月よ
り開始した。
化合物薄膜太陽電池では米国の再生可能エネルギー研究所(NREL)が CIGS 太陽電池で世
界最高の変換効率 19.5%を達成し、20%にまた一歩近づいた。日本では昭和シェル石油が
CIGS モジュ-ル(3,720 cm2)で世界最高効率 13.2%を報告した。
有機系太陽電池が世界中で活発に研究されている。これまでの最高効率は産総研および
スイスローザンヌ工科大の 10.5%である。モジュール化も各国、各社で検討が始まってい
る。屋内使用での BIP のような応用には意匠性などの面で有利な部分もあるので今後が期
待される。課題は屋外での耐候性、長期信頼性であろう。特に紫外線による劣化は有機物
の本質的な問題である。また液体電解質の問題はゲル化などの固体化で対応するという試
みがなされている。九工大の早瀬らは 5 ミリ角ではあるがゲル化電解質を用いて 7%の変
換効率を達成している。
完全固体有機薄膜太陽電池も最近の進展は著しい。米国のプリンストン大では C60 と銅
フタロシアニンを用いたヘテロ接合型有機薄膜太陽電池で 5%の変換効率を達成している。
有機太陽電池の場合大抵発電層の実効的な厚みが極めて薄いため、電流を得るためには表
面積を増やすかマルチジャンクションにすることが必要である。同グループでは二層タン
デムで 5.7%の変換効率を得ている。
超高効率太陽電池ではシャープがリフトオフにより GaAs/InGaP の 2 接合薄膜単結晶太陽
電池において AM0 スペクトル下で 25%の効率を発表した。これは今後モバイル用途や宇宙
用途として注目される。更なる高効率化を目指して5接合や6接合といったセルも報告さ
れ始めている。このようなセルの場合ソーラシミュレータではスペクトル合致度の問題で
正確な評価が困難という重要な問題がある。
いよいよ京都議定書が発効され、本格的な CO2 削減に向けた動きが活発化する。日本は
もともと電力の二酸化炭素排出原単位が少ないので、太陽光発電だけでは目標達成は厳し
いと思われる。もちろん長期的には電化率を高めながら、かつ排出原単位の少ない電力を
増やしていく方向であるから、国内にも積極的に導入する必要はあるが、アジア諸国、特
に中国における排出原単位の低減のために太陽光発電の導入を積極的に支援することも産
業のマーケット拡大という点を考えても重要と思われる。
(viii) 医療福祉
3年という時限調査の最終年にあたり、医療における新しい技術、および生体機能計測
における動向調査を行った。また、人間以外の生物への応用として、光を農業や食品・食
料といった分野に応用しようとするアグリフォトニクス技術を取り上げ調査を行った。
医用・福祉・生体分野はきわめて広大で、3年間の調査では必ずしも十分とはいえない。
報告書ではトピックスの羅列になった感もあるが、それらを補間すれば、全体の雰囲気を
窺い知ることができるとも言える。今回の調査から、光学が産業として入っていきやすい
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部分とハードルが高い部分があることが判った。こうしたことを踏まえて今後はさらに系
統的な調査が必要であろう。
また、本年は、生体という範囲を拡大して、農業・食品分野における光学応用について
も調査を行った。これは人間の医療や QOL(Quality of life)に関する計測法が、食品や農
作物の品質管理における計測技術と共通する部分があると考えたからである。これらはま
ったく違う業界で交流はあまり行われていないが、今後光計測というキーワードで結びつ
けることができる可能性が高い。需要は大きいが医用・福祉分野と同じく共通の基盤を確
立していく必要がある領域といえる。
尚、本技術動向調査領域は、「生体医用光学ブレークスルー技術委員会」とも技術領域が
重なっている分野も多く情報交換を密にした。
a. 医療フォトニクス
はじめに、生体や環境にやさしい光硬化性材料について調べた。これまで生体親和性の
樹脂は手術の縫合糸や人工関節などに使われてきたが、近年新しい応用として、細胞培養
の基板に利用し2次元構造の人工細胞構造を作成する技術、3次元構造を利用したドラッ
グデリバリー、生体内での光硬化技術などが報告されている。また、レーザを用いた治療
応用としてレーザ鍼灸ともよばれる疼痛緩和を取り上げる。光線力学的治療法
(photodynamic therapy: PDT)においてはレーザ光源と色素の進歩で、より患者に負担の少
ない治療が行われるようになり、現在、表皮および管腔器官の初期癌治療に有効な方法と
して注目されている。また、ゲノムの解読が終了した次のステップとして、遺伝子から蛋
白質までの機能発現解析の段階に入っている現状と将来動向を調べた。
