日本チリ経済連携協定(EPA)における 運用実態把握アンケート調査について 日 智 商 工 会 議 所 ( EPA 委 員 会 ) 担当理事 山東 理二 ジェトロ・サンティアゴ事務所 所長 竹下 幸治郎 拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。 さて、標題のアンケートにつきましては、皆様のご協力を賜りましたこと厚く御礼申し上 げます。このたび、調査結果がまとまりましたのでお知らせ申し上げます。皆様のチリに おけるビジネスにお役立て頂ければ幸甚です。また今後、よりよいビジネス環境を創るた め、日智双方の政府への働きかけの基礎情報として有効活用させていくことを改めてお伝 え申し上げます。 敬具 記 <アンケート調査概要> ■ 調 査 期 間 : 2010 年 12 月 1 6 日 ~ 1 月 1 7 日 ■ ア ン ケ ー ト 送 付 先 : 58 社 ■ 回 答 企 業 : 34 社 1. 回 答 率 58. 6% 日本チリEPAの特恵関税減免利用について 1)利 用 の 有 無 に つ い て 利 用 し て い る : 19 社 利 用 し て い な い : 15 社 (参考)本項目の過去調査結果推移 15 A.利用方法について 日 本 か ら の 輸 入 で 利 用 : 14 社 日本への輸出で利用:8 社 B.利用開始時期について 注:複数記入の場合は、最初の時 期を開始時期と判断した。 2)日 本 チ リ E P A を 利 用 し て い な い と 回 答 し た 企 業 の 同 協 定 未 利 用 の 背 景 ・ 理 由 に つ い て 日本以外の海外生産拠点からの輸 入等 16 2.日本からの輸入品目に対する関税減免利用状況(品目名一部編集) 【関税減免利用品目】 フェノール樹 脂 、魚 網 、自 動 車 、 タ イ ヤ( 自 動 車 用 、鉱 山 用 、建 機 用 )、カ メ ラ 、ビ デ オ 、印 刷 機 用 イ ン ク 、発 電 設 備 機 械 器 具 、紙 、エレベータ ー、トラック、食 品 機 械 、医 療 機 器 ・器 具 、鉱 山 機 械 ・重 機 、電 子 黒 板 、漁 具 資 材 、すり身 製 品 、機 械 【輸入しているが関税減免を利用していないものの例】 ナイロン、ポリ エステル 原 糸 、工 場 使 用 部 品 、複 写 機 、スキャナー 、プロジェクター 、 機 械 のパ ーツ、 機 械 アクセサリー、船 舶 用 資 材 ・部 品 等 3.日本向け輸出品目に対する関税減免利用状況(品目名一部編集) 【関税減免利用品目】 EVA フロート、冷 凍 豚 肉 、冷 凍 ウ ニ 、 冷 凍 貝 類 、 サ ケ ・ マ ス 、 ワ イ ン 、 牛 加 工 肉 、 冷 凍 ベ リ ー類、サケ加工品 【輸出しているが関税減免を利用していないものの例】 木 材 チ ッ プ 、銅 精 鉱 、ア ト ラ ン テ ィ ッ ク サ ー モ ン( ド レ ス )、ギ ン ザ ケ( ド レ ス )、魚 卵 、 メルルーサ等魚類(ドレス、フィレー) 4 .対 チ リ ビ ジ ネ ス 拡 大 の た め の 現 行 規 制 緩 和 、イ ン セ ン テ ィ ブ 導 入 の 希 望 、問 題 点 等 に ついて 主な指摘・要望: 1)租税条約ないし配当に対する追加税の減免・撤廃等 12 社 2)省エネ機器・車両・インフラにかかるインセンティブ期待 3)過度に労働者有利となっている現行労働法の改正 4)ビザ短縮 5社 2社 2社 <租 税 条 約 要 望 関 連 コメント (抜 粋 および一 部 編 集 )> ① チリから本 邦 に対 する国 外 配 当 送 金 には、法 人 税 17%に加 え 追 加 源 泉 税 18%の課 税 あり、合 計 35%の高 率 課 税 となる。租 税 条 約 締 結 により、 18%の追 加 税 部 分 につき減 免 メリットを享 受 し たい。 ② チ リ に 進 出 す る 日 系 企 業 が 国 外 か ら 借 入 を 行 う 際 に は 、金 融 機 関・親 会 社 の 別 な く 金 利 支 払 い に 対 し 4% の 源 泉 税 が 徴 収 さ れ る 。 