京都における VRE 感染対策指針

京都 VRE 調査班
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
京都における VRE 感染対策指針 version
070221
2007.2.21 確定版
京都 VRE 調査班
京都 VRE 調査班
班長
京都大学医学研究科臨床病態検査学
教授
京都大学医学部附属病院感染制御部
部長
一山
智
班員
京都府立医科大学付属病院
感染対策部
藤田直久,高岡みどり
京都市立病院
感染症科
清水恒広
国立病院機構京都医療センター
総合内科
小田垣孝雄
看護部
井上かおり
京都第一赤十字病院
感染制御部
大野聖子
京都大学医学部附属病院
感染制御部
飯沼由嗣,高倉俊二,
斉藤
崇,藤原尚子,井川順子,
松島
晶,白野倫徳
日本衛生検査所協会近畿支部
学術委員会
佐守友博
京都 VRE 調査班ホームページ(本指針、書式がダウンロードできます)
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/%7Eict/ict/inf_practice/inf_ict/VREtyousa.html
-1-
京都 VRE 調査班
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
目次
I.全体の概略
II.背景
・・・・・・
3
・・・・・・
4
III.語句の説明
・・・・・・
5
IV.VRE 感染対策指針
・・・・・・
7
1.病院における VRE 保菌者検出状況の確認(一斉調査)の実施
・・・・・・
8
1.1 目的
・・・・・・
8
1.2 実施時期と頻度
・・・・・・
8
1.3 方法
・・・・・・
8
1.4 対象
・・・・・・
8
1.5 結果判明後の対応
・・・・・・
9
2.病院における VRE 監視体制
・・・・・・
10
2.1 要点
・・・・・・
10
2.2 臨床検体における VRE 受け身サーベイランス
・・・・・・
10
2.3 他病院・施設からの転入院患者に対する VRE 保菌検査
・・・・・・
10
2.4 高リスク群における継続的 VRE 保菌調査
・・・・・・
10
3.病院における VRE 感染予防対策
・・・・・・
11
3.1 原則
・・・・・・
11
3.2 標準予防策の遵守
・・・・・・
11
3.3
VRE 保菌者における院内感染予防対策
・・・・・・
11
3.4 病院におけるオムツ交換マニュアル
・・・・・・
13
4.病院における VRE 保菌者発見時の対応
・・・・・・
15
・・・・・・
15
5.VRE 保菌歴の情報伝達体制
・・・・・・
18
5.1 要点
・・・・・・
18
5.2 背景にある基本的考え方
・・・・・・
18
5.3
VRE 保菌情報の伝達のしかた
・・・・・・
18
5.4 対象患者
・・・・・・
18
6.介護施設における VRE 感染予防対策
・・・・・・
19
6.1 対策の要点
・・・・・・
19
6.2 介護施設における VRE 感染予防対策の背景
・・・・・・
19
6.3 介護施設における通常の対策(施設における標準予防策)
・・・・・・
20
6.4
VRE 保菌歴のある入所者に対する対応(施設における接触予防策)
・・・・・・
24
7.VRE 検出時の報告・行政との連携体制について
8.VRE 保菌検査に関わる費用負担について
・・・・・・
26
8.1 基本的な考え方
・・・・・・
27
8.2 費用負担の基準
・・・・・・
27
9.VRE 相談窓口
4.1
VRE 院内感染予防対策の実施
4.2 保健所・調査班への連絡
4.3 院内 VRE 保菌調査
4.4 転出先の病院から「転入院患者 VRE 検出通知書」を受けた場合の対応
・・・・・・
15
・・・・・・
15
・・・・・・
17
・・・・・・
27
・・・・・・
29
V.書式・資料
・・・・・・
30
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京都における VRE 感染対策指針 ver070221
I.
全体の概略
[病院]
1. 自施設内での VRE 検出状況を確認する。
①
現時点(平成 19 年 2
5 月)における院内 VRE 保菌者サーベイランス調査(第 1 章)
②
可能な限り定期的院内 VRE サーベイランスを行う(第 2 章 2.3)
③
臨床検査便検体による VRE スクリーニングの継続(京都 VRE 監視ネットワーク
で行っている受動的サーベイランス)(第 2 章 2.1)
2. 他病院・施設から転入院となった患者で VRE 保菌検査を行う。(第 2 章 2.3)
3. 院内感染対策(とくにオムツ交換)を強化する。(第 3 章)
4. VRE 保菌者発見時および入院中に院内 VRE 保菌調査を行う。(第 4 章 4.3)
①
保菌者発見時の院内 VRE 保菌調査
②
保菌者入院中の院内 VRE 保菌調査
5. VRE 保菌状況の情報伝達を行う。
①
保菌者発見時の報告(第 4 章 4.2)
②
保菌歴のある患者の退院時情報提供書(第 5 章)
[介護施設](第 6 章)
1. 通常の入所者に対して標準予防策に準じた手順を遵守する。
2. VRE 保菌歴のある入所者に対して接触感染予防策に準じた手順を遵守する。
3. 病院へ転入院した患者の VRE 保菌検査結果によって施設内での VRE 保菌者発生状
況を間接的に監視する。
4. VRE 保菌者増加が疑われる場合には VRE 調査班の訪問と、標準・接触感染予防策
についての助言・指導をうける。
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II.
背景
腸球菌は人の腸管の常在菌であり病原性は低く、健常人で感染症を起こすことは
ほとんどないが、入院患者においては、尿路感染、血管留置カテーテル感染、創部
感染をきたすことがある。治療薬としてはアンピシリン感受性菌ではアンピシリン
が、そうでない場合はバンコマイシンが用いられるが、バンコマイシン耐性腸球菌
(VRE)感染症においてはアンピシリン耐性率も高いため、
治療薬がいずれも無効とな
り、予後を悪化させる危険性が生じる。したがって VRE 感染症発症を抑制する必要
があり、そのためには、VRE 保菌者の増加を抑制する対策をとらねばならない。
VRE 感染症は全国的に漸増状態にあるが、京都府においては 2004 年まで VRE 感染
症の報告はほとんどみられなかった。しかし、2005 年
2006 年にわたり、京都の病
院・介護施設でのサーベイランス(匿名 VRE 保菌疫学調査)や、病院における早期
検出体制をとっての監視(京都 VRE 監視ネットワーク)を行ったところ、とくに病
院において VRE 検出・VRE 感染症報告の顕著な増加が認められてきた。2005 年、2006
年の匿名 VRE 保菌疫学調査においては、病院では 2005 年 1/105 施設(1.0%)、2006
年 10/96 施設(10.4%)から、介護施設からは 2005 年は 0/78 施設(0%)、2006 年は 2/62
施設(3.2%)からの検出を認めた。また、複数の病院で検出された VRE が同一遺伝子
型である(同じ菌株が拡がっている)ことも確認された。この背景として、
(1)VRE
の施設内伝播による VRE 保菌者の増加、(2)病院間・病院と介護施設間の患者の移動
による VRE 検出施設の増加、が考えられる。
今後さらなる VRE 保菌者の増加を防ぐためには地域レベルで VRE 保菌者早期発見の
方策と施設内における VRE 伝播予防策をとらねばならない。京都 VRE 調査班では、
京都において各施設が施設内の VRE 保菌者増加の抑制策をとることが地域レベルで
の抑制に不可欠であると判断し、本対策指針を策定することとした。
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III.
