1st Quarter Outlook Bond Market Outlook January 2015 2015 年第1四半期マーケット・アウトルック – 翻訳 慌てずに投資を継続 2014 年は米経済の成長が持続し、連邦準備制度理事会(FRB)が 量的緩和を縮小し、長期債利回りが年初にピークをつける中、米国 の金利市場や経済は全般に予想通りのパフォーマンスを示しました。 しかしながら、米国以外では総じて成長が低迷し、それに伴いコモデ ィティ価格やインフレ率もさえない動きを示しました。コモディティ価格 の下落は多少なりとも世界経済の成長を押し上げはしますが、それ には「いい面」と「悪い面」があります。 最後に、多くの国家や企業は信用の質、場合によっては返済能力が コモディティ価格に左右されるため、コモディティ価格の下落によって 信用の逼迫に見舞われているソブリン債や社債の発行体が増えてい ます。 原油はコモディティ価格の全般的な下落トレン ドに追随 (1994 年 1 月=100) 1,200 1,100 まず始めに、世界の成長低迷がエネルギーや他のコモディティ価格を 押し下げた最初の、また重要な要因であった可能性について検討し なくてはなりません。次に、コモディティ価格の下落がインフレ率を押 し下げる圧力は、目標を下回るインフレ率や(あるいは)全面的なデフ レに苦しむ政策当局者にとって、歓迎すべきニュースではありません。 次のグラフに示すように、インフレ率が目標に届かない国はますます 増えています。 トムソン・ロイター/CRB コモディティ指数 ブレント原油価格 1,000 900 800 700 金融危機以降の CRB 最高値、2011 年 4 月 600 500 400 300 インフレ率が 2%を下回る国が増加 200 100 ギリシャ ハンガリー スペイン ポーランド キプロス スロバキア エ エストニア ベルギー スロベニア ポルトガル ルクセンブルク アイルランド クロアチア イタリア リトアニア オランダ ユーロ圏 フランス ドイツ マルタ ラトビア レバノン コートジボアール 英国 韓国 フィンランド モロッコ ルーマニア エルサルバドル 米国 アゼルバイジャン スリランカ オーストリア 中国 パナマ カナダ -2% 0 出所:ブルームバーグ、2014 年 12 月 29 日現在 最近の原油価格急落が市場の注目を集めていますが、実際のところ、 コモディティ価格は過去数年にわたり全般に下落しており、原油は最近 になってコモディティ市場の幅広い下落に追いついてきたに過ぎません。 しかも、コモディティ価格が歴史的水準に照らしてまだどれほど高い水 準にあるかは明らかではありません。低調な経済環境を考えれば、コ モディティ価格が今後もジリジリ値を下げ、経済に著しい影響を与える 可能性は排除できません。(4 ページ「オイロノミクス」の項参照) 中央銀行の政策不一致や地政学的問題が 2014 年終盤の リスク回避に拍車 -1% 0% 1% 2% 出所:ブルームバーグの前年比 CPI データ、2014 年 12 月 29 日現在 2013 年下半期に起きた量的緩和策の解除を巡る混乱と同様、米国 と他の国々における中央銀行による政策の乖離が拡大したことは、 東欧や中東における地政学的リスクの高まりと相まって、2014 年下 半期に市場の不安感を高める要因となりました。それは市場によく見 られる現象を引き起こしました。つまり、投資適格およびハイ・イール ドの社債やエマージング債券のスプレッド拡大や、大半の通貨に対す Page 1 Bond Outlook BondMarket Market Outlook る米ドル相場の急上昇です。 債券市場は 2014 年に引き続きそれなりのリターンを達成 連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和解除策やいずれ行われる利 上げに対する懸念が 2013 年下半期に長期金利を押し上げたのとは 対照的に、2014 年はほぼ年間を通じて先進国の長期金利が幅広く 長期金利に関する「低水準でレンジ内の動き」という当社の予測 低下しました。 券市場がかなりのリターンを上げたことは驚きではありません。当社 1 (2013 年の『The Low Ranger』参照 )を踏まえれば、2014 年の債 はより高利回りのセクターが米国債をアウトパフォームすると予想し ていましたが、結果はもっとニュアンスに富むものでした。下半期に はリスク回避傾向の高まりを受けて社債やエマージング債券の信用 米国を除き、世界の成長見通しは 2014 年を通じて低下 スプレッドが拡大し、デュレーションが同等の米国債をアンダーパフォ 2014 年の GDP 成長率見通し(中間値):G-3 諸国 ームしました。しかしながら、おそらく最も意外だったのは、イールドカ ーブのブル・フラット化を追い風に米長期国債が著しく高いリターン 3 (以下の表で分かるように 25.07%に達した)を上げたことです。 2 トータル・リターン(%) 1 2014 年第 4 四半期 米長期国債 S&P 500 株価指数 0 米国投資適格長期社債 米国債 エージェンシーMBS US米国 ユーロ圏 日本 米国総合 米国投資適格社債 CMBS 4 2014 年の GDP 成長率見通し(中間値):ブラジル、南アフリカ、 ロシア、メキシコ 地方債 欧州投資適格社債 現地通貨建てエマージング債 3 欧州ハイ・イールド債 欧州レバレッジド・ローン 米国レバレッジド・ローン 2 ハードカレンシー建てエマージング債 米国ハイ・イールド債 年初来 8.62 4.93 3.98 1.93 1.79 25.07 13.69 15.73 5.05 6.08 1.79 1.77 1.45 1.37 1.37 1.03 5.97 7.46 3.86 9.05 8.24 3.15 0.85 0.23 -0.33 -0.55 -1.06 5.60 2.52 2.06 7.43 2.50 1 出所:バークレイズ、ただし、エマージング債は JP モルガン、ハイ・イールド 債はメリルリンチ、レバレッジド・ローンはクレディスイス、欧州社債は iBoxx(米ドル建て)。パフォーマンスは 2014 年 12 月 31 日現在。インデック スの完全な名称については原文(英語版)”Notice”ページをご覧ください。 過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものでも、信頼できる指標と なるものでもありません。直接インデックスに投資することはできません。 1 ブラジル 南アフリカ ロシア メキシコ 2013 年の『The Low Ranger』は、当社ホームページに掲載しておりま す。下記 URL よりご参照ください。 http://www.pru.co.jp/outlook/pdf/2013/201309-the-low-ranger.pdf 出所:ブルームバーグ、2014 年 12 月 29 日現在 米国経済は 2014 年に成長見通しを達成する見込みですが、年間 を通じて成長見通しが鈍化した他の多くの国々では同じことは言え ません。専門家は 2015 年の成長が回復すると予想していますが、 それは依然として根拠が乏しいことを認識しておかなくてはなりま せん。 Page 2 Bond Market Outlook Bond Market Outlook 2014 年の全体像および今後の見通し 3. 1. 打ちのめされた G-3: ユーロ圏と日本の金利はしばらく 極めて低い水準で推移 2014 年は米ドルが着実に上昇しましたが、2015 年は FRB が、緩 和策から手を引き引き締めに向かうという、世界の中央銀行の中で 独自の歩みを続ける見込みです。米国は 2015 年を通じて経済環 境や金融政策の面で他の国々とかなり対照的な状況が続くとみら れるため、米ドルは堅調な動きが持続するとみています。 ユーロ圏と日本は経済成長やインフレが非常に弱々しいため、金融 政策当局者は必要な構造改革や財政引き締めを促すため、金利を 極めて低い水準に据え置くとともに、しばらく債券買い入れプログラ 通貨:2015 年もおそらく米ドルが肝心 2 ムを継続するとみられます(2014 年『Europe: Into the Void』参照 )。 さらに、欧州中央銀行(ECB)と日本銀行の積極的な政策の影響は 他の市場にも波及効果をもたらす見込みで、欧州周辺諸国の利回り を押し下げるばかりか、米国の長期債利回りにもある程度の下方圧 力がかかりそうです。 要点:2014 年に見られた質への逃避の動きは、2015 年にはスプレッド商品への投資機会をもたらす見通し 2. スプレッド商品:2015 年もボラティリティが高まる可能 性、だが 2014 年に比べれば収益性は高まると予想 米経済の回復を受け、2015 年、FRB は利上げの実施が可 能となるでしょう、しかしながら米国と他の先進国の長期金 利は低水準でレンジ内の動きが続く見込みです。スプレッド 証券化商品、エマージング債券、投資適格およびハイ・イールドの社 債などのスプレッド商品については、2014 年下半期にスプレッドが拡 大したことから、現在は非常に魅力的な水準にあると考えています。 昨年同様、FRB の引き締めや地政学的問題を巡る懸念が高まる場 面が断続的に訪れ、ボラティリティが急上昇する可能性があります。 こうしたリスク回避姿勢は、影響を受けるセクターや国に関して過大 なリスクプレミアムを織り込むことになるばかりか、幅広いセクターで バリュエーションの魅力を高める要因となります。その結果、スプレッ ド商品は長期的に見て国債をアウトパフォームすると考えられます。 商品 - 特に高利回りセクターは不安定な動きが続く可能性 がありますが、中・長期的に国債を大幅にアウトパフォーム する見込みです。