日本英語教育学会 第 43 回年次研究集会 論文集

日本英語教育学会
第 43 回年次研究集会
論文集
2013 年 3 月 16,17 日 開催
早稲田大学早稲田キャンパス 8 号館 3 階
303/304/305 会議室
日本英語教育学会編集委員会編集
早稲田大学情報教育研究所発行
2014 年 3 月 31 日
目次
工学系大学院の留学生を対象とした漢字語彙教育の実践:「工学系話し言葉コーパス」のデータを用いて
1
遠藤直子・伊藤夏実・ 菅谷有子・ 古市由美子・ 森幸穂
国際バカロレア・ディプロマプログラム科目「総合的な学習の時間」の課題における「知識の理論(TOK)」
の有用性
11
大塚恵理子
Does accented English affect speaker's credibility?: Learning pronunciation and its economic
rationality
19
鍋井理沙
中学 1 年生におけるリーディングからライティングへのプロジェクト実践報告
31
執行智子・ カレイラ松崎順子
六ヶ国八大学間連携による mixxt を利用した国際プロジェクトの成果について:日本人大学生の英語力
の伸長と参加度・性格・IT 利用経験との関係から
41
鈴木千鶴子・石田憲一・吉原将太
コンピューター・メディア・コミュニケーション(CMC)を用いたコースデザインとその有用性
49
ティム マーチャンド・阿久津純恵
日本語の会話ジョークにおけるリスナーシップ
57
難波彩子
小・中英語教育の接続と連携の試み
:小・中学校で活用できる共通教材の試作と試用
西垣知佳子・山下美峰・高橋直美・田村敦
63
カリキュラム構成が教員の認識に及ぼす影響:
「高校国語」と「国際バカロレアDP言語A」の比較から
御手洗明佳
71
大学における TOEFL iBT 対策授業についての実践報告:スピーキング・セクションを意識して
森下美和
81
日本語を第一言語とする英語学習者の比較的自発的な発話におけるフィラーに見られるいくつかの特徴
横森大輔・遠藤智子・河村まゆみ・鈴木正紀・原田康也
日本英語教育学会会長(2010/04-2016/03)
89
原田康也
日本英語教育学会編集担当(2010/04-2016/03)
坪田康
編集委員(50 音順)
(2010/04-2016/03)
金丸敏幸(編集委員長)
黒田航
坪田康
原田康也
山本昭夫
査読候補者一覧(編集委員を除く)
(50 音順)
(2014/03 現在)
Laurence Anthony
小張敬之
栗山健
阪井和男
鈴木正紀
Glenn Stockwell
徳永健伸
中村智栄
前野譲二
横川博一
横森大輔
前坊香菜子
森下美和
首藤佐智子
山本ゆうじ
Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the English Language Education Society of Japan
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
工学系大学院の留学生を対象とした漢字語彙教育の実践
-「工学系話し言葉コーパス」のデータを用いて-
遠藤 直子 1
伊藤 夏実 2
1 東京大学大学院工学系研究科
菅谷 有子 2
古市
由美子 2
森
幸穂 1
日本語教育部門 〒113-8656 東京都文京区本郷 7-3-1(2012 年 3 月末まで)
日本語教育部門 〒113-8656 東京都文京区本郷 7-3-1
E-mail: [email protected]
2 東京大学大学院工学系研究科
概要 2011 年から東京大学大学院工学系研究科日本語教室で行っている「専門語彙・漢字クラス」について報告
する。当クラスは中級レベルの工学系留学生を対象とし、
「工学系話し言葉コーパス」のデータに基づいた単漢字(以
後、「学習漢字」と称す)や、それを含む語などを導入した。また、クラスで学んだ漢字語彙を使って文を作成する
際、「読む・書く」だけでなく、「聞く・話す」ことを意識するよう、学習者が自ら文脈を設定できるようなアイコ
ンを付したタスクシートを用いた。このような漢字語彙教育の新しい試みについて、2012 年に学習者に行ったアン
ケート、インタビューの分析結果から①共起表現を含む様々な例文提示に対する高い評価を得たこと、②漢字語彙
のアクセントが意識化されることの示唆を得たこと、さらに③アイコンのあるタスクシートは文脈を意識した産出
に結び付き、実用的な表現を身につけるのに効果があることがわかった。
Kanji and vocabulary class in the engineering fields
-using Engineering Spoken Japanese Corpus-
Naoko ENDO 1 Natsumi ITO 2 Yuko SUGAYA 2
Yumiko FURUICHI 2 and
Sachiho MORI 1
1 The
University of Tokyo, School of Engineering, Japanese Language Class 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku
Tokyo, 113-8656 Japan(by the end of March, 2013)
2 The
University of Tokyo, School of Engineering, Japanese Language Class 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku
Tokyo, 113-8656 Japan
E-mail: [email protected]
Abstract
This paper reports learning kanji and vocabulary in the engineering fields in the Japanese Language
Class at the University of Tokyo, graduate school of Engineering. The target kanji characters and its vocabulary
words were chosen based on the results of the analysis of Engineering Spoken Japanese Corpus. The students could
choose a context by using a variety of icons to make a sentence with the target kanji, so that not only their reading
and writing skills but also their listening and speaking skills were enhanced in the kanji and vocabulary class. The
results of the questionnaires and interview show that the attempt to learn kanji and vocabulary in spoken context
was successful in 1) providing a variety of example sentences including collocations, 2) raising students’ awareness
towards accents in the kanji vocabulary words and 3) enhancing student’s productive skills through a
contextualized approach.
1. は じ め に
「日本語の実態を客観的につかむのに有効である」と
本 論 文 は 、「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」 の デ ー タ を
述べている 。当研究チームでは留学生の研究生活の支
もとにした漢字語彙教育について報告する。大曾
援 を 目 的 と し 、ゼ ミ 内 で の 発 話 デ ー タ を も と に し た「 工
( 2006)
[ 1]
は 、「 コ ー パ ス は 豊 富 な 実 例 の 宝 庫 で あ り ,
学系話し言葉コーパス」を構築している。 当該コーパ
これが日本語研究,日本語教育に利用できるようにな
スが話し言葉を集積したものであることからその特性
ったこと」を歓迎すべきこととし、コーパスの利用は
を 活 か し た 漢 字 語 彙 教 育 を 行 う 試 み と し て 2011 年 か
遠藤 直子, 伊藤 夏実, 菅谷 有子, 古市 由美子, 森 幸穂,
"工学系大学院の留学生を対象とした漢字語彙教育の実践:「工学系話し言葉コーパス」のデータを用いて ,"
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集, pp. 1-10, 日本英語教育学会編集委員会編集, 早稲田大学情報教育研究所発行, 2014 年 3 月 31 日.
This proceedings compilation published by the Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda University.
Copyright © 2014 by Naoko ENDO, Natsumi ITO, Yuko SUGAYA, Yumiko FURUICHI and Sachiho MORI All rights reserved.
ら「専門語彙・漢字クラス」を開講し た。このクラス
であり、専門分野の漢字語彙教育も視野に入れなけれ
で使用する タスクシートに工夫をこらすことで、話し
ばならない からである 。
言葉の中でどのように漢字語彙が使われるかというこ
理工系留学生の語彙教育のための研究として、小宮
( 2005) [ 4] 、曹 ・仁 科 (2006)
とを学習できるようにするものである。
[5 ] な ど が あ り 、書 き 言 葉
2.1.で は 漢 字 語 彙 の デ ー タ に 使 用 し た 「 工 学 系 話 し
コーパス、専門用語辞典な ど、書き言葉を資源とした
言 葉 コ ー パ ス 」 の 概 要 に つ い て 述 べ 、 2.2.で は 先 行 研
専門用語の基礎研究や教材研究が多く なされている。
究を概観する。
しかしながら、理工系留学生の中には 「ゼミ発表や
ディスカッション内容を理解することが求められる」
2.研 究 背景
(東京大学大学院工学系研究科国際交流室日本語教室,
2.1.「工 学 系話 し言葉コーパス」とは
工 学 系 研 究 科 日 本 語 教 室 報 告 書 2010 年 度 ,pp.19-20)
[6]
本 研 究 チ ー ム は 2007 年 よ り 工 学 系 研 究 室 の ゼ ミ 内
場合もあるこ とから、書き言葉としての 漢字語彙教
の日本語による発表、質疑応答を含む自然発話を収録
育だけでなく、
「 聞 く・話 す 」に つ な げ る 漢 字 語 彙 教 育
し 、「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」を 構 築 し て い る 。収 録
も必要であることがわかる。
理工系話し言葉コーパスに基づいた研究では、林ほ
した音声データは、文字起こしの専門業者に依頼し、
聞 き 取 れ る 音 は す べ て 文 字 化 し た 。文 字 化 に つ い て は 、
か( 2012) [ 7 ] が 日 英 の 理 工 系 口 頭 発 表 コ ー パ ス の 構 築
本研究チームで指定した表記に関する統一ルールに沿
を試み、研究や発表に用いる表現を検索できるサイト
って行い、 イントネーションやアクセントなどの情報
JECPRESE を 開 発 し て い る 。 こ れ ら の 検 索 サ イ ト も
は入れていない。 これらの情報が必要な場合は、音声
英語学習者のみならず 日本語学習者の 「聞く・話す」
データに立ち戻り、確認している。なお、 頻度の高い
能力を効果的に伸ばすものであると考えられるが、日
語については、正確な表記であるかどうか、データを
本語で検索する場合、カタカナ表記や漢字語彙の読み
収集した研究室に確認を依頼して いる。これまで に、
書きが十分でない学習者には使いこなすことが困難で
工 学 系 の 4 分 野 ( 電 気 系 工 学 、都 市 環 境 工 学 、 都 市 計
あると思われる。
画 、 建 築 学 ) に お い て 約 80 時 間 収 録 し 、 形 態 素 解 析
邱( 2002) [ 8] は 、 日 本 語 母 語 話 者 と 漢 字 圏 と 非 漢 字
に は KH Coder( 日 本 語 の テ キ ス ト 型 デ ー タ を 計 量 的
圏の日本語学習者を対象に、意味判断課題を用い、漢
に分析するために開発されたツール。茶筌の形態素解
字熟語の意味アクセスに形態情報及び音韻情報がどの
析 情 報 を 元 に し て い る 。 http://khc.sourceforge.net/)
ようにかかわっていくかを明らかにしている。同論文
を 使 用 し 、延 べ 語 数 1,177,834、異 な り 語 数 51,277 が
は 、結 論 と し て 、漢 字 圏 日 本 語 学 習 者( 韓 国 人 学 習 者 )
得 ら れ て い る 。現 在 、 新 た に 3 分 野 ( 社 会 基 盤 学 、化
は「漢字熟語の意味を暗記するだけではなく,音読練
学 シ ス テ ム 工 学 、 電 子 情 報 学 ) の デ ー タ を 加 え 、 2011
習のような,漢字熟語の形態と日本語の音との連結を
年 度 か ら は 「 理 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス ( SESJ コ ー
強化する学習が必要」であり、非漢字圏日本語学習者
パ ス )」と 名 称 を 変 え て い る が 、今 回 の 実 践 報 告 は 前 述
は 、「 日 本 語 漢 字 の 学 習 が あ る 程 度 進 ん で か ら ,漢 字 熟
の 4 分 野 を カ バ ー し た 「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」の
語の形態と意味との連結を強化することが重要」と述
デ ー タ を 対 象 と し て い る 。「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」
べている。漢字語彙を学ぶ学習者にとって形態と音と
の 詳 細 に つ い て は 伊 藤 ほ か( 2013)[ 2] を 参 照 さ れ た い 。
意味を連結させる作業が重要であることがわかる。 邱
2.2.先行 研 究
( 2002)も 指 摘 し て い る よ う に 、非 漢 字 圏 日 本 語 学 習
者は漢字熟語の意味アクセスに音韻処理の経路を使用
従来の漢字語彙教育は、中・上級以上の読解のため
する傾向があることから、同音異義語が多い漢字語彙
の漢字語彙教育を除いて、
「 初 級 の 基 本 語 彙( 動 詞 や 形
を理解することが難しいと考えられる。
容詞、名詞など)や文型練習のための語彙(基本動詞
「容量」という漢字熟語を授業で取り上げた時、学
や形容詞などと文中で共起する語)を一定量ずつ導入
習者から「その『ようりょう』は『ようりょうがいい
する」
( 加 納 2000)[3 ] 方 法 が と ら れ て い る 。同 論 文 は 、
人 』 と 使 い ま す か 。 研 究 室 で 聞 い た こ と が あ り ま す 。」
「積み上げ方式」への批判から「コミュニカティブな
と い っ た 質 問 を 受 け た こ と が あ る 。 こ の こ と は 、「 容
学習法への転換」 を唱え、さらに、教材のオーセンテ
量」も「要領」も同じ音とアクセントを持つため、ど
ィシーが重視され ている状況の問題を指摘している。
のような漢字が使われるかという知識が必要であるこ
さらに、本稿はその結果、 教材で多く取り上げられる
とを示している。このように漢字を読んだり、書いた
日常生活の語彙の学習に偏りがちな現状も 一つの問題
り す る だ け で な く 、「 耳 か ら 聞 い た 音 と 漢 字 を 結 び つ
であると考える。なぜなら 、工学系留学生 にとって、
け る 」、「 自 ら が 話 す 言 葉 と 漢 字 を 結 び つ け る 」 と い っ
日常生活で使われている語彙もさ ることながら、一日
た作業も学習者にとっては重要なのである。
の大半を過ごす研究室内で使用されている語彙も重要
2
3.3. 漢 字 語彙 ク ラス の 学 習漢 字 と 学習 語 彙
3. コー パ スデ ー タ を用 い た 漢字 語 彙ク ラ ス
まず、学習漢字ならびに漢字熟語など の選択方法で
あ る 。「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」 の 4 分 野 ( 電 気 系
3.1. 漢 字 語彙 ク ラス の 概 要
東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 日 本 語 教 室 で は 2011
工学・都市環境工学・都市計画・建築学)のデータの
年 度 よ り 中 級 の 二 つ の レ ベ ル( 中 級 1・中 級 3)で「 専
中 で 頻 度 の 高 い( 頻 度 20 以 上 )語 彙 か ら 、「 中 級 1 専
門語彙・漢字」クラス(以後、両レベルのクラスをま
門語彙・漢字」では旧日本語能力 試験 3 級の漢字を、
とめて指す場合は「漢字語彙クラス」と称す)を 前期
「 中 級 3 専 門 語 彙・漢 字 」で は 旧 日 本 語 能 力 試 験 2 級
15 回 、 後 期 15 回 開 講 し て い る 。 前 期 と 後 期 の 授 業 内
の漢字を学習漢字として選択した。さらに 「工学系話
容 は 同 一 で あ る た め 、 中 級 1・ 中 級 3 レ ベ ル の 学 習 者
し言葉コーパス」のデータの中から学習漢字を含む動
は何れも前期か後期、どちらかの授業を選択すること
詞や副詞、形容詞、漢字熟語など を、学習語彙として
になる。本クラスでは以下のような、基準でクラスを
選択した。これらの学習語彙には、特定の分野で使用
設定している。
される語彙、複数分野に共通の語彙、日常生活でも使
われている語彙が含まれている。特定の分野で使用さ
〈中級 1 専門語彙・漢字クラス 〉
れる語彙、複数分野に共通の語彙については、各分野
レ ベ ル : 初 級 1・ 2 レ ベ ル を 終 え た 人 。 日 本 語 を
の専門家の協力のもと学習優先度を検討中である。
初級を終えた学習者にとって、旧日本語能力試験 3
200-250 時 間 程 度 勉 強 し た 人
学習内容:工学系の学生が研究するうえで必要な専
級の漢字は既習漢 字であることも多い。しかし、初級
門 分 野 の 語 彙 を 勉 強 す る 。旧 日 本 語 能 力 試 験 3 級 の 学
で文型や文法と並行して学習する漢字語彙 は初級の総
習漢字を含む語の意味を理解するとともに 、その語を
合 教 科 書 に 頻 出 す る 語 が 中 心 と な る 。 た と え ば 、「 風 」
用いて文を作成できるようにする。
と い う 漢 字 の 場 合 、初 級 レ ベ ル の 漢 字 学 習 で は「 北 風 」
「 台 風 」な ど の 語 を 学 習 す る こ と が 多 い と 思 わ れ る が 、
〈中級 3 専門語彙・漢字クラス 〉
工 学 系 で は 「 風 力 」「 風 速 」 と い っ た 語 が 重 要 に な る 。
レ ベ ル:中 級 レ ベ ル 2 を 終 え た 人 。日 本 語 を 500 時
初級の教科書で学習される語彙と研究用の語彙は同じ
ようなレベルの漢字を使用していても、その内容は異
間程度勉強した人
学習内容:工学系の学生が研究するうえで必要な専
なるのである。そのような問題を解決するために、既
門 分 野 の 語 彙 を 勉 強 す る 。旧 日 本 語 能 力 試 験 2 級 の 学
習漢字をふたたび、専門分野の熟語として 学習する機
習漢字を含む語の意味を理解するとともに、その語を
会を設けることが重要になる。
以下に「中級 1 専門語彙・漢字」の授業に使用した
用いて文を作成できるようにする。
学 習 漢 字 75 字 を 例 と し て 示 す 。
3.2. 漢 字 語彙 ク ラス の 目 標
漢字語彙クラスの目標は、工学系分野のゼミ発表で
【 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 】 学 習 漢 字 ( 3 級 漢 字 75 字 )
用いられている旧日本語能力試験 3 級及び 2 級漢字を
含む漢字熟語など を書き言葉としてだけでなく、話し
力・風・発・会・開・送・転・体・質・問
言葉としても理解し、産出 できるようにすることであ
自・究・研・画・計・意・味・明・強・言
る。上記の 目標を 以下の 4 点に まとめ 具体 的に 示す。
多・少・同・物・用・建・場・事・工・業
理・料・験・試・思・考・度・安・動・作
第一に、工学系分野のゼミ発表で用いられている学
早・急・代・世・界・真・写・別・集・特
習漢字や漢字熟語など の字形や表記などの形がわかる。
図・空・店・広・通・主・知・地・心・方
第二に、工学系分野のゼミ発表で用いられている漢
重・切・終・起・手・近・去・着・元・住
正・新・使・持・目
字語彙の意味がわかる。
第三に、工学系分野のゼミ発表で用いられている 漢
す で に 学 習 し た こ と が あ る 和 語 動 詞 ( 例 :「 動 く 」
字語彙の読み方、拍およびアクセントがわかる。
など)や形容詞についても、特定分野における和語動
第四に、学習した漢字語彙と共起する表現を使用し、
詞や形容詞の使い方を学ぶことができる。山口ほか
話す場面や書く場面に応じた文を 作ることができる。
( 2010) [ 9 ] は 「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」 の デ ー タ を
も と に 、工 学 系 4 分 野 に 共 通 し て 使 用 頻 度 が 高 い 動 詞
このように語の漢字表記を確認し、語の正しい音を
認識し、正しい意味を理解するとともに、 学習した語
が 旧 日 本 語 能 力 試 験 3, 4 級 レ ベ ル の 基 本 的 な 語 彙 で
と共起する表現を用いて文を産出することができるよ
あること、それらの動詞と 共起する名詞は分野による
うにしている。
特 徴 が あ り 、旧 日 本 語 能 力 試 験 2 級 ま た は 級 外 の 難 解
3
な語彙であると指摘している。
学習漢字を含む漢字語彙(必ずしも授業で学習したも
の で な く て も よ い ) を 用 い て 文 を 作 成 す る 。【 資 料 2】
例えば「重い」という 形容詞は通常、 初級レベルの
漢字学習では「荷物が重い」という形で学習すること
は、時間に余裕がある場合に長文を作成させるための
が 多 い が 、電 気 系 工 学 分 野 で は「 負 荷 が 重 い 」、都 市 計
ものである。学習者が選んだ漢字語彙を中央のボック
画 分 野 で は「 負 担 が 重 い 」と い う 表 現 が 使 わ れ て い る 。
スに一つ書き込み、そこから連想する 語をつないでい
このように、当漢字語彙クラスでは、初級で学習でき
くことでマップを作成し、少し長い文章を書く練習が
なかった共起表現を学習することができるのである。
できるようになっている。 学習者は、 短文または長文
次 に 授 業 の 方 法 で あ る 。1 コ マ( 90 分 )で 学 習 漢 字
を作成する際、どのような場面での文 を想定している
を 5 字 導 入 し 、各 学 習 漢 字 の 音 読 み 、訓 読 み を は じ め 、
か を 明 確 に す る た め に 【 図 1】 に 示 し た よ う な ア イ コ
学習漢字を含む動詞、形容詞、副詞や 熟語などの漢字
ンをチェックする ことになっている。このアイコンは
語 彙 教 育 を 行 う 。漢 字 熟 語 の 中 に は 2 級 以 上 の 漢 字 を
文を作成させる際に、 学習者に文脈設定をさせること
含むものもあり、中級レベルにふさわしい内容となっ
を 目 的 と し 、2012 年 度 の ク ラ ス よ り タ ス ク シ ー ト に 設
ている。次に複合語を含む漢字語彙の拍およびアクセ
定されたものである。
ントの指導である。アクセントの違いによって意味が
変わる場合は、同音異義語を例として挙げ、弁別でき
る よ う に す る ( 例 :「 切 る 」 と 「 着 る 」 な ど )。 学 習 者
に音声を意識させ、実際に学習者に発 音させることも
ある。
新聞
次に漢字語彙をどのように用いるかということを
レポート
手 紙 スピーチ ニュース
会話
【図 1】 漢 字 タスクシートの ア イコンの一 部
学 習 す る 。例 え ば「 重 い 」と い う 漢 字 の 場 合 、「 負 荷 が
重い」など、どのような名詞が「重い」という形容詞
ア イ コ ン は 左 か ら 「 新 聞 」「 レ ポ ー ト 」「 手 紙 」 と い
とともに使われるかといった共起関係を学習する。教
っ た 書 き 言 葉 、「 ス ピ ー チ 」「 ニ ュ ー ス 」「 会 話 」と い っ
師が共起する表現を含む例文を提示するだけでなく、
た話し言葉であることを明示するものである。学習者
学習者にもどのような 共起表現が考えられるかを積極
はアイコンを自由に選択することができる。なお、会
的に発表させる。この場合の共起関係とは、砂川
話のアイコンを選んだ場合は、対話形式にすることに
( 2011)[ 10] が 述 べ て い る「 語 と 語 の 結 び つ き だ け で な
な っ て お り 、「 (
く、副詞とモダリティ要素との結びつきや、句と文末
話者の情報を記入するようになっている。また、アイ
の否定辞やヴォイスとの関わりなど、語を超えた節レ
コ ン 以 外 の そ の 他 の 状 況 ( 例 :「 小 説 の 地 の 文 の 一 部 」
ベルや、語より小さい形態素レベルの共起関係」を指
等)も自由に設定できるようになっている。
し、広い意味で当該漢字語彙と共に使われる表現を学
が
に 話 し て い る )」 と い っ た
学習者は漢字語彙を用いて文を作成する際、必ず
【 図 1】 の ア イ コ ン に チ ェ ッ ク を 付 け 、 自 分 が 作 成 し
習対象としている。
共起表現(または、コロケーション)について、日
た文が「話す際に使用する」か「書く際に使用する」
本 語 教 育 で は 三 好( 2007)[ 11] 、三 國・小 森( 2008)[ 12]
か 、と い っ た こ と を 明 確 に し な け れ ば な ら な い 。「 話 す
が、母語話者によって産出された言葉の共起関係を提
際に使用する」場合は、スピーチまたはニュースで使
示することは、学習者が文を産出するために有効な指
用するのか、会話の中で使用するのか、また、会話の
導法であると述べている。当クラスでも漢字語彙を含
場合は「だれがだれに向かって話しているか」を明確
む共起表現の学習は学習者の文の産出につながる指導
にさせることによって 、適切な語の選択、適切な終助
法であると考えている。
詞、ノダの有無、適切なスピーチレベルなどのフィー
3.4. 漢 字 語彙 ク ラス の 授 業の 方 法
ド バ ッ ク を 教 師 が 行 う こ と が で き る 。「 書 く 際 に 使 用
5 つの学習漢字及び学習漢字を含む漢字語彙の字形、
する」場合も同様に、レポートや新聞の記事、手紙な
表記、意味、アクセントを含む読み方 、共起表現など
ど媒体によって、適切な語であるかどうか、適切な文
を学習した後、最後に学習者が漢字語彙を用いて自分
体レベルであるかどうかなどのフィードバックなどを
で短文や少し長い文を作成する。
行うことができる。
文 作 成 に は 添 付 の【 資 料 1】【 資 料 2】に 示 す よ う な
こ れ ら の ア イ コ ン を 設 定 し た 理 由 は 、以 前 の タ ス ク シ
漢 字 タ ス ク シ ー ト を 用 い た 。タ ス ク シ ー ト の 表 側 が【 資
ートでは学習者の作成した短文がどのような意図で作
料 1】、裏 側 が【 資 料 2】( 2012 年 度 中 級 1 レ ベ ル の 漢
成されたかを教師が知ることが困難であり、適切なフ
字 語 彙 ク ラ ス の 学 習 者 が 作 成 し た も の )で あ る 。【 資 料
ィードバックを与えることができなかったからである。
1】は 5 つ の 学 習 漢 字 を 用 い て 短 文 を 作 成 す る も の で 、
2011 年 度 の ク ラ ス で は ア イ コ ン を タ ス ク シ ー ト に 設
4
定していなかったため、作成した文が文法的に正しい
アンケートの回答方法の指示や質問事項は日本語
か、意味が通じるかなどを基準にフィードバックを行
と英語で併記し、回答者が選択肢から一つ答えを選ぶ
っ て い た 。し か し 、当 ク ラ ス が 学 習 者 の「 聞 く・話 す 」
形式の質問と、日本語または英語で回答する自由記述
ことを意識させる クラスであるならば、スピーチレベ
形式の質問を用意した 。
選択肢のある質問は以下の 8 つの項目で ある。
ルや文体、ノダや終助詞の適切な使用を促す教育も必
要 で は な い か と い う 観 点 か ら 2012 年 度 よ り タ ス ク シ
ートにアイコンを加えることにした。
徳 弘( 2005)
[ 1 3]
① 漢字の専門語彙が前より読めるようになった。
は「 語 彙 を 文 中 ,文 章 中 ,談 話 中 等
② ゼミの資料が前よりわかるようになった。
その場に応じて適切に理解,使用できるようになるこ
③ 漢字の専門語彙が前より書けるようになった。
とが漢字教育の大きな目標となる」と指摘 している。
④ 学習した漢字や語彙を使って文が前より書けるよ
漢字語彙教育も使用文脈を明確にすることで効果 的な
うになった。
学 習 が 得 ら れ る 。北 村・木 村( 2013)[ 14 ] は 、漢 字 授 業
⑤ ゼミでの話しことばが前より聞き取れるようにな
において、文脈を明確にするために、 2 文以上の文を
った。
作成させるなどの工夫をこらした「短文作成シート」
⑥ 専門語彙の漢字の発音やアクセントを前より意識
を用いることで、学習者の「運用力」の育成を目指し
するようになった。
ている。また、漢字語彙教育だけでなく文型・文法教
⑦ 学習した漢字の専門語彙を使う機会がある。
育において も学習者に短文作成をさせる際に文脈を考
⑧ 漢字の専門語彙に前より興味を持つようになった。
え さ せ る こ と の 必 要 性 が 指 摘 さ れ て い る 。遠 藤( 2010)
上 記 の 8 つ の 質 問 に 対 し て 「 全 く 思 わ な い 」「 あ ま
[1 5 ] は 学 習 者 に 文 脈 を 設 定 さ せ る 作 業 を 「 メ タ 文 脈 化 」
「 文 脈 化 」と い う 工 程 に 分 け て い る 。「 メ タ 文 脈 化 」の
り 思 わ な い 」「 少 し そ う 思 う 」「 非 常 に そ う 思 う 」 の 4
作業によって「書くためのことば」か「話すためのこ
つの選択肢から選ぶというものである。
とば」かなどを明確にし、次に「文脈化」の作業によ
なお、選択形式の質問の結果をまとめたものが次の
【 表 1】 及 び 【 図 2】 で あ る 。
っ て「 だ れ が だ れ に 向 か っ て 」、ど う い う 状 況 で あ る か
を明確にさせることで、学習者に適切なフィードバッ
クが与えられるとしている。このアイコン導入の効果
【表 1】「 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」・「 中 級 3 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」
に関しては、アイコン 導入以前と導入以降 の授業を受
クラスア ンケート結 果 のまとめ
けていた学習者に両授業の違いについて、インタビュ
①漢字の語彙が前より読めるようになった。
ー を 行 っ て い る 。 そ の 結 果 は 4.2.で 述 べ る 。
全く思わない
あまり思わない
少し思う
非常に思う
回答なし
中級1
0名
0名
9名
2名
0名
中級3
0名
1名
6名
4名
0名
②ゼミの資料が前よりわかるようになった。
4. 授業 ア ンケ ー ト 及び イ ン タビ ュ ー調 査
4.1. 授 業 アン ケ ート の 分 析結 果
全く思わない
あまり思わない
少し思う
非常に思う
回答なし
中級1
0名
3名
6名
2名
0名
中級3
0名
1名
8名
2名
0名
漢字語彙クラスでは各学期において学習者にアン
③漢字の専門語彙が前より書けるようになった。
ケートを配付し、
( 前 期 は 6 月 実 施・後 期 は 11 月 実 施 )
授業についての評価を 得ている。本稿では、タスクシ
全く思わない
あまり思わない
少し思う
非常に思う
回答なし
中級1
0名
2名
7名
2名
0名
中級3
0名
2名
6名
3名
0名
④学習した漢字や語彙を使って文が前より書けるようになった。
ー ト に ア イ コ ン を 付 与 し た 2012 年 度 の 前 期 ・ 後 期 の
授業アンケート調査について報告する。
全く思わない
あまり思わない
少し思う
非常に思う
回答なし
中級1
0名
1名
6名
4名
0名
中級3
0名
2名
5名
4名
0名
⑤ゼミで話しことばが前より聞き取れるようになった。
実 施 時 期:2012 年 6 月( 前 期 )
・2012 年 11 月( 後 期 )
対象者:
「 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」( 前 期 ・ 後 期
あまり思わない
少し思う
非常に思う
回答なし
0名
5名
5名
1名
0名
中級3
0名
4名
3名
4名
0名
⑥専門語彙の幹事の発音やアクセントを前より意識するようになった。
計 11 名 )
【 国 籍 】タ イ 3 名 、ル ー マ ニ ア 1 名 、ベ ト ナ ム 1 名 、
マレーシア 1 名、フランス 1 名、オーストラリア 1
全く思わない
あまり思わない
少し思う
非常に思う
回答なし
中級1
0名
4名
2名
5名
0名
中級3
0名
3名
2名
5名
1名
⑦学習した漢字の専門語彙を使う機会がある。
名 、イ ン ド ネ シ ア 1 名 、ド イ ツ 1 名 、ネ パ ー ル 1 名
「 中 級 3 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」( 前 期 ・ 後 期
全く思わない
中級1
計 11 名 )
全く思わない
あまり思わない
少し思う
非常に思う
回答なし
中級1
0名
3名
5名
2名
1名
中級3
0名
1名
4名
4名
2名
⑧漢字の専門語彙に前より興味を持つようになった。
【 国 籍 】タ イ 5 名 、中 国 4 名 、韓 国 1 名 、フ ィ ン ラ
ンド 1 名
全く思わない
あまり思わない
少し思う
非常に思う
回答なし
中級1
0名
1名
4名
5名
1名
中級3
0名
1名
4名
4名
2名
※太 字 の 数 字 は 最 も 回 答 が 多 か った も の
5
100%
0
90%
2
0
0
0
0
2
2
2
0
0
0
0
1
0
0
1
1
1
2
2
4
4
3
4
80%
4
4
4
2
5
70%
5
5
5
60%
6
7
50%
8
40%
3
6
5
2
9
5
6
6
2
30%
4
4
4
4
3
10%
0%
4
5
20%
3
2
0
中級1
1
0
中級3
0
中級1
1
0
中級3
0
中級1
2
0
中級3
回答なし
非常に思う
少しそう思う
あまり思わない
全く思わない
3
2
1
0
中級1
0
中級3
0
中級1
0
中級3
0
中級1
0
0
中級3
中級1
1
0
中級3
1
0
中級1
1
0
中級3
①漢字の語彙が前より ②ゼミの資料が前より ③漢字の専門語彙が前 ④学習した漢字や語彙 ⑤ゼミで話しことばが ⑥専門語彙の漢字の発 ⑦学習した漢字の専門 ⑧漢字の専門語
読めるようになった。 わかるようになった より書けるようになっ を使って文が前より書 前より聞き取れるよう 音やアクセントを前よ 語彙を使う機会があ 彙に前より興味
た。
けるようになった。
になった。
り意識するようになっ
る。
を持つように
た。
なった。
【図 2】「 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」・「 中 級 3 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」
【図 2】 の 結 果 か ら 、質 問 項 目 ① ~ ④「 読 む・書 く 」能
ク ラスア ンケート結 果 のまとめ
ぶことや文づくりが他のクラスとの違いであることを
力 の 向 上 に つ い て は 、「 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」、「 中
指摘している。
級 3 専門語彙・漢字」両クラス共に肯定的な回答を得
漢字語彙クラスの良いところについては「例文が多
ることができた。一方、⑤の質問「ゼミでの話ことば
い の で 理 解 し や す い 」「 漢 字 の 一 般 的 な 使 い 方 に つ い
が 前 よ り 聞 き 取 れ る よ う に な っ た 」に つ い て は 、
「中級
て よ り 深 く 学 習 で き た 」「 漢 字 を 使 っ た 作 文 を 書 い た
1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」 で は 5 名 、「 中 級 3 専 門 語 彙 ・ 漢
り す る こ と は い い 練 習 に な る 」「 漢 字 の 発 音 が 勉 強 で
字 」で は 4 名 の 学 生 が「 あ ま り 思 わ な い 」と 回 答 し た 。
き る の が い い 」「 自 分 で 作 っ た 文 を 添 削 し て も ら え る
当漢字語彙 クラスが一部の学生に対して、 ゼミで話さ
の が い い 」「 少 な い 漢 字 に た く さ ん の 例 文 が あ る の が
れている言葉の聞き取り能力を伸ばす 教育を十分に行
い い 」「 漢 字 を 含 む 語 彙 や そ れ ら を 含 む い ろ い ろ な フ
えなかった ことを示している。しかしながら、 ⑥の質
レーズが勉強できる」という回答があった。共起表現
問「専門語彙の漢字の発音やアクセントを前より意識
を含む多くの例文の提示が評価され、文づくりとそれ
するようになった」という 設問に対して、両クラス共
に対するフィードバックが役に立ったようである。
に 7 名 の 学 習 者 が「 少 し そ う 思 う 」
・
「非常にそう思う」
一方、改善したほうがいいことについては「単漢字
と回答した。このことは学習者が音声と漢字の関係に
は簡単だが、語が 難しすぎる」といった難易度に関す
注意を向け始めた ことを示しているのではない だろう
る も の や 、「 こ の ク ラ ス の 語 の い く つ か は 専 門 的 で は
か 。い ず れ に せ よ 、
「 聞 く・話 す 」こ と を 意 識 さ せ る 授
な い 。『 原 子 』『 電 子 』 な ど と い っ た 語 を も う 少 し 加 え
業の内容や方法については今後も 検討する余地があろ
て ほ し い 」「 期 待 し て い る ほ ど 専 門 的 な 語 彙 で は な か
う。
っ た 。実 際 に は も う 少 し 難 し い こ と ば が 使 わ れ て い る 」
自由記述形式の質問は 以下の 2 つである。
といった学習した語彙が専門的でないという指摘があ
①この専門語彙・漢字クラスとほかの漢字クラスや語
った。たしかにこの時点では「工学系話し言葉コーパ
彙クラスとの違いはあるか
ス」は 4 分野しかカバーしておらず、4 分野以外の研
②この授業の良いところと、改善したほう がいいとこ
究室に所属する学習者には有用な語彙ではなかった可
ろは何か。
能性がある。また、日常生活の語彙も多く含まれて い
自由記 述 形 式の回 答に は 次 のよう なも のが あった 。
た た め 、「 ア カ デ ミ ッ ク な 語 彙 ば か り で は な か っ た 」と
今まで受けた他の漢字の授業との違いについては、
いう不満があったと思われる。
4.2. 学 習 者へのインタビュー
「今までのクラスでは、ターゲットの漢字を一つ の語
で学習した。このクラスは漢字をたくさんの語と一緒
授業アンケート以外に、授業で用いた漢字タスクシ
に 学 習 で き る 」「 今 ま で 漢 字 を 使 っ て 文 を 作 っ た こ と
ートについて、学習者へインタビューを行った。本項
が な か っ た 」「 例 文 が 実 用 的 だ 」な ど が あ り 、様 々 な 漢
ではインタビューの内容について述べる。 今回インタ
字熟語や共起表現を含む実用的な例文と共に漢字を学
ビ ュ イ ー と し て 、中 級 3 レ ベ ル の ク ラ ス を 受 講 し た 学
6
習 者 1 名 ( 国 籍 : タ イ ) を 選 ん だ 。当 該 学 生 は 前 学 期
のレベルなどを意識するようになり、日本語の特徴も
に 中 級 1 レ ベ ル の 漢 字 語 彙 ク ラ ス を 受 講 し て い る 。な
わ か っ た 。」と 述 べ た 。本 イ ン タ ビ ュ ー は 、あ く ま で も
お 、当 時 の 中 級 1 ク ラ ス で は 漢 字 タ ス ク シ ー ト に ア イ
一人の学習者の感想であり、タスクシートに付された
コ ン が 付 さ れ て い な か っ た た め 、【 図 1】の ア イ コ ン が
アイコン自体の学習効果をはかるものではない。しか
あるものと無いもの、両タイプのタスクシートを使用
しながら、今後の漢字語彙クラスの有効な授業方法を
して文を作成した ことがある唯一の学生であった。
検討するうえで多くの示唆を与えてくれたといえよう 。
インタビューでは 5 つの質問を行った。
5. まと め と今 後 の 課題
第 一 の 質 問 、「 ど ち ら の 方 が 文 が 作 り や す い か 」 を
尋 ね た と こ ろ 、「 ア イ コ ン が 無 い 方 が 簡 単 だ が 、漢 字 の
学習者への アンケート 調査の結果から 、専門語彙漢
単語や文の正しい使い方を知りたい場合は あったほう
字のアクセントに対する学習者の意識 が活性化された
が 作 り や す い 。チ ャ レ ン ジ に も な る し 、復 習 に も な る 」
ことがわかった。漢字語彙の様々な共起表現を含む例
という回答を得た。
文を提示すること や文作成とそれに対するフィードバ
第 二 の 質 問 に お い て 、 そ の 理 由 を 聞 く と 、「 ア イ コ
ッ ク に つ い て も 概 ね 学 習 者 か ら 高 い 評 価 を 得 た 。ま た 、
ンがある場合は、文を作る前に、どのような相手に、
インタビューの結果からアイコンのあるタスクシート
どのような状況でこの文を言いたいかを考えなければ
は文脈を意識した産出に結び付き、実用的な表現を身
な ら な い 。例 え ば 、「 言 う 」と「 述 べ る 」は 意 味 が 似 て
につけるうえで効果があることがわかった 。今後も学
いるが、状況や相手によって使い方は違う。言葉使い
習者の声を取り入れながらタスクシートを改善したい。
や言葉のレベルの違いがあるのは日本語の特徴である。
なお、今後の課題 を以下に 三つあげたい。
ア イ コ ン が あ れ ば 自 然 で 適 切 な 日 本 語 の 文 が 作 れ る 。」
第一に「聞く・話す」 ことを意識させた漢字語彙教
と回答した。アイコンがあることで、文を作成する前
育の方法を検討し たい。今後は、漢字 語彙教育に音声
に学習者が文脈の設定をしなければならず、その作業
学習も含み、同時に強化していく 授業方法を検討して
は容易ではないが、適切な表現を学習するためには必
い く 必 要 が あ る 。日 本 語 教 育 の 発 音 指 導 で は 、
「アクセ
要であると学習者が認識していることがわかる。
ントやイントネーションといったプロソディは、単音
第 三 の 質 問 で は 、「 ア イ コ ン が あ る 時 に 作 成 し た 文
に 比 べ 、指 導 が 行 わ れ に く い 」( 須 藤 2013) [ 1 6 ] と も 言
と無い時に作成した文に違いがあるかどうか。その違
わ れ て い る 。須 藤( 2013)も 指 摘 し て い る よ う に 、今
い は 何 か 。」 に つ い て 尋 ね た と こ ろ 、「 ア イ コ ン が 無 い
後、音声学習の重要性の認識を強化できる授業方法を
ときは状況について何も考えず、文を作ることだけが
考えていかなければならない。
目 的 で あ る 。ア イ コ ン が あ る 時 は 、イ ン フ ォ ー マ ル か 、
第二に、学習者のレベルや専門分野に応じた語彙を
フォーマルか、誰に話すかなど状況を考える。アイコ
導入することである。 4 分野以外の研究分野の語彙を
ンが無い時作った文は、文法的に正しくても実際使わ
取り入れること、ならびに各分野共通のアカデミック
な い 、言 わ な い 文 章 に な っ て し ま う 。」と 回 答 し た 。ア
な語彙や特定の専門分野にだけ使用される語彙、日常
イコンが無い状態で文を作成する場合は、文を作るこ
生活の語彙などの 語彙の位相あるいは使用領域を各分
と 自 体 が 目 的 と な っ て い る こ と を 指 摘 し て い る 。一 方 、
野の専門家と共に検討し、学習者のレベルや専門分野
アイコンがあるときはインフォーマルかフォーマルか
に応じて提示する漢字語彙を選択していきたい。
といった待遇表現についても学習者が意識しているこ
第三に、漢字語彙クラスのレベルの設定の見直しで
とがわかる。
ある。当漢字語彙クラスは、旧日本語能力試験の漢字
第四の質問では、アイコンのあるシートへの改善点
の級別にクラスを設定したが、語彙レベルについて言
を 尋 ね た と こ ろ 、「 学 生 の レ ベ ル に 応 じ て 個 々 の ア イ
え ば 、「 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」、「 中 級 3 専 門 語 彙 ・
コンの説明をもう少ししたほうがいい。状況について
漢字」の学習語彙の難易度に差があまりない結果とな
もう少し詳しく書けるようにしたほうがいい。そのほ
った。実は、3 級漢字は 2 級漢字よりも造語能力が高
うが先生からさらに多くのフィードバックがもらえ
い漢字が多く、3 級漢字を含む語彙は難易度に幅が出
る 。」と い う 回 答 を 得 た 。現 状 の タ ス ク シ ー ト で は 学 習
たようである。そのため、今回は取り上げなかった 4
者が文脈を書くスペースが十分あるとは言えない。今
級漢字を含む語彙にも 同様に、重要語彙や専門分野の
後、さらに多くのフィードバックを与えるためにもタ
語彙がかなり含まれている可能性がある。今後は漢字
スクシートを改善しなければならないであろう。
の級別ではなく、語彙の級別を基準にクラスを考えて
第 五 の 質 問 、 ク ラ ス を 受 け た 感 想 で は 、「 漢 字 の 勉
いくことも検討していきたい。
以 上 、三 つ の 課 題 解 決 を 念 頭 に お き 、よ り 効 果 的 な
漢字語彙教育を追求していきたい と考えている。
強だけでなく、いい会話の授業にもなっている。文の
書き方や言葉の意味だけでなく、言葉づかいや、言葉
7
の 分 析 を 通 じ て ,”横 浜 国 立 大 学 留 学 生 セ ン タ ー 教
育 研 究 論 集 ,21 号 ,pp.91-111, 横 浜 国 立 大 学 留
学 生 セ ン タ ー , 2013.
[15] 遠 藤 直 子 , “初 級 文 型 を 用 い た 表 現 教 育 : 中 級 レ
ベ ル 口 頭 表 現 ク ラ ス に お け る「 ミ ニ ド ラ マ 」の 実
践 を 通 し て ,” 日 本 語 / 日 本 語 教 育 研 究 , 1 号 ,
pp.31-47, コ コ 出 版 , 日 本 語 / 日 本 語 教 育 研 究
会 , 2010.
[16] 須 藤 潤 , “日 本 語 の ア ク セ ン ト・イ ン ト ネ ー シ ョ
ン 学 習 に 対 す る 意 識 と 動 機 づ け ,” Polyglossia :
the Asia-Pacific's voice in language and
language teaching 24, pp. 164-176, 立 命 館 ア ジ
ア 太 平 洋 研 究 セ ン タ ー , 2013.
【 付 記 】 本 研 究 は 平 成 23 年 度 科 学 研 究 費 補 助 金 挑 戦
的 萌 芽 研 究 ( 課 題 番 号 23652113)「 研 究 支 援 を 目
指 し た『 理 工 学 系 基 本 口 頭 表 現 用 例 学 習 辞 典 』の
開 発 」 を 基 に 行 っ て お り 、 本 論 文 は 2013 年 3 月
17 日 日 本 英 語 教 育 学 会 第 43 回 年 次 研 究 集 会 に お
いて発表した内容に加筆修正を施したものであ
る。
文
献
大 曾 美 恵 子 , “日 本 語 コ ー パ ス と 日 本 語 教 育 ,”日
本 語 教 育 , 130 号 , pp. 3-10, 日 本 語 教 育 学 会 ,
2006.
[2] 伊 藤 夏 実 ・ 遠 藤 直 子 ・ 菅 谷 有 子 ・ 成 永 淑 ・ 古 市
由 美 子 ・ 森 幸 穂 ,“ 話 し 言 葉 コ ー パ ス を 用 い た 理
工学系留学生のための日本語学習支援システム
『 理 工 学 系 語 彙・用 例 学 習 支 援 シ ス テ ム レ イ ン
ボ ー 』の 開 発 ,”横 浜 国 立 大 学 留 学 生 セ ン タ ー 教 育
研 究 論 集 ,21 号 ,pp. 115-136, 横 浜 国 立 大 学 留
学 生 セ ン タ ー , 2013.
[3] 加 納 千 恵 子 , “中 上 級 学 習 者 に 対 す る 漢 字 語 彙 教
育 の 方 法 ,”筑 波 大 学 留 学 生 セ ン タ ー 日 本 語 教 育 論
集 , 15 号 , pp.35-46, 筑 波 大 学 留 学 生 セ ン タ ー ,
2000.
[4] 小 宮 千 鶴 子 , “理 工 系 留 学 生 の た め の 物 理 の 専 門
連 語 : 高 校 教 科 書 の 調 査 に 基 づ く 選 定 ,”講 座 日 本
語 教 育 ,41 号 ,pp.18-40,早 稲 田 大 学 日 本 語 研 究
教 育 セ ン タ ー , 2005.
[5] 曹 紅 荃 ・ 仁 科 喜 久 子 , “中 国 人 学 習 者 の 作 文 誤 用
例 か ら 見 る 共 起 表 現 の 習 得 及 び 教 育 へ の 提 言:名
詞 と 形 容 詞 及 び 形 容 動 詞 の 共 起 表 現 に つ い て ,”日
本 語 教 育 , 130 号 , pp.70-79, 日 本 語 教 育 学 会 ,
2006.
[6] 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 国 際 交 流 室 日 本 語
教 室 ,工 学 系 研 究 科 日 本 語 教 室 報 告 書 2010 年 度 ,
pp.19-20, 2011.
[7] 林 洋 子 ・ 国 吉 ニ ル ソ ン ・ 野 口 ジ ュ デ ィ ・ 東 條 加
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索 サ イ ト JECPRESE,”第 1 回 コ ー パ ス 日 本 語 学
ワ ー ク シ ョ ッ プ 予 稿 集 , pp.273-282, 2012.
[8] 邱 學 瑾 , “ 漢 字 圏 ・ 非 漢 字 圏 日 本 語 学 習 者 に お
ける漢字熟語の処理過程 : 意味判断課題を用い
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[9] 山 口 真 紀 ・ 菅 谷 有 子 ・ 単 娜 ・ 古 市 由 美 子 ・ 村 田
晶子, “工学系話し言葉コーパスにおける和語動
詞 の 使 用 実 態 :名 詞 と の 共 起 パ タ ー ン の 調 査 ,” 専
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[10] 砂 川 有 里 子 , “日 本 語 教 育 へ の コ ー パ ス の 活 用 に
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教 育 学 会 , 2011.
[11] 三 好 裕 子 , “ 連 語 に よ る 語 彙 指 導 の 有 効 性 の 検
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[12] 三 國 純 子 ・ 小 森 和 子 , “コ ー パ ス を 用 い た 論 文 作
成 の た め の 慣 用 的 共 起 表 現 の 抽 出 ,”小 出 記 念 日 本
語 教 育 研 究 会 論 文 集 ,16 号 , pp.55-68, 小 出 記
念 日 本 語 教 育 研 究 会 , 2008.
[13] 徳 弘 康 代 , “中 上 級 学 習 者 の た め の 漢 字 お よ び 漢
字 語 彙 学 習 資 料 の 開 発 ,”講 座 日 本 語 教 育 , 41 号 ,
pp.41-63, 早 稲 田 大 学 日 本 語 研 究 教 育 セ ン タ ー ,
2005.
[14] 北 村 尚 子 ・ 木 村 祐 子 ,“ 「 運 用 力 」 の 育 成 を 目 指
し た 漢 字 授 業 に 関 す る 考 察 :「 短 文 作 成 シ ー ト 」
[1]
8
【資料 1】
9
【資料 2】
10
Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the English Language Education Society of Japan
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
国際バカロレア・ディプロマプログラム科目
「知識の理論(TOK)」と総合的な学習の時間
大塚
早稲田大学教育学研究科修士課程
恵理子
〒169-8050 東京都新宿区西早稲田 1-6-1
E-mail: [email protected]
あらまし 本報告の目的は、近年の知識基盤社会を背景に生まれた「新しい能力」観に基づいて行われている日本の学校教
育について、総合的な学習の時間と国際バカロレア科目「知識の理論(TOK)
」
(以下 TOK)の内容を照らし合わせながら、カ
リキュラム構成・評価基準・指導内容において TOK から示唆を得ることにある。総合的な学習の時間の教育目標が改訂され、
学習指導要領における総則の一部から章の取り扱いになったことの背景には、総合的な学習の時間で育まれようとしている能力
が昨今の知識基盤社会、ひいてはグローバル人材の育成に欠かせないものとの認識が強まっていることの現れとも解釈できる。
また、グローバル人材の育成に関して、2012 年 8 月に文部科学省は国際バカロレア(以下 IB)資格への対応を発表し、国際バ
カロレア・ディプロマプログラムにおける「TOK」に関する調査研究協力会議の報告書である「国際バカロレアディプロマ・プ
ログラム Theory of Knowledge(TOK)について」のなかで「IB の教育理念は全人教育にあり、そのカリキュラムは、学習指導
要領が目指す『生きる力』の育成や、課題発見・解決能力、論理的思考やコミュニケーション能力等重要能力・スキルの確実な
習得に資するものである」と述べた。総合的な学習の時間の課題となっている評価基準の設定、評価の信頼性、カリキュラムの
明確化、教科との関係の整理といった点は、IB において総合的な学習の時間と近い位置として存在する TOK の①全ての教科に
通底する、目に見えない“方法”
“学び方”を可視化している、②一つの教科として体系的にまとめられている、③総合学習を
中心とした教科横断的思考法の提示をしている、という特徴から示唆を得られると考えられる。
キーワード 国際バカロレア,
「知識の理論(TOK)
」
,総合的な学習の時間,生きる力,メタ知識
International Baccalaureate Diploma program
“Theory of Knowledge(TOK)” and Periods for Integrated Study
Eriko OTSUKA
Waseda University 1-6-1 Nishiwaseda, shinjyuku-ku, Tokyo 169-8050 Japan
[email protected]
Abstract Due to internationalization of Japanese, an urgent need to cultivate Japanese with new ability that can use
metacognition has emerged and is being recognized as one of the important goal of Japanese Education. Because National
syllabus for junior and senior high schools from Japan’s Ministry of Education has emphasized importance of Zest for Living
and Periods for Integrated Study. Though this new ability is coming more and more important in knowledge based-society and
globalization, Periods for Integrated Study has many problems, for example, there is no an appraisal standard, reliability of
standard, lack of relationship with the subject and so on. On the other hand, in2012 August, Japan’s Ministry of Education
made something known adoption of International Baccalaureate(IB). A principal of IB is related to Zest for Living’s vision,
and the subject “Theory of Knowledge(TOK)”of IB has appraisal standard, reliability of standard, and system of metacognition.
These points are to be of use as a reference.
Keyword International Baccalaureate,Theory of Knowledge (TOK),Periods for Integrated Study, power of living,
metacognition
大塚 恵理子, “国際バカロレア・ディプロマプログラム科目「知識の理論(TOK)」と総合的な学習の時間,”
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集, pp. 11-17, 日本英語教育学会編集委員会編集, 早稲田大学情報教育研究所発行, 2014 年 3 月 31 日.
This proceedings compilation published by the Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda University.
Copyright © 2014 by Eriko OTSUKA All rights reserved.
1. は じ め に
ま た 、グ ロ ー バ ル 人 材 の 育 成 に 関 し て 、2012 年 8 月
に 文 部 科 学 省 が 国 際 バ カ ロ レ ア( 以 下 IB)資 格 へ の 対
1.1. 本 稿 の 目 的
本報告の目的は、近年の知識基盤社会を背景に生ま
応 を 発 表 し 、「 IB の 教 育 理 念 は 全 人 教 育 に あ り 、 そ の
れた新しい能力観に基づいて行われている日本の学校
カリキュラムは、学習指導要領が目指す「生きる力」
教育について、総合的な学習の時間と国際バカロレア
の育成や、課題発見・解決能力、論理的思考やコミュ
科 目「 Theory of Knowledge( 知 識 の 理 論 )」
( 以 下 TOK)
ニケーション能力等重要能力・スキルの確実な習得に
の 内 容 を 照 ら し 合 わ せ な が ら 、TOK か ら カ リ キ ュ ラ ム
資 す る も の で あ る 」 [4]と 述 べ て い る 。 と く に IB の カ
構成・指導内容について示唆を得ることである。
リ キ ュ ラ ム の 中 核 を 成 す「 知 識 の 理 論( TOK)」は 、総
1996 年 に 中 央 教 育 審 議 会 第 一 次 答 申 『 21 世 紀 を 展
合的な学習の時間と近い位置づけにありながらも、現
望 し た 我 が 国 の 教 育 の 在 り 方 に つ い て ( 第 一 次 答 申 )』
在総合的な学習の時間が抱える課題に対して示唆を与
のなかで登場した「生きる力」の概念は、①「自分で
え得るものである。
以下か らは 、近年 注目 され つつあ る 「 新し い能力 」
課 題 を 見 つ け 、自 ら 学 び 、自 ら 考 え 、主 体 的 に 判 断 し 、
行 動 し 、よ り よ く 問 題 を 解 決 す る 資 質 や 能 力 」、②「 自
[6]の 概 念 を「 メ タ 知 識 」と し て 明 確 化 し つ つ 、総 合 的
らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる
な学習の時間と国際バカロレア科目「知識の理論
心 や 感 動 す る 心 な ど 、豊 か な 人 間 性 」、③「 た く ま し く
( TOK)」 の 現 状 を ま と め る 。
生 き る た め の 健 康 や 体 力 」、の 三 本 柱 で 成 り 立 っ て い る 。
2.現 代 に 求 め ら れ る 「 新 し い 能 力 」と は
とくに①の「自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考
齋 藤 ( 2005) [5]に よ る と 、 知 識 は 二 重 構 造 で あ り 、
え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決す
る 資 質 や 能 力 」は 、2008 年 に 改 訂 さ れ た『 学 習 指 導 要
事 実 や 専 門 知 識 な ど の 知 識 (「 個 別 知 識 」) と 、 知 識 に
領 』の「 第 5 章 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」な か で「 (1)自 ら
関する知識、知識の管理・操作に関する考えや方法あ
課 題 を 見 つ け 、自 ら 学 び 、自 ら 考 え 、主 体 的 に 判 断 し 、
る い は 推 論 の メ カ ニ ズ ム で あ る 知 識 (「 メ タ 知 識 」) に
よ り よ く 問 題 を 解 決 す る 資 質 や 能 力 を 育 て る こ と 」、
分けられる。つまり、一つ一つの個別知識が有効であ
「 (2)学 び 方 や も の の 考 え 方 を 身 に 付 け 、問 題 の 解 決 や
るにも関わらず、それが状況に応じて物事の本質を読
探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自
み解く手段として使われなければほとんど意味をなさ
己 の 生 き 方 を 考 え る こ と が で き る よ う に す る こ と 」、
な い と い う こ と で あ る 。こ こ で い う「 メ タ 知 識 」と は 、
「 (3)各 教 科 、道 徳 及 び 特 別 活 動 で 身 に 付 け た 知 識 や 技
限られた個別的な場面に応じた個別的な方略・方法の
能等を相互に関連付け、学習や生活において生かし、
ことではなく、日常のなかで、例えば「調査研究をす
それらが総合的に働くようにすること」と強調されて
ること、論文や報告書を書くこと、提案するこ と、計
い る 。ま た 、同 章 第 3 の 1 の (2)に「 探 究 的 な 学 習 」 と
画すること、設計すること、意志決定すること、プロ
い う 言 葉 が 、2 の (2)に は「 問 題 の 解 決 や 探 究 活 動 の 課
グラムを作成すること、小説を書くこと、新しいプ ロ
程においては、他者と協同して問題を解決しようとす
ジ ェ ク ト を 立 ち 上 げ る 」[5]際 に 必 要 に な る 考 え 方 の こ
る学習活動や、言語により分析し、まとめたり表現し
とである。知識はそれそのものではなかなか有効に使
たりするなどの学習活動が行われるようにすること」
うことが難しいにも関わらず、学校教育では「個別知
等が加わった。
識」に対する知識や活用の方法は注目されてこなかっ
1
相次ぐ改訂のなかで総合的な学習の時間の項目が
た。これらはその後の経験から学ぶことが期待され、
増やされたこと、そして総則ではなく 独立した章の扱
社会に出てからの個人の努力に任されている現状があ
いになったことの背景には、総合的な学習の時間で育
る。
まれようとしている能力が昨今の知識基盤社会、ひい
しかし、知識基盤社会といわれる近年、このような
てはグローバル人材の育成に欠かせないものとの認識
「メタ知識」を学校教育で育成しようとする意識が高
が強まっていることの現れとも解釈できる。
まってきているこ とは、様々な機関が発表 した今後求
められる新しい能力観のなかにも如実に表れている。
(表1参照)
1
「 探 究 的 な 学 習 」に つ い て 、
『 小( 中 )学 校 学 習 指
導 要 領 解 説 総 合 的 な 学 習 の 時 間 編 』に は 、
「探究的な学
習とするためには、学習過程が以下のようになること
が 重 要 で あ る 。」と あ り 、具 体 的 に は「 ①【 課 題 の 設 定 】
体 験 活 動 な ど を 通 し て 、課 題 を 設 定 し 課 題 意 識 を も つ 。
②【情報の収集】必要な情報を取り出したり収集した
りする。③【整理・分析】収集した情報を、整理した
り 分 析 し た り す る 。④【 ま と め・表 現 】気 付 き や 発 見 、
自 分 の 考 え な ど を ま と め 、判 断 し 、表 現 す る 。」と あ る 。
表1
機関
「新しい能力」 一覧
名称
【初等・中等教育】
12
内容
国際バカロ
「知識の理
総合的な学習の時間のねらいは冒頭に述べた
・論理的思考力
(1)(2)(3)の と お り だ が 、 文 部 科 学 省 教 育 課 程 部 会
レ ア( 1968) 論 ( TOK)」 ・ 表 現 力
文部科学省
生きる力
( 1996)
活・総 合 的 な 学 習 の 時 間 専 門 部 会 (2007)[7]に よ る と「 大
事を多用な観点から分
きな成果を上げている学校がある一方、当初の趣旨・
析する力
理念が必ずしも十分に達成されていない状況」が 見ら
・問題解決の資質や能力
れており、また「小学校と中学校とで同様の学習活動
・自 律 し た 、協 調 性 の あ る
を 行 う な ど 、 学 校 種 間 の 取 組 の 重 複 も 見 ら れ る 」、「 総
合的な学習の時間においては、教科の補充・発展学習
豊かな人間性
OECD-PISA
リテラシー
・健康や体力
や学校行事などと混同された実践が行われている例も
・道 具 を 相 互 作 用 的 に 用 い
見られる」とされている。現状として、総合的な学習
る能力
の時間が理念として掲げているものが十分に理解され
・活用力
ていない点と、他の教科とどのように関連づいている
・論 理 的 思 考 力 、想 像 力 な
のかが教師自身わからないという点が挙げられる。
( 2001)
内閣府
人間力
(経済財政
そ の た め に 必 要 な 対 策 に つ い て は 、①「 総 合 的 な 学 習
どの知的能力的要素
諮問会議)
の ね ら い を 明 確 化 」し 、
「 児 童 生 徒 に 育 て た い 力( 身 に
・自己制御的要素
付けさせたい力)や学習活 動の示し方について検討す
( 2003)
OECDDeSeCo
キー・コン
・知識や情報を活用する
る 」、②「 関 連 す る 教 科 内 容 と の 整 理 、中 学 校 の 選 択 教
ピテンシー
能力
科との関係の整理、特別活動との関係の整理」を行う
・人間関係形成能力
としている。その他にも③「優れた事例の情報提供」
・自律性と主体性
や ④「 コ ー デ ィ ネ ー ト の 役 割 を 果 た す 人 材 の 育 成 」、⑤
( 2006)
「総合的な学習の時間の指 導計画や実施状況について、
【高等教育・職業教育】
経済産業省
( 2006)
文部科学省
( 2008)
生
・探 究 心 や 学 術 的 思 考・物
社会人基礎
点 検 ・ 評 価 す る こ と 」 [7]等 を 提 案 し て い る 。
・前 に 踏 み 出 す 力( ア ク シ
力
非言語型知識の習得を得るための経験や活動が求め
ョン)
学士力
・考 え 抜 く 力( シ ン キ ン グ )
られる総合的な学習の時間だからこそ、教科以上に明
・チ ー ム で 働 く 力( チ ー ム
確・精緻な目標が提示される必要がある。また実践に
ワーク)
際して理念の理解だけでなく評価の視点が曖昧である
・知識・理解
という点も混乱を生じさせる原因であろう。確実に能
・汎用的技能
力を身につけるためには、 作品・レポートなどにより
・態度・志向性
学習成果を可視化・自己確認させる過程を踏まえなが
・統合的な学習経験
ら、教科等へのフィードバックを確実に行うというス
・創造的思考力
テップが欠かせない。学習者が学習そのものを再発見
する機会として総合的な学習の時間が機能するように、
( 松 下 .2011[6]を 参 考 に 筆 者 作 成 )
このような知識と思考の相互作用的なプロセスを指
他者との共同のなかで問題解決や言語による分析・ま
す 能 力 は「 メ タ 知 識 」と 解 釈 で き る 。知 識 の 構 造 化 は 、
とめ等といった学習方法の多元化・総合化が図られ、
経験等から得られたある程度汎用性のある概念的フレ
可能な限り学習者が一生学びつづけら れるような知力
ームワークに沿って行われる。
「 メ タ 知 識 」は「 個 別 知
の形成を促すことが望ましい。また、教師の力量を発
揮する総合的な学習の時間の計画・運 営は総合的な学
識」とは異なり、それ自体を明示化することが困難な
ため、単純に教授することは困難であるという特徴が
習の時間を通じた学校教育の再検討にもつながる。惰
あるが、第一歩として非言語型知識を得るための思考
性的・ルーチン的な教育活動からの脱却を通して、教
の訓練・プロセスを体系的にフレームワークとして示
職専門性・教科専門性へのフィードバックが可能とな
す必要があると考えられる。
る。
以下からは、国際バカロレアと国際バカロレア 科目