語句の説明
バンコマイシン耐性腸球菌 VRE
標準的な薬剤感受性試験においてバンコマイシン耐性を示す腸球菌すべてをさすが、本指針
においては、病原性と院内感染対策の上で重要な、vanA または vanB 遺伝子を保有する腸球菌の
みを VRE として表す。
(vanC のみ陽性の E.
gallinarum,
E.
casseliflavus は外す)
匿名 VRE 保菌疫学調査
京都府・京都市の依頼により調査班がおこなった、京都府内の全病院、全介護施設に参加を
呼びかけての VRE 保菌調査。京都全域の VRE 保菌者の拡大状況の変化を把握する目的で実施し
た。2005 年、2006 年の 8 月に行い、約 60%の病院、約 50%の介護施設が参加した。地区と施設
の規模以外の情報を匿名化し、施設グループ別に一定数の入院・入所者から採取した直腸スワ
ブ検体を採取・収集し VRE を検査した。参加施設数が多くなることを第一義とした厳密な匿名
化を行っているため、検出された施設名は調査班にもわからない。
京都 VRE 監視ネットワーク
2006 年 4 月から京都府内の病院より参加を募り、臨床検査に提出された便検体にて VRE 選択
培地を用いた VRE スクリーニングを各病院検査室または検査センターにて施行することとした。
陽性菌(VRE 疑い菌)は京大病院に送付し、遺伝子学的に VRE か否かを確定して報告する体制
をとり、各病院または検査センターから病院毎の検査した検体数と VRE 陽性検体数を京都大学
が集計し、月報として各参加病院にフィードバックしている。また、VRE 検出病院に対する、
感染対策および保菌調査についての視察・助言も行っている。検査センターにおける検査料は、
年間の便検体数が少数(<100)の病院では全額、多数(≧100)の病院では 4 分の 1 をネット
ワーク事務局(調査班)が負担している。今後も同様の方式で継続して実施予定である。
VRE 選択培地
複数の製品があるが、本指針では VRE 選択培地(日本 BD)を指す。検体を直接塗布し、35
37℃で 48 時間培養し、ピンク 赤 紫色のコロニー発育の有無を肉眼的に確認する。この
方法は vanA または vanB 型の腸球菌(VRE)を高感度かつ効率よく培養できる。VRE でない菌が
陽性となる(偽陽性)率は極めて低く(<1 2%)
、発育コロニーがグラム陽性球菌であれば、
ほぼ VRE である(「VRE 疑い菌」参照)
。
VRE 保菌検査
ある患者において便または直腸スワブ検体を採取し、VRE 選択培地(日本 BD)
を用いて VRE 保菌の有無を確定する検査(いわゆるスクリーニング)
。
VRE 保菌調査(VRE 積極的サーベイランス)
院内で対象患者を選定して便または直腸スワブ検体を採取し、VRE 選択培地を用いて VRE 保
菌者を発見する調査
VRE 受動的サーベイランス
VRE を早期発見するために、臨床検査に提出された便検体を VRE 選択培地に接種して VRE 保
菌検査を行うこと(京都 VRE 監視ネットワークで行っている内容)、および、その他の臨床検
査検体において臨床的に感染症起因菌として有意と考えられた腸球菌が検出された場合にバ
ンコマイシン感受性を試験すること。
VRE 疑い菌
VRE 選択培地を用いた培養検査でコロニー発育がみられ、グラム陽性球菌と確認されたもの。
VRE か否かが菌種同定・感受性試験または遺伝子学的に確定するまでの間は、感染対策上は VRE
として対応する。
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京都における VRE 感染対策指針 ver070221
VRE 保菌歴
一度でも便または直腸スワブ検体あるいは他の臨床検体より VRE が検出されたことがあれば
VRE 保菌歴ありとする。
VRE 保菌陰性化
VRE 保菌歴のある患者において、後に 3 日以上あけた連続 3 回の便または直腸スワブ検体で
VRE 選択培地を用いた VRE 保菌検査が陰性であった場合を陰性化とする。ただし、VRE 保菌歴
はありのままである。
介護施設における標準予防策
病院以外の介護療養施設(老人保健施設、老人福祉施設)において実施すべきレベルの VRE
施設内感染予防対策。感染リスクが病院入院患者よりは低いこと、
および施設の実状を考慮し、
調査班が作成したもの。病院の感染予防対策より簡略化している。
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IV.
VRE 感染対策指針
1.病院における VRE 保菌者検出状況の確認(一斉調査)の実施
1.1 目的
1.2 実施時期と頻度
1.3 方法
1.4 対象
1.5 結果判明後の対応
2.病院における VRE 監視体制
2.1 要点
2.2 臨床検体における VRE 受け身サーベイランス
2.3 他病院・施設からの転入院患者に対する VRE 保菌検査
2.4 高リスク群における継続的 VRE 保菌調査
3.病院における VRE 感染予防対策
3.1 原則
3.2 標準予防策の遵守
3.3
VRE 保菌者における院内感染予防対策
3.4 病院におけるオムツ交換マニュアル
4.病院における VRE 保菌者発見時の対応
4.1
VRE 院内感染予防対策の実施
4.2 保健所・調査班への連絡
4.3 院内 VRE 保菌調査
4.4 転出先の病院から「転入院患者 VRE 検出通知書」を受けた場合の対応
5.VRE 保菌歴の情報伝達体制
5.1 要点
5.2 背景にある基本的考え方
5.3
VRE 保菌情報の伝達のしかた
5.4 対象患者
6.介護施設における VRE 感染予防対策
6.1 対策の要点
6.2 介護施設における VRE 感染予防対策の背景
6.3 介護施設における通常の対策(施設における標準予防策)
6.4
VRE 保菌歴のある入所者に対する対応(施設における接触予防策)
7.VRE 検出時の報告・行政との連携体制について
8.VRE 保菌検査に関わる費用負担について
8.1 基本的な考え方
8.2 費用負担の基準
9.VRE 相談窓口
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1.
病院における VRE 保菌者検出状況の確認(一斉調査)の実施
1.1 目的
① ある時点における、自施設の入院中患者における VRE 保菌者検出状況を把握する。
② 潜在する保菌者を見つけ出す。
1.2 実施時期と頻度
本指針の適用開始時点の情報として、
平成 19 年 2 月
5 月までに 1 回施行する*。
その後は、地域的な VRE 検出状況に応じ、年 1 回以上、不定期に実施する。
*
この間の検査センターにおける VRE 保菌検査料は調査班が負担する(第 8 章参照)
1.3
方法
入院中の患者から対象選択基準を満たす一定数の患者から便または直腸スワブ検
体を採取する。検体採取は口頭説明によって患者の同意を得て行う(この際、説明
に資料 1 を利用してもよい)。
採取した検体は院内検査室あるいは検査センターにて
VRE 保菌検査を行う。
各病院は、検査患者数と陽性数を報告用紙(書式 1)にて調査班へ送付する。調査
班は結果を集計し、施設名を匿名として 2005 年、2006 年の匿名 VRE 保菌疫学調査
と同様の形式にて結果を参加施設へフィードバックする。
1.4 対象
1.4.1
対象数
一定の検出感度を保持するために、以下に示す数を下限とする(上限は定めない)。
•
VRE 検出歴のない病院→入院病床数の 10%(あるいは調査班による匿名 VRE 保菌疫学調査での対
象患者数*)
•
VRE 検出歴のある病院→入院病床数の 20%(あるいは調査班による匿名 VRE 保菌疫学調査での対
象患者数*の 2 倍)
*資料 2(調査班による匿名 VRE 保菌疫学調査における施設グループ別対象患者数)を参照
1.4.2
VRE 感染高リスク因子と推奨する対象選択基準
1)VRE 感染高リスク因子
VRE 感染のリスクには、接触感染の機会、定着を促進する因子(a.主として保菌・伝播のリスクに
関わる因子)と、万一保菌した場合に VRE 感染症発症の可能性を高める因子(b.主として発症のリ
スクに関わる因子)がある。この 2 者は共存することもある。[推奨する検体採取のタイミング]
①
入退院関連
・ 6 ヶ月以内に他病院入院歴または介護施設入所歴がある患者 a
・ 1 年以内に 3 回以上入退院している患者 a
・ 3 ヶ月以上入院している患者 a
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②
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
病棟
・ ICU・HCU 等の集中治療室入室患者 b
[入室時]
・ MRSA 検出患者数が多い病棟の入院患者 a
・ 過去に VRE 保菌者が発見された病棟 a
③
基礎疾患等
・ オムツ着用 a
・ 経管栄養チューブ(経鼻ないし胃瘻)留置 a
・ 2 週間以上の尿路カテーテル留置 a
・ 入院で慢性透析を 1 ヶ月以上行っている患者 a
・ 造血幹細胞移植・臓器移植予定患者 b
[術前]
・ 造血幹細胞移植・臓器移植後 3 ヶ月以内 b
・ 抗癌剤による化学療法による好中球減少(好中球<500 以下)時に、抗菌薬を投与を受けた患者
[好中球回復>1000 後]b
・ VRE 検出歴のある患者 a
④
治療関連
・ バンコマイシン・テイコプラニン投与を 2 週間以上受けている患者 a
・ 4 週間以上点滴抗菌薬投与を受けている患者 a
[抗菌薬投与が 4 週間を越えた時点]
・ 抗菌薬関連下痢症およびバンコマイシン散投与中または投与後の患者 a
[発症時・投与終了時]
2)推奨する対象選択基準
前項 1)に示す、VRE 感染高リスク因子を 2 項目以上満たす患者を優先的に選択する。
1.5 結果判明後の対応
VRE 保菌者が出れば、第 3 章「病院における VRE 感染予防対策」および第 4 章「病
院における VRE 保菌者発見時の対応」に従い対策を行う。
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2.