b. 機能計測フォトニクス
ここでは、生体可視化分子センサ、非線形顕微鏡、表面プラズモン共鳴センサ、音波・
光複合計測を取り上げた。
生体機能計測を行うためには、有効なプローブの開発が不可欠である。蛍光共鳴エネル
ギー移動(fluorescence resonance energy transfer: FRET)現象を利用したセンサは生体
情報の時間的、空間的な変化を計測する方法として有望である。生体の非線形光学効果を
利用することにより、染色などを必要としない非線形・多光子顕微測定法の進展について
は引き続き調査した。また、光と他の物理量との相乗効果を利用した計測法として、プラ
ズモンセンサと音波複合計測を取り上げた。観測対象、精度、知りたい情報などに依存し
て使い分けると有効と思われる。音波と光の持つ欠点を補い、各々の長所を引き出して計
測に応用する音波・光複合計測に関して、その代表例である光音響法での生体計測・診断
と共に、超音波パルスによる光断層画像、レーザ誘起音を利用した生体組織のモニタリン
グと治療応用等を調査した。
c. アグリフォトニクス
アグリフォトニクスとは光を農業生産現場および食品・食料工業に応用しようとする技
術分野であり、検査、分析、栽培などが主な応用分野である。
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まず光を利用した食品非破壊検査方法について、紫外線、可視光線、近赤外光、遠赤外
光など光源の観点から、また、対象物、検出可能物質の観点からレビューを行った。次に、
圃場における光応用の現状と将来構想について農林水産省のプロジェクトを中心に調査し
た。X線蛍光計測、紫外線蛍光計測、赤外およびテラヘルツ計測などについて実際に応用
されている現状と問題点を紹介し、今後の可視光スペクトル解析の応用可能性についても
言及した。また、都市型農業としての植物工場の動向について、水、温度、二酸化炭素、
培養液などの要素に分けて現状の分析と問題点を抽出し、未来の都市型農業ビル内田園化
の可能性について検討した。特に、光源として注目されている LED の新利用法について、
実際に稼動しているプラントの状況、新たなる応用の可能性として、新生児黄疸光線治療
や青カビ抑制、白血病細胞破壊、集魚灯への LED の適用例と将来動向についても調査を行
った。
(ix) 環境フォトニクス
環境分野への光(技術)応用を調査する“環境フォトニクス”分科会も2年目を迎えた。
昨年の「環境改善」と「エネルギー」に続き、本年度は、「環境モニタ(計測)」と「環境
負荷低減技術」を中心に、「環境改善技術」のトピックスを加える形で調査を行った。
a. 環境モニタ(計測)
計測プローブとして光を用いる応用では、光の物理的な特性に基づいた、遠隔到達性、
高速応答性、時間・空間分解能、エネルギー(スペクトル)分解能といった特徴を直接生
かせる。また、太陽光エネルギーの低密度・時間変動、高強度の光発生に必要なエネルギ
ー効率・コスト等も問題にならない。この点は、「環境」計測の場合も共通である。
ここでは、局所的なモニタ技術(光センサ)から、地球環境規模のモニタ技術(レーザ
レーダ、衛星搭載センサ)にわたる事例を取り上げた。
a.1 レーザレーダ(ライダー)
レーザレーダでは、大気ガス成分(オゾン、水蒸気、二酸化炭素、メタン、窒素酸化物
等)やエアロゾルの濃度(分布)だけでなく、温度分布や風速分布等も観測可能であり、
環境モニタとして重要な役割を担っている。気球・航空機によるサンプリング観測に比べ、
3次元分布の直接観測が可能という大きな利点をもつ一方で、大型装置で可搬性には乏し
かった。近年の半導体レーザ、光ファイバ、波長変換等の技術革新により、小型・高信頼
の装置開発が進んでいる。
大気中エアロゾル粒子による光散乱のドップラーシフトを利用して風向・風速分布の計
測を行う CDL(Coherent Doppler Lidar)が実用化されている。最近、エルビウム添加ファ
イバレーザを光源・増幅器とし、その他の光部品も光ファイバで結合することで小型化・
高信頼化が実現された(全光ファイバ型 CDL・三菱電機)。全光ファイバの回路構成は、小
型・可搬・高信頼化を低コストで実現できるため、CDL 以外にも広く用いられるものと考
えられる。
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特定成分ガスの吸収波長に合わせたレーザ光(ON ライン)と参照光(OFF ライン)の強
度比率からガス濃度を観測する差分吸収ライダー(DIAL)も、メタン、オゾン、水蒸気、
二酸化炭素等の計測に用いられてきた。ガス吸収線に合致したレーザ光を高出力で発生さ
せる必要から、DIAL 装置は大型であったが、近年、都市ガス漏えいチェック等の用途に適