1996 年 に 提 唱 さ れ た「 生 き る 力 」を 育 む 授 業 と し て
注目された総合的な学習の時間だが、指導要領の改訂
「 知 識 の 理 論( TOK)」の 概 要 を 示 す と と も に 、そ の 特
の背景にはいくつかの問題点が挙げられる。以下では
徴と課題、今後の研究の方向性をまとめる 。
総合的な学習の時間の目標を確認し、授業の理念 の浸
4.日 本 と 国 際 バ カ ロ レ ア
透・実践に関しての現状をまとめる。
私達を取り巻く社会は近年急速な勢いで多様化し
ており、グローバル化の過程において各国の経済は国
3.総 合 的 な 学 習 の 時 間 の 現 状 と 課 題
13
際化と他国との統合化を行っている。今日、ほとんど
見方や考え方を提示する取り組みは、日本においては
の OECD 諸 国 は「 知 識 基 盤 社 会 」と 称 さ れ 、経 済 的 発
非 常 に 新 し い 動 き と 考 え ら れ る 。以 下 で は IB の 中 核 で
展や繁栄のために知識が圧倒的に重要な役割を果たし
あ る「 知 識 の 理 論( Theor y of Knowledge)」
( 以 下 TOK)
ている。その結果、経済成長を左右する教育は、今で
について概略を示す。
は政治的な課題として取り上げられるようになった。
5.「 知 識 の 理 論 ( TOK)」 に つ い て
5.1.国 際 バ カ ロ レ ア ・ デ ィ プ ロ マ プ ロ グ ラ ム と
は
国 際 的 な 舞 台 で 活 躍 で き る 人 材 (「 グ ロ ー バ ル 人 材 」)
を育てるために、教育制度がどれほど知識基盤社会に
対応できるかという点に注目が集まっている。
こ れ に 伴 い 、 文 部 科 学 省 は 2008 年 3 月 に 幼 稚 園 、
国際バカロレア機構はインターナショナルスクー
小 学 校 及 び 中 学 校 、2009 年 3 月 に 高 等 学 校 及 び 特 別 支
ルの卒業生を対象に国際的に認められる大学入学資格
援学校の学習指導要領を新しく改訂した。そこで重視
を 与 え 、大 学 進 学 の 道 を 開 く た め に 1968 年 に 設 立 さ れ
されているのは、知・徳・体のバランスのとれた力で
た 。 IB に は 3 歳 か 19 歳 の 子 ど も の 年 齢 に 応 じ て 、 初
あ る「 生 き る 力 を 育 む 」と い う 理 念 に 基 づ き 、基 礎 的 ・
等 教 育 プ ロ グ ラ ム( PYP)、中 等 教 育 プ ロ グ ラ ム( MYP)、
基本的な知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力
デ ィ プ ロ マ プ ロ グ ラ ム( DP)の 三 つ の プ ロ グ ラ ム に 分
等をバランスよく伸ばしていくこととしている。
け ら れ る 。 2012 年 7 月 の 時 点 で IB に 認 定 さ れ て い る
さらに 特筆 すべき は「 グロ ーバル 人材 」の 育成と 、
学 校 数 は 世 界 141 カ 国 に お い て 約 3,400 校 に 上 り 、 日
そのような人材が社会で充分に活躍できるような社会
本 に お い て IB・DP 認 定 校 は 16 校 、う ち 学 校 教 育 法 第
の 構 築 を 目 的 と し て 、2011 年 5 月 に「 グ ロ ー バ ル 人 材
1条に規定されている学校は 5 校である。
育成推進会議」が内閣官房 に設置されたことである。
今 回 は IB の 中 核 を 担 う DP に つ い て 注 目 す る 。 DP
2012 年 6 月 に「 グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 戦 略 」と し て 、日
は 16 歳 か ら 19 歳 ま で を 対 象 と し て お り 、 大 学 入 学 前
本が育成すべきグローバル人材に必要な要素として以
の 2 年間で行われる。このプログラムに合格すること
下 が 挙 げ ら れ た 。 [8]
で、国際的に認められる大学入学資格が取得できる 。
DPは総合的でバランスのとれたカリキュラムで構成
要素Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力
されており、高度な試験と明確な評価基準によって、
要 素 Ⅱ:主 体 性・積 極 性 、チ ャ レ ン ジ 精 神 、協 調 性 ・
認定校の生徒が確実に高度な知的水準に挑戦し、多様
柔軟性、責任感・使命感
な観点から物事をとらえるといった国際的な寛容性の
要素Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのア イ
育成を目指す総合教育を行う。
ンティティー
5.2.TOK の 趣 旨 ・ 目 的
この他にも「グローバル人材」に限らず、幅広い教
DP 取 得 の た め に は 、① Extended Essay( EE:課 題 論
養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワーク
文 )、② Theory of Knowledge( TOK)、③ Creativity/Action
と( 異 質 な 集 団 を ま と め る )リ ー ダ ー シ ッ プ 、公 共 性 ・
/Service( CAS: 創 造 性・活 動・ 奉 仕 )の 三 つ の 要 件
倫理観、メディア・リテラシー等が挙げられている。
を 満 た す 必 要 が あ る 。 な か で も DP の 中 核 を 担 っ て い
またグローバル人材の育成の一環として国際バカロレ
る も の が ② Theory of Knowledge で あ り 、日 本 語 で は「 知
ア ( 以 下 IB) 資 格 へ の 対 応 が 挙 げ ら れ 、「 高 校 卒 業 時
識 の 理 論 」と 訳 さ れ る 。TOK は 学 際 的 な 観 点 か ら 個 々
に国際バカロレア資格を取得可能な、又はそれに準じ
の学問分野の知識体系を吟味し、多角的な方面から思
た 教 育 を 行 う 学 校 を 5 年 以 内 に 200 校 へ 増 加 さ せ る 。」
考を試みる理性的な考え方 と客観的精神を養うもので
と い っ た 項 目 が 掲 げ ら れ て い る 。平 成 24 年 8 月 に と り
ある。生徒がこれまでに得た知識と経験を省察するこ
ま と め ら れ た IB に 関 す る 報 告 書 に お い て は 「 IB の 教
と で 、そ れ ら の 統 合 を は か る こ と が 目 的 と さ れ て お り 、
育理念は全人教育にあり、そのカリキュラムは学習指
Ways of knowledge「 知 る た め の 方 法 」 と い う 構 図 ( 図
導要領が目指す『生きる力』の育成や、課題発見・解
1参照)には学習者を中心として感情 、知覚、言語、
決能力、論理的思考力やコミュニケーション能力等重
根拠という言葉が示されており、全体的な特徴として
要 能 力・ス キ ル の 確 実 な 習 得 に 資 す る も の 」
(国際バカ
は
ロ レ ア ・ デ ィ プ ロ マ プ ロ グ ラ ム に お け る 「 TOK」 に 関
・全 て の 教 科 に 通 底 す る 、目 に 見 え な い“ 方 法 ”
“学
す る 調 査 研 究 協 力 者 会 議 ,2012,p.2)と 表 記 さ れ て い
び方”を可視化している
る。
・一つの教科として体系的にまとめられている
知識の習得やそのアウトプット等、学習の表面的な
・総合学習を中心とした教科横断的思考法の提示を
要素ではなくすべての教科を学ぶ際に共通するものの
している
14
図1(出典)国際バカロレア・ディプロマプロ
グ ラ ム に お け る 「 TOK」 に 関 す る 調 査 研 究 協 力
会議『国際バカロレアディプロマ・プログラム
Theory of Knowledge ( TOK) に つ い て 』 p.16,
文 部 科 学 省 , 2012 年 8 月
点が挙げられる。
プログラム全体を通し、生徒に論理的思考力や表現
力、さらには探究心や学術的思考、国際理解のための
寛 容 性 を 育 て る こ と を 重 視 し て い る 。DP の 中 核 を な す
TOK の 学 習 で は 、 単 な る 知 識 量 の 増 大 と い う よ り は 、
生徒たちが様々な場面に直面した際に状況理解の指針
TOK の 学 習 目 標 と し て 、文 部 科 学 省 の 報 告 書 か ら 以
となる考え方として、物事を多用な観点から分析する
下を引用する。
( 国 際 バ カ ロ レ ア・デ ィ プ ロ マ プ ロ グ ラ
力を養うために
ム に お け る「 TOK」に 関 す る 調 査 研 究 協 力 会 議 ,「 国 際
○知識とはどのようなものか
バカロレアディプロマ・プログラム
○知識を増やす方法とは
Knowledge( TOK)に つ い て 」,pp.14,文 部 科 学 省 ,2012,8.)
Theory of
○知識の限界とは
●知識が示すもの、その前提にあるもの、背後に
○知識は誰のものなのか
ある意味などを批判的に分析する。
○知識の価値とは
●「学習者」としての生徒自身の経験や「知識の
○知識を“持つ”又は“持たない”とはどのような
領 域 ( Areas of knowledge)」、「 知 る た め の 方 法
意味なのか 1
( Wa ys of knowing)」 な ど の 学 習 に 基 づ い た
といった点を考慮する。
Knowledge Issue 2 に 関 連 す る 質 問 、 説 明 、 推 測 、
ま た 「 TOK ダ イ ア グ ラ ム 」( 図 1 参 照 ) と し て 全 体
的な概念が示されており、生徒の思考、疑問などが
仮説、仮説への反論、可能性のある解決法を導
Knower( 学 習 者 )と し て 中 心 に 据 え ら れ て お り 、そ れ
き出す。
● Knowledge Issue に 対 す る 様 々 な 異 な る 考 え 方
を 取 り 囲 む よ う に 4 つ の Wa ys of knowing( 知 る た め の
や認識について理解を示す。
方 法 )と し て Emotion( 感 情 )、Sense perception( 知 覚 )、
● Knowledge Issue へ の 様 々 な ア プ ロ ー チ の 仕 方
言 語( Language)、Reason( 根 拠 )が 記 さ れ て い る 。ま
について関連付けや比較を行う。
た そ れ を 包 括 す る 概 念 と し て の Areas of knowledge( 知
● Knowledge Issue へ の 取 組 み に 個 人 的 に 自 覚 を
識の領域)は、数学、自然科学、ヒューマンサイエン
持って対応できる能力を身に付ける。
ス 、 歴 史 、 芸 術 、 倫 理 が 挙 げ ら れ て い る 。 Ways of
knowing( 知 る た め の 方 法 )に 関 連 す る「 ど の よ う に し
●学問的誠実さ、正確さに充分に配慮をしながら
て 知 る の か 」 と Areas of knowing( 知 識 の 領 域 ) に 関
アイデアを練り、他者へはっきりと伝える。
連する「何を知るのか」は相互に関係していると考え
5.2.TOK の 指 導 ・ 評 価
られる。
TOK は「 学 習 者 と 知 る こ と( Knowers and knowing)」、
TOK ダ イ ア グ ラ ム
「 知 る た め の 方 法 ( Ways of Knowing)」、「 知 識 の 領 域
( Areas of Knowledge)」に よ っ て 構 成 さ れ 、年 間 で 100
時間の学習が必要とされる。評価は、外部評価の課題
エ ッ セ イ( 40 ポ イ ン ト )と 内 部 評 価 の プ レ ゼ ン テ ー シ
ョ ン( 20 ポ イ ン ト )で 総 合 的 に 判 断 さ れ る 。IB は 具 体
的な評価基準を設定しており、それに基づいていつで
も評価が為されることが原則である。所定の課題エッ
セイ及びプレゼンテーションに対する評価の指標とし
て 、 評 価 基 準 が そ れ ぞ れ A~ D ま で 詳 細 に 設 定 さ れ て
い る 。 [9]
課 題 エ ッ セ イ は IB に よ っ て 指 定 さ れ る 10 の テ ー マ
の中から一つを選択することになる。複数の分野横断
的な知識に関する疑問を投げかけるようなテーマにな
2
Knowledge Issue と は 、知 識 を 獲 得 す る 、追 求 す る 、
生み出す、形作る、受け入れるなど、知識との様々な
関わりを通して、自分自身や周囲の人々さらにそれを
取り巻く世界を理解していくうえで生じる様々な疑問
の こ と 。「 知 る た め に は 何 が 必 要 か 」「 そ れ は 正 し い こ
となのだろうか」というポイントが重視される。
15
っている。エッセイを執筆する際の留意点、エッセイ
必 要 と し 、加 盟 校 と IB 本 部 と の 間 で 相 互 に 細 か い 調 整
全体に関する理解が教師によって示され、教師は生徒
が為され、年 1 回ないし 2 回、アジア地域の責任者が
のエッセイ執筆に対して必要なサポートをすることが
視察のため来校している。
求 め ら れ る 。日 本 と 大 き く 異 な る 点 は 、
“エッセイを書
西 欧 偏 重 に 関 し て は 、 1982 年 に IB の 国 際 会 議 が ア
く こ と ”が 重 視 さ れ る の で は な く 、
“エッセイをどのよ
ジアで開かれた際に指摘された。 以来アジア・アフリ
うに書くか”が重視される点である。エッセイを執筆
カの加盟校は、同地域圏の文化に関する科目を選び、
する際の論の構成や、説得力のある根拠を示すにはど
そ の 科 目 の シ ラ バ ス を 克 明 に 作 成 し 、IB 本 部 に 提 出 し 、
うしたら良いのかが明確に示される。
その承認を申請できるようになった。本部の承認を得
プレゼンテーションは、個人または小グループ( 5
れば、そのシラバスの使用が可能となる。しかし この
名以内)でのプレゼンテーションを、1回以上行う 。
ような道が開かれたとはいえ、西欧偏向が是正される
TOK の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン で は 、生 徒 が 実 際 の 生 活 や
に は 依 然 と し て 難 し い 。な ぜ な ら IB の 教 授 言 語 が 英 語 、
身の回りの環境において、とくに関心のある事柄を
スペイン語、フランス語であること、また学問的な思
Knowledge Issue と し て 示 し 、そ れ に つ い て の 探 究 を 進
考の基礎は西欧的思考にその基礎をおいているのが現
める。レクチャーやスキル、シミュレーションなどの
状であり、体系的学問として伝統ある西欧的思考法を
手法を用いて、ビデオ、パワーポイントなど様々な小
超えることが難しいという点が否めないからである。
道具を用いながら、なぜそのテーマが重要であるか、
学 び の 特 権 化 に 関 し て は 、未 だ IB と い う 教 育 プ ロ グ
他の分野とどのような関連があるのかということにつ
ラムである商品を学校で採用する際には多額の費用が
いて、自分なりの考え方や経験を含めて示すことが求
かかり、それに伴い通う生徒の学費も相対的に高くな
め ら れ る 。教 員 の 生 徒 の 知 識 に 関 連 す る 考 え を 引 出 し 、
る と い う 点 で あ る 。IB 校 日 本 語 教 師 へ の イ ン タ ビ ュ ー
根拠の示し方、課題の提起、視点、他の分野とのつな
によると、教師のために開かれるワークショップの参
がりについて共に考え、サポートを行うのが基本であ
加 費 は 、 場 所 ・ 科 目 に よ る も の の ¥ 50,000~¥ 100,000
る。評価に関してはプレゼンテーション評価表で生徒
が相場であり、学校が費用を負担する場合と、教師個
自身、また教師が評価をし、その評価に至った理由を
人が負担する場合があるという現状である。例え今後
説明する。プレゼンテーションの成果を生徒・教師の
日 本 で IB が 採 用 さ れ て い く に し ろ 、学 び の 特 権 化 に 拍
双方で認識し、共通の理解を得ることが重要である。
車がかかることは避けられない。この点に関しては、
総合的な学習の時間で指摘したように理念が十分に
ア メ リ カ の 公 立 学 校 で の IB 採 用 の 事 例 や イ ギ リ ス・ウ
浸 透 し て い な い 点 に 関 し て は 、63 ペ ー ジ に わ た る 教 師
ェ ー ル ズ 州 に お け る IB の ロ ー カ ル 化 の 事 例 が 参 考 に
の た め の ガ イ ド [9]が 用 意 さ れ て い る 点 と 、IB の 本 部 が
なると考えられる。
TOK を 担 当 す る 教 師 の た め に 定 期 的 に ワ ー ク シ ョ ッ
6.お わ り に
プ を 開 い て い る と い う 点 が 参 考 に な る で あ ろ う 。ま た 、
模 擬 授 業 の 事 例 集 も 発 売 さ れ て い る 他 、TOK を 学 ぶ 生
ここまで、近年の知識基盤社会を背景に生ま れた新
徒のためのガイドも存在する。総合的な学習の時間の
しい能力観に基づいて行われている日本の学校教育に
他 の 教 科 と の 関 連 性 が 薄 い と い う 点 に 関 し て は 、 TOK
つ い て 、総 合 的 な 学 習 の 時 間 と 国 際 バ カ ロ レ ア 科 目「 知
のガイドブックそれ自体に他の教科一つ一つとの関連
識 の 理 論( TOK)」の 内 容 を 照 ら し 合 わ せ な が ら カ リ キ
が 説 明 さ れ て い る こ と と 、 TOK の テ キ ス ト の な か で 、
ュラム構成・指導内容に着目して 考察してきた。総合
他の教科を扱う項目が設けられているため、自然と他
的な学習の時間の課題となっているカリキュラム、評
教 科 で 扱 う ト ピ ッ ク を TOK で も 扱 う こ と に な る の で
価基準、評価の信頼性、教科との関係の整理などとい
ある。
っ た 点 が 、IB に お い て 総 合 的 な 学 習 の 時 間 と 近 い 位 置
と し て 存 在 す る TOK の ① 全 て の 教 科 に 通 底 す る 、目 に
5.3 課 題
見 え な い“ 方 法 ”
“ 学 び 方 ”を 可 視 化 し て い る 、② 一 つ
IB 全 体 を 通 し て 指 摘 さ れ る 点 は 、 大 き く 分 け て 3 点
の教科として体系的にまとめられている、③総合学習
ある。一つは柔軟なカリキュラム ゆえに現場の教師の
を中心とした教科横断的思考法の提示をしている 、と
力量に左右される点と、二つ目は教育課程の西欧偏重
いう特徴から示唆を得るところは大きいと考えられる。
の傾向がある点、そして三つ目は多額の費用による学
し か し 、 TOK は あ く ま で DP の 中 核 で あ る た め 、 初
びの特権化である 。
等 教 育 プ ロ グ ラ ム( PYP)、中 等 教 育 プ ロ グ ラ ム( MYP)
現場の教師の力量に左右される点は、日本の総合的
ではどのような位置付けになっているのかが不明確で
な学習の時間においても同様の指摘が見受けられるが、
あ る 。ま た 、TOK を 中 心 と し て 実 施 し て い る 教 科 の 授
そ の 点 に 対 し IB は 全 カ リ キ ュ ラ ム に IB 本 部 の 承 認 を
業等を通して、実際に生徒にどのような能力がついて
16
い る の か 、 PIS A の 結 果 と TOK 実 施 と の 相 関 性 を 明 確
に す る 必 要 が あ る 。こ の 点 を 踏 ま え 、TOK の 存 在 の 有
無が学力の向上にどのように関わっているのかを、実
際 の 教 師 の 実 践 や IB の 教 員 養 成 を 分 析 し て い く な か
で調査することが今後の課題である。
文
献
[1] 文 部 省 中 央 市 議 会 第 一 次 答 申 『 2 1 世 紀 を 展 望
した我が国の教育の在り方について(第一次答
申 )』 ,1996.7.19
[2] 文 部 省 『 小 学 校 学 習 指 導 要 領 』
「第5章 総合的
な 学 習 の 時 間 」 ,2008.
[3] 文 部 省 『 小 ( 中 ) 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 総 合 的
な 学 習 の 時 間 編 』 ,2008
[4] 国 際 バ カ ロ レ ア ・ デ ィ プ ロ マ プ ロ グ ラ ム に お け る
「 TOK」に 関 す る 調 査 研 究 協 力 会 議 ,「 国 際 バ カ ロ
レアディプロマ・プログラム
Theory of
Knowledge( TOK)に つ い て 」,文 部 科 学 省 ,2012,8.
[5] 斉 藤 雄 志『 知 識 の 構 造 化 と 知 の 戦 略 』,p.i,専 修 大
学 出 版 局 , 2005.
[6] 松 下 佳 代 ( 編 ),『 < 新 し い 能 力 > は 教 育 を 変 え る
か 学 力 ・ リ テ ラ シ ー ・ コ ン ピ テ ン シ ー 』, ミ ネ
ル ヴ ァ 書 房 , 2011.
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専 門 部 会( 第 1 0 回 ),「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 の 現
状 と 課 題 ,改 善 の 方 向 性 ( 検 討 素 案 )」 ,2007.
[8] グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 推 進 会 議 ,「 グ ロ ー バ ル 人 材 育
成 戦 略( グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 推 進 会 議 審 議 ま と
め )」 ,2012.6.
[9] IBO 「 Theor y of knowledge guide」 ,pp.41,2008.
17
Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the English Language Education Society of Japan
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
Impact of Accented English on Listener Attitude Towards Speakers’ Credibility
- Learning Pronunciation and Its Economic Rationality –
Risa Nabei
Graduate School of Education, Waseda University 1-6-1 Nishiwaseda, Shinjuku-ku, Tokyo 169-8050
E-mail: [email protected]
Abstract This study investigates how speakers’ accent impact their credibility, specifically the effects of Japanese
accented English on the attitudes of listeners with different language backgrounds. A total of 30 participants comprised from
three different language groups (native speakers of English, ESL, and EFL) listened to the recordings of three presenters
speaking in English with different levels of Japanese accent: light, middle and heavy. The results showed that there were no
statistically significant differences in perceived credibility given to different levels of accentedness according to the language
group. All participants found the least accented speech the most credible, and the most heavily-accented English was rated as
having the lowest credibility. Implications for pronunciation teaching are discussed.
Key words accent, accented English, listener attitude, credibility, pronunciation instruction.
Impact of Accented English on Listener Attitude Towards Speakers’ Credibility
- Learning Pronunciation and Its Economic Rationality –
鍋井
早稲田大学大学院
教育学研究科
理沙
〒169-8050 東京都新宿西早稲田 1-6-1
E-mail: [email protected]
概要
本実験では日本人の英語が外国人からどのような評価をされているのか調査することを目的とした。特に日本語訛りの
英語が聞き手(被験者)が話者に対して感じる credibility に与える影響について考察する。日本語訛りの度合いが異なる(強・
中・弱)1 分程度の同じ内容の 3 つの英語のセールストークを language background の異なる被験者に聞かせ、それぞれのセール
ストークについて被験者が感じた credibility について調査した。被験者は日本語を母語としない 1) ネイティブ 13 人 、2) 英語
圏での英語 (ESL) 学習者 9 人 、3) 英語圏以外での英語 (EFL) 学習者 8 人で構成し現実に近い環境とした。結果は被験者の
language background に関わらず、日本語訛りの度合が弱い(ネイティブの発音に近い)発音のセールストークの方が、訛りが中
程度及び強いセールストークよりも、聞き手が話し手に対して抱く credibility が高いことが示唆された。
1. Introduction
non-native speakers but also among those non -English
1.1. Overview of the problem
native speakers who use different languages as their
It is undeniable that English has become a global
mother tongues.
of
Faced with the increasing number of prospective ESL
communications technology such as the Internet has
(English as a second language) and EFL (English as a
enabled business people to deal with the others in any
foreign language) speakers in the international markets,
geographical locations worldwide. In this increasingly
businesspersons have come to wonder if some English
globalised business world, English is becoming more
accents have more acceptability than other accents. Which
important than ever as it is often a prominent and only
accent is likely to have the most amount of credibility
communication
when one communicates with customers and clients
language
of
business
tool
not
[1].
only
The
development
between
native
and
Risa Nabei, " Impact of Accented English on Listener Attitude Towards Speakers’ Credibility- Learning Pronunciation and Its Economic Rationality –,"
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集, pp. 19-29, 日本英語教育学会編集委員会編集, 早稲田大学情報教育研究所発行, 2014 年 3 月 31 日.
This proceedings compilation published by the Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda University.
Copyright © 2014 by Risa Nabei. All rights reserved.
around the world [2] [3]? Knowing which accent will be
Accentedness
perceived as the most credible will give businesspersons
The construct definition of accentedness which is
advantage over their rivals as knowledge of people’s
adopted here in the present thesis follows Munro and
reactions to the varied accents they ma y encounter on a
Derwing’s work on L2 speech perception and production
day to da y basis might facilitate their preference of
[8] [9]. They define accentedness as “the degree to which
products and purchase decisions.
the pronunciation of utterance sounds different from an
expected production pattern” [10: p.112].
However, according to Tsalikis, DeShields, and LaTour
The term is
[4], there have been relatively few studies on the
used in this study to indicate how much the pronunciation
credibility of a salesperson as perceived by his or her
differs from that of standard in order to show the
potential client on the basis of the former’s accent. In fact,
heaviness of the accent that speaker possesses.
while many studies have attempted to mea sure subjects’
attitudes towards varied accented English in the field of
language
attitude
studies
and
sociolinguistics,
Credibility
such
Investigating credibility of the accented speech has
investigation seems to have been overlooked in the
received attention
business literature.
credibility
Moreover, these language attitude
has
only recentl y [4],
been
extensively
but
the
studied
in
term
social
studies mostly examined English native speakers’ attitude
psychology and
towards accented English, but there appear to be few
credibility as attributions concerning a communicator who
studies which investigate attitude towards non -native
is the basis for the acceptance or rejection of his/her
speaker’s English.
assertions.
It
sociology
has
been
[11].
also
Delia
widely
[12] defines
accepted
that
credibility has two major dimensions: expertise and
1.2. Purpose of the study
In light of the current situation in which man y Japanese
trustworthiness after Hovland and Weiss [13] initiated
have an urgent need to acquire English in order to survive
experiment which tests whether trivia statements are
this increasingly globalised and competitive business
perceived differe ntly according to the level of speakers’
world, it seems highly useful to investigate how the
accentedness,
Japanese people’s English is perceived by the rest of the
constructs of credibility following the above conception
world. On these grounds, I attempt in this study to
as ‘believability’ and ‘truthfulness’ as a measure to
evaluate reactions of people with various language
determine how speakers’ accent impacts their credibilit y.
empirical
investigation
Lev-Ari
on
and
credibility.
Ke ysar
For
[3]
their
interpreted
English,
As my stud y attempts to measure similar aspects of
specifically focusing on how speaker’s accent impacts
credibility with above investigations, I employed the term
their credibility.
‘trustworthiness’ and
backgrounds
towards
Japanese
accented
‘believability’ to
impact of accented speech on credibility.
evaluate
the
In addition, as
the study b y Tsalikis, DeShields, and LaTour [4] suggests
1.3. Definition of terms
Accent
that ‘willingness to recommend (the speaker)’ is a good
indicator of credibility, I also used this aspect to measure
According to Powesland and Giles [5], an accent is a
the credibility of accented English speakers .
manner of pronouncing words that differs from the
standard speech of culture, with the grammar and syntax
being consistent with the standard. Derwing et al. [6]
2. Review of Literature
refer
of
2.1 Perceptions of native English speakers towards
English-speaking countries as the ways in which t he
speech differs from the standard English and the impact
varieties of English
One of the earliest attempts to assess the impact of
such differences have on speakers and listeners. Both
non-native accented speeches on listeners’ perceptions is
definitions indicate that an accent is different from the
called “matched guise technique”, developed by Lambert
standard but onl y in terms of pronunciation. An accent is
in
often mistaken with the term dialect and they tend to be
participants who listen to a series of single speakers who
used interchangeably. However, a dialect differs from the
read out the same prepared passage. The texts are
standard both in terms of vocabulary and grammar in
different from each other in only one aspect; the y are read
addition to the pronunciation [7].
in a number of accents. Before the task, participants are
to
a
foreign
accent
in
the
context
20
the
late
1950s
[14].
The
procedure
involves
told that they will listen to a variety of different speakers,
non-native accents received low status evaluation and the
when in fact, it is read by the same speaker in a number
overall preference for the three native accents.
of different guises. Participants are required to listen to
This technique was also employed to investigate the
each recorded passage and to evaluate the speaker, most
attitudes of non -native speakers towards varieties of
often on a bipolar scale, in relation to a number of
English. Results of these studies indicated that the
personality traits such as intelligent/ unintelligent, or
perceptions
honest/dishonest. The listeners’ ratings on the scale are
accented English are quite similar to that of native
therefore considered to represent their impressions about
speakers. Eisenstein [21] investigated the attitudes of
varieties of accents. Two of their earliest research [14]
English language learners in New York towards three
[15] showed that unaccented speech received more
varieties of General American English, Black American
favourable reactions than accented speech by the listeners
English (now more referred as African American English)
who were unaware of the fact that they were hearing the
and New York accent English (a non -standard variety of
same speaker both times.
English which is spoken in city areas of New York). The
of
non-native
English
speakers
towards
These original studies of Lambert et al. [14] [15] have
results indicated that even during the earl y stages of
generated a number of similar studies and h ave added to
language learning, adult ESL students were able to
the understanding of native and non -native speaker
recognise dialect differences in English speech, and it
attitudes towards language varieties. Studies conducted by
was also discovered that as the learners become more
Giles [16] utilising this technique also showed that
proficient in English, their preference became simil ar to
speakers using the standard, i.e. received pronunciation
those of native speakers, that means, they become more
(RP) were rated as more competent, confident, and
favourable for the General American English.
educated than speakers using a non-standard accent. In
Munro, Derwing and Morton [10] investigated the
another study conducted by Brown, Giles, & Thakerar,
perception of non -native speakers on the other non -native
[17] participants who listened to the recordings of a
speakers’ accented English. In their study, listeners from
bi-dialectal speaker using both Welsh and RP rated the RP
native
speaker to be more intelligent, happy, active, ambitious,
language
and even good-looking than the Welsh accented speaker.
foreign-accented English utterances from native speakers
These studies illustrate that listeners judge speakers more
of Cantonese, Japanese, Polish, and Spanish who learn
on accent than contents of the passages.
English as their second language. Results revealed that
Cantonese,
Japanese,
backgrounds
Mandarin
evaluated
the
and
same
English
s et
of
regardless of native language background, the listener
groups
2.2 Perceptions of non-native English speakers towards
showed
moderate
to
hi gh
correlations
on
intelligibility, comprehensibility, and accentedness scores.
varieties of English
As greater varieties of accented English came t o
There were high degree of similarities in the ways in
attention, a “verbal-guise technique” [18], a modified
which Cantonese, Japanese, mandarin, and native English
version of a matched -guise technique began to be used. A
listeners responded to utterances from intermediate -level
verbal-guise technique uses recordings made not b y one
ESL speakers from linguistic backgrounds similar to and
and the same speaker but by several speakers in order to
different from their own.
represent different degree of accentedness. Although this
variant sacrifices external validities such as p ause,
2.3 Perceptions of accented speech: credibility
intonation and speed, it allows more varieties of accented
Attention to the studies of listeners ’ reactions t o
English tested, and there is one important advantage over
accented English in the business field specifically came
the original one that “it precludes the possibility of
from the firms that operate in overseas markets. They had
listeners recognizing that the voices on the various taped
to decide whether to adapt their marketing strategies for
recordings belong to one and the same speaker” [19].
each country market or their marketing activities across
Dalton-Puffer et al. [20] employed the verbal-guise
world markets, especially on their advertising activities
technique in order to examine the attitudes of English
[22]. Tsalkis, DeShields, and LaTour [4] conducted a
learners in Austria. The participants were asked to
study in the personal selling context that compared the
evaluate two Austrian non -native accents of English and
effectiveness and credibility of the salespersons who
three native English accents. The results showed that two
speak English with Greek accent to those who speak with
21
standard American English accent. After listening to each
2.4 How Japanese accented English is evaluated
speaker, the judges were asked to rate the speaker on
Previous studies have shown that accented English tend
fifteen bipolar adjectives scales (e.g. intelligent/ not
to be seen as less favourable and even less credible than
intelligent, professional/ not professional, convincing/ not
standard English. Then, how about Japanese -accented
convincing). A six-point scale was utilised for their
English? The number of research which investigate
experiment. As a result, the salespersons with the
people’s perception of Japanese English is very limited,
standard American accent were rated more favourably
however, the study conducted by Scott et al. [1] show
across all fifteen adjectives than those who spoke with the
some implications how Japanese accented English is
Greek accent. A replication of the study by Tsalikis,
perceived. The purpose of their stud y was to determine
Ortiz-Buonafina, and LaTour in Guatemala [23], also
the
revealed that speakers with the standard accent were
businesspersons from around the world. The stud y was
evaluated more favourably across all fifteen adjectives
conducted to meet the demand of business people to know
than
the
foreign-accented
speakers.
These
English-language
accent
preferences
of
results
which accent can give them an advantage over those who
indicated that the salespersons with standard (American)
speak other accents [24] [25]. The researchers conducted
English were perceived more effective and credible than
meta-analysis on four empirically based studies which
the salespersons with a foreign accent.
investigated the English -language accent preferences of
prospective and practicing businesspersons from around
This emergence of the concept “credibility” in research
the world [26] [27] [28]. These four studies represented
on the relation between accents and success in business
the accent preferences of prospective and practicing
activities has triggered more general research recently.
business persons from the United States, the Pacific Rim,
Lev-Ari and Keysar [3] investigated the impact of
accented speech on truth judgements
statements.
In
participants
except for the tie between General American English and
(American
Received Pronunciation (British) English, which were the
two most preferred accents, participants preferred the
statements by native or non -native speakers of English,
studied representative accents in this descending order:
such as “Ants don’t sleep”. In order to avoid prejudice
Australian English, Estuar y English, Indian English, and
affecting
were
Japanese English. The result showed that Japanese
informed prior to the experiment that the statements were
accented English as the least preferred accent. The
prepared for the speakers, and were not based on the
researchers concluded it was not clear why Japanese
speakers’ own knowledge. Although the participants knew
accented English was least preferred but suggested the
that the speakers were simply reciting from a prepared
possibility that it may have been due to the participants’
script, they judged as less truthful the statements read by
unfamiliarity with Japanese accent.
of
study,
of the trivia
students) were asked to judge the truthfulness of trivia
ratings
their
the United Kingdom, and Malaysia. Outco me showed that
truthfulness,
participants
the people with foreign accents.
This outcome, as well as previous research int o
In the following experiment, Lev-Ari and Ke ysar tested
people’s perception of foreign accented English, is
whether the awareness reduces the impact of accent on
intriguing in the wa y it raises a question as to how the
participants’ judgement of truthfulness. They told the
English spoken in Japan is perceived by those in other
participants that they were being tested to see if accents
parts of the world. As has been mentioned above,
have any negative impacts on credibility. The experiment
previous research which examined the impact of accented
was conducted with identical recorded trivia statements,
English
asking listeners to rate the difficulty of understanding the
utterances of native and non -native English speakers, but
speaker on a continuous scale. The result turned out that
not focused on how the different levels of accentedness of
while participants rated statements with mild accent just
non-native speakers’ English affect listeners’ perception,
as truthful as statements by native speakers, they rated
let alone how Japanese accented English affect listeners’
heavily accented statements as less truthful, indicating
perception. However, such research seems highly required
that listeners were unable to undo t he impact of heavy
as it is quite clear in the near future that more Japanese
accent even when informed. The results of above two
people will become compelled to interact with people
experiments
from various kinds of language backgrounds.
suggest
that
the
amount
of
credibility
decreases with the severity of the accent.
22
on
people’s
perception
mainly
compared
resource located in Hokkaido if the listener agreed on
2.5 Research Question
In light of such pressing requirement, it seems worth
paying at least 1,000 dollars.
This topic was chosen to
investigating how the Japanese learners of English are
measure the credibility because the participants are likely
evaluated
unfamiliar with the product and therefore the y have to
by
the
people
from
different
language
backgrounds especially in terms of credibility. The main
rely on the speakers for their decision of purchase.
objective of the present study is to investigate whether
presentation could sound quite fictitious as the product is
Japanese
not tangible. The fact that the commodity was not
accented
English
affects
listener
attitudes
towards speakers’ credibility.
The
tangible was one of the important reasons of this choice
since if the product was such entities as a car, the
Research questions are as follows:
listeners would be able to judge the credibility of the
RQ1: Does accented English affect listener attitudes
speech based on their knowledge of the products.
towards speakers’ credibility?
Seven male Japanese recorded a scripted presentation
RQ2: Does the listeners’ language background affect their
with an effort to deliver the message in a natural and
assessment of the credibility of speakers of accented
realistic flow. Each recording lasts approximately 60
English?
seconds.
The level of accentedness of each speaker was
classified according to the judgements of two professional
3 Method
English teachers; one is a trained Japanese phonetician of
3.1 Subjects
English with over three decades of teaching experience,
A total of thirty people participated in this study. Of
and another one is an English native speaker specialising
which, thirteen are native speakers of English. These
in teaching English communication skills with seven
native speakers enrolled in the undergraduate exchange
years of experience in Japan.
programs between their local and Japanese universities.
The judges listened to all seven presentations and
The duration of the program is approximately six months,
ranked them in order of the level of accentedness ,
and eight of them had never studied Japanese language
considering the features relevant to pronunciati on such as
before joining this program. On the other hand, the rest of
segment and prosody. As their rankings matched, those
five students had studied Japanese for one or two years
presentations judged to be with the lightest, median, and
prior to this program. The level of their Japanese was
the heaviest accents were selected for this study as
lower intermediate according to the Japanese teacher who
samples of light, middle and heavy accented English. All
was teaching them at the time of data collection.
speakers are in their middle twenties and have relatively
Nine students are those who use English a s their second
similar voice qualities.
language (ESL). The y are born and raised in the countries
where English “holds special stat us as a medium of
3.4 Procedures and rating scale
communication” [7:p.108]. In this study, students from
Participants enrolled in this study were told that three
Singapore, Malaysia, and Philippines participated. Other
sales presentations would be given by Japanese men in
eight participants are from countries where English is
English, and the contents of the speeches were ident ical.
learned as a foreign language (EFL) and is used for
This was done to make listeners concentrate on listening
international
business,
to the presentation, avoiding the situation in which the
diplomacy and tourism. Four Chinese, three Koreans, one
communication,
such
as
in
participants come to wonder which nationality, or what
German, and one Spanish participated in this research. All
