教科等【総合的な学習】対象学年【全学年】 武雄中学校 主幹教諭 井 手 瑞 樹 テーマ 2 「カウラの日本兵捕虜集団脱走事件」に よる平和教育と国際理解教育の実践 実践の概略 (1) 指導内容(全校生徒への一斉指導) ① カウラ事件の概要と学習の目的を説明する ② 捕虜になられた方の証言をもとにしたドキ 1 カウラ事件とテーマ設定の理由・意図 太平洋戦争の ュメンタリー番組を見せる。 ③ 日本人の証言とオーストラリア人の証言に 末期、1944 年(昭 よる資料を朗読する。 和 19 年) 8 月 5 ④ 生徒代表数名をステージに上げ、教師をコ 日、日本兵捕虜 ーディネーターとする、パネルディスカッシ による集団脱走 ョンを実施する。 事件がオースト ⑤ カウラ事件の映画「あの日、僕らの命はト ラリアのカウラ イレットペーパーよりも軽かった」を鑑賞さ 捕虜収容所にて起こった。日本兵 1104 名によ せる。 って引き起こされ、オーストラリア軍の銃撃、 ⑥ 指導全体から感じたこと、考えたことを感 あるいは自決により、日本兵の 234 名が死亡、 想文として書かせる。 105 名が負傷した。オーストラリア軍も 4 名が 死亡、4 名が負傷した。 これは、戦後長い間、一般には知られていな (2) ① カウラの日本兵捕虜収容所(永瀬 隆・ かった事件である。なぜ、明らかにされてこな かったのであろうか。そしてまた、なぜ、この 吉田 晶/編 井手撮影 所蔵) ③ カウラの大脱走(NHK BS ドキュメンタ 受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ・・ ・」に代表される当時の道徳観によるものであ 青木書店) ② カウラの現地写真(1998 年 ような脱走事件が引き起こされたのであろう か。それは、戦陣訓「・・・生きて虜囚の辱を 参考資料および使用資料 リー番組) ④ カウラ事件の映画「あの日、僕らの命は り、今日まで、捕虜の生存者を長い間呪縛し続 トイレットペーパーよりも軽かった」(日本 けてきた軍国主義教育によるものであった。つ テレビ制作) まり、捕虜であったことを語ることができなか った人が多かったのである。 3 付記 この事件を通して、戦争捕虜としての日本人 上記資料は、井手が所有しております。授業 に対し、手厚い扱いを忘れなかったオーストラ 実践を希望される方はお問い合わせください。 リアの人々の心の温かさ、豊かさを感じさせる また、カウラを含めたオーストラリアの記録・ とともに、逆に日本人のとってしまった、捕虜 資料を本ウェブサイトの他のページに掲載して に対する扱いの不当さ、また、脱走事件を決行 おりますので、興味のあられる方はぜひご覧く するか、やめるかという究極の選択を迫られた ださい。 日本人捕虜たちの心理状況に迫ることにより、 オーストラリア体験記/ 戦争というものの悲惨さ、残虐さを実感させ、 メルボルン通信 NO.1 / 平和を願い、築き、守ろうとする意志を育て、 身近な問題に生かしていこうとする子どもたち の実践力を伸ばしたいと考えたのである。 P.4,P.5
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