する小型・可搬型装置が試作された(日本ガス協会、サンディア国立研究所、ガステクノ
ロジーインスティチュート)。ON, OFF パルスのパルスペア発生に小型固体レーザ、波長同
調 に DFB(Distributed FeedBack)-LD を シ ー ド 光 と す る OPG ( Optical Parametric
Generation)を用いることにより小型化が実現された。完全に1人で携帯可能で、5 m の
距離から 10 ppm 程度の感度でメタンの検知・可視化が可能となっている。
温室効果対策として広域(全球)CO2 濃度分布計測が必要となっており、従来のパッシブ
型計測器に比べ、未知パラメータの影響がなく原理的に精度の高い計測が可能な DIAL が注
目されている。そのため、地表面からの反射を利用する、航空機や衛星に搭載可能な小型・
高信頼型の装置開発が進められている。
a.2 光(レーザ)を使った大気環境計測
大気環境計測では、SO2, NOx, CO に加えて、揮発性有機化合物(Volatile Organic
Compounds: VOC)や浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter: SPM)の観測が重要
となっている。その高感度・高分解能分析法として、レーザを用いた分光計測装置が注目
されている。
紫 外 パ ル ス レ ー ザ の 多 光 子 共 鳴 イ オ ン 化 法 ( resonance enhanced multi-photon
ionization: REMPI)と質量分析装置を組み合わせたレーザイオン化質量分析法は、高感度
と高い選択性を合わせ持つ分析法として、極低濃度(ppmv から ppbv レベル)で多くの異
性体等を区別して分析する必要があるダイオキシン類などの分析法として注目されている。
イオン化光源として小型固体レーザ出力の高次高調波の真空紫外光を用いることにより、
さらなる小型化・可搬化が図られている。
大気中特定化学種(NOx や SO2)の高感度分析法として、レーザ誘起蛍光(LIF)が用い
られてきた。OPO 等の技術の進展により、小型・高感度(pptv レベル)で航空機に積載可
能な装置の開発が進められている。
キャビティリングダウン分光法(Cavity Ring-Down spectroscopy: CRDS)は、反射率が
1に極めて近いミラーで光吸収セルを構成し、実効光路長を km 単位にする分光法である。
従来の吸収法に比べて、1000~10000 倍の感度で、検出光源の変動の影響も受けない特徴が
ある。
a.3 レーザを用いた植物プランクトン観測
植物プランクトンのもつクロロフィルなどの色素に注目して、航空機や衛星から植物プ
ランクトンの分布測定を行うシステムが研究されている。航空機や船舶からレーザを海面
に照射して色素類からの蛍光を測定する実験が行われ、光合成作用の強弱による影響が問
題点として指摘されている。
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a.4 人工衛星搭載センサによるクロロフィル分布観測
人工衛星搭載の可視光放射計により、太陽光の海面反射、海中からの散乱光を観測し、
分光特性から植物プランクトンのクロロフィル色素濃度等を推定することができる。1978
年から運用された CZCS(沿岸域海色走査計)を始めとする海色観測によって、大気補正や
クロロフィル-a 濃度推定のアルゴリズムが開発された。現在、後継衛星搭載の海色観測デ
ータを用いて、全球規模で 1 km 空間分解能のクロロフィル-a 分布図の利用が可能となっ
ている。
a.5 酸素濃度計測光センサ
ある種の色素化合物が光励起されて発するリン光は、特定の分子と衝突することによっ
て消光される性質がある。これを利用して特定分子の濃度を測定する装置がオプトード
(Optode)と呼ばれる。特に酸素センサとしての応用が進んでおり、ルテニウム錯体や白
金ポルフィリン等が色素として用いられている。電極反応を用いた従来型センサに比べ、
機械的強度が大きく、プローブの小型化が可能、測定対象も広い(溶液、気体、深海)等
の特徴がある。
オプトード酸素センサとしては、ファイバ型センサがもっとも製品化が進んでおり、生
体・食品等の用途にも使用されている。センサ部分を圧力容器に組み込んだものは、長期
海洋観測用に 2004 年 12 月時点で全球で 1500 台以上が稼働している。
オプトード色素を対象に塗布して、2次元の酸素濃度、あるいは圧力のセンサとして用
いる二次元酸素センサが開発されている。2次元(物体表面)の圧力分布を任意の空間分
