IMF ファクトシート: 特別引出権(SDR)通貨バスケットの見直し

特別引出権(SDR)通貨バスケットの見直し
IMF 理事会による特別引出権(SDR)バスケット評価の見直しは、5 年に 1 回或いは、
金融情勢により必要と判断された場合は 5 年以内に行われます。SDR の準備資産とし
ての価値を高めるため、SDR 通貨バスケットに世界の貿易及び金融システムにおける
主要通貨の相対的重要性を反映させることが見直しの目的です。
SDR の見直しの対象
見直しでは、SDR の評価方法の主な要素がカバーされます。例えば、SDR バスケットに採
用する通貨の選択で使われる基準や指標、バスケットに採用される通貨の数、及び通貨の比
重を決めるための手法などです。また SDR 金利バスケットに採用されている金融商品も、
通常その対象となります。
直近のレビューでは(2010 年 11 月)、財とサービスの輸出額及び IMF の他の加盟国が保有
するそれぞれの通貨建ての準備資産額を基準に、SDR バスケットの通貨の比重が変更とな
りました。こうした変更は、2011 年 1 月 1 日付で発効しました。
SDR バスケットの採用基準
2000 年に理事会が採択した現採用基準は、SDR バスケットは加盟国或いは通貨同盟が発行
する通貨で、過去 5 年間で財とサービスの輸出額が最も高く、さらには IMF が「自由利用可
能通貨」であると判断した 4 通貨から構成されるとしています。
「入り口」としての機能を果たす輸出基準は、バスケットに採用される通貨が、世界経済で
中心的な役割を果たす加盟国・通貨同盟発行の通貨であることを担保するためのものです。
これは長い間 SDR バスケット通貨選択の基準としての役割を果たしています。自由利用可
能通貨であることという第 2 の基準は、2000 年に正式に採用となりました。これは、SDR
バスケットの価値を計るにあたり金融取引の重要性を正式に反映させるためのものです。
自由利用可能通貨の概念
IMF 協定は、「自由利用可能通貨」を、IMF が(i)国際取引での支払いに広く使われ、(ii)
主要な取引市場で広く取引されていると判断する通貨と定義しています。
自由利用可能通貨の概念は、実際に国際的に利用されていることや通貨取引を重視しており、
通貨が自由に変動するか或いは完全に交換可能であるかということではありません。
ある程度の資本規制がかけられていたとしても、通貨は広く使われ広く取引される場合があ
ります。一方で、完全に交換可能な通貨が必ずしも広く使われ取引されているわけではあり
ません。
自由利用可能通貨の概念は、IMF の金融業務で中心的な役割を果たしています。なかでも、
全ての借入国は、自由利用可能通貨を受け取る権利を有しています。実際、全ての IMF 融資
業務が、自由利用可能通貨または SDR で行われており、後者の場合、借り入れを行ってい
る国は SDR を自由利用可能通貨と交換する権利を有しています。自由利用可能通貨の概念
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は、加盟国が IMF から受け取った通貨-直接的・間接的(つまり、不利益を被ることなくこ
れを他の通貨と交換することによる)にかかわらず-を、国際収支上の資金調達ニーズに対
応するために使えるようにするものです。
自由利用可能通貨を判断するための指標
自由利用可能通貨の定義には解説が必要であり、自由利用可能通貨の決断には判断が必要で
す。IMF 理事会はその判断材料として量的指標を活用します。2011 年、理事会は自由利用
可能度を評価する際に、広く利用されているかを判断するための指標として、準備資産に占
める割合、国際的な債券の通貨表記、及び国際的な銀行の負債の通貨表記、そして広く取引
で利用さているかを判断するための指針として外国為替市場での取引額(売買高)など、複
数の指標を重要要素として活用することを承認しました。現在進められている見直しでスタ
ッフは、2011 年に承認された指標を補完すると考えられる追加的な指標やデータソースを
検討しています。
SDR バスケットの構成通貨と、中国元(RMB)の採用が検討されている理由
SDR バスケットは現在、米ドル、ユーロ、スターリング・ポンド、及び日本円の 4 通貨か
ら構成されています。
2010 年の直近の見直しで、入り口としての輸出基準を満たしている通貨で SDR バスケット
に採用されていない通貨は RMB のみでした。しかし自由利用可能通貨の基準を満たしてい
ないと判断されました。現在行われている見直しのスタート地点は、2010 年の直近の見直
し結果とその後の 2011 年の通貨選択基準の協議です。中国は引き続き輸出基準を満たして
いる一方で SDR バスケットに採用されていない唯一の国であることから、RMB が自由利用
可能通貨であるか否かの評価が、見直しの焦点となります。詳細なテクニカルな分析に裏打
ちされた理事会の決定が、見直しの結果となります。
SDR の評価方法を決定するには、大多数の賛成が必要
(i)評価の原則の変更や(ii)現行の原則の適用の抜本的な変更には総議決権の 85%という
大多数の賛成が必要であることから、評価方法の決定には総議決権の 70%という大多数の
賛成がとなります。これまで、SDR の評価方法の変更は全て、総議決権の 70%という大多
数で決定されています。
この情報は 2015 年 8 月現在のものです。