病院における VRE 監視体制
2.1 要点
• 積極的に VRE 保菌者の早期発見に努めることで病院内伝播を最小限に抑える目的
で、全ての病院で 2.2、2.3 のスクリーニングを行う。
• 過去に VRE を検出したことのある病院においては、VRE 感染高リスク因子をもつ
入院患者に対して 2.4 の定常的な VRE 保菌調査(積極的サーベイランス)を実施
する。
• 過去に VRE を検出したことのない病院においても、病院の性質に応じて、VRE 感
染高リスク因子をもつ入院患者に対して 2.4 の定常的な VRE スクリーニングを推
奨する。実施とその範囲の選択は各病院の判断に委ねる。
2.2 臨床検体における VRE 保菌検査(受動的サーベイランス)
2.1.1
便検体における VRE スクリーニング
細菌検査(培養・Clostridium
difficile 毒素/抗原)検査に提出される全ての便検体を対象として、
VRE 選択培地を用いて VRE スクリーニングを行う。(京都 VRE 監視ネットワーク)
2.1.2 腸球菌感受性サーベイランス
便検体以外の臨床検査検体において臨床的に感染症起因菌として有意と考えられた腸球菌が検出
された場合にバンコマイシン感受性を試験する。バンコマイシン耐性(MIC≧32μg/mL あるいはディ
スク法にて阻止円径≦14mm)の場合は VRE として扱う。MIC が 8
16μg/mL あるいは阻止円径 15
16mm の場合は VRE の疑いがある。VRE または疑い菌は調査班に送付し、調査班で確認試験を行う。
2.3 他病院・施設からの転入院患者に対する VRE 保菌検査
他病院、介護施設からの転入院患者の入院時には VRE 保菌歴の有無にかかわらず、
全ての患者に VRE 保菌検査を行う。VRE 陽性の場合は、第 3,4 章に示す対策を開始
するとともに、5.2
②に従い一定の書式(書式 3,4)にて、転入元の病院または介
護施設、および調査班へ連絡する。
2.4 入院中の VRE 感染高リスク患者群における定常的な VRE 保菌調査
• 各病院が過去の VRE 検出状況、病院の性質に応じて、1.4.2 の 1)に挙げる高リス
ク要因から選択あるいは組み合わせて対象患者の基準を設ける。(資料 3 のチェ
ックシートを用いてもよい)
• 継続的に行う(常時、あるいは 1 3 ヶ月毎など)。
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京都における VRE 感染対策指針 ver070221
3.
病院における VRE 感染予防対策
3.1 原則
① 腸球菌は腸管の常在細菌叢を構成する細菌であり、積極的に VRE スクリーニング
検査を行わない限り保菌者が発見されにくい。そのため、VRE 保菌状態にかかわ
らず標準予防策を行っておかなければ、保菌者に気づかないまま院内伝播が進行
する。
② VRE は医療従事者の手、あるいは医療従事者の操作した器材を介して容易に伝播
するため、接触予防策を行う。すなわち、VRE の伝播を防ぐためには手袋および
エプロンまたはガウン(以下エプロン)*などの物理的バリアが必須である。また
環境から手指を介して伝播するリスクも高いため、患者や医療従事者の接触する
箇所に対して日常的な清掃の質の向上をはかるべきである。
*接触予防策上は、前腕まで覆えるもの(ガウン)の方が望ましい。
③ VRE は一旦保菌された場合、容易に除菌されないため、陰性化後も継続的に注意
が必要である。一旦陰性化*したかのようにみえても、抗菌薬や侵襲的処置により
再び陽性化する。*III 語句参照
④ リネゾリド(ザイボックス)を除菌目的では使用しない。リネゾリドの投与に
よる本剤耐性菌の出現、さらには耐性菌によるアウトブレイクがすでに報告され
ている。除菌目的での使用等本剤の濫用は、VRE 感染症の貴重な治療薬を失う結
果となる。
3.2
標準予防策の遵守
VRE 保菌者を逐次完全に把握することは不可能であるため、保菌者の有無にかか
わらず標準予防策をとることが、VRE 伝播防止には不可欠である。とくに伝播のリ
スクの高い処置であるオムツ交換は、VRE 保菌の有無にかかわらず、マニュアル
(3.4)にしたがって行う。
3.3
VRE 保菌者における院内感染予防対策
3.3.1 病室
①
個室隔離とする。トイレ付き個室が望ましい。下痢の場合や尿から検出されている場合は、ポ
ータブルトイレを使用する。
②
個室隔離が困難な場合には、コホーティング(保菌者を同室にあつめる)を行う。
③
病室内に、汚染物を廃棄するゴミ箱を設置する。
④
入室時には、患者への接触の有無にかかわらず、必ず手指衛生(衛生的手洗いまたは手指消毒)
と手袋着用を行う。
⑤
処置・検査・リハビリはできる限り部屋内で実施する。また、部屋外で検査等行う場合には、
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京都における VRE 感染対策指針 ver070221
実施部局への連絡を必ず行う。
⑥
体温計、血圧計、聴診器、駆血帯、アルコール綿などの消毒薬、等は専用とする。
⑦
部屋から出るときは手袋を廃棄後、手指衛生を行う。
3.3.2 診療・ケア時の対応
①
診療する医師や看護師はできるかぎり固定・最小限とする。
②
職員の衣服は、手洗いしやすいように半袖とし、腕時計やブレスレット類は外す。
③
入室する前に、手指衛生を行い、手袋を着用する。
④
汚染物にさわった後は、手袋を交換する。
⑤
保菌者に職員の体が接触する、あるいは体液(血液・排泄物・吐瀉物・喀痰・唾液等)が衣服
に飛び散るおそれのある処置をする場合はエプロンを着用する。1 回使用毎に廃棄する(つり下
げ再利用は厳禁)。
⑥
処置により環境を汚染するおそれがある場合は、使い捨てシートで患者周辺をカバーし、汚染
を最低限にする。
⑦
オムツ交換はマニュアル(3.4)にしたがって行う。
⑧
退室時には手袋およびエプロンを廃棄し、手指衛生を行う。
⑨
保菌者の診療や処置はできる限り最後に行う(複数患者の場合はまとめて最後に行う)。
⑩
蓄尿は原則行わない。
3.3.3 環境整備
①
室内の手の触れる環境(ドアノブ、床頭台、ベッドの手すり、各種スイッチ類、血圧計、体温
計、聴診器、等)は最低 1 回/日、消毒用アルコールで清拭する。機器の消毒には、性能に影響
しない消毒薬を用いる。
②
移送に使用したストレッチャーや車いすは、使用後、消毒用アルコールで清拭する。
③
尿器・便器・ポータブルトイレは専用とする。通常使用後は中性洗剤で洗浄後乾燥させる。長
期間使用の場合は、1 回/週程度、0.1%次亜塩素酸ナトリウム(ハイター等)で消毒する。ベッ
ドパンウォッシャーによる洗浄消毒でもよい。患者退院後は、洗浄後 0.1%次亜塩素酸ナトリウ
ムで消毒する。
④
吸引チューブは、1回毎使い捨てとする。吸引ビンの洗浄消毒時は、周囲に汚染が広がらないよう
にする。
3.3.4 リネン・下着類
①
VRE隔離室からの使用済みリネンは感染性リネンとして取り扱う。
②
使用済みリネンは水溶性ランドリーバッグまたは所定のビニール袋等に入れて、感染物であるこ
とが判るように表示するなど、洗濯室あるいは委託業者と話し合い、ルールを決める。
③
便や尿などで汚染のある下着は、0.1%次亜塩素酸ナトリウムで消毒後、洗濯する(院内・自宅)。
明らかな汚染のない場合は、通常の洗濯でよい。
3.3.5 食事・入浴・トイレ等