解能で可視化できるため、広範囲の応用が期待されている。日本でも MOSAIC(Molecular
Sensors for Aero-Thermodynamic Research)計画として総合的な研究が行われた。
b. 環境改善技術
b.1 光触媒利用放熱部材
光触媒の親水性作用を利用して、少量の散水で対象物(建築資材)表面に水膜を作り、
効率的な蒸発冷却作用を実現する方法が提案されている。東大先端研を中心とするコンソ
ーシアムにおいて、放熱部材用の光触媒コーティング剤の開発と、放熱効果の評価方法、
実証住宅による検証など、実用化を目指した開発が進められている。
b.2 残留性有機フッ素化合物の光触媒分解
パーフルオロカルボン酸やパーフルオロスルホン酸に代表される有機フッ素化合物は、
その特異な性質と安定性から、界面活性剤としてコーティングや半導体製造に利用されて
きたが、2000 年ごろから生体残留性や蓄積性が指摘されてきた。有機フッ素化合物は、極
度に化学的安定であるため、分解処理が非常に困難であった。
パーフルオロカルボン酸について、ヘテロポリ酸触媒(H3PW12O40 等)を用いて分解可能
であることが報告された。電子線放射などの方法では、パーフルオロメタンなどの温室効
果の大きい副生物の生成が懸念されるが、ヘテロポリ酸触媒による光触媒分解では、有害
な副生物を産生せずに、CO2 とフッ化物イオンまで完全分解できることが特長である。
- 53 -
c. 環境負荷低減技術
c.1 廃ガラスからの発光材料合成
高輝度蛍光や畜光性能を示すガラス材料が開発されてきたが、少量の機能性用途を想定
した素材であった。それに対して、多様な成分からなる廃ガラスを原料として製造した多
孔質ガラスに、発光イオンをドープ焼結する方法で、低コストで畜光・蛍光ガラス材料を
合成する方法が開発された。建材や道路資材等に「比較的低コストで、大量供給」される
「アメニティフォトニクス材料」として開発が進められている。
c.2 光を用いた廃プラスチックの選別
様々な分野でリサイクルが進められているが、プラスチック材料では、その多様性が、
選別処理のコストを押し上げる原因となっている。新しいプラスチックの識別法として光
学的方法が注目されている。機械的識別法やX線と比較して、低コスト、小型化が可能(近
赤外線の透過・反射方法)、形状や表面状態の影響を受けにくい(紫外光照射による蛍光法)
という特長がある。
c.3 マイクロ波を用いた環境調和型化学反応
広義の光技術として、マイクロ波を取り上げた。マイクロ波加熱は、熱伝導や対流を利
用する常法と異なり、物質全体を同時・短時間に加熱できる。加熱時間短縮(〜1/1000)
による顕著な省エネルギー効果に加え、合成プラント自体の小型化が図られる。また、収
率や選択性に対する特異な効果(非熱効果)が見られることも報告されている。
一般の化学反応へは、均一加熱による核形成、成長制御を利用したナノ粒子合成(金属ナ
ノ粒子、金属酸化物ナノ結晶、金属カルコゲナイドナノ結晶)、各種の有機合成反応
(Diels-alder反応、Ene型反応等)として応用が図られているが、環境浄化分野でも、活
性炭上の吸着有機塩素化合物の分解、土中のPCB分解、活性炭担持白金を触媒として用いた
還元的脱ハロゲン化反応、焼却炉排出飛灰中のダイオキシン処理等が提案されている。
(x) 照明
照明分野は、従来、光材料・デバイスの部門に加えられ調査されてきた。これは、キー
デバイスが、窒化物半導体材料・デバイスの開発によって進展してきたことによるもので
ある。本年度(平成 16 年度)から 3 年間の時限で分科会が独立して設立されたのは、発光
効率、光束、照度や演色性といった照明工学としての要請をどのように解決していくのか
という課題が顕在化してきたためである。
固体照明の時代は幕を開けたばかりであり、ここから新しい技術、サイエンスと産業の
芽が出て行くことを見守りたい。
a. 白色 LED の現状と課題
青色 LED と青色の光を吸収して黄色の光を出す YAG 蛍光体を組み合わせた白色 LED では、
光取り出し効率の改善により 20mA 駆動で光出力 3.6mW、発光効率 50lm/W を達成している。
新規パケージとチップサイズ 1mm□の青色 LED により、350mA 駆動で光出力 42 lm、発光効
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率 32 lm/W というパワー白色 LED を 2004 年に製品化するに至っている。高効率化および高
出力化は今後も続き、蛍光灯の効率 75 lm/W に追いつくことはそれほど遠くないだろう。
コストが大きな課題である。
光源に 400nm 以下の近紫外発光の LED を用い、複数の蛍光体と組み合わせることで高演