米国と他の国々の成長力や政策が異な る状況に変化が生まれるまで、米ドルは堅調な動きが続き そうです。同時に、米ドルの上昇は一部の通貨に割安感を 生み出しており、レラティブ・バリュー面からの投資機会をも たらすことが予想されます。 2 2014 年の『Europe: Into the Void』は、当社ホームページに掲載し ております。下記 URL よりご参照ください。 http://www.pru.co.jp/outlook/pdf/2014/201410-europe-into-thevoid.pdf Page 3 Global Outlook GlobalEconomic Economic Outlook オイロノミクス:原油価格の下落と 世界経済 2014 年最後の数ヶ月に原油価格の下落が加速したことで、2015 年 の経済見通しにとって原油市場が重要な役割を果たすことが明確に なりました。2014 年は年末までに原油の下落幅が約 45%に達し、過 去 2 度の原油急落局面(2001 年の約 32%、2008 年の 68%)の中 間程度の下げを演じました。しかしながら、原油安の影響を考察する のは複雑な作業で、いくつかの大きな問題が浮上します。 そうした調整に対してどのような政策対応が行われるの だろうか? 先進国市場は新興国市場と異なる動きを示 すのだろうか? 需要 vs 供給ショック 言うまでもないことですが、これらの問いはどれ一つとっても容易に 正確な答えを出すことはできず、原油市場は専門家を困惑させてき たことで知られています。原油価格の急落が景気後退の前兆なの かどうかという本質的な問題についても例外ではありません。 OPEC および米国の産油量 (単位:1,000 バレル/日量) 10,500 バレル当たりブレント原油価格 (為替相場調整ベース、2014 年 12 月、米ドル) 10,000 160 9,500 140 9,000 40,000 米国 US 38,000 OPEC (右軸) 36,000 34,000 32,000 120 8,500 100 8,000 80 7,500 30,000 28,000 60 40 26,000 7,000 24,000 6,500 22,000 6,000 20,000 20 0 出所: BP スタティスティカル・レビューおよびプルデンシャル・フィクスト・インカム 出所:ヘイバーおよびプルデンシャル・フィクスト・インカム 原油価格下落の原因は何だろうか? 原油安はどの程度実体 経済に現れていない根深い需要低迷を示唆しているのだろう か? あるいは、価格下落は主に供給に起因する現象で、原 油価格の急伸が米国の景気後退を招いた時の経験から類推 すると、その影響は好ましいものにとどまると考えて良いのだ ろうか? 産油国から原油消費国への所得移転はどんな経済的影響を もたらすのだろうか? また、消費国はこうした棚ぼた利益(も しあるとすればだが)をどのように活用するのだろうか? 石油輸出国機構(OPEC)が 11 月 27 日の総会で減産に合意できな かったことは興味深いことです。この決定が主要産油国のシェアを奪 いかねない米国のシェールオイルを含む最近市場に参入した生産者 を狙い撃ちにしたものだという見方は、必ずしも的外れとは言えない ようです。 上のグラフに示したような米国におけるシェールオイル生産の急拡 大は、確かにそうした見方を裏付けています。しかも、世界経済は全 般的に堅調な動きを維持しています。2014~2015 年の世界経済の 実質成長率は 3%から 3.5%のレンジにあり、景気後退が差し迫って いることが原油市場を圧迫しているという仮説とは整合性が乏しいよ うです。 Page 4 Global Outlook GlobalEconomic Economic Outlook 経済的影響 直感に反するように聞こえるかもしれませんが、原油価格の下落や それに伴う交易条件の悪化は、一見したところ実質国内総生産 (GDP)の伸び率に全く影響を及ぼしません。産油国が同じ量の原 油輸出を続け、輸入国が同じ量の原油消費を続ける限り、実質ベ ースの生産は変化しません。しかしながら、原油価格の下落は重大 な所得効果をもたらし、世界的に波紋を引き起こしてきました。 こうした所得効果により、GDP 成長率は少なくとも幾分かは押し上げ られる見込みです。2015 年の原油価格が平均 60 ドル/バレルで推 移すれば、原油価格の下落は世界全体で輸入額を約 7,500 億ドル 引き下げると推定されます。産油国から原油輸入国へのこうした所 得移転は世界の GDP の 1%に相当し、無視することはできない規 模になります。世界の GDP の約 85%を米国をはじめとする原油輸 入国が創出していることを踏まえれば、こうした所得移転の効果は著 しいものとなります。ただし、下のグラフに示すように、その影響は地 域や国によって大きく異なります。 少なくとも欧州や日本、中国と比較すれば、ガソリン価格下落は米国の 家計に最も大きな恩恵をもたらします。しかも、米国の家計の貯蓄率は、 これらの国々と比べ低水準にあります。そのため、米国の家計は最大の 所得移転効果を享受できるばかりでなく、移転された所得を最も多く消費 1 に回すと見込まれます 。消費者と同様、生産者も輸入価格下落の恩恵 を受ける見通しで、実質的にプラスのサプライショックがもたらされること になります。 原油およびガソリン価格 (2014 年 12 月 14 日時点) 105 100 95 90 85 80 75 70 原油価格が永続的に 60 ドル/バレルに下落した場合に推 定される年間の所得移転効果(対 GDP 比、%) 65 60 1.8. 2 1.6 ブレント原油 中国のガソリン ドイツの小売りガソリン 米国のガソリン 日本のガソリン 55 1.4 出所:ブルームバーグおよびプルデンシャル・フィクスト・インカム 1.2 1.0 0.8 0.6 予想される先進国の政策対応 0.4 0.2 0.0 ユーロ圏 米国 英国 日本 中国 出所:スタティスティカル・レビューおよびプルデンシャル・フィクスト・インカム 各国のエネルギー・インテンシティ(消費効率)の違いに加え、原油 価格下落による需要刺激効果の度合いは、所得移転効果を実体 経済に波及させるチャネルによって大きく左右されます。最も顕著 な点として、ガソリン税が各国で著しく異なっていることが挙げられ ます。 需要や供給面でのこうした所得移転に伴うプラス効果は、度合いこそ 国や地域によって異なるものの、少なくとも大半の先進国の成長を押 し上げる見込みです。政策当局者はこうした景気刺激効果にどのよう に対応するのでしょうか? まず指摘しておきたいのは、原油価格の下 落は消費者物価指数(CPI)に大きな一時的影響を及ぼす可能性が あることです。原油価格が永続的に 40 ドル下落すると、2015 年の総 合インフレ率を米国と日本で 2%ポイント(pps)近く、ユーロ圏では 2.5%押し下げる効果があると推定します。 こうした物価押し下げ効果は一時的なもので、特に産油国による 減産などが行われれば、いずれ反転する可能性があります。 この結論は、限界的貯蓄率の相対的影響度が平均貯蓄率と同等であると いう想定に基づいている。 1 Page 5 Global Outlook GlobalEconomic Economic Outlook 原油価格が変動しないと想定すれば、原油安による効果は 1 年 で CPI から「剥落」することになります。物価下落が一時的なも のであると考えれば、それが予想以上に幅広く実体経済に影響 を与えない限り、中央銀行はそれを黙って見過ごすとみられま す。 原油輸出および輸入、ネットベース(2013 年)(対 GDP 比%) ウクライナ パキスタン スリランカ ハンガリー セルビア インド チリ 南アフリカ クロアチア フィリピン ポーランド 中国 ルーマニア トルコ インドネシア アルゼンチン ブラジル ペルー メキシコ マレーシア コロンビア ロシア連邦 ナイジェリア ベネズエラ 米国では、FRB がこうした一時的な総合インフレ率の低下をやり過ご し、2015 年半ば頃と広く予想されている金融引き締めサイクルに着 手する見込みです。特に、国際的に見て需要が力強く刺激されている ことがその可能性を高めています。しかしながら、ユーロ圏と日本の 中央銀行はデフレを回避し、2%のインフレ目標を達成するためにも、 原油安による一時的な物価押し下げ効果を看過しにくい模様です。日 本銀行や ECB は、原油価格の下落によってインフレ期待が損なわ れ、全面的なデフレにつながる恐れがあると懸念しています。 しかしながら、そうした見方は政策アクティビズム(行動主義)を招き、 サプライショックを食い止め、原油価格を押し上げるための無駄な金 融政策の発動につながりかねません。量的緩和(QE)を通じたさらな る金融緩和により、為替市場や資産市場においてボラティリティが急 上昇する懸念がさらに広がる可能性もあります。 -20 敗者ばかりでない - 大半の新興国は原油安から恩恵 -10 0 10 20 30 40 出所:国連貿易統計、ヘイバー、プルデンシャル・フィクスト・インカム ネットベースで見ると、原油輸入国は新興国の GDP の約 70%を占 めています。原油価格がバレル当たり 60 ドルで推移するとすれば、こ れらの新興国には約 3,000 億ドルの所得が産油国から移転する計算 になります。一方、新興国の主な産油国にとっては所得移転による損 失が大きく、特にロシア(損失は 1,230 億ドル)、ベネズエラ(300 億ド ル)、カザフスタン(250 億ドル)といった主要債券発行国が大きな打 撃を受ける見込みです。