癒されぬ輪禍 されぬ輪禍 交通事故関係者の 交通事故関係者の手記 思い出すだけで涙 すだけで涙があふれてくる 仕事柄、いくつもの交通事故現場を見てきましたが、交通事故は体験 しなければ「他人事の世界」であり、実際に遭遇して初めてその悲惨さ がわかるというのが現実です。自分が見聞きした事故のなかで、思い出 すだけで涙があふれてくる二つの事故を記しておきます。 * 交差点を横断しようとした小学生の女の子が、左折ダンプに巻き込ま れて死亡しました。ダンプを運転していた青年は、現場でぐったりして いる女の子を必死で抱き上げ、救急車に同乗して病院に到着しました。 その直後、青年は女の子の死を知らされ、病院の五階から飛び降り自殺 をしました。彼は、近所でも評判の子ども好きの青年だったそうです。 病院で絶叫する女の子の両親、自らの命を断った息子を思い、その場 にしゃがみ込んで悲しみに耐え続ける老年の母親。駆けつけた警察官も その悲惨さに涙があふれ、唇をかみしめるだけで何も尋ねることができ なかったとのことです。 * 雨の日の午後、小学生の女の子が下校の途中、脇見運転の乗用車には ねられ、死亡しました。 葬儀が終わり、女の子の家族も親戚も虚無状態の毎日を過ごしていま したが、ある雨の日、母親の姿が見えません。家族、親戚が総出で探し たところ、女の子が通学していた小学校の校門前で我が子の傘を持ち、 いつまでもたたずんでいる母親の姿を見つけました。 女の子の父親から話を聞いた警察官は辛くやるせない一日を過ごした。 * 交通事故で家族を亡くされた遺族の方々の無念さは、筆舌に尽くせま せん。車という便利な乗り物がいつでも危険な凶器に変わり得ることを、 私自身を含めドライバーの方全員が心に刻み、安全運転に徹することで、 交通事故の犠牲者が一人でも少なくなることを願ってやみません。
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