kind of person the speaker is. The order of the three
of their English were at the level of above 80 scores in
presenters was two patterns : half of the participants
TOFEL iBT.
listened to the recording in order of middle, light and
heavy accent whereas the rest heard them in middle,
heavy and light order. Only two patterns were used as the
3.3 Materials
A hypothetical sales presentation (see Appendix A) was
number of the participants was small, and middle accent
prepared in three different levels of Japanese -accented
speech was given first in order to give a standard level of
English;
accent.
light,
middle
and
heavy.
The
commodity
promoted in this presentation is a water right with which
After listening to each speaker, the participants were
the buyer will be entitled to the ownership of water
asked to rate the speaker based on their impressions on
23
5-likert scales in addition to one open question (see
different levels of Japanese -accented English. This design
Appendix B).
Subjects were instructed not to take much
investigates one statistical interaction and two main
time on each question but answer them with their first
effects so as to investigat e how much influence those
impressions. However, they were given as much time as
factors have on the credibility of the speaker, that is, 1)
they needed to complete the questionnaire.
interaction effect between accentedness and language
At the end of the questionnaire, there are some
group, and 2) main effects of accentedness and language
additional questions measuring their mother tongue,
group respectively.
exposure to Japanese -accented English, and the duration
The repeated-measures two-way ANOVA showed that
of their stay in Japan.
the
effect
of interaction between accentedness
and
language group was found not significant, F (4,54) =
3.5 Questionnaire design
1.282; p < .289.
Questionnaire consists of five 5 -likert scale questions
It also indicated that the main effect of
language group was not statistical, F(2,27) = .503; p
and one open question was used to measure the credibility
< .610. However, it was found
given
The
accentedness has statistically significant effect on the
participants were asked to rate the speaker on five scales
credibility, F (2,27) = 51.738; p < .000. This model also
to
different
degrees
of
accentedness.
that the level of
in which the larger number indicates higher credibility or
suggests that
purchase incentive.
= 66% of the variance in credibilit y
The sum of Q3, Q4 and Q5 represents how much
scores can be explained by accentedness. According to
credibility each speaker gained from the participants.
Mauchl y’s test of sphericity, there is no problem with
Each
sphericity as the p value is greater than .05.
question
examines
one
of
the
constructs
of
credibility: the amount of trustworthiness, believability,
and
whether
he
can
be
recommended
as
a
The descriptive statistics of this design are shown in
good
Table 4.1, along with the detailed result of this statistical
salesperson. Thus, the sum of all items well indicates the
test in Table 4.2. The result presented i n Table 4.2 is
credibility of an each speaker.
visualised in Figure 4.1 which shows rather strong
Q1 and Q2 were used to determine whether it was a
similarities in the ways in which all three language
type of the product or quality of the speech listeners
groups responded to speeches with three levels of
positivel y/ negatively reacted. Purpose of setting Q1 and
accentedness respectively. Figure 4.2 shows estimated
Q2 were to ask participants his/her impression on the
marginal means of the credibility scores to give a simpler
product and quality of the salestalk separately so as to
view of the result.
collect the data purely related with the credibility of the
salesperson.
Table 4.1
Descriptive statistics o f credibility sco res g iven to e ac h lev el
4. Results
of accented presentatio ns by three lang uage g ro ups
A major research question posed in this study is to
investigate how speakers’ accent impacts their credibility:
RQ1: “Does accented English affect listener attitude
Credibility
scores given to
towards speakers’ credibility?” Another question was also
Light accent
examined whether there is a difference in language
attitudes of 1) native speaker of English, 2) ESL speakers,
and 3) EFL speakers towards Japanese -accented English:
Middle accent
RQ2: “Does the listeners’ language background affect
their assessment of the credibility of speakers of accented
English?”
The repeated-measures two-wa y ANOVA was used t o
Heavy accent
analyse above two questions as this study has more than
two
independent
variables
(language
group
and
accentedness) and tests the same people more than once:
the participants listen to the same salestalk in three
24
Descriptive Statistics
Language
Group
Mean
Native
11.23
ESL
10.89
EFL
11.00
Total
11.07
Native
7.85
ESL
7.22
EFL
7.50
Total
7.57
Native
6.62
ESL
7.44
SD
2.587
1.691
1.852
2.100
2.115
2.728
1.309
2.096
1.609
N
13
9
8
30
13
9
8
30
13
2.698
9
EFL
5.25
1.669
8
Total
6.50
2.113
30
Table 4.2
Results of repeated-measures ANOVA of the role of
accent on the credibility
Source of
SS
df
MS
F
P
variation
Between-subjects
Effects
La ngu a ge
Grou p
Error
6.992
2
3.496
0.503
0.61
187.49 7
27
6.944
332.93 4
2
166.46 7
51.738
.000 *
16.498
4
4.125
1.282
0.289
173.74 6
54
3.218
Figure 4.2
The distribution of credibility scores according to
speakers’ level of accentedness.
Within-subjects
Effects
Accente dness
Accente dness
*
La ngu a ge
Grou p
Error(Acc ente
dness)
* p < .05
Figure 4.1
The distribution of credibility scores given to each
accent by three language groups
5. DISCUSSION
5.1
RQ1
The results shown in the previous section suggest a
number of possible interpretations. For RQ1: “Does
accented English affect the listener attitude towards
speakers’ credibility?” findings indicate that a speaker’s
accent affects listeners’ perception of credibility. The
listeners found the light accent was more credible than
middle
and
heavy
accents.
This
outcome
supports
previous research that indicated accented speech reduces
the credibility of the speaker [3] [4] [24]. The result also
agrees with widely demonstrated research in which
speakers of standard varieties of English tend to be rated
most positively in terms of competence (traits such as
intelligence and confidence). Considering that the light
The results indicated that regardless of which language
accent used in this study was near native English
group the participants belong to, they all reacted in the
speaker’s pronunciation, and a trait of credibility can be
same manner towards the Japanese-accented English, and
considered as a part of competence [4], the result of
found
present study ma y well be argued that it supports the
the least accented English to be more credible
than middle and heavy accents.
above previous research.
A further Post -Hoc Tukey HSD test revealed that
There could be several possible reasons why the
significant difference can be found onl y between light and
significant
heavy, and light and middle accents but not between
credibility scores given to light and heavy, and light and
middle and heavy accents (p < .05). Although the median
middle accents but not between middle and heavy accents.
of credibility scores of each accent are different, a
This may have occurred due to a small number of
boxplot shows that the score distribution of middle and
participants. However, apart from such a technical reason,
heavy accents are quite similar (see Figure 4.2).
there may be a case for saying that only a native -like
25
differences
were
only
found
between
pronunciation is good enough to raise one’s credibility.
of
Lev-Ari and Keysar’s experiment [3] showed the
standard
varieties
and
when
the
non-standard varieties of English [29].
judges
speak
In fact, a study
similar result in which participants perceived recorded
conducted by Eisenstein [21] revealed that non-native
trivia statements b y speakers with mild and heavy accent
speakers were able to recognise accents as good as native
as less true than those by native speakers, but there was
speakers.
no significant difference between mild and heavy accents.
language learners in New York towards three varieties of
They argue based on their outcome that people perceive
US English: General American English, African American
information as less truthful when the speaker has an
English and Ne w York accent (a non-standard variety of
accent, because they tend to misattribute the difficulty of
English which is spoken in the city areas of New York).
understanding the speech to the truthfulness of the
The results indicated that even novice adult ESL students
statement. On the basis of the above, it could be argu ed
were able to identify the accent differences in the
that both middle and heavy accents in the present study
utterances.
He
investigated
the
attitudes
of
English
were difficult to understand for the participants, and
A research conducted by Munro, Derwing, and Morton
hence they attributed the difficulty of understanding the
[10] and Rossiter [30] also indicated that there were
presentation to a reduced credibility. If this is a case, only
salient similarities in the ways in which native and
a native-like, or a light accents are free from the
non-native English speakers responded to utterances from
possibility of disturbing the “processing fluency” [3: p.3]
native and non-native speakers.
of the listeners, but both middle and heavy accents were
studies suggest that non-native English speakers can
equally perceived as difficult and therefore less credible.
identify foreign-accented English almost as good as
Results of these two
Another possibility is that heaviness of accent might
native speakers, and tend to evaluate the accented speech
have caused listeners to get a preconceived idea that
in the same way as do the native speakers. These findings
listening to the speech would be difficult, and led them to
seem to give supportive reasons why there was no
give generous scores to the one with heavy accent
significant inter-group difference in the credibility scores
because of their sympathy towards the speaker who tries
in the present study.
hard to speak an unfamiliar language. This might have
Another possible interpretation of the result concerns
raised the credibility scores given to heavily accented
the current English education in non -native English
speech, and pushed them up closer to that of middle
countries. Whether listeners are EFL or ESL, people tend
accent.
to
have
learned
En glish
using
native
speakers’
pronunciation as their models since they first encountered
5.2
English. Consciously or unconsciously, this English
RQ2
For RQ2: “Does the listeners’ language background
education ma y have led the participants to choose only
affect their assessment of the credibility of speakers of
the native-like pronunciation as more credible. The result
accented English?” the results indicate that regardless of
may impl y that whether ESL or EFL, learners of English
which language group the participants belong to, the y all
tend to look towards standard varieties of native English
reacted in the same manner toward the Japanese -accented
for “notions of correctness” [31: p.151].
English, and found the light -accented English more
credible than that with middle and heavy accents.
6. CONCLUSIONS, PEDAGOGICAL IMPLICATIONS,
I raised the possibility that ESL and EFL speakers
and LIMITATIONS
might be more sympathetic to the accented English than
The results of the present stud y indicate t hat regardless
native English speakers and thus, give higher scores for
of the language backgrounds, listeners evaluate the light
middle and heavy accents than do native speakers.
accented speech as more credible than middle and heavy
However, it turned out that was not the case. Even though
accents when listening to the English spoken by Japanese
the finding was unlike what I had hypothesised, the result
learners of English. This finding is consistent with studies
of the present study is consistent with the widel y accepted
in social psychology and global marketing literature that
notion in the field of speech perception that standard
noted presenters speaking in standard varieties of English
varieties of English tend to be evaluated as more
evoke more favourable judgements of credibility than
favourable than non-native varieties of English. This
presenters speaking a nonstandard or foreign -accented
appears to be the case both when the judges are speakers
English.
26
English to raise
The investigation also showed si gnificant differences
students’ awareness
of their
own
onl y between credibility scores given to light and heavy,
pronunciati on. Because the English language is ultimately
and light and middle accents but not between middle and
a tool for communication and students will most likely
heavy accents. This finding is notable because it may
have to use English once they join the global business
suggest that only speakers with native -like and light
community.
accents are free from the possibility of reduced credibility.
There are several limitations to this study. One problem
Furthermore, it was also found that this result applies to
may have resulted from using different speakers for each
all the judges from different language backgrounds: 1)
level of accentedness, rather than using a matched guise
native speakers of English, 2) ESL and 3) EFL speakers.
technique traditionally employed in the previous language
Despite their different levels of exposure to the English
attitude studies. As previously mentioned, the verbal
language, the three groups were unanimous in evaluating
guise technique utilised in this study does not control for
onl y the light accented English as highly credible.
paralinguistic differences in the speeches of different
These findings seem to suggest that only a native -like,
speakers.
Small
number
of
recorded
business
or light accent can raise the credibility of the speaker and
presentations also could have compromised the result.
imply that if speakers are to raise their credibility onl y by
Participants could listen to only one speech for each of
pronunciation,
native -like
the three levels of accentedness. The number of recorded
In fact, several researches have overtly
they
utterances was limited as it was felt that listener fatigue
shown that General American English and Received
might compromise the validity of the data collected if
Pronunciation are widely accepted and preferred by
more than three speech recordings of the required length
purchasers around the world [4] [22] [24] and present a
were used. These limitations ought to be overcome in any
very straight forward recommendation that “Prospective
future work.
pronunciation.
need
to
attain
and practicing businesspersons who desire high levels of
English-language accent acceptability around the world
should develop either a General American English or a
Received Pronunciation English accent
for
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business
purposes since these two accents are the most preferred
accents for conducting business around the world.” [1:
10].
However,
aiming
to
improve
students’
English
pronunciation to the level of the native standard seems
neither realistic nor appropriate when teaching English at
school in Japan. There are limited number of English
classes, in which many other aspects of English other than
pronunciation have to be taught as well, and thus teachers
do not
have
adequate
time
to focus
on
teaching
pronunciation at such a high level, not to mention that
there are very few teachers who have actually learnt
pronunciation instruction to those who learn English as a
foreign language.
There is also a concern that teaching only native
varieties of English as a goal might give an impression to
the students that nonstandard, or foreign -accented English
are not correct.
With the above concerns taken into consideration,
however, it still seems to be fair to the students 1) to
inform them that accents of English may be linked to the
credibility that speakers can win from their interlocutors
and 2) to teach both segmental and prosodic features of
27
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155-175.
[26] Scott, J. C., Green, D. J., Rosewarne, D., & Neal, W.
28
Appendix A.
Appendix B.
Questionnaire
Hypothetical Sales Presentation
Selling Water Reserve Land
Based on the message you have just heard; give us your
opinion of the speaker (salesperson) by circling the
Hi. I am Taka. Do you have time now?
appropriate number.
Well, let me
talk to you for just a few minutes…
1. If you had enough money, would you buy the product
I would like to tell you about a really good investment.
he is selling?
It’s an investment in water rights. Well, it’s not just
ordinary water, but water full of good minerals, calcium
5
4
3
2
Yes
Probabl y Yes
Not sure
Probably No
1
No
and etcetera, etcetera.
Our company, TOKYO GOODWATER COMPANY owns
2. Would you recommend this product to your friend?
massive land with water resources in Hokkaido. Hokkaido
is located in the northernmost part of Japan, and 70% of
5
4
3
2
1
its land is covered with forest. The land is full of nature
Yes
Probabl y Yes
Not sure
Probably No
No
and so does have good -quality of water.
It’s not known to many people yet, but actually, man y
3. Would you recommend this salesperson to your
famous athletes, especially baseball players, drink this
friend?
water. You know Ichiro, right? He drinks it, too!
Well, we are raising money for further development
5
4
3
2
Yes
Probably Yes
Not sure
Probably No
1
No
now, so that we can extract more water, and sell it to
more people.
4. To what extent do you think this person can be seen
You can be a shareholder of our company,
and be an owner of this wonderful water!
as a trustworthy salesperson by his client?
Trustworthy
5
4
3
2
1
not trustworthy
You can start from bu ying just one share, you know.
One share costs you just 1,000 dollars.
investment!
It’s a promising
5. How much credibility do you think ther e is in this
Please think about it!
person’s talk?
How willing are you to believe him?
Believable
5
6. In
evaluating
4
this
3
2
1
salesperson,
not believable
which
of
the
following characteristics of his voice influenced you
the most?
1.
Intonation (ups and downs of the voice)
2.
Speed
3.
Accent
4.
Don’t know
7. Could you write down an y comments on the speech?
How was his salestalk? In what way can he improve
the way he talks?
29
Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the English Language Education Society of Japan
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
中学 1 年生におけるリーディングからライティングへのプロジェクト
の実践報告―振り返りを大切にする授業
執行智子 1
カレイラ松崎順子 2
〒120-0023 東京都足立区千住曙町 34-12
〒185-8502 東京都国分寺市南町 1-7-34
1
E-mail: [email protected], [email protected]
1 東京未来大学こども心理学部
2 東京経済大学現代法学部
概要 本研究では、英語学習の初心者である中学校 1 年生英語のライティング活動において,リーディング教材
の表現を利用し,プロセス重視のライティングをした後,それをプレゼンテーションし,言葉の気づきや学習に対
する振り返りをするというプロジェクトを 2 回することで,生徒の振り返りがどのように変化していくかを明らか
にし、さらにそれが新指導要領の指導事項の一つである読み手に正しく伝わるように文と文のつながりに注意して
書く力を養うために適切な手立て一つとしての可能性があるどうかを調査することを目的とした.生徒の気づきや
学習の仕方に対する振り返りから,プロジェクトを重ねていくことで,生徒は読み手の存在を鮮明に意識していく
ように変化し,
読み手を説得できる主張をするための文章構成についての気づきも深まっていったことが分かった.
よって,この活動が読み手に正しく伝わるように文と文のつながりに注意して書く力を養うために適切な手立とし
て可能性があるものと思われる.
Report on the Effectiveness of Projects Utilizing a Step-by-Step
Approach of Reading, Research, Writing and Presentations as Seen
from the Changing Reflective Habits of Junior High School Students
Tomoko Shigyo 1
1 Faculty
Junko Matsuzaki Carreira2
of Child Psychology, Tokyo Future University
34-12 Senjuakebono-machi, Adachi-ku, Tokyo
120-0023 Japan
2 Faculty
of Contemporary Law, Tokyo Keizai University
1-7-34, Minami-cho, Kokubunji-shi, Tokyo
185-8502 Japan
E-mail:
[email protected],
2
[email protected]
Abstract The purpose of this study is to report the changes in the reflections of first-grade junior high
school students on their awareness of language and strategies of learning over the course of two projects; both
of which included a step-by-step series of reading, research, writing and presentations.
Furthermore, the study aimed to determine whether these kinds of programs were appropriate in
developing the ability to write essays paying due attention to the construction of paragraphs. The reflections
of the students showed that the projects helped them become aware of the existence of the reader and of the
importance of learning paragraph writing, and therefore, projects which include a step-by-step series of
reading, research, writing and presentations appear to be effective in developing the ability to write
well-constructed essays.
1. は じ め に
文部科学省中学校学習指導要領解説外国語編
[1 ] に よ れ ば ,
「教育基本法改正,学校教育法改正
が行 われ ,知・徳・体 のバ ラン ス(教 育 基本 法第
2 条第 1 号 )と と もに ,基 礎 的・ 基本 的 な知 識・
技能 ,思 考力・判 断力・表 現 力等 及び 学 習意 欲を
重視 し(学 校教 育法 第 30 条 第 2 項 ),学 校教 育に
おいてはこれらを調和的にはぐくむことが必要
であ る旨 が 法律 上規 定 され た」( p. 1). では 授業
においてどのように指導すればよいのであろう
執行智子, カレイラ松崎順子,
“中学 1 年生におけるリーディングからライティングへのプロジェクトの実践報告―振り返りを大切にする授業,”
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集, pp. 31-39, 日本英語教育学会編集委員会編集,
早稲田大学情報教育研究所発行, 2014 年 3 月 31 日.
This proceedings compilation published by the Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda University.
Copyright © 2014 by Tomoko Shigyo and Junko Matsuzaki Carreira All rights reserved.
1 年 に おい てど の よう な活 動 が適 切で あ るの かに
つい ては 議 論の 余地 が ある よう に 思わ れる .
本研究では,新指導要領にある指導事項(オ)
に関 して 、中 学校 1 年 生に お いて どの よ うな 英語
のライティング活動を行うべきかを検討してみ
た.
か。
2011 年 度 ま で 実 施 さ れ て い た 中 学 校 指 導 要 領
外国 語科 に おけ る「 書 くこ と 」の 指導 事 項と ,2012
年度 から 実 施 さ れ た も の は 以 下 の と お り で あ る 。
<2011 年 度ま で の 中 学校 指導 要 領 >
(ア)文 字や 符号 を 識別 し,語と 語の 区 切り な
どに 注意 し て正 しく 書 くこ と.
(イ )聞い たり 読 んだ りし た こと につ い てメ モ
を 取っ た り 、感 想 や 意 見な ど を 書い た り
する こと .
(ウ )自分 の考 え や気 持ち な どが 読み 手 に正 し
く伝 わる よ うに 書く こ と.
(エ )伝言 や手 紙 など で読 み 手に 自分 の 移行 が
正し く伝 わ るよ うに 書 くこ と.
(文 部科 学 省 [ 2] )
<2012 年 度 より 実施 さ れた 中学 校 指導 要領 >
(ア)文 字や 符号 を 識別 し,語と 語の 区 切り な
どに 注意 し て正 しく 書 くこ と .
(イ )語と 語の つ なが りな ど に注 意し て 正し く
文を 書く こ と .
(ウ )聞い たり 読 んだ りし た こと につ い てメ モ
を とっ た り ,感 想 , 賛 否や そ の 理由 を 書
いた りな ど する こと .
(エ )身近 な場 面 にお ける 出 来事 や体 験 した こ
と など に つ いて , 自 分 の考 え や 気持 ち な
どを 書く こ と .
(オ )自分 の考 え や気 持ち な どが 読み 手 に正 し
く 伝わ る よ うに , 文 と 文の つ な がり な ど
に注 意し て 文章 を書 く こと .
( 文部 科 学省 [1 ] )
2012 年 度 よ り 実 施 さ れ た 指 導 要 領 ( 以 下 新 指導
要領 )で は (イ )が 付 け加 えら れ ,ま た 2011 年
度ま での 指 導要 領(以 下旧 指 導要 領 )の( ウ )と
(エ)を新指導要領の(エ)と(オ)に再編し,
さら に(オ )に「文 と 文の つな がり 」と いう 文言
を加 えた こ とに なる .グロ ー バル 社会 で 生き 抜く
であ ろう 中 学生 にと っ て,自 分の 考え を 相手 にわ
か る よ う に 論 理 的 に 構 成 す る た め に ,( オ ) に あ
る能力をはぐくむことは不可欠であると思われ
る.し か しな がら ,こ のよ う な能 力を 従 来通 りの
知識 偏重 型 ,ま た 講義 型の 英 語の 授業 で はぐ くむ
こと はな か なか 困難 で あ り ,それ を現 代 社会 を生
きて いる 社 会人 たち は 経験 して い る .現 在中 学校
にお いて は ,多 様 な英 語の ゲ ーム を取 り 入れ 口頭
での やり 取 り が 盛ん に 行わ れて お り,生 徒の 興味
関心を高まっているようである .しかしながら,
新指導要領での改善点のひとつである指導事項
(オ)に 関し て,英語 学習 の 初心 者で あ る中 学校
2. 先 行 研 究
2.1. 中 学 校 から の 英 語 の ライ テ ィ ン グ
中学校で行われているライティングについて,
金 子 [3 ] は ,「 文 法 知 識 の 確 認 の た め に 英 作 文 が 用
いら れる こ とが 多く 」( p. 21), その 結果 ,「 短い
英文 は書 け ても ,社会 的な コ ンテ クス ト の中 で自
分 の 考 え を 書 こ う と す る と 応 用 が 利 か な い 」( p.
22)と述 べて い る .また ,井戸 [4 ] で は ,高校 3 年
生の 答案 か ら「 中 学の ころ か ら作 文に 慣 れて きた
生徒 は比 較 的や さし い 英語 を使 っ て書 こう と」
( p.
24) す る が ,「 中 学 か ら 作 文 に 慣 れ て こ な か っ た
生徒 は ,大 学入 試 問題 の長 文 で読 むよ う な英 文を
書こ うと す る傾 向 」
(p. 24)が あり,
「 抽 象度 の高
い語をブロックのように組み合わせて英文を書
こう とす る こと が多 い」( p. 24) と述 べ てい る .
さら にそ の よう な生 徒 が書 いた 英 文は「 日本 語の
影響 が強 く,特に 書 きな れな い うち は,読み にく
い英 語に な って しま う こと が多 い」( p. 24) と加
えて いる .
では どの よ うな 指導 が 必要 なの で あ ろ うか .柳
[
瀬 5] では ,高校 生 に英 語で 表 現す ると き 感じ るも
どか しさ に つい ての 調 査か ら, 2 種類 の もど かし
さ(量的もどかしさと質的もどかしさ)を抽出,
分析 して い る .前 者 は英 語の 語 彙・表 現 の不 足に
よる もの で,後者 は 発想 の転 換・柔軟 な 考え 方を
必要 とす る もの であ る .こ れら 2 つの う ち後 者の
もどかしさを乗り越えて自分の言いたいことを
英語 で表 現 する 際に は,
「『 語 順に 寛容 な 言語 から ,
語順 に厳 格 な言 語に 変 える 』こと であ る とい うこ
とを 明確 に 意識 する 必 要」( p. 53)が あ ると 述べ
てい る. さ らに ,根 岸 [ 6] で は, 平成 22 年度 に国
立教育政策研究所教育課程研究センターが中学
校 3 年 生を 対 象に 実施 し た「 特定 の課 題 に関 する
調査( 英語:「書 くこ と」)」の 調査 から ,「自 分で
文脈 を判 断 し,必 要 な言 語形 式 を選 択し て,文を
作るようなことは多くの生徒が苦手なようであ
る」( p. 15)と 述 べ, まと ま った 文章 を 書く ため
に は ,「 指 導 や 評 価 に お い て も , ど の よ う な 言 語
形式を用いるべきかの判断をする練習を意識的
に行 うこ と」( p. 16) の重 要 性を 説い て いる .つ
まり ,従来 のよ う な文 法知 識 の確 認の た めの 一文
32
一文 独立 し た英 作文 で はな く ,自 分の 考 えを 伝え
るた めの あ る程 度ま と まっ た量 の 英作 文を ,英語
学習 の初 心 者で ある 中 学校 1 年生 のこ ろ から ,何
度も 取り 入 れ,慣れ る必 要 があ り,さら に,母語
とは異なる目標言語の特性である日本語と英語
の語 順の 違 いを 認識 し ,自 分 で言 語形 式 を選 んで
自分の考えを書く機会を設ける必要があるとい
える であ ろ う .
接続 詞も 代 名詞 も約 2 倍の 増加 と なり ,文 章 のま
とま りの 度 合い が高 く なっ たと 報 告し てい る 。
以上 のこ と から プロ セ ス重 視の 指 導法 を 中 学 1
年生 のラ イ ティ ング に 用い るこ と で、文と 文 のつ
なが りを 意 識し,パラ グ ラフ の構 造 また ,パ ラグ
ラフのつながりが必要であることを学習できる
と思 われ る 。
2.3. プ レ ゼ ンテ ー シ ョ ン
金子 [3 ] で は ,積 極 的な 発信 の 指導 に重 要 なこ と
は ,「 特 定 の 相 手 と 英 語 で 意 思 疎 通 を し た い と い
う内 発的 動 機」
( p. 22)を持 つこ と と,
「 誰に 、何
を、何のために伝えるのかという社会的視点を」
(p. 22)持 つこ とで あ ると 述べ て いる 。そ のた め,
「教 科書 や 例文 のコ ピ ーで なく ,実在 す る読 み手
に向けて生徒自身が自分で書いたと自覚できる
英文 を書 く こと が重 要 であ る」( p. 24) と述 べ,
自分 の伝 え たい こと を 持ち ,実在 の受 信 者に 向け
て書 くこ と の大 切さ を 主張 しい て いる.ま た,田
端 ・ 松 井 [ 9] は , 書 く と い う こ と は ,「 た だ 単 に 英
文を順番に並べたためでは,意味が通りづらい,
あるいはその文章のかたまり全体で何を言おう
とし てい る のか 判断 で きな いこ と を、身 をも って
体験」
( p. 113)が大 切 であ るこ と を主 張し てい る。
プレゼンテーションは口頭のコミュニケーシ
ョン 技術 の 1 つで あり ,上 杉 [ 16 ] は プレ ゼ ンテ ーシ
ョン を完 成 させ るに は「論 理 構成 のな か で足 りな
いも のは 何 かを 認識 し」,
「し っ かり 調べ 上 げ,考
察し てい く」こと が 重要 であ る と 述 べて い る。つ
まり媒体が文字であるか口頭であるかの違いは
ある もの の ,書 く とい う行 為 とプ レゼ ン テー ショ
ンをするという行為は非常に似ているように思
われ る.
以上 のこ と から ,プレ ゼン テ ーシ ョン を 授業 に
取り 入れ る こと が ,伝 えた い こと をこ と ばで 論理
的に構成する力を身につけさせる一つの手段と
なる と言 え るの では な いだ ろう か .
亀岡 市立 南 桑中 学校 [1 7] で は、課題 に沿 っ て英 文
を 書 き 、 絵 や 写 真 を Information and
Communication Technology(ICT) 機 器 を 利 用 し
プレゼンテーションする取り組みを学年を通じ
て行 った と ころ,生 徒の 事後 ア ンケ ート よ り,生
徒が最も苦手と感じている「書く力」について、
「伸 びた と 思う」
「 ま あ 思う 」と 答え た 生徒 が 64%
おり 、その 他の 力 と 比 べ同 じ よう に伸 び たと 思っ
てい る生 徒 がい たと 報 告し てい る(「 話す 力 」64%
「聞 く力 」63%「読 む 力」62%).さ らに ,学 力調
査で は ,こ の取 り 組み を経 験 した 生徒 た ちの 成績
2.2. パ ラ グ ラフ と プ ロ セ ス重 視 の 指 導 法
パ ラ グ ラ フ は ,「 書 き 手 が 主 張 し た い 一 つ の ア
イデ ィア に つい て ,そ の主 張 がは っき り する よう
に論 理的 展 開に よっ て サポ ート す る」( 大 井 [ 7] , p.
177)構 造に な って お り ,
「 異 なる 価値 観 や意 見を
持つ 人々 に 自分 の考 え を的 確に 伝 える」
( 大井 [8 , p.
14) た め に は 欠 か す こ と が で き な い も の で あ る
(田 畑・松 井 [9];立川 [10];鈴 木・大 井・ 竹 前 [ 11 ] ;
天 満 [12 ] ). パ ラ グ ラ フ ・ ラ イ テ ィ ン グ の 学 習 を始
め る に 当 た り , 天 満 は ,「 主 題 と な る も の を , 自
分で まず 徹 底的 に考 え るこ と.つま り,自分 は何
を言 うべ き か,そ れ は言 うに 値 する こと か,それ
を人 にわ か るよ うに 明 確に 表現 し うる か ,を 自分
で考 え抜 く こと」( p. 17) が 大切 であ る と述 べて
いる.さ らに, 鈴 木,大井,竹 前は、パ ラグ ラフ
をつ ない で 一つ の作 品 を完 成す る のに は ,各 プロ
セス(1. 情 報を 収 集し ,2.自 問 する ,3.焦点
を合 わ せる ,4.構 成を 考 える ,5.分析 を 深め
る , 6. 想 像 力 を 働 か せ る , 7. 再 考 す る , 8.
評価 を 下す )があ る と 述べ て いる 。これ ら のプ
ロセスを学習者に意識させ学習を促していくの
に プ ロ セ ス 重 視 の 指 導 法 ( 岡 田 [1 3] ; 佐 野 [1 4] ) が
ある.こ れ を 用い る こと で,次第 に書 き 手と して
自分の考えを読み手に効果的に伝える論理を発
展さ せら れ るよ うに な るの であ る。佐 竹 [ 15 ] は ,プ
ロセ ス重 視 の指 導法 を 用い て中 学 1 年 生 に自 分の
学校 を紹 介 する 文章 を 書か せた 。各プ ロ セス は 以
下の とお り であ る。
①テ ーマ を 選ぶ
②選 んだ テ ーマ につ い て日 本語 で 書く
③内 容を 英 語で 書き 教 師に 提出 す る
④教 師が フ ィー ドバ ッ クす る
⑤フ ィー ド バッ クを 参 考に第 2 稿 を書 く
⑥生 徒同 士 で第 2 稿を 読 み合 い ,感 想や ア ド
バイスを日本語で書き,教師から「わかり
やす さ」
「文 章全 体に ま とま り 」など に つい
てア ドバ イ ス を もら う
⑦最 終稿 を 書く
そ の結 果 教 師 によ る フ ィ ード バ ッ ク の 後で は,
33
は京 都府 の 平均 より も 高く ,また 当校 で の学 校独
自の 学力 調 査で も過 去 3 年 間 のう ち 点 数 が最 も高
かっ たと 報 告し てお り ,英 語 学習 にプ レ ゼン テー
ションを取り入れた学習は大いに効果があるこ
とを 証明 し てい る。
以上 のこ と を留 意す る と,英 語学 習の 初 心者 で
ある 中学 1 年生 に おい てラ イ ティ ング 活 動行 う場
合,一 文 一文 独立 し た 英 作文 で はな く,プレ ゼン
テー ショ ン を活 動の 目 標に し ,パ ラグ ラ フ構 造の
学習を念頭に置いたプロセス重視のライティン
グの 指導 を 行う こと が ,新 指 導要 領に あ る指 導事
項 「( オ ) 自 分 の 考 え や 気 持 ち な ど が 読 み 手 に 正
しく 伝わ る よう に ,文 と文 の つな がり な どに 注意
して 文 章を 書く 」( 文 部科 学 省 [ 2] ,p. 19)力 を養
う適切な手立ての一つとして可能性がある思わ
れる .
活動 が行 わ れて おり ,文字 の 導入 はほ と んど 行わ
れて いな か った よう で ある が ,生 徒の 出 身小 学校
はさ まざ ま であ り,それ ぞれ の 小学 校 外 国 語(英
語)活動の実態を調査することはできなかった.
外部 入学 生 の 内 残り の 1名 は ,私 立小 学 校出 身で ,
小学校1年生より読み書きの学習も含めた英語
の授 業を 受 けて きて い る .
参加 者で あ る生 徒た ち は, 中学 校 にお いて 週 6
時間 の授 業 を受 けて い る .その 内 1 時 間 は外 部の
語学学校から派遣されたイギリス人の外国語指
導助 手( ALT)が phonics や チャ ンツ を 導入 する
授業 をし て いる .他 5 時 間は 主 に Z 会 出版 の New
Treasure 1 を テキ スト と して 使用 し てい るが ,適
宜検 定教 科書 New Horizon 1 を 取り 入れ てい る .
本 研 究 の プ ロ ジ ェ ク ト の 実 施 ま で に 総 計 102 時
間の 英語 の 授業 を受 け てい る.
3. 本 研 究
3.1. 本 研 究 の目 的
本 研 究 の 目 的 は , 中 学 校 1年 生 英 語 の ラ イ テ ィ
ング活動において,課題に沿っ て調べ学習をし,
リーディング教材の表現を利用してライティン
グを した 後,それ を プレ ゼン テ ーシ ョン し,言葉
の気づきや学習に対する振り返りをするという
プ ロ ジ ェ ク ト を 2回 行 い , 生 徒 の 振 り 返 り が ど の
よう に変 化 して いく か を明 らか に し ,さ らに それ
が 新 指 導 要 領 に あ る 指 導 事 項 「( オ ) 自 分 の 考 え
や気 持ち な どが 読み 手 に正 しく 伝 わる よう に ,文
と 文 の つ な が り な ど に 注 意 し て 文 章 を 書 く 」( 文
部科 学省 [1 ] ,p. 19)力 を養 う 適切 な手 立 ての 一つ
としての可能性があるどうかを調査することで
ある .
3.3. 方 法
本研究ではプロジェクト終了後の生徒の振り
返り の変 化 を明 らか に する ため に ,プ ロ ジェ クト
1 で は第 7 時( 最 終時 ) の 授 業中 に, プ ロジ ェク
ト 2 では ,第 10 時( 第 1 回 プレ ゼン テ ーシ ョン
後) と第 12 時 ( 最終 時) の 授業 中に 振 り返 りシ
ート の記 入 をさ せた .記入 項 目は 以下 の とお りで
ある .
(1)調 べ る時 に工 夫 した こと は 何か
(2)英 語 で書 くと き に工 夫し た こと は何 か
(3)英 語 で書 いた 感 想
3.4. 実 践 内 容
各プ ロジ ェ クト の主 題,活用 す る文 法事 項,参
考に する リ ーデ ィン グ 教材 ,実践 形式 は 以下 のと
おり であ る .
3.2. 参 加 者 およ び 学 習 背 景
参加 者は ,東 京 都内 私立 女 子中 学校 1 年 女子 11
名で ある .そ の うち の 3 名 は 付属 の小 学 校か らの
内部 進学 者 であ り, 小 学校 1 年生 より 週 1 時 間,
中学 校に 上 がる まで に 総計 210 時 間の 外国 語(英
語 )活 動を 経験 し てき てい る .外国 語(英 語 )活
動は ,音声 中心 だ が 単 語を 読 む活 動も 取 り入 れて
いる .また ,外部 から の 9 名 の うち 8 名は ,公立
小学 校出 身 であ り,小学校 5 年 生よ り週 1 時 間英
語活 動, 中 学校 に上 が るま でに 総計 70 時間 の外
国 語 活 動 を 経 験 し て き て い る .( 移 行 期 で あ っ た
ため に 2010 年( 参加 生 徒が 小学 校 5 年 生時 )に
は「 英語 活 動 」を,2011 年( 参 加生 徒が 小学 校 6
年生時)からは「外国語活動」を経験してきた)
生徒 のア ン ケー トで は ,音 声中 心 に 外 国語(英 語)
主題
プロジェクト 1
伝記を書こう
活用する
文法事項
動詞の過去形
参考にす
るリーデ
ィング教
材
実践形式
実践時期
Alex’s Lemonade
(New Treasure 1
p. 126-127)
個人活動
2012 年 11 月
プロジェクト 2
今 と 昔 物 語( 私 た ち
の周辺)
There is/are~ now
There was/were ~
then
Mansfield ―
Yesterday and Toda y
(New Treasure 1
p. 162-163)
グループ活動
2013 年 1 月
プロ ジェ ク ト 1「 伝記 を書 こ う」 では , リー デ
ィン グ教 材 で学 習し た 伝記 を参 考 にし ,自分 の関
心の あ る 人物 に つい て 調 べ, 動 詞の 過 去 形 , およ
びそ の教 材 で学 習し た 時を 表す 副 詞(句 )(in 1980,
34
on August 1st, 2004, at the age of 3 など )を 利 用
し,英語でその人物に関する過去の事実(伝記)
を記 述し た.ま た “ She/He was great because ~”
の表 現を 用 いて ,その 人物 に 対し ての 自 分の 思い
を書 き発 表 する こと を 目標 とし た .担 当 英語 教員
は第 1時「テ キス ト を読 む」では 通常 通 り内 容 及
び文 法事 項 ,さ ら に 新 出単 語 を確 認し な がら 授業
を進 めた 。第 2~3 時に は机 間 巡視 しな が ら生 徒の
質問 に答 え た .そ の後 第 4 時「モ デル を 提示 し読
む」では 教 員が 作成 し た作 品を 提 示し 、第 5~6 時
「原稿を書く」で机間巡視しながら生徒の質問
(語 句や 文 法事 項) に 答え た .
また ,プ ロ ジェ ク ト 2「今 と 昔物 語」 で は, リ
ーデ ィン グ 教材 で学 習 した アメ リ カの Mansfield
の今 と昔 を 比較 する 物 語を 参考 に し,自 分の 学校
あるいはその周辺の地域の一つの事柄の今と昔
につ いて 調 べ,そ の 教材 で学 習 した「 there is ~
構文」の現 在 時制・過 去時 制と 副 詞“ now”と“then”
を効 果的 に 用い て ,調 べた 事 柄の 現在 と 過去 を比
較描 写し ,英語 で その 今と 昔 の違 い及 び 変わ らな
いこ とを 書 き発 表す る こと を目 標 とし た .担 当教
員は プロ ジ ェクト 1 同 様 に第 1~2 時 では 内容・文
法事項,新出単語の確認をしながら授業をし,
work sheet 2 作 成 の補 助を し た.第 3 時 に教 員が
作成 した 作 品を モデ ル とし て 提 示 し,第 6~8 時
に机 間巡 視 しな がら 生 徒の 質問( 語句 や 文法 事項 )
に答 えた 。第 9,11 時 では 文 法項 目に つ いて 校正
のた めの 助 言を し, さ らに ,第 10 時 に おい て聞
き手 の一 人 とし て感 想 を述 べ, 第 12 時 では すべ
ての 生徒 の 感想 のま と めを 行い ,さら に パラ グラ
フ 構 造 に つ い て ま と め た 。( パ ラ グ ラ フ と い う 言
葉は 言及 し なか った )
りシート記入
第8時
第9時
第 10 時
第 11 時
第 12 時
3.5. 結 果
3.5.1 振り 返 り シー ト ( 自由 記 述 )
各プロジェクトの振り返りシートの自由記述
は 以 下 の と お り で あ る .( 生 徒 の 記 述 の ま ま で あ
る. また 括 弧は 筆者 が 補足 した .)
(1)調 べ る時 に工 夫 した こと は 何か
プロ ジェ クト 1
「 本を 何 度も 読み 返 した こと 」
「資 料 に書 いて あ った こと を すべ て書 か ずに
一部 だけ 書 いた こと 」
「 オー ド リー のす ご いと ころ は どこ か 」
「デ ィ ズニ ーは 有 名な こと が たく さん あ った
ので,それらをうまいようにまとめたこと 」
「自 分 がす ごい な と思 った こ とを 書き だ して ,
その 中か ら 選ん だ 」
プロ ジェ クト 2
「 細か い 部分 まで ち ゃん と見 た 」
「『 世 田 谷 区 』 と い う 大 き な く く り か ら 喜 多
見に ある 文 化遺 産を 探 すこ と 」
「 イン タ ビ ュ ー は 何 が 大 切 な こ と か 考 え た 」
「喜 多 見と いう 本 は分 厚く い ろん なこ と が書
いてあるので一番大切なものだけを取り出
すこ と」
プロ ジェ クト 1 と プ ロジ ェク ト 2 を比 較 する とプ
ロジ ェク ト 2 の 方 が工 夫し た 点に つい て の表 現が
詳細 にな っ てい る 生 徒が 4 名 いた 。例 えば ,プロ
ジェ クト 1 で は,
「一 部 だけ 書い た」
「 す ごい とこ
ろ」
「 うま い よう に」
「 す ごい なと 思 った こと 」な
ど 「 す ご い 」「 う ま い 」 な ど 様 々 な 意 味 で 使 わ れ
やす い表 現 を用 いて 書 かれ てい る もの が ,プ ロジ
ェク ト 2 では,「 細か い部 分」「 世田 谷区 」「 文化
遺産」「何 が,大 切な こと か 考え た」
「 喜 多見 とい
う本 」など 工夫 し た点 がよ り 詳細 な表 現 で表 され
てい る。
各プロジェクトの実践過程は,以下のとおりである .
第1時
第2時