①
配膳・下膳の順番はとくに考慮しなくても良い。食器類の消毒は必要ない。
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京都 VRE 調査班
②
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
経腸栄養は、バッグとカテーテルを個人専用とする。使用後は十分洗浄し、0.01%次亜塩素酸ナ
トリウム消毒を行い、乾燥させる。汚染時や一週間に一回程度新しい物と交換する。
③
入浴の順番は最後とし、失禁や下痢があればシャワーとする。
④
共用トイレを用いる場合には、できる限り特定のトイレを用いる。また使用後は、周囲を消毒用
アルコールで清拭させる(あるいは職員が消毒用アルコールで清拭する)。
3.3.6 患者・家族の面会等指導
①
VRE保菌判明時は別紙の説明書(資料6)を参考に患者と家族に説明する。
②
面会や付き添いは必要最小限とする。
③
面会場所は病室内とする。
④
面会・付き添い者には、入退室時の手指衛生を指導する(手袋・エプロン・マスクは必要ない)。
3.3.7 特別な対応
①
ICU,
CCU,
NICU で VRE 保菌者が発見された場合には、同患者が退院(転院)するまで、その他
の全患者が潜在的保菌者と考えて、全処置時手袋を着用して診療にあたる(universal
glove
policy)
。
②
患者が退院した後の部屋は、丁寧な拭き掃除等を実施し、手指の触れる部分は丁寧に消毒用ア
ルコールで清拭した後、次の患者を入れる。
③
VRE 保菌者の転院時は、所定の書式を用いて転院先の病院に連絡する(5.3,
書式 5)。
3.3.8
VRE 陰性化後の対応
①
標準予防策を遵守する。
②
排便後の便器は消毒用アルコールで清拭するよう指導する(あるいは職員が行う)。
③
抗菌薬投与(抗菌薬の種類、点滴・経口の別は不問)や侵襲的処置(手術)など、再排菌リス
クが高くなった場合は、適宜便または直腸スワブの VRE 保菌検査を実施する。再排菌が認めら
れれば、保菌者としての対応を再開する。
3.3.9
VRE 保菌歴のある患者が再入院した場合
①
VRE 保菌者として、入院時から上記感染対策に準じた対応を行う。
②
入院後 VRE 保菌検査を行い、陽性であれば上記対応を実施する。陰性の場合は 3.3.8 参照。
3.4
病院におけるオムツ交換マニュアル
3.4.1
実施原則
•
•
•
•
•
•
VRE 保菌の有無に関わらず、この手順に従って施行する。
オムツ交換時には、使い捨て手袋と使い捨てエプロンを着用する。
手袋やエプロンが排泄物で汚染した場合は交換する。
紙オムツ(パンツ型)の中にオムツパット(縦長の紙オムツや尿取りパット等)をあてておく。
全面介助の場合は、作業は 2 名で行う。
手袋・エプロンは、一患者一交換ごとに使い捨てとする。(複数患者への連続使用やエプロン
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京都 VRE 調査班
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
つり下げ再利用は厳禁)。
•
次の患者の作業にうつる前は、必ず手指衛生を行う。
3.4.2 必要物品
•
•
使い捨て手袋・使い捨てエプロン・ビニール袋(汚染した紙オムツや手袋を廃棄する)
新しい紙オムツ・オムツパット・微温湯を入れた陰部洗浄用ボトルまたはおしり拭き・速乾性
手指消毒薬
3.4.3 オムツ交換手順
①
必要物品を準備する。
②
入室前に手指衛生を行う。
③
手袋・エプロンを着用する。
④
寝具や掛け寝具を汚染せず、処置がしやすいように十分なスペースを確保する。
⑤
紙オムツのマジックテープをはずし、オムツをひらく。紙オムツの便汚染が激しい場合は、陰
部洗浄や清拭前に汚染したオムツパットや尿取りパットをはずし手袋を交換する。
⑥
患者を仰臥位にし、開いたオムツの上で、微温湯で陰部を洗浄する(おしり拭きで清拭する)。
⑦
患者を側臥位にし、臀部を微温湯で洗浄する(おしり拭きで清拭する)。
⑧
汚れた紙オムツを患者の身体の下へ内側にまるめこむ。
⑨
患者の身体を側臥位にし、汚れたオムツをはずしビニール袋へ廃棄する。
⑩
手袋を交換する。
⑪
新しい紙オムツを装着する。
⑫
寝衣と寝具を整える。
⑬
エプロンと手袋をはずし手指衛生を行う。
⑭
オムツ類を入れた袋等を廃棄し、流水と石鹸による手洗いを行う。
(注意)手袋が排泄物で汚染した場合、その都度交換する。
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4.
病院における VRE 保菌者発見時の対応
4.1
VRE 院内感染予防対策
VRE 疑いの菌(VRE 選択培地でグラム陽性球菌コロニー)が検出された時点で、第
3 章「病院における VRE 感染予防対策」を直ちに確認・強化する。患者・家族への
説明には資料 6 あるいはそれに準じて院内で作成したものを使用する。
4.2 保健所・調査班への連絡
VRE が検出された場合、感染症状の有無にかかわらず、調査班と所管の保健所に
FAX(書式 2)にて調査班と所管の保健所に連絡する。
4.3 院内 VRE 保菌調査
4.3.1
VRE 保菌調査の目的
•
•
目的=新たな VRE 保菌者発生を防ぐこと、である
保菌調査による VRE 保菌者の正確な同定が、新たな VRE 保菌者発生を防ぐために必須である。
同定できていない保菌者が存在すると、その患者から新たな伝播が起こり続け、新たな保菌者
発生を止めることができない。
•
VRE は、保菌者からの接触感染によって伝播がおこることはすでに明らかなことであって、保菌
調査は発生や伝播の原因の解明を目指すものではない。
4.3.2
VRE 保菌者発見時の初回保菌調査(図 1)
① 直ちに、広範囲に実施する。同病棟入院全患者を対象とし、保菌者が転棟患者の場合、以前の病
棟も対象に含める。患者への説明には資料 4 あるいはそれに準じて院内で作成したものを使用す
る。
•
•
発見第 1 例は真の発生 1 例目とは限らない。
他の保菌者 B/C から患者 A に感染した、または患者 A からすでに他の患者 B,C に感染が起こっ
た可能性がある。
② 非保菌者(未検査患者)に対しても標準予防策が必要である。
•
未だわかっていないが保菌者が他にいるかもしれず、感染が起こりつづける可能性を認識する。
③ 保菌調査の結果がでるまでの間は、発見された保菌者と同病室の患者に対しても VRE 保菌者とみ
なして接触予防策を実施する。また、同病室患者の病室移動は行わない(個室への移動を除く)
。
転棟が必要な場合、原則として個室とする。同病棟患者の病棟内の病室移動も可能な限り控える。
•
保菌者の存在する病室の増える可能性を減らすため。
④ 職員・家族の保菌調査は原則不要である。
•
「患者→職員の手指→患者」
「患者・職員の触れた物品→職員の手指→患者」の伝播がほとんど
- 15 -
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京都における VRE 感染対策指針 ver070221
である。
•
職員の腸管 VRE 保菌自体が起こりにくく、"職員の便→患者"
の伝播の可能性は極めて低い。
(職
員の鼻腔・上気道保菌から手指を介して患者への伝播が起こりやすい MRSA と異なる)
図 1.
