藤本昇特許事務所 大川 博之◇弁理士 アップルの日本法人とサムスンで争われた特許侵害に関する裁判の控訴審において、知財高裁 は大合議で審理を行うこととし、日本で初めて一般に向けて意見募集をすることになりました。 大合議で審理することの意義を教えてください。また、 この意見募集が「日本版アミカスブリー フ」とも呼ばれているそうですが、 「アミカスブリーフ」とは一体何でしょうか? (和歌山県 F.D) 1.知財高裁の大合議 的な条件でライセンスを許諾する用意 言)がされた場合の当該特許による差 知財高裁は、東京高裁の特別 がある旨の宣言) を行っていました。 止請求権および損害賠償請求権の行使 支部として平成17年4月に設立され 米国アップルとサムスンはライセン た、知的財産に関する事件を専門的に ス交渉を行いましたが、サムスンは米 す。 今回の意見募集に法的根拠はなく、 取り扱う裁判所です。 国アップルに対し、ライセンス条件に 知財高裁の訴訟指揮により、当事者が ついて米国アップルの求める情報を提 合意して行われました。このため、知 供しませんでした。 財高裁からの告知はなく、両当事者の 知財紛争に関して、裁判所の判断が 社会に与える影響の大きさを踏まえ、 に何らかの制限があるか」についてで 一定の信頼性あるルール形成および高 東京地裁は、サムスンの上記行為が 裁レベルにおける事実上の判断統一の 信義則上の義務に違反していることな 要請に応じるため、大合議制度が導入 どから、同社が自己の特許権に基づい 集まった意見は両当事者から書証と されています。 てアップルの日本法人に対して損害賠 して知財高裁に提出され、大合議の審 通常、知財高裁 (第1~4部) では3 償請求権を行使することは、権利の濫 理に用いられます。なお、意見募集は 人の裁判官が審理しますが、 大合議 (特 用であり許されないと判断しました。 3月24日で締め切られ、海外も含め 別部) では5人の裁判官が審理します。 大合議として、現在まで7事件が審 3.アミカスブリーフ制度 米国の制度である本制度は、最高裁 属中で、うち1件が今回の事件です。 規則等に根拠があり、当事者以外の第 本事件は、アップルの日本法人がサ なされました。 て58件の応募がありました。 理判断されました。現在は2事件が係 2.本事件の概要 代理人が一般に向けて呼びかける形で 5.今回の意見募集の意義 「日本版アミカスブリーフ」制度は、 三者 「アミカスキュリエ (裁判所の友) 」 日本弁理士会でも研究されていたた が裁判所に意見や資料(アミカスブ め、今回、意見募集が行われたことは リーフ)を提出することができます。 歓迎すべきことでしょう。 ムスンを相手取り、サムスンが損害賠 専門的な知識が裁判所に提供されるこ 一般から広く集まった意見が裁判所 償請求権を有しないことの確認を東京 とで、社会的な利益が判決に反映され の審理に反映されるため、当事者の主 地裁に求めた事件[平成23年 (ワ)第 ることが期待されています。 張だけを審理の基礎とすることに比 38969号]の控訴審です。概要は以下 のとおりです。 サムスンは、自己の加入している欧 べ、より適切な審理判断がされる可能 4.今回の意見募集 今回募集されたのは、 「標準化機関 性があります。 今回の 「日本版アミカスブリーフ」 は、 州電気通信標準化機構 (ETSI) に対し、 において定められた標準規格に必須と 知財高裁の訴訟指揮により実現しまし FRAND宣言 (公正、合理的かつ非差別 なる特許についての宣言(FRAND宣 たが、将来的には法整備が望まれます。 74 The lnvention 2014 No.6
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