第3時
第4時
第5時
第6時
第7時
プロジェクト 1
教科書のテキス
トを読む
目 標 を 示 し ,テ ー
マの選択(図書
館)をする
資 料 収 集 し
worksheet 1 を 作
成する
モデルを提示し,
読む(見る)
原稿を書く
原 稿 を 書 き , PC
で精書する
リハーサル,発
表 , 講 評 ,振 り 返
原稿の校正,リハーサ
ル
第1回発表,講評,振
り返りシート記入,原
稿の校正
原稿の校正,リハーサ
ル
第 2 回発表,講評,原
稿 の 清 書 ( 個 人 ), 振 り
返りシート記入
プロジェクト 2
テ キ ス ト を 読 み ,
worksheet 2 を 作 る
目 標 を 示 し ,model を 提
示し,読む(見る)
テ ー マ の 選 択( 図 書 館 )
テーマの決定 および
資料収集(図書館)
worksheet 3 の 作 成 , 原
稿を書く
(2)英 語 で書 くと き に工 夫し た こと は何 か
プロ ジェ クト 1
35
「 自分 の わ か る 単 語 を た く さ ん 使 っ た こ と 」
「 スペ ル はし っか り 辞書 で確 認 した 」
「英 語に 変 える 時に ご ちゃ ごち ゃ にな らな い
よう にし た 」
プロ ジェ クト 2
「 読む 側 の人 にわ か りや すく 書 くこ と 」
「 文の 並 べ方 」
「 文の つ なぎ 目に 気 を付 けた 」
「自 分が ち ゃん と伝 え たい こと を 完璧 な英 語
にす るこ と 」
(清 書後 )
「 スペ ル を間 違え な いよ うに し た 」
「 ピリ オ ドな どが つ いて いる か 確認 した 」
「 英文 の 語順 に気 を 付け た 」
プロ ジク ト 1 で は 書き 手と し て 工 夫し た 点に つい
て「 自分 の わか る」な ど主 観的 な 言い 回し や,
「ご
ちゃごちゃに」など口語的な表現が目立つ一方,
プロ ジェ クト 2 で は,「読 む 側の 人に わ かり やす
く」な ど 読み 手の 存 在に つい て 言及 した り,文の
内部 構造 で はな く文 章 にお ける「 文の 並べ 方」
「文
のつ なぎ 目 」な どに つ いて 言及 し てい る 生 徒 が 4
名い た .さ ら に第 12 時 終 了後( 清 書後 )では ,
「ピ
リ オ ド 」 な ど 符 号 を 意 識 し た り ,「 語 順 」 な ど 日
本語 と英 語 の違 いに つ いて 述べ て いる 生徒 が 3 名
いた .
「い っ ぱい 英語 を 書い たか ら,難 しい スペ ル
や,わ から なか っ たス ペル が あっ たけ ど ,書
いて いく う ちに わか る よう にな っ たし ,書け
るよ うに も なっ た 」
「 自分 の 学校 につ い てよ くわ か りま した 」
プロ ジェ ク ト 1 で は,「す ら すら 」 の よ うな 擬音
語 や 「 こ の 日 本 語 」「 こ う い う 英 語 」 な ど 一 見 一
般化したように見えるが何を指しているのかわ
から ない 表 現が ある 一 方 , プロ ジ ェク ト 2 で は,
「 日 本 語 は あ ま り 『 私 が 』『 こ れ が 』 等 言 わ な い
から ,つい『 I』とか『This』を忘 れて し まう こと
があ るの で ,そ れを 気を 付 けま した 」や「ど のよ
う に し た ら し っ か り 文 を つ な げ る か 」「 し っ か り
意味 が分 か る文 章に し た」な ど 具 体的 な 例を 挙げ
なが ら文 構 造や 文章 構 成に 言及 し てい るも のが 2
名 い た . ま た ,「 知 っ て い る 単 語 が 増 え , 単 語 の
読 み 方 が 分 か っ た 」「 英 語 を 覚 え た し , ス ペ ル が
わか るよ う にな った 」など 書 くこ とが 自 分の 単語
力に 影響 を 及ぼ した こ と 記 述し て いた 生徒 が 2 名
いた .プ ロ ジェ クト 2 では ,第 12 時 で 行っ た発
表後,感 想を 各生 徒 が述 べ共 有 した .生 徒の 感想
は以 下の と おり であ る .
「文 を 自分 たち で 考え 出す こ とが 難し か った 」
「 図表 を 用い たの が よか った 」
「 発表 が ハキ ハキ し てい た 」
「 声が 大 きく てよ か った 」
「 内容 に あっ た絵 が あっ た 」
「 さま ざ まな 内容 を 調べ てい た (ほか の 班)」
「 文の 構成 は ,1.言 いた い こと ,2.例 ,3.
まと め(言い た いこ と )」
感想 はさ ま ざま であ り ,プ レ ゼン テー シ ョン 後
に行ったこともあってプレゼンテーションに関
する こと も 多く 含ま れ てい たが ,複数 の 文か らな
る 文 章 構 成 に つ い て 「 1. 言 い た い こ と , 2. 例 ,
3. ま と め (言 い た い こ と )」 な ど 聞 き 手 に 分 か り
やすい論理構成にすることの重要性を 述べてい
る生 徒も い た .音 声付 多読 を 行っ た後 の 読後 カー
ドの「面 白か っ たこ と,興味 の持 て たこ と」の欄
には ,本の 内容 に つい ての 記 述 が ほと ん ど で あっ
たが 、プ ロジ ェ クト 2 の書 く 作業 がは じ まっ てか
らは ,
「 たく さ ん知 らな い 言葉 がで て きた 」
「 知ら な い単 語が た くさ ん出 て きた 」
「 過去 形 」
「 今ま で 気づ かな か った けど( 多読 の活 動 で
使用 して い た本 の中 に ) 一つ 一つ の 単語 ( 動
詞)が過 去形 に なっ てい る こと に気 が付 く こ
とが でき た 」
(3)英 語 で書 いた 感 想
プロ ジェ クト 1
「( 自 分 で 書 い た も の が ) す ら す ら 読 め る よ
うに なっ た 」
「 難 しか った けど ,辞書 を 使っ て ,一 つ一 つ
の単 語を 調 べた りす る のが ,面 白か っ たで す 」
・「 こ の 日 本 語 は こ う い う 英 語 で あ ら わ さ れ る
んだ と思 っ たり もし ま した 」
・「皆の 前 で発 表し た 時は とて も 緊張 しま し た 」
プロ ジェ クト 2
・「日本 語 はあ まり 『 私 が』『こ れ が 』等 言わ な
いか ら ,つ い『I』と か『This』を忘 れ てし ま
うことがあるので,それを気を付けました 」
「と て も難 しか っ たが ,英 語で 書 くこ とに よ
って ,自 分 の知 って い る単 語が 増 え,わか ら
ない 単語 の 読み 方も わ かり まし た 」
「ど のよ う にし たら し っか り文 を つな げる か
を考 えた 」
「 しっ か り意 味が 分 かる 文章 に した 」
「 少し 英 語を 覚え る こと がで き た 」
(清 書後 )
「 すご く やっ たか い があ りま し た 」
36
「わ から なか っ た単 語が わ かる よう に なっ た 」
等内容以外の未知の単語についてや動詞の時制
(過 去形 )に つ いて 改め て 認識 した こ とを 記述 す
る生 徒が い た.
るということを生徒たちが認識してきたからで
あり,そ のこ とを 通 して,書 く行 為も ま た読 み手
が存 在し ,書き 手 の主 張は そ の読 み手 に 何ら かの
影響を及ぼすという社会的行為であることに結
び付 ける こ とが でき た から だと 思 われ る .以 上の
こと より ,プ ロジ ェ クト を重 ね てい くと ,生 徒た
ち は 「( ア ) 文 字 や 符 号 を 識 別 し , 語 と 語 の 区 切
り な ど に 注 意 し て 正 し く 書 」 い た り ,「 読 み 手 に
正し く伝 わ るよ うに ,文と 文 のつ なが り など に注
意し て」( 文部 科学 省 [1 ] , p. 19) 書か ね ばな らな
いことを自覚するようになっていったと言える
ので はな い だろ うか .
さら に質 問( 3)「英 語で 書 いた 感想 」で は,プ
ロジ ェク ト 1 で は 擬音 語や 指 して いる も のか わか
らな い指 示 語を 用い た 記述 から , プロ ジェ ク ト 2
では,文構造に関する「日本語はあまり『私が』
『こ れが 』等言 わな い から 、つ い『 I』と か『 This』
を忘 れて し まう こと が ある ので 、それ を 気を 付け
まし た」や文 章構 成 に関 する「ど のよ う にし たら
しっ かり 文 をつ なげ る かを 考え た」や「 しっ かり
意味 が分 か る文 章に し た」な ど へ と変 化 して いっ
た 。 こ れ も 、 質 問 ( 2) 同 様 、 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ
ンを 何度 も 行う こと に より 伝え る 相手,目 的,内
容を認識するという社会的視点を持たなければ
なら ない (金 子 [ 3] )と いう こ とを 自覚 し てき たこ
とが ,書く こと に も応 用さ れ たか らだ と 思わ れる .
さら に ,書 く活 動 が語 の習 得 を促 進し た こと を表
す記 述も あ った。こ れは、自 分の 主張 を 相手 にう
まく 伝え る ため には ,発表 者 であ る自 分 が文 脈に
あった単語精選しそれをしっかり理解していな
けれ ばな ら ない こと を ,プ レ ゼン テー シ ョン を 繰
り返 し経 験 する こと で 自覚 し ,そ れが 語 彙を 増や
すこ とに な った ため と 思わ れる .
また,プロ ジ ェク ト 2 で 行 った 2 回目 の プレ ゼ
ンテーション後の生徒の口頭での感想の共有に
おい て ,文 章の 構 成に つい て 触れ てい る もの があ
った .これ はパ ラ グラ フ構 造 に当 ては ま るも ので
ある .プレ ゼン テ ーシ ョン を 目標 にし た プロ ジェ
クト を繰 り 返し 行っ た こと によ っ て ,プ レゼ ンテ
ーションを完成するためには調べたことを 並べ
るの みで は ,主 張 した いこ と を伝 える こ とは でき
ない(上 杉 [ 16 ] )と いう こと を 認識 した た め,パラ
グラ フ学 習 の指 導 を 受 ける 前に お いて も ,パ ラグ
ラフの構造の必要性の自発的な理解を促したと
思わ れる .
さら に ,本 研究 と 平行 に行 っ てき た 音 声 付多 読
の振 りシ ー トに おい て プロ ジェ ク ト 2 の 期間 中に
単語 やそ の 形式 につ い ての 振り 返 りあ った .音声
3.6. 考 察
本研 究で は,中 学校 1 年生 英 語 に リー デ ィン グ
教材の表現を利用してプロセスライティングと
プレ ゼン テ ーシ ョン を 行い ,言葉 の気 づ きや 学習
に対し生徒の振り返りがどのように変化してい
くか を明 ら かに し ,さ らに そ れが 新指 導 要領 にあ
る 指 導 事 項 「( オ ) 自 分 の 考 え や 気 持 ち な ど が 読
み手 に正 し く伝 わる よ うに ,文と 文の つ なが りな
どに 注意 し て文 章を 書 く」
( 文 部科 学省 [1 ] ,p. 19)
力を養う適切な手立ての一つとしての可能性が
ある かど う かを 調査 す るこ とを 目 的に した .プロ
ジェ クト 1 と 2 の 生 徒の 振り 返 りか ら 、質 問( 1)
「調 べる 時 に工 夫し た こと 何か 」で は,プロ ジェ
クト 2 の方 が プロ ジェ クト 1 よ りも,固 有名 詞や
使用した本の名前や調べた具体的な事柄などを
用い たり ,調べ 方 につ いて 言 及し たり し てよ り詳
細な 記述 に なっ てい た 。 こ れは , プロ ジェ ク ト 1
に比 べ,プロ ジ ェク ト 2 で の 方が 生徒 た ちが 主題
につ いて よ く考 え ,何 を主 張 すべ きか を 吟味 した
から であ る と思 われ る .つま り,プロ ジ ェク ト 1
で行ったプロセス重視のライティングを踏まえ
て, プロ ジ ェクト 2 で は 生徒 たち はパ ラ グラ フ・
ライティングの学習に必要な主題の吟味と主張
す る こと を 客 観 的 に観 察 す る こ と( 天 満 [1 2] ) を,
書き始める前の段階である調べ学習においてし
たの では な いか と思 わ れる .
質問(2)
「 英語 で 書く とき に 工夫 した こ と」で
は ,プ ロジ ェ クト 1 では ,書 き手 中心 で あっ たり
稚拙 で主 観 的 な 表現 を 用い てい た が ,プ ロジ ェク
ト 2 で は,
「ピ リオ ド」「語 順 」な ど文 の 内部 にお
ける ミク ロ な注 意点 か ら,
「 文の 並べ 方」「文 のつ
なぎ 目」など,文 章に おけ る マク ロな 工 夫に つい
て 言 及 し て い た り ,「 読 む 側 の 人 」 な ど 読 み 手 の
存在 を意 識 して 記述 さ れて いる も のも あ っ た .前
者で は ,プ ロジ ェ クト 1の 振 り返 りで は 何も 書か
なかったあまりレベルの高くない生徒4名がこ
の点 を言 及 して いた .ま た、後者 は比 較 的レ ベル
の高い生徒が言及していた.どちらにおいても,
プロジェクトの中でプレゼンテーションを重ね
て経 験し て いく こと で ,プ レ ゼン テー シ ョン は発
表者が主張するという一方的な行為なのではな
く,聞 き 手が 存在 し,発表 者 の主 張は そ の聞 き手
に何らかの影響を及ぼすという社会的行為であ
37
付多 読で は ,音 声 と絵 を補 助 にス トー リ ーが わか
るの で ,プ ロジ ェ クト を行 う まで は あ ま り意 識を
向け なか っ た 語 の形 式 に,複 数の プロ ジ ェク トに
おいての書き手になるという体験を通して注意
を向けることができるようなったからではない
かと 思わ れ る .
以上 のよ う にプ ロジ ェ クト を 1 回目 2 回 目と 重
ねて いく こ とで ,振り 返り に も 思 いつ た こと を漠
然に 書き 並 べる こと か ら ,よ り詳 細な 事 柄に つい
て記 述し て いる 生徒 が 3 分 の 1 ほど いた .ま た、
プロ ジェ ク ト 2 に おい て 読 み 手の 存在 を 意識 した
記述 をし た 生徒 が 3 分の 2 ほ どい たこ と がわ かる .
また,プ レゼ ンテ ー ショ ンを 行 うこ とで ,聞 き手
によりわかりやすいように一つの文を組み立て,
さらに複数の文を相手に分かるように組み立て
ていくことの大切さを知ったと述べている生徒
が 3 分の 1 ほ どお り ,書く こ とに も読 み 手が 存在
し,そ の読 み手 に 向か って 論 理的 に書 か ねば なら
ない と理 解 して きた よ うで ある .さ らに ,単 語一
つ一 つを じ っく り観 察 し,自 分の 中に 取 り込 んで
いる 生徒 が 4 分の 1 ほど いた こ とが 分か っ た .
これ らの こ とか ら 中 学 校 1 年 生の 英語 に リー デ
ィング教材の表現を利用してプロセス を重視し
たラ イテ ィ ング をし ,プレ ゼ ンテ ーシ ョ ンを 行っ
た後 ,言葉 の気 づ きや 学習 に 対す る振 り 返り をす
ると いう プ ロジ ェク ト を重 ねて い くこ とで ,英語
学習 の初 心 者で ある 中 学校 1 年生 にお い ても ,読
み手を説得するためにパラグラフの構造に沿っ
て内容を構成し表現しようとする態度を養うこ
とが 可能 で ある よう に 思わ れる .つ まり ,こ のよ
うなプロジェクトの繰り返しが新指導要領にあ
る 指 導 事 項 「( オ ) 自 分 の 考 え や 気 持 ち な ど が 読
み手 に正 し く伝 わる よ うに ,文と 文の つ なが りな
どに 注意 し て文 章を 書 く」
( 文 部科 学省 [1 ] ,p. 19)
力を養う適切な手立ての一つとして可能性があ
ると いう こ とに なる .
本研 究は ,対 象 校が 一週 間に 6 時 間の 英 語の 授
業を 行っ て おり ,70 時 間 程度 公立 の 中 学校 1 年
生より多く英語の授業があるという恵まれた環
境であったために行うことができたものである。
このような授業時数が多 いという環境を生かし,
上記 のプ ロ ジェ クト を 組む こと で ,知 ら ない こと
を知 る喜 び を十 分味 わ い,そ れを 他者 と 分 か ち合
いた いと 思 う気 持ち を 持つ こと に よっ て ,書 くと
いう作業は書き手である自分の思いを一方的に
主張 する の では なく ,読 み手 に 分か るよ う に,読
み手が納得する様に伝えるというコミュニケー
ションの手立てであるということを実感できた
ので はな い だろ うか 。し かし な がら,こ のよ うな
潤沢 な時 数 を確 保 す る のが 難し い 場合 には ,より
効率 的な 手 立 て を 使 わ な け れ ば な ら な い だ ろ う 。
4. ま と め
本 研 究 で は , 中 学 校 1年 生 英 語 に リ ー デ ィ ン グ
教材の表現を利用してプロセスライティングと
プレ ゼン テ ーシ ョン を 行い ,言葉 の気 づ きや 学習
に対 し生 徒 の振 り返 り を繰 り返 し をし た 結 果 ,生
徒は読み手の存在を鮮明に意識していくように
変化 して い った .さ らに、読 み手 を説 得 でき る主
張をするための文章構成についての気づきも深
まっ てい っ たと 言え よ う .よ っ て,英 語 学習 の初
心 者 で あ る 中 学 1年 生 の ラ イ テ ィ ン グ に お い て 文
法事項を確認するための和文英訳型の英作文で
はなく,プレゼンテーションを活動の目標にし,
パラグラフ構造の学習を念頭に置いた プロセス
重視 の指 導 を行 うこ と が,新 指導 要領 に ある 指導
事 項 「( オ ) 自 分 の 考 え や 気 持 ち な ど が 読 み 手 に
正し く伝 わ るよ うに ,文と 文 のつ なが り など に注
意し て 文章 を書 く」( 文部 科 学省 [1 ] , p. 19) 力を
養う適切な手立ての一つとしての可能性がある
と思 われ る .
しか しな が ら,本 研 究で は,生徒 の振 り 返り に
焦点 を当 て て考 察を し たが ,作品 にお い ては ライ
ティ ング を 行う 際の 実 践形 式 が プ ロジ ェク ト 1 で
は個 人活 動,プ ロジ ェク ト 2 では グル ー プ活 動と
異な るた め に,生 徒一 人ひ と りに どの よ うな 変化
があったかを比較検討することができなかった.
今後どのように生徒一人一人の作品に影響する
かを 課題 と し, 調査 を 行っ てい く 予定 であ る .
文
献
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解説 外国 語 編” , 文 部科 学省 , 2008.
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86.htm
[3] 金子 朝子 , “「 伝え た い」意欲 を高 め る指 導 ,”
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[6] 根岸 雅史 , “ま と まり のあ る 文章 を書 く ため
38
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June, 2012, pp. 13-16, 2012.
[7] 大井 恭子 , “思 考 力育 成の 試 み― ―中 学 生の
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教 育 学 部 研 究 紀 要 , 第 56 巻 . pp. 175-184,
2008.
[8] 大井 恭子 , “学 習 者を 育て る ライ ティ ン グ―
パラ グラ フ・ライ テ ィン グと ク リ テ ィ カ ル ・
シン キン グ ,” 英語 教 育 , June, 2010, pp. 14-17,
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ング指導入門――中高での効果的なライテ
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書店, 2008
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[11] 鈴 木 健 , 大 井 恭 子 , 竹 前 文 夫 (編 ), ク リ テ ィ
カル・シン キン グ と教 育― ― ―日 本の 教 育を
再構 築す る , 世界 思 想社 , 2006.
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1998.
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の 指 導 と そ の 評 価 の 工 夫 ”
http://sakura1.higo.ed.jp/edu -c/kokuryu/h18pdf/
0705.pdf
[14] 佐野 正之 , 初 めて の アク ショ ン・リサ ー チ―
英語の授業を改善するために, 大修館書店,
2005.
[15] 佐竹 弘司, “中 学 生の ため の ライ ティ ン グ指
導の在り方について―中学校 1 年生におけ
る実 践を 通 して ,” 東 北英 語 教育 学会 研 究紀
要第 31 号, pp. 29-40, 2011.
[16] 上 杉 兼 司 , “ 中 学 生 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン
能力 開発 ― 伝え る難 し さと 喜び を 知り ,抽象
化の 能力 を 養成 する ,” 学 習 情報 研究 , 2007.9.
pp.24-25, 2007.
[17] 亀岡 市立 南 桑中 学校 , “中 学 校英 語科 で 逆向
き設計論を効果的に実践するためのパフォ
ーマンス評価の取組―プレゼンテーション
能 力 を 高 め る た め の ICT 利 用 , ”
http://www.pef.or.jp/db/pdf/2011/2011_38.pdf.
39
Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the English Language Education Society of Japan
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
六ヶ国八大学間連携による
mixxt を利用した国際プロジェクトの成果について
―日本人大学生の英語力の伸長と
参加度・性格・IT 利用経験との関係から―
鈴木 千鶴子 1
石田 憲一 1
吉原 将太 1
〒852-8558 長崎県長崎市三ツ山町 235 番地
E-mail: 1{ suzuki | ishida | shota } @n-junshin.ac.jp
1 長崎純心大学人文学部
概要
本研究は,教員養成課程大学生のグローバル化に不可欠な国際プロジェクト遂行能力育成を目的とした世
界の大学・学生参加による共同プロジェクトの実践に基づくものである.本報告では,2012年度のプロジェクトの
実績に基づき,日本人参加大学生13人の英語力の伸長を軸に,その言語内的・外的(関連)要因を特定するため項
目間の相関を検討した.方法として,事前・事後の英語コミュニケーション能力判定試験,YG性格検査,IT利用経
験アンケート,ならびにプロジェクトでの発言・発信回数,の4種類の評価を実施し,結果を比較分析した.その
結果,以下の点が観察された.
(1)4か月間の参加では英語力の伸びはみられないが,語彙力の伸長は相対的に顕
著であった.
(2)英語力の伸長と性格パターンとの明確な関係は現れなかったが,比較的強い個性の持ち主または
グループ内で日本人メンバーが一人であった場合は伸びが観察された.
(3)IT利用経験との関係は,むしろ普段あ
まり利用しない学生が伸びる傾向がうかがえた.
(4)発信回数は,
(2)のグループ内の日本人メンバーの数との
関係により多くなった結果,伸びたと推測された.
キーワード
海外大学間連携; 国際プロジェクト遂行力;
英語コミュニケーション能力;
SNS;
教員養成
Effects of an international IPC project through mixxt,
collaborating with eight universities from six countries
-Focusing on the Japanese students’ English communication development
with relation to their frequency of participation, personality characteristics,
and experience of IT use-
Chizuko SUZUKI 1
1 Faculty
Kenichi ISHIDA 1 and Shota YOSHIHARA 1
of Humanities, Nagasaki Junshin Catholic University 235 Mitsuyama-cho, Nagasaki-shi,
Nagasaki-ken 852-8558 Japan
E-mail:
1{
suzuki | ishida | shota } @n-junshin.ac.jp
Abstract This paper reports on an international project called IPC (International Project Competence),
鈴木 千鶴子, 石田 憲一, 吉原 将太,
“六ヶ国八大学間連携による mixxt を利用した国際プロジェクトの成果について―日本人大学生の英語力の伸長と参加度・性格・IT 利用経験との関係から―,"
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集, pp.41-47, 日本英語教育学会編集委員会編集,早稲田大学情報教育研究所発行,2014 年 3 月 31 日.
This proceedings compilation published by the Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda University.
Copyright © 2014 by Chizuko SUZUKI, Kenichi ISHIDA and Shota YOSHIHARA. All rights reserved.
which has three main learning objectives for teacher-training students: project competence, the Internet
competence, and professional expertise in pedagogies and education. This report evaluated the 2012 IPC
project, focusing on examining (1) to what extent and in which field, the 13 Japanese student participants’
English proficiency was improved, and (2) how other factor(s) contributed to the English proficiency
development, by using the following measures: i) pre-and-post English proficiency tests; ii) YG personality
inventory; iii) a questionnaire of IT experience; and iv) the number of messages posted by each participant.
The following results were obtained: (1) Any clear improvement of all subject students could not be observed
in the average scores, probably due to the shortness of the three months period, except the field of vocabulary;
(2) Though no definite relationship of the English proficiency development with personality pattern was not
found, the students by working more actively alone within a group could apparently show development; (3) In
the current limited conditions, the students who had less experience of using IT tended to attain certain
development in the English proficiency; and (4) The students who worked harder within a group, eventually
posted more messages and most of them showed the English proficiency development to some extent.
.
Keywords
World-wide inter-university joint project; International project competence; English
communication proficiency; SNS; Globalizing teacher-training course
1. は じ め に
本報告は,科研費助成研究課題「国際協働作業力に
毎 年 一 定 期 間 (3~ 4 ヶ 月 ), 世 界 数 ヶ 国 数 大 学 か ら 数 十
係わる大学生の英語力の内外要因とその発達過程に関
名の学生がインターネット上に設置された プラットフ
す る 実 証 的 研 究 」 (基 盤 C ) (2012~ 2014 年 度 )の 一 部 と
ォームに参集し,英語でコミュニケーションを取りな
して初年度に実施した研究の成果 に基づくものである.
がら,協働的に数題のプロジェクトに取り組む 活動を
実践している.
本研究課題は,外国語教育を統合的人間形成を目途
とするポスト・インダストリアル時代に求められる教
本プロジェクトで展開される活動,いわゆる協働学
育の一環として位置づけることを前提とする.本研究
習はその論理基盤を,古くはヴィゴツキーの社会構成
の目的は,そのような前提に基づき,大学生において
主 義 [1][2],本 邦 に お い て は 佐 藤 学 の 学 び の 共 同 体 理 論
も競争させずに国際競争力を育て人生につながるコン
[3]に 置 く こ と が で き る .ま た ,具 体 的 な 実 践 先 行 例 と
ピ テ ン ス ・ ベ ー ス の 教 育 を 図 る 試 み と し て IPC
し て , 早 稲 田 大 学 の CCDL(Cross Cultural Distance
(International Project Competence),つ ま り“ 国 際 プ ロ ジ
Learning)[4]を 筆 頭 に , 本 研 究 者 ら に よ る JOA(Junshin
ェクトを遂行する能力”を実践的に培う国際的事業,
Online Academia)に お け る 韓 国 な ら び に 台 湾 と の Joint
を 実 施 し そ の 成 果 を 精 査 す る こ と で あ る .具 体 的 に は ,
Projects[5][6]な ど を 挙 げ る こ と が で き る 。
図1 研究体制と時期別研究課題
42
1.1 研 究 課 題 の 全体 構 想
④ 社会構成主義の立場から学 習と教 授法 を捉 える .
この研究課題では,とりわけ「テーマを教員養成に
1.3 2012 年 度 の 実 績
関わる共通課題に特化し,それらの課題を国籍混成グ
本 報 告 で 取 り 上 げ る IPC 国 際 プ ロ ジ ェ ク ト 2012 の
ループによる協働的プロジェクトを遂行することによ
実績概要は以下の通りであった.
って解決を図る」 という新規の教育方法が,主に将来
(1) 参 加 者 (表 1 参 照 )
教員を志望する学生に,英語力の伸長を含めどのよう
・6ヶ国8大学, 学生・教員
な学習効果を齎すのか,を実証的に検証することを目
・日本:長崎純心大学
的としている.また,プロジェクト遂行の成否に,英
学 生 (1 年 生 ~ 4 年 生 : 最 多 2 年 生 ) 19 人 ,
語コミュニケーション力のどの構成要因が,どの程度
教員3人
関与するのかを明らかにする.同時に,プロジェクト
・ 期 間 : 後 期 (10 月 ~ 1 月 )4 か 月 間
期 間 (4 ヶ 月 間 )の 事 前 事 後 の 英 語 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン
・ テ ー マ :「 子 供 の 視 線 ・ 感 じ 方 ・ 思 い を 知 る
力の伸長度に対する情報ネットワークリテラシー,リ
~学校, 教師,科目,勉強,学級,
ー ダ ー シ ッ プ 力 ,等 の 言 語 外 要 因 の 関 わ り を 特 定 す る .
お休み,などについて~」
次 い で ,プ ロ ジ ェ ク ト 遂 行 に 係 わ る 一 連 の タ ス ク (ト
・ ト ピ ッ ク ス : 9 種 類 (グ ル ー プ 別 )
ピックの提案,リサーチクエスチョンの討議,調査項
1. How do students perceive their teachers?
目 の 決 定 ,調 査 結 果 の 報 告 等 )よ り な る 主 体 的 参 加 型 ・
2. How
知識構築型の協調学習過程において,英語で交わされ
children
with
special
needs
3. How did students experience the transition
ワーク構造発展の視点から形成的評価の手法を用いて
from kindergarten to elementary school?
分析し,日本人大学生の国際協働作業力の特徴と発達
4. How do children experience homework?
過程を,国際比較により相対的に明示する.
5. How do children experience class rules?
最終的に,国際協働作業力育成の指針を示すことを
6. Students' perception of media, computer
目指す.
games and gadgets
本研究課題を遂行するための研究体制を,研究期
7. How do children experience their free time
間・段階ごとに図示すると 図1の通りである.
and hobbies?
8. How
プ ロ ジ ェ ク トの 概 要
do
children
experience
teaching
strategies?
本 IPC 国 際 プ ロ ジ ェ ク ト の 概 要 [7]を 要 点 ご と に 記
9. What do children think about the future?
す.
(1) 主 宰 : ド イ ツ 共 和 国 ア イ ヒ シ ュ テ ッ ト ・ カ ト リ ッ
表1 学生参加者の国別・大学別・性別内訳
ク大学哲学教育学部初等教育学科長教授ク
Country
ラウディア・シュールタイス教授.
(2) 経 緯 : 2004 年 よ り 教 員 養 成 課 程 の 大 学 生 を 対 象 に
毎 年 少 な く と も 1 期 10 週 間 実 施 .本 研 究 対
象 の 長 崎 純 心 大 学 の 参 加 は ,2010 年 度 5 名 ,
2011 年 度 15 名 , 2012 年 度 19 名 と , 漸 増 .
(3) 特 徴 :
① イ ン タ ー ネ ッ ト , 特 に mixxt
註1
を使用し,プロジ
ェクト遂行力を育成.
② 諸 外 国 , 特 に ヨ ー ロ ッ パ ・ 北 米 ・ ア ジ ア (日 本 )の
大学が参加.
の た め に 英 語 を 使 う , ESP 分 野 の 実 践 教 育 .
University*
Female
Male
1
3
4
Germany
Germany
Spain
Bulgaria
CUE
VHB
LIG
Sofia
12
1
12
7
Japan
USA
USA
Poland
不明**
NJCU
CSUF
UNCC
AMUP
不明**
19
23
2
8
6
Total
③ 英 語 の た め の 英 語 で は な く ,「 教 員 養 成 」 の 目 的
註1
do
experience school?
る発言・対話データをコーパス言語学なら びにネット
1.2
合 計 121 人
5
1
2
43
12
2
15
11
19
28
2
9
8
91
16
107
教 員 = 14 名 ; 合 計 121 名
* 大 学 名 (表 の 上 よ り 順 に )
CUE: ア イ ヒ シ ュ テ ッ ト ・ カ ト リ ッ ク 大 学
(ド イ ツ 連 邦 共 和 国 )
VHB: バ イ エ ル ン 州 オ ン ラ イ ン 大 学
(ド イ ツ 連 邦 共 和 国 )
LIG:
グラナダ大学連盟聖イマキュラーダ校
(ス ペ イ ン )
Sofia: ソ フ ィ ア 大 学 (ブ ル ガ リ ア 共 和 国 )
ド イ ツ の The mixxt GmbH に よ り 開 発・ 運 営 さ れ
る Web.2.0 を 用 い た SNS.本 IPC プ ロ ジ ェ ク ト 専
用 の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム は Michael Kratky に よ り
協働作業を効率よく実現できるようにカスタマ
イ ズ さ れ , Wiki や Blogs, File Box, Forums, Group
Sites な ど の 機 能 を 備 え る .
Total
長崎純心大学
Na ga sak i Ju nshin Ca tholic University (日 本 )
CSUF: カ ル フ ォ ル ニ ア 州 立 大 学 フ ラ ト ン 校
(ア メ リ カ 合 衆 国 )
UNCC: ノ ー ス キ ャ ロ ラ イ ナ 州 立 大 学
シ ャ ー ロ ッ テ 校 (ア メ リ カ 合 衆 国 )
AMUP: ア ダ ム ・ ミ ツ キ ェ ヴ ィ チ 大 学
(ポ ー ラ ン ド 共 和 国 )
* * EU 諸 国 間 の エ ラ ス ム ス 計 画 に よ る 留 学 中 の 学 生 自 身 の
所属表記が不明となったと推測される
NJCU:
・ 7 項 目 に つ い て ,項 目 に よ り 程 度 の 場 合 は 4
段階選択式,種類 等を 上げ る場合 は 記 述式.
・ 実施時期は,プロジェクト終了後.
③ プロジェクトでの発言・発信回数 .
・ プ ロ ジ ェ ク ト 参 加 中 の 各 学 生 の 発 言 を ,全 体
の Forum Site な ら び に そ れ ぞ れ の グ ル ー プ
内 の Group Forum に お け る 発 信 (投 稿 )数 で
カウント.
2 本研究報告
④ 上掲①~③を用いたクロス・オーバー分析省察
本 研 究 で は , 上 記 の 2012 年 度 の 実 践 に 基 づ き , 前
3
掲 の 研 究 課 題 の 全 体 構 想 ( 1.1 参 照 ) の 中 で 以 下 の 点
3.1 英 語 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン 力 の 伸 長
に特化して 探究する.
英語コミュニケーション能力判定テストにおいて
2.1 目的
事前・事後でともに有効なデータが得られた被験者は
(1) 日 本 人 参 加 大 学 生 の 英 語 力 は 何 が ど の 程 度 変 化 す
13 名 で あ っ た .
るか.
そ の 13 名 の 英 語 能 力 伸 長 度 に つ い て , 項 目 別 に テ
(2) そ の 伸 長 に 関 わ る 要 因 は 次 の う ち 何 が 最 も 影 響 す
スト得点の事前事後の差で みると表2のとおりであっ
るか.
た.
① 性格
② IT利用経験
表2 英語力事前事後テスト項目別伸長度
Sec1
Sec2
Sec3 Sec4
学 生 No.
差
差
差
差
Total
Voc. Expression List.
Dict.
1
12
-21
-29
-2
-40
2
-4
-2
3
-21
-24
3
19
9
31
-23
36
4
18
-5
-2
-9
2
5
-1
-11
29
-40
-23
6
-53
33
-14
6
-28
7
27
-26
22
12
35
8
8
19
-9
-29
-11
9
26
-37
3
-14
-22
10
-13
24
-16
24
19
11
-1
-14
-20
11
-24
12
-1
16
-69
-2
-56
13
-7
-25
6
-29
-55
平均
2.3
-3.1
-5
-8.9 -14.6
Control
0.9
-5.5
2.3
-4
-6.3
③ プロジェクト参加度
④ その他
2.2 方法
上 述 の 目 的 (1) (2) ① ② ③ ④ , そ れ ぞ れ に 対 応 さ せ ,
実施した評価項目は以下の通りである .
(1)
英語コミュニケーション能力判定テスト
(Computerized
結果
Assessment
System
for
English Communication: CASEC) を 用 い た .
本テストは教育測定研究所が開発・運営を行
うもので応答理論に基づいており,英語の実
力 : Proficiency を 測 定 す る の に 適 し て い る こ
とから採用した.
・ 事 前 テ ス ト : 2012 年 10 月 4 日 実 施 .
事 後 テ ス ト : 2013 年 2 月 16 日 実 施 .
・ ① 語 彙 , ② 表 現 , ③ 聞 き 取 り (大 意 把 握 ), ④
聞 き 取 り (具 体 情 報 )に つ い て ⑤ 合 計 得 点 と と
以上のデータから,以下の結果が得られた .
もに,それぞれの項目における英語力の伸長
1 ) こ の プ ロ ジ ェ ク ト 参 加 の 期 間 (4 か 月 弱 )内 に お い
度を診た.
て は ,特 に 英 語 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 に 伸 び は
(2)
観察されない.
① YG 性 格 検 査 .
2)ただし,コントロールグループとして援用した
・ 各 種 利 用 可 能 な 性 格 検 査 を 検 討 し た 結 果 ,最
1 年 生 36 名 の 同 じ CASEC テ ス ト (事 前 5 月 , 事
も 目 的 に 適 い ,信 頼 性 に 定 評 が あ り ,か つ 容
後 9 か 月 後 の 2013 年 1 月 実 施 )の 結 果 と 比 べ て み
易に実施できることから採用した.
る と ,リ ス ニ ン グ が 関 わ る 項 目 以 外 で は ,相 対 的
・ 120 項 目 よ り な る .
に 勝 っ た 成 果 が 得 ら れ て い る と 解 釈 さ れ る .特 に
・ 15 の 性 格 パ タ ー ン に 類 型 化 で き る .
語彙における伸長は顕著であると観察される.
・ 実施時期は,プロジェクト開始時期の前.
3.2 英 語 力 伸 長 に 関 わ る 要 因
② IT 利 用 経 験 ア ン ケ ー ト .
1 )YG 性 格 検 査 結 果 に 基 づ く 性 格 パ タ ー ン と の 関 係
・ 著者らが作成.
44
について,英語力の中で特に伸長が認められた語彙,
な ら び に 合 計 得 点 を ,13 名 に つ い て 比 較 し た 結 果 は 表
3のとおりであった.
表3 英語力の伸長と性格パターンの対照表
学 生 No.
Sec1 差
Voc.
Total 差
9
a
Email,
Net, Job
Hunt in g
a
a
10
b
WP, Net
c
d
b
b
b
b
11
a
12
a
13
a
Net, WP,
Mu sic,
DVD
Net, WP,
Email,
Games
Email,
WP, Net
YG 性 格
パターン
Face book,
Tw.
b
a
b
a
Face book
b
a
a
Face book
b
a
b
Face book
b
a
1
12
-40
AB
2
-4
-24
B'
3
19
36
A''
4
18
2
D'
5
-1
-23
AC
以上のデータから学生間にほとんど違いが認めら
6
-53
-28
A'
れ ず ,ほ と ん ど の 学 生 が パ ソ コ ン 自 体 を 始 め E-メ ー ル
7
27
35
A''
お よ び SNS を よ く 利 用 し て い る 状 況 で あ っ た .た だ し ,
8
8
-11
A''
あ ま り 利 用 し な い 少 数 派 (表 上 網 掛 け マ ー ク )4 名 に つ
9
26
-22
A''
いて,表3の語彙と合計得点の伸長と合わせて,関係
10
-13
19
C'
を 比 較 す る と , う ち 3 名 (学 生 No. 3, 8, 10)が 伸 長 を 示
11
-1
-24
B'
した学生であった.
12
-1
-56
A'
3 ) プ ロ ジ ェ ク ト で の 発 言 回 数 に つ い て は , log よ
13
-7
-55
A''
り 発 信 数 を カ ウ ン ト し , 表 5 に お い て postings(投 稿 )
回数として記録した.
以 上 の デ ー タ か ら ,語 彙 で 伸 長 の 見 ら れ た 学 生 No. 1,
表 5 英 語 力 の 伸 長 と 発 信(投 稿)数 お よ び グ ルー プ
3, 4, 7, 8,9 ま た 合 計 得 点 で 伸 長 の 見 ら れ た 学 生 No. 10
内の日本人学生数の対照表
を 加 え て も , そ れ ら 7 名 の 性 格 パ タ ー ン は AB, A'', D',
学生
No.
1
A'', A'', A'', C'と 4 パ タ ー ン に 亘 り , 重 な り の あ る A''
の性格は被験者の間で最も多いパターンでありかつ
A''で 伸 長 が 見 ら れ な か っ た 者 も お り ,性 格 パ タ ー ン と
の関係で一般化される事実は観察されなかった.
2 )IT 利 用 経 験 に つ い て の ア ン ケ ー ト 結 果 は ,表 4
のとおりであった .
表 4 IT 利 用 経 験 ア ン ケ ー ト 結 果
IT 利 用 経 験
学
生
No.
パ
ソ
コ
ン
利
用
1
a
2
a
3
a
4
a
5
b
6
a
7
a
8
a
目的
WP, Net,
Email
WP, Net,
Email,
PPT, E xl
Net, WP,
etc.
Net,
Free soft
Net, WP
WP, Net,
Mail
Net, E xl,
WP, PPT
Net, WP,
Email
S
N
S
利
用
種類
b
a
a
c
Emal
利用
タ
イ
ピ
ン
グ
プ ロジェクト
PC/Smrt
Face book
b
a
a
Face book,
Tw.mixi
b
a
a
Face book
b
a
Sec1 差
Voc.
12
Total 差
postings
Group
日本人数
-40
4
G5 (2)
2
-4
-24
2
G9 (3)
3
19
36
2
G8 (3)
4
18
2
7
G7 (1)
5
-1
-23
16
G8 (3)
6
-53
-28
2
G4 (3)
7
27
35
1
G4 (3)
8
8
-11
8
G6 (1)
9
26
-22
9
G1 (1)
10
-13
19
4
G3 (1)
11
-1
-24
2
G9 (3)
12
-1
-56
0
G4 (3)
13
-7
-55
5
G8 (3)
2.3
-14.6
4.8
average
以上のデータから,語彙または合計点で伸長がみら
れ た (網 掛 け マ ー ク 部 分 )学 生 7 名 で , 発 信 数 が 平 均 値
a
a
Face book,
Tw, Skype
b
a
の 4.8 よ り 多 い (postings 欄 斜 線 マ ー ク )も の は 3 名 で 半
b
b
Face book
b
a
数 以 下 と な り ,特 に 相 関 が あ る と は 考 え に く い .一 方 ,
a
b
a
a
b
a
b
a
お り ,残 り の 1 名 (学 生 No. 10) に つ い て も 発 信 数 は 4
a
c
b
a
で 少 な く な い . ま た , 同 じ く 発 信 数 が 4 の 学 生 (No. 1)
Face book,
Tw.
Face book,
Tw.
その発信数の多い5名については,グループ内で日本
人学生が一人であったもの4名のうち3名が該当して
は,グループ内人数は2名であったが,語彙において
45
伸長が観測された.
しかしながら,英語力変化 の中で語彙 力については
4)その他の結果として,上記3)で観測された,
コントロールグループと対照しても,相対的に 伸びが
グループ内における日本人学生が一人である場合に語
見られた. さらに,それらの伸長度合いを学生の個人
彙力または合計点が伸びる傾向に関連して,とくに投
別諸特性と対照比較検討した結果,以下の5点が明ら
稿数が多く かつ英語力に伸長傾向が見られた学生たち
かとなった.
( 学 生 No. 4, 8, 9, 10)に つ い て ,性 格 パ タ ー ン と の 関
(1)語 彙 な ら び に 全 般 の 伸 長 に つ い て , 個 人 の 性 格 パ
係を対照比較してみると表6の結果が得られた.
タ ー ン と の 関 連 は 明 確 に は 特 定 さ れ な か っ た が ,グ
ループ内で日本人一人として活動した学生は伸び
表6 グループ内一人日本人の性格パターン,および
た こ と が 観 測 さ れ た .ま た ,個 性 の 強 い 学 生 が 独 り
グループ内メンバー間の性格パターンによる活
で 活 発 に 発 信 し ,そ の 結 果 あ る 程 度 の 英 語 力 の 伸 長
躍度
Grou p
Group 1
Group 2
Group 3
Group 4
Group 5
Group 6
Group 7
Group 8
Group 9
を果たしたことが推測された.
Disc u ssio n
fo r u m fo r
all gr o u ps
1
0
0
0
0
0
0
0
0
2
6
2
0
2
0
1
0
1
1
Gr o u p
Fo r u m
po st s
8
0
0
4
1
2
0
0
10
2
2
5
0
14
2
4
2
1
1
(2)従 っ て ,語 彙 力 の 伸 長 に 必 要 な 要 因 と し て 次 の 2 つ
Total
9
0
0
4
1
2
0
0
10
4
8
7
0
16
2
5
2
2
2
YG te st
A''
B'
A''
C'
A''
A'
A'
St. No.
が認められよう.①広範囲で多様な英語に多量に
触 れ る Extensive Reading す る こ と に よ り ② 一 人 で
9
集 中 的 に 責 任 を も っ て タ ス ク を こ な す Intensive
Learning が 実 現 で き る こ と に よ り 英 語 の 実 力 :
10
7
6
12
Proficiency が つ い た [8]可 能 性 が 示 唆 さ れ た .か つ ,
両 学 習 に 介 在 す る 認 知 プ ロ セ ス で あ る Negotiation
of/for Meaning の 機 会 が 必 須 で あ る [9][10]こ と が 推
AB
AB
A''
D'
A''
AC
A''
A''
B'
B'
論される.
1
8
4
(3)発 言・発 信 回 数 は ,グ ル ー プ 内 で 日 本 人 一 人 と し て
活 動 し た 学 生 が 多 い 傾 向 が あ り , そ れ が 上 記 (1)の
結果に反映されたと判断される.
5
3
13
11
2
(4) 性 格 パ タ ー ン と 英 語 力 伸 長 と の 直 接 の 関 係 は み ら
れなかったが,同一グループ内で性格パターンが
異なるメンバー間では,個性的なメンバーが一人
残り活動したケースが複数みられた.
(5)IT 利 用 経 験 に お い て は ,学 生 間 に 差 が み ら れ な か っ
以上のデータから,投稿数 が多く英語力が伸びた 学
たため,英語力の伸長との関係は確定しがたかっ
生(表上マーク欄)は,グループ内で日本人が一人で
た が , 本 デ ー タ に お い て は IT を 普 段 あ ま り 利 用 し
あ る 場 合 ( 学 生 No. 9, 8), も し く は 本 学 生 集 団 内 で は
ない少数の学生が英語力伸長の傾向が観察された.
少 数 派 の ユ ニ ー ク な 性 格 パ タ ー ン で あ る C'や D'( 学 生
以 上 , 3 大 陸 に ま た が る 六 か 国 八 大 学 か ら の 100 名
No. 10, 4) で あ っ た . ま た , 後 者 の 場 合 は そ の グ ル ー
を超す学生・教員による共同事業という企画そのもの
プ 内 の 他 の メ ン バ ー は 本 集 団 で は 最 も 多 い A''パ タ ー
が新しく挑戦的であったことを土台に,いくつかの興
ン で あ っ た .因 み に A パ タ ー ン は ,大 分 類 項 目 の「 情
味 深 い 新 奇 な 観 察 結 果 を 得 る こ と が で き た .な か で も ,
緒安定性・社会適応性・主動性を含めた向性」のすべ
上 記 の (1)~ (5)よ り ,「 日 本 人 大 学 生 に お け る 英 語 コ ミ
て に お い て ,‘ 平 均 ’ と 表 現 さ れ る 中 央 寄 り 型 で あ る .
ュニケーション力の伸長には自立した活動体験が必要
である」との仮説が導出された. しかしながら,多種
4 考察
類の要因が複層的に関わっている 可能性が高いことか
前節の結果より,全般的に参加学生グループの英語
ら,本仮説の検証には,先ず今回のプロジェクトの実
コミュニケーション力 については,伸びは観察されな
践に基づく結果について再現性の有無が引き続き確認
か っ た .そ の 主 な 理 由 と し て ,次 の 3 点 が 考 え ら れ る .
されなければならないと考える.
①テーマとトピックが教育学に関する専門的な内容で
5 研究課題の今後の計画
あるため,発言する前に日本語で調べ るなど慎重を期
す 必 要 が あ る こ と か ら ,英 語 で の 発 信 数 が 制 限 さ れ た .
し た が っ て 前 節 の 考 察 を 踏 ま え ,以 下 を 本 研 究 の 今
②実質参加期間が3ヶ月余と限られていた.③参加学
後の具体的課題とする.
生のうち3分の2は,英語力事前テストが1ヶ月間の
(1)
海外実習(米国)から 帰国の直後であったため,事前
2012 年 度 の プ ロ ジ ェ ク ト 活 動 に つ い て , さ ら に
以下の分析を行う.
テスト結果 の方に過大な効果が出ていた.
① データ分析2 種:
46
i)
[3] 佐 藤 学 『 学 校 の 挑 戦 ― 学 び の 共 同 体 を 創 る 』 小
学 館 , 2006 年 .
[4] Nakano, M., Murao, R., Yokota, M., Sumi, A. K.,
Ito, S., & McDermott, D., “Developing
transferable skills and social intelligence
through theme-based cross cultural distance
learning,” 大 学 英 語 教 育 学 会 ICT 特 別 委 員 会
( 編 ) , 『 2007 年 度 ICT 授 業 実 践 報 告 書 :
Information
Communication
Technology
Practice & Research 2007』 JACET-ICT 特 別 委
員 会 事 務 局 , 2008 年 , pp. 191-199.
[5] Suzuki, C., Jung, K., Watanabe, Y., Yoshihara,
S., and Chang, K., “Working on global issues
jointly with students overseas via ICT:
A
summing-up report of five-year class activities,”
大 学 英 語 教 育 学 会 ICT 特 別 委 員 会( 編 ), 『 2007
年 度 ICT 授 業 実 践 報 告 書 : Information
Communication
Technology
Practice
&
Research 2007』 JACET-ICT 特 別 委 員 会 事 務 局 ,
2008 年 , pp. 181-190.
[6] Watanabe, Y., Suzuki, C., Yoshihara, S., & Chen, Y.,
“A joint discussion class mediated by a mailing-list
between
Japan
and
Taiwan,”
LET
Kyushu-Okinawa BULLETIN No.5, 2005, pp.
35-44.
[7] Ausband, L. T., & Schultheis, K., “Utilizing Web 2.0
to provide an international experience for pre -service
elementary education teachers: The IPC Project,”
The Computers in the Schools, 27: 3, 2010, pp.
266-287.
[8] Nation, P. “The language learning benefits of
extensive reading,” The Language Teacher Online,
21.5.
at
http://jalt -publications.org/old_tlt/files/97/may/benef
its.html, 1997.
[9] Long, M. "The role of the linguistic environment in
second language acquisition," In Ritchie, William;
Bhatia, Tej. Handbook of Second Language
Acquisition. San Diego: Academic Press. 1996, pp.
413–468.
[10] Varonis, E. and Gass, S. “Non-native/non-native
conversations: A model for negotiation of meaning.
Applied Linguistics, 6, 1, 1985, pp. 71–90.
[11] Oshima, J., Oshima, R. & Matsuzawa, Y. “Knowledge
Building Discourse Explorer: a social network
analysis application for knowledge buildin g
discourse,” Educational Technology Research and
Development, 60: 5, 2012, pp.903 -921.
[12] Howe, W. “My Cultural Awareness Profile (myCAP) ,”
on the site: Bill Howe on Multicultural Education, at
http://billhowe.org/MCE/my-cultural-awarenes
s-profile-mycap/, 2011.
サイトにおける自己紹介データをコーパス
言語学の観点から .
ii) フ ォ ー ラ ム 上 の 対 話 デ ー タ を ネ ッ ト ワ ー ク
構 造 発 展 の 観 点 か ら ,知 識 構 築 を 目 的 と す る
協 調 学 習 の 過 程 を 分 析・支 援 す る 目 的 で 開 発
さ れ た ソ フ ト ウ エ ア KBDeX [11]を 用 い て ,
ディスコースを分析.
② Project Surveys 分 析 2 種 :
i)
全 体 評 価 ア ン ケ ー ト (12 問 48 項 目 )
プ ロ ジ ェ ク ト 主 宰 の Dr. K. Schultheis が 作
成 し ,参 加 学 生 が 世 界 各 地 よ り 回 答 で き る よ
う に IPC の ウ ェ ブ サ イ ト に ,プ ロ ジ ェ ク ト 後
に掲載.
ii) 異 文 化 理 解 ア ン ケ ー ト (40 問 )
プ ロ ジ ェ ク ト メ ン バ ー の Dr. L. Ausband( ノ
ースキャロライナ 州立 大学 シャー ロッ テ校 )
の 選 定 に よ り ,教 員 養 成 に お け る グ ロ ー バ ル
化 を 測 定・促 進 す る 目 的 で Dr. H. Marx に よ
り 開 発 さ れ , NAFSA:
Association
of
International Educators が 提 供 す る 自 己 分
析 用 の My Cultural Awareness Profile (略
称:MyCAP)[12]を ,同 じ く 参 加 学 生 が 世 界
各 地 よ り 回 答 で き る よ う に IPC の サ イ ト に ,
プロジェクト後に掲載.
(2)
2013 年 度 実 施 予 定 の プ ロ ジ ェ ク ト を 基 に , 以 下
のことを重点的に研究する.
① 本研究結果から推論された事柄を新参加学
生において再現性を検証.
② 継続参加学生の次段階の伸長を探索.
③ 形成的評価についても ,再現性の検証と,
継続学生の次段階の国際協働作業力の発展
性を探る.
謝辞
本 研 究 は JSPS 科 研 費 24520685 の 助 成 を 受 け た も
の で す . 本 プ ロ ジ ェ ク ト の 主 導 者 Dr. Klaudia
Schultheis
(Catholic
University
of
Eichstaett-Ingolstadt),な ら び に プ ロ ジ ェ ク ト 参 加 大
学の全ての教員と学生の皆さんに ,併せて感謝申し上
げます.
文
献
[1] レ フ・セ ミ ョ ノ ヴ ィ チ ヴ ィ ゴ ツ キ ー (著 ), 柴 田
義 松 (訳 ) 『 新 訳 版・思 考 と 言 語 』新 読 書 社 ,2001
年.
[2] 佐 伯 胖( 監 修 ),コ ン ピ ュ ー タ 利 用 教 育 協 議 会( 編 )
『 学 び と コ ン ピ ュ ー タ ハ ン ド ブ ッ ク 』東 京 電 機 大
学 出 版 局 , 2008 年 .
47
Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the English Language Education Society of Japan
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
コンピューター・メディア・コミュニケーションを用いた
大学英語コースデザインとその有用性
ティム
マーチャンド 1
阿久津
純恵 2
基盤教育院 〒194-0294 東京都町田市常盤町 3758
基盤教育院 〒194-0294 東京都町田市常盤町 3758
E-mail: [email protected] [email protected]
1 桜美林大学
2 桜美林大学
概要
本稿は、時事ニュースと Computer-mediated Communication(CMC)を用いた大学英語クラスの実践報告であ
る。時事ニュースのリーディングとブログ形式によるライティングタスクを組み合わせた英語コースの有用性を、
コーパスおよび学生フィードバックを使用した分析によって考察することを目的としている。ウェブ上の時事英語
ニュースという生教材を用いる有効性、ブログという意見交換形式により学生の英語ライティングに対する心理的
負担を軽減する可能性、さらに、コーパス分析を用いて Common Error としてフィードバックを与える教育的効果に
ついて実践報告し、CMC を用いた大学英語コースデザインの有用性について、主に学生への動機づけという観点か
ら、その有用性と課題を論じる。
Computer-Mediated Communication as a Motivational Learning Tool
for University English Courses
Tim Marchand 1
Sumie Akutsu 2
1 J.
F. Oberlin University
3758 Tokiwa-machi, Machida-shi, Tokyo 194-0294 Japan
2 J.
F. Oberlin University
3758 Tokiwa-machi, Machida-shi, Tokyo 194-0294 Japan
E-mail:
1 [email protected]
2 [email protected]
Abstract This paper describes an innovative curricular cycle that uses a website of news-based materials in a
course for Japanese university students. Students are asked to read a current news story each week and, after
a classroom session, write their reactions to the story on the class blog. A corpus analysis is conducted on the
online comments, and the results are compared to a reference corpus of online native speaker discussions. The
paper will discuss the findings of this analysis in terms of L1 interference, and outline how these results are
used to produce educational materials sensitive to the needs of the students in the next cycle of classes. The
paper argues that this method of course delivery has a positive influence on learner motivation in three ways:
the recent news stories provide interesting, authentic materials for the students to study; the online mode of
delivery allows students to build their confidence in expressing themselves in English away from the pressures
of the classroom; and finally, by highlighting errors that are common to the group rather than individuals,
students feel less anxious about their own mistakes in writing and possibly in speaking. The paper concludes
that this type of web-based course is effective as a collaborative learning tool for university students to engage
with the materials effectively and enhance their learning experience.
ティム・マーチャンド
阿久津
純恵, "コンピューター・メディア・コミュニケーションを用いた大学英語コースデザインとその有用性,"
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集, pp. 49-55, 日本英語教育学会編集委員会編集, 早稲田大学情報教育研究所発行, 2014 年 3 月 31 日.
This proceedings compilation published by the Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda University.
Copyright © 2014 by Tim Marchand and Sumie Akutsu. All rights reserved.
1. は じ め に
ラスの実践報告であるが、シラバス作成段階において
は、英語学習へのニーズとモティベーショ ンという2
近 年 、イ ン タ ー ネ ッ ト 、ス マ ー ト フ ォ ン な ど の 発 達 、
普及によって、ソーシャルネットワーキングサービス
つの点において大きな懸念があった。特に、クラス 内
(以 下 SNS)が 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 重 要 な ツ ー ル と
での意見の発信や交換という点における問題は広く報
して認知されるようになった。本稿では、このような
告 さ れ て お り (Anderson, 1993; Williams, 1994; Doyon,
コンピューターを媒体としたコミュニケーションを 、
2000; Marchand, 2012)、 こ の 問 題 点 を 克 服 す る た め に
英語教育に活かす有用性について論じる。 現代におけ
時 事 ニ ュ ー ス と CMC を 用 い 、 Willis & Willis (2007)の
るマルチメディア環境の中で、時事英語ニュースと
提唱するタスクサイクルをもとにした シラバスデザイ
Computer-Mediated Communication ( 以 下 CMC) を
ン が 採 用 さ れ た 。 (表 1 )
使用して英語のコミュニケーション能力を養成する授
表1 タスクサイクル
業実践について報告し 、主に学生の動機付けという観
点 か ら 、 CMC と 学 習 者 コ ー パ ス 分 析 を 用 い た 大 学 英