色性白色 LED が得られる。380nm~390nm の近紫外発光 LED と4つの蛍光体との組み合わせ
による白色 LED の平均演色評価指数は 91 と最高の値を示し、Green 蛍光体を含まない 3 つ
の蛍光体でも指数は 88、光度は 240 から 280 へと大幅に増加し、高い演色性と高い光度を
両立するあたらしい白色 LED が実現されている。
b. 紫外 LED 及び蛍光体の開発動向
発光波長 365nm において貼り合わせ構造を用いた GaN フリーUV-LED が提案された。p 電
極に高反射率を有する Ag、n 電極をメッシュパターン、n-Contact 層表面に凹凸加工を施
した 1mm□チップを低熱抵抗パッケージに実装。ピーク波長 365nm、順方向電流1A におけ
る発光出力は、パルス電流及び DC 駆動時にそれぞれ 1.0W、0.87W で、シリコーン樹脂の樹
脂封止パッケージでは、パルス電流駆動1A における発光出力 1.5W、外部量子効率 44%、
電力変換効率 34%が達成された。
波長 310nm 以下の短波長域での LED の効率向上が顕著で、外部量子効率として 0.1%を越
えるものが多く報告され、波長 280nm において外部量子効率 1%が実現された。紫外 LED の
高効率化には、高 Al 組成の AlGaN 結晶に対する低欠陥化技術とドーピング技術の開発が重
要で、Al 組成 0.5 から 0.7 を超える AlGaN に対する低転位化およびn型ドーピングに関し
て優れた結果が報告され、p型ドーピングでは低抵抗の結晶は Al 組成 0.4 程度以下でしか
得られていない。
LED と蛍光体とを組み合わせたタイプの光源は高輝度化、すなわち蛍光体の高効率化が
望まれている。青色 LED 用の黄色発光蛍光体として、最近、色温度を低くし、電球色発光
に近づけたαサイアロン黄色発光蛍光体が開発され、色温度 2,780K、36.3 lm/W の白色効
率を得ている。近紫外発光 LED 用蛍光体では、蛍光灯に使用されている現用蛍光体以外に
新しい蛍光体を見出すのが難しいが、赤色発光蛍光体では La2O2S:Eu 酸硫化物蛍光体が開
発改良され 20%近く効率が向上している。
c. 白色 LED を用いた照明装置
LED ヘッドランプはいくつもの試作品が発表されている。使用される LED は数百 mA 程度
の電流で駆動できる高出力型の 1mm□チップが多い。LED 光源パッケージは、熱伝導に優れ
たセラミックス基板上に四つの LED チップを実装したタイプで、投入電力 6W のとき約 200
lm である。すれ違い配光用のユニットだけを光束の低いタイプの LED 光源パッケージ 10
個で置き換え場合、駆動回路や冷却ファンを含む 75W の消費電力で 900 lm の路面光束を達
成している。
LED はカラー制御や点滅制御が他の光源に比べ容易かつ多彩であり、建物などにビルト
イン設置したり、高所などのメンテナンスが困難な場所に用いられている。LED の省メン
- 55 -
テナンス性をフィットさせた防犯灯・街路灯、太陽電池や風力発電機と組み合わせて配線
レスとして、設置の容易性や災害への対応を訴求している。交通分野では、道路線形表示
灯、中央分離帯用障害物表示灯、交差点用道路鋲、誘導表示灯などに LED が用いられてい
る。
屋外照明として白色 LED で演出されたイルミネーションがある。大幅な省エネ、熱の発
生も少なく、安全性も大幅にアップし、樹木への影響も少ない。ガラス面上のライトアッ
プでは、ガラスの透明感を維持しながらの演出が可能となる。LED が小型で外観に違和感
がなく設置でき、テナントビルの外壁照明に幻想的な演出も可能となる。ガラスの角柱の
内部に LED を取り付け、光るオブジェとして、照明用ランプの口金をつけた LED 電球とし
て、使用されている。
白色 LED をプラスチックゴーグルに取り付けた外科手術用照明装置が考案・試作され、
パワー白色 LED を 17 個並べ、その上に集光するレンズを有する LED モジュールを用いた
LED ゴーグルライトが実現された。2004 年夏、祇園祭に歴史上はじめて白色 LED モジュー
ルを照明装置として LED 照明が「文化財を光の熱が傷めない照明デバイス」として、高さ
26 メートルの菊水鉾をライトアップした。
d. LED 計測の標準化
LED の光度測定を実施する上で、CIE(国際照明委員会)は新たな考え方「平均化 LED 光
度」を導入した。光源の光度値は、別途値付けされた標準光源との比較測定により求めら
れ、標準光源は温度制御機構を内蔵している。一般照明用光源や LED のエネルギー変換効
率の評価には、全光束の測定が重要となり、球形光束計による簡便法が適用されることが