また、次のグラフで示すように、各国の経済 規模と比較すれば、原油輸出の比率が最も高いのはベネズエラ、ナ イジェリア、ロシアの順となります。 原油価格が交易条件に与えたショックが新興国にどのような影響を 及ぼしているかについて理解を深めるため、1997~98 年および 2000~01 年の過去 2 度の原油価格下落局面と、それが原油輸出 国や原油以外のコモディティ輸出国に与えた影響を分析しました。全 般的に見れば、これらの期間においては原油輸出国および他のコモ ディティ輸出国全体ともに経済が著しく混乱しました。これに対し、今 回は影響を和らげそうないくつかの注目すべき要因があります。 財政赤字は大幅に拡大する見込みだが、公的セクターのバラン スシートは原油輸出国、原油以外のコモディティ輸出国とも、全 般的に強力になっている。前回のように、大規模な財政措置が 講じられる可能性があるが、財政赤字の拡大が公的セクターの バランスシートに与える影響は、足もとの好ましい財務状況によ り緩和される。 現在の対外収支は全般に 1997 年よりも良好であり、2000 年に 比べやや脆弱である。特に、原油輸出国は高水準の経常黒字 を計上してきたため、必要な調整を進める余裕がある。 Page 6 Global Economic Outlook Global Economic Outlook 過去に原油価格が下落した時期と同様、新興国全般にわたっ てインフレ率が低下するとみられる。このことは公的セクターの 強力なバランスシートや、多くの場合健全な対外収支とともに、 さらなる金融緩和余地をもたらすと考えられる。 原油および原油以外のコモディティ輸出国 33 カ国の外貨準備 カバレッジ(輸入月数) 20 18 最も重要な点として、次のグラフで示すように、原油輸出国、原 油以外のコモディティ輸出国とも、外貨準備カバレッジ比率が 1997 年や 2000 年に比べはるかに強力になっている。新興国 全般についても同じことが言える。 中間値 25 番目 75 番目 16 14 12 10 最後に、市場は再び「風呂のお湯と一緒に赤ん坊を放り出して いる」(「大事なものも大事でないものも一緒に投げ出す」の意) が、当社の分析では、原油価格は一般的に原油以外のコモデ ィティ価格と密接に連動しないことが示されている。これは、特 に原油以外のコモディティ輸出国の間に、今後興味深いレラテ ィブ・バリュー面での投資機会がもたらされることを示唆してい る。 8 6 4 2 0 全体 原油 原油以外 1997 全体 原油 原油以外 2003 全体 原油 原油以外 2013 出所:ヘイバーおよびプルデンシャル・フィクスト・インカム Page 7 Q1 Sector Outlook Q12015 2015 Sector Outlook 全般的なファンダメンタルズやテクニカル要因は短期的に安定 した動きが続くとみられますが、一部の業界や発行体にとって は逆風が強まる見込みです。例えば、最近の原油価格急落は 消費関連業界に恩恵を与えるでしょうが、コモディティやエネル ギー業界の発行体はスプレッドが急拡大し、原油安が長期化 すれば一部の企業は格付けを引き下げられる可能性がありま す。2014 年末時点で、エネルギー・セクターはバークレイズ米 国社債インデックスの約 11%を占めています。 米国および欧州の 投資適格社債 米国の投資適格社債は第 4 四半期に+1.77%のリターンを上げ、 2014 年のリターンは+7.46%という高水準に達しました。 コモディティ/エネルギー・セクターが売り込まれたほか、大量の 新規社債発行、社債スプレッドカーブのスティープ化を受け、 米国債に対する米国社債の超過リターンは年間で-48 bps となりま した。長期社債は長期国債相場の力強い上昇に追いつけずにスプ レッドが年間で 36 bps 拡大しましたが、中期社債のスプレッド拡大 幅は 8 bps と、緩やかにとどまりました。 このほか当期の産業セクターでは、一部のディールではかなり積 極的な条件が提示された M&A 活動の増加が圧迫要因となりまし た。2014 年に発表された M&A の大半では投資適格クラスの格 付けを維持できる資金調達手法が用いられましたが、一部の企 業では財務エンジニアリングにより株価バリュエーションの上昇を 促すため、レバレッジを拡大したり、一般的にレバレッジ上昇を伴 うケースが多い不動産投資信託やマスターリミテッド・パートナー シップを組成したりする動きも見られました。2015 年も自社株買 いや事業分離など企業価値の増大につながる措置を求めるアク ティビスト株主の行動が続く見込みです。 欧州の社債市場はボラティリティが比較的穏やかで、米国社債 に比べ高いパフォーマンスを示しました。経済成長の低迷や ECB による緩和的な金融政策、そしてデフレ観測が金利を抑え る役割を果たし、年間で+8.24%のリターンを上げました。ECB が量的緩和に踏み切るとの観測が高まった結果、スワップに対 する欧州社債のスプレッドは年間で 20 bps 縮小し、79 bps とな りました。 トータル・リターン 米国社債 欧州社債 スプレッド変動幅 全般的に、当社は引き続き産業銘柄よりも金融銘柄を選好してい ます。金融セクターの発行体は依然として堅実な信用プロファイル の維持を重視しており(資本要件が厳しくなっているため)、総じて イベントリスクにさらされにくくなっている上に、高格付の産業セク ターの社債に比べスプレッドが 30 bps 程度ワイドな水準にありま す。しかしながら、金融安定委員会が最近、グローバルなシステム 上重要な銀行(G-SIBS)に義務づける最低資本バッファーや「総 損失吸収能力」の引き上げを提案したため、2015 年は大手銀行 のボラティリティが全般に高まることが予想されます。この措置は システム上重要な銀行が破綻した場合でも納税者ができる限り影 響を被らずに済むことを目指したもので、銀行は危機に直面した 場合に容易に償却できる無担保債の追加発行が必要となると予 想されます。米国の規制当局がこの措置を最終的に決定すれば、 米国のマネー・センター・バンク数行は銀行持株会社が発行する 無担保債への政府支援が少なくなるため、スタンダード&プアーズ による格下げが予想されます。こうしたテクニカルな問題はあるも のの、米国のマネー・センター・バンクの大半は引き続き非常に健 全なファンダメンタルズを保持していると考えています。 OAS 14 年 12 月 31 日 第 4 四半期 年初来 第 4 四半期 年初来 1.77% 7.46% +19 bps +16 bps +131 bps 1.37% 8.24% -4 bps -20 bps +79 bps データはバークレイズ米国社債インデックスおよびアイボックス・ユーロ・コ ーポレート・インデックス 100% 米ドルヘッジ付き。出所:バークレイズおよ び Markit iBoxx。パフォーマンス指標は 2014 年 12 月 31 日現在。過去 の実績は将来の結果を保証するものでも、信用できる指標となるものでも ありません。直接インデックスに投資することはできません。 米国社債 米国社債市場のセンチメントは、クレジットサイクルの中・後期段階 に共通するテーマに左右されました。つまり、経済成長の回復に支 えられた堅固なファンダメンタルズ、過去最高水準の発行額(桁外 れのメガ・ディールが押し上げ)、株主に歓迎される企業行動の活 発化などが挙げられます。コモディティおよびエネルギー関連企業 は第 4 四半期に業績が低迷しましたが、他の大半の業界では 2014 年を通じて企業の利益や売上高がしっかりと拡大したほか、 フリーキャッシュフローはプラスを維持し、合併・買収(M&A)活動 や自社株買い、配当などの増加にもかかわらず、負債比率はほと んど拡大しませんでした。 当ページのデータ出所:バークレイズおよび Markit iBoxx Page 8 Q1 Sector Outlook Q12015 2015 Sector Outlook 短期的には、1 月下旬にギリシャで総選挙が行われることから慎 重な見方を取っており、急進左派連合(Syriza)がギリシャ政府債 の元本削減や緊縮財政策の緩和を求めていることが大きな懸念 材料だと考えています。 産業セクターでは、自動車、航空、小売り銘柄の一部に投資価値が あると考えます。エネルギー・セクターについては第 4 四半期には 慎重な見方をしていましたが、スプレッドが拡大し、ややディストレス トに近い水準に達したことから、足もとは過小評価されている銘柄 への投資機会を追求しています。当社は引続き中短期ゾーンでは BBB 格債を選好するほか、スティープなクレジットカーブや年金や 保険会社による需要が高まる可能性を踏まえ長期社債を選好して います。また、イベントリスクにさらされず 2014 年に好調なパフォー マンスを示した課税対象の地方債についても引続き魅力があると考 えています。 グローバル・ポートフォリオでは、米国や欧州における最も魅力的 な投資アイデアを取り入れています。例えば、産業セクターよりも 金融セクターを重視しながら米国の銘柄をオーバーウェートとする 一方、欧州の銘柄については金融セクターよりも産業セクターを 選好しています。また、BBB 格の中短期社債や米国の課税対象 地方債に引き続き焦点を当てるとともに、同一あるいは類似企業 が発行した米国と欧州の債券の間に生じた一時的な利回り格差 にも着目しています。 当社は現在のところ、特に最近のスプレッド拡大を踏まえ、米国の 社債に対して控えめながらも前向きなスタンスを維持しています。 今年第 1 四半期は全般的に健全なファンダメンタルズが続く見込 みですが、最近の利回り低下を受けて新規社債発行が急増した 場合、スプレッド拡大のリスクにさらされる可能性があります。 