語コースデザインの有効性を考察する。
Focus on
meaning
Warm up
Focus on
language
News article
Focus on
form
Comprehension
check
Report
Student
opinions
Review
Vocabulary
quiz


Introduce vocabulary
Prime schemata
Add
communicative
element
2. 英 語 教 育 と CMC
語学教育におけるデジタルメディア活用について
は 、 こ れ ま で に 多 く の 報 告 が な さ れ て い る が (Arena &


Current news topic
Highlight vocabulary
Jefferson, 2008; Carney, 2007; Johnson, 2004; Chuo &
Kung, 2002)、 Alm (2006)は 、 学 生 が す で に 母 語 で 行 っ
て い る ブ ロ グ や SNS の 機 能 に 注 目 し 、こ れ ら を 語 学 教

Questions
focus
on
comprehension and on
particular
grammar/
lexical patterns

Students
write
reaction to the
topic

Quiz on topic words and
common words
Reinforce grammatical/
lexical patterns
育 に 取 り 入 れ る 有 用 性 を 論 じ て い る 。CMC 等 の デ ジ タ
ルメディアを有効利用することによって、学生が「自
分たち自身の言葉」でコミュニケーションをはかり
( Erbaggio et al., 2010)、外 国 語 学 習 の 効 果 が さ ら に 高
their
news
められることが大きく 期待されている。
3. CMC を 用い た 大 学 英 語コ ー ス デ ザ イ ンと そ
の実践
本報告は、東京にある2つの大学で実践された英語

3.2. 生 教 材 と し て の 時 事 ニュ ー ス
コースに関するものである。時事英語という科目の枠
教材は、前週あるいは前々週におこったニュースの
組 み の 中 で 、 時 事 ニ ュ ー ス と い う 生 教 材 と CMC と い う
中 か ら 、一 つ の 時 事 ニ ュ ー ス が 選 択 さ れ 、作 成 さ れ る 。
コミュニケーションツール を使用してシラバスがデザ
毎週、異なるジャンルからのニュースが教材として提
インされている。英語専攻ではない学生の動機付けと
示されるが、コンテキストの中で語彙やフレーズの学
ニーズに配慮し、さらに大学の英語クラスとしての妥
習をすることができるよう 、オリジナルのニュース記
当性も鑑みた上で、クラスウェブサイトを軸とした英
事が、加筆、修正 され、さらにターゲットとなる語彙
語クラスが構築されている。
に注が付与されている。生教材を用いる際に注意すべ
き点に、語彙や内容理解における難易度設定が挙げら
れ る (Bacon & Finneman, 1990) 。こ の 点 に つ い て は 、学
3.1. 日 本 の 大 学 英 語 教 育 と授 業 シ ラ バ ス
日本の大学英語教育においては、 1年間ないし2年
習者の語彙レベルに配慮して記事に加筆修正を加える
間にわたり、英語が必修科目として設定されている
だけでなく、前述したタスクサイクルを採用し て、学
(Butler & Iino, 2005)。 大 学 全 体 と し て 統 一 英 語 カ リ キ
習者を段階的にニューストピックへと導き、さらに ウ
ュ ラ ム を 提 供 す る 大 学 が あ る 一 方 で 、大 部 分 の 大 学 は 、
ェブ上に教材を提示して、学生が授業の前後に自由に
学部ごとに独自のカリキュラムを持ち、さらに授業シ
アクセスして自主学習できるようにすることで
ラバスについては、個々の教員にその内容 が委ねられ
(Erbaggio et al., 2010)、生 教 材 へ の 不 安 を 軽 減 す る 工 夫
て い る (Marchand, 2011) 。
を施した。
本稿は、商学部と法学部の学生を対象とした英語 ク
50
3.3. CMC を 用 い た意 見 交 換
3.4.2. コ ー パ ス を 用 い た学 習 者 英 語 分 析
語彙の学習とニュース記事の理解に続いて、学習者
学習者コーパスとネイティブスピーカーコーパスを
には自分の意見を考えるタスクが与えられる。 前述し
比較することにより、日本人学生の英語の特徴やコモ
たタスクサイクルの一つであるこのリポートについて
ンエラーを分析し、さらに その結果をクラス全体の傾
は、ウェブサイト上にディスカッションフォーラムを
向として提示することで、学習者の英語の誤りに対す
形成し、学生がブログ形式で自分の意見を書きいれる
る心理負担を軽減しながら、フィードバックを与える
ことで、各自が意見を書き込むだけでなく、学生間で
ことができる。
意見の交換ができるようになっている。匿名で行われ
まず、コンコーダンスで、学習者コーパスとネイテ
る こ の CMC を 用 い た デ ィ ス カ ッ シ ョ ン が 、 ニ ュ ー ス
ィブスピーカーコーパスを比較することで、学習者英
の理解を促進するだけでなく、個々の学生の英語発信
語に特徴的な高頻度語彙を抽出するキーワードリスト
力 を 養 成 し (Camean & Haefner, 2002)、 さ ら に 学 生 同 士
を作成した。コンコーダンスソフトウェア で作成する
のコミュニケーション を促していく役割を担っている。
ことができるこのキーワードリストは、対数尤度比指
数 を 用 い た Keyness と い う 特 徴 語 指 数 の 高 低 で 示 さ れ
3.4. CMC を 用 い た 学 習 者 コ ー パ ス 作 成 と 教 材
る 。 Keyness の 高 い 語 彙 は 、 コ ー パ ス に お い て 過 剰 使
用される傾向がある特徴的な語彙であることが分かる。
開発への応用
CMC を 用 い て 、学 生 同 士 が 意 見 交 換 を す る こ と で 、
時事英語ニュース記事についてのコメントということ
教 員 は フ ァ シ リ テ ー タ ー と な る だ け で な く (McGrath,
で、記事に使用されている 固有名詞が 多くみられるた
1998)、さ ら に CMC コ ー パ ス を 作 成 す る こ と で 、フ ィ
め 、 上 位 語 30 語 を 、 学 習 者 英 語 の 特 徴 と コ モ ン エ ラ
ードバックの与え方を工夫したり、教材開発に活かし
ー と い う 観 点 で 分 析 し て い く と 、 I、 think、 because、
たりすることができるようになる。以下に、その一例
agree が 、学 習 者 英 語 で 特 徴 的 な 使 い 方 を さ れ て い る こ
を報告する。
と が 分 か っ た 。( 表 3 )
表3 キーワードリスト
Learner corpus
against
Native sub-corpus
3.4.1 CMC を 用 い た 学 習 者 コ ー パ ス 作 成 と 分
Keyword
Ranking
析ツール
CMC を 使 用 し た ラ イ テ ィ ン グ の 利 点 の 一 つ は 、学 生
Keyness
のコメント がすでにデジタル化されているため、比較
1
I
6213
的容易に学習者コーパスを作成できる点にある 。さら
2
think
1202
14
Because
302
くみられる点にある。そこで、レファレンスコーパス
23
because
207
と し て 、 BBC ウ ェ ブ サ イ ト 上 の フ ォ ー ラ ム Have Your
24
agree
197
に、時事ニュース使用の利点として、実際のウェブニ
ュースサイトには、同等の機能を持つフォーラムが多
Say か ら 、 ネ イ テ ィ ブ ス ピ ー カ ー コ ー パ ス を 作 成 し 、
比較対象と した。
3.4.3. コ ー パ ス を 用 い た学 習 者 英 語 分 析
これらの 学習者コーパスとネイティブスピーカーコ
学 習 者 コ ー パ ス に に お い て 、上 位 2 語 “I think” に つ
ーパスを、無料で公開されているコンコーダンスソフ
いては、フレーズの多用だけでなく、文末にカンマを
ト ウ ェ ア AntConc を 用 い て 比 較 し た 。こ の 際 に 、コ ー
伴 っ て 使 用 す る “,I think” の 使 用 も 確 認 さ れ た 。
パスのサイズに大きな隔たりがあるため、ネイティブ
(表4)
コーパスから、学習者コーパスと同等サイズのサブコ
ー パ ス を 作 成 し 、 分 析 に 用 い た 。( 表 2 )
表2
表 4 I think の 使 用 頻 度 比 較
コーパスサイズ比較
Learner
corpus
Native
sub-corpus
Native
corpus
Number of
comments
2,023
1,740
23,201
Number of
tokens
110,646
109,340
1,529,295
Raw
Frequencies
Learner corpus
Native
sub-corpus
I
4,539
1,833
I think
1,367
142
,I think.
36
1
特に、アカデミックライティングではないライティン
グ の 指 導 に お い て 、 誤 用 で は な い ”I think”の 多 用 に つ
51
いては注意が必要であるが、クラス内フィードバック
の 多 い 表 現 で あ る こ と が わ か っ た 。 特 に 、 agree や
として、多用される傾向として指摘し、同等表現とし
disagree を 他 動 詞 と し て 誤 用 し 、 必 要 な 前 置 詞 が 抜 け
て 使 用 可 能 な “It seems to me that” 、“In my opinion”、“I
落ちている例が大変顕著にみられた。
feel/believe that” 等 の 表 現 を 導 入 す る こ と が 考 え ら れ
る 。さ ら に 、“I think”の 文 末 使 用 に 関 し て は 、L1 の 影
響 も 考 え ら れ る 点 を 指 摘 し 、“I think that”の 使 用 を 促 す
Preposition
error
指導も有効である 。
さ ら に 、 Because の 使 用 に つ い て は 、 以 下 の よ う な
Determiner
error
結果が得られた。
表5
because の 使 用 頻 度 比 較
Other
error
表 7 学 習 者 の agree 誤 用 例
However, I think bullfighting is a cruel
sports too. So, I understand their thoughts
and I agree them.
I agree with German y policy. Nuclear
plants have a bad influence for people.
Japan also need same policy.
I cannot agree that abandoning nuclear
power and supply energy by the alternative
power generation. Because the energy used
under the present situation considerabl y
depends on nuclear power.
Raw
Frequencies
Learner
corpus
Native
sub-corpus
because
728
151
Because
217
8
この誤用を正すために、クラス内でコモンエラーと
Because,
22
1
し て 指 摘 す る と と も に 、 補 助 教 材 を 作 成 し ( Appendix
1)、agree/disagree の 指 導 を 行 っ た と こ ろ 、指 導 後 の コ
メントにおけるエラーの割合は1%にまで下がった。
学 習 者 コ ー パ ス で は 、文 頭 に “Because”を 置 く 構 文 が 好
このように、学習者英語の傾向やエラーを、学習の
ま れ て 使 用 さ れ て い る だ け で な く 、 70 % 以 上 の 文 が
発達段階における一つの特徴やコモンエラーとして提
fragment 文 で あ り 、 主 節 を 伴 っ て い な い こ と が 明 ら か
示することで、学習者の心理的負担を軽減するだけで
と な っ た 。“Because”で 導 入 さ れ た 従 属 節 の み で 、主 節
なく、教員にとっても、学習者英語の分析に基づいて
を伴っていないこの文章のスタイルの傾向は、
“because”を「 な ぜ な ら ば 」と い う 意 味 の 副 詞 と 誤 用 し
的確な指導を行う教材開発が可能になる点において、
ていることに一因があると考えられる。このことは、
コーパスを用いたフィードバックは非常に有効である
カンマを伴って副詞として使用していると思われる
と考えられる。
“Because,” の 誤 用 が 多 く 見 つ か っ た こ と か ら も 推 測 さ
4. 学 生 フ ィ ー ド バ ッ ク か ら 考 察 す る CMC の 有
れる。これらの誤用例から、英語ライティングにおい
て は 、“because”の 正 確 な 文 法 的 用 法 の 再 導 入 が 必 要 で
用性
あることが分かった。
一年間のコース終了時に、グーグルドキュメントを
使用した日本語によるコースアンケートを実施し、2
大 学 2 ク ラ ス で 、 合 計 62 名 の 学 生 の 回 答 が 得 ら れ た 。
3.4.4. コ ー パ ス を 用 い た 学 習 者 英 語 分 析 と 教
学習者の英語力や英語学習歴、英語学習に対するモテ
材開発
ィベーションなどに関する質問と、本コースに関する
学 習 者 英 語 の 誤 用 分 析 を 用 い て 、教 材 を 作 成 し 、コ ー
質 問 事 項 を 、5 段 階 評 価 と 自 由 回 答 と に よ っ て 調 査 し 、
ス デ ザ イ ン の サ イ ク ル に 活 用 す る 試 み も 行 っ た 。特 に 、
主にモティベーションという観点で分析を行った 。
使 用 頻 度 の 高 か っ た 動 詞 の 中 で 、agree の 誤 用 に 注 目 し 、
コンコーダンスラインを分析した 。
表6
4.1. CMC の教 育 的 効 果
ア ン ケ ー ト の 結 果 、 CMC を 用 い た ブ ロ グ 形 式 の 意 見
学 習 者 の agree/disagree 使 用
記述に関して、ほとんどの学生が、英語で意見を述べ
Use of
agree/disagree
Percentage (% )
Correct
23
Preposition error
43
Determiner error
33
や英文の入力等に戸惑っていた学生がいたことや、意
Other error
10
見の表明や交換が苦手だと報告されている日本人学生
るモティベーションの上昇につながったと 、肯定的に
と ら え て い る と い う 結 果 が 明 ら か に な っ た( 図 1 参 照 )。
授 業 を 履 修 し た 学 生 の ほ と ん ど に と っ て 、 CMC を 用 い
た英語クラスは初めての経験であり、ログインの仕方
の 特 徴 を 考 え 合 わ せ る と 、 CMC は 学 生 の 動 機 付 け に 非
使 用 頻 度 が 高 い に も か か わ ら ず 、約 20% の 使 用 例 を 除
常に有効であったと考えられる。
いては、前置詞や冠詞のエラーがみられ、非常に誤用
52
で き 、モ テ ィ ベ ー シ ョ ン の 維 持 に 貢 献 し て い る と
思 う 。ま た 、匿 名 で は あ り な が ら も 、自 分 の コ メ
ン ト が 先 生 だ け で な く 、他 の 生 徒 に み ら れ る た め 、
あ る 程 度 は 文 法 等 を 意 識 し て 、き ち ん と し た 意 見
や 文 章 を 書 こ う と 思 う の で 、英 語 力 の 向 上 及 び 維
持に貢献していると思う。

授業で扱ったニュース に対する自分の意見をサ
イ ト で 書 い た り す る の は 、モ テ ィ ベ ー シ ョ ン が 常
に高くたもたれてよかったと思います。さらに、
友 達 の 意 見 も 見 る こ と が で き る の で 、自 分 と ど こ
そう思わない
図1
<=== =====>
が 違 う の か を 比 較 す る こ と が で き 、も っ と 頑 張 ろ
そう思う
ブログ形式の意見記述に関する
う と 思 え る 。逆 に 、み ん な に 見 ら れ る た め わ か り
モティベーション の上昇について
や す い 意 見 を 述 べ よ う と し て 、英 語 力 も 上 が る と
思う。
さらに、授業の時事ニュース教材がウェブ上にアッ
4.2. 学 生 フ ィ ー ド バ ッ ク から の 示 唆
プされ、各自が自分のペースで授業の前後に予習や復
習ができ、またブログへのコメントは自分の学習のス
個々の学生の自由回答欄には、様々な教育的効果を
ケジュールに合わせて行うことができる点で、学生の
示唆するコメントがみられた。
英語学習の習慣を形成する点でも効果があった。
時事英語ニュースを教材とすることに関しては、時

事ニュースに対する興味関心が高まった点と、時事ニ
大学に入って受験期よりも英語を読む機会が減
ュースに使用される生の英語や実用的 語彙の学習がで
っ た の で 、毎 週 英 語 の 記 事 を 読 ん で 感 想 を 書 く と
きた点において、授業を好意的に受け止めているコメ
いう習慣がつくという点で意義があった。

ントが多くみられた。

英語を学習する際の教材としてニュースを使用
事ニュースに興味を持つと同時に英語を日ごろ
す る の は 、非 常 に 良 い こ と だ と 思 い ま し た 。世 界
か ら 読 み 書 き す る よ う に な っ た 。と て も あ り が た
の ニ ュ ー ス を 授 業 で 学 ぶ こ と で 、英 語 だ け で な く
い。

海 外 の 国 、人 、文 化 な ど さ ま ざ ま な こ と を 学 べ た

ブ ロ グ を 利 用 す る こ と に よ り 、パ ソ コ ン の 操 作 に
と思います。
慣 れ 、イ ン タ ー ネ ッ ト で ニ ュ ー ス を 見 る 機 会 が 増
時 事 ニ ュ ー ス を 取 り 入 れ た 授 業 に よ っ て 、「 生 き
え ま し た 。ま た 月 曜 日 の 授 業 の 準 備 を す る 必 要 が
た 英 語 」に 触 れ る 機 会 が で き た 点 は 非 常 に 良 か っ
あ り 、い つ も は 英 語 な ど 読 ま な い 週 末 に 英 語 を 読
た と 思 う 。受 験 英 語 で は 決 し て お 目 に か か れ な い
む習慣がつき、勉強をしない日が減った。

ような単語を覚えることができて成長したと思

毎 週 ニ ュ ー ス に コ メ ン ト を す る と い う こ と で 、時
英 語 で ニ ュ ー ス を 読 ん だ り 、自 分 の 意 見 を 述 べ た
う。
りすることはこのような授業で機会がないとな
記 事 が 時 事 ニ ュ ー ス だ っ た の で 、興 味 を 持 っ て 読
か な か や ら な い の で す ご く 勉 強 に な り ま し た 。ニ
む こ と が で き た 。外 国 の 新 聞 に 載 る よ う な 記 事 を
ュースに出てくる単語は普段会話で使わないよ
英 語 で 読 め た の で 、中 学 や 高 校 で や っ て き た 英 単
う な 難 し い 単 語 も 多 く 、ひ と つ ず つ 調 べ て 読 ん で
語よりも実用性が高い単語を勉強できてよかっ
い く と 新 し い 単 語 も 勉 強 で き て よ か っ た で す 。こ
た と 思 う 。も っ と 語 彙 力 を 増 や し て 、英 語 の 記 事
の授業のおかげで海外のニュースに興味 を持ち、
でも簡単に読めるようになりたいと思う。
毎週ニュースを調べてくる宿題のときに海外の
ニュースを英語で見るようになりました。また、
ま た 、 CMC を 用 い た ラ イ テ ィ ン グ に つ い て は 、 匿 名
のブログ形式における意見の交換という点において、
テ レ ビ で も 積 極 的 に BCC や CNN の ニ ュ ー ス を 聞 い
自由な意見の表明だけでなく、より注意して英語を書
て 、聞 き 取 れ な か っ た と こ ろ は 画 面 に 出 る 字 幕 を
く動機付けになっていることが分かる、以下のような
見 て 学 び ま し た 。今 ま で と は 少 し 違 っ た 新 し い 面
コメントがみられた。
か ら 英 語 を 勉 強 で き 、と て も 自 分 の た め に な っ た