多く、値付けされた光束標準 LED との比較測定により全光束を求めることができる。CIE
において LED の光測定方法について議論が継続されている。
e. 有機 EL 照明デバイスの現状
蛍光材料の有機 EL 素子では、1,000cd/m2 で 10 lm/W、初期輝度 3,000cd/m2 からの半減
寿命 5,000 時間が報告され、緑色リン光有機 EL 素子では、輝度 100cd/m2 時に約 80 lm/W
(外部量子効率 19.3%)という値が報告されている。補色関係にある 2 色、3 色の発光を
混合することで白色発光有機 EL が得られる。15 lm/W の白色発光有機 EL、厚み 0.5mm 超薄
型の白色有機 EL、15cm□有機 EL パネルを 16 枚並置した 60cm□サイズの発光器具、フィル
ム基板を利用したフレキシブル白色有機 EL 等が実現されている。
(イ) 光技術動向海外調査
(i) 調査の概要
本年度の海外調査は、工業国として台頭著しい韓国が選ばれた。韓国は、日本にとって
強力なライバルであり、パートナーである。本調査では、表に示す日程でソウル市とその
近郊、大田市、光州市の複数の地区にある大学・研究機関、ベンチャー企業等を訪問し、
光分野の先端技術の他に、韓国が工業国として成長している理由、成長の特徴や課題など
- 56 -
も調査した。表中、No.8~13 は訪問先そのものだけで無く、光産業の大工業団地を目指す
光州光産業クラスタの調査も兼ねた。なお、調査団は総勢 10 名(団長 中野第 1 分科会主
査)であった。
(ii) 調査結果
調査結果は報告書にまとめた。報告書では、訪問先毎に技術や研究、業務内容などを述
べ、次に主要分野での特徴や課題を横断的にまとめた。また、付録として、韓国の経済指
標などを掲載した。以下に主な分野での概略を述べる。
a. 光州光産業クラスタの状況
1999 年からの計画で、2010 年には韓国の光産業を世界の5指に入れるべく、国と光州市、
民間の資金で約 20 km2 の敷地に大学・研究所・企業を集結させるものである。光技術の分
野で国の援助を受けたければここに来なければならないという、強烈なプロジェクトであ
る。予算は、2000~2003 年の 4 年間(Phase I)に約 350 億円が投入済み。現在は Phase II
として光通信機器・部品、材料などの企業育成の他、LED バレー計画、FTTH モデル都市計
画を推進中。安い土地リース料、優遇税制の他、資金・技術・マーケティングに至る支援
を受けられる。クラスタ内には GIST、UFON(Ultrafast Fiber Optical Network)、KOPTI
等の研究施設、産業振興の KAPID がある。既に日本企業も進出している。2008 年の目標は、
雇用者数 35,000 人、生産額 5,200 億円であり、成功の暁には世界的光産業団地が出現する。
b. レーザ加工・計測の状況
加工に関して大学・研究所の基礎研究はポピュラーではない印象を受けた。理由として
は、高価な大出力レーザが必要なことや、国内需要が多くないことが考えられる。一方、
計測に関しては、アイデア次第で安価な光源を利用して高付加価値の製品ができるため、
光学部品の検査装置や物体の振動モードの遠隔計測など、種々の研究が行われていた。
GIST にある APRI(先端光技術研究所)では Ultrashort Quantum Beam Facility と称する
研究施設を立ち上げ中である。そこでは、フェムト秒パルスを用いて、近接場光利用、光
加工、短波長光源開発、非線型結晶波長変換、X 線レーザ、超高強度物理など、広範囲の
研究が計画されている。設備導入は6年計画であり、2 年目の 2004 年は 20TW(テラワット)
レーザが設置されていた。今後、1PW(ペタワット)まで増幅器を追加する計画である。
c. 医療・精密機器関係の状況
ベンチャー企業であるレーザ加工機メーカの EO TECHNICS 社、眼科用検査機械メーカの
Huvitz 社、超精密光学検査機器メーカの SNU Precision 社を訪問した。これらはバブル
期に数多く作られたベンチャー企業のうち、成功し軌道に乗っている会社の一部である。
こうした優良な会社に対しては政府の手厚い保護と援助があるようで、市場原理に基づく
成長はこれからのように思われた。いずれも、光源や光学系などは輸入し、設計・組立を
主としている。技術レベルは必ずしも世界トップではないが、低価格、使い易さなどで高
いシェアを有している。勤労意識、バイタリティーは強く感じられた。
- 57 -
訪問先
No
訪問日
訪問先名称
所在地
1
2
11 月 12 日
EO TECHNICS. Co., Ltd.