VRE 保菌者発見時の初回保菌調査
VRE保菌患者発生
同病棟全入院患者
の保菌調査
前病棟入院患者+
同病室歴のある患者
の保菌調査
複数のVRE保菌者が発見された場合
関連病棟患者へ保菌調査
の対象を拡大
転棟歴の
ある場合
継続保菌調査へ移行
4.3.3
VRE 保菌者入院中の継続保菌調査
① VRE 保菌者が入院中は新たな保菌者が発生するリスクが続くため非保菌者に対して保菌調査を継
続する(図 2)。患者への説明には資料 5 あるいはそれに準じて院内で作成したものを使用する。
•
感染対策が有効に働いていることを証明するために、VRE 保菌者入院中は保菌調査を継続して行
う必要がある。
•
VRE 保菌者がいない状態が確認されるまでは新たな VRE 保菌者発生のリスクがあるとみなす。
図 2.
VRE 保菌者入院中の継続保菌調査
VRE保菌者入院
中
保菌者1名
同病棟全入院患者
2週 1ヶ月毎の保菌調査
保菌者複数
同病棟入院患者
同病棟入院患者
+
関連病棟VRE高リスク*患者
VRE保菌者が全て退院
または陰性化
保菌調査終了
*
VRE 高リスクは 1.4.2 を参照
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② 入院時より VRE 保菌者と判明している患者が個室入院している場合、入院期間が 2 週間を超えれ
ば、①と同様(図 2)のとおりに保菌調査を行う。この場合、保菌調査の対象者を入院期間が 2
週間以上重なる患者を対象に限定してもよい。ただし、他に保菌者が発見された場合は同病棟全
入院患者を対象にした保菌調査を直ちに行い、以降は①と同様(図 2)の保菌調査を行う。
4.4
転出先の病院から「転入院患者 VRE 検出通知書」を受けた場合
当該患者の入院していた病棟において、初回保菌調査(4.3.2)を行う。新たな保
菌者が発見された場合、第 3 章の対策を開始し、4.2 に従って報告、また、継続保
菌調査(4.3.3)も行う。
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5.
VRE 保菌歴の情報伝達体制
5.1
要点
• VRE 保菌歴のある患者の病院、介護施設への転出時には「VRE 検出情報提供書」
を診療情報提供書に添付する。
• 転入院患者で VRE 保菌情報が不明であったものに新たに VRE が検出された場合は、
「転入院時 VRE 保菌通知書」(書式 3,4)を紹介元施設および京都 VRE 調査班に送
付する。
5.2
背景にある基本的な考えかた
① 患者の紹介時や手術・侵襲的検査前に慣例として HBV、HCV などの感染スクリー
ニングが行われることが多いが、これらは主として血液で感染するため院内感
染は稀である一方、VRE は便に無症候性に保菌される可能性があるため、気づ
かれずに施設内の他の患者に伝播する危険性が問題となる。
② したがって、医療施設間の VRE 保菌者情報の「積極的な」共有は、VRE の感染・
伝播を水際で防止し各施設の医療・介護の安全性を確立するうえで極めて重要
である。
③ VRE 保菌者情報の伝達制度を通じ、VRE の感染・伝播を防止すると同時に、京都
VRE 調査班が各施設における施設内感染対策体制の確立・普及を側面から支援
する。
5.3
VRE 保菌情報の伝達のしかた
① VRE 保菌者情報の共有のため、医療施設間の患者情報の提供に際しては、VRE の
検出された患者の診療情報提供書に VRE 検出情報提供書(書式 5)を添付する。
② 転入院患者で VRE 保菌情報が不明であったものに新たに VRE が検出された場合
は、「転入院患者 VRE 検出通知書」(書式 3)により紹介元施設に報告し、さら
に京都 VRE 調査班に通知する(書式 4)。
5.4
対象患者
① 当該情報提供の対象患者は、VRE 保菌歴を有する全ての患者である。病院、診
療所、あるいは介護施設の間を転院する際に VRE 検出情報を提供することとな
るが、その形態は入院・入所・外来を問わない。
② 京都府外の医療施設との間での転出・転入時にも「転入院時 VRE 保菌通知書」、
「VRE 検出情報提供書」を使用する。
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6.
介護施設における VRE 感染予防対策
6.1 対策の要点
• 日常的に、手指を介した伝播防止に重点をおいた、施設における標準予防策をと
る。
• VRE 保菌歴のある入所者においては、施設における標準予防策に、施設における
接触予防策を追加する。
• 耐性菌保菌状態による入所者の選別(VRE 保菌者の入所拒否)を行わないことを
強く勧奨する。
6.2 介護施設における VRE 感染予防対策の背景
• 介護施設においても VRE 伝播防止のために可能な範囲での対策をとる必要がある
が、病院と比較すると施設内感染対策に対する人的・経済的負担が制限され、病
院と同様の接触予防策の忠実な実施は現実的には困難である。
• 介護施設では VRE 伝播の危険性の高いおむつ交換をうける入所者は多いが、血管
内カテーテル、尿道カテーテル、手術、抗菌薬投与など、VRE の定着を促進させ
たり、定着した VRE を大量保菌・排菌状態とする誘因をもつ入所者は原則として
いない。さらに、血管内カテーテル、尿道カテーテル、手術など、VRE 感染症発
症のリスクも病院入院患者と比較して低い。
• したがって、介護施設の状況をふまえた最小限可能な範囲とした指針を策定した。
これらは VRE への対策というだけではなく、ノロウイルス、MRSA、耐性緑膿菌へ
の対策をも含むものである。
• VRE 保菌者であることを理由に病院からの退院可能患者が退院できない状況が恒
常化すると、結果として介護施設から病院への入院が円滑に行えない状況につな
がり、地域医療体制の破綻をきたす。したがって、介護施設において耐性菌保菌
状態による入所者の選別(VRE 保菌者の入所拒否)を行わないことを強く勧奨す
る。
• 各介護施設において VRE サーベイランスを行うことは困難である。病院は、介護
施設からの転入院時に VRE スクリーニングを行い、VRE 保菌が判明した場合は転
入元の施設と調査班へ連絡する(2.3)。これを施設内での VRE 保菌者発生状況の
間接的な監視体制とする。
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6.3
介護施設における通常の対策(施設における標準予防策)
介護施設の入所者は、病院入院患者と比較して VRE 感染症発症のリスクは低い。
したがって、日常の対策(VRE 保菌歴がない、または不明の入所者への対策)にお
いては、手指を介した VRE の伝播を予防することに重点をおく。健常皮膚に接触す
る場合は、手指衛生を行う。体液(血液・排泄物・吐瀉物・喀痰・唾液等)、創傷皮
膚、粘膜に接触するおそれのある場合は、手袋を着用し処置毎または入所者毎に交
換する。
6.3.1
手指衛生(手洗い/手指消毒)の方法
入所者の処置の前後において 1)の注意点を守り、2)または 3)による手指衛生
を行う。処置ケアの開始及び終了時には手洗いを行う。
1)手指衛生時の注意
①
腕時計、指輪をはずす。
②
爪は短く切っておく。
③
爪の先や指の間等汚れの残りやすい部位を意識して洗う。
2)流水と石鹸による手洗い(図)
①
流水で洗浄する手首より先を濡らす。
②
液体石鹸などを手のひらにとる。
③
手のひらを合わせこする。
④
手のひらで手の甲を包みこする。
⑤
指先・爪→指の間→親指→手首の順にこする。
⑥
流水で洗い流す。
⑦
30秒を目安に行う。
⑧
手洗い後はペーパータオルで十分に水気を拭き取る。
⑨
手洗い後、蛇口は肘で閉めるか手を拭いたペーパータオルを利用する。
3)速乾性手指消毒薬の使用(ラビング法)による手指衛生(図)
①
消毒薬適量を手のひらにとる(1回量はメーカー推奨量を参照のこと)。
②
手のひらに消毒薬をすりこむ。
③
手の甲にすりこむ。
④
指先・爪→指の間→親指→手首の順にすりこむ。
⑤
速乾性手指消毒薬が乾燥するまで②③④を繰り返す。
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図.