1 年だったと思います。
ニュースとブログを使用したライティングの授
学 生 の コ メ ン ト か ら は 、英 語 で ニ ュ ー ス を 読 む こ と も 、
業 で は 、他 の 生 徒 に は 匿 名 で 公 表 さ れ る た め 、他
の生徒からはだれがどのような意 見を持ってい
英語で意見を書くことも、どちらも難しいタスクであ
る か は 分 か ら な い た め 、気 軽 に 本 心 を 書 く こ と が
ったということが示唆されている。しかし、大部分の
53
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学生のコメントから、インターネットを使用した生の
時事ニュース英語学習 は、その難しさと新鮮さ ゆえ、
大学英語教育という場においては、学生の動機付けに
役立ったことが分かった。
5. ま と め と 課 題
CMC を 使 用 し た 大 学 英 語 コ ー ス デ ザ イ ン の 有 用 性
については、タスクを用いた学習者中心のコミュニカ
テ ィ ブ な コ ー ス と し て 評 価 さ れ る と 考 え る 。CMC 上 で
の学生同士のコミュニケーション は、意見の発信や交
換という点において効果的であり、英語学習に対する
動 機 付 け に お い て も 相 乗 効 果 が あ っ た 。CMC コ ー パ ス
を用いた、より実践的な言語学習材料の開発が今後の
大きな課題である。また、 学習者のアンケート自由記
述の中にもみられた意見・要望であるが、各学生の文
法的誤りに対するフィードバックの与え方やコメント
の評価基準の設定 なども検討が必要な 課題である。さ
らに、紙と鉛筆を使用した授業形式を好む学生や、匿
名であっても自分の意見が他の学生に読まれることに
躊 躇 が あ る 学 生 も み ら れ た 点 を ふ ま え 、 SNS や CMC
が学習者の日常生活において実際どの程度普及してい
るのか、またネット上での意見の発信や交換にどのよ
うな問題を感じているのか調査し、各学生のコミュニ
ケーション力向上につながるよう注意深く 英語コース
をデザイン し、指導していくことが必要だ と考える。
文
献
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54
Appendix 1
Using agree or disagree
1
2
Pattern
Notes
I agree.
Short, simple, conversational
Use “with” when you share the same
opinion
Be specific – use the/this / ‘s AND
idea / comment / suggestion / policy etc.
I agree with someone.
3
I agree with the / this / ’s
something.
4
I agree with the / this / ‘s
something that [S] [V] [O]
5
I agree with someone when he/she says that [S] [V] [O]
Connect the clause with “that”
Detail which part you agree with
Building sentences with agree or disagree.
Obama: “Gay people have the right to get married”.
1
I agree.
2
I agree with Obama.
3
I agree with Obama’s idea.
4
I agree with the idea that gay people have the right to get married.
5
I agree with Obama when he says that gay people have the right to get married.
Cathy: “Plast ic surgery is an unnecessary medical procedure”.
1
2
3
4
5
Yuta: “I think North Korea is not as dangerous as we think”.
1
2
3
4
5
Saori: “Japan should close down all nuclear power stations permanent ly”.
1
2
3
4
5
55
Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the English Language Education Society of Japan
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
日本語の会話ジョークにおけるリスナーシップ1
難波 彩子
岡山大学言語教育センター
〒700-8530 岡山市北区津島中 2-1-1
E-mail: [email protected]
あらまし 一般的に日本人は公共の場であまりジョークを交えた発言や会話をすることが少ないと言われるこ
とが多い.しかしながら,親しい間柄での会話などでジョークのやりとりを積極的に行うことが報告されており
(Takekuro, 2006; Oshima, 2013),実際に日本人がジョークのやりとりを行わない訳ではない.一方で,会話ジョー
ク(Boxer and Cortés-Conde, 1997)が実際の自然会話の中でどのように起こり,会話の共同構築に向けた聞き手の貢
献,
「リスナーシップ」と関わり,そして会話参加者同士の関係を深めていくことにつながるのかについて,より詳
細な調査を行う必要がある.こうした背景にもとづいて,本稿では親しい間柄の会話として家族会話に焦点を置き
ながら,家族会話における会話ジョークでのリスナーシップの役割を検討し,会話ジョークとリスナーシップの関
係性,そしてそれらと家族関係とのつながりに結びつくような機能について考察する.最後に,分析結果を踏まえ
ながら,会話ジョークに関わる英語教育への示唆を行う.
キーワード 会話ジョーク,リスナーシップ,日本語インタラクション,家族関係,笑い
Listenership in Japanese conversational jokes
Ayako NAMBA
Language Education Center, Okayama University
2-1-1, Tsushima Naka, Kita-ku, Okayama City, 700-8530 Japan
E-mail: [email protected]
Abstract There have been enigmatic views about whether Japanese people really exchange jokes in their interaction, as it
is said that they rarely use them in public situations. However, they do exchange jokes in in-group relationships as a previous
study on discourse analysis revealed (Takekuro, 2006). On the other hand, there is still room to examine more details on
exactly how ‘conversational jokes’ (Boxer and Cortés-Conde, 1997) occur in Japanese real interaction, relate to listenership,
and lead to corroborate in-group relationships. This paper aims to explore the role of listenership in conversational jokes by
focusing on interactions between in-group members such as family members. I will examine a relationship between
conversational jokes and listenership, and the communicative functions to build family relationships. I will lastly touch upon
some implications on how the findings could be applied to English-language education.
Keyword conversational jokes, listenership, Japanese interaction, family relationship, laughter
1
本研究は,2012年度より科学研究費補助金研究活動スタート支援: 課題番号 24820029 『通文化的語用論におけるリスナーシ
ップの研究』の助成を受けている.
難波 彩子, “日本語の会話ジョークにおけるリスナーシップ ,”
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集, pp. 57-62, 日本英語教育学会編集委員会編集, 早稲田大学情報教育研究所発行, 2014 年 3 月 31 日.
This proceedings compilation published by the Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda University.
Copyright © 2014 by Ayako Namba All rights reserved.
1. は じ め に
3. 笑 い
聞 き 手 の 応 答 形 式 は ,言 葉 を 伴 う も の( verbal feature)
日 本 人 は 公 共 の 場 で ジョークのや りとりを 行 うことが英 語
と 伴 わ な い も の ( non-verbal feature) な ど 様 々 な 形 式
話 者 に比 べて少 ないと指 摘 される.それでは,日 本 人 はジョ
によってなされる .会話における聞き手の応答形式と
ークやユーモアを交 えたやりとりを行 うことは本 当 に少 ないの
し て は , “Mm hm” な ど , 話 し 手 が 話 題 を 展 開 し て い
だろうか.そしてユーモアに対 する理 解 はあまりみられないの
くのを受け身的に受け止め ,その相手に発話を続ける
だろうか.このよ うな疑 問 に対 して ,特 に 談 話 分 析 に関 する
こ と を 促 す よ う な サ イ ン (continuer) , “Mm,” “Yeah,”
先 行 研 究 では(Takekuro, 2006; Oshima, 2013),日 本 人 が
な ど , 話 し 手 の 発 言 を 了 承 す る サ イ ン
親 しい間 柄 では積 極 的 にジョークやユーモアを交 えたやりと
( acknowledgement )を は じ め と す る 言 葉 を 伴 う 応 答 形
りを行 うことを報 告 している.一 方 で,日 本 語 の 自 然 会 話 を
式やうなずきなどの非言語形式によるものも含まれる .
扱 った会 話 ジョークに関 する実 証 的 な分 析 と,さらに会 話 参
さらに,この言語と非言語は 3 種類に細分化するこ
加 者 同 士 の関 係 性 ,特 に会 話 の共 同 構 築 に向 けた聞 き手
と が 可 能 で あ る . Laver and Hutchenson (1972) で は ,
の貢 献 ,「リスナーシップ」に焦 点 を当 てた研 究 は まだあまり
言 葉 を 伴 う も の( verbal)と 伴 わ な い も の( non-verbal)
と ,有 声( vocal)と 無 声( non-vocal)に よ る も の の 区
なされていない.本 稿 では,このような背 景 から,親 しい間 柄
別を取り入れながら,有声で言葉を伴うもの
の会 話 に着 目 し,収 集 した 9 家 族 の会 話 データのうち,3 家
( vocal/verbal feature ), 無 声 で 言 葉 を 伴 わ な い も の
族 の 会 話 を 分 析 対 象 とし て ,会 話 ジョ ー クと リス ナー シップ
( non-vocal/non-verbal feature),有 声 で 言 葉 を 伴 わ な い
の関 係 性 ,そしてそれらと家 族 関 係 とのつながりに結 びつく
も の ( vocal/non-verbal feature), の 3 種 類 の 特 性 を 提
ような機 能 に つ いて考 察 す る .最 後 に ,分 析 結 果 を踏 まえ
示している .例えば,有声で言葉を伴うものには,上
ながら,会 話 ジョークに関 わる英 語 教 育 への示 唆 を行 う.
記で触れたような ,話し手に話題を継続するように促
す サ イ ン ( continuer) や 話 し 手 の 発 言 を 了 承 す る サ イ
ン( acknowledgement)が 含 ま れ る .ま た ,無 声 で 言 葉
2. リ ス ナ ー シ ッ プ
近年の談話研究では ,スピーチ・アクトなど話し手
を 伴 わ な い も の ( non-vocal/non-verbal feature) に は ,
主体の研究から徐々に会話における聞き手行動の詳細
うなずきやスマイル,ジェスチャーなどが該当する.
に関する研究も着目されるようになってきた
本稿で扱う笑いは ,有声ではあるが言葉は伴わないも
( Goffman, 1981; Gardner, 2001; Tannen, 1989). Tannen
の ( vocal/non-verbal feature) と し て 捉 え ら れ る .
(1989: 100)が 「 聞 き 手 に よ る 話 し 手 の 話 を 聞 い た り ,
次に,インタラクション におけるリスナーシップと
その相手を理解する活動は ,受動的ではなく能動的で
笑いの関連性を見いだすために,会話の中で笑いはど
る た め 対 話 的 な 行 為 で あ る .」と 述 べ て い る よ う に ,聞
のように構造化されているのかを話し手と聞き手との
き手がどのように 実際に会話の中で大きな役割を果た
間のやりとりを通して詳細にみることが可能である.
しているのかについて ,特に積極的な聞き手の反応が
そ の 基 本 構 造 と し て , Jefferson( 1979) は , 話 し 手 の
見られるような言語的な特徴(例えば ,相づちや繰り
笑いにもとづいて ,他の会 話参加者による笑いが生じ
返 し な ど )に 注 目 し た 研 究 な ど が な さ れ て い る( Tannen,
るシークエンス(会話の流れ)に注目し,特に話し手
1989). Goffman (1981)に よ る と , 聞 き 手 は ,( 1) 立 ち
に よ る こ の よ う な 行 為 を 誘 い ( invitation) と 名 付 け て
聞 き す る 人 ,( 2) 是 認 さ れ て い る が 話 し 手 か ら は 注 意
いる.ただし,この誘いは ,笑いを伴う場合と伴わな
を 向 け ら れ な い 人 ,( 3) 是 認 も さ れ , 注 意 も 向 け ら れ
い 場 合 の 両 方 が あ る ( Glenn, 2003 ). 笑 い を 伴 わ な い
ている人の 3 種類から成り立つという .本研究では食
場 合 , 話 し 手 の 発 話 内 に 可 笑 し さ ( laughable) が 含 ま
事中での家族の会話を 検討するため,食事に参加して
れ,その要素に対して聞き手が笑う場合がある .この
いる家族メンバーは是認もされ,注意も向けられてい
ような場合も聞き手の笑いにつながる誘いとして考え
ると考えられる.従って本研究で 対象とする聞き手は
られる.従って可笑しさと笑いの両方 ,またはどちら
3 番目のタイプに なる.これらの視点にもとづいて,
か に よ っ て 話 し 手 の 誘 い は 行 わ れ る こ と に な る( Glenn,
本稿ではリスナーシップを,
「会話の相互産出の中で見
2003: 54).可 笑 し さ は あ ら か じ め 会 話 の 中 で 必 然 的 に
出 さ れ る ,話 し 手 に よ り 承 認 さ れ ,注 意 を 向 け ら れ た ,
見られるものではなく ,むしろ笑いを通して会話参加
言葉を発してはいないが,会話に参加している者の貢
者のやりとりの中で交渉され,創造されていく特質が
献 」( Namba, 2011) と 定 義 す る .
あると言える.一方,このような話し手の誘いに対し
て,聞き手が笑って応じる場合は,聞き手の受諾
( acceptance)と し て 捉 え ら れ る( Jefferson, 1979).聞
き手の受諾笑いが成立するには,聞き手の笑いは直前
58
て,ジョーク,自虐,からかい,の 3 種類を会話ジョ
ー ク に 含 め て い る .3 一 方 , 日 本 語 の 会 話 ジ ョ ー ク の
種類は,まだ詳細に明らかにされていない .
本稿では上記の先行研究の研究成果を踏まえ ながら,
さらに親しい間柄の自然会話に着目し ,日本語の会話
ジョークの詳細と ,リスナーシップの役割との関係性
を探る.
の話し手のターンにあまり遅れず起こることが主な条
件となり,話し手のターンの後にしばらくポーズが生
じるような時は,聞き手の応答は遅れたものと捉えら
れ,双方のやりとりに何らかのコミュニケーション上
の問題が起きているというシグナルになる .さらに,
聞き手は常に話し手の誘いに対して受諾笑いとして応
じるわけではなく,笑いでは応じないような断り
( declination ) が 見 ら れ る こ と も あ る . こ の 断 り が 成
5. デ ー タ
立するためには,話し手の直前のターンからポーズな
上記で述べた とおり,親しい間柄の自然会話に焦点
を置くために,本研究では日本人の 3 家族の日常会話
180 分 を オ ー デ ィ オ レ コ ー ダ ー で 収 録 し た も の を デ ー
タとして用いる.データの詳細として ,3 家族共,岡
山 県 に 在 住 で , 家 族 構 成 は , 父 , 母 , 子 供 1~3 人 で あ
る .両 親 の 年 齢 層 は 30~40 代 で ,子 供 の 年 齢 層 は 1~12
歳の男女が含まれている.会話は,朝食,昼食,夕食
い ず れ か に よ る 家 族 の 食 卓 の 会 話 を ,3 日 か ら 5 日 間 ,
各家族の母親にオーディオレコーダーで録音するよう
依頼した.
どを伴って遅れたり,聞き手の言いよどみが見られた
りすることによって,会話の流れにギャップが起こる
ことが目安となる .
4. 会 話 ジ ョ ー ク
日本人のコミュニケーションについて触れられる場
合,日本人はユーモアのセンスがない と頻繁に指摘さ
れる.それでは日本人はユーモアのある会話やジョー
クを交わしたりすることはないのだろうか .このよう
な問いに対して,日本語を扱った 談話分析の先行研究
で は ( Takekuro, 2006; Oshima, 2013), 日 本 人 と 欧 米 人
におけるユーモアやジョークの捉え方の違いに注目を
しながら明らかにしている .
Takekuro (2006)で は ,日 英 語 の ド ラ マ で み ら れ る「 会
話 ジ ョ ー ク 」2 を 収 集 し ,英 語 で は 家 族 や 友 人 な ど 親 し
い間柄だけではなく,疎遠な関係同士でも会話ジョー
クのやりとりが行われるのに対して,日本語では主に
親しい間柄で交わされることが報告されている .この
日本語インタラクションにおける親疎関係については,
家 族 や 友 人 関 係 な ど 比 較 的 親 し い 間 柄 は「 ウ チ 」,会 社
の同僚や近所の人,仕事上でつきあいのある人などは
「 ソ ト 」,そ の 他 あ ま り 接 触 の な い 人 は「 ヨ ソ 」と 認 識
さ れ る( 三 宅 ,1994; Lebra, 1976; Yamada, 1997).自 己
と他人に対する意識はこれらの区別に従いながら日本
人のコミュニケーションは行われるが,英語コミュニ
ケーションではこうした区別は曖昧に捉えられる(三
宅 ,1994; Takekuro, 2006).こ う し た 日 英 語 の コ ミ ュ ニ
ケーションの違いは,会話ジョークにも関連し, 日本
語インタラクションでは,ジョークは疎遠の間柄,い
わゆる「ソト」の関係ではあまり用いられないが,家
族など「ウチ」の間柄では用いられる ことが指摘され
て い る( Takekuro, 2006).さ ら に ,Oshima (2013) で は ,
日本人による「面白い話」をウェブ上で募るプロジェ
クトを実施し,上記の点について同様に述べている.
これらの先行研究を踏まえると ,日本語の会話ジョ
ークに関わる談話分析は徐々に進められてきている も
のの,実際の自然会話を扱った上での 会話ジョークの
詳細を取り入れた研究はまだほとんどなされていない .
ま た ,「 会 話 ジ ョ ー ク 」( conversational joke) は , 主
に 英 語 に よ る 分 析 に も と づ い て い る . Boxer and
Cortés-Conde (1997)で は , 英 語 の 会 話 ジ ョ ー ク に つ い
6. 分 析
上記の会話データから,3 種類の会話ジョークが用
いられている箇所(ジョーク・からかい・自虐)を取
り出し,その中で聞き手行動がどのように機能してい
るのかを検討する .
6.1 ジ ョ ー ク
会話ジョークの1種類目にあたるジョークについて
検討する.
次の会話例では,父親が子供 K に対して,
K の好きなカルピスを野菜にかけるドレッシングにし
てはどうかというジョークを投げかけている.
(1)
1 母「あぁ,そうじゃ,野菜がある ,野菜食べてな
い.野菜食べて」
2 K「ん~…」
3 母「何が良い?かけるの」
4 父「カルピス? 」4
5 K「ふふっふふふ」
6 母「カルピスは ,いけん」
7 K「ふふふ」
8 父「ふっふっふっふ 」
9 K「ごま」
10 父 「 ご ま カ ル ピ ス ? ふ ふ ふ 」
11 K 「 ご ま ご ま カ ル ピ ス … … … ゴ マ だ れ … 」
12 父 「 ん ? ゴ マ ど れ ? 」
13 K「 ゴ マ だ れ … ん ふ ふ ふ ふ ,ゴ マ ド レ ッ シ ン グ 」
2
会 話 ジ ョ ー ク と は ,「 愉 快 な 笑 い を 引 き 起 こ す た
めに会話参加者がユーモラスで皮肉的 ,そしてウィッ
トに富んだものを即興的に創造する,衝動的な言語行
動 」( Takekuro, 2006: 86) と 定 義 さ れ る .
3
その他,英語会話におけるジョークの研究につい
て は , Norrick (1993), Chafe (2007) を 参 照 さ れ た い .
4
灰色のハイライトは笑いが起こった箇所を示して
いる.
59
れ る .次 の 会 話 例 で は ,息 子 S が 母 親 に サ ラ ダ を 食 べ
る よ う 勧 め ら れ て い る と こ ろ で ,父 親 は S を か ら か い
始める.
K に野菜を食べるように促すために,母親がその野菜
に か け る ド レ ッ シ ン グ を K に 聞 い て い る ( 3 行 目 ). K
が答える前に,父親が K の好きなカルピスを笑いなが
ら ジ ョ ー ク で 投 げ か け ( 4 行 目 ), K も カ ル ピ ス が 好 き
な た め 笑 い な が ら 父 親 に 応 じ て い る( 5 行 目 ).さ ら に
父親は,
「 ご ま ド レ ッ シ ン グ 」を「 ご ま カ ル ピ ス 」に 変
え て 投 げ か け( 10 行 目 ),K も 繰 り 返 し な が ら 笑 い で 応
じ て い る ( 11 行 目 ). 子 供 の 好 き な も の を 知 っ た 上 で
の父親のジョークに対して ,聞き手の子供も笑いで応
じやすく,2 人の共同的な会話が構築されている.さ
らに,これらのジョークのやりとりから子供は野菜を
自主的に食べるようなスムーズな流れも生じているこ
とが分かる .
次の例では,父親が息子 K にご飯を食べるよう奨
励している場面で ,息子に向かって肯定的なジョーク
を何度も繰り返すことで,聞き手の息子からの笑いを
引き出しながら,息子の食事を進めている .
( 3)
1 母「サラダも食べてよ,サラダ」
2 S「なんで」
3 父「これこれこれこれこれこれ」
4 S「これこれこれ…これこれこれ」
5 母「何?それマネ?」
6 S「んふふふ… 」
7 父「ふふふふ」
8 母「今日は久しぶりに母さん料理したなぁ」
9 父「うん」
母 親 か ら サ ラ ダ を 食 べ る こ と を 促 さ れ( 1 行 目 ),あ ま
(2)
1 父「お父さんにも一口アーンさせてーや」
り 乗 る 気 で は な い S に 対 し て( 2 行 目 ),父 親 は「 こ れ
これ」と何度も繰り返して S をからかい,サラダを食
2 K「嫌」
べ る よ う 促 す( 3 行 目 ).聞 き 手 の S も 父 親 の か ら か い
3 父「お父さんコウタ好きなんじゃけんな」
をそのまま繰り返して真似しながら同調 している(4
4 K「んふふ…」
行 目 ).こ う し た や り と り を 通 し て ,最 終 的 に は お 互 い
5 父「もう ,お願い.お願い.だってこーちゃんが
に笑いを共有しながら会話の共同構築を行っているこ
次おっ きい アーン する 顔見 てぇも ん . ほら,
と が 分 か る ( 6〜 7 行 目 ). 息 子 は 父 親 と の か ら か い に
アーンして」
繰り返しや笑いで同乗する様子から,あまり気が乗ら
6 K「んふふ…んふふふ… 」
ない食べ物を目の前にしながら肯定的な反応を示して
7 父「んーもう…」
いるように考えられる .
8 K「ふふふふ,ふふふふ 」
9 父「服の上零れるで」
6.3 自 虐
10 K 「 ふ ふ ふ 」
会話ジョークの 3 種類目として自虐がある .次の会
11 父 「 も う お 父 さ ん に ア ー ン さ し て 」
12 母 「 ほ ら , あ ー ん し て , こ ー ち ゃ ん 」
話 例 で は ,両 親 と 娘 B が 先 日 開 か れ た 運 動 会 に つ い て
13 K 「 ふ ふ ふ 」
話をしている場面で,母親が来年の運動会で,親子で
リレーに呼ばれたらぜひ出たいという意気込みを述べ ,
父親は K に対する肯定的な愛情を表現することで K の
自虐的なジョークを交えながら会話をしている場面 で
口 を 開 け さ せ よ う と し( 1 行 目 ),K は 父 親 に 笑 い で 応
ある.
じ は じ め る( 4 行 目 ).さ ら に K の 口 を 開 け さ せ る た め
( 4)
に ,父 親 は 少 し 大 げ さ に「 ア ー ン し て 」
(口を大きく開
1 母 「 よ し ,( 不 明 瞭 ) そ う す る わ . … … で , 二 人
ける)と繰り返しながら,K の大きな口の「アーン」
が見たいと肯定的なジョークを盛り込んで K を奨励し
と も 呼 ば れ ん か っ た ら 笑 え る よ な ,は は は は
て い る( 5 行 目 ).こ れ に 対 し て K は 笑 い な が ら 応 じ( 6
っ」
〜 10 行 目 ), 更 な る 父 親 の 「 ア ー ン 」 と 母 親 の 繰 り 返
2 B「ははははっはは 」
し に 笑 い で 応 じ な が ら ( 13 行 目 ), 会 話 の 共 同 構 築 が
3 父「ふふふふふふ」
行われている.積極的で肯定的な父親のジョークを用
4 B「勝手な思い込みで,ひっ」
いた働きかけを通して,聞き手の息子が笑いながら
5 母「はくなや」
徐々に応じていく様子が分かり,円滑に目の前の子供
6 B「ふふふっふふ」
の食事を進めることにつながっている .
7 母「勝手に親が思い込みで言う ,一年後の話をし
よるけど」
8 父「 お 母 さ ん い え ば ,そ れ ぐ ら い の 意 気 込 み で な 」
6.2 か ら か い
ジ ョ ー ク に 加 え て ,か ら か い も 会 話 ジ ョ ー ク に 含 ま
60
母親は来年の運動会で娘と自分がリレーに呼ばれたら
に話し手である娘の発言に可笑しさを見いだし ,笑い
2 人とも参加する意気込み を述べるが ,当然リレーに
ながら会話の共同構築を創造していく 様子が分かる.
呼ばれると想定していたにも関わらず呼ばれなかった
リスナーシップが高く示されることで ,話し手との関
場 合 に つ い て も ,自 虐 的 に 想 定 し な が ら 笑 っ て い る( 1
係もこのようなやりとりを通して肯定的に進められる
行 目 ).こ の 母 親 の 自 虐 的 な ジ ョ ー ク に 対 し て ,聞 き 手
と考えられる.
の 父 親 と 娘 が 笑 い な が ら 応 じ て い る ( 2〜 6 行 目 ). さ
ら に ,母 親 は 1 年 後 に つ い て の 意 気 込 み を「 思 い 込 み 」
7. 英 語 教 育 へ の 示 唆
と し て 自 虐 的 に 捉 え な が ら 笑 っ て い る( 7 行 目 ).こ の
前述の通り,一般的に日本人は公共の場ではあまり
例から,母親の自虐的なジョークに対して ,聞き手で
ジョークを言うことが少ないと頻繁に言われることを
ある家族メンバーもその自虐に肯定的に捉えて笑いな
述べてきた .同様に,大学の英語の授業などでは,日
が ら 応 じ ,会 話 の 共 同 構 築 を 行 っ て い る こ と が 分 か る .
本人教師と 学習者の双方がジョークを交えたやりとり
を行うことは実際あまり頻繁にみ られることではない .
6.4 積 極 的 な リ ス ナ ー シ ップ
しかしながら,本稿で検討したような ,家族などの比
上記で検討してきた会話例は,すべて話し手である
較的親しい ウチの関係 では,会話ジョークが食卓の会
両親側が主体的に会話ジョークを取り入れて子供やパ
話の中で主体的に用いられ ,家族間の円滑な会話の共
ートナーに働きかけ,それに対し て聞き手側も積極的
同構築に役割を果たしていることが分かる .つまり,
に笑いで応じている例を見てきた .次の会話例では,
日本人は私的な会話のやり取りの状況(ウチ)と ,大
上記の例とは異なり,聞き手側から主体的に話し手の
学の授業等 ,公共の場でのやりとりの状況(ソト)を
発言の中に 笑いながら ジョークを見いだし ,会話の共
区別して捉えているが ,このような区別の意識が,英
同 構 築 が な さ れ た 例 を 検 討 す る .娘 の C が 理 科 の 問 題
語の授業内でもジョークのやりとりが比較的み られな
を 家 族 に 投 げ か け ( 1 行 目 ), 家 族 が 回 答 す る ( 3〜 4
いことを説明する可能性があり,この詳細については
行 目 ). 家 族 の 回 答 に 対 す る C の 発 言 に ( 5 行 目 ), 聞
今後の課題としたい.
き手である母が主体的にジョークとして見いだし ,積
大学の授業で教員と学生間でジョークのやりとり
極 的 な リ ス ナ ー シ ッ プ を 示 し て い る ( 6 行 目 ).
が必要であるかどうかについては,授業の形態や専門
に よ っ て 意 見 は 分 か れ る か も し れ な い .し か し な が ら ,
( 5)
少なくとも英語の授業内では,ジョークのやりとりが
1 C「石灰水アンモニア水アルコールがあります .
あることは有益であると筆者は考える.授業中にジョ
石灰水 アン モニア 水ア ルコ ールが あり ます .
ークを扱うには,上記で議論を重ねてきた ような,会
その中で個体が溶けているものはなんでし
話中に会話参加者間で即興的に創造される会話ジョー
ょう」
クと英語教員が授業の題材として扱うジョーク の二つ
2 C「石灰水…」
の可能性が ある.筆者は両者とも英語の講義について
3 父「石灰水じゃ」
は有益であると考える.前者の会話ジョークでは,教
4 母「石灰水」
員が日本人の場合と英語母国語話者の場合ではジョー
5 C「正解!次」
クの頻度は異なり,英語母国語話者の方が多いと予想
6 母「ははっ今ギャグねろた?」
されるが,どちらの場合においても教師と学生間で会
7 C「へ,なんで?」
話ジョークのやりとりがあることで,学生が抱く英語
----
学習に対する苦手意識や緊張が軽減され,リラックス
14 C 「 正 解 っ て 言 っ た . は は は っ , 母 さ ん . う ち
して肯定的に英語学習に臨むことが可能であるためで
が 笑 っ て ほ し い 時 に 笑 わ ず に さ ,う ち が と ん
あ る .5
でもないとこで気付かんかった時に笑うか
教員の講義を聞きながら英語に関する知識や教養を身
ら面白いわ 」
につけていくことだけではなく,英語による実践的な
15 B 「 な に そ れ ー っ ? ! 」
対話力を養うことにつながるような授業作りが求めら
特に近年日本の大学における英語授業では,
れている. 教員と学生による会話ジョークのやりとり
母 親 は C が 「 正 解 」 (5 行 目 )を 「 石 灰 」 と 掛 け 合 わ せ
があることは,学生が気負うことなく対話を重ねるこ
て ギ ャ グ と し て 捉 え( 6 行 目 ),笑 っ て 応 じ る .C は そ
のような思惑はなかったのだが,母親が主体的に可笑
5
授業中に会話ジョークのやりとりがあることと,
学習の持つ英語学習に対する苦手意識や緊張の緩和に
ついての関係性については,今後詳細な調査が必要と
される.
しさを見いだしたことに笑いながらさらに応じている
( 14 行 目 ). こ の 例 か ら , 聞 き 手 で あ る 母 親 が 主 体 的
61
との楽しさも実感し,対話を重ねていくことに対する
筆者は大学の英語授業において有益であると考える.
Pennsylvania Press, Philadelphia, 1981.
[4] Gardner, Rod, When listeners talk, John Benjamins,
Amsterdam, 2001.
[5]Tannen, Deborah, Talking voices: Repetition, dialogue,
and imagery in conversational discourse, Cambridge
University Press, Cambridge, 1989.
英語を話す文化ではジョークに親しみ,理解を示すこ
[6] Namba, Ayako, Listenership in Japanese interaction:
とが円滑な人間関係作りに不可欠であると言われる.
The contributions of laughter, Doctoral dissertation, The
国際社会で日本人が生き抜き,活躍していくためには
University of Edinburgh, 2011.
ジョークに対する理解 や柔軟な対応も重要となるだろ
[7] Laver, John and Sandy Hutchenson, Introduction, In
う.また,ジョークはそれぞれの文化的な要素も大き
John Laver and Sandy Hutchenson (eds.), Communication
く関わるため,授業の題材としてジョークを扱うこと
in face to face interaction, Penguin Books, Middlesex,
で英語文化におけるジョークの多様性 について も学生
11-17, 1972.
は理解を深めることが期待される.そのような取り組
[8] Jefferson, Gail, A technique for inviting laughter and
みを重ねることで,即興的に創造される会話ジョーク
its subsequent acceptance/declination, In George Psathas
にも,同時に柔軟に対応していく ことにつながる可能
(ed.), Everyday language: Studies in ethnomethdology,
性がある.
Irvington, New York, 66-79, 1979.
積極的な姿勢も身につけることに結びついていくと考
えられる.
後者の授業の題材としてのジョークを扱うことも,
[9] Glenn, Phillip, Laughter in interaction. Cambridge
University Press, Cambridge, 2003.
8. お わ り に
本稿では ,家族会話でみ られる 3 種類の会話ジョー
[10] 三 宅 和 子 ,「 日 本 人 の 言 語 行 動 パ タ ー ン : ウ チ ・
クを扱いながら,会話ジョークとリスナーシップの関
ソ ト・ヨ ソ 意 識 」,筑 波 大 学 留 学 生 セ ン タ ー 日 本 語 教 育
係を検討してきた .会話例として ,話し手が積極的に
論 集 9, 29-39, 1994.
聞き手に働きかけ ,その働きかけに聞き手も主体的に
[11] Lebra, Takie, 1976, Japanese patterns of behavior,
笑いながら応じて会話の共同構築を行う例と,聞き手
University of Hawaii Press, Honolulu, 1976.
の方が主体的に話し手の発言の中にジョークを見いだ
[12] Yamada, Haru, Different games, different rules,
し,笑いながら話し手と会話の共同構築を行う例を示
Oxford University Press, Oxford, 1997.
した.話し手の会話ジョークに対して聞き手が積極的
[13] Boxer, Diana and Florence Cortés-Conde, From
に関わることを笑いで示すことで ,家族の食卓での会
bonding to biting: Conversation al joking and identity
話を円滑に運ばせることに役割を果たしていると同時
display, Journal of Pragmatics 27: 275-294, 1997.
に,間接的に子供に食事を進めることを肯定的に働き
[14] Norrick, Neal, Conversational joking: Humor in
かけることが可能となり,こうした働きかけに聞き手
everyday talk, Indiana University Press, Bloomington,
側の子供も主体的に応じることで ,会話と食を楽しむ
1993.
様子が垣間みられる.最後に,英語教育への示唆とし
[15] Chafe, Wallace, The importance of nor being earnest ,
て,英語授業における日本人学習者の会話ジョークに
John Benjamins, Amsterdam, 2007.
対する捉え方や会話ジョークを授業で扱う重要性につ
いて触れた .本稿は収集したデータの一部から取り上
げた分析にもとづくため,今後さらに会話ジョークと
リスナーシップの関係性の詳細をより深く探る必要性
がある.
文献
[1] Takekuro, Makiko, Conversational jokes in Japanese
and English. In Jessica Miller Davis (ed.), Understanding
humor in Japan, Wa yne State University Press, Detroit,
Michigan, 85-98, 2006.
[2] Oshima, Kimie, An examinati on for style of Japanese
humor:
Japan’s
funniest
stor y
project
2010 -2011.
Intercultural Communication Studies 22 (2), 91-109, 2013.
[3] Goffman, Erving,
Forms of talk. University of
62
Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the English Language Education Society of Japan
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
小・中英語教育の接続と連携の試み
―小・中学校で活用できる共通教材の試作と試用―
西垣 知佳子 1
1 千葉大学教育学部
山下 美峰 2
田村 敦 4
〒263-8522 千葉県千葉市稲毛区弥生町 1-33
2 浦安市立浦安中学校
3 大網白里市立大網中学校
4 浦安市立舞浜小学校
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高橋 直美 3
〒279-0003 千葉県浦安市海楽 2-36-1
〒299-3242 千葉県大網白里市金谷郷 275
〒279-0031 千葉県浦安市舞浜 2-1-1
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概要
新学習指導要領のもと,必履修の領域として「外国語活動」が導入され,以前にもまして英語教育の小中
連携が強く望まれるようになった。本研究では「聞く」活動に重きを置きながら,小学生から中学生まで学年や英
語力のレベルに合わせて継続して活用できる教材を目指して小・中英語共通教材を作成した。教材は「浦安ふるさ
とカルタ」
「都道府県カルタ」と名付けた。小学 5,6 年生と中学 1 年生に試用実践を行い共通教材の利用をとおし
て小・中の接続が可能かどうかを検証した。プリ・ポストテストと質問紙調査を使って試用効果を検証したところ,
技能と態度の両面において効果が確認された。試用実践の結果,開発した教材が異なる学年で利用できること,共
通教材を利用して小中連携が可能であることが示唆された。今回の成果を踏まえて,本教材をさらに充実させたい
と考える。
Links and Connections in English Education
between Elementary School and Junior High School
Using Common Material
Chikako Nishigaki 1
Mihou Yamashiata 2
Naomi Takahashi 3 and
1 Faculty
Tamura Atushi4
of Education, Chiba University 1-33 Yayoi-cho, Inage-ku, Chiba-shi, Chiba 263-8522 Japan
Junior High School 2-36-1 Kairaku, Urayasu-shi, Chiba 279-0003 Japan
2 Urayasu
3
Oami Junior High School
4 Maihama
275 Kanayago, Oamishirasato, Chiba 299-3242 Japan
Elementary School
2-1-1 Maiham, Urayasu-shi, Chiba 279-0031 Japan
With the start of “Foreign Language Activities” at elementary school, links and connections in English education
between elementary school and junior high school are strongly needed. In this study, we adapted ‘karuta,’ a traditional
Japanese card game, for English classes, and developed English learning material by using it. The developed materials
are called Hometown Karuta and Prefectural Karuta. They can be used in classes repeatedly in a variety of different
西垣 知佳子, 山下 美峰, 高橋 直美, 田村 敦, “小・中英語教育の接続と連携の試み―小・中学校で活用できる共通教材の試作と試用― ,”
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集, pp. 63-69, 日本英語教育学会編集委員会編集, 早稲田大学情報教育研究所発行, 2014 年 3 月 31 日.
This proceedings compilation published by the Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda University.
Copyright © 2014 by Chikako Nishigaki, Mihou Yamashiata, Naomi Takahashi and Tamura Atushi. All rights reserved.
ways from elementary school to junior high school to improve students’ English listening ability. The developed
‘karuta’ materials were used for 5th and 6th graders of elementary school, and 7th graders of junior high school.As a
result of this instruction, the improvements between the pre- and post-tests were statistically significant. The results of
questionnaires also revealed that students had enjoyed the ‘karuta’ activities. Thus, we concluded that the developed
‘karuta’ materials could be applied in English classes to connect the English instruction between elementary school and
junior high school
.
1. は じ め に
2)「話 す」「 読む」「 書 く 」活 動へ と 発展 させ ら
れる 教材 と する 。
3) 学 習 者 の 英 語 に 対 す る 情 意 フ ィ ル タ ー
(affective filter)を 下 げる よう な ,楽 し く学
べる 教材 と する 。
4) 学習 者の 知 的関 心に 沿 うよ うな 教材 と す る 。
2008 年 告 示の 現行 の 学習 指導 要 領 で は,全児 童
が必ず履修しなければならない必履修の領域と
して ,小 学校 に 初め て「 外国 語活 動」が 導入 され
た。それに対して文部科学省教科調査官の直山
(2013) [1 ] は 「小 学 校に お ける 新 学習 指 導要 領の
全面 実施 か ら3 年目 の 今,外 国語 活動 に おけ る大
きな 課題 の 一つ は,やは り「 小中 連携 」で す」
( p.14)
[2]
と述 べて い る。ま た 直山( 2011) は,一般 に 小
中連 携に は 情報 交換 ,交 流,カリ キュ ラ ムの 連携
など の形 が ある が ,カ リキ ュ ラム の連 携 を具 体化
する ひと つ の方 法 に ,小中 共 通教 材の 活 用が ある
と述 べて い る 。
一方,「 ベネ ッセ 第 2 回小 学 校英 語に 関 する 基
本調 査」( ベネ ッ セ教 育総 合 研究 所 , 2010) [3 ] に
よる と,小学 校英 語 で「と く に課 題だ と 感じ てい
るこ とは な んで すか 」と いう 質 問に 対し て,教務
主任 (2,374 名 )が 3 つま で 選択 して 回 答し た 結
果で は,
「 教材 の 開発 や準 備 のた めの 時 間(59.0%)」
が第 1 位 で あり,小 学校 英語 で は,教 材 の整 備が
問題 とな っ てい る実 情 がう かが え る。こ のこ とか
ら小 中共 通 で使 える 教 材が あれ ば ,教 育 現場 の 課
題へ の対 応 策に もな る であ ろう と 考え られ る 。
以上 の状 況 を踏 まえ ,本 研究 は ,1) 小 学 校と 中
学校の英語授業で活用できる共通教材を作成す
る, 2) 作 成し た 教材 を実 際 に使 って 小 中学 校で
試用 実践 を 行う , 3) 実践 の 効果 を検 証 し, 作成
教材 が小 中 の接 続・連 携に 活 用で きる か どう かを
検証 する こ と を 目的 と して 行わ れ た。
教材 作成 は What と How の 観 点か ら 考 え る必 要
が あ る 。 上 記 の 留 意 点 を 実 現 す る た め に , What
と How の 観点 か ら実 際に ど のよ うな 工 夫を 施し
て教 材を 作 成し たか ,そ の 手 順に つい て 以下 で 報
告す る。
2.2 How:ど う や っ て 教 え る か
言語 習得 は リス ニン グ から 始ま る こと から ,言
語習得の最初のステップでは音声インプットは
不可 欠で あ る( Dunkel, 1986; 樋 口 ,2010;Krashen &
Terrell, 1983) [4] [5] [6 ] 。そ のた め 外国 語活 動 に は,
音声中心で進められる指導方法と教材開発が必
要で あ ると 言わ れ る ( 岡 ・金 森 , 2012) [7 ] 。 そこ
で ,How には ,「聞 く 」こ と を重 視 し な がら 楽し
く活 動で き る「 カル タ」の方 法を 採 用し た。カル
タの「 絵札 」と「読 札 」を 組 み合 わせ て 利用 する
と ,「 話 す 」「 読 む 」「 書 く 」 活 動 へ と 発 展 さ せ る
こと がで き るの で( 西垣・中 條・オヒ ガン ,2013)
[8]
,中 学校 で はカ ルタ を 4 技 能の 統合 的 な指 導に
活用 でき る 。さら に カル タは ,そ の他 の 様々 な理
由か らも 教 育現 場で の 利用 価値 は 高い 。以下 にカ
ルタ の利 点を 4 つの 観 点か らま と め る 。
(1) 言 語 習 得 の 観 点
◎遊 びを と おし て 自 然 に英 語と 触 れる 。
◎ゲームに参加するために積極的に聞いて理解
しよ うと す る。
◎理 解し た こと を 札 を 取る 等の 行 動で 示す 。
◎絵札があるので,日本語を介さずに学習語の
2. 教 材 作 成
2.1 教 材 作 成 の 留 意 点
次の 観点 を 満た すこ と を目 指し て 作成 した 。
1) 「聞 く」 こ と を 重視 す る。
64
意味 を理 解 でき る。
(2) 心 理 的 な 観 点
◎楽 しい 活 動で ある 。
◎話すことが強要されないので英語を話したが
らな い生 徒 も安 心し て 参加 でき る 。
◎ル ール が 単純 で あ る 。
(3) 教 育 的 な 観 点
◎正しく理解できたかどうかその場で即座に確
認で きる 。
◎絵札と読札を併せて活用すると,4 技能を統
合的 に育 成 する こと が でき る 。
◎絵札と読札を使うと多様な遊び方があり,学
習方 法を 変 えて ,繰 り 返し 活用 で きる 。
(4) 実 用 性 の 観 点
◎軽 くて 持 ち運 び が 便 利で ある 。
◎保 管し や すい 。
◎使 い方 が 容易 であ る 。
して 日本 語 訳と とも に 読札 に載 せ た (図 1)。
「都 道府 県 カル タ 」で は絵 札 に各 都道 府 県の 観
光地 ,特 産 物, お土 産 , 楽 しめ る 場所 に関 する 4
枚の 写真 を 載せ た 。読 札に は その 写真 を 説明 する
ヒン ト文 4 つと ,その 県の 際 立っ た特 徴 に 言 及し
たヒ ント 1 つ の計 5 つ のヒ ン ト文 を入 れ た(図 2)。
rice with clams
food
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
rice with clams
11
12
アサリ飯
I'm a fo o d .
私は食べ物です。
I'm d e lic io u s.
私はおいしいです。
I'm fam o u s in U rayasu.
私は有名です。
I'm h o t.
私は熱いです。
I'm c o o ke d .
私は調理されています。
I'm ric e .
私はごはんです。
I h ave c lam s.
私にはアサリがあります。
I'm a spe c ial fo o d o f U rayasu.
私は浦安名物の食べ物です。
Y o u c an e at m e at S utenpare .
あなたは私を「すてんぱれ」で食べることができます。
F u kag aw a m e shi is m y frie n d .
深川飯は私の友達です。
Y o u ad d soy sau c e a b it w h e n yo u c o o k m e .
私を料理するとき少し醤油を加えます。
Y o u c an e at m e at th e U rayasu F o lk M u seu m .
あなたは私を浦安郷土博物館で食べることができます。
2.3 What: 何 を 教 え る か
図 1 「浦 安 ふる さと カ ルタ 」の 例
バト ラ ー( 2005) [9] は, 外 国語 活 動の 英語 教 授
法を 考え る 上で「 学習 者の 認 知発 達レ ベ ルと 英語
レベ ルの ギ ャッ プ 」に 考慮 す る必 要が あ ると 指摘
している。すなわち児童の英語力に合わせると,
教材 は買 い 物ゲ ーム ,自 分の 好 きな T シ ャツ づく
り等 ,内 容が 幼 稚に なり が ちで ある 。そ こで ,児
童の認知レベルに沿った教材づくりを目指し,
What に は 教 科 横 断 的 な 内 容 を 扱 う こ と と し た 。
その 結果 ,ひ とつ 目 の教 材と し て ,児 童 が住 む千
葉県 浦安 市 が推 進す る「 ふる さ と教 育」と関 連さ
せ て ,「 浦 安 ふ る さ と カ ル タ 」 を 作 成 し た 。 作 成
の際 には , 浦安 市の 児 童が 小学 3,4 年 生で 学ぶ
副読 本等 を 参考 にし た 。そ し て二 つ目 の 教材 には ,
小学 5,6 年生 の 社会 科の 教 科書 等を 参 考に して
「都 道府 県 カル タ」を作 成し た。これ ら の教 材を
とお して 児 童 が 身近 な 語彙 を身 に つけ ,自己 表現
力を 高め る こと に役 立 てた いと 考 えた 。
O k inaw a
17 Okinawa
1. Y o u c an visit S h u rijo c astle .
2 . W e g ro w m an y p in e ap p le s.
3 . Y o u c an b u y S h isa g o o d s.
4 . W e h ave a fam o u s aq u ariu m .
5 . W e h ave m an y U S m ilitary b ase s.
図 2 「都 道 府県 カル タ 」の 例
「浦安ふるさとカルタ」と「都道府県カルタ」
で扱 う英 語 は,小・中 学生 の 語彙 知識 を 超え たレ
ベル にな る が,社 会科 で得 た 背景 知識 に よっ て理
解が 助け ら れる ため ,教材 の 難易 度を 下 げる こと
がで きる 。また 他 教科 の学 習 内容 を英 語 をと おし
て学 び直 し たり ,知識 を深 め たり する こ とが でき
る。
「 浦 安ふ るさ と カル タ」と「都 道府 県 カル タ」
の 両 者 を 併 せ て 使 用 す る こ と で ,「 ふ る さ と 」 か
ら「日 本」へと 思 考を 広げ て 英語 を学 ぶ とい う使
い方 もで き る。
2.4 絵 札 と 読 札
「浦安ふるさとカルタ」と「都道府県カルタ」
に は 絵 札 と 読 札 が あ る 。「 浦 安 ふ る さ と カ ル タ 」
の読 札に は ,ス リ ーヒ ント ゲ ーム で使 え るヒ ント
文を ,英 文 の難 易度 を 変え て 10 個~20 個作 成し
た。例え ば,海に 接す る 浦安 市は ,以 前 は漁 師町
であ った 。そ の ため「 ア サリ 飯」が名 物 であ るの
で , 学 習 語 の ひ と つ と し た 。「 ア サ リ 飯 」 に た い
して ,”I’m a food.” “I’m hot.” “I’m delicious.”
とい う簡 単 なヒ ント か ら ,”You add soy sauce a bit
when you cook me.” と いう 難 しい ヒン ト まで 作成
2.5 カ ル タ を 使 っ た 指 導
小・中学 校を と おし た カ ル タの 継続 的 利用 に関
する 構想 を 図 3 に示 し た。 本教 材 では ,5 年間 を
とお して 音 声指 導を 大 切に する と 同時 に ,小学 校
65
ではアクティビティをとおして学習語に触れて
(導 入),聞い て わか って( 理 解),言 える よう に
す る ( 定 着 )。 さ ら に 絵 札 に 掲 載 し た 綴 り を 利 用
して ,文字 へ の関 心を 高 め ,文 字 指 導 への 移行 を
目指 す( 接 続)。
中学 校の 入 門期 では ,絵 札 のア ルフ ァ ベッ トを
読んだり書いたりして音と文字の関係に気づか
せる 。そ の後 は 文法 項目 の 導入 や 英 語 構文 の 定 着
に利 用す る。例 えば“go to..”の 定着 では “I go to the
folk museum.” “I go to Tokyo Disneyland.”の よ うに
絵札 を使 っ て 表 現の ド リル 練習 を 行う 。上 級学 年
では 絵札 を 見て ,不 定詞 や 関係 代名 詞 等 の ター ゲ
ット 構文 の 練習 を行 う。また ,口 頭,ある いは 書
いて自由にヒント文を作ったり,絵札を見て
picture description をし たり する ( 産出 )。 読札 を
生徒 が読 ん でカ ルタ を すれ ば 読 む 活動 とな る。こ
のよ うに 絵 札と 読札 を 用 い ると ,4 技 能を 使う 多
様な 活動 を 行え るの で 繰り 返し 利 用 が でき る 。
(2) 指導 者 :学 級担 任 が 授 業を 主 導し ,ALT が補
助し た
(3) 学 習 語 : toasted seaweed ( 焼 き 海 苔 ),
three-shrine joint festival ( 三 社 祭 り ), fish
market( 魚市 場 ),sports park( 運 動公 園 ),Tokyo
Disneyland( 東京 ディ ズ ニー ラン ド )等 の 18
語を 指導 し た 。一 人 に 1 セッ トの 絵 札(18 枚 )
を配 布し て 活動 した 。
(4) 活 動: 授 業の 冒頭 の 約 15 分を 使っ て 5 回授
業を 行っ た 。 1 回の 授業 で は, ビン ゴ ,カ ル
タ,スリーヒントゲーム ,カードリレー等,
異なる 2~3 種類 の 活動 を行 っ た。
(5) 評 価 :
①事 前・ 事 後 テ スト
(事 前・ 事 後で 同一 テ スト を使 用 )
a. リス ニ ング テス ト (20 題 )
b. 綴 りの 認識 テ スト (10 題)
②質 問紙 調 査
a. リッ カ ー ト 尺度 (5 件 法 )
b. 自 由筆 記
リス ニン グ テス ト( 20 題 )に は問 1 と問 2 が あ
り, それ ぞ れ に 小問 が 10 題ず つ あっ た。 問 1 で
は”The folk museum is a good place to learn about
Urayasu.” の よ う に , 学 習 語 が 含 ま れ る 英 文 が 流
れて くる の で,選 択肢 の中 か ら 学 習語 に 対応 する
日本 語を 選 んだ 。 問 2 では , 3 つ の英 文 ヒン トを
聞い て, ヒ ン ト が 示 す も の を 選 択 肢 か ら 選 ん だ 。
綴 り の 認 識 テ ス ト で は , ”shrine”と 聞 い て , そ
の綴 りを 選 択肢 から 選 んだ 。絵札 に は 綴 りを 掲載
した が,授業 では 文 字の 学習 を した り,綴り に 注
意を 向け さ せ る 指示 は いっ さい 与 えな かっ た 。綴
りを 絵札 に 載せ て ,自 然と 綴 りに 触れ る 環境 を 創
り出 すこ と で,綴 りの 認識 力 が高 まる か どう かを
検証 した 。
なお,全 ての 音声 は,授業 者 とは 異な る ネイ テ
ィブ スピ ー カー に依 頼 して CD に 録音 し て使 用し
た。
カルタ
小5
小6
中1
中2
中3
音声重視の活動
ビンゴ・カルタ・
スリーヒントゲーム
導入
理解
図3
定着
接続
文字介入の活動
文法,構文の学習
産出
カル タ 使っ た小 中 連携
3. 作 成 し た 教 材 の 試 用 実 践 と 結 果
本節 では ,図 3 の 構想 のも と に作 成し た カル タ
を使って試用実践を行った結果について報告す
る 。「 浦 安 ふ る さ と カ ル タ 」 は , 小 学 校 と 中 学 校
で試 用し ,異な る 学年 の学 習 者 が 同一 の 教材 を使
っ て 学 習 し た 。「 都 道 府 県 カ ル タ 」 で は 小 学 生 の
とき に「 都道 府県 カ ルタ」を 学習 した 中学 1 年生
が,中学 校で 再 び「都 道 府県 カル タ」を 使っ て 学
習し た。
リス ニン グ テス ト 問 1
英語 を聞 い て,英 語の 中に で てく るも の に〇 をつ
けま しょ う 。 (10 題)
例 You can see houseboats on the Edo River.
あさり飯 鉄鋼団地
英語
魚市場
屋形船 郷土博物館 焼きノリ ピアノ
揚げ煎餅 焼きハマグリ 三社祭り
サンドイッチ
運動公園
3.1 実 践 1:「 浦 安 ふ る さ と カ ル タ 」 の
小学校での活用
3.1.1 実 践 の 方 法
(1) 学習 者:千 葉県 浦安 市 A小 学校 5 年生( 31 名)
千葉 県浦 安 市B 小学 校 6 年 生( 36 名 )
66
わから
ない
リス ニン グ テス ト問 2
3 つの ヒン トを 聞 いて ,そ れ が示 す も の に〇 をつ
けて くだ さ い。 (10 題 )
例 I' m famous. Children like me. I have a big castle.
鉄鋼団地 あさり飯
魚市場 ピアノ
東京ディズニーランド 屋形船 スイカ
焼きノリ 揚げ煎餅 運動公園
郷土博物館 焼きハマグリ 三社祭り
続き 調査 を 行 い たい 。
表 2 綴り の 認識 のテ ス ト結 果( 単 位% )
p
学年
項目
事前
事後
上昇
A小5年
M
50.9
69.1
18.2 .00
(31 名 )
( SD ) (34.7) (35.1)
B小6年
M
55.8
72.2
16.4 .00
(36 名 )
(14.0)
(17.8)
( SD )
わから
ない
綴り の認 識 テス ト
英語 を聞 い て,そ の単 語に ○を つ けて くだ さ い。
(10 題 )
例 shrine
market
rice
dan ce
tidelan d
h ou s e
steel
boa t
orange わ か ら
ない
sh r i n e
seaweed
fe s t i va l
museum clam
cr a c k er st a t i on
3.2
実 践 2 :「 浦 安 ふ る さ と カ ル タ 」 の
中学校での活用
3.2.1 実 践 の 方 法
(1) 学習 者 : 千 葉県 浦 安市 C中 学 校 1 年 生
(2 ク ラ ス 67 名)
(2) 指導 者:英 語教 師と ALT ( 英語 教 師 が 中心
とな って 活 動し ALT は補 助 的に 支援 し た )
(3) 学習 語 :小 学校 と 同じ 18 語
(4) 活 動:授業 の 冒頭 の約 15 分を 使 って 5 回 授
業を 行っ た 。ビ ン ゴ ,カ ルタ ,スリ ー ヒン ト
ゲー ム等 の 小学 校と 同 じ 活 動を 行 って ,ア ル
ファ ベッ ト と単 語の 読 み・書き の指 導 をし た。
(5) 評 価 :
①事 前・ 事 後テ スト : アル ファ ベ ット の綴 り
(事 前・ 事 後で 同一 テ スト を使 用 )
問 1( 23 題 )英 語を 聞 いて 文字 を 書き ,次 に
来る 文字 を 推測 して( )に 書き まし ょ う。
例 音 声 G, H, I, J, K, L (
)
解答 用紙
(
)
問 2( 5 題 ) 名前 を聞 い て書 き取 り まし ょう 。
例 McDonald, Write capital M , c, capital D, o,
n, a, l, and d.
②質 問紙 調 査 小学 校 と同 じ質 問 紙を 使っ た 。
3.2.2 結 果 と 考 察
3.1.2 結 果 と 考 察
リス ニン グ テス トの 結 果 を 表 1 に 示し た 。 5 年
生で 42.8 点, 6 年 生 で 46.0 点 の 得点 上昇 があ り,
いず れも 有 意な 上昇 で ,効 果 量は 大(水 本・竹 内,
2010) [10 ] で あ っ た ( t(30)=15.00, p=.00, ⊿ =3.06,
t(35)=14.32, p=.00, ⊿=4.34)。リス ニン グ テス トに
向上 が見 ら れた こと か ら ,
「浦 安 ふる さと カル タ 」
は,外 国語 活動 の リス ニン グ 指導 に有 効 に 利 用で
きる こと が 確認 でき た 。
表 1 リス ニ ング テス ト の結 果 ( 単 位% )
p
学年
項目
事前
事後
上昇
A小5年
M
23.2
66.0
42.8 .00
(31 名 )
( SD ) (14.0) (17.8)
B小6年
M
21.8
67.8
46.0 .00
(36 名 )
( SD ) (10.6) (21.4)
綴り の認 識 テス ト( 表 2)では 5 年 生で 18.2 点 ,
6 年生で 16.4 点 の 得点 上昇 が 見ら れ ,統 計的 に有
意 な 差 で あ っ た ( t(30)=5.50, p= .00, ⊿ =.53 ,
t(35)=5.02, p=.00, ⊿=1.17)。小 5 の効 果 量は 中程
度,小 6 の効 果量 は 大で あっ た。授業 中 に 教 師が
児童の意識を文字に向けさせることはなかった
が,絵 札に 書か れ た 文 字を 自 発的 に 読 ん でい る児
童が 多い こ と,綴 りを 目に す るこ とで 学 習語 を文
字で 確認 し ,そ の 認識 力が 伸 びた こと が その 理由
と考 えら れ る 。活 動の 中で 自 然と 文字 を 目に す る
環境 があ る と,そ の後 の文 字 学習 の準 備 とな るこ
とが 期待 で きる 。ま た ,6 年生 が 5 年 生 より も効
果量 が大 き かっ たこ と は, 6 年 生 のほ う が 5 年生
よりも文字学習に対するレディネスが高いこと
を示 唆し て いる とも 考 えら れる 。こ の点 は,引き
表 3 アル フ ァベ ット の テス ト結 果 (単 位% )
p
学習 者
項目
