平成 22 年度実施 選択的評価事項に係る評価 評

平 成 22 年 度 実 施
選択的評価事項に係る評価
評 価 報 告 書
京都府立医科大学
平成 23 年3月
独立行政法人大学評価・学位授与機構
目
次
独立行政法人大学評価・学位授与機構が実施した選択的評価事項に係る評価について ・・・・・
1
Ⅰ 選択的評価事項に係る評価結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
Ⅱ 選択的評価事項の評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10
選択的評価事項A 研究活動の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10
<参 考> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
15
ⅰ 現況及び特徴(対象大学から提出された自己評価書から転載) ・・・・・・・・・・・・
17
ⅱ 目的(対象大学から提出された自己評価書から転載) ・・・・・・・・・・・・・・・・
18
ⅲ 選択的評価事項に係る目的(対象大学から提出された自己評価書から転載) ・・・・・・
20
ⅳ 自己評価の概要(対象大学から提出された自己評価書から転載) ・・・・・・・・・・・
21
京都府立医科大学
独立行政法人大学評価・学位授与機構が実施した選択的評価事項に係る評価について
1 評価の目的
独立行政法人大学評価・学位授与機構(以下「機構」という。
)の実施する認証評価は、大学の正規
課程における教育活動を中心として大学の教育研究活動等の総合的な状況を評価するものですが、大学
にとって研究活動は、教育活動とともに主要な活動の一つであり、さらに大学は、社会の一員として、
地域社会、産業界と連携・交流を図るなど、教育、研究の両面にわたって知的資産を社会に還元するこ
とが求められており、実際にそのような活動が広く行われています。
そこで機構では、
「評価結果を各大学にフィードバックすることにより、各大学の教育研究活動等の
改善に役立てること」
、
「大学の教育研究活動等の状況を明らかにし、それを社会に示すことにより、広
く国民の理解と支持が得られるよう支援・促進していくこと」という評価の目的に鑑み、各大学の個性
の伸長に資するよう、大学評価基準とは異なる側面から大学の活動を評価するために、
「研究活動の状
況」
(選択的評価事項A)と「正規課程の学生以外に対する教育サービスの状況」
(選択的評価事項B)
の二つの選択的評価事項を設定し、大学の希望に基づいて、選択的評価事項Aに関わる活動等について
評価を実施しました。
2 評価のスケジュール
機構は、国・公・私立大学の関係者に対し、評価の仕組み・方法等についての説明会、自己評価書の
作成方法等について研修会を開催した上で、大学からの申請を受け付け、自己評価書の提出を受けた後、
評価を開始しました。
自己評価書提出後の評価は、次のとおり実施しました。
22 年7月 書面調査の実施
8月~9月 評価部会(注1)の開催(書面調査による分析結果の整理、訪問調査での確認事項及
び訪問調査での役割分担の決定)
運営小委員会(注2)の開催(各評価部会間の横断的な事項の調整)
10 月~12 月 訪問調査の実施(書面調査では確認できなかった事項等を中心に対象大学の状況を
調査)
12 月~23 年1月 運営小委員会、評価部会の開催(評価結果(原案)の作成)
1月 評価委員会(注3)の開催(評価結果(案)の取りまとめ)
評価結果(案)を対象大学に通知
3月 評価委員会の開催(評価結果の確定)
(注1)評価部会・・・・・大学機関別認証評価委員会評価部会
(注2)運営小委員会・・・大学機関別認証評価委員会運営小委員会
(注3)評価委員会・・・・大学機関別認証評価委員会
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京都府立医科大学
3 大学機関別認証評価委員会委員及び専門委員(平成 23 年3月現在)
(1)大学機関別認証評価委員会
赤 岩 英 夫
元 群馬大学長
鮎 川 恭 三
元 愛媛大学長