手指衛生(手洗い/手指消毒)手順
6.3.2
手指衛生が必要な場合
健常な皮膚へ接触するケア・処置においては、前後に手指衛生を行う。
(例)全身清拭(下記 1)参照)、入浴・シャワー介助(下記 2)参照)、バイタル
サイン測定、配下膳、食事介助、洗面介助、等
1)
全身清拭
①
手指衛生を行う。
②
清拭を行う。
③
寝衣を着せる。
④
手指衛生を行う。
*
排泄物等で汚染している場合は、手袋とエプロンを着用する。
*
拭く順序は原則として、顔
→
上肢
→
胸部
→
腹部
→
背部
→
下肢
→
陰部の順で行う。
*
オムツや寝衣類はそれぞれビニール袋に入れて処理する。
2)
入浴・シャワー
①
手指衛生を行い、作業衣(防水エプロン・長靴等)を着用する。
②
脱衣後入浴・シャワー介助を行う。
③
作業衣を脱ぐ。
④
更衣を行う。
⑤
入浴・シャワー終了後の浴室内は湯で流す。
⑥
手指衛生を行う。
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京都における VRE 感染対策指針 ver070221
6.3.3
手指衛生に加え手袋着用が必要な場合
体液(血液・排泄物・吐瀉物・喀痰・唾液等)
、創傷皮膚、粘膜に接触するおそれ
のあるケア・処置においては、手指衛生後、使い捨て手袋を着用し処置毎または入
所者毎に廃棄する。廃棄後に手指衛生を行う。
(例)オムツ交換(下記 1)参照)、口腔ケア(下記 2)参照)、尿道留置カテーテ
ル挿入、尿バッグからの尿廃棄、喀痰吸引(下記 3)参照)、浣腸、坐薬挿肛、等
1)
オムツ交換
<必要物品>
•
•
使い捨て手袋・ビニール袋(汚染した紙オムツや手袋を廃棄する)
新しい紙オムツ・オムツパット・微温湯を入れた陰部洗浄用ボトルまたはおしり拭き・速乾性
手指消毒薬
<オムツ交換手順>
①
必要物品を準備する。
②
入室前に手指衛生を行う。
③
手袋を着用する。
④
寝具や掛け寝具を汚染せず、処置がしやすいように十分なスペースを確保する。
⑤
紙オムツのマジックテープをはずし、オムツをひらく。紙オムツの便汚染が激しい場合は、陰
部洗浄や清拭前に汚染したオムツパットや尿取りパットをはずしておく。
⑥
入所者を仰臥位にし、開いたオムツの上で、微温湯で陰部を洗浄する(おしり拭きで清拭する)。
⑦
入所者を側臥位にし、臀部を微温湯で洗浄する(おしり拭きで清拭する)。
⑧
汚れた紙オムツを入所者の身体の下へ内側にまるめこむ。
⑨
入所者の身体を側臥位にし、汚れたオムツをはずしビニール袋へ廃棄する。
⑩
新しい紙オムツを装着する。
⑪
寝衣と寝具を整える。
⑫
手袋をはずし、手指衛生を行う。
⑬
オムツ類を入れた袋等を廃棄し、流水と石鹸による手洗いを行う。
(注意)手袋が排泄物で汚染した場合、その都度交換する。
2)
口腔ケア
①
手指衛生を行う。
②
手袋を着用する。
③
口腔内のブラッシングを行い、含嗽させる。
④
ガーグルベースン等を洗浄し乾燥させる。
⑤
手袋をはずし廃棄する。
⑥
手指衛生を行う。
3)
喀痰の吸引
①
手指衛生を行う。
②
手袋を着用する。
③
滅菌吸引チューブで吸引する。
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京都 VRE 調査班
④
手袋をはずし廃棄する。
⑤
手指衛生を行う。
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*
吸引チューブは、1回毎使い捨てが望ましい。不可能な場合は、吸引後水洗しアルコール消毒を行
い乾燥させる。一日使用後廃棄する。
6.3.4
リネン・廃棄物の処理・清掃について
1)廃棄物の扱い方
①
廃棄物は、ルールに従って分別する。
②
廃棄物を取り扱う際は、手袋を着用する。
③
便器や尿器内の排泄物は、洗浄室のシンク内に飛び散らないように廃棄する。
④
業務終了後、手袋をはずした後は手指衛生を行う。
2)清掃
①
清掃時は手袋を着用し、終了後ははずして手指衛生を行う。
②
血液や排泄物で汚染があった場合には、
・手袋を着用する。
・汚染部分をペーパータオル等で拭き取る。
・その後 1%次亜塩素酸ナトリウム(ハイター等)で清拭消毒を行う。
・手袋をはずし、手指衛生を行う。
③
清潔な所から不潔な所へと拭き取っていく。
(例)オーバーテーブル
→
床頭台
→
ナースコール・各種リモコン
→
ベッド柵
→カウンター
→
吸引器のダイヤル
→
ゴミ箱のふたの順で行う。
④
トイレ掃除には、トイレ専用のモップや雑巾を使用する。
(例)電気スイッチ
→
ドアノブ(外→内)
→
便座の順で行う。
⑤
床清掃には、床清掃専用のモップや雑巾を使用する。
3)リネン類の管理
①
シーツ交換を行う前後は手指衛生を行う。
②
リネン・タオル・寝衣等が、血液や排泄物で汚染があった場合は、ビニール袋に入れ所定の場
所へ運ぶ。
4)汚染器具の管理
・取り扱い時には、手袋とエプロンを着用する。
・取り扱い後は、手袋とエプロンをはずし廃棄後、手指衛生を行う。
①
陰部洗浄用ボトル
一回使用後は、洗浄後 0.1%次亜塩素酸ナトリウム(ハイター等)で消毒し水洗乾燥させておく。
②
尿・便器
・個人専用とする。
・一回使用毎に、洗浄し乾燥させておく。
・退所後は、洗浄後 0.1%次亜塩素酸ナトリウム(ハイター等)で消毒し水洗乾燥させておく。
*長期間使用する場合は、一週間に一回程度消毒を行う。
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③
吸引ビンの洗浄
・吸引ビンをとりはずす。
・吸引ビン内の分泌物を洗浄室のシンク内に飛び散らないように廃棄する。
・洗浄する。
・水分を拭き取る。
・所定の位置に取り付ける。
④
経管栄養ボトル
・一回終了後ぬるま湯で洗浄し、乾燥させておく。
・汚染時や一週間に一回程度新しい物と交換する。
⑤
ガーグルベースン
・個人専用とする。
・一回使用毎に洗浄し、乾燥させておく。
・退所後は、洗浄後 0.1%次亜塩素酸ナトリウム(ハイター等)で消毒し水洗乾燥させておく。
*長期間使用する場合は、一週間に一回程度消毒を行う。
6.4
VRE保菌歴のある入所者に対する対応(施設における接触予防策)
介護施設において VRE 保菌歴のある入所者に対しては、日常の対策に加え、健常
皮膚に接触する場合にも、手指衛生と手袋着用を行う。体液(血液・排泄物・吐瀉
物・喀痰・唾液等)、創傷皮膚、粘膜に接触する恐れのある場合は、手指衛生・手袋
着用に加え、使い捨てエプロンまたはガウン(以下エプロン)*を着用し処置毎また
は入所者毎に交換する。
*接触予防策上は、前腕まで覆えるもの(ガウン)の方が望ましい。
6.4.1 部屋
1)個室管理、または他の VRE 保菌者と同室にする。
2)上記 1)ができない場合、VRE 保菌者であることが職員にわかるような表示を行
う(ゾーニング)。
6.4.2 処置
1)ケア、処置
・ 出入りする人数は最小限にする。
・ ケア、処置はまとめて最後におこなう。
2)手袋の着用
・ 部屋に入るときは、手袋を着用する。
・ 手袋は、汚染した時は交換する。
・ 部屋を出るときは、手袋をはずし、手指衛生を行う。
3)使い捨てエプロンの着用
・ 保菌者に介護者の体が広範囲に接触する、あるいは体液(血液・排泄物・吐瀉物・喀痰・唾液等)
が衣服に飛び散るおそれのある処置をする場合はエプロンを着用する。1回使用毎に廃棄する。
