曲目解説 - 兵庫芸術文化センター管弦楽団

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第89回定期演奏会プログラム/これさえ見ればわかる!今回の聴きどころ
第89回定期演奏会
これさえ
見れば
わかる!
ロッシーニ:歌劇
「泥棒かささぎ」序曲 (約10分)
東条 碩夫
(音楽評論家)
Gioachino Rossini : “La gazza ladra” Overture
Erich Wolfgang Korngold : Violin Concerto in D major, op.35
次に演 奏される「ヴァイオリン協 奏 曲 」の作 曲 者コルンゴルトは、出 世 作のオペラ
「死の都」
をはじめ、後期ロマン派の流れを汲む重厚壮大で豊麗な作風を生涯にわたり
貫いた作曲家である。1945年に作曲されたこの協奏曲も、甘美きわまる楽想が魅力だ。
第3楽章 フィナーレ:アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ
Finale: Allegro assai vivace
休憩後に登場するのは、チェコの大作曲家ドヴォルザーク(ドヴォルジャーク)。あの
スメタナやヤナーチェクとともに、チェコの民族主義運動が生んだ最も偉大な作曲家の
休 憩(20分)ー Intermission
ひとりと呼ばれている。演奏されるのは「第8交響曲」。あの「新世界交響曲」ほど有名で
はないが、音楽の内容は、それに勝るとも劣らない。
第8番 ト長調 op.88 (約37分)
Antonín Dvorák:Symphony No.8 in G major, op.88
「必 聴ポイント」
ライター
おすすめ
第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ
Allegro con brio
第2楽章 アダージォ
Adagio
ロッシーニ:歌劇「泥棒かささぎ」序曲
第3楽章 アレグレット・グラツィオーソ‐モルト・ヴィヴァーチェ
Allegretto grazioso - Molto vivace
ロッシーニの名序曲のひとつ
ロッシーニ特有の軽快華麗な序曲。彼のトレードマークでもある、音量を次第に増大させな
がらクライマックスへ追い込んで行く「ロッシーニ・クレッシェンド」が聴きもの。
第4楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ
Allegro ma non troppo
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揮:ダニエーレ・ルスティオーニ Daniele Rustioni, Conductor
指
ヴ ァ イ オ リ ン:川久保
管
弦
賜紀
Tamaki Kawakubo, Violin(★演奏曲)
楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団 Hyogo Performing Arts Center Orchestra
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2016
6/17(金)・18(土)・19(日)3:00PM開演
※演奏時間は目安となります。前後する可能性がありますので予めご了承ください。
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助成 :
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
現代音楽とは思えないほどロマンティック
濃厚で官能的な色彩にあふれた協奏曲で、随所にのちの映画音楽作曲家ジョン・ウィリア
ムズの「スター・ウォーズ」
「E.T.」などの音楽のハシリが出て来るのが面白い。
ドヴォルザーク: 交響曲 第8番 ト長調 op.88
民族音楽的な香りが満載の交響曲
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主催:兵庫県、兵庫県立芸術文化センター
PACモーニング室内楽
第2楽章 ロマンス:アンダンテ
Romance: Andante
ドヴォルザーク:交響曲
さら
のせいで大変な事件が起こる、
というオペラだが、序曲は軽快で明るい。
第1楽章 モデラート・ノービレ
Moderato nobile
ー
幕開きは、ロッシーニの軽快華麗な名曲、
「 泥棒かささぎ」序曲。
「かささぎ」
とは、鳥の
「かささぎ」のこと。スプーンなど小さな食器を攫っては巣に隠す習性を持ったかささぎ
室内オーケストラ
シリーズ
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35 (約25分)★