荒 川 正 昭
新潟県健康づくり・スポーツ医科学センター長
飯 野 正 子
津田塾大学長
稲 垣
前 大阪教育大学長
卓
尾 池 和 夫
国際高等研究所理事・所長
大 塚 雄 作
京都大学教授
荻 上 紘 一
大学評価・学位授与機構教授
梶 谷
電気通信大学長
誠
金 川 克 子
神戸市看護大学長
北 原 保 雄
元 筑波大学長
郷
情報システム研究機構理事
通 子
河 野 通 方
大学評価・学位授与機構評価研究部長
児 玉 隆 夫
帝塚山学院学院長
小 林 俊 一
秋田県立大学長
小 間
科学技術振興機構研究主監
篤
齋 藤 八重子
○佐 藤 東洋士
元 東京都立九段高等学校長
桜美林大学長
鈴 木 昭 憲
前 秋田県立大学長
鈴 木 賢次郎
大学評価・学位授与機構教授
鈴 木 典比古
国際基督教大学長
永 井 多惠子
せたがや文化財団副理事長
野 上 智 行
国立大学協会専務理事
ハンス ユーゲン・マルクス
南山学園理事長
福 田 康一郎
医療系大学間共用試験実施評価機構副理事長
◎吉 川 弘 之
科学技術振興機構研究開発戦略センター長
※ ◎は委員長、○は副委員長
- 2 -
京都府立医科大学
(2)大学機関別認証評価委員会運営小委員会
赤 岩 英 夫
元 群馬大学長
鮎 川 恭 三
元 愛媛大学長
◎荻 上 紘 一
大学評価・学位授与機構教授
北 原 保 雄
元 筑波大学長
児 玉 隆 夫
帝塚山学院学院長
小 間
科学技術振興機構研究主監
篤
鈴 木 昭 憲
前 秋田県立大学長
鈴 木 賢次郎
大学評価・学位授与機構教授
福 田 康一郎
医療系大学間共用試験実施評価機構副理事長
※ ◎は主査
(3)大学機関別認証評価委員会評価部会
(第3部会)
○今 井 浩 三
東京大学医科学研究所附属病院長
恵比須 繁 之
大阪大学教授
荻 上 紘 一
大学評価・学位授与機構教授
○栗 原 英 見
広島大学教授
鈴 木 賢次郎
大学評価・学位授与機構教授
土 屋
千葉大学教授
俊
野 嶋 佐由美
◎福 田 康一郎
高知女子大学看護学部長
医療系大学間共用試験実施評価機構副理事長
※ ◎は部会長、○は副部会長
- 3 -
京都府立医科大学
※ 上記評価部会の委員のほか、選択的評価事項Aの書面調査を担当した委員(全対象大学分)
青 木 弘 行
千葉大学教授
青 木 玲 子
一橋大学教授
赤 井 益 久
國學院大學理事・副学長
赤 峰 昭 文
九州大学教授
新 井 達 郎
筑波大学教授
安 藤 清 志
東洋大学教授
石 川 弘 道
高崎経済大学副学長
伊 藤 邦 武
京都大学教授
伊 藤 公 一
千葉大学教授
井 口
三重大学教授
靖
猪 熊 茂 子
日本赤十字社医療センターリウマチセンター長
上 田 和 夫
東京大学教授
太 田 敬 子
北海道大学教授
大 塚
譲
お茶の水女子大学教授
大 西 武 雄
奈良県立医科大学教授
大 西 有 三
京都大学理事・副学長
大 橋 ゆかり
茨城県立医療大学教授
大 森 博 雄
東京大学名誉教授
岡 田
東京工業大学応用セラミックス研究所長
清
岡 田 伸 夫
大阪大学教授
沖
陽 子
岡山大学教授
荻 野 綱 男
日本大学教授
長 村 義 之
国際医療福祉大学病理診断センター長
柿 崎 洋 一
東洋大学常務理事
風 間 晴 子
国際基督教大学教授
片 田 範 子
兵庫県立大学看護学部長
金 子 双 男
新潟大学自然科学系長
川 口 陽 子
東京医科歯科大学教授
川 村 和 夫
高知大学教授
岸 尾 光 二
東京大学教授
木 村 彰 方
東京医科歯科大学副学長
久 野
名古屋大学教授
覚
栗 田 博 之
東京外国語大学副学長
栗 原
新潟大学教授
隆
小 槻 日吉三
高知大学理事・副学長
後 藤 澄 江
日本福祉大学教授
小 林 裕 和
静岡県立大学大学院生活健康科学研究科長
小 林 良 二
東洋大学教授
近 藤
東北大学教授
丘
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京都府立医科大学
齋 藤 義 夫
東京工業大学教授
酒 井 貴 志
岡山大学教授
阪 野 智 一
神戸大学大学院国際文化学研究科長
薩 摩 順 吉
青山学院大学教授
佐 藤
信
東京大学教授
佐 藤 勝 則
東北大学教授
佐 野
岡山大学法学部長