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(例)オムツ交換(下記 6.4.4 参照)、口腔ケア、尿道留置カテーテル挿入、尿バッグからの尿
廃棄、喀痰吸引、浣腸、坐薬挿肛、等
4)最低1回/日は、手の触れる環境を消毒用アルコールで清拭する。
6.4.3 物品
個人専用とする。
・体温計、血圧計、聴診器、駆血帯、アルコール綿、等
6.4.4 オムツ交換
1)必要物品
•
•
使い捨て手袋・使い捨てエプロン・ビニール袋(汚染した紙オムツや手袋を廃棄する)
新しい紙オムツ・オムツパット・微温湯を入れた陰部洗浄用ボトルまたはおしり拭き・速乾性
手指消毒薬
2)オムツ交換手順
①
必要物品をベッドサイドまで運び準備する。
②
カーテンを引く。
③
速乾性手指消毒薬で手指消毒を行う。
④
エプロン、手袋を着用する。
⑤
掛け寝具を入所者の足元に折りたたむ。
⑥
寝衣をオムツの上までたくしあげる(パジャマの場合はズボンを膝までさげる)。
⑦
紙オムツのマジックテープをはずし、オムツをひらく。紙オムツの便汚染が激しい場合は、陰
部洗浄や清拭前に汚染したオムツパットや尿取りパットをはずしておく。
⑧
入所者を仰臥位にし、開いたオムツの上で、微温湯にて陰部を洗浄する(おしり拭きで清拭す
る)。
⑨
入所者を側臥位にし、臀部を微温湯にて洗浄する(おしり拭きで清拭する)
。
⑩
汚れた紙オムツを入所者の身体の下へ内側にまるめこむ。
⑪
入所者の身体を側臥位にし、汚れたオムツをはずしビニール袋へ廃棄する。
⑫
エプロン、手袋をはずし廃棄する。
⑬
手指衛生を行う。
⑭
新しい紙オムツを装着する。
⑮
寝衣と寝具を整える。
⑯
手指衛生を行う。
- 25 -
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7.
VRE 検出時の届出・行政との連携体制について
• 京都府、京都市より依頼され実施している 3 年間の VRE 匿名調査は平成 19 年度
をもって終了する。一方、京都 VRE ネットワークにおける各施設からの VRE 検出
報告により、調査班では検出施設、検出規模等の情報を既に概ね把握している。
この結果、平成 19 年度に実施される第 3 回 VRE 調査を匿名で行う意味は薄れつ
つある。
• 今後も京都 VRE 調査班は存続し、これが主体となり、行政と連携する形で京都府
内の VRE 調査活動を継続していく。
• 医療機関は VRE 保菌者に関する情報を所管の保健所(行政)に提供することが望
ましい。多数の医療機関で VRE 保菌者の集団発生を認め、しかも施設数が増加し
つつあるという京都においては,情報提供は一層重要な意味をもつ。
• VRE 検出医療機関が情報提供しやすくするために、情報提供フォーム(書式 2,6,7)
を使用して、調査班および所管の保健所へ提出する。
• VRE 検出医療機関からの同意を得たうえで調査班へ情報提供(提供する情報は発
生数等の限定された情報に限定)を行う。
• 検出医療機関への視察ならびに助言は調査班が中心となって行う。(調査班と行
政の連携体制については図を参照)
• 行政と調査班は定期的に会合を持ち、京都地域における VRE の拡大状況を把握し
意見交換を行う。
情報提供*
行 政
調査班
情報提供*
検
出
情
報
助
言
視
察
助
言
検
出
情
報
検出医療機関
図 VRE が検出された場合の行政と調査班との連携体制
*提供する情報は医療機関の同意のもと、発生数等の限定された情報に限定する。
- 26 -
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8.
VRE 保菌検査に関わる費用負担について
8.1
基本的な考え方
感染症診断に対する細菌検査は保険診療内で実施可能であり、通常の細菌検査で
有意に検出された腸球菌のバンコマイシン感受性試験(2.1.2)はその範囲内として
患者負担で行う。
VRE 保菌検査は保険診療範囲を外れるため、患者負担で行うことはできず、基本
的には病院が費用を負担しなければならない。しかし、コストを理由として VRE 保
菌検査が不十分であると、保菌者の見逃しから施設内の複数保菌者発生につながる
が、それが起こっていることに気づくことすらできないことになる。この発見の遅
れが、結果的に、発見後の院内感染対策コストを大幅に上昇させるとともに、地域
的な VRE 検出増加の大きな原因ともなっている。
したがって、VRE 保菌検査、とくに受動的・積極的スクリーニング*による早期発
見を目的としたものについては、一定の基準と条件の下で京都 VRE 調査班が費用を
負担することとする。検査センターにおける検査は日本衛生検査協会近畿支部の協
力によって大幅な低価格で実施可能となっている。また、日本 BD 株式会社の協力に
より培地購入費用も低く設定できている。
8.2
費用負担の基準
8.2.1 調査班が負担する範囲と条件
1)範囲
・
VRE 選択培地(全額)
調査班に必要培地枚数およそ 2 ヶ月単位を請求する。検査センターに委託している施設では、
検査センターが調査班に請求する。請求には書式 9 を調査班事務局へファックスする。
・
VRE 確認試験(全額)
VRE 選択培地で陽性となったグラム陽性球菌コロニーを調査班に送付する。調査班は到着日から
3 日(土日祝日を除く)以内に結果を FAX で報告する。
・
調査班が指定する範囲における検査センターの検査料金*
*
第 1 章に示す平成 19 年 2 月
5 月の一斉調査、京都 VRE 監視ネットワークの参加施設における一定範囲
の便検査検体のスクリーニング等
2)条件
・
VRE 疑い菌が検出されれば調査班へ連絡し、菌株(培地)を送付する。
・
調査班からの問い合わせ、視察依頼に応じる。
・
毎月の検査検体数と陽性数を調査班へ報告する。
・ 検査センターに提出する検体は「京都 VRE 調査班保菌検査」とラベルする(ラベル見本
資料 7,
具体的な運用方法は各社と応談)。
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京都 VRE 調査班
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
8.2.2 病院が負担する範囲
・
検査センターの検査料金(300 円/検体[暫定]、患者あたり 1 検体/月まで)
・
陽性コロニーの送付
調査班へは EXPACK またはゆうパック
(郵政公社)を用いて送付する(送付方法は資料 8 を参照)。
検査センターから調査班への送料については病院へ実費を請求する。
・
患者あたり 1 検体/月を超える数の検査料
・ 検体採取容器・スワブ
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京都 VRE 調査班
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
9.VRE 相談窓口
・ 京都 VRE 調査班では VRE 保菌調査の方法、VRE 検出時または VRE 保菌歴のある患
者の入院時の院内感染対策、VRE 調査班あるいは所管の保健所への報告等に関し
ての質問窓口を京都大学医学部附属病院感染制御部に設ける。別紙 FAX(書式 8)
または E メールにて送付する。
・ 京都 VRE 調査班は報告または相談のあった施設の匿名を厳守する。検出施設の情
報は、属する地区および種類・規模のグループ(例.