三者三様の芸風を楽しもう
定期演奏会
PROGRAM
文化庁文化芸術振興費補助金
特に第3楽章は一度聴いたら忘れられない哀愁の美しさ。第4楽章では、民族的で愉快な
楽想が次々に繰り出される。
「新世界交響曲」
(第9番)
よりもチェコ的な雰囲気。
(舞台芸術創造活動活性化事業)
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第89回定期演奏会 PROGRAM NOTE
第 89 回定期演奏会
Prof ile
曲目解説ー演奏をより深く楽しむために 東条 碩夫(音楽評論家)
イタリアのペーザロに生れ、パリのパッシーで世を去った、イタリ
ア最大のオペラ作曲家のひとり。19世紀初期の欧州音楽界で圧
定期演奏会
Gioachino
Rossini
ジョアキーノ・ロッシーニ (1792∼1868)
倒的な人気を博した。速筆・多作でも知られ、
ほぼ20年の間に39
初演:1817年5月31日 ミラノ
ル」
を最後に、
以後39年間はオペラを1曲も書かなかったという不
思議な作曲家でもあった。
美食家としても有名で、
彼の好みで作ら
れた料理
「ロッシーニ風ステーキ」
は名高い。
ロッシーニの21作目のオペラで、
「セビリャの理髪師」の翌年、
「ラ・チェネレントラ」の
4カ月後に初演された作品。楽しい音楽にあふれているが、一般にはあまり上演の機会
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
がない。
初演:1947年2月15日 セントルイス
オペラの舞台は19世紀初頭のフランス。悪代官に横恋慕された召使女ニネッタは、
銀の食器のスプーンを盗んだという疑いをかけられ、
しかも軍人の父親が上官と争い
脱走しているという事件も絡み、悪代官の指示で死刑を宣告される
(召使が盗みを犯す
と極刑に処せられるという酷い定めがあったようである)。だが間一髪、銀のスプーンを
盗んだ犯人は鳥の仕業だったことが判明ーいたずら者のかささぎが、いろいろな食器
さら
を攫って飛んで行き、巣の中に集めていたのであるーすべてが一転してハッピーエン
ドを迎える、
という物語である。
曲は、小太鼓のソロと闊達な行進曲で開始される。主部では有名なクレッシェンドで
頂点へ盛り上がるが、
このクレッシェンドの主題は、
オペラの本編では牢獄内で悪代官が
ニネッタに服従を迫る場面で演奏されるもの。ロッシーニは、この序曲を初演の日の
朝に、劇場に缶詰めにされて書いたという。
楽器編成
フルート、
ピッコロ、オーボエ2、
クラリネット2、バスーン2、ホルン4、
トランペット2、
トロンボーン、
ティンパニ、大太鼓、
シンバル、スネアドラム2、
トライアングル、弦楽5部
PACモーニング室内楽
機智に富んだ楽想の序曲
室内オーケストラ
シリーズ
ロッシーニ:歌劇
「泥棒かささぎ」序曲
本のオペラを書いた。
だがその絶頂期、
1829年の
「ウィリアム・テ
流麗な旋律、
ロマン的な豊麗さ
天才少年としてマーラーやR.シュトラウスに絶賛され、1920年にオペラ
「死の都」
を
発表してオーストリア屈指の人気作曲家となったコルンゴルトは、1938年、ナチスに
よる迫害を避けてアメリカ合衆国に亡命した。それ以前からハリウッド映画の音楽を多く
と38年の「ロビン・フッドの冒
手がけていた彼はー1936年の「風雲児アドヴァース」
険」
ではアカデミー音楽賞作曲賞を受賞したーたちまち映画音楽の大家として尊敬を
集めることになる。大編成のオーケストラを駆使した彼の劇的な作曲手法は、その後の
マックス・スタイナー(「風と共に去りぬ」
など)
から近年のジョン・ウィリアムズ(「スター・
ウォーズ」
など)
にいたる
「雄弁で壮大な映画音楽」路線の、
まさに原点となったのである。
その米国滞在の時期に彼が書いた
「クラシックの」作品が、
この
「ヴァイオリン協奏曲」
だった。
これは、同じく亡命して来たヴァイオリニスト、
フーベルマンに勧められて1945
年に作曲したものだが、実際の初演は2年後に、ヤッシャ・ハイフェッツが、
ウラディーミ
ル・ゴルシュマンの指揮するセントルイス交響楽団と協演して行なった。そのセンセー
ショナルな絶賛を受け、ハイフェッツは同年3月30日にもニューヨークのカーネギー
ホールで、エフレム・クルツ指揮ニューヨーク・フィルと協演して演奏、
この曲を一気に
有名にしたのである。
なお作品は、アルマ・マーラー=ヴェルフェルに献呈された。彼女
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第89回定期演奏会 PROGRAM NOTE
中間で発音する。音楽之友社の「音楽中辞典」
では
「ドヴォルジャーク」
を採用、
また講談
ある。
この手法が、当時から
「保守的、時代遅れ」