事前
事後
上昇
M
69.5
80.6
C中1年
11.1 .00
ア組 (33 名 ) ( SD ) (26.0) (21.9)
M
61.3
77.2
C中1年
15.9 .00
イ組 (34 名 ) ( SD ) (24.5) (22.3)
テス トの 結 果 を 表 3 に示 した 。 ア組 は 11.1 点 ,
イ組は 15.9 点 の 得点 上昇 が あ り ,統計 的 に有 意な
差で,効 果量 は中 程 度で あっ た(t(32)=4.28, p=.00,
⊿= .43 : t(33)=6.70, p=.00, ⊿=.48)。こ の こと から
「浦 安ふ る さと カル タ 」が 中学 1 年生 の 入門 期 の
アルファベットの指導に有効に活用できること
が確 認で き た。
67
3.3
は,中学 1 年生 の 入門 期の 指 導 や 文を 書 く指 導に
効果 があ り ,小 中 連携 に利 用 でき る こ と が確 認で
きた 。
実 践 3 :「 都 道 府 県 カ ル タ 」 を
使った指導
3.3.1 実 践 の 方 法
(1) 学習 者 : 千 葉県 大 網白 里市 D 中学校 1 年 生
(2 ク ラ ス 52 名)
この 学習 者 は,小学校 6 年 生の と きに 都道 府
県カ ルタ を 使っ て学 習 した 生徒 で ,中 学校 1
年生 にな っ て再 び同 じ カル タで 学 習し た。
(2) 指導 者: 英 語教 師と ALT(英 語教 師 が中 心と
なっ て活 動 を行 い,ALT は 補助 的に 支 援し た )
(3) 活 動 :1 学 期に 9 回 ,2 学期 に 10 回, 授業
の最 初あ る いは 最後 の 約 10~15 分を 使 って
指導 した 。
①1 学 期 音 と文 字 の 関 係の 指導
②2 学 期 英 語で 文を 書 く指 導。
自分たちでヒント文を作ってスリ
ーヒ ント ゲ ーム を行 っ た
(4) 評 価 :
① 事 前 ・事 後テ ス ト ( 同一 テ スト を使 用 )
1 学期 Q1 (10 題) 英 語を 聞 いて 単語 の 綴り を完
成さ せて く ださ い。 例 “Book!” →
ook
2 学期 Q1 (6 題 ) 英文 を読 ん で意 味を 書 いて くだ
さい 。 例 We grow many strawberries.
Q2 (6 題 ) 都道 府県 を 紹介 する 英文 を 3 文
ずつ 書い て くだ さい 。
②質 問紙 調 査
a. リッ カ ート 尺度 ( 4 件 法 )
b. 自由 筆 記
3.3.2 結 果 と 考 察
1 学 期の 指 導と 2 学期 の指 導 に 分 けて そ れぞ れ
テス トの 結 果を表 4, 表 5 に 示し た。 表 4 を 見る
とウ 組 で 22.0 点 ,エ 組 で 23.4 点 の上 昇 があ り,
いず れも 統 計的 に有 意 な上 昇で ,効果 量 は大 であ
った(t(25)=7.58, p=.00, ⊿=1.14;t(25)=7.51, p= .00,
⊿=1.06)。
表 5 文の 理 解と 作文 の テス ト結 果 (単 位% )
p
学習 者
項目 事前
事後
上昇
M
33.0
67.4
D中1年
34.4 .00
ウ組 (28 名 ) (SD) (26.1) (32.5)
M
58.9
D中1年
20.1
38.8 .00
(SD)
(28.2)
(23.5)
エ組 (24 名 )
3.4 質 問 紙 を 使 っ た 調 査
各実 践で は 質問 紙調 査 を併 せて 行 った 。調査 結
果を「 浦安 ふる さ とカ ルタ 」と「都 道府 県 カル タ」
に分 けて 示 した 。
3.4.1 浦 安 ふ る さ と カ ル タ
表 6 と表 7 か ら ,ふ るさ と を扱 った 内 容 , カ
ルタを使った学習方法が好意的に受け入れられ
てい たこ と が わ かる 。作成 し たカ ルタ が 異な る学
年で繰り返し学習に利用できる可能性が示唆さ
れた と考 え る。
表6
見た 目が き れい だっ た
4.0
4.2
4.5
文字 は見 や すか った
4.4
4.5
4.4
写真 が あっ て 単語 の 意味 が 理
解で きた
写真 が あっ て 単語 が 覚え や す
かっ た
カル タ の大 き さは ち ょう ど 良
かっ た
4.5
4.5
4.6
4.3
4.6
4.1
4.1
4.4
4.3
表7
表 4 音と 文 字の 関係 の テス ト 結 果 (単 位% )
p
学習 者
項目
事前
事後
上昇
M
32.9
54.9
D中1年
22.0 .00
ウ組 (26 名 ) (SD) (19.4) (23.1)
M
37.1
60.5
D中1年
23.4 .00
エ組 (26 名 ) (SD) (22.1) (26.2)
浦安 ふ るさ とカ ル タ 質 問紙 調 査の 結果 :
カル タ に つ いて (5 件 法 )
質
問
5年 6年 中1
浦安 ふ るさ とカ ル タ質 問紙 調 査の 結果 :
内容 につ い て( 5 件法 )
質
問
浦安 のこ と を英 語で 勉
強で きて よ かっ た
浦安 カル タ に親 しみ が
持て た
浦安 カル タ を使 った 勉
強は 面白 か った
ゲー ム形 式 で楽 しく 英
語を 学習 で きた
表 5 では , ウ組 で 34.4 点, エ組 で 38.8 点の 上
昇が あり ,統 計的 に 有意 な 上 昇 で,効 果 量は 大で
あ っ た ( t(27)=7.43, p=.00, ⊿ =1.32 ; t(23)=7.03,
p= .00, ⊿=1.65)。この こ とか ら「 都道 府県 カル タ」
68
5年
6年
中1
4.1
4.3
4.3
3.7
4.1
3.9
4.4
4.6
4.1
4.5
4.7
4.6
3.4.2 都 道 府 県 カ ル タ
「都 道府 県 カル タ 」で学 ん だ学 習者 は 小学 校
6 年 生の とき に 同じ 教材 を 使っ て外 国 語活 動を
経験 して い る。表 8 から 中 学校 1 年 生 で再 び馴
染み のあ る 教材 で学 習 した こと に 対し て,安心
した と感 じ てい るこ と がわ かる 。こ の こと から
共通 教材 の 利用 で ,安心 感 が得 られ て いた と考
える 。カ ルタ を 共通 教材 と して 継続 的 に使 える
こと が確 認 でき た。
表8
引用文献
[1] 直山 木 綿子 ,
「 スム ーズ な 連携 を築 く ため の小
中連 携の あ り方 」『 STEP』,2013 12 月 号・2014
1 月号 ,pp.14-15, 2013.
[2] 直山 木 綿子 , 「 外 国語 教育 に おけ る小 中連 携 」
『小 中連 携 Q& A と実 践 』,萬 谷隆 一,直 山 木
綿子 ,卯城 祐司 ,石 塚博 則 ,中 村香 恵 子,中 村
典生 (編 著), pp.6-7,開 隆 堂 , 2011.
[3] ベ ネッ セ 教育 総合 研 究所 ,「第 2 回 小学 校英
語に 関す る 基本 調査 ( 教員 調査 )」, 2010.
http://berd.benesse.jp/berd/center/open/repo
rt/syo_eigo/2010/index.html
[4] Dunkel, P. , Developing Listening Fluency in
L2: Theoretical Principles and Pedagogical
Considerations, The Modern Language Journal.
70(ii). pp. 99-106, 1986.
[5] 樋口 忠 彦 ( 代 表 ),『 小 学 校 英 語 教 育 の 展 開―
より よい 英 語活 動へ の 提言 』, 研究 社 , 2010.
[6] Krushen, S. & Terrell, T. D, The Natural
Approach: Language Acquisition in the classroom,
Oxford: Pergamon Press, 1983.
[7] 岡秀 夫,金森 強( 編著 ),『小 学校 外 国語 活動
の 進め 方 ― 「 こ とば の 教 育 」と し て ―』, 成 美
堂, 2012.
[8] 西 垣 知佳 子 , 中 條 清 美 , キ ャ サ リ ン ・ オ ヒガ
ン.『 生 活 語彙 が 楽 し く 身に つ く ! 小・ 中 学 生
の英 語カ ル タ& アク テ ィビ ティ 30』,明 治図 書 ,
2013.
[9] バト ラ ー後 藤裕 子,
『日 本 の小 学校 英 語を 考え
る アジ ア の視 点か ら の検 証と 証 言 』,三省 堂,
2005.
[10] 水 本 篤 , 竹 内 理 , 「 効 果 量 と 検 定 力 分 析 入
門 ―統 計 的 検 定 を正 し く 使 うた め に ― 」『 よ り
良 い外 国 語 教 育 研究 の た め の方 法 』,外 国 語 教
育 メ デ ィ ア 学 会 (LET) 関 西 支 部 メ ソ ド ロ ジ
ー 研 究 部 会 2010 年 度 報 告 論 集 , pp.47 – 73,
2010.
1 学期 のカ ル タに 関す る 調査 ( 4 件 法)
質
問
中1
馴染 みの ある カル タを 使っ て安 心し た
3.1
絵札 のウ ラに 綴り があ って やる 気が 出た
3.3
小学 校よ りも 文字 が読 める よう にな った
3.4
もっ と英 語を 読め るよ うに なり たい
3.4
表9
い 。「 都 道 府 県 カ ル タ 」 に つ い て は , 絵 札 の 情 報
につ いて 検 討を して 精 選し たり ,拡大 し たり した
い。また,読 札の ヒン ト 文 は ,初 級用 と 上級 用に
分け て作 成 する 等し て ,さ ら に教 師が 使 い易 い 教
材に した い。加え て,両教 材 の普 及を 目 指し て実
践を 拡大 し ,広 く紹 介 し て いき た い。
2 学期 のカ ル タに 関す る 調査 ( 4 件 法)
質
問
中1
都道 府県 カル タで 楽し く学 べた
3.4
読札 はヒ ント を作 ると きに 役だ った
3.6
スリ ーヒ ント クイ ズは 面白 かっ た
3.4
もっ とカ ルタ を使 って 勉強 した い
3.4
4. ま と め と 展 望
小中の英語教育で共通教材として活用するこ
とを 目指 し て カ ルタ 教 材を 作成 し ,小 中 学校 で 試
用実 践を 行 った。異 なる 学年 で,異な る 方法 で カ
ルタ 教材 を 使っ て指 導 した 結果 ,リ スニ ン グ,ア
ルフ ァベ ッ ト,文 字 と音 の結 び つき,文 を書 く 等
の指 導に ,カル タ 教材 を活 用 でき るこ と が確 認で
きた 。ま た,共通 教材 を とお して ,小 学 校と 中学
校の英語学習を接続することが可能であること
も示 唆さ れ た 。なお ,本稿 では 報 告 し てい ない が,
筆者 らは 同 一の カル タ 教材 を使 っ て 中学 2,3 年
生,高 校 生を 指導 し た 試 用実 践 も行 って お り ,ひ
とつの教材を小学校から高校まで繰り返し使う
こと の可 能 性に つい て も調 査 し て いる 。
さら に「 浦安 ふる さ とカ ルタ 」は 地域 に 根差 し
た教 材で あ るこ とか ら ,地 域 の研 修会 等 で教 材と
活動 例を 紹 介し たり ,新し い 利用 の方 法 を参 加者
が考 察し た りし てい る 。参加 し た 教 員か ら は「市
外から来たのでカルタを使って地域のことがわ
か っ て い い 」「 授 業 で 使 っ て み た い 」 等 の 反 応 を
得て いる 。
今 後 は ,「 浦 安 ふ る さ と カ ル タ 」 に つ い て は ,
扱う 学習 語 彙や ヒン ト 文を 増や し ,ふ る さと に関
する知識をさらに深められるような教材にした
69
Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the English Language Education Society of Japan
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
カリキュラム構成が教員の‘活用する力’の認識に及ぼす影響
―「高校国語」と「国際バカロレア DP Language A」の比較から―
御手洗
明佳 1
〒169-8050 東京都新宿区西早稲田 1-6-1
E-mail: 1 sayaka-mitarai@akane.waseda.jp
1 早稲田大学教育学研究科
概要 本稿の目的は,高校国語と国際バカロレア(IB)DP Language A のカリキュラムに「思考力・判断力・
表現力等」
(以下,
‘活用する力’とする.
)がどのように組み込まれているか比較し,そのカリキュラム構成が教員
の認識に影響を及ぼしていることを明らかにすることにある.分析の結果,両カリキュラムの特色は,高校国語で
は特に「読むこと」がカリキュラムの中で比重を占めており,IB-DP Language A では「話すこと・聞くこと」
,特
に「書くこと」に比重が置かれたカリキュラム構成になっていた.また, ‘活用する力’に焦点を当てると,高校
国語では‘活用する力’を教科の「観点別評価」項目である「話すこと・聞くこと,書くこと,読むこと」の根底
に含まれる構成要素として位置づけており,教員たちは生徒の学習過程から‘活用する力’を発見することが期待
されていた.それに対し,IB-DP Language A では,
‘活用する力’を形成するための「行動」要因を明確化してお
り,教員たちはルーブリック評価基準をもとに生徒らから‘活用する力’形成に関連ある行動(認知過程を含む)
を質疑応答によって引き出そうとしていた.さらに両教員へのヒヤリング調査から,高校国語教員たちにとって‘活
用する力’は多角的多面的に幅の広い概念として認識されているのに対し,IB-DP Language A 教員たちにとって
‘活用する力’は,各教科,各項目,各試験問題のどの行動に規定されるのか共通した認識が共有されていた.以
上の結果から,能力要素の規定要因の明確化は‘活用する力’形成において教員の認識に影響を及ぼしているとい
える.
Effects of curriculum has on the perception of teachers
-Comparing IB-DP and language subject in Japan-
Sayaka Mitarai 1
1 Waseda
University 1-6-1 Nishiwaseda, shinjyuku-ku, Tokyo 169-8050 Japan
E-mail:
1 sayaka-mitarai@akane.waseda.jp
Abstract This paper reveals that the curriculum of "IB-DP language" and "language subject in Japan"
compared to how 'new skills' or is built in, and the curriculum is affecting the perception of teachers. This
paper set the three problems.First,the characteristics of both the curriculum something.Second,the 'new
skills’, how it is constructing the curriculum. Third, how does it whether they affect the recognition of
teachers. Result of the investigation, the first, in the case of a "national language of Japan", "reading
skills" is important in the curriculum, and "the power hear power and speaking" and "IB-DP language A", a
feature of both the curriculum, especially it had become the curriculum is important in "thing to write". The
conclusion, clarification of the elements of the new skill has had an impact on the recognition of teachers.
1. 先 行 研 究 の検 討 と 課題 設 定
よ っ て そ の 重 要 性 が 明 確 と な っ た「 自 ら 考 え ,判 断 し ,
本 稿 は ,「 高 校 国 語 」 と 「 国 際 バ カ ロ レ ア ・ デ ィ プ
表 現 す る 力( 思 考 力・判 断 力・表 現 力 等 )」を 指 す こ と
ロ マ プ ロ グ ラ ム Language A( 以 下 IB-DP Language A
とする.この‘活用する力 ’への関心は,日本では本
と す る .)」 の カ リ キ ュ ラ ム に 「 思 考 力 ・ 判 断 力 ・ 表 現
田 ( 2005) の 『 ポ ス ト 近 代 型 能 力 』 に 端 を 発 し , 松 下
力 等 」( 以 下 ,
‘ 活 用 す る 力 ’と す る .)が ど の よ う に 組
( 2010)に よ っ て よ り 明 確 に 提 起 さ れ た〈 活 用 す る 力 〉
み込まれているか比較し,そのカリキュラム構成が教
概念の一端を成す能力 概念である.本稿でこの‘活用
員の認識に影響を及ぼしていることを明らかにした.
す る 力 ’に 注 目 す る 理 由 と し て「 1990 年 代 以 降 ,初 等・
ここで用いる‘活用する力 ’とは,新学習指導要領に
中等教育と高等教育の違いを問わず,また,国の違い
御手洗 明佳, カリキュラム構成が教員の‘活用する力’の認識に及ぼす影響―「高校国語」と「国際バカロレア DP Language A」の比較から―,"
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集, pp. 71-79, 日本英語教育学会編集委員会編集, 早稲田大学情報教育研究所発行, 2014 年 3 月 31 日.
This proceedings compilation published by the Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda University.
Copyright © 2014 by Sayaka MITARAI.
All rights reserved.
を問わず夥しい数の能力概念が提唱されている」
(松下
が 試 み る の は , 矢 野 ( 2012) の 視 点 で あ る . 矢 野 は ,
2010) と 指 摘 さ れ て い る よ う に , 国 境 を 越 え た 共 通 の
‘活用する力’に関して注目している訳ではないが,
教育目標が 広がる中,実際の教育現場でその影響は同
IB ス ク ー ル と 日 本 で IB デ ィ プ ロ マ を 導 入 し て い る IB
様なものとして受入れられているのかという疑問に端
スクールの比較をとおして 時間的余裕がなくなること
を発している.本稿が対象としている「高校国語」や
を指摘している.矢野のカリキュラム分析の視点を踏
IB-DP Language A に も 同 様 の 教 育 目 標 が み ら れ る . た
まえることによって各科目における‘ 活用する力’形
とえば,本稿で‘ 活用する力’とする「思考力 ,判断
成 で は な く ,カ リ キ ュ ラ ム 全 体 を 通 し た‘ 活 用 す る 力 ’
力 ,表 現 力 」も 平 成 23 年 か ら 順 次 実 施 さ れ て い る 新 学
形成について比較・検討することが本稿のねらいであ
習指導要領において従来の「知識や技能」と並んでそ
る.このような問題意識のもと,以下の3点を課題と
の習得が目指される教育目標である.さらに,先進国
し て 設 定 す る .第 一 に ,両 カ リ キ ュ ラ ム の 特 色 は 何 か ,
お よ び 日 本 だ け で は な く「 グ ロ ー バ ル・ス タ ン ダ ー ド 」
第二に‘活用する力’はどのようにカリキュラムに組
の大学入学資格・教育プログラムである国際バカロレ
み込まれていたか ,第三に ,それは教員の認識にどの
i
ア で も 同 様 の 傾 向 が 見 ら れ ,知 識 基 盤 社 会 の 到 来 や グ
ように影響を及ぼしているのか,を設定とした.
ロ ー バ ル 化 の 進 展 に 伴 い 各 国 が ‘ 活 用 す る 力 ’へ の 注
2. 分 析 概 要
目を示して いる.
本 稿 は ,高 等 学 校 国 語 教 員 と IB-DP Language A 教 員
このように注目される ‘活用する力’であるが,先
へのインタビュー 分析と授業見学によって得たデータ
行 研 究 を 管 見 す る 限 り ,日 本 の 動 向 と 他 国( イ ギ リ ス・
を も と に 分 析 す る .分 析 に 使 用 し た 資 料 は ,国 語 で は ,
ア メ リ カ・ド イ ツ・オ ー ス ト ラ リ ア・フ ィ ン ラ ン ド 等 )
「 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説〔 国 語 編 〕」や 各 学 校 で 使
のそれとは異なった進展を示している .まず,日本に
用されていた教科書,およびノートや授業中配布され
お い て は ‘ 活 用 す る 力 ’す な わ ち「 ポ ス ト 近 代 型 学 力 」
た プ リ ン ト で あ る . IB-DP Language A で は , IB-DP
と は 何 で あ る の か ,そ の 存 在 自 体 の 解 明 す る 立 場 (本 田
「 Language A: Literature guide」お よ び 日 本 語 ワ ー ク シ
2005,岩 木 2004, 松 下 2010,),と ポ ス ト 近 代 型 学
ョップで使用された資料,授業中に配布されたプリン
力 モ デ ル を 検 討 す る 立 場( 佐 伯
1982, 梶 田 1944, 岩
ト で あ る . IB ス ク ー ル へ の 訪 問 は , 2008 年 〜 2013 年
2005),さ ら に‘ 活 用 す る 力 ’必 要 性 を 前 提 と し て
に 日 本 4 校・英 国 1 校・フ ラ ン ス 1 校 の 計 6 校 に 訪 問 ,
能力を身につけるためにはどのような 実践が有効かと
授業参観および教員へのヒヤリングをおこなった.ま
い う 実 践 型 の 立 場( 北 島 2011, 藤 井 2012, 溝 田 2013,
た,後期中等教育国語教員への授業見学および ヒヤリ
力 久 2013, 寺 嶋 他 2013 他 ii)が あ る .こ の よ う に 日
ン グ は , 2013 年 6, 7 月 に 関 東 圏 域 の 私 立 ・ 都 立 学 校
本 の 場 合‘ 活 用 す る 力 ’自 体 の 再 検 討 と モ デ ル の 提 示 ,
に よ っ て 実 施 し た ( 訪 問 校 5 校 , ヒ ヤ リ ン グ 10 名 ).
または各単元・教科・学校という単一のアクターから
3. 分 析 結 果
3. 1 両 カ リ キ ュ ラ ム の特 色
3. 1. 1 「 読 む こ と 」 重 視の 国 語 科目
川
の言及が目立つ.
一方,他国に目を投じると‘活用する力 ’の解明
や実践報告について日本同様,多くの研究がなされて
分 析 の 結 果 ,高 校 国 語 で は 教 育 内 容 の 中 で「 読 む
い る 点 は 共 通 し て い る ( Spencer & Spencer 1993 ,
こ と 」 に 比 重 が あ り , IB-DP Language Aで は 「 書 く こ
Sennett 2006, Bauman 2005, Winter et al 1981). し
と」に比重が置かれているという違いが明らかになっ
かし,異なっている点として他国が‘ 活用する力’と
た .ヒ ヤ リ ン グ 分 析 か ら ,高 校 国 語 教 員 の T教 諭 は「 国
いう教育目標を皮切りに実行する 「教育のスタンダー
語」という科目について「何を書いているか」を「読
ド 化 」( R. W. Tyler1973, 久 田 2007, 石 井 2009)
む 」の が「 国 語 で あ る 」と 語 っ て い る .
(下線部は筆者
のためのカリキュラム 改革は日本の教育基本法改正お
による加筆)
よび新学習指導要領の改革とは主旨を異にしている .
樋 口 ( 2009) に よ れ ば , 教 育 の ス タ ン ダ ー ド 化 と は 教
質 問 者:生徒 から 定期テ スト の点 を上げ たい と聞 か
育内容の国家的な統一化という「 インプット」志向か
れたら 何て アドバ イス しま すか?
ら ,そ れ ぞ れ の 段 階 に お け る 到 達 目 標 を 規 定 し ,そ の
T教 諭: 生徒 から です か .教 科書 を音読 しま しょ う
達成すなわち教育の成果を テストによって評価すると
と言っ てい ます . 教科 書の 文章を .音 読を
してス ラス ラ読め た と か, 何が書 いて いる
かって いう のを読 むの が国 語 だか ら ,ただ ,
ノート を見 返して 「あ ぁ , そうだ った な 」
って思 うの ではな くて ,教 科書を 読ん で ,
そのと きの 気持ち とか ,一 番重要 なま とめ
いう「アウトプット」志向への転換を示している.つ
まり,能力形成という単体への視点というよりもカリ
キュラム全体を根底から改革するムーブメントの頂点
に教育目標として‘活用する力’が位置づけられてい
るといえるのである.こうした先行研究を踏まえ本稿
72
の文章 はこ こだ , とか , い うのを 理解 でき
す こ と ・ 聞 く こ と 」 , 「 B. 書 く こ と 」 と 〔 伝 統 的 な
るようになると読めたってことだから ,あ
言 語 文 化 と 国 語 の 特 質 に 関 す る 事 項 〕と を 中 心 と し て ,
と は ,漢 字 は 落 と さ な い っ て こ と で す か ね .
そ の 内 容 を 発 展 さ せ た 科 目 」 で あ り , 「 現 代 文 A」 で
は ,「「 C. 読 む こ と 」の 近 代 以 降 の 文 章 の 分 野 と〔 伝
T教 諭 に よ れ ば ,「 音 読 を し て ス ラ ス ラ 読 め た 」と か
統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕とを中心
「何が書いているかを 読む」ことが「国語」であると
として,その内容を発展させた科目」となっている.
述べている .また,教科書の文章から「そのときの気
他 の 科 目 が 3領 域 1事 項 に つ い て ど れ を 重 視 し て い る か
持ち」や「一番重要なまとめ」の部分を探し出すこと
図 式 化 し た も の が 図 表 2で あ る .
がわかれば,
「 読 め た 」と い う こ と を 証 明 し て い る の だ
と 説 明 し て く れ た .つ ま り ,国 語 と は ,
「 読 解 力 」で あ
る と い え る . こ の T教 諭 の 発 言 は , 一 人 の 教 員 の 意 見
であるが,国語という教科を端的に言い当てている.
それは,国語という教科の構成が「読むこと」に比重
がおかれた構造をもっているからである.高等学校学
習 指 導 要 領 解 説〔 国 語 編 〕に よ れ ば ,
「 国 語 」と い う 科
目は,必履修科目となる「国語総合」と選択科目であ
る 「 国 語 表 現 」,「 現 代 文 AB」,「 古 典 AB」 に よ っ て 構
成されている.この必履修科目と選択科目の関係は,
「国語総合」が教科の目標を全面的に受けているのに
対して,
「 国 語 表 現 」,
「 現 代 文 AB」,「 古 典 AB」は ,教
科の目標の 「それぞれの部分」を重点的に扱う科目と
いう位置づけにある.学習指導要領がいう「それぞれ
の 部 分 」 と は , 内 容 構 成 要 素 の こ と で あ り ,「 A. 話
図 表 2. 「 国 語 総 合 」の 領 域 等 と の 関 連 か ら み た 各 選
す こ と・聞 く こ と 」,
「 B. 書 く こ と 」,
「 C. 読 む こ と 」,
択科目の指導事項
さ ら に〔 伝 統 的 な 言 語 文 化 と 国 語 の 特 質 に 関 す る 事 項 〕
高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 〔 国 語 編 〕 第 一 章 総 説 ( p.
と い う 3領 域 1事 項 を 指 し て い る .( 図 表 ○ )
12) よ り
図 表 2 か ら ,「 国 語 表 現 」で は ,
「話すこと・聞くこ
と 」と「 書 く こ と 」,「 現 代 文 B」で は ,「 話 す こ と・聞
く こ と 」,「 書 く こ と 」,「 読 む こ と 」,「 古 典 AB」 で は
「読むこと」を「国語総合」の 3 領域の発展した科目
と し て 位 置 づ け て い る .ま た ,
〔伝統的な言語文化と国
語の特質に関する事項〕では強弱はあれども全ての科
目の中で扱われる構成となっている.この図表を見る
と,3 領域の中で「読むこと」への発展を促す科目が
多い構成になっていることがわかる.この図表をみる
限り,「話すこと・聞くこと」と「書くこと」の能力
を 伸 ば し た い と し た 場 合 「 国 語 表 現 」 や 「 現 代 文 B」
を選択すれば問題ないように思うが,ここには注意す
べ き 事 項 が 2 点 あ る .ま ず ,1 点 目 に「 現 代 文 」と「 古
典 」 に 付 さ れ て い る 「 A 科 目 」,「 B 科 目 」 の 分 類 で あ
る .学 習 指 導 要 領 に よ れ ば「「 A」「 B」は ,科 目 の 性
図 表 1.
3領 域 1事 項 の 図
格の違いを示している .「A 科目」は ,言語文化の理
高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説〔 国 語 編 〕第 一 章 総 説( P.
解を中心的なねらいとし,「B 科目」は読む能力を育
5) よ り
成 す る こ と を 中 心 的 な ね ら い と し て い る 」( p.13)と
あ る . つ ま り 「 現 代 文 A」 と 「 古 典 A」 で は , 「 言 語
例えば,
「 国 語 総 合 」で は ,3領 域 1事 項 の す べ て が 踏
文 化 の 理 解 」 を 「 現 代 文 B」 と 「 古 典 B」 で は 「 読 む
ま え ら れ て い る の に 対 し ,「 国 語 表 現 」 で は ,「 A. 話
能 力 の 育 成 」に 重 点 を 当 て て い る こ と に な る .よ っ て ,
73
図 表 に あ る 「 現 代 文 B」 で は 「 話 す こ と ・ 聞 く こ と 」
か質問した時の返答である .
と「書くこと」の能力を育成すると記載しつつもその
K 教 諭 : 螺旋 型に , かつ , 色ん な 事に バ ラン スよ
比重は「読む能力に焦点を当てているといえるのであ
くやれるカリキュラムになってないから.
学習指導要領とか見ると.教科書通りや
ると , 作文 なんて 全然 でき ないで す .
る .2 点 目 に 大 学 入 試 問 題 と の 関 連 で あ る .図 表 3 は ,
『 大 学 受 験 パ ス ナ ビ で , 勉 強 法 を 知 る 』 の HP に 記 載
されていた大学入試センター試験〔国語〕の問題を過
去 5 年分,分析をおこなったものである.
質問者:なぜ?
K 教 諭:え っと ,書か せる ことが 圧倒 的に 少ない .
例えば,作文の単元は4つあるとするで
しょ? 4 つ をそ れぞ れ 4 時間 ずつ くらい や
るの .全部で 16 時 間く らい やっ て いる の
だけど ,書い て い る作 文は 4 つと いう訳 .
だから慣れない.それはなんか違うと思
う.
K 教諭は,3 年間を通じて発展的な授業設計を希望
しており,現在の状況を「教科書通りやると,作文な
んて全然できない」と話してくれた,作文とは「書く
こ と 」で あ り ,年 間 に 16 時 間 ,作 品 数 は 4 つ だ と 説 明
してくれた .その時間数と本数の少なさを生徒が「書
くこと」に「慣れない」要 因と考えていた .ここから
も「高校国語」のカリキュラム構成が「読むこと」に
比重があり ,「書くこと」「話すこと・聞くこと」の
成果を確認しにくくなっていることがわかる.
3.1.2 バ ラ ン ス を 重 視 した IB-DP Language A
つ ぎ に 「 IB-DP Language A 」 に つ い て み て い く .
図 表 3. セン タ ー試 験 (国 語 )の 出 題傾 向
「 IB-DP Language A」に つ い て ,パ リ 国 際 学 校 IB 日 本
『大学受験パスナビで ,勉強法を知る』
語 学 科 教 師・ IB-DP Language A 部 門 試 験 官 で あ る 石 村
http://passnavi .evidus.com/advice_subject/201212/04
に よ れ ば ,「 Language A の 授 業 は 日 本 の 国 語 と は か な
( 2013 年 7 月 10 日 閲 覧 )
り 違 う も の 」( 石 村 2013:313)と 指 摘 し て い る .さ ら
に 教 科 の 特 徴 を「 生 徒 自 ら が 学 び ,言 語 の 根 本 で あ る ,
こ の 図 表 3 に よ れ ば ,過 去 5 年 間 ,問 題 の 構 成 は「 第
1問
評 論 的 文 章 」,「 第 2 問
古 文 」,
「第 4 問
読んで理解し分析し,自己の考えを口頭および筆記で
文 芸 的 文 章 」,「 第 3 問
わかりやすく表現するという点で徹底している .そし
漢 文 」と 一 貫 し て い る こ と が わ か る .
て そ こ に 「 文 学 」 と い う 軸 が あ る こ と が 重 要 だ .」( 石
また,解答方式もマークシート記入方式の解答方法で
村
2013:313) と 述 べ て い る . 「 文 学 」 を 軸 と し 「 自
あるため,「話すこと・聞くこと」,「書くこと」は
己の考え口頭および筆記でわかりやすく表現する」こ
問 わ れ ず ,現 代 文 と 古 典( 古 文・漢 文 )の 読 解 問 題( 読
と を「 徹 底 し て い る 」科 目 で あ る「 IB-DP Language A」
む こ と )の み 問 わ れ る こ と に な っ て い る .こ の よ う に ,
の実践は以下の内容になっている .
大学入試センター試験の問題で高得点を獲得するため
に は「 現 代 文 AB」と「 古 典 AB」の 習 得 が 必 須 と な る
・コメンタリー演習(隔週)
ことがわかる.よって ,全国の大学受験を念頭におく
・エッセイ演習(隔週)
進学校にとって,選択科目の「国語表現」を選択する
・口頭試験演習(毎週)
ことは極めてリスクを負う選択であり 3 年間で「国語
・漢字テス ト(毎週)
総 合 」,「 現 代 文 AB」,「 古 典 AB」 を 受 講 す る 学 校
・長文読解問題演習(毎週)
iii
が多いといえる. また,「書くこと」に関して教 員
・ Extended Essay( 8000 字 )
は以下のような認識も確認された .以下は国語を担当
する K 教諭に今後どのような授業設計をしていきたい
こ れ は ,石 村 が ISP(International School of Paris)で 実
74
践 し て い る 授 業 内 容 で あ り 1 校 の ケ ー ス で あ る が , IB
ガ イ ド に 従 う 必 要 が あ る IB で は 多 様 性 は あ れ ど も ,そ
う大きく異なっていないことを前提に授業内容につい
て確認していく.上記にある,コメンタリー演習(口
頭 試 問 演 習 )・エ ッ セ イ 演 習( 小 論 文 演 習 ),Extended
Essay( 課 題 論 文 )は「 書 く こ と 」と「 話 す こ と・聞 く
こと」,長文読解問題演習は「読むこと」に分類され
るだろう.なぜこのような授業実践をおこなうのか,
カリキュラム構成の分析から行う .
ま ず , 基 礎 知 識 と し て IB デ ィ プ ロ マ プ ロ グ ラ ム は
図 表 5. Language A の 選 択 科 目
大学入学資格取得のための 2 年間のプログラムであり ,
( Language A: literature guide 2013 よ り 筆 者 作 成 )
6 科 目 ( Language A, 言 語 B, 個 人 と 社 会 , 数 学 と コ
本稿では特に「文学」科目に焦点を当てることとす
ン ピ ュ ー タ ー 科 学 ,実 験 科 学 ,芸 術 )と そ の 中 心 に TOK,
る.石村教諭の実践は如何に生まれるのか ,まず図表
課 題 論 文 ,CAS が 各 教 科 を 通 じ て 実 施 さ れ る 構 成 を と
6 に ま と め た 「 Language A 文 学 」 の 評 価 内 訳 を み て い
る .( 図 表 4)
く.
図 表 6. 「 Language A 文 学 」 の 評 価 内 訳
Language A: literature guide 2013.( p.25) よ り 筆 者 作
成
「 IB-DP Language A 文 学 」は ,IB 機 構 に 提 出 が 義 務
づ け ら れ て い る 外 部 評 価( 70%)と 各 IB ス ク ー ル 内 で
行 わ れ る 内 部 評 価 ( 30%) に よ っ て 構 成 さ れ て い る .
図 表 4.
国 際 バ カ ロ レ ア DP モ デ ル
外 部 評 価 で あ る , Paper1 と Paper2 , さ ら に 研 究 課 題
( Language A: literature guide 2013 . p. 10 よ り )
( Written assignment ) で 構 成 さ れ て い る . Paper1 ,
Paper2 で は , DP 最 終 試 験 で こ れ ま で の 授 業 で 実 践 し
その教育プログラムの中の グループ 1 として各生徒
た総まとめとして 2 時間ずつをかけて解説文とエッセ
の 母 語 に よ っ て 実 施 さ れ る の が「 Language A( Language
イを記述することになる.また,研究課題では ,授業
A)」科 目 で あ る .
「 Language A」は「 文 学( HL/SL)」,
で扱った課題について ,
「 討 論 に 関 す る 考 察( reflective
「 言 語 と 文 学 ( HL/SL) 」 , 「 文 学 と パ フ ォ ー マ ン ス
statement)」と エ ッ セ イ を そ れ ぞ れ ま と め る こ と が 課 さ
( SL) 」 に よ っ て 構 成 さ れ て お り ( 図 表 5) , い ず れ
れている.一方,内部評価ではオーラルコメンタリー
か を 選 択 し て そ れ ぞ れ IB 機 構 か ら 要 求 さ れ る 要 件 を
と 議 論( 20 分 ),オ ー ラ ル プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン( 10-15
満たすことが求められる.3 科目の構成からわかるよ
分)の実施が評価に反映することになっている .以上
う に 「 Language A」 は 「 文 学 」 の 授 業 と い う 側 面 を 強
から,
「 IB-DP Language A 文 学 」の 評 価 内 容 は 国 語 の 3
く持つ.
領域と比較するならば ,
「 書 く こ と 」70% ,
「話すこと・
聞 く こ と 」 30% の 構 成 に な っ て い る こ と が わ か る . こ
のことから,
「 IB-DP Language A 文 学 」の 最 終 ゴ ー ル が
エ ッ セ イ ,コ メ ン タ リ ー ,研 究 論 文 を「 書 け る 」こ と ,
ま た は 口 頭 試 験 ( オ ー ラ ル ) で 相 手 の 質 問 を 「 聞 き 」,
「 話 せ る 」こ と で あ る か ら ,授 業 は ,
「 書 く こ と 」,
「話
75
す こ と・聞 く こ と 」重 視 し て い る と い え る .ま た ,
「読
評価」の観点として‘ 活用する力 ’を導入していた.
むこと」に関わる読解力は ,課題に出された文章に対
文 部 科 学 省 は ,新 学 習 指 導 要 領 の 学 習 評 価 に つ い て「 評
して「文章が書ける」というこが ,その文章を「読め
価規準の作成のための参考資料(国立教育政策研究所
ている」という証明になっており ,生徒が提出した結
の ホ ー ム ペ ー ジ:以 下 ,評 価 規 準 作 成 資 料 )」を HP 上
果から生徒の思考の過程を評価しているといえる .
に提示している.この評価規準作成資料には,学習評
「 IB-DP Language A 文 学 」 が こ の よ う な 評 価 構 成 を
価の基本的な考え方,評価規準に盛り込むべき事項,
とっている 理由として「当科目で獲得すべきスキル」
評 価 に 関 す る 事 例 の 3 部 構 成 と な っ て い る .こ こ で は ,
を明確に規定していることが要因として掲げられる.
以 下 の 流 れ で 評 価 の 進 め 方 を 示 し て い る .ま ず ,
「 1. 単
「 IB-DP Language A 文 学 」 ガ イ ド に よ れ ば , 獲 得 す べ
元 又 は 題 材 の 目 標 を 設 定 す る 」,つ ぎ に「 2. 評 価 規 準
き ス キ ル と し て 「 言 語 ス キ ル 」,「 批 判 的 ア プ ロ ー チ 」,
を 設 定 す る 」,「 3. 評 価 規 準 を 〈 指 導 と 評 価 の 計 画 〉
「 文 学 の し き た り ( 約 束 事 )」,「 視 聴 覚 ス キ ル 」 の 4
に 位 置 づ け る 」,「 4. 評 価 結 果 の う ち 〈 記 録 に 残 す 場
点である.これらのスキルが獲得させたか ,評価する
面 〉を 明 確 に す る 」,こ こ で 授 業 を お こ な い 最 後 に「 5.
ためには実際に活用しているところを示すことが必要
観点ごとに総括する」としている .この「観点」とし
と な る .こ こ で ,IB の ス キ ル 獲 得 の 様 子 を 表 し て い る
て,
「 関 心・意 欲・態 度 」,
「 思 考・判 断・表 現 」,
「 技 能 」,
例 と し て , IB 卒 業 生 の コ メ ン ト を 引 用 す る .
「理解・知識」がある .また,各教科の評価において
も「 観 点 」が 設 定 さ れ て お り ,国 語 の 場 合 ,
「知識と理
Q: ISD( IB ス ク ー ル 名 ) で 高 校 生 活 を 送 っ た こ と
解 」,「 話 す ・ 聞 く 力 」,「 書 く 力 」,「 読 む 力 」,「 関 心 ・
であなたは変わったと思いますか?変わったと思う場
意 欲 ・ 態 度 」 で あ る . ま た ,「 話 す ・ 聞 く 力 , 書 く 力 ,
合,どのような点で変わりましたか?(大学選択・専
読む力」には「思考力・判断力・表現力等」が含まれ
攻,人生観 ,価値観など)
ておりそれを教員が判断することが求められている .
A: 私 が ISD で学 んだ もっ とも大 きな こと , それ は
さ ら に 注 意 事 項 に‘ 活 用 す る 力 ’に つ い て の 説 明 文 が
「自分 で考 える練 習 」を したこ とで あり ,
「 自分 で判断
ある.以下引用.
する練 習」を した こと であり ,
「 自 分の 決断を 下す 練習」
をした こと です . 記憶 力重 視の択 一式 の学 力で は ,器
用にな るば かりで 真に 「考 える」 力は つか なか った で
しょう から ,もし ISD 時代 がな けれ ば ,私も「枠 組み」
の中の 人生 を送っ てい たと 思いま す .( 航 空 会 社 勤 務 )
今回 ,
「思 考・判 断・表 現」の観点 につ いて は ,
各教科の内容等に即して思考・判断したことを,
その内容を表現する活動と一体的に評価するも
のとし て設 定 して いま す .その ため ,児 童生 徒の
作品な ど思 考・判 断の 結果と して の「表 現」を通
じて評 価す ること が多 くな ります が ,こ こで いう
「表現 」と は ,基礎 的・基本的 な知 識・技能 を活
用する 学習 活動等 にお いて 思考・判 断し たこ とと ,
その内容を表現する活動とを一体的に評価する
ことを 示し ていま す . このた め , 適切に 思考・判
断して いる が ,結果 的に 作品 化など にお いて 表現
できな い場 合など にお いて も ,学習 活動 の過 程に
おいて児童生徒の状況を適切に評価することが
重要であることを示しているものです.例えば,
図画工 作に おける 作品 製作 に当た って ,発想 や構
想が作 品の 実現に つな がら なかっ た場 合で も ,発
想や構 想の 能力に つい て ,そ の過程 を含 めて 評価
するこ とが 大切で す .
( 吉 田 2013:20 よ り . 下 線 部 は 筆 者 に よ る .)
以 上 の コ メ ン ト は ,IB ス ク ー ル で 高 校 生 活 を お く
った卒業生に自身の変化を質問したときの解答の 1 例
である.現在航空会社に勤務する A さん(仮名)は,
IB ス ク ー ル で 学 ん だ こ と と し て「 自 分 で 考 え る 練 習 」,
「 自 分 で 判 断 す る 練 習 」,「 自 分 の 決 断 を 下 す 練 習 」 と
述 べ て い る . IB で は ,「 自 分 で 考 え る 能 力 」,「 自 分 で
判 断 す る 能 力 」,「 自 分 で 決 断 す る 能 力 」 は 「 練 習 に よ
って」身につくものであり ,そのために各科目で獲得
す べ き「 ス キ ル 」を ガ イ ド で 明 確 化 し て い る と い え る .
以 上 か ら , 高 校 国 語 の カ リ キ ュ ラ ム 構 成 で は ,「 読
む こ と 」 の 能 力 に 比 重 が 置 か れ , IB-DP Language A の
カリキュラム構成では「書くこと」の能力に多くの比
重が置かれていることが明らかになった.
3. 2 各 カ リ キ ュ ラ ム 内 で の ‘ 活 用 す る 力 ’ の
位置づけ
に「オーラルとライティングコミュニケーショ ンの両
次 に ,「 思 考 力 ・ 判 断 力 ・ 表 現 力 等 」 の ‘ 活 用 す
方で生徒の表現力を発展させる」と明確に示されてい
る力’を各カリキュラムがどのように位置づけている
る.この「表現力」のように‘活用する力 ’は極めて
か に 注 目 す る .分 析 の 結 果 ,
「 高 校 国 語 」で は「 学 習 の
広い意味を持っている能力といえる.その文脈や役割
一 方 の IB-DP Language A で は ,科 目 の ね ら い の 一 つ
76
によって簡単にその意味を変化させる 能力である.そ
ションできるようになる」ことを目指しており ,それ
の 性 質 の た め か , IB-DP ガ イ ド で は , こ う し た 生 徒 に
こそ「表現力」だと認識していた .
とって必要な,特に試験問題で扱われる用語を明確に
ま た ,言 語 活 動 お よ び「 表 現 力 」は「 各 教 科 」で 実
し て い た . 例 え ば ,「 解 析 ( Anal yse) と は , 本 質 的 な
施するものであると認識している面も多く聞かれた .
要 素 や 構 造 を 引 き 出 す た め に 分 解 す る こ と ( Break
例えば,H 教諭の語りである .
down in order to bring out the essential
elements or structure)」,「 コメ ン ト( Comment)
と は ,判 断を くだ すこ と であ り ,意見 表明 ,また は ,
推 定 の 結 果 を 示 す こ と で あ る ( Give a judgment
based on a given statement or result of a
「言語 活動 」は結 局 他 の人 にわか りや すく 説明で き
るこ と だと 思う . 言語 活動 は各教 科で やり まし ょうっ
てこと だか ら理科 の授 業の レポー トを みん なで 読み合
ってや ろう ってい うの もあ るし , 数学 でい うと ,今ま
calculation)」 と 記 され てい る .
る力’形成にどのように影響してくるのだろうか.本
では先 生に 教えら れる だけ だった のが ,教 えら れたこ
とをレ ポ ー トにし よう だと か自分 たち で話 し合 って ,
答えだ そう とか , 他の 人と 関わる こと でい いア ウトプ
ットを 目指 しまし ょう とい う方向 性だ と思 う .
だから たぶ ん ,関 わり 合い があっ て , アウ トプッ ト
する場 所が あると いい 言語 活動だ と思 う .
【 H 教 諭:国
節 で は ,課 題 2「‘ 活 用 す る 力 ’形 成 へ の 影 響 を 検 討 す
語】
3. 3‘ 活 用 す る 力’ と 教 員の 認 識
で は ,こ の よ う な カ リ キ ュ ラ ム の 差 異 は‘ 活 用 す
る」に移りたい.ここでは,高校国語教員と
IB-DPLanguage A 教 員 へ の ヒ ヤ リ ン グ 調 査 か ら ,
‘活
H 教 諭 は ,「 言 語 活 動 」 を 「 他 の 人 に わ か り や す く
用する力’に対してどのように認識しているかについ
説 明 で き る こ と 」と 認 識 し な が ら も ,
「言語活動は各教
て明らかにしていくこととする.また,本稿では‘活
科でやりましょう」と述べており ,言語活動に必要な
用する力’のために設置された「言語活動」および,
のは「他の人」との「関わり合い」と「アウトプット
そ の‘ 活 用 す る 力 ’の 構 成 要 素 の 一 つ で あ る「 表 現 力 」
する場所」があることを言語活動の条件として説明し
に注目する .
てくれた.
まず,高校国語教員たちに「近年 ,学校現場で必要
性が叫ばれる「言語活動」および‘活用する力 ’の一
一 方 の IB-DP Language A の 教 員 た ち が「 表 現 力 」に
部である〔表現力〕とはどのような能力だと思うか」
ついてどのように認識しているのだろうか .
と問うたところ様々な意見がでてきた .
(下線部はすべ
て 筆 者 に よ る .)
質問:表現力,言語活動とはどのような能力でしょ
うか.
こ れ ( 表 現 力 ) は , ひ と こ と で こ れ で す ね ,「 イ ン
ターコ ミュ ニケー ショ ン」.言語 によっ ても 文化 によっ
ても異 なる 言語を しゃ べる 他者や 異な る文 化を もつ人
たちに 自分 の言葉 を説 明 , 自分の 考え をそ の人 の言葉
であれ 自分 の言葉 で説 明で きたり 表現 でき たり するこ
とがで きる こと ,と いう のが大 事だ と思 ってい る .
(基
本的な 現代 文の授 業で は) 目の前 の人 にコ ミュ ニケー
ション でき る ,向 こう (レ ベルが 上が る表 現ゼ ミの授
業)で は , 目の前 に“ いな い”人 にも コミ ュニ ケーシ
ョンできるようになること,そういう能力だと思う.
I 教 員 : 口 頭 ,筆 記 等 にお い て , 他 者 の表 現 を理 解
して , 自己 の考え を他 者に 理解さ せる 能力 .【 IB】
I 教 諭 は ,表 現 力 ,言 語 活 動 は ,「 口 頭 , 筆 記 等 」に
よって「他者の表現を理解して,自己の考えを他者に
理 解 さ せ る 能 力 」と し て い る .つ ま り ,
「 IB-DP Language
A」 の 試 験 ( 口 頭 試 験 ・ 筆 記 試 験 ) に つ い て は 「 他 者
の表現を理解して ,自己の考えを他者に理解させる能
力 」で あ る と 意 味 限 定 し て 能 力 を 説 明 し た .次 の H 教
諭 も「 言 語 活 動 」「 表 現 力 」の 意 味 の 多 義 性 を 理 解 し て
【K 教員:国語】
いた.
H 教 諭 :「言 語活 動」, いわ ゆる , コミ ュニ ケーシ
K 教 諭 に よ れ ば ,表 現 力 と は ,
「インターコミュニケ
ョン活 動 で , 受信 ,発 信す ること と考 える .海 外では
「違っ てい ること 」が 基本 なので ,そ のた め言 語能力
が必要 とさ れる .日本 国内で も同 じで はない かと 思う .
「表現 力」 に関し ては , 言 語を使 わな い表 現も可 だ
が ,言 葉で 自己表 現す るこ とは そ の人 の人 生を 楽しく
ーション」であるという.文化や言語が異なる他者に
「 自 分 の 言 葉 で 説 明 で き た り 表 現 で き 」る こ と が 重 要
であり,国語の現代文の授業では「目の前の人にコミ
ュ ニ ケ ー シ ョ ン で き る 」こ と ,ゼ ミ 形 式 を 取 る「 表 現 」
の授業では 「目の前に“いない”人にもコミュニケー
77
するも の と 思う .【 IB】
はわかるのです,生徒は.このテストで何か測られて
いるのかな?それは読解力だよねっていう とそうだよ
H 教諭によれば,
「 言 語 活 動 」を「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ
ねっていうんです .問題を解けるってことは,読めて
ン 活 動 」と 言 い 換 え ,
「 違 っ て い る こ と 」を 前 提 と し て
るということだと .読めるって概念についてはわかる
が「 受 信・発 信 す る こ と 」と 考 え て い る .ま た ,
「表現
ん で す け ど .【 T 教 諭 : 国 語 】
力 」に つ い て は ,
「 言 語 を 使 わ な い 表 現 も 可 」と 表 現 を
言語の使用の有無を分類したうえで,
「言葉で自己表現
国語教員 T の発言からは ,生徒は‘読解力’という
することはその人の人生を楽しくするもの」と表現は
概念について「テストで何が測られている」かによっ
人 生 に 関 わ る も の と し て 語 っ て く れ た .こ の「 表 現 力 」
て能力概念を認識しているのではないかと予想してい
と生徒の人生への関わりに対する言及は他の教諭から
る.もし,T 教諭のいうように我々の認識がテストな
聞くことになった .
どの測定によって規定されているとするならば,
‘活用
する力’も何かしらの明確な測定が必要なのではない
質 問 者 : 担 当科目 と生 徒の 将来は 関わ って くると 思
います か . また , そう 考え るのは なぜ です か .
I 教 諭 : 非 常 に大 き く 関わ る .殆 ど の 生徒 が 日本 語
が第一 言語 である ため ,こ の言語 の伸 びが 他の 教科に
大きく 影響 する . また ,将 来にお いて ,表 現力 はどの
ような 生活 をしよ うと 人生 におけ る重 要な 要素 である .
かと考えられる.
4. 結 論 と 今 後の 課 題
本 稿 は , 高 校 国 語 と 国 際 バ カ ロ レ ア ( IB ) DP
Language A の カ リ キ ュ ラ ム に 「 思 考 力 ・ 判 断 力 ・ 表
現 力 等 」( 以 下 ,
‘ 活 用 す る 力 ’と す る .)が ど の よ う に
組み込まれているか比較し ,そのカリキュラム構成が
I 教 諭 に よ れ ば ,Language A が 母 語 に 相 当 す る 言 語 で
教員の認識に影響を及ぼしていることを明らかにした .
あることから,母語(日本語)の獲得が他の教科に非
課題として ,第一に,両カリキュラムの特色は何か,
常に影響を及ぼすということと,さらには ,そこで獲
第二に‘活用する力’はどのようにカリキュラムに組
得する「表現力」は「どのような生活」をしようとも
み込まれていたか ,第三に ,それは教員の認識にどの
生徒の「人生にお ける重要な要素 」であると認識して
ように影響を及ぼしているのか,を設定とした .調査
いた.
の結果,両カリキュラムの特色は ,高校国語では特に
以 上 か ら ,国 語 国 語 教 諭 と IB-DP Language A 教 諭 の
「 読 む こ と 」が カ リ キ ュ ラ ム の 中 で 比 重 を 占 め て お り ,
「 言 語 活 動 」「 表 現 力 」の 認 識 を 比 較 し た と こ ろ ,認 識
IB-DP Language A で は「 話 す こ と・聞 く こ と 」,特 に
が重なる部分と異なる部分が明らかとなった.すなわ
「書くこと」に比重が置かれたカリキュラム構成にな
ち,認識が重なった部分とは,両者とも「表現力」を
っていた.また, ‘活用する力 ’に焦点を当てると,
「他者との相互関係」を円滑にするための「コミュニ
高校国語では‘活用する力 ’を教科の「観点別評価」
ケーション」のため能力と認識していた点である .ま
項目である「話すこと・聞くこと ,書くこと,読むこ
た,異なった点としては,国語教員が「言語活動」お
と 」の 根 底 に 含 ま れ る 構 成 要 素 と し て 位 置 づ け て お り ,
よび「表現力」を各教科で育む能力であると認識して
教員たちは生徒の学習過程から‘ 活用する力’を発見
いるのに対して,
「 IB-DP Language A」教 員 は ,自 身 の
す る こ と が 期 待 さ れ て い た . そ れ に 対 し , IB-DP
科目のさらに「口頭試験・筆記試験」によってその能
Language A で は ,
‘ 活 用 す る 力 ’を 形 成 す る た め の 行
力が培われると明確にしていた点である.さらに,そ
動要因を明確化しており,教員たちはルーブリック評
こで涵養される能力は ,生徒の人生に影響を及ぼすと
価基準をもとに生徒からそれらの行動(認知過程を含
いうことも認識していた.国語教員への同様に「自身
む)を引き出すための質疑応答が期待されていた .さ
の担当科目が生徒の将来に影響を及ぼすと思うか」と
らに両教員へのヒヤリング調査から,高校国語教員た
いう質問をしたところ ,
「 関 わ る 」,
「関わってほしいと
ちにとって‘活用する力’は多角的多面的に幅の広い
思 う 」,
「 特 に 関 わ ら な い 」と 多 様 な 意 見 が 出 た .な ぜ ,
概 念 と し て 認 識 さ れ て い る の に 対 し , IB-DP
このような違いが出たのだろうか ,少し本論の主題か
Language A 教 員 た ち に と っ て ‘ 活 用 す る 力 ’ は , 各
ら逸れてしまうが興味深い例を示しておきたい .国語
教科,各項目,各試験問題のどの行動に規定されるの
教員へのヒヤリング中 ,T 教諭が話してくれた内容で
か共通した認識が共有 されていた .以上の結果から,
ある.
能力要素の規定要因の明確化は‘ 活用する力’形成に
おいて教員の認識に影響を及ぼしているといえる .
(表現力とは何か)高校生は気づくかもしれないけ
本 研 究 は , 世 界 中 に 散 ら ば る IB ス ク ー ル 教 員 へ の
ど,中学生ぐらいだとわからないかも .生徒は読解力
接近が難しく調査対象者のサンプル数が多いとはいえ
78
シ ー・マ ネ ジ メ ン ト の 展 開 ― 導 入・構 築・展 開 ー 』
(梅津祐良 ・成田 攻・ 横山 哲夫訳 )生 産性 出版 .
[16]久 田 敏 彦 2007「 ド イ ツ に お け る 学 力 問 題 と 教 育 改
革」 大桃敏行・井ノ口淳三・植田健男・上杉孝
實編『教 育改革の国際比較』 ミネルヴァ書房,
pp36-37
[17]文 部 科 学 省 2010『 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 国
語編』教育出版.
[18] R W. Tyler, 1973“ The Father of Behavioral
ず今後さらに精緻化する必要があるという問題を抱え
ているものの‘活用する力 ’概念の受け止め方が日本
の 学 習 指 導 要 領 お よ び 先 行 研 究 と IB 関 係 者 の 受 け 止
め方の違いを提示している点で今後の‘活用する力’
概念研究の射程を広げるという意味で意義があるとい
える.今後の課題としては ,ヒアリングサンプル数の
増加とカリキュラム全体の系統方法の違いを明確に示
Objectives Criticizes Them: An Interview with
Ralph Tyler”, Phin Delta Kappan.
すことが求められるだろう .
文
献
i
[1] Bauman, Z. 2005. Work, consumerism and the
new poor.(2nd). Open University Press. バ ウ マ
ン , Z. 2008. 『 新 し い 貧 困 ー 労 働 ,消 費 主 義 ,
ニ ュ ー プ ア 』( 伊 藤 茂 訳 ) 青 土 社 .
[2] 溝 田 貴 章 2013 「 思 考 力 ・ 判 断 力 ・ 表 現 力 を 高 め
る授業の一考察: 3 年数学科図形領域「いろいろ
な 長 さ を 作 図 し よ う 」 の 授 業 分 析 」『 佐 賀 大 学 教
育 実 践 研 究 』 第 29 号 , pp. 267-276.
[3] 本 田 由 紀 2005『 多 元 化 す る「 能 力 」と 日 本 社 会 ――
ハ イ パ ー・メ リ ト ク ラ シ ー 化 の な か で 』NTT 出 版 .
[4] 松 下 佳 代 編 2010『 “活 用 す る 力 ”は 教 育 を 変 え る か
―学 力 ・ リ テ ラ シ ー ・ コ ン ピ テ ン シ ー 』 ミ ネ ル ヴ
ァ書房.
[5] 力 久 茂 昭 2013「 科 学 的 な 思 考 力・表 現 力 を 高 め る
授 業 づ く り に つ い て:第 2 学 年「 化 学 変 化 と 原 子・
分 子 」 の 授 業 分 析 を 通 し て 」『 佐 賀 大 学 教 育 実 践
研 究 』 第 29 巻 , pp. 317-322.
[6] 寺 嶋 浩 介 , 丸 山 俊 幸 , 中 川 一 史 2013「 小 学 校 学
習 指 導 要 領 に 基 づ く 思 考 力・表 現 力 育 成 の た め の
目標リストの開発」
『教育実践総合センター紀要』
第 12 巻 , pp. 53-59.
[7] 北 島 茂 樹 2011「 思 考 力・判 断 力・表 現 力 を 育 む 教
材とその指導 : 円分割問題とパスカルの三角形
を 題 材 に (<特 集 >高 校 新 学 習 指 導 要 領 の 実 施 へ 向
け て )」『 日 本 数 学 教 育 学 会 』93.
( 11)pp.47-50.
[8] 原 田 信 之 編 著 2007 『 確 か な 学 力 と 豊 か な 学 力 各 国 教 育 改 革 の 実 態 と 学 力 モ デ ル -』 ミ ネ ル ヴ ァ
書房.
[9] 藤 井 斉 亮 2012「 思 考 力・表 現 力 を 育 む 問 題 解 決 型
授 業 (講 義 内 容 要 旨 ,I 講 習 会 ,第 94 回 全 国 算 数 ・
数 学 教 育 研 究 (福 岡 )大 会 報 告 )」『 日 本 数 学 教 育 学
会 誌 』 94( 12) p. 15.
[10]矢 野 裕 俊 2012「 国 際 バ カ ロ レ ア と の 比 較 を と お
し て み た 高 等 学 校 教 育 課 程 の 現 状 と 問 題 点 」『 武
庫 川 女 子 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 論 集 』第 7 号 ,p.
27-34.
[11]石 村 清 則 2013「 連 載 国 際 バ カ ロ レ ア の 現 在 ⑥ 国
際 学 校 で の 導 入 例:ISP」『 文 部 科 学 通 信 』No.313.
[12]吉 田 孝 2013『 文 部 科 学 教 育 通 信 』No.314, p20.
[13] International Baccalaureate Organization , 2011 ,
Diploma Programme Language A1 For fir st
examinations in 2013 .
[14] Sennett. R. 2006 The culture of new capitalism.
Yale University Press . セ ネ ッ ト , R. 2007 『 不
安 な 経 済 / 漂 流 す る 個 人 』( 森 田 典 正 訳 ) 大 月 書
店.
[15] Spencer, L. M. & Spencer, S. M. 1993 .
Competence at work: Models for a superior
performance. John Wiley & Sons. 『 コ ン ピ テ ン
文 部 科 学 省 に よ れ ば ,「 国 際 バ カ ロ レ ア の 趣 旨 の カ
リ キ ュ ラ ム は ,思 考 力・判 断 力・表 現 力 等 の 育 成 を は じ
め 学 習 指 導 要 領 が 目 指 す「 生 き る 力 」の 育 成 や ,日 本 再
生 戦 略 ( 平 成 24 年 7 月 31 日 閣 議 決 定 ) が 掲 げ る 課 題
発 見・解 決 能 力 や 論 理 的 思 考 力 ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能
力等重要能力・スキルの確実な修得に資するもの 」と
記載している.
(国際バカロレアの趣旨を踏まえた教育の推進:文
部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoiku_kenk
yu/ ( 閲 覧 日 2013 年 5 月 31 日 )
ii 論 文 検 索 サ イ ト 「 CiNii」 で 「 思 考 力 ・ 表 現 力 」
の キ ー ワ ー ド を 入 れ る と 500 件 以 上 ヒ ッ ト し た .
iii 中 高 大 一 貫 校 で は ,積 極 的 に 「 国 語 表 現 」 の 授 業 を
受講しているケースがみられた.
79
Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the English Language Education Society of Japan
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
大学における TOEFL iBT 対策授業についての実践報告
-スピーキング・セクションを意識して-
森下 美和
神戸学院大学経営学部 〒651-2180 神戸市西区伊川谷町有瀬 518
E-mail: [email protected]
概要 本稿では,派遣交換留学を希望する大学生が,留学に必要なスコアを取得するとともに,モチベーション
を高めることができるような TOEFL iBT 対策授業について報告する。授業では,英語の 4 技能(リーディング,
リスニング,スピーキング,ライティング)すべてを取り挙げ,とりわけスピーキングを意識した。スピーキング・
セクションについては,ピアレヴューや教師の講評を挟んで同じ練習問題を 2 回行ったところ,1 回目と比較して