京都市南部、H6 グループ)
のみとして扱い、施設の許可なく、施設名を調査班外に出さない。
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京都 VRE 調査班
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
V.
書式・資料
書式 1
院内 VRE 保菌調査結果報告用紙
書式 2
VRE 検出報告書(調査班・保健所連絡用)
書式 3
転入院患者 VRE 検出通知書(前施設連絡用)
書式 4
転入院患者 VRE 検出通知書(調査班用)
書式 5
VRE 検出情報提供書
書式 6
VRE 検出状況調査票 1(検出患者情報)
書式 7
VRE 検出状況調査票 2(時系列)
書式 8
VRE 感染対策に対する質問窓口
書式 9
VRE 選択培地請求用ファックス
資料 1
定点保菌調査における患者説明(例)
資料 2
調査班による匿名 VRE 保菌疫学調査における施設グループ別対象患者数
資料 3
VRE 感染リスク判定チェックシート(例)
資料 4
患者説明用紙(初回保菌検査用)(例)
資料 5
患者説明用紙(継続保菌検査用)(例)
資料 6
VRE 陽性判明時説明用紙(患者さん・ご家族説明用)
(例)
資料 7
京都 VRE 調査班の指定する保菌検査検体のラベル方法
資料 8
EXPACK による菌株送付方法
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京都 VRE 調査班
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
書式 1
院内 VRE 保菌調査結果報告用紙
病院名
病床数
検査患者数
調査期間
年
月
日
年
月
日
VRE 陽性患者背景(不足する場合はコピーを使用)
危
険
因
子
*
患者 1
患者 2
患者 3
年齢
性別
男・女
男・女
男・女
病棟
他院・施設からの転入院
あり・なし
あり・なし
あり・なし
6 ヶ月以内の入院・入所歴
あり・なし
あり・なし
あり・なし
1 年以内の 3 回以上の入院歴
あり・なし
あり・なし
あり・なし
入院 3 ヶ月以上
あり・なし
あり・なし
あり・なし
ICU・HCU
あり・なし
あり・なし
あり・なし
MRSA の多い病棟
あり・なし
あり・なし
あり・なし
VRE 検出歴のある病棟
あり・なし
あり・なし
あり・なし
オムツ着用
あり・なし
あり・なし
あり・なし
経腸栄養チューブ留置
あり・なし
あり・なし
あり・なし
尿路カテーテル留置
≧2 週間
あり・なし
あり・なし
あり・なし
入院で慢性透析
≧1 ヶ月
あり・なし
あり・なし
あり・なし
造血幹細胞・臓器移植予定
あり・なし
あり・なし
あり・なし
造血幹細胞・臓器移植後
≦3 ヶ月
あり・なし
あり・なし
あり・なし
化学療法後発熱に対する抗菌薬投与後
あり・なし
あり・なし
あり・なし
VRE 検出歴
あり・なし
あり・なし
あり・なし
抗 MRSA 薬投与
≧2 週間
あり・なし
あり・なし
あり・なし
点滴抗菌薬投与
≧4 週間
あり・なし
あり・なし
あり・なし
抗菌薬関連下痢症
あり・なし
あり・なし
あり・なし
*危険因子は 1.4.2 を参照のこと
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京都 VRE 調査班
書式 2
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
VRE 検出報告書(調査班・保健所連絡用)
送付先
京都 VRE 調査班
FAX
075-751-3233
(
)保健所
FAX
送付元(差出人)
報告日
年
月
日
施設名
部署・職名
FAX
氏名
下記の通り、当院の患者より VRE が検出されましたので報告します。
VRE 検出患者情報
年齢
検査日
性別
男・女
外来・入院(
年
月
日入院)
年
月
日
検体種
検出菌
検出背景
臨床検体・保菌検査
菌種
:
E.
faecium・E.
faecalis・他(
)
遺伝子:
vanA
・
vanB
・
vanC
・
未確認
主病名
入院病棟
ICU・一般病棟・療養病棟
オムツ
あり・なし
尿路カテ
あり・なし
経管栄養※1
あり・なし
中心静脈栄養
あり・なし
抗菌薬歴※2
あり・なし
手術歴※3
あり・なし
※1
経鼻または胃瘻チューブ栄養
※2
2 週間以内に抗菌薬投与歴
※3
1 ヶ月以内に手術室での手術歴
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京都 VRE 調査班
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
書式 3
転入院患者 VRE 検出通知書(前施設連絡用)
送付先
施設名
FAX
感染対策担当責任者
様
送付元(差出人)
転入施設名
記入者
職名
FAX
氏名
VRE 検出患者情報
氏名
転院日
検出菌
年齢
年
月
日
検査日
性別
男・女
検体種
菌種
:
E.
faecium・E.
faecalis・他(
)
遺伝子:
vanA
・
vanB
・
vanC
・
未確認
上記の通り、当院へ転入院された患者より VRE が検出されましたので報告
します。
貴施設入院・入所時から VRE 保菌者であった可能性が高いと考えられます。
病院においてはこの患者の入院病棟にて VRE 保菌調査を行う必要があります。
詳細については京都 VRE 調査班(FAX
075-751-3233)までお問い合わせ下さ
い。
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京都 VRE 調査班
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
書式 4
転入院患者 VRE 検出通知書(調査班用)
送付先:京都 VRE 調査班
FAX
075-751-3233
送付元(差出人)
報告日
年
月
日
転入施設名
部署・職名
FAX
氏名
前施設、VRE 検出患者情報
前入院・入所
施設名
施設の
種類
病院・介護施設
担当者名
FAX
患者
情報
年齢
検査日
性別
男・女
転院日
検体種
上記の通り、当院へ転入院された患者より VRE が検出されましたので報告
します。
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京都 VRE 調査班
京都における VRE 感染対策指針 ver070221
書式 5
VRE 検出情報提供書 この患者には VRE の検出歴がありますので、入院に際しましては貴院の感
染対策担当者とご相談の上、適切な感染対策を施行下さいますようお願い致
します。
本情報の詳細に関するお問い合わせ先:
施設名
感染対策担当者
所属
氏名
TEL
(
)
FAX
(
)
患者氏名
生年月日
M・T・
S・H
初回陽性日
検出菌
VRE
検出歴
年
月
日
性別
男
・
女
ID
年
月
日
検体
:
便
・
他(
)
菌種
:
E.
faecium・E.
faecalis・他(
)
遺伝子:
vanA
・vanB
・vanC
・未確認
検出検体 便
・
尿
・
褥瘡
・
胆汁
・創部
・血液
・
(全て)
血管カテーテル
・
その他(
)
した
→
便 VRE 検査
陰性化
せず
→
最近 3 回検査日
:
①
年
月
日,
②
年
月
日,③
年
月
日,
最終陽性日
年
月
日
検体
便
・
他(
)
記入上の注意
• 一度でも検出されたことがあればこの用紙で情報提供を行ってください。
• 前施設における検出など、詳細が不明な場合も、年・月などわかる範囲で記入して下さい。
• 患者の紹介の際に診療情報提供書に添付して利用してください。
*京都 VRE 調査班では府内の医療施設に、転入院に際して診療情報提供書に「VRE 検出情報
提供書」を添付することを勧めております。詳しくはホームページ http://
www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/%7Eict/ict/inf_practice/inf_ict/VREtyousa.html
をご覧くだ
さい。
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