但 し 、 親 会 社 か ら の 借 入 金 額 が 資 本 勘 定 の 3 倍 を 越 え た 場 合 に は 4% の 源 泉 税 で は な く 、 上 記 配 当 支 払 と 同 様 に 35% の 源 泉 税 が 徴 収される。租税条約締結により節税メリットを享受したい。 ③ 非 居 住 者 の 役 務 に 対 す る 対 価 支 払 い に つ い て は 、利 益 の 国 外 流 出 と 看 做 さ れ 35% の 源 泉 税が徴収される。従って、本邦親会社等による在チリ仔会社宛て役務提供に係わる対価 17 支払いも当該課税対象となる。しかしながら、例えばチリと租税条約締結済みの英国で あれば斯かる源泉税は免除になるとの見解あり。租税条約締結により斯かる節税メリッ トを享受したい。 ③ 法 人 が 利 益 を 外 国 へ 送 金 し た 場 合 に 課 税 さ れ る 「 追 加 税 (IMPUEST O ADICIONAL) 」 の 税 率 35%の撤 廃 あるいは減 免 。 ⑤日 智 間 に租 税 条 約 が ないため 、一 方 の国 で移 転 価 格 税 制 による 追 徴 課 税 を課 せら れる場 合 、 二 重 課 税 になる可 能 性 が高 い。 ⑥ 投 資 環 境 改 善 の ため に 租 税 条 約 の 早 期 締 結 を 希 望 する が 、 現 状 の チ リ 政 府 見 解 で は 配 当 の 海 外 送 金 時 に お け る 税 制 上 の メ リ ッ ト は 租 税 条 約 を 締 結 し て も 供 与 で き な い( 17% の 1st category tax ( 法 人 税 ) と 18%の additional tax ( 追 加 税 ) は 引 き 続 き 発 生 す る ) と の ことなので、その部分も含めての改善ができれば非常に有り難い。 ⑦ 韓 国 /中 国 並 み の 租 税 条 約 の 早 期 締 結 。税 務 上 の 外 国 子 会 社 認 定 基 準 の 10%ま で の 緩 和 他 。 < 省 エ ネ 機 器・車 両・イ ン フ ラ に か か る イ ン セ ン テ ィ ブ 期 待 関 連 コ メ ン ト( 抜 粋 お よ び 一 部編集)> ①低 公 害 車 への免 税 処 置 (関 税 以 外 ) ② 大 幅 に燃 料 消 費 を 低 減 し 、 NO x ・ CO2 排 出 量 の削 減 が 可 能 なハ イブリ ッ ドシ ステム を搭 載 した 機 材 を 日 本 よ り輸 入 して 販 売 を 開 始 す る予 定 。 環 境 対 応 ・ 省 エネを 国 とし て 促 進 する イ ン セン テ ィブ 制 度 の導 入 に期 待 します。 ③低 公 害 車 購 入 時 の補 助 金 や充 電 器 設 営 のための補 助 金 制 度 。 ④ 再 生 可 能 エネ ルギ ー 普 及 に関 する 固 定 価 格 買 い 取 り 制 度 ( フ ィ ー ド イ ン タ リ フ 制 度 、 feed-in tar iff law) のよ うなインセンティブ導 入 。 ⑤ 夜 間 蓄 熱 用 電 力 料 金 体 系 のインフラ創 り、省 エネ機 器 類 の販 売 時 また導 入 時 の免 税 措 置 。 <労 働 法 関 連 コメント(抜 粋 およ び一 部 編 集 )> ① 被 雇 用 者 に過 度 に有 利 な労 働 法 の改 正 (休 暇 、解 雇 ・退 職 、給 与 等 ) ② 労 働 法 に お い て 、 従 業 員 に 対 し て 年 次 有 給 休 暇 を 2 週 間 ( 営 業 日 で 連 続 10 日 間 ) 取 得 さ せ る 義 務 が あ る が 、夏 季 に 全 従 業 員 が 2 週 間 の 休 暇 を 取 得 す る と 業 務 に 支 障 を き たす 場合がある。2 週間の長期休暇を望んでいない従業員も多いため、連続取得の義務は 1 週間(営業日で 5 日間)を限度としてほしい。 ③ 労 働 組 合 の 組 合 員 数 が 労 働 法 で 定 め ら れ た最 低 必 要 人 数 の 基 準 を 下 回 って も 、 組 合 員 か ら労 働 監 督 局 への申 請 がない限 り 、労 働 組 合 は存 続 することになっており、必 要 以 上 に労 働 組 合 を保 護 す る 法 律 にな って い る 。 ま た 、 労 働 組 合 の 役 員 が 享 受 す る 労 働 特 権 ( 会 社 は 職 務 内 容 等 の変 更 や 解 雇 が で き な い 、 組 合 活 動 の 名 目 で 職 場 を 離 脱 で き る 等 ) は 、 企 業 に とっ て 不 利 益 と な る権 利 を労 働 者 に与 え ている。 ④ 下 請 法 に よ り 、下 請 け 業 者 の 従 業 員 賃 金 、源 泉 所 得 税 等 の 支 払 不 履 行 に よ っ て 発 注 者 が 訴 え ら れ た 場 合 え え 発 注 者 は そ れ を 支 払 う こ と を 義 務 付 け ら れ て い る が 、独 立 し た 企 業 である下請け業者の義務をすべて発注者が負うのはおかしいのでこの法律の撤廃を求 18 めたい。 < ビザ短 縮 関 連 コメント> ・駐 在 員 のビザ取 得 に要 する時 間 の短 縮 ・チリの各種ビザ手続きの迅速化 <その他コメント> ① ボ ラ ン タ リ ー と は い え こ の 度 の Royalty( 鉱 業 特 別 税 )の 税 率 引 上 は 、外 資 法( DL600 ) に基く外資契約があるといえども、政権により恣意的に運用される危険性を露呈した。 税 制 に お け る 透 明 性 の 一 段 の 改 善 を 望 む と 共 に 、対 外 資 基 本 政 策 の 変 化 に 対 す る 日 本 側 の感度の向上が望まれる。 ②チリは他 国 と比 較 して港 費 (入 港 費 、岸 壁 使 用 料 等 )が非 常 に高 く、輸 出 品 の競 争 力 を維 持 し、 ビジネス活 動 を継 続 していく上 での阻 害 要 因 となっている。 ③ 植 林 会 社 で は 、乗 用 車・4 ド ア の ジ ー プ に 関 す る 費 用 が 税 務 上 の 費 用 と し て 認 め ら れ て い な い が 、安 価 な 中 古 車 を 選 定 す る 自 由 度 が 制 限 さ れ る た め 、こ の 法 律 の 撤 廃 、も し く は台数を制限して税務上の費用として認めるよう改定を求めたい。 ④環境規制における合理性、公平性、一貫性の欠如 ⑤違法行為に対する捜査当局の不十分な対応 ⑥ チ リ の 移 転 価 格 税 制 に おい て 、 国 外 の 関 係 会 社 へ の 販 売 ( 移 転 ) 価 格 は 、 非 関 連 会 社 間 の価 格 と同 じ でなけ ればならない、と 定 められているが 、同 じカテゴリー で も品 質 の異 なる 商 品 を販 売 す る場 合 の査 定 方 法 が明 確 でない。 ⑦税関における品目区分の解釈で日本とチリで異なるものがあるので、統一が必要。 ⑧ ア ト ラ ン テ ィ ッ ク サ ー モ ン の 日 本 側 関 税 率 ( 2.9% ) の 引 き 下 げ 。 5.知的財産について 1)模倣品被害の状況について 模倣品被害の有無について 有り:4 社 無 し : 30 社 2)輸入経路、港、販売経路等についてのコメント(一部編集) ・アリカ 及 びイキケ、輸 入 業 者 によ る輸 入 (主 に中 国 ) ・サン・アントニオ港 ・イキケ・フリーゾーン 19 ・機械パーツの模倣品の輸入経路としては米国発ないし東南アジア発。輸入港は未確認。 北部エリアに模倣品パーツ販売店が多い。 3)日本チリEPAに基づく知財委員会開催希望の有無について 知財委員会開催希望について 希望する:9 件 希 望 し な い ・ 無 記 入 : 25 件 以上 20
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