2 回目の発話総語数が有意に増加していた。授業後の TOEFL iBT のスコアは平均 10 点程度伸びており,アンケー
トにも肯定的な回答が見られた。本実践の結果から,TOEFL iBT に基づく授業は,派遣交換留学を希望する学生
のみならず,あらゆる学生が 4 技能をバランス良く伸ばすことに役立つ可能性が示唆された。
A TOEFL iBT Prep Course Implementation
-With the Speaking Section in Mind-
Miwa MORISHITA
Faculty of Business Administration, Kobe Gakuin University
518 Arise, Ikawadani-cho, Nishi-ku, Kobe
651-2180 Japan
Abstract This paper reports on an educational approach in a summer intensive course to improve TOEFL
iBT scores of university students who wish to go on an exchange program, as well as help to motivate them.
The course dealt with all four skills of English (i.e., reading, listening, speaking, and writing), with relative
emphasis on speaking. The results of a task (Type 1) in the speaking section revealed that students produced
significantly more words in the second recording than the first one with the help of peer review as well as the
teacher’s comments. TOEFL iBT scores per se also increased after the course by approximately 10 points on
average. This improvement in performance, together with the positive responses from the questionnaire,
shows that the course’s aims seem to have been achieved. In summary, classes based on TOEFL iBT are
useful not only for prospective exchange students but for any students who wish to improve the four skills of
English in a balanced way.
1. は じ め に
iBT の 日 本 人 の 平 均 ス コ ア ( 70 点 )は , 世 界 平 均 ( 80
英語圏の大学・大学院へ留学するには,一定の
点 ) の み な ら ず , 他 の ア ジ ア 諸 国 ( 中 国 77 点 , 韓 国
TOEFL iBT ス コ ア が 必 要 で あ る 。 TOEFL 試 験 は 当 初
84 点 な ど )と 比 較 し て も ,極 め て 低 い( 各 セ ク シ ョ ン
PBT( paper-based testing; ペ ー パ ー 版 ) で あ っ た が ,
30 点 ; 計 120 点 満 点 ) [4]。
日 本 で は , 2000 年 に CBT( computer-based testing; コ
このような状況下で,英語の習熟度が比較的高い学
ン ピ ュ ー タ 版 ),2006 年 に iBT( Internet -based testin g;
生であっても留学を希望する大学・大学院の入学基準
イ ン タ ー ネ ッ ト 版 )が 導 入 さ れ た 。CBT で は ラ イ テ ィ
スコアに到達できない者が少なくない。実際,ハーバ
ン グ が 導 入 さ れ , iBT で は ス ピ ー キ ン グ を 含 む 英 語 の
ー ド 大 学 で 学 ぶ 日 本 人 留 学 生 の 数 は , 2000 年 度 か ら
4 技能すべてを測定するようになったため,一般に英
2010 年 度 の 10 年 間 で 151 名 か ら 101 名 に 減 少 し て い
語の産出が苦手とされる日本人にとってはさらにハー
る が , 一 方 で , 中 国 人 は 227 名 か ら 463 名 に , 韓 国 人
ド ル が 高 く な っ た と 言 わ れ て い る 。 2012 年 の TOEFL
は 183 名 か ら 314 名 に そ れ ぞ れ 増 加 し て い る [2]。
森下美和, "大学における TOEFL iBT 対策授業についての実践報告-スピーキング・セクションを意識して-,"
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集, pp. 81-87, 日本英語教育学会編集委員会編集,
早稲田大学情報教育研究所発行, 2014 年 3 月 31 日.
This proceedings compilation published by the Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda University.
Copyright © 2014 by Miwa Morishita.
All rights reserved.
そこで,学生が早期に必要なスコアを取得するため
表2.スピーキング・セクションの概要
の 支 援 策 と し て ,夏 期 休 暇 を 利 用 し た TOEFL iBT 対 策
問題の
授 業 を 実 施 し た [1]。 授 業 の 主 な 目 的 は , 英 語 圏 の 大
種類
学・大学院への派遣交換留学を希望する学生が,必要
独立
な ス コ ア を 取 得 す る た め に ,TOEFL iBT 用 の 自 主 学 習
問題
モード
問題内容
Speaking
Type 1) 自分の経験や好みに
準備
解答
時間
時間
15秒
45秒
30秒
60秒
20秒
60秒
ついて答える
Type 2) 自分の経験や好みに
の方法について学び,他の学生からの刺激を受けるこ
ついて,二者択一で答える
と に よ り モ チ ベ ー シ ョ ン を 高 め る こ と で あ っ た 。ま た ,
少人数であることを活かし,通常の授業では取り 上げ
にくいアウトプット・セクション,とりわけスピーキ
ングを意識した授業を行った。
統合
Reading /
Type 3) 大学生活:トピックに
問題
Listening /
関連する内容のリーディングと
Speaking
リスニング(会話)の後,
話者の意見をまとめる
表 1 に , TOEFL iBT の 概 要 を 示 す 。
Type 4) 講義:トピックに関連
する内容のリーディングとリスニング
(講義)の後,要点をまとめる
表1.TOEFL iBTの概要
時間
Listening /
Type 5) 大学生活:問題と2つの
3~5文
1問20分
Speaking
解決策についての会話を聞き,
(各文につき,12~14の設問)
(計60~100分)
自分の意見を述べる
1)会話問題:2~3問
1セット30分
Type 6) 講義:講義を聞き,
(各会話につき5つの設問)
(計60~90分)
要点をまとめる
セクション 問題・設問数
Reading
Listening
2)講義問題:4~6問
(各講義につき6つの設問)
ある人がどの程度言語を上手く話すかについての
※会話問題1問と講義問題2問で
我々の印象には,多くの要因が影響するため,スピー
1セット(計2~3セット)
Speaking
1)独立問題:2問
キ ン グ 力 の 測 定 は 難 し い [5]。 実 際 , ス ピ ー キ ン グ テ
20分
ス ト は ,一 般 に イ ン タ ヴ ュ ー 形 式 で あ る こ と が 多 く( 英
2)統合問題:4問
Writing
検 , IELTS な ど ), 主 観 的 に な り が ち で あ る 。 一 方 ,
1)統合問題:1問(150~225語)
20分
TOEFL iBT の ス ピ ー キ ン グ ・ セ ク シ ョ ン で は , 受 検 者
2)独立問題:1問(300語)
30分
のすべての発話はコンピュータ(インターネット)上
で 録 音 さ れ ,テ ス ト 終 了 後 に 3~ 6 名 の 有 資 格 評 価 者 に
一般に英語の産出が苦手とされる日本人の場合で
よ っ て ,以 下 の 各 項 目 に つ い て 0~4 の ス コ ア が つ け ら
も ,各 セ ク シ ョ ン の 平 均 ス コ ア に 大 き な 開 き は な い が ,
れ る [3]。
その理由としては,スピーキングおよびライティン
グ・セクションの大半は, リーディングやリスニング
・ 話 し 方 (Delivery) : 流 暢 且 つ 明 瞭 で あ り , 発 音 ,
を 含 む 統 合 問 題 (integrated tasks) で あ り , 4 技 能 が 相
速度,イントネーションなどが自然であるか。
互に関連付けられているということが考えられる。し
・ 言 語 使 用 (Language Use) : 文 法 の 基 礎 力 が あ り ,
た が っ て , TOEFL iBT の ス コ ア を 伸 ば す た め に は , 4
複雑な構文も使用しているか。また,適切な語彙を使
技能をバランスよ く伸ばすことが不可欠である。
用しているか。
次に,スピーキング・セクションの概要を示す(表
・話 の 展 開 (Topic Development):話 に 一 貫 性 が あ る
2)。
か。論理の流れが分かりやすいか。
これらの項目を, 1 度きりのインタヴュー・テスト
で,多くの場合は 1 名の面接官によって,その場で適
切に評価することは難しいであろうと想像できる。
TOEFL iBT の 場 合 は ,テ ス ト 終 了 後 に 複 数 の 評 価 者 が
録音音声をチェックすることから,より信頼性の高い
評価が期待できる。
英語学習における最終目標は,英語力そのものの向
上 で は あ る が ,「 留 学 」 と い う 明 確 な 目 的 が あ る
TOEFL iBT の 場 合 ,必 要 な ス コ ア の 獲 得 の た め の 方 略
についても身に付けておかなければならない。そのた
82
め,スピーキング・セクションに関しては,以下のよ
iBT と 同 形 式 の オ ン ラ イ ン 練 習 問 題 ) の ス コ ア を 報 告
うなアドバイスを与えた。
することも認めた。
2.2. 教 材
・ポー ズや フィラ ーを 避け ,スピ ード を重 視する 。
リ ー デ ィ ン グ / リ ス ニ ン グ 用 に は ,「 新 TOEFL テ ス
・問題文のフレーズを利用し,発話潜時(発話開始
ト形式で学ぶ教養英語:リスニング&リーディング演
ま で の 時 間 )を で き る だ け 短 く す る 。例 え ば ,Choose a
習 」( 松 柏 社 ), ス ピ ー キ ン グ / ラ イ テ ィ ン グ 用 に は ,
person from your childhood. State why that person was
Kaplan TOEFL iBT with CD-ROM 2008-2009 を そ れ ぞ れ
significant to you. と い う 問 題 で あ れ ば , 解 答 は , The
使用した。また,必要に応じてプリント教材を配布し
person who was significant to me from my childhood is…
た。
というフレーズで始める。
2.3. 授 業 内 容
・言いたいことを無理に言おうとすると日本語から
4 日 間 で 合 計 24 時 間 ( 6 時 間 / 日 ) の 集 中 講 義 を ,
の翻訳になってしまうので,英語のままで言いやすい
異なる学生を対象に同じ内容で 2 回実施した。授業を
ことを選ぶ。
通 し て ,TOEFL iBT に 関 す る 基 礎 知 識 と 攻 略 法 を 身 に
・難しいトピックやどちらでも良いという意見は,
付 け る こ と を 目 的 と し ,各 セ ク シ ョ ン( リ ー デ ィ ン グ ,
まとめづらいので避ける。
リ ス ニ ン グ ,ス ピ ー キ ン グ ,ラ イ テ ィ ン グ )に つ い て ,
・頻 出 ト ピ ッ ク に つ い て 原 稿 を 書 き ,L1 英 語 話 者 に
自主学習への動機付けやアドバイスを行った。
校正と録音をしてもらった上で,何度も練習すると,
以 下 の 進 行 表 に 基 づ い て , 授 業 を 行 っ た ( 表 3)。
自然に内容を暗記することができ,適切な発音やスピ
ードも身に付く。
表3.授業進行表
・どんな問題の解答にも利用できそうな自分の意見
回
時限 授業タイトル
授業内容
1日目
1
2
Orientation
Listening (1)
TOEFL® iBTの概要説明等
ガイダンス&練習問題
3
Reading (1)
〃
4
1
Writing (1)
Listening (2)
ガイダンス&課題提出
練習問題
また,制限時間の終了と同時に録音を止めてしまう
2
Reading (2)
〃
と,ほとんど何も話せずに終わってしまう学生が少な
3
4
Speaking (1)
Speaking (2)
ガイダンス
練習問題
1
2
Listening (3)
Reading (3)
練習問題
〃
3
Speaking (3)
〃
4
1
Speaking (4)
Listening (4)
〃
〃
2
Reading (4)
〃
3
4
Writing (2)
Wrap Up
課題講評
や具体例(経験)などをまとめておく。
・とっさに浮かばなかった表現や単語は,あとで必
ず調べて次の機会には使えるようにしておく。
・慣用表現の知識を増やす。
2日目
くないため,最初のうちは 時間を気にせず話し切る練
3日目
習をさせた。制限時間内に話し終わらないのは,ほと
んどの場合,情報量が多いからではなく発話速度が遅
いことが原因であるが,何度も同じ内容について話す
うちに制限時間内で簡潔にまとめられるようになる。
4日目
2. 実 践 方 法
2.1. 参 加 者
質疑応答&アンケート等
英語圏の大学・大学院への派遣交換留学を希望する
英 語 専 攻 の 大 学 生・大 学 院 生 12 名( 2 ク ラ ス )が 参 加
した
1
1 日 4 コ マ で 全 16 コ マ( オ リ エ ン テ ー シ ョ ン と ラ ッ
。授業は,少人数制とするため,同 じ内容を 2
プ・アップの各 1 コマを含む)とし,ライティングに
回 に 分 け て 行 っ た 。各 ク ラ ス の 定 員 は 10 名 で あ っ た が ,
は 2 コマ,その他のセクションには各 4 コマを割り当
他の集中講義や短期海外研修に参加する学生が多く,
てた。以下に,各セクションの授業内容について概要
最終的には前半 5 名,後半 7 名のクラスとなった。補
を説明する。
習であるため,特に評価はしないが,各学生が事前に
TOEFL iBT の 形 式 を 把 握 し て お く こ と と ,大 学 側 が ス
リーディング
コアの伸びで授業の効果を確認することを目的に,受
テ キ ス ト か ら 抜 粋 し た 問 題 を , 制 限 時 間 ( 約 20 分
講 前 後 に 各 自 TOEFL iBT を 受 験 し て ス コ ア を 報 告 す
間)を設けて一斉に読ませた後,段落毎に要約と設問
ることを義務付けた。ただし,時間と費用がかかる点
の解答をさせた。背景知識が必要な問題については,
を 考 慮 し ,受 講 前 に つ い て は , TOEFL iBT を 受 験 す る
ウィキペディアなどの情報を資料 として配布した。
代 わ り に TOEFL iBT Complete Practice Test ( TOEFL
83
リスニング
分の録音音声を確認する。
テキストから抜粋した問題を,全体を通して 1 回聞
5)
正 し く 録 音 で き て い れ ば ,画 面 左 下 の 右 端 に
か せ た 後 ,数 段 落 毎 に 区 切 り な が ら 2 回 目 を 聞 か せ た 。
ある保存ボタン(フロッピーの図)をクリックし,フ
2 回目では,段落毎に要約と設問の解答をさせた。難
ァイル名を入れてデスクトップ上に保存する。
易度の高い問題については,空欄を設けたワークシー
6)
保存した音声ファイルを,ドラック・アン
トを配布し,キーワードを聞き取りながら概要を掴む
ド・ドロップで提出ボックスに入れ,提出ボタンをク
練習をさせた。
リックする。
スピーキング
CALL シ ス テ ム (CaLabo EX) を 利 用 し ,全 6 タ イ プ
の タ ス ク に つ き 1 問 ず つ 出 題 し た( 表 2)。ム ー ビ ー テ
レ コ ( 図 1) で , 各 問 題 の 解 答 ( 音 声 ) を 一 斉 に 録 音
後,音声ファイルを回収し,各学生の解答をクラス全
体 で 聞 き な が ら 講 評 し た 。録 音 と 講 評 は 1 問 に つ き 1~2
回行った。また,各タイプの問題ごとに簡単なメモ用
の フ ォ ー マ ッ ト (Appendix) を 配 布 し , 必 要 が あ れ ば
使用するように指示した。
録音・回収・再生等については,以下のような手順
で行った。
<教師側の操作>
1)
CaLabo Ex の 日 本 語 バ ー ジ ョ ン を 起 動 さ せ ,
メインタブからムービーテレコを選択する(学生の画
面 に も , 学 生 用 の ム ー ビ ー テ レ コ が 立 ち 上 が る )。
2)
Teaching タ ブ を Self Learning タ ブ に ,MIC ボ
タ ン を PC ボ タ ン に , そ れ ぞ れ 切 り 替 え る 。
3)
問題の音声をヘッドセットから流すため,
CALL シ ス テ ム の 操 作 パ ネ ル の ス ピ ー カ ー ボ タ ン を
OFF に し , メ イ ン タ ブ の 「 聞 か せ る 」 ボ タ ン を 選 択 す
る。
4)
音 声 を ヘ ッ ド セ ッ ト か ら 流 し ,終 了 し た ら 録
音開始の合図をする。
5)
全 員 が 録 音 終 了 し た こ と を 確 認 後 ,各 自 デ ス
クトップ上に保存するように指示する。
6)
ア プ リ タ ブ の「 フ ァ イ ル 提 出 」ボ タ ン を 選 択
し ,「 生 徒 に 提 出 を 許 可 す る 」 ボ タ ン を ク リ ッ ク す る 。
7)
「 提 出 フ ォ ル ダ 」に 全 員 分 の 音 声 フ ァ イ ル が
入っていることを確認後, 1 人 1 人の音声を再生し,
図 1. ム ー ビ ー テ レ コ の イ メ ー ジ
クラス全員でチェックする。
(上:教師の画面,下:学生の画面)
<学生側の操作>
ライティング
1)
ヘッドセットで問題の音声を聞く。
2)
録 音 開 始 の 合 図 で ,ム ー ビ ー テ レ コ の 画 面 下
独 立 問 題 が あ る が( 表 1),本 授 業 で は ,時 間 の 都 合 に
の右端にある録音ボタン(赤丸)をクリックし,録音
より,通常のライティングの授業ではあまり扱うこと
を開始する。
がないと思われる統合問題のみを扱った。統合問題で
3)
ライティングには,スピーキング同様,統合問題と
解 答 が 終 わ っ た ら , 停 止 ボ タ ン ( ■) を ク リ
は ,リ ー デ ィ ン グ( 約 3 分 間 ),リ ス ニ ン グ( 約 2 分 間 )
ックし,録音を停止する。
4)
の 後 ,そ れ ら の 情 報 に 関 す る 設 問 に つ い て ,PC 上 で 作
再 生 ボ タ ン( 右 向 き 三 角 )を ク リ ッ ク し ,自
文 を 書 く ( 約 20 分 間 )。
84
初 日 の 授 業 で , 制 限 時 間 ( 約 20 分 間 ) を 設 け , PC
ことにより,2 回目の産出語数が大幅に増えたと考え
上 で 作 文 ( 1 問 ; 150~ 225 語 程 度 ) を 書 か せ た 。 最 終
られる。
日 の 授 業 で ,添 削 し た 全 員 分 の 作 文 の コ ピ ー を 配 布 し ,
3.2. TOEFL iBT ス コ ア
各作文について講評した後,再度同じテーマでその場
実 際 の TOEFL iBT と 異 な り , TOEFL iBT Complete
で書かせた作文を中間モニターに映し,1 回目の作文
Practice Test の 場 合 , 何 度 も 受 け る こ と が 可 能 で , 好
と比較しながら再度講評した。
きなときに中断して休憩できるなど,かなり自由度が
高い。そのため,実際のテストとそのまま比較するこ
このように,スピーキングとライティングについて
と は で き な い 。そ こ で ,受 講 前 後 と も に TOEFL iBT を
は,教師による講評だけでなく,ピアレヴューの要素
受 験 し た 学 生( 6 名 )の ス コ ア の み を 比 較 し た と こ ろ ,
も入れた。氏名は出さないようにしたものの,少人数
全 員 の ス コ ア が 向 上 し て お り ,全 体 で 平 均 10.2 点 の 伸
制で個人が特定されやすかったため,本人が望まない
び が 見 ら れ た ( 表 5)。
場合には公開しないなどの配慮も行った。しかしなが
ら ,た と え 思 っ た よ う な 解 答 が で き な か っ た 場 合 で も ,
表5.事前・事後テストの平均スコアと伸び (n =6)
ピアレヴューに抵抗を持たないことが,上達への一歩
セクション
リーディング
リスニング
スピーキング
ライティング
であるとも言えるだろう。
3. 結 果 と 考 察
3.1. 授 業 に お ける ス ピ ーキ ン グの 伸 び
合計
スピーキングの観点から授業の効果を調べるため,
事前テスト
17.0
15.2
16.0
17.2
65.3
事後テスト
20.5
18.2
18.0
18.8
75.5
伸び
3.5
3.0
2.0
1.6
10.2
学生の解答(音声)を録音・分析した。本稿では,以
また,どのセクションにもまんべんなく伸びが見ら
下 の Type 1 の 問 題 に つ い て の 調 査 結 果 を 報 告 す る 。
れることから,本授業は 4 技能をバランス良く伸ばす
ことに効果的であったと言えるだろう。
Choose a person from your childhood. State wh y that
3.3. ア ン ケ ー ト
person was significant to you. Give details and examples
to support
your
choice. (Kaplan
最終日にアンケートを行い,各セクションの授業内
TOEFL iBT with
容 に つ い て , 7 件 法 ( 1=非 常 に 良 く な か っ た , 4=ど ち
CD-ROM 2008-2009, p.297)
ら と も 言 え な い ,7=非 常 に 良 か っ た ) で 満 足 度 を 評 価
1 回 目 と 講 評 後 の 2 回 目 の 解 答( 有 効 デ ー タ 11 名 分 )
してもらったところ,すべてのセクションにおいて,
に つ き ,Range32 (Nation, 2004) を 用 い て ,発 話 総 語 数
ネ ガ テ ィ ヴ な 感 想 (1~3) は 皆 無 で あ っ た( 表 6)。満 足
(token) お よ び 異 な り 語 数 (t ype) を 比 較 し た ( 表 4)。
度 の 平 均 は , ス ピ ー キ ン グ (6.7) が 最 も 高 く , リ ー デ
ィ ン グ (6.2),リ ス ニ ン グ (6.1),ラ イ テ ィ ン グ (5.8) と
続いた。
表4. スピーキングテストの平均産出語数 (n =11)
発話総語数 (token)
標準偏差
最大値
最小値
異なり語数 (type)
標準偏差
最大値
最小値
1回目
2回目
44.2
20.6
73
8
27.5
10.5
42
82.9
23.7
119
47
50.5
11.8
68
6
33
表6.各セクションの授業内容に対する満足度 (n =12)
1
2
3
4
5
6
7
平均
リーディング
0
0
0
0
2
6
4
6.2
リスニング
0
0
0
0
2
7
3
6.1
スピーキング
0
0
0
0
0
4
8
6.7
ライティング
0
0
0
1
3
5
3
5.8
注: 1=非常に良くなかった,4=どちらとも言えない,
7=非常に良かった。
t 検 定 ( 両 側 ) の 結 果 , 平 均 発 話 総 語 数 は 44.2 語 か
また,各セクションについての感想(良かった点と
ら 82.9 語 に (t(10) = 7.30, p < .001) , 平 均 異 な り 語 数
改善点)を自由に記述してもらった。 リーディングと
は 27.5 語 か ら 50.5 語 に (t(10) = 8.28, p < .001), い ず
リ ス ニ ン グ の 良 か っ た 点 と し て は ,「 段 落 毎 に 要 約 し
れも 1 回目と 2 回目の間で有意な伸びが見られた。ピ
て み る こ と で 自 分 の 理 解 度 を 確 認 で き た 」,「 さ ま ざ ま
アレヴューを通して, 1 回目の自分の解答に対するフ
な問題を解くことで背景知識が身 に付いた」など,
ィードバックおよびクラスメイトの解答を参考にした
TOEFL iBT に 特 化 し た 内 容 に 満 足 し て い る と 思 わ れ る
85
感想が目立った。改善点としては,どちらも「実際の
することは,大いに参考になるだろう。
問 題 よ り 少 し 易 し か っ た 」, リ ー デ ィ ン グ で は 「 PC 上
ま た ,受 講 前 後 の TOEFL iBT ス コ ア を 比 較 し た 結 果 ,
で 読 む の と は 少 し 違 う 感 じ が し た 」, リ ス ニ ン グ で は
どのセクションもまんべんなく伸びていたが, リーデ
「スピーキングのようにヘッドセットで音声を聞きた
ィングとリスニングのときにはアウトプット,スピー
かった」という感想があり,リーディングおよびリス
キングとライティングのときにはインプットも意識し
ニング・セクションについても,できるだけ本番に近
て授業を行ったことが,4 技能をバランス良く伸ばす
い形での授業を望んでいることが分かった。
ことに効果的であったと考えられる。
スピーキングとライティングの良かった点とし
単位取得を目的としない集中講義(補習)は,少人
て は ,「 自 分 の 解 答 を 客 観 的 に 分 析 で き た 」,「 他 の 学
数 制 の TOEFL iBT 対 策 向 き で あ る と も 言 え る が ,「 正
生 の 解 答 が 参 考 に な っ た 」,「 コ メ ン ト や ア ド バ イ ス の
規 授 業 と し て 行 っ て ほ し い 」と い う 声 も 多 く 上 が っ た 。
後に同じ問題をやり直せたことで自信がついた」など
大 学 で は CALL 教 室 の 設 備 を 活 か し ,実 際 の 試 験 に 近
の感想があり,ピアレヴューに対する満足度が高かっ
い 環 境 で 授 業 を 行 う こ と が 可 能 で あ る た め , TOEFL
た と 言 え る だ ろ う 。ス ピ ー キ ン グ で は ,「 本 番 さ な が ら
iBT 対 策 は , 通 常 の 授 業 で の 指 導 に も ふ さ わ し い の で
にヘッドセットが使えた点が良かった」という声が多
はないかと思われる。大学で資格試験対策授業を行う
く ,「 自 分 の 声 を 録 音 し て 客 観 的 に 聞 く こ と で , 発 音 ,
ことに対しては批判もあるが,留学というはっきりと
スピード,内容を見直す良い機会になった。それを評
し た 目 的 が あ る 点 で ,TOEFL iBT は 他 の 資 格 試 験 と は
価してもらう機会は貴重だった」などのような肯定的
大 き く 異 な る 。ま た ,必 ず し も TOEFL iBT 対 策 と い う
な意見がほとんどであった。改善点としては,多くの
タイトルの授業でなくても,常に 4 技能の指導を心が
学 生 が「( リ ー デ ィ ン グ や リ ス ニ ン グ に 比 べ て )問 題 数
けることは,結果的に,留学希望者を含め,あらゆる
が少なかった」ことを指摘している。スピ ーキングお
学生が 4 技能をバランス良く伸ばすことに役立つと思
よびライティング・セクションの統合問題にも含まれ
われる。
ていることから, リーディングとリスニングには,結
一般的に低いとされる日本人の英語力の底上げは
果的にアウトプット・セクションと同じかそれ以上の
重要であるが,中・長期的な留学を希望する習熟度が
時間を取った。そのため,アウトプット指導を重点的
比較的高い学生の英語力をさらに引き上げることによ
に行ってほしいと希望する学生にとっては,少し物足
って,国際競争力を高めることも忘れてはならないだ
りない面があったかもしれない。しかしながら,全体
ろう。特に,そのような学生の場合,言語理解に比べ
としては,リーディングとリスニングについても,
て言語産出が苦手である傾向が見られるため,スピー
TOEFL iBT の 特 徴 を 踏 ま え た 授 業 内 容 は 役 に 立 っ た よ
キングやライティングの能力を伸ばすためには,本授
うであった。
業で行ったようなアウトプット練習を意識的に行う必
要があるだろう。
4. ま と め と 今後 の 課 題
注
授業内で行ったスピーキングおける産出語数の伸
び ,TOEFL iBT ス コ ア の 伸 び , お よ び ア ン ケ ー ト 結 果
1 授業内で得られたデータを研究目的に使用すること
から,本授業の目的は概ね達成できたと考えられる。
については,すべての学生の承諾を得ている。
ス ピ ー キ ン グ・セ ク シ ョ ン の Task 1 の 1 回 目 と 2 回
文
目では,発話総語数と異なり語数に有意な伸びが見ら
献
[1] 森 下 美 和 . (2012).「 派 遣 交 換 留 学 に 必 要 な ス コ ア
取 得 の た め の TOEFL iBT 対 策 授 業 」『 高 等 教 育 に
お け る 英 語 授 業 の 研 究:学 習 者 の 自 律 性 を 高 め る
リ メ デ ィ ア ル 教 育 』( JACET 第 2 次 授 業 学 研 究 特
別委員会編)
[2] 読 売 新 聞 . (2010 年 3 月 10 日 ).「 ハ ー バ ー ド 大 学 学
長,日本人留学生の奮起促す」
[3] Educational Testing Service. (2008). TOEFL iBT
tips: How to prepare for the TOEFL iBT. Retrieved
from
http://www.ets.org/Media/Tests/TOEFL/pdf/TOEFL_
Tips.pdf
[4] Educational Testing Service. (2013). Test and score
data summary for TOEFL iBT tests and TOEFL PBT
tests.
Retrieved
from
http://www.ets.org/s/toefl/pdf/94227_unlweb.pdf
れたが,2 回連続で解答したことによる繰り返しの効
果か,あるいは教師による講評やピアレヴュー(今回
はクラスメイトの解答をチェックするのみで,クラス
メイトによってチェックされることはなかったが)の
効果によるものかは分からない。また,今回は, 1 回
目と 2 回目の産出語数の違いのみを見たが,発話内容
についてもさらに詳しく調べる必要がある。ただし,
少なくとも同じ問題を使って何度も練習すること,可
能であればピアレヴューを行うことなどは効果的であ
るだろうと予測できる。一般に,市販のテキスト等に
は模範解答しか載っていないことが多いため,本授業
で行ったような方法でクラスメイトの解答をチェック
86
[5] Luoma, S. (2004). Assessing speaking. Cambridge:
Cambridge University Press.
Appendix: ス ピ ー キ ン グ 用 フ ォ ー マ ッ ト 例
独 立 問 題 (Type 1)
Type 1: Independent Speaking
1) Your opinion / Your choice about the topi c
2) Reasons & Example(s)
1.
2.
3.
統 合 問 題 (Type 3)
Type 3: Integrated Speaking
1) Issue (Plan)
2) His / Her opinion
3) Reasons
1.
2.
3.
87
Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the English Language Education Society of Japan
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
日本語を第一言語とする英語学習者の
比較的自発的な発話におけるフィラーに見られるいくつかの特徴
横森 大輔 1
1
遠藤 智子 2
河村 まゆみ 3
鈴木 正紀 4
原田 康也 5
名古屋大学大学院国際言語文化研究科 〒464-8601 愛知県名古屋市千種区不老町
2 筑波大学人文社会系 〒305-8577 茨城県つくば市天王台 1 丁目 1-1
3
4 Pearson
Knowledge Technologies
5
E-mail:
1
言語アノテータ
4040 Campbell Ave., Suite 200 Menlo Park, CA 94025
早稲田大学法学学術院 〒169-8050 東京都新宿区西早稲田 1-6-16
[email protected], 2 [email protected], 3 [email protected],
4 [email protected],
5 [email protected]
概要 英語学習者のスピーキング能力を評価する上で、一つの鍵となるのがフィラーをはじめとする非流暢性現
象である。本研究では、日本人学習者の英語発話におけるフィラーの特徴を把握するため、どのような形態のフィ
ラーがより高頻度で用いられているか、文中のどの位置で用いられる傾向があるか、そのような傾向が英語母語話
者とどう異なるか、という点についてこれまで収集したデータの一部を分析した結果を報告する。
Fillers in relatively spontaneous utterances by Japanese EFL
Learners
Daisuke YOKOMORI1 Tomoko ENDO2 Mayumi KAWAMURA3 Masanori SUZUKI4
and Yasunari HARADA5
1 Graduate
2 Faculty
School of Languages and Cultures, Nagoya University
of Humanities and Social Sciences, Tsukuba University
Furo, Chikusa, Nagoya 464-8601
1-1-1 Tennodai, Tsukuba, Ibaraki,
305-8571
3 Language
4
Pearson Knowledge Technologies
5 Faculty
E-mail:
of Law, Waseda University
1
Annotator
4040 Campbell Ave., Suite 200 Menlo Park, CA 94025
1-6-1 Nishi-Waseda, Shinjuku-ku, Tokyo, 169-8050
[email protected], 2 [email protected], 3 [email protected],
4 [email protected],
5 [email protected]
Abstract This study investigates how learners of English use fillers during their response to questions.
Spoken responses from 8 Japanese EFL freshman students were collected and analyzed in both a quantitative
and qualitative manner. The result suggests that, although the ways in which fillers are used by learners are
different from fillers in L1 English speech and those in L1 Japanese speech, they are employed by learners in
some systematic ways reflecting learners' discourse strategies.
1. はじめに
英語学習者のスピーキング能力を評価する上で、
一つの鍵 となる のが フィラ ーをは じめと する非流
暢性現象である。本研究では、日本人学習者の英語
発話におけるフィラーの特徴を把握するため、どの
アイテムがより高頻度で用いられているか、文中の
どの位置で用いられる傾向があるか、そのような傾
向が英語母語話者とどう異なるか、という点につい
てこれま で収集 した データ の一部 を分析 した結果
横森大輔, 遠藤智子, 河村まゆみ, 鈴木正紀, 原田康也,
"日本語を第一言語とする英語学習者の比較的自発的な発話におけるフィラーに見られるいくつかの特徴,"
日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集, pp. 89-96, 日本英語教育学会編集委員会編集,
早稲田大学情報教育研究所発行, 2014 年 3 月 31 日.
This proceedings compilation published by the Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda University.
Copyright © 2014 by Daisuke Yokomori, Tomoko Endo, Mayumi Kawamura, Masanori Suzuki, Yasunari Harada.
All rights reserved.
ぉ, one- one hour ぁ”)・母音延伸(“spent ぉ: ”)・
フィラー(“う::ん”)といった非流暢性現象が頻繁
に観察される。この中で、本研究では、特にフィラ
ーに焦点をあて、学習者発話におけるいわゆる非流
暢性の理解を深めるための手がかりを得たい 。
を報告し、そのような傾向が日本語の談話的特徴か
ら影響を受けている可能性を論ずる。まず、本節に
おいてその背景について述べる。
1.1. L2 スピーキングにおける習熟度と流暢性
英語を学ぶ学習者の多くにとって、学習の ゴール
の一つとして設定されるのが「流暢な (fluent) 話
し手になること」である。Lennon (1990) によれば、
外国語学習における流暢さ (fluency) とは、広義に
はその言 語にお ける (スピ ーキン グの) 能力全般
(overall (speaking) proficiency) を、狭義には、円
滑 か つ 容 易 に 言 葉 が 口 か ら 出 せ る こ と
(smoothness and ease of oral linguistic delivery)
を、それぞれ意味する。
後者の 意味 でのス ピー キン グの 流 暢性 を評価 す
る方法として は 、話速 (speech rate) や発話潜時
(latency) といった指標を用いるやり方がある一方
で、個々の言語行動の質的特徴として、発話におけ
るポーズ・繰り返し・修復・母音延伸・フィラーと
いっ た現 象 に着 目す る 観点 も存 在 する (Koizumi,
2005) 。これらのポーズ・繰り返し・修復・母音延
伸・フィラーといった諸現象は発話から(狭義の)
流暢性を損なう源としてみなされ、「非流暢性現象
(dysfluency phenomena) 」 と 呼 ば れ て い る (cf.
Biber et al., 1999:1053) 。これら諸現象のいずれ
も、英語学習者の流暢性について検討する上で鍵に
なるものである (Watanabe & Rose, 2012) 。
例えば、以下は、我々が収集した学習者発話の一
つである 1。
1.2. フィラーからみた L2 スピーキング
フィラーという概念でとらえられる範囲は、研究
者によって、あるいは研究文脈によって多様である。
本研究ではさしあたり、「発話の隙間を埋めるのに
用いられ る音声 要素 で、そ れ自体 は 発話 の意味内
容・メッセージ内容に関わらないもの」と定義して
おこう。 フィラ ーの 典型と して は 、英語 における
“uh”や “um”、 あ る い は 日 本 語 に お け る 「 あ の ー 」
「えーっと」といったアイテムの使用が考えられる。
一般に、発話が書き言葉に編集されるとき(例:新
聞記事、TV の字幕)、フィラーは省略される傾向が
ある 2。
例えば英語では、“uh”や“uhm”のような原初的な
音声から、“you know”や“like”のようないわゆる談
話標識、そして “whatchamacallit”のよう な一つの
節 (“what you may call it”) が全体としてフィラ
ー化しているものまで、多岐に渡るものが フィラー
として取り上げられている (Fox, 2010)。このよう
に、フィラーというカテゴリーは、形態統語的ある
いは意味論的には極めて多様であり、上記のように
談話機能 の点か ら 規 定され るもの として 捉えるの
が妥当だろう。
フィラーの使用については、これまで心理言語学
やコーパス言語学の分野を中心に、英語 (Maclay
& Osgood, 1959; Biber et al., 1999; Clark &
Fox-Tree, 2002) や日本語 (山根, 2003; 中島,
2009; Watanabe, 2009) といった各言語に関して
多くの知見が蓄積されてきている。
第 2 言語習得 (SLA) の研究領域では、非母語話
者によるスピーキングの特徴の一つとしてフィラ
ーの用いられ方への注目が集められている
(Griffiths, 1991; Kormos, 1999; Watanabe &
Rose, 2012) 。一般に、外国語スピーキングの学
習・教育はできるだけ言い淀まずに話せるようにな
ることを目標としており、フィラーなどの「非流暢
性現象」は、学習者の習熟度の低さと結び付けられ
て理解されることが多い (Lennon, 1990; Foster,
2012) 。これは、学習対象の言語における語彙や構
“I thi:nk that I spent ぉ:, (0.4) ぉ, one year:, ぉ,
one- one hour ぁ (0.7) during ぅ:, (1.0) during ぅ
this semester ぁ. (0.3) tch! .hh う::ん? (4.5) I
thi:nk, う::ん, there is many good things: .hh
(0.5) about ATR CALL. ”
この発話に見られるように、学習者の発話にはポー
ズ・繰り返し(“one- one hour ぁ”)
・修復(“one year:,
1
ここでは、発話の諸特徴をできるだけ詳細に表現する
ため、いくつかの特殊記号が用いられている。ここで用
いられている記法については以下の通り。(0.4) などの数
値は、ポーズの継続長(秒)を表している。日本語の表
記は、語末に母音が挿入されているケースや日本語によ
る音声が起きている箇所を示している。thi:nk などに見
られるコロン(:)は音の引き伸ばしを表している。ダッ
シュ(-)は言いかけられた音が中断された箇所を示して
いる。.hh のようにピリオドと h が並んでいるのは、吸
気音を示している。tch!とあるのは、舌や唇の鳴る音を
示している。
2
インタビューや会議などの録音資料の文字起こしの業
者などでは、フィラーの類は「ケバ」と呼ばれ、同じ録
音資料に対する作業でも「ケバ取り」や「ケバ付きの文
字起こし」といった形で発注のタイプが区別されている。
90
文の知識が不十分であることによって、オンライン
での発話産出に伴う認知的負荷が極めて高くなり、
その結果として発話が途切れ途切れになりやすい
という捉え方によるものである。
それに対して、フィラーと習熟度の関係性に疑問
を投げかけたり、むしろフィラーの使用が習熟度の
高さを示すものとして位置づける議論も存在する。
例えば Kang (2010) は、米国内の大学でティーチ
ングアシスタントを務める留学生 11 名(母語の内
訳は、中国語(北京官話)が 3 名、日本語とアラビ
ア語がそれぞれ 2 名、韓国語・ロシア語・ヒンディ
ー語・ネパール語がそれぞれ 1 名)による発話デー
タを対象 に、発 話 に みられ る 様々 な音声 的特徴が
「内容のわかりやすさ (comprehensibility)」およ
び「発音のなまり度 (accentedness) 」に関する母
語話者か らの 印 象評 定に与 える影 響を調 査する中
で、「フィラーの回数」はどちらにも有意な影響を
与えておらず、「フィラーの平均長」は「わかりや
すさ」にわずかな影響がみられるのみであることを
報告している。また、Temple (1992) は、フランス
語の母語話者と学習者の発話を比較し、母語話者の
方が「言葉に詰まった際に、ただ沈黙するのでは無
くフィラーで隙間を埋める」行動をよく取る傾向が
ある(すなわち、学習者はフィラーを使わずにただ
沈黙してしまう傾向がある)と論じている。Rieger
(2003) は、英語を母語とするドイツ語学習者 10 名
の発話を分析し、習熟度の高い学習者ほどフィラー
を頻繁に使用することを示している。Rose (2008)
は、フィラーの使用をコミュニケーション能力
(communicative competence) の 一 部 と し て 位 置
づけ、英語学習者に対してフィラーを指導すること
の積極的意義を説いている。
ところで、既に述べたようにフィラーをはじめと
する非流暢性現象は、学習者に特有のもの ではない。
Biber et al. (1999:1048) は、フィラー等の非流暢
性現象が 生起し ても 特に言 語産出 への問 題として
知覚されないようなものを平常的非流暢性
(normal dysfluency) と呼んでいる。 したがって、
単にフィラーが起きているかどうか、あるいは、ど
れだけの量のフィラーが起きているか、といった観
点だけでは、学習者のスピーキングにおける流暢性
の実態を理解する上で十分とは言えず、適切なアイ
テムを適切な位置で使えるか、という課題として捉
え直す観点も求められる。
本研究では、日本人学習者の英語発話におけるフ
ィラーの特徴を把握するため、どのアイテムがより
高頻度で用いられているか、文中のどの位置で用い
られる傾向があるか、そのような傾向が英語母語話
者とどう異なるか、という点についてこれまで収集
したデータの一部を分析した結果を報告 する。また、
最後にそ のよう な傾 向 が生 じた原 因につ いて考察
を行う。
2. データと方法
2.1. データの概要
本研究では、日本国内の大学の 1 年生で、同じ必
修英語授業を受講している 8 人の英語発話データ
を対象に分析を行った。この 8 人のそれぞれに関し
て、データ収録の環境に一定の多様性をもたせるた
め、2 つの異なる状況における英語発話が収録され
た。
1 つは、「応答練習」と呼ばれる英語授業内のグ
ループワークにおいて、読み上げられた質問に対し
てその場で応答した発話である。もう 1 つは、電話
を 利 用 し た ス ピ ー キ ン グ テ ス ト で あ る Versant
English Test (Pearson, 2007) の 中 の “Open
Questions”セクションにおいて、テストシステムか
ら読み上 げられ た 質 問に対 してそ の場で 応答した
発話である。いずれの状況においても、発話者の個
人的な経 験や意 見を 一定の 長さの 英文で 応答する
ことが求められている。また、いずれの状況につい
ても、同じ時期(2008 年 1 月中旬)に収録が行わ
れた 3。
データ の母 体とな った 受講 生の英 語習 熟度と し
ては、ヨーロッパ共通参照枠 (CEFR) で A1 から
B1 に分布している。サンプルとして選んだ 8 人は、
できるだ け習熟 度に 偏りの 無いよ うに 作 為抽出を
行って選ばれた。Versant English Test において、
総合点がクラス平均 37.4 点に対してサンプル 8 名
は平均 37.2 点 であり、また流暢さの項目ではクラ
ス平均 33.8 点に対してサンプル 8 名の平均は 34.4
点 であった。
2.2. コーディング
選出したサンプルに対して、言語分析ソフト
ELAN ( http://tla.mpi.nl/tools/tla-tools/elan/ ) を
利用して詳細な書き起こしを行った。ELAN を利用
することで、ポーズ区間や発話区間の長さを 0.1 秒
単位の精度で計測することが可能になっている。書
き起こしは、まず第三著者(河村)が行 ったものに
3
なお、これらは本研究の第五著者(原田)を中心とし
て展開している、大規模な学習者発話データ収集プロジ
ェクト (Harada et al., 2008) の一部を構成するものであ
る。このプロジェクトでは 2006 年以来、毎セメスターで
テラバイト単位のデータを収集し、その一部が書き起こ
しされている。
91
“I can’t … uh … I didn’t read one hundred
pages”
・「文/節の境界」の例:
“… uh … I read one hundred pages”
・「文/節の内部」の例:
“I read … uh … one hundred pages”
対して、第一著者(横森)および第二著者(遠藤)
が分担してチェックおよび詳細化を行った。
「応答練習」データに関しては、8 人の話者につ
きそれぞれ 2 つの応答(1 応答の時間は約 45 秒間)
を 分 析 し た と こ ろ 、 151 の フ ィ ラ ー を 得 た 。
「Versant」データに関しては、8 人の話者につき
それぞれ 3 つの応答(1 応答の時間は 20 秒間)を
分析したところ、68 のフィラーを得た。
これらの合計 219 事例のフィラーについて、その
形態的特 徴およ び 生 起位置 の特徴 につい てコーデ
ィングを行った。
まず、形態的特徴に基づいて、次のように分類し
た。
「リペア前」とは、自分が言った語句の言い換え
などのリペア(修復) (Schegloff et al., 1977)の直
前の位置である。「文/節の境界」には、応答を構
成する文と文の間や、接続詞と後続する節の境界な
どが含まれている。そして、「文/節の内部」には、
他動詞と 目的語 の間 や前置 詞と名 詞句の 間などが
含まれる。
(a) 母音型(例:英語の“uh”や“um”、日本語の「あ
ー」や「うーん」など)
(b) 英語語句型(例:“I mean”など)
(c) 日本語語句型(例:「あのー」など)
(d) その他
3. 結果と考察
3.1. フィラーの形態的特徴の傾向
フィラーの形態的特徴 に関しては、 219 のうち
190 と、母音型が圧倒的多数を占めていた。これに
対して、英語語句型は、僅か 3 例 (“I mean”, “oh”,
“yeah”) が観察されたのみであった。
これは、英語母語話者による英語発話におけるフ
ィラーに関して、母音型フィラー (“uh”, “um”) と
同程度 “I mean” “you know” “well” などの語句型
フィラーが用いられている (Biber et al. 1999) と
いう分布と大いに異なるものである。
このうち母音型については、(i) 継続時間(秒)と
(ii) フィラー末尾における鼻音( /n/ ないし /m/ )
の有無をコードした。また、発話の流れの中でのフ
ィラーの生起様態として (iii) 独立型か前接型かを
コードした。独立型とは、フィラーが前後をポーズ
で囲まれており、前後の発話から相対的に独立して
いるものである。前接型とは、フィラーの直後にポ
ーズを挟まずに発話が行われているものである。そ
れぞれの例を以下に記す。
表1
フィラータイプごとの頻度
190 (86.8%)
母音型
3 (1.3%)
英語語句型
23 (10.5%)
日本語語句型
3 (1.3%)
その他
219
合計
・「独立型」の例:
“I enjoyed ... uh ... this class...”
・「前接型」の例:
“I enjoyed ... uh this class...”
表2
L1 英語におけるフィラーの分布
(Biber et al., 1999: 1096)
米語会話
英語会話
well
ca. 6000
ca. 5500
you know
ca. 4500
ca. 2000
I mean
ca. 2000
ca. 1500
uh/er
ca. 6500
ca. 4000
um/erm
ca. 3000
ca. 3000
(100 万語あたりの生起)
なお、母音型フィラーに関しては、その母音の音声
学的特徴の違いから、<母音の種類>や<英語的な
母音か日 本語的 な母 音か> といっ た 区別 をコード
することも試みられたが、判定に一貫性を持たせる
ことや中 間的な 事例 の扱い が容易 ではな かったた
め、当座の分析からは射程外とした。
次に、各フィラーに対して、その生起位置の特徴
として「リ ペア前」「 文/節 の境界」「 文/節の内
部」という 3 つの値を付与した。それぞれの例を以
下に記す。
また、日本語語句型は、23 例が観察されたが、
そのうちの約半数である 12 例が「なんだろう」お
よびそのバリエーション(「なんだっけ」等)であ
・「リペア前」の例:
92
った 4。
表3
日本語語句型フィラーの内訳
「なんだろう」とそのバリエーション
「うん」とそのバリエーション
「わかんない」
えっと
指示詞型フィラー (「あの」)
その他(語句の断片)
12
4
2
2
1
2
文/節の境界
図1
これは、日本語母語話者による日本語発話におけ
るフィラーに関して、指示詞由来のフィラー(「あ
のー」「そのー」)や、その他の語彙的フィラー(「え
っと」「なんか」「まあ」)の頻度が高いという分布
と大いに異なるものである。
文/節の内部
リペア前
生起位置ごとのフィラー継続時間
これは、「リペア前」のように急いで語句を訂正
しなければならない時と、「文/節の境界」や「文
/節の内部」のように発話内容を考えるのに時間を
かけなければならない時で、求められているタスク
に応じて 学習者 がフ ィラー の長さ を調整 している
ことを示唆するものである。
また、母音型フィラーの末尾が鼻音で終わるかど
うかという点については、「文/節の境界」におい
ては鼻音で終わる場合が多かったのに対し、「文/
節の内部」および「リペア前」においては鼻音で終
わる場合が少なかった。
表4
L1 日本語におけるフィラーの分布
(中島, 2009: 7)
フィラータイプ
生起数 (6000 発話中)
617 (37.9%)
指示詞型
330 (20.2%)
母音型
151 (9.3%)
「で」型
122 (7.5%)
「まあ」
116 (7.2%)
「なんか」
83 (5.0%)
「えっと」
44 (2.6%)
「うん」型
以上の事実から、学習者にとって “I mean” のよ
うな英語語句型フィラーが利用可能では ないこと、
それと同 時にで きる 限り日 本語の 使用を 差し控え
ようとする規範意識が存在することが示唆される。
3.2. 母音型フィラーの分布パターン
学習者が用いるフィラーについて、その形態的特
徴と生起 位置に どの ような 相関関 係が見 出せるだ
ろうか。ここでは、特に頻度の高い母音型フィラー
の内訳として、形式と位置の相関について検討し、
学習者のストラテジーについて考察する。
まず、母音型フィラーのうち、「リペア前」の継
続時間の平均値は、それ以外の場合よりも約半分の
長さであった。
文/節の境界
文/節の内部
リペア前
図 2 生起位置ごとの末尾での鼻音の有無
(いずれも左側が鼻音なし、右側が鼻音あり)
これは、より大きな切れ目においては、鼻音で終
わるフィラー(例:
「うーん」)によって、その隙間
を埋めようとする傾向があることを示唆している。
そして、直後の発話との関係性の観点から、独立
型フィラーと前接型フィラーを比較すると、前者の
方が後者よりも継続時間が長いことが示された。
4
ここで日本語語句型フィラーとして認定した事例の一
部は、日本語へのコードスイッチングが起きていると捉
えるならば、フィラーとみなすことが適切ではない可能
性もある。本研究では、「当該の文脈においてしかるべき
語句の類を産出せず、別の音声でその隙間を埋めている」
という点でひとまずフィラーの事例として分析を行った
が、この点には検討の余地があるだろう。
93
前接型
独立型
図3
いるということを、聞き手にディスプレイするスト
ラテジーとしての意味を持つと言える。
また、「リペア前」、すなわち、発話の途中で自覚
した問題に対して修正(リペア)を施す直前の位置
は、その文や節の全体構造を保ちながら、問題の要
素を修復 してか ら元 の発話 産出の 軌道に 復帰しな
ければい けない とい う課題 に話し 手が直 面してい
る局面である。このような位置において、短く、鼻
音では終わらないようなフィラーを、直後の要素と
連続して産出することは、話し手が「今この瞬間に」
問題に気付き、問題の修復と発話の起動への復帰を
できるだ け急い で行 おうと してい るとい うことを
聞き手に ディス プレ イする ストラ テジー としての
意味を持つと言える。
そして、「文/節の内部」、すなわち、一つの文や
節の産出 を開始 して から終 結させ るまで の途中の
位置というものは、あるアイディアの伝達を開始し
ているものの、特定の表現の産出に困難があるなど
の理由で 発話が 途中 で止ま ってし まって いる瞬間
である。このような位置において話し手が直面して
いる“課題”は、「文/節の境界」の場合と「リペア
前」の場合のちょうど中間的な性格になるだろう。
すなわち、産出途中の発話について自分が検討して
いることを示しつつ、その文や節の全体構造は見失
わせないようにしなければならない。このような位
置において生起する フィラーが、「文/節の境界」
の場合と「リペア前」の場合のちょうど中間的な性
格を有しているということは、話し手のストラテジ
ーとして 考えれ ば理 にかな ったも のであ ると考え
られる。
独立型/前接型の継続時間
さらに、独立型フィラーと前接型フィラーを生起
位置による出現頻度を比較してみると、前者は後者
よりも、統語的に大きな境界に生起しやすいことが
わかる。
文/節の境界
文/節の内部
リペア前
図 4 生起位置ごとの独立型 vs 前接型
(いずれも左側が独立型、右側が前接型)
4. まとめと考察
本分析 から 得られ た知 見お よび考 察は 次の通 り
である。まず、今回のサンプルとなった学生のフィ
ラーには、英語語句型や日本語語句型はほとんど含
まれず、母音型が圧倒的である。このうち、英語語
句型フィラーの頻度の低さについては、学習者にと
ってフィ ラーと して 利用で きる英 語表現 が知識と
して定着していない(あるいは知識として知ってい
ても運用において自動化に至っていない)ものと考
えられる。また、日本語語句型の頻度の低さについ
ては、学 習者た ちが 授業課 題とい う文脈 における
「可能な限り英語で話すべきである」という規範に
志向し、そのような規範を再強化している営みとし
て理解することができ、英語学習活動という観点か
らは肯定的に評価することができるだろう。
英語語句型や日本語語句型のフィラーと比べ、母
音型のフィラーは、Levelt (1989:483) も示唆して
3.3. 議論:位置と形態の相関をめぐって
ここまでに検討してきた「文/節の境界」「文/
節の内部」「リペア前」というフィラーの生起位置
の違いは、それぞれにおいて話し手が直面している
“課題”の違いに対応しているものと考えられる (cf.
Schegloff et al., 1977) 。
質問に応答している話し手にとって、「文/節の
境界」、すなわち、一つの文や節を産出してから次
の文や節を産出する間の位置は、ひとまとまりのア
イディア の伝達 を終 えて次 に何を 言うか を考えな
くてはな らない とい う課題 に話し 手が直 面してい
る局面である。このような位置において、持続時間
が長く、末尾を鼻音で終結させ、また、前後にポー
ズを伴ってフィラーを産出することは、自分が発話
そのものの進行を中断し、次に言う内容を検討して
94
いるように、言語中立的な音声としての性質を有し
ている。したがって、「可能な限り英語で話すべき」
という規範と「沈黙は避けられるべき」という規範
が存在する時に、英語の発話がスムーズに行われな
い場合の 次善の 策と して頻 出する のは理 にかなっ
ていると言える。
以上の点において、学習者によるフィラーの使い
方は、彼らの目標の一つとして考えられる英語母語
話者によるフィラーの使い方とも、彼らが母語であ
る日本語で話す際のフィラーの使い方とも異なる、
一種の学 習者言 語と しての 特徴を 帯びて いると言
えるだろう。
次に、同じ母音型であっても、その継続時間の長
さや末尾 が鼻音 で終 わるか どうか といっ た微細な
形態的特徴によって、生起する文中の位置の傾向に
違いがあることが示唆された。すなわち、「文/節
の境界」では前後の語句からの自律性の高いフィラ
ーが用いられる傾向があり、「リペア前」では前後
の語句か らの自 律性 が低い フィラ ーが用 いられる
傾向がある。そして、「文/節の内部」では、両者
の中間的 な特徴 を持 ったフ ィラー が用い られてい
る。これは、それぞれの文中の位置において話者が
直面する 課題の 違い が反映 した結 果とし て捉えら
れる。この点は、学習者たちが必ずしも英語の習熟
度が高くなくとも、フィラーをシステマティックに
使い分けていることが示唆される。
データ分析の結果、英語学習者によるフィラーの
使用は、英語母語話者のそれとも日本語のそれとも
異なる、固有のパターンを示していることがわかっ
た。それと同時に、限られた言語知識の中で、文脈
上適切な フィラ ーの 使用が 志向さ れてい るという
知見を得ることもできた。
第二に、本稿でリペアと呼んだものには、 文の
「再開始」 (“restart”) と呼ぶべきタイプ (e.g., I
can’t … um, I can’t read… ) と、
「語句の置き換え」
(“replacement”) と 呼 ぶ べ き タ イ プ (e.g., I can’t
… um, I don’t read…) が含まれており、これらは
話し手が 直面す る課 題とい う点で 性質が 異なって
いる可能性がある (Schegloff, 2013) 。
第三に、本稿で「文/節の境界」としてコードし
た文中の 位置の 中で も、文 と文の 間の位 置(例:
[Sentence] … uh… [Sentence])と、接続詞とそれ
に 導 か れ る 文 の 間 の 位 置 ( 例 : But, … uh…
[Sentence])では、フィラーによって行うことの性
質が大きく異なるだろう。このような違いに着目し、
さらなる分析を加えることで、英語学習者のフィラ
ー使用実 態につ いて の理解 がより 一層深 まること
が期待される。
なお、そもそも英語発話におけるフィラーと日本
語発話におけるフィラーは、性質が大きくことなる
可能性がある。Iwasaki (1993) によれば、日本語
の自然発話は英語の自然発話に比べて、統語的なユ
ニットが複数の音声的チャンク(イントネーション
ユニット)に分割されて漸次的に産出される傾向が
強い。また、Clancy et al. (1996) は、日本語会話
は英語会話に比べて、一つの文中に多数の聞き手反
応発話(例:相槌)が差し挟まれる頻度が著しく高
いことを報告している。母語話者の自然談話データ
に基づくこれらの日英対照研究は、日本語母語話者
にとって の発話 構築 がそも そも断 片的か つ漸次的
なものであることを示唆している。日本人英語学習
者のフィラーについて検討する際にも、日本語と英
語の間で のフィ ラー の性質 の違い を考慮 する必要
がある。
最後に、本研究の持つ英語教育実践への含意を述
べよう。まず、学習者の目標言語(本研究の場合は
英語)におけるフィラーの習得が容易ではないこと
を裏付ける結果と捉えることができる。単に繰り返
しスピーキングを行わせるだけでなく、フィラーを
始めとする「平常的非流暢性」を含んだ自然発話の
インプットが必要だろう。その際、本研究で得られ
た知見を メタ知 識と して学 生たち に導入 すること
で、より効率的にインプットを行うことができる可
能性があるだろう。
5. 今後の課題
今後は、データ分析におけるコーディングの粒度
をより高める必要があるように思われる。第一に、
既に述べたように、母音型フィラーに関しては、そ
の母音の音声学的特徴の違いから、母音の種類や英
語的な母 音か日 本語 的な母 音かと いった 区別をコ
ードすることも試みられたが、判定に一貫性を持た
せること や中間 的な 事例の 扱いが 容易で はなかっ
たため、当座の分析の対象とはしなかった 。そのた
め、学習者が「英語的なフィラー」をどの程度用い
ており、また「日本語的なフィラー」をどの程度用
いているか、といった点を考察する上では本研究に
は限界がある。今後は、判定の一貫性や中間的事例
の扱いを検討の上、この区別を分析に含めることが
望まれる。
文
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Proceedings of the 43rd Annual Meeting of the
English Language Education Society of Japan
This compilation is edited by the editorial committee of the English Language
Education Society of Japan and published by the Institute for Digital
Enhancement of
Cognitive Development, Waseda University.
ISBN 978-4-905166-06-1
Copyright © 2013 by the English Language Education Society of Japan and the
Institute for Digital Enhancement of Cognitive Development, Waseda
University.
All rights reserved. This compilation and contributed papers are protected by
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Copyright of contributed papers are reserved by respective authors.
タイトル:日本英語教育学会第 43 回年次研究集会論文集
編集者:日本英語教育学会編集委員会 発行者:早稲田大学情報教育研究所
発行者住所:東京都新宿区西早稲田 1-6-1 郵便番号 169-8050
発行日:2014 年 3 月 31 日 ISBN 978-4-905166-06-1