米国および欧州の社債市場ともに、リスク要因としては世界の成 長鈍化、流動性の低下、原油安による悪影響、世界の政治的不 透明感、中央銀行の政策変更などが挙げられます。米国では引 き続きイベントリスクを警戒する必要があります。 欧州社債 2015 年は全般に緩やかに回復しつつある経済環境が企業のファ ンダメンタルズを支える中、ECB の政策やユーロ圏周辺諸国の動 向がクレジット市場のセンチメントに大きな影響を与えると見込まれ ます。利回りが歴史的な低水準にあることから、欧州企業や域外の 企業ともに旺盛な社債発行が予想される一方、利回りを追求する投 資家からの需要も堅調に推移する見込みです。大半の発行体はす でにここ数年間でコスト削減や(あるいは)グローバルな事業展開を 通じて低成長の市場環境に適応しているため、企業利益は全般に 安定しており、予想外の動きもほとんど見られません。 見通し : 拡大したスプレッド水準、健全なファンダメンタル ズ、スプレッドが再び縮小する可能性を踏まえ、控えめなが ら前向きなスタンスを取っています。引続き金融セクターの 銘柄を選好します。 グローバル・レバレッジド・ ファイナンス 好材料としては、欧州の社債市場は米国に比べエネルギー関連銘 柄へのエクスポージャーが大幅に低く(アイボックス・ユーロ・コーポ レート・インデックス 100% 米ドルヘッジ付きに占める比率はわず か 4.5%)、最近の原油安による影響をさほど受けずに済んでいる ことが挙げられます。実際、欧州の多くの国々はエネルギーの大量 消費国であり、エネルギー価格の下落は欧州の経済成長にネット でプラスの効果をもたらすと考えられます。欧州企業の経営陣は現 在の経済環境下において負債を再び積み増すことに消極的な姿勢 を取っているため、M&A や株主に歓迎される行動は増えてはいる ものの、依然として米国の水準を下回っています。 米国のレバレッジド・ファイナンス市場は、エネルギー・セクターの スプレッド拡大が他のセクターにも波及したほか、市場の混乱を受 けて個人投資家の需要が冷え込んだことから、不安定な地合いで 2014 年を終えました。しかしながら、欧州市場はエネルギー・セク ターの比率が相対的に低いことから、堅調な地合いの中で年末を 迎えました。 当社では、原油安に起因するボラティリティを踏まえ、短期的には 慎重なスタンスを維持していますが、健全なファンダメンタルズを 維持している非エネルギー・セクターの相対的投資価値(レラティ ブ・バリュー)が魅力的であることから、今後 1 年間の見通しにつ いては非常に明るいと考えています。一方、欧州市場は短期的に、 ECB のさらなる政策措置による恩恵を受ける可能性があります。 当社は前四半期までと同様、ユーロ圏周辺諸国の債券よりも、英 国や北欧の銘柄を重視しています。セクター別では、金融セクター よりも、配電、有料道路、空港運営など、健全なバランスシートを持 つ規制業界の企業を含む、欧州の産業セクターを選好しています。 銀行セクターでは、特に多くの銀行のスプレッドが年間の最低に近 い水準にあることを踏まえ、ユーロ圏以外の銘柄を選好しています。 当ページのデータ出所:欧州社債= Markit iBoxx、すべてのハイ・イールド= BofA メリルリンチ、すべてのレバレッジド・ローン=クレディスイス Page 9 Q1 2015 Sector Outlook トータル・リターン スプレッド変動幅 第 4 四半期 年初来 -1.06% 2.50% +64 bps +104 bps +504 bps 0.85% 5.60% +17 bps +56 bps +417 bps 米国レバレッジド・ ローン -0.33% 2.06% +37 bps +53 bps L+534 bps* 欧州レバレッジド・ ローン 0.23% 2.52% +9 bps -16 bps L+498 bps 米国ハイ・ イールド債 欧州ハイ・ イールド債 第 4 四半期 年初来 ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、こうしたファンダメンタルズ 面のサポート要因を受け、2015 年のデフォルト率は 2.8%と、引き続き 長期的な平均を大幅に下回る水準にとどまるとみています。不安定な エネルギー・セクターでも、原油価格の下落がデフォルト率の上昇につ ながるには 2~3 年かかると考えられます。 OAS 14 年 12 月 31 日 *ディスカウント・マージンの想定期間は 4 年 米国ハイ・イール 米国ハイ・イールド債 ド債 米国レバレッジド・ローン 米国のレバレッジド・ローン市場もエネルギー関連のボラティリティから 逃れることはできませんでしたが、米国のハイ・イールド債市場に比べ れば比較的安定した動きを示し、2014 年のスプレッド拡大幅は後者に 比べ小幅に止まりました。米国のハイ・イールド債市場とは異なり、低 格付けの銘柄がアウトパフォームし、CCC 格の銘柄群が B 格および BB 格の銘柄群よりもはるかに高いリターンを上げました。 米国のレバレッジド・ローン市場は需要が二分された状態が続きました。 個人投資家が第 4 四半期に 130 億ドル、2014 年全体では 220 億ド ルの資金を引き出したのに対し、ローン担保証券(CLO)市場は拡大が 続き、2014 年には 255 件、1,310 億ドルがローンチされ、金額では 2013 年の 870 億ドルを大幅に上回りました。CLO の活発な発行を受 け、2014 年のローン発行額は 4,670 億ドルに達しました。 市場の混乱が深まるのに伴い、ファンダメンタルズが健全な銘柄が アウトパフォームしました。第 4 四半期は BB 格の銘柄群が+0.75% のリターンを上げたのに対し、B 格の銘柄群は-1.68%、CCC の銘 柄群は-4.75%となりました。信用スプレッドは第 4 四半期に+504 bps に拡大し、年初来で最もワイドな水準をわずかに下回る水準で 年末を迎えました。エネルギー・セクターを除外した年末時点のスプ レッドは+465 bps でした。 米国のハイ・イールド債市場と同様に、レバレッジド・ローン市場は健全 なファンダメンタルズを維持した状態で 2015 年を迎えました。ムーディ ーズ・インベスターズ・サービスによると、2014 年の最後の 2 カ月は連 続でデフォルトが発生しておらず、年間のデフォルト率は 0.9%に止ま りました。CLO に対する需要が堅調に推移する可能性や、エネルギ ー・セクターの影響をさほど受けずに済むことを考えれば、レバレッジ ド・ローン市場は短期的に大きな魅力があると思われます。しかしなが ら、長期的に見れば先々のローン市場の上値余地は限定的であると 見込まれます。 セクター別リターンにも原油安の影響が反映され、エネルギー・セクタ ーのリターンが-7.4%と、最低のパフォーマンスとなりました。次に悪 かったのはカジノ・セクターの-5.3%、金属および鉱山セクターの -4.3%でした。一方、2014 年に最も高いパフォーマンスを上げたのは 公益事業、航空、製紙の各セクターで、リターンはそれぞれ+9.0%、 +8.5%、+7.4%となりました。 2014 年は社債発行の動きが前半と後半で明確に変化しました。前 半の 6 カ月は月平均 350 億ドル発行されたのに対し、後半の 6 カ月 は 30%以上減少し、月平均 250 億ドル前後にとどまりました。個人 投資家は依然として神経質な姿勢を見せており、第 4 四半期に 10 億ドルの資金が流出した結果、年間の流出額は 210 億ドルに達しま した。 欧州ハイ・イールド債 しかし、今後は 2015 年の市場の回復を支えるとみられるいくつかの 明るい要因が見込まれます。例えば、企業財務のファンダメンタルズ は引き続き堅固で、最近はさらに強化されています。実際、ネットの レバレッジ・レシオは第 3 四半期の 3.6 倍から 3.5 倍に低下したほか、 ネットの金利カバレッジは第 3 四半期の 4.0 倍以下から 4.2 倍に上 昇しています。 欧州のハイ・イールド債市場はエネルギー・セクターの比率がわずか 1%程度に過ぎず、第 4 四半期は米国のハイ・イールド債市場をアウト パフォームしました。欧州市場は原油価格よりも全般的な経済トレンド に沿った動きを示し、欧州の低調な経済成長を背景に、BB 格の銘柄 群が前年に比べ信用スプレッドが拡大した CCC 格の銘柄群をアウト パフォームしました。 セクター別のパフォーマンスは欧州の幅広い経済テーマに沿った動き となり、米国とは対照的に、一般消費財や小売りなど景気動向に敏感 なセクターがアンダーパフォームしました。 当ページのデータ出所:すべてのハイ・イールド債= BofA メリルリンチ、すべてのレバレッジド・ローン=クレディスイス Page 11 Q1 2015 Sector Outlook 今後については、こうした景気動向に敏感なセクターでより多くの銘柄 に対する圧力が高まる可能性があります。それでも、市場では 2015 年のデフォルト率は比較的低い水準を維持すると見込まれています。 ハードカレンシー建てエマージング・ソブリン債のインデックスのスプレ ッドは 12 月だけで約 43 bps 拡大し、10―12 月期全体では約 55 bps 拡大しました。 トータル・リターン 米国のハイ・イールド債におけるボラティリティの再燃で、欧州のハ イ・イールド債市場からも多少の資金が流出するかもしれませんが、 欧州市場は ECB がさらなる政策措置を講じるとの見方を背景に堅 調な展開が続くと予想されます。 欧州レバレッジド・ローン 欧州のレバレッジド・ローン市場では新発ローンの件数が増加しまし た。前年までと変化した点は、債券よりもローンでの資金調達を望む 借り手が増えたことです。 