と評されたのは事実だが、それは現代の
社の「ニューグローヴ世界音楽大事典」では「ドヴォジャーク」
を採用しているほどだ。
私たちから見れば、
もはや音楽史の観点から見た議論にすぎないであろう。
ともあれ、
この
従って、
日本でもせめて
「ドヴォルジャーク」
くらいにはすべきであろう。
美しさは素晴らしい。曲には、
「 風雲児アドヴァース」
をはじめ、彼の多くの映画音楽から
さて、そのドヴォルジャークーここでは敢えてそう表記させていただくーは、40歳
の主題が取り入れられ、特に第3楽章では
「放浪の王子」
の音楽が第2主題として活用さ
代に入り、国際的に高まる名声の中、1889年にこの交響曲を書き上げた。
自ら指揮して
れている。
コルンゴルトは、
「自分の映画音楽を、
クラシックの作品に自由に転用してよい」
世界初演したその1890年、彼はケンブリッジ大学から名誉哲学博士の称号を贈られ、
という契約を、
予め映画会社と結んでいたのだという。
第1楽章の弦の動きや、
終楽章での
翌年6月にはその授与式に出席し、学位論文に替わるものとしてこの
「第8交響曲」
と
「ス
ホルンの高鳴りには、
のちのジョン・ウィリアムズの映画音楽の先駆が明らかに窺える。
ターバト・マーテル」
を指揮している。
それは彼にとって、
6回目の英国訪問であった。
楽器編成
「第8番」
は、
ドヴォルジャークの交響曲の中でも、
チェコの民族色が最も独創的な形で
独奏ヴァイオリン、
フルート2
(ピッコロ持替)
、
オーボエ2
(イングリッシュ・ホルン持替)
、
クラリネット2、
バス・クラリネット、
バスーン2
(コントラ・バスーン持替)
、
ホルン4、
トランペット2、
トロンボーン、
ティンパ
ニ、
大太鼓、
シンバル、
グロッケンシュピール、
シロフォン、
ヴィヴラフォン、
チューブラベル、
ドラ、
ハープ、
チェレスタ、
弦楽5部
Prof ile
生かされている、
と評される。第1楽章の序奏は民族音楽の「悲歌」風であり、主部にお
けるすべての主題にも民族的な雰囲気が漂う。第2楽章の哀愁を含んだ地方色も素晴
らしく、第3楽章での叙情美はまさにドヴォルジャークならではの懐かしさだろう。第4楽
章の主部、華麗なフルート・ソロの少し後に登場する民族舞曲的な主題のリズムはユー
PACモーニング室内楽
曲は3つの楽章からなるが、いずれも濃厚でロマンティックな手法にあふれた曲想で
室内オーケストラ
シリーズ
界のどこにもない。
チェコの人たちは
「ル」
を呑み込み気味に、
「ジャーク」
と
「シャーク」
の
定期演奏会
は、
あのマーラーの妻だった人である。
モラスで、そのモティーフが少しずつ下行しながら反復される個所は、昔は米国のヒット
Erich
Wolfgang
Korngold
エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897∼1957)
オーストリアのブリュン
(現チェコのブルノ)
に生れ、1920年初演
のオペラ
「死の都」
で世界の檜舞台に躍り出た。
アメリカに亡命し
映画音楽の大家となったが、そのキャリアと、作曲手法が19世紀
ロマン派のそれを守るものだったことが災いし、特に第二次大戦
後は時代遅れの作風と酷評された。
そのため念願の欧州復帰も叶
わず、ハリウッドで生涯を閉じた。だが1970年代以降、彼の真価
は見直され、
高い人気を集めるようになっている。
曲「ドライボーンズ」
に似ていると話題になったものだ。
4年後に書かれた「第9番《新世
界より》」
に勝るとも劣らぬ、魅力的な交響曲である。
楽器編成
フルート2
(ピッコロ持替)
、
オーボエ2
(イングリッシュ・ホルン持替)
、
クラリネット2、
バスーン2、
ホルン4、
トランペット2、
トロンボーン2、
バス・トロンボーン、
テューバ、
ティンパニ、
弦楽5部
Prof ile
Antonín
Leopold
ˇ
Dvorák
アントニン・ドヴォルザーク(1841∼1904)
ボヘミア
(チェコ)
のネラホゼヴェスに生れ、
スメタナの後継者とし
ドヴォルザーク:交響曲
第8番 ト長調 op.88
初演:1890年2月2日 プラハ
てチェコ国民楽派音楽の隆盛を担った大作曲家。
ブラームスから
も高く評価され、
さまざまな鞭撻を受けた。1892年から3年間
ニューヨークのナショナル音楽院長を務め、
この間に
「新世界交響
曲」
「チェロ協奏曲」
などの名曲を作曲している。晩年はプラハ音
「新世界交響曲」
を凌ぐ独創的な作品という人も
楽院長を務め、
ウィーン上院議員にも列せられ、国際的な名声に
包まれつつ、
プラハで生涯を閉じた。
ドヴォルザークー日本ではこれが標準表記になっているが、実はこういう発音は、世
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