<船体動揺の数値シミュレーション技術>

●技術紹介
<船体動揺の数値シミュレーション技術>
1.概 要
近年港湾では,防波堤の整備により波浪に対する静穏性は向上してきています.港内の
静 穏 度 は ,「 港 湾 の 施 設 の 技 術 上 の 基 準 ・ 同 解 説 」 に お い て , 年 間 の 未 超 過 出 現 率 97.5%
に 相 当 す る 波 浪 条 件 に 対 し て , 港 内 の 到 達 波 高 が 0.5m 以 下 ( 中 ・ 大 型 船 舶 ) と な る こ と
を目標として、施設の計画がなされています.しかしながら,季節風や長周期波による荷
役障害は依然発生しており,港湾の稼働率低下も問題となっています.近年では,係留船
舶 の 動 揺 に 波 周 期 20∼ 30s 以 上 の 長 周 期 波 が 大 き く 影 響 す る と 指 摘 さ れ て お り ,波 高 が 小
さくても長周期波が存在することで船舶に大きな動揺が生じ,荷役に支障を及ぼす現象も
報告されています.
従って,荷役障害の抑制効果の確認には,波浪による稼働率の評価だけでなく,係留さ
れる船舶の動揺量を数値シミュレーションにより評価することで,より実態に合った荷役
稼働率が把握可能になります.
2.船体動揺の数値シミュレーション
船 舶 の 動 揺 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン は ,「 独 立
行政法人港湾空港技術研究所」の所有する
船体動揺量計算プログラムを用います.
このプログラムでは風波・風・潮流を外
力とすることはもちろん,船体動揺に影響
及ぼす長周期波についても任意に入力で
き,あらゆる自然条件下での時系列的な船
体の動揺が計算可能であり、動揺量はもち
ろん係留索張力や,防舷材の変位量も求め
ることができます.また,係留索や防舷材
の配置が任意に設定できるため,どのよう
な形状のバースにおいても精度良く動揺
量を求めることができます.
3.解析結果例(荷役稼働率の算定)
当社では,上述の動揺計算プログラムを
用いて船体動揺量による荷役稼働率の評価
を行っています.
動揺量を用いることで,長周期波等の影
響を含む,より実態に合った荷役稼働率を
用いて,静穏度の解析を行うことでより精
度の高い評価が可能となりました.
一般に,船舶の動揺量を用いて稼働率を
評価する際には,波浪出現頻度表に対応し
た計算ケースを係留条件毎に実施する必
要があり,きわめて煩雑な作業となります
が ,本 シ ス テ ム を 使 用 す る こ と に よ り 効 率
的に行うことが可能です.
( 担 当:沿 岸 デ ザ イ ン 本 部
環境水工部)