米国市場と同様、2014 年は CLO の発行がローン市場を継続的に支 える役割を果たしたほか、魅力的なプライシングと流動性の改善が着 実な発行を促しました。 クレディスイスによると、2014 年末の欧州レバレッジド・ローン市場に おける過去 12 カ月のデフォルト率は 3.45%となり、前年末の 3.29% から上昇しました。その主因は第 1 四半期にフランスのファッション小 売会社ヴィヴァルテの債務 24 億 6,000 万ユーロがデフォルトとなっ たことです。2015 年第 2 四半期には過去 12 カ月のデータからこれ が外れるため、デフォルト率が再び低下し、2015 年末には 1~3%の レンジに収まると予想されています。 見通し : エネルギー・セクターの急落を受け、非エネルギ ー・セクターのスプレッドも信用リスク相応の水準を大幅に 上回る水準となったため、今後 1 年については極めて強 気の見方をしています。ただし、エネルギー市場を巡る不 透明感を踏まえ、短期的にはより慎重にみています。ECB による更なる緩和措置が予想される中、欧州ハイ・イール ド債市場の短期的な見通しは明るいと考えています。 エマージング債券 スプレッド/利回り変動幅 OAS/利回り 14 年 12 月 31 日 第 4 四半期 年初来 第 4 四半期 年初来 ハードカレンシー 建てエマージング 債 -0.55% +7.43% +55 bps +46 bps +353 bps 現地通貨建て エマージング債 +1.03% +3.15% -24 bps -35 bps 6.50% 新興国通貨 -5.41% -7.03% +192 bps +116 bps 5.55% エマージング社債 -1.21% 4.96% +55 bps +42 bps +353 bps 出所:JP モルガン ハードカレンシー建てエマージング債 新興国の信用スプレッドは先進国のハイ・イールド債や社債市場の動 きに追随して、7 月のタイトな水準から全般的に拡大しました。12 月に は年末の流動性逼迫が急落に拍車をかけましたが、この状況は 2015 年には改善すると見込まれます。しかしながら、原油価格が記 録的な急落を演じる中、市場の関心は引き続き原油輸出への依存度 が高い国の動向に集まる見込みです。 ロシアやベネズエラなど原油との関連が深い国や固有の問題を抱え ている国の債券がアンダーパフォームしましたが、原油やコモディテ ィの輸入国も売り圧力から逃れることはできませんでした。例えば、リ トアニア、トルコ、パナマの信用スプレッドは、12 月初めに市場が急 落した場面で底値(タイト)から 40~80 bps 拡大した後やや回復して います。新興国の債券には特にメキシコ、インドネシア、ハンガリーな ど財政見通しが改善している高格付けの諸国を中心に、割安感が高 まっていると考えられます。一方、ブラジルは依然としてペトロブラス を巡る汚職スキャンダルの影響にさいなまれています。ルセフ政権 は市場に配慮した内閣改造やよりオーソドックスな財政計画を発表し ましたが、その実行は容易ではなく、今後の動きを見守る必要があり ます。ブラジルが投資適格の信用格付けを維持するためには、これ らの政策変更を成功させる必要があります。 当社は固有の問題を抱えたハイ・イールド銘柄の一部にも投資価値が あると考えますが、こうした銘柄の価格が回復するには原油価格の安 定が必要となるでしょう。 エマージング市場(EM)のハードカレンシー建て債、現地通貨建て 債、および新興国通貨は 12 月のパフォーマンスがマイナスに転じ、 10―12 月期のリターンに大きな影響を与えました。9 月 30 日以降、 ハードカレンシー建てエマージング・ソブリン債のインデックスとエマ ージング社債のインデックスはそれぞれ 0.5%、1.5%下落し、新興 国通貨も約 5%下落しました。 当ページのデータ出所:すべてのハイ・イールド債= BofA メリルリンチ、すべてのレバレッジド・ローン=クレディスイス、エマージング債=JP モルガン Page 12 Q1 2015 Sector Outlook これらの銘柄の例としては、アルゼンチンの国内法に基づく短期債 は残存期間が 1 年以内であるにもかかわらず利回りが 2 桁に達し ています。この他、ロシアの状況は流動的で非投資適格への格下げ の可能性もありますが、600 bps 近い水準に達している短期債のス プレッドは、中期的に見て魅力的だと思われます。最後に、ベネズエ ラ債はすでにデフォルトが起きた場合に想定される回収価値に近い 水準で取引されています。 現地通貨建てエマージング債 新興国の金利も最近のリスク回避傾向の高まりによる影響を受けて います。リアルマネーの投資家はエクスポージャーを縮小しています が、ポジションを整理する目立った兆しは現れておりません。ブラジル、 インドネシア、南アフリカなどベータ値の高い債券は市場の急落局面 でスプレッドが約 40 bps 拡大しました。同様に、メキシコ、ペルー、タ イなどベータ値の低い債券のスプレッドも 10~20 bps 拡大しました。 これらの国々の大半では、コモディティ価格の下落が消費者物価を押 し下げるため、2015 年のインフレ率は抑制される見込みです。新興 国の中央銀行は 2015 年に概ね金融政策を据え置く見通しで、たとえ 金利が引き上げられたとしても、それぞれのイールドカーブにすでに 織り込まれている水準よりは控えめな利上げとなるでしょう。当社では ブラジル、メキシコ、インドネシアなどの金利に引き続き投資機会があ ると考えています。 新興国通貨 新興国通貨は引き続き緩衝材としての役割を果たしており、2014 年 末時点で 7 月に比べ対米ドルで 10%程度下落しました。中でもロシ ア、コロンビア、ブラジル、メキシコ、南アフリカなど原油およびコモディ ティ輸出国の通貨は、投資家ポジション(の偏り)や政策によるさらな る影響を受けてアンダーパフォームしました。インドやトルコなどエネ ルギー輸入国の通貨すら、ブラジルや固有の要因が打撃となったロ シアほどではないにせよ、足もとの「質への逃避」による打撃を被りま した。成長が抑えられ、世界の貿易が落ち込み、現地市場から資金が 流出する中、新興国の中央銀行は外的ショックから国内経済を守り、 交易条件の変化に対応して競争力を回復させる手段として、引き続き 為替相場を活用することが予想されます。こうした理由から、当社は 引き続き新興国通貨のポジションを比較的小規模で戦術的なものに 止めています。 焦点はロシアに 新興国市場の急落は特にロシアに大きな打撃を与えました。ルーブル 相場が 52%も下落したほか、国内債の利回りは 500 bps 上昇し、スプ レッドは 600 bps 近くにまで拡大して 2008 年以降の最高水準に達しま した。こうした市場の急落や原油安は 1998 年のロシア危機に匹敵する ものですが、ロシアの財政状況は 1998 年に比べはるかに強固になって おり、市場の懸念は行き過ぎだと思われます。ロシアは 2015 年も経常 黒字を維持するとみられるほか、1998 年には 45%に達していた GDP に対する総政府債務の比率は 15%程度に低下しています。それに加え、 1998 年当時は固定相場制で、外貨準備も非常に低水準でしたが、現在 は変動相場制になり、4,000 億ドルを超す外貨準備(輸入の 14 カ月分 以上に相当)を蓄えています。ルーブル安は輸入の減少にもつながると みられるため、外貨準備の減少ペースも和らぎ、資本逃避を抑える要因 となります。さらに、ソブリン債のデフォルトは世界におけるロシアの地位 を引き上げるというプーチン大統領の目標にも反することになります。そ れでも、ロシアが 2015 年に深刻な景気後退に陥るとの見方に変わりは ありませんが、国家のバランスシートが幅広く改善しているため、1998 年のような危機が再来することはなさそうです。 ロシアの企業や準政府機関に関して言えば、2015 年には約 1,000 億ドルの債務の償還期限が到来します。しかしながら、金融機関を 除くロシアの企業は外貨を中心に約 750 億ドルのキャッシュを保有 しており、大半が短期債務を返済するのに十分なリソースを持ってい ます。例えば、前述した企業の短期債務の半分以上を抱えるガスプ ロム、ロスネフチ、ルクオイル、ノバテクは、創出されるキャッシュフロ ーだけで今後 2 年間の満期債務を返済することができます。 今後の見通し 新興国市場は数多くのポジティブおよびネガティブな要因に直面する中 で 2015 年を迎えました。世界のボラティリティの高まりや変動する流動 性に加え、新興国や他のスプレッド・セクターにおけるクレジットの質の 著しい悪化にも引き続き目を凝らしていく必要があります。ベネズエラや ロシアのような特異なケースについても、それぞれの状況を継続的に分 析していくことが欠かせません。 対照的に、大半の国では 12 月の下げが急激だったものの、1998 年 のロシアと現在のロシアの違いと同様、現在の状況は過去の危機時 に比べ格段に良好です。 当ページのデータ出所:すべてのハイ・イールド債= BofA メリルリンチ、すべてのレバレッジド・ローン=クレディスイス、エマージング債=JP モルガン Page 13 Q1 2015 Sector Outlook 2015 年は好ましい純発行額見通しや堅調な投資家の需要が市場を 支えるとみられるため、テクニカル面で好ましい環境が続く見込みで す。現在は地方債が米国債に比べ割安な水準にあることを考えれば、 地方債がアウトパフォームし、米国債に対する地方債の利回りレシオ も第 1 四半期末までに低下すると予想されます。財政面の圧力に直 面し、年金債務を賄う積み立てが著しく不足しているイリノイ州とニュ ージャージー州が引き続き市場の注目を集める見込みです。