寛
式 守 晴 子
静岡県立大学大学院看護学研究科長
新 開 明 二
九州大学教授
杉 山 公 造
北陸先端科学技術大学院大学副学長
鈴 木 真 二
東京大学教授
曽 田 三 郎
広島大学教授
曽 根 三 郎
徳島大学教授
高 木 彰 彦
九州大学大学院人文科学研究院長
高 橋 香 代
岡山大学教授
髙 山 倫 明
九州大学教授
武 川 正 吾
東京大学教授
田 瀬 則 雄
筑波大学教授
龍 岡 文 夫
東京理科大学教授
田 林
筑波大学教授
明
玉 井 金 五
大阪市立大学教授
戸 田 保 幸
大阪大学教授
富 岡
同志社女子大学教授
清
豊 田 利 久
広島修道大学教授
中 西
秀
九州大学教授
永 山 正 男
鳥取大学教授
仁 川 純 一
九州工業大学情報工学部長
西 澤 宗 英
青山学院常務理事
西 平 賀 昭
筑波大学教授
仁 平 道 明
和洋女子大学教授
橋 本 良 明
高知大学教授
蓮 見
孝
筑波大学教授
花 木 啓 祐
東京大学教授
濱 口
新潟大学副学長
哲
林
義 孝
医療法人瑞穂会法人顧問
原
純 輔
放送大学宮城学習センター所長
廣 田
薫
東京工業大学教授
藤 本 豊 士
名古屋大学教授
古 家 信 平
筑波大学教授
古 山 正 雄
京都工芸繊維大学理事・副学長
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京都府立医科大学
本阿弥 眞 治
東京理科大学教授
牧 島 亮 男
北陸先端科学技術大学院大学特別学長顧問
松 浦 義 則
福井大学教授
松 本 堯 生
広島大学名誉教授
宮 下 德 治
東北大学教授
村 嶋 幸 代
東京大学教授
望 田 研 吾
九州大学名誉教授
森
大阪大学教授
正 樹
森 田 耕 次
東京電機大学特別専任教授
森 本 幸 裕
京都大学教授
安 川 哲 夫
筑波大学教授
山 添
康
東北大学教授
山 田
明
名古屋市立大学教授
山 田 聖 志
豊橋技術科学大学教授
山 辺 規 子
奈良女子大学教授
山 本
お茶の水女子大学教授
茂
吉 田 俊 和
名古屋大学教授
吉 村 豊 雄
熊本大学教授
吉 元 洋 一
鹿児島大学教授
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京都府立医科大学
4 本評価報告書の内容
(1)
「Ⅰ 選択的評価事項に係る評価結果」
「Ⅰ 選択的評価事項に係る評価結果」では、選択的評価事項Aについて、当該事項に関わる対
象大学の有する目的の達成状況について記述しています。
さらに、対象大学の目的に照らして、
「優れた点」
、
「改善を要する点」等がある場合には、それ
らの中から主なものを抽出し、上記結果と併せて記述しています。
(2)
「Ⅱ 選択的評価事項の評価」
「Ⅱ 選択的評価事項の評価」では、当該事項に関わる対象大学の有する目的の達成状況等を以
下の4段階で示す「評価結果」及び、その「評価結果の根拠・理由」を記述しています。加えて、
取組が優れていると判断される場合や、改善の必要が認められる場合等には、それらを「優れた点」
、
「改善を要する点」及び「更なる向上が期待される点」として記述しています。
<選択的評価事項の評価結果を示す記述>
・ 目的の達成状況が非常に優れている。
・ 目的の達成状況が良好である。
・ 目的の達成状況がおおむね良好である。
・ 目的の達成状況が不十分である。
(※ 評価結果の確定前に対象大学に通知した評価結果(案)の内容等に対し、意見の申立てがあ
った場合には、
「Ⅲ 意見の申立て及びその対応」として、当該申立ての内容を転載するととも
に、その対応を記述することとしています。
)
(3)
「参考」
「参考」では、対象大学から提出された自己評価書に記載されている「ⅰ 現況及び特徴」
、
「ⅱ
目的」
、
「ⅲ 選択的評価事項に係る目的」
、
「ⅳ 自己評価の概要」を転載しています。
5 本評価報告書の公表
本報告書は、対象大学及びその設置者に提供します。また、対象大学すべての評価結果を取りまとめ、
「平成 22 年度選択的評価事項に係る評価実施結果報告」として、印刷物の刊行及びウェブサイト
(http://www.niad.ac.jp/)への掲載等により、広く社会に公表します。