HUVITZ Co., Ltd.
安養市
軍浦市
3
11 月 13 日
SNU Precision Co., Ltd.
始興市
4
5
6
7
8
9
11 月 15 日
韓国科学技術研究院(KAIST)
韓国電子通信研究所(ETRI)
ソウル大学
韓国科学研究技術院(KIST)
CHOSUN UNIVERSITY
韓国光技術院(KOPTI)
大田市
10
11
11 月 16 日
11 月 17 日
11 月 18 日
ソウル市
光州市
光州科学技術院(GIST)
韓国光産業振興会(KAPID)
12
WON SEMICONDUCTOR CORP.
13
OE Solution Co., Ltd.
(ウ) 光技術に関する特許動向調査
特許委員会は1996年度に特許庁の要請に応じて、光学機器(現審査一部)の光産業界の
コンタクト窓口として発足し、以降、ユーザフレンドリーな特許審査を指向する特許庁の
面接審査等の施策に協力すると共に、特許庁との懇談会や特許関連セミナーを開催し、特
許庁との相互理解を深めつつ、光産業界への知的所有権の普及活動に努めてきた。また、
光産業技術における知的財産に関する取り組みが、企業における事業戦略や商品戦略を構
築する上で極めて重要であることを重視して、平成13年度に開始した特許動向調査を平成
16 年度も継続して行った。
(i) 光技術に関する特許動向調査
2001年(平成13年)に開始した特許調査における定点観測的な光産業の調査に加えて、
「光産業の特許動向:ディスプレイ」、「光能動デバイス:光機能素子(光3R中継)」、
「光受動デバイス:フォトニック結晶ファイバ/導波路」、「表示デバイス:大画面、フ
レキシブルディスプレイ」(第5章1節)、「将来光デバイス:量子暗号通信」を新たに行
った。全体として5テーマ、17課題の調査および分析を行った。
光技術の分野における日本の特許出願は、国内はもとより、欧米での特許出願数の 9 割
近くを占めている。このような日本発の特許は、2004 年5月に策定された「知的財産推進
計画 2004」
(知的財産戦略本部:小泉総理本部長)においても科学技術立国における産業
技術政策の根幹と位置づけられている。将来ビジョンの実現のためにも、更なる知的財産
の活用とそれによる戦略が重要であることは言をまたない。
2002 年の「IT バブル崩壊」で光産業は停滞を余儀なくされたが、その後は順調に景気の
回復が見えてきている。それを支えているものが、
「新三種の神器」としてのデジタルカメ
- 58 -
ラ、ハードディスおよび平面型ディスプレイ(FPD)である。これらの光機器といえども、
FPD に見られるように生産技術の海外移転、特に韓国、台湾などのアジア勢の急激な追い込
みで、世界市場に占める日本のシェアが激減している。かの国の産業技術政策は、20~30
年前の日本の姿を髣髴とさせるものである。その対抗策として、当時、米国政府が打ち出し
てきた政策が、特許を利用した知的財産戦略である。日本においても、2004 年より政府主導
の「知的財産戦略本部」が稼動し始めているが、世界市場はそれ以上のスピードで動いてい
る。今後の日本の経済発展を実現するためにも、更なる知的財産戦略の活用が望まれる。
(ii) 知的所有権の普及活動(懇談会・セミナーの開催等)
a. 特許庁との懇談会(2004 年 12 月 16 日)
特許庁より光デバイス部門の審査状況および法改正の動向についての説明があった。委
員長より、特許動向調査は継続しており、本年度は4年目にあたり分析を重視して取り組
んでいることが報告された。当委員会でまとめた「審査に対する質問と要望」について、
特許庁側より明快な回答をいただいた。
b. 特許フォーラム(2005 年 3 月 1 日)
本年度の特許動向調査結果の報告と特別講演からなる光協会特許フォーラムを開催した。
「特許訴訟の現状と課題」と題した特別講演を竹田稔法律事務所弁護士の竹田稔氏にお願
いした。最近の特許訴訟判決を受けての大変時宜的な興味ある講演内容で、聴衆からも好
評であった。講演後も熱心な質疑応答が続いた。また、本年度の特許動向調査結果を、5
分野について各 WG 主査から及び特許出願動向にみる産業構造の分析を嶋本副委員長が報
告した。
(エ) 主要国際会議にみる先端光技術研究の動向
国際会議速報は、光技術動向調査活動の一環として「主要国際会議に見る先端技術研究
の動向調査」を狙いに行っている活動である。報告内容は、執筆者の主観的な意見を交え、
情報としての価値の高いトピックスを主体とする。速報性を高めるため、会議参加者に会
議後2週間内を目途に執筆頂き、読者への情報提供は Email で行っている。本年度は 15
件の速報を発信した。国際会議名、報告者を以下の表に示す。
- 59 -
表
2004(平成 16)年度国際会議速報発行リスト