イリノイ 州では、一時的な増税措置の打ち切りが 2015 年 1 月から始まるこ とに新たな州政府や議会がどのように対応するかが焦点となってい ます。それに加え、2013 年に成立した年金改革の合憲性を巡ってイ リノイ州最高裁で行われる口頭弁論にも関心が集まる見込みです。 同州の年金改革については、2014 年 11 月に州裁判所が違憲の判 断を下しています。年金の積み立て不足問題は一部の州や自治体 にとって、依然として最大の信用リスクとなっています。プエルトリコ 債は第 1 四半期もボラティリティが続く見込みです。プエルトリコ政府 がプエルトリコ・インフラストラクチャー・ファイナンシング・オーソリティ ーを通じて市場からの資金調達を目指しているほか、プエルトリコ・エ レクトリック・アンド・パワー・オーソリティーは事業再編計画を公表す るとみられています。 2015 年は原油相場が重要な問題となるでしょうが、多くの原油輸出 国は 1997 年や 2000 年に比べ債務が著しく減少しています。それに 加え、世界経済はプラス成長を遂げている上、利回りを追求する動き が続いているため金利は低水準にあります。さらに、インフレ率も全 般的に低位で安定しており、中央銀行は 2015 年を通じて一層ハト 派的なスタンスを強める可能性があります。 見通し : オポチュニスティック。個別の問題を抱えたセクタ ーを別にすれば、2015 年は流動性が改善する見通しで、 新興国のクレジットに投資価値が生まれています。当社は 引き続き、短期の高利回り資産と、メキシコ、インドネシア、 ハンガリーなど高格付け諸国の長期債を組み合わせるとい うバーベル型の投資を選好しています。 地方債 格付けが AAA の地方債はイールドカーブ全般に渡って米国債をアン ダーパフォームし、30 年物の米国債に対する地方債の利回りレシオ は第 4 四半期末時点で 104%と、期初の 96%から上昇しました。ア ンダーパフォームしたものの、非課税地方債は第 4 四半期に着実なト ータル・リターンを上げ、高格付け債とハイ・イールド債でそれぞれ +1.37%、+1.21%となりました。年初来では、低格付けの地方債が +13.84%のリターンを上げ、高格付けの地方債(+9.05%)をアウトパ フォームしました。課税対象地方債のリターンは第 4 四半期が +4.52%、年初来では+18.79%となりました。 第 4 四半期は供給が増加する一方(前年比 28%増)、幅広い投資 需要が継続し、年末まで堅調な地合いが続きました。機関投資家に よる強い引き合いに加え、個人投資家の資金流入も続き、年初来 のミューチュアルファンドへの資金流入額はネットで 214 億ドルに達 しました。確認されたミシガン州デトロイトとカリフォルニア州ストック トンの破綻計画に基づけば、自分の債権が年金生活者と同等に扱 われると信じていた投資家は、実際にはそうならないことを知り、市 場に重要な教訓を与える形となりました。プエルトリコ債については 伝えられるニュースが概ねネガティブなものだったことから再びボラ ティリティが高まりました。プエルトリコ債を保有するのは通常とは異 なる投資家層が多かったことも、第 4 四半期のように他の市場もス トレスにさらされた場面でボラティリティを押し上げる要因となりまし た。 課税対象地方債は社債並みのパフォーマンスが見込まれますが、 社債市場が供給圧力に脆弱な状態が続いたり、企業のイベントリ スクが高まったりすれば、地方債がアウトパフォームする可能性が あります。 見通し : 米国債に対する地方債の割安な水準や好まし いテクニカル環境を踏まえ、控えめなポジティブとしてい ます。 主要国国債 FRB が 2014 年 10 月に量的緩和策の終了を決定したにもかかわら ず、米国債利回りは第 4 四半期に 7 年から 30 年までのセクターで低 下し、多くの投資家を困惑させました。 FRB は第 4 四半期に政策に関する声明を修正し、金融政策の正常化 に着手するには「辛抱強い」姿勢で臨む旨表明しました。FRB は予定通 り、2015 年半ばまでに利上げする見込みです。第 3 四半期の GDP 成 長率が 10 年以上ぶりの高い伸びを示すなど、最近の経済指標はそうし た見方を打ち消すものとはなっていません。実際、米国では 11 月の雇 用者数が 32 万 1,000 人増加し、上方修正された 10 月の 24 万 3,000 人に続いて雇用の伸びが加速しています。 当ページのデータ出所:エマージング債=JP モルガン、地方債のリターン=バークレイズ、地方債の供給=JP モルガン、米国債=ブルームバーグ、 モーゲージ債=バークレイズ Page 14 Q1 2015 Sector Outlook 米国のイールドカーブは今後の金融引き締めを見越してフラッ ト化し、2 年債と 30 年債のスプレッドは第 4 四半期にさらに 55 bps 縮小して 204 bps となりました。イールドカーブのフラ ット化は一段落した模様ですが、5 年から 30 年の年限ゾーン には依然としてある程度の投資価値があると思われます。 モーゲージ債 エージェンシー・モーゲージ担保証券(MBS)は第 4 四半期のトータ ル・リターンが+1.79%となり、年初来では+6.08%に達しました。米国 債に対するエージェンシーMBS の超過リターンは第 4 四半期に 1 bps のマイナスとなりましたが、年間では 40 bps アウトパフォームし ました。他のスプレッド・セクターが市場におけるリスク回避傾向を受 けてボラティリティを高める中、MBS の名目およびオプション調整後 のスプレッドは 2014 年の最低水準へと回帰しました。 最終的な FF 金利水準に関する市場の見通しは第 4 四半期に一段 と低下し、依然として大半の連邦公開市場委員会(FOMC)メンバー の見方を大幅に下回る水準にとどまっています。 今後は金融政策の引き締めが予想されるにもかかわらず、グローバ ルな視点で見れば米国債には依然として魅力があり、第 4 四半期は 長期の米国債がドイツ連邦債をわずかながらアウトパフォームしまし た。10 年債利回りはドイツの 10 年国債利回りが 0.54%、日本の 10 年国債利回りが 0.33%にあることも、先々の米国債相場のサポート 要因です。 特に日本や欧州を始めとして世界の国債利回りは抑制された動きが 続くとみられますが、米国と英国では利上げが実施される可能性から、 両国の国債利回りには上昇リスクが若干あります。このため当社で は、米国と英国の 10 年債利回りは 1.50~2.50%のレンジで推移す ると予想するのに対し、ドイツと日本の 10 年債利回りは 0.25~ 1.00%にとどまると予想します。 金利スワップのスプレッドは第 4 四半期に変化がありませんでした が、今後については、特に短期ゾーンを中心に拡大するとの見方 を維持しています。 インフレ期待に関しては、5 年物インフレ連動債(TIPS)のブレーク・イ ーブン・インフレ率(BEI)が金融危機以降の最低水準となる 1%近く に低下しました。10 年物の BEI も同様に低下しましたが、今後は BEI が足もとの低い水準から上昇する可能性があります。 見通し : 戦術的にオポチュニスティック。特に最近のボラ ティリティを受けてスプレッド・セクターに大きな投資価値が あるとみられますが、米国債の 5 年から 30 年セクターや TIPS の 5 年セクターなど、一部の政府債には引き続き投 資機会があると考えています。 第 4 四半期は、MBS にとって年間を通じて存在したテクニカルなテ ーマが引き続き追い風となりました。つまり、MBS のネットの供給が 予想を大幅に下回る水準にとどまったことや、価格が下落した場面で は利回りを追求する投資家の買いが膨らんだこと、FRB による定期 的な MBS の買い入れなどです。しかしながら、連邦政府抵当金庫 (ジニー・メイ)は供給増や期限前返済(プリペイメント)の好ましくない 動向、連邦住宅抵当公庫(ファニー・メイ)に比べ投資家の需要が限 られていたことなどが響き、明確にアンダーパフォームしました。 FRB は 10 月の FOMC で MBS 買い入れプログラムの縮小を決め ましたが、元本や金利の再投資を通じて MBS 保有残高は維持する 方針で、それは 2015 年に初の利上げが行われた後もしばらく継続 する見込みです。FRB は MBS を 1 兆 7,000 億ドル以上保有してお り、現在のプリペイメント動向から判断すれば、それは月間 200 億ド ル程度の再投資に相当すると見込まれます。 2015 年第 1 四半期には、モーゲージ貸出金利が引き続きレンジ内で 推移し、モーゲージの申請件数も低水準にとどまるとみられるため、 MBS 市場のテクニカル要因は厳しい環境が続く見込みです。連邦住 宅金融局(FHFA)は最近、モーゲージを組成する金融機関に住宅購 入者への貸付基準の緩和を促すため、表明・保証リスクを明示しまし たが、実際に住宅購入者が融資を受けやすくなるかどうかは時間が経 たなければ分かりません。それまでは、2015 年のモーゲージ供給はネ ットで 2014 年と同じ 500 億~1,000 億ドル程度で推移する見込みで す。利回りが上昇すれば、利回りを追求する投資家が市場に戻ってく る可能性があります。さらに、FRB による MBS ポートフォリオの再投 資プログラムは、MBS のスプレッドが大幅に拡大するのを抑える役割 を果たすとみられるほか、MBS の発行クーポンの中で最もコンベクシ ティの好ましくない証券を受け取ることにより、引き続きボラティリティを 抑制する見込みです。 