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食いしん坊な王様
①
むかし むかし、ヨーロッパのある国に太った王様と やせ
たコックがいました。 王様が どうして こんなに太ってい
るかと言うと、とても食いしん坊だったからです。
王様:
アントニオ、アントニオ、おいしそうなにおい
だなあ、今晩のメニューは何だ。
おお、チキンか。チキンもいいが、ビーフと魚の料
理も忘れずに作ってくれよ。それから、デザートは
何だ?
コック: はい、今日のデザートはカスタードプリンでご
ざいます。
王様: おお、それは いい考えだ。それに、チーズケー
キとチョコレートパフェも 作ってくれよ。うんう
ん、これはおいしそうだ、晩ご飯の時間が楽しみ
だわい。
②
しかし、いろいろな料理をたくさん、それも全部一人で、
作らなければならないコックのアントニオは大変です。王様
はアントニオの作る料理しか食べません。他の人が作った料
理は『おいしくない』と言って、食べないのです。
王様:
ああ、アントニオが作った料理は最高じゃ。肉
料理も、魚料理も、うまいうまい。アントニオの
作った料理を食べたら、もう、他のコックが作っ
た料理なんか、食べられないわい。おい、チョコ
レートパフェはまだか、早く持ってきてくれ!
アントニオは何から何まで一人で作らなければならない
ので、くたくたです。ご飯を食べるひまも ありません。だ
から、とっても やせているのです。
反対に、王様はおいしい料理を食べて、どんどん、太ってい
きます。
③
王様がどんどん太っていくのを心配した王妃様はある日、
こう言いました。
王妃:
あなた、あなたが食いしん坊なのはよくわかり
ます。でも、このまま太っていったら、病気にな
って、死んでしまいますよ。子供たちもまだ小さ
いのに、
、、。もし、あなたが死んでしまったら、
、、
。
王妃様は涙を流しました。
王妃様: どうか、ダイエットを してください。
王様: よし、わかった。じゃ、このドーナッツを食べて
から、ダイエットを始めることに しよう。
④
王様は 3 日ほどダイエットをしていましたが、すぐに又、
元の食いしん坊に戻ってしまいました。
王様: アントニオ、アントニオ、あと 1 週間でわたしの誕
生日だが、今年の誕生日は何を作ってくれるのかい?
去年はサッカーができるぐらい大きなピザだったなあ、
おととしは世界一大きいハンバーガー、おいしかった
ぞ。3 年前のラーメンもおいしかったな。ああ、よだ
れが出てきた、今年は、、
、そうだ、今年は世界一大き
いケーキを作ってくれるか。お城の屋根に届くぐらい
の大きいのを頼むぞ。今年は 40 歳だから、ろうそくを
40 本立てて、一番上にわたしの人形をチョコレートで
作って、飾ってくれ。
⑤
さて、王様の誕生日の前の日です。小麦粉、卵、バター、
砂糖などの材料を前に、コックのアントニオは深いため息を
つきました。
コック: はあー、本当にそんなに大きいケーキが出来る
のだろうか。
アントニオは不安でしたが、王様の命令ですから、絶対に
作らなければなりません。
⑥
小麦粉や砂糖の分量を量ったり、卵を割ったり、材料を混
ぜ合わせたり、夜も寝ないでがんばりました。
翌朝、やっと、ケーキの生地をオーブンに入れることがで
きました。
コック: やれやれ、ケーキが焼きあがるまで、ちょっと
一休みしよう。
⑦
ケーキが焼ける、いい においが してきます。
王様: おお、これは いい においだ。きっと、世界一お
いしいケーキに なるぞ。
王子様と王女様も大喜びです。
王子、王女: わあい、早く食べたいなあ。
⑧
すると、その時です。
バン と いう大きな音がしました。
何かが爆発したのです。
⑨
それはケーキを焼くオーブンでした。
オーブンが爆発して、ケーキが むくむくと、山のように膨
らんでいます。
コック: しまった、膨らし粉を入れすぎたんだ。分量を量
る時に、小麦粉と膨らし粉を間違えたのかもしれ
ない、
、
、
。眠かったからな、間違えたんだ。
そうしている間にも、ケーキはむくむく、むくむくと膨ら
んで、大きくなっていきます。
責任を感じたアントニオはケーキが膨らむのを止めようと、
お城の塔の上から、ケーキに跳び移りました。
しかし、ケーキが膨らむのは止まりません。
⑩
とうとう、ケーキはアントニオを乗せて、雲の上まで、膨
らんでしまいました。
コック: た、た、助けてえ!
と叫びましたが、雲の上から叫んでも、だれも聞こえませ
ん。
王様: おおい、アントニオ、早く降りて来い! わたしは腹
が減ったぞ。早く降りてきて、おいしい物を作ってく
れ! まだ、朝ご飯も食べていないんだぞ!
しかし、どうやって降りればいいのでしょう。いくら高い
はしごでも、雲の上までは届きません。昔のことですから、
ヘリコプターもないし。
⑪
アントニオも おなかが すいてきました。 そこで、自分
が今乗っているケーキを ちぎって、食べることに しました。
コック: そうだ。こうやって、ちぎって、食べていけば、
だんだん、ケーキが低くなって、いつかは下に
降りられるぞ。 王様、待っていてくださいね。
がんばって、たくさん食べて、早く下に降りて、
おいしい料理を作って差し上げますからね。
アントニオは毎日、毎日、ケーキを たくさん食べて、ど
んどん太っていきました。
王様のほうは若いコックが作った料理が口に合わなくて、
食べることが出来ません。
どんどん痩せていきました。
王様: ああ、おいしくないなあ、ごちそうさま。アント
ニオ、早く帰ってきて、おいしい料理を たくさん
作っておくれ。
⑫
さて、それから、3 ヶ月が たちました。やせていたコッ
クは まるまると太って、下に降りてりてくることが出来ま
した。
そして、太っていた王様は、ガリガリにやせてしまいまし
た。
王様:
待っていたぞ、アントニオ。早く、おいしい料
理を作ってくれ。
わたしは おなかが ペコペコだ。
コック: はい、王様。すぐ、作ります。
⑬/①
それから、食いしん坊な王様は毎日毎日、アントニオの作
ったおいしい料理やお菓子を食べ続けて、また、元のように
太ってしまいました。
アントニオも、毎日毎日、忙しく働いて、また、元のよう
にガリガリに痩せてしまいました。
王様: おーい、アントニオ、今晩のメニューは何だ?
おいしいものを たくさん作ってくれよ。