発行速報タイトル
No.1_PICALO2004(鷲尾)
PICALO 2004:1st Pacific International Conference
on Applications of Lasers and Optics
開催期日
開催場所
2004/4/19-21
メルボルン
(豪州)
No.2_ODS2004(篠田)
ODS 2004:Optical Data Storage Topical Meeting 2004
2004/4/18-21
モントレー
(米国)
No.3_IPRM2004(北谷)
IPRM 2004: 2004 International Conference on Indium
Phosphide and Related Materials
2004/5/31-6/4 鹿児島
(日本)
No.4_WWCS2004(渡辺)
WWCS 2004:7th International Conference on Work
with Computing Systems
No.5_ISOP'04(辻岡)
ISOP’04:4th International Symposium
On Photochromism-Photoswitchable
Molecular Systems and Devices-
2004/6/29-7/2
クアラルンプール
(マレーシア)
2004/9/12-15
アルカション
(フランス)
2004/9/20-24
ニューオーリンズ
(米国)
No.7_EUROPV2004(山本)
EUROPV2004: Photovoltaic Devices Manufacturing issues
– From laboratory to mass production
2004/10/15-20
Kranjska Gora
(Slovenia)
No.8_ISLC2004(松尾)
ISLC2004:19th IEEE International Semiconductor Laser
Conference 2004
2004/9/21-25
松江
(日本)
No.6_HFES 48th(宮本)
HFES 48th:Human Factors and Ergonomics Society
48th annual meeting
No.9_ICALEO2004(塚本)
ICALEO2004:The 23rd International Congress on Applications 2004/10/4-7
of Lasers & Electro-Optics 2004
サンフランシスコ
(米国)
No.10_MOC'04(宮下)
MOCC'04: Microoptics conference’04
2004/9/1-3
イェナ
(ドイツ)
No.11_ISOM2004(勝村、細田)
ISOM2004:International Symposium on Optical Memory 2004
2004/10/11-15
済州島
(韓国)
No.12_APBP2004(伊藤)
APBP 2004:The Second Asian and Pacific Rim Symposium
on Biophotonics
2004/12/15-17
台北
(台湾)
技術分野(注)
1
4
5
6
7
8
9
10
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
アナハイム
(米国)
NO.14_ACS_229th(村越)
ACS 229th:229th American Chemical Society National
Meeting & Exposition
サンディエゴ
(米国)
○
アナハイム
(米国)
○
No.15_OFC2005その2(中村)
OFC/NFOEC2005:2005 Optical Fiber Communications Conference 2005/3/6-11
and National Fiber Optic Engineers Conference
3
○
No.13_OFC2005その1(森田)
OFC/NFOEC2005:2005 Optical Fiber Communications Conference 2005/3/6-11
and National Fiber Optic Engineers Conference
2005/3/13-17
2
○
○
注:分野は下記の通り
第1分野: 光材料・デバイス、 第2分野:光通信ネットワーク、 第3分野:光メモリ・情報処理、 第4分野:ディスプレイ、
第5分野:ヒューマンインターフェース、 第6分野:加工・計測、
第9分野:環境への光応用、 第10分野:照明
- 60 -
第7分野:太陽光エネルギ、 第8分野:医療福祉への光応用、