当ページのデータ出所:米国債=ブルームバーグ、モーゲージ債=バークレイズ Page 15 Q1 2015 Sector Outlook 最近のスプレッドのパフォーマンスを踏まえれば、MBS よりも他のス プレッド・セクターの方が魅力的だとみられますが、MBS の組成が限 られていることを考えれば、テクニカル面では米国債に対する MBS の底堅い環境が続く可能性があることも認識しています。 現時点では、FRB が MBS の買い入れを完全に打ち切る時期が近 づくのに伴い、TBA 取引の受け渡し適格銘柄が弱含むことが予想さ れるため、引き続き経年物のプールを選好しています。また、中期セ クターの MBS に対して 30 年セクターを若干オーバーウェートとして います。さらに、2014 年に MBS ユニバースで最もパフォーマンスが 低調だった GNMA セクターについては、アンダーウェートの度合い を縮小すべきだと考えています。 見通し : MBS よりも他のスプレッド・セクターが魅力的です が、組成が限られていることを踏まえれば、米国債に対する MBS の底堅いテクニカル環境が続く可能性があることを認 識しています。 証券化商品 当社ではシニア・トランシェについては非常に強気の見方を維持して おり、高格付けセクターには引き続き投資価値があると考えています。 しかしながら、証券化商品のスプレッドは第 4 四半期にわずかに拡大 しました。2015 年入りするに当たり、このセクターについては多くの新 たな動きが現れています。FRB のシニア・ローン・オフィサー・サーベ イ(貸出動向調査)では、借入需要は依然として低調で、全般的にモ ーゲージ借入は依然として利用しにくい状態が続いているにも拘わら ず、第 4 四半期には 貸出条件が緩和したことが示されました。政府 支援機関(GSE)の信用リスク移転(CRT)債の発行は活発で、特に 信用度の低いものを中心にスプレッドを圧迫しています。700 億ドル に上る 2005 年ビンテージの商業用モーゲージ担保証券(CMBS)の ローンが来年借り換えられる見通しで、その結果、発行済みCMBS 全体のスプレッド・デュレーションが長期化する見込みです。ECB が 量的緩和を通じて購入している資産担保証券はごくわずかで、2015 年 1 月 2 日時点で累計 17 億ユーロにとどまっています。さらに、エネ ルギー価格の下落は消費者の可処分所得を押し上げるため証券化 商品のクレジットにとってプラス要因になるとみられる一方、エネルギ ー・セクターへの CMBS のエクスポージャーは小規模にとどまってい ます(CMBS ローンの発行残高のうち、エネルギー産出地域へのロー ンはわずか 2%程度)。 ドが銀行の投資需要が薄れたことから 30-40 bps 拡大し、 LIBOR(L)+130-140 となったことです。CMBS のスプレッドは市場全 体のリスク回避の動きに対し脆弱ですが、当社は CMBS はエネル ギー業界へのエクスポージャーも小さく、ファンダメンタルズ面で優位 にあると考えています。商業用不動産の価値は 3%上昇し、2007 年 のピークとほぼ同じ水準を回復しました。民間のコンデュイット型 CMBS の新規発行は 2014 年に 600 億ドルとなり、2015 年は 750 億ドルの発行が見込まれています。一方、ファニー・メイと連邦住宅 金融抵当公庫(フレディ・マック)は 2014 年に集合住宅を担保として 500 億ドルの CMBS を組成しましたが、2015 年の発行額は 600 億 ドルになる見込みです。2006/2007 年の CMBS プールの債務不履 行は依然として高水準ですが、状況は引き続き改善しています。損 失はジュニア AAA(AJ)やそれ以下のクラスなどの劣後債に限定さ れるとみられます。 消費関連 ABS – 消費関連 ABS 市場では、新規発行および流通市 場ともに高水準の供給があったため、スプレッドが若干拡大しました。 この動きはフロントエンドの好ましくないテクニカル要因を反映したも ので、消費者の信用ファンダメンタルズが良好であることを考えれば、 新規投資にとってより好ましい環境を提供していると考えられます。 ベンチマークとなるクレジットカード ABS や自動車ローン ABS は 第 4 四半期にスプレッドが 5 bps 拡大し(5 年物 AAA 格クレジット カード ABS は LIBOR(L)+45)、2014 年の新規発行額は約 1,950 億ドル(新規供給は 300 億ドル)と、2013 年に比べ 10%増加しま した。 非エージェンシー住宅モーゲージ– 非エージェンシー住宅モーゲー ジ・セクターでは第 4 四半期もこれまでのトレンドが継続しました。 第 4 四半期のシニア・トランシェの価格は CRT 債を除き、概ねレンジ 内で推移しました。住宅価格は過去 2 年にわたり 2 桁の伸びを示し た後も、2014 年に 4~6%程度上昇した模様で、2015 年は 3~5% の伸びが予想されます。GSE や連邦住宅局(FHA)がモーゲージ組 成の約 80%を占めている上、GSE や FHA からの引き取りリスクを 最小限に抑えるためモーゲージ組成銀行の引き受け基準が依然とし て厳しいことから、モーゲージ・ ローンは借入しにくい状況が続いて います。それでも、直近の FRB による貸出動向調査では、貸付基準 がわずかに緩和されていることが示されており、そのトレンドは今後も 続くことが予想されます。第 4 四半期の CRT 市場は弱いテクニカル 要因を背景に 不安定な動きとなりました。CRT の発行残高は約 100 億ドルで、2015 年はその倍に上る新規発行が予想されています。 CMBS – 最もシニア部分の CMBS には引き続き投資魅力があるとみ られます。残存する 2006/2007 スーパー・シニア CMBS のスプレッド はわずかに拡大し、現在はスワップ(S)+75-100 bps 前後で推移し ています。 新発の 10 年物スーパー・シニア債は、第 4 四半期の新規供給が 150 億ドルに減少しましたが、市場がその消化を続ける中、スプレ ッドがわずかに拡大(S+80 bps 台半ば)しました。エージェンシー CMBS のスプレッドも若干拡大し、足もとは S+40 bps で取引され ています。更に注目すべきことは、AAA 格の変動利付債のスプレッ 当ページのデータ出所:モーゲージ債=バークレイズ、証券化商品=バークレイズ、CLO=プルデンシャル・フィクスト・インカム Page 16 Q1 2015 Sector Outlook 発行残高と比較して高水準の新規発行が行われれば、低クレジット のトランシェのスプレッドのパフォーマンスを不安定にすることが予想 されますが、どちらの CRT プログラムにとっても、先に償還する M1 トランシェは短期市場のキャリー・トレードとしての価値があると考え ます。金融危機以前に発行されたレガシー債については、モーゲー ジのデフォルトは引き続き低下していく見通しで、年間の返済率が発 行残高の約 15%に達している一方で、銀行貸付(ホール・ローン)が 証券化に比べ執行面で好ましいため新規発行が最小限にとどまっ ていることから、テクニカル面でも好環境が続いています。当社では 2005 年およびそれ以前に発行された十分に信用補完されているサ ブプライム証券を選好しており、これらの債券は L+100-200 bps の レンジで取引されています。さらに、2006/2007 年ビンテージのシ ニア債およびそれらの REMIC(不動産モーゲージ投資コンデュイッ ト)の一部についても投資価値があると考えており、これらは L+200300 bps のレンジで取引されています。 CLO が発行市場と流通市場どちらでも優れた相対的価値を提供 しているとの見方に変わりはありません。米国の発行市場では、 AAA トランシェに投資する投資家にとって、スプレッドや融資条件 を交渉する上で好ましい環境が続いています。長期的には CLO のスプレッドが縮小すると強く確信していますが、短・中期的には 引き続き供給と規制動向がスプレッド動向を左右する見通しで、フ ァンダメンタル面で魅力的な当該資産クラスのポジションを機動的 に積み増す上で好ましい環境を提供する見込みです。 見通し : 最優先トランシェに対して非常にポジティブ。シニ アのメザニン・キャッシュフローには選別的にポジティブ、相 対的に低格付けの新発 CMBS についてはローン引受け 基準が劣化しているためネガティブ。 CLO: AAA 格の米国 CLO(ローン担保証券)は、新たな投資家が引 き続き CLO 市場に流入しているにもかかわらず、発行市場のスプレ ッドが 7 bps 拡大し、L+155 bps となりました。供給過剰や規制動向 などテクニカル要因が逆風となっていることから、スプレッドは依然と して割安水準にあります。2014 年は米国で 250 件以上、グロスで 1,300 億ドル以上の発行があり、過去最高を記録した模様です。 2014 年のネットベースの発行額は約 650 億ドルに達しました。流通 市場における平均残存年限の短い CLO のスプレッドは L+80 bps と横ばいに止まりました。 欧州では、発行市場における AAA 格の CLO のスプレッドは変わら ずの L+130 bps となりました。米国とは異なり、リスク・リテンション規 制を背景に供給が引き続き抑制され、2014 年の発行額はネットベー スで横ばいに止まりました。さらにマリオ・ドラギ総裁率いる ECB によ る ABS 買い入れもスプレッドを比較的安定させる効果がありました。 当ページのデータ出所:証券化商品=バークレイズ、CLO=プルデンシャル・フィクスト・インカム Page 17 留意事項 1 本資料は、経済状況、資産クラス、有価証券、発行体または金融商品に関する資料作成者の見解、意見及び推奨を示したものです。本資料に記載 されている情報は、現時点でプルデンシャル・フィクスト・インカム(以下「PFI」)が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報の 正確性、完全性、および情報が変更されないことを保証するものではありません。本資料に記載した情報は、現時点(または本資料に記載したそれ 以前の日付)における最新の情報です。基礎となる前提条件および見解は予告なく変更されることがあります。PFI は情報の一部または全部を更 新する義務を負うものではありません。また、情報の完全性または正確性について明示黙示を問わず何ら保証するものでなく、誤謬についての責 任を負うものでもありません。 本資料を当初の配布先以外の方(当初の配布先の投資アドバイザーを含む)に配布することは認められておりません。また PFI の事前の同意なく、 本資料の一部または全部を転用することや記載内容を開示することを禁止いたします。本資料は特定の証券、その他の金融商品、または資産運 用サービスの勧誘を目的としたものではなく、投資に関する判断材料として用いるべきではありません。どのような投資戦略やリスク管理技術も、 いかなる市場環境においてもリターンを獲得できることや、リスクを縮小できることを保証することはできません。過去のパフォーマンスは将来の運 用成績を保証するものではなく、また信頼できる指標となるものでもありません。投資は損失となることがあります。本資料に記載されている情報や 本資料から導出した情報を利用したことにより(直接的、間接的、または派生的に)被り得るいかなる損失ついても、一切責任を負いません。プル デンシャル・フィクスト・インカムおよびその関係会社は、それぞれの自己勘定を含め、本資料で示した推奨や見解と矛盾する投資判断を下す可能 性があります。 本資料はそれぞれのお客様の置かれている状況、投資目的、あるいはニーズを考慮しておりません。また、特定のお客様に対して特定の証券、金 融商品、または投資戦略を推奨するものでもありません。いかなる証券、金融商品、または投資戦略についても、これらが特定のお客様にとって適 切であるかどうかに関する決定は下しておりません。本資料に記載された証券または金融商品についてのご判断はご自身で行ってください。 本資料に表示する予測や予想は本資料作成日時点のものであり、予告なく変更されることがあります。実際のデータはこれらの予想や見通しとは 異なり、本資料には反映されない可能性があります。予想や見通しは非常に不確実なものです。したがって、いかなる予想や見通しも単に可能性と して数ある結果のうちの一つを表すものとしてみなされるべきものです。予測や予想は推測されたもので、仮定事項に基づく値であり、後日大幅に 修正される可能性があるため、経済や市場の状況の変動に伴って大きく変更されるおそれがあります。PFI はいかなる予想や見通しに関する更新 や変更の義務を負うものではありません。 利益相反:PFI およびその関連会社が、本資料で言及した有価証券の発行体との間で、投資顧問契約や他の取引関係を結ぶ可能性があります。 時には PFI およびその関連会社や役職員が、本資料で言及した有価証券や金融商品をロングもしくはショートするポジションを保有する可能性、お よびそれらの有価証券や金融商品を売買する可能性があります。PFI の関連会社が、本資料に記載する推奨とは無関係の異なる調査資料を作成 して発行することもあります。営業、マーケティング、トレーディングの担当者など、本資料作成者以外の従業員が、本資料に表示する見解とは異な る市場に関するコメントもしくは意見を、口頭もしくは書面で PFI の顧客もしくは見込み客に提示する可能性、または、本資料に表示する見解とは異 なる独自の投資案を提示する可能性もあります。利益相反もしくはそのおそれについて、詳しくは PFI のフォーム ADV 第 2A 部をご覧ください。 PFI は、米国で登録している関連投資顧問会社であるプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・インク(以下「PIM Inc」)およびプルデンシャ ル・ファイナンシャル(プラメリカ・ファイナンシャル)を通して事業を行っています。欧州および一部のアジアの国においては、PIM Inc およびプルデ ンシャル・フィクスト・インカムはプラメリカ・インベストメント・マネジメントおよびプラメリカ・フィクスト・インカムとして事業を行っています。プラメリカ・フ ァイナンシャルは、英国プルーデンシャル社とはなんら関係がありません。 情報提供については、ドイツでは、プラメリカ・リアル・エステート・インターナショナル AG が担当しています。英国では、プラメリカ・インベストメント・ マネジメントの間接子会社であるプラメリカ・インベストメント・マネジメント・リミテッド(PIML)が、担当しています。PIML は英国金融行動監督機構 (FCA)の認可を受けており、FCA の規制が適用される他(登録番号 193418)、欧州経済領域(EEA)内の様々な法域でも正式に認可を受けてい ます。一部のアジア諸国では、シンガポール金融管理庁(MAS)に登録しその認可を受けた同国の投資運用会社であるプラメリカ・フィクスト・インカ ム(アジア)リミテッドが担当しています。日本では、国内の登録投資顧問会社であるプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会 社が担当しています。プラメリカ、プラメリカのロゴ、およびロック・シンボルは、プラメリカ・ファイナンシャルおよびその関係会社のサービスマークで あり、多数の国・地域で登録されています。 © 2015 Prudential Financial, Inc. and its related entities. 各セクターのパフォーマンスは下記のインデックスに基づきます: ・米国投資適格社債: バークレイズ米国社債インデックス ・米長期国債: バークレイズ長期米国トレジャリー・インデックス ・米国投資適格長期社債: バークレイズ長期米ドル社債インデックス Page 18 ・欧州投資適格社債: アイボックス・ユーロ・コーポレート・インデックス 100% 米ドルヘッジ付き ・米国ハイ・イールド債: バンクオブアメリカ・メリルリンチ米国ハイ・イールド・インデックス ・欧州ハイ・イールド債: メリルリンチ・ヨーロピアン・カレンシー・ハイ・イールド 除くファイナンス2%・コンストレイン・インデックス ・米国レバレッジド・ローン: クレディスイス・レバレッジド・ローン・インデックス ・欧州レバレッジド・ローン: クレディスイス・ウェスタン・ヨーロピアン・レバレッジド・ローン・インデックス: ヘッジなし ・ハードカレンシー建てエマージング・ソブリン債: JP モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・グローバル・ディバーシファイド指数 ・現地通貨建てエマージング債(米ドルヘッジ付): JP モルガン・ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケット・グローバル・ディバーシ ファイド指数 ・エマージング社債: JP モルガン・コーポレート・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・ブロード指数 ・エマージング・ローカル通貨: JP モルガン・エマージング・ローカル・マーケッツ・インデックス・プラス ・地方債: バークレイズ・ミュニシパル・ボンド・インデックス ・米国債: バークレイズ米国トレジャリー・ボンド・インデックス ・エージェンシーMBS 債: バークレイズ米国モーゲージ・バック・セキュリティー - エージェンシー・フィクスト・レート・インデックス ・CMBS: バークレイズ・コマーシャル・モーゲージ・バック・セキュリティー: エリザ・エリジブル・インデックス ・米国総合: バークレイズ米国総合ボンド・インデックス 留意事項 2 本資料はプルデンシャル・フィクスト・インカムが作成した"1st Quarter Outlook "をプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社 が翻訳したものです。 本資料は、特定の金融商品の勧誘または販売を目的としたものではありません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。 本資料に記載されている市場動向等に関する意見等は本資料作成日時点でのプルデンシャル・フィクスト・インカムの見解であり、事前の通知なし に変更されることがあります。 本資料は、プルデンシャル・フィクスト・インカムが信頼できると判断した各種情報源から入手した情報に基づき作成していますが、情報の正確性を 保証するものではありません。プルデンシャル・フィクスト・インカムは、米国 SEC 登録投資顧問会社であるプルデンシャル・インベストメント・マネジ メント・インクのパブリック債券運用部門です。 原文(英語版)と本資料の間に差異がある場合には、原文(英語版)の内容が優先します。詳細は原文(英語版)をご参照ください。 “Prudential”、プルデンシャル・ロゴおよびロック・シンボルは、プルデンシャル・ファイナンシャル・インクおよびその関連会社のサービスマークであり、 多数の国・地域で登録されています。 プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社は、世界最大級の金融サービス機関プルデ ンシャル・ファイナンシャルの一員であり、英国プルーデンシャル社とはなんら関係がありません。 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