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京都府立医科大学
Ⅰ 選択的評価事項に係る評価結果
京都府立医科大学は、
「選択的評価事項A 研究活動の状況」において、目的の達成状況
が良好である。
当該選択的評価事項Aにおける主な優れた点として、次のことが挙げられる。
○ 研究者1人当たりの科学研究費補助金獲得額が高い水準にある。
○ Mortyn Jones 賞、英国内分泌学会によるインターナショナルメダル、David Easty Lecture 賞、
Castoviejo Medal、Piet Van Duijn 賞等、国際的に高く評価されている学術賞を受賞した研究者が多い。
上記のほか、当該選択的評価事項Aにおける更なる向上が期待される点として、次のことが挙げられる。
○ 大学の中核的な研究分野において基礎臨床講座が連携して研究を推進する「がん」
、
「神経」
、
「統合的
再生医科学」
、
「バイオインフォマティクス」
、
「生活支援医療器具開発」
、
「器官形成・制御に基づく発生
医学」の6つの研究ユニットからなる「研究開発センター」により、研究室間連携や共同研究の推進等
の組織的な取組の展開が期待される。
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京都府立医科大学
Ⅱ 選択的評価事項の評価
選択的評価事項A 研究活動の状況
A-1 大学の目的に照らして、研究活動を実施するために必要な体制が適切に整備され、機能してい
ること。
A-2 大学の目的に照らして、研究活動が活発に行われており、研究の成果が上がっていること。
【評価結果】
目的の達成状況が良好である。
(評価結果の根拠・理由)
A-1-① 研究の実施体制及び支援・推進体制が適切に整備され、機能しているか。
中期目標において「研究実施体制等の整備に関する目標」を定めており、当該大学では基盤的な推進体
制として、研究委員会、大学院附属研究開発センター等の組織を設置、運営している。
最も重要な組織として、研究部長及び教授会において選出された委員からなる研究委員会、大学院附属
研究開発センターがある。
研究開発センターは、大学としての重点的・戦略的な研究の推進と、地域研究への展開による人材育成
教育や地域貢献への反映のために、大学の中核的な研究分野において基礎臨床講座が連携して研究を推進
する6つの研究ユニット「がんの予防・診断・治療の統合的研究ユニット」
、
「脳神経系のシステム機能と
分子基盤、失調の統合的研究ユニット」
、
「統合的再生医科学研究ユニット」
、
「バイオインフォマティクス・
分子イメージング統合的研究ユニット」
、
「医学に基づく生活支援医療器具開発研究ユニット」及び「器官
形成・制御に基づく発生医学研究ユニット」を組織している。これらの研究ユニットには競争的資金の間
接経費から研究費が配分され、研究成果の学内外への発信のための学術講演会を継続的に開催しながら、
研究室間連携や共同研究の推進等の戦略的な取組を進めている。
当該大学の研究環境支援体制の大きな特長として、大学院中央研究室を設置し、分子生物学、バイオイ
メージング、行動分析、生体機能分析等の研究室に先端的研究機器を配備して、学内研究者が共同利用す
るとともに、機器の維持や消耗品等のための予算を各教室に配分している。平成 20 年度からは、中央研究
室の共同研究機器の運用を支援するためのスタッフを新たに配置している。
研究に関する特定の課題等を担当する組織として、各種附置研究センター、学長を本部長とする産学公
連携戦略本部、その下に設置されたリエゾンオフィス及び知的財産オフィス、医学倫理審査委員会、利益
相反委員会、教職員職務発明審査会等があり、様々な角度から研究活動を推進し、支援している。
こうした教員及び研究者の活動を支援するため、産学公連携活動や外部研究資金獲得を支援する特任教
授を置き、文部科学省グローバルCOEプログラム等大型外部資金獲得へ向けての恒常的取組を可能とす
る体制を構築している。また、事務組織として事務局研究支援室を設置するとともに、研究開発センター
に事務職員、動物実験施設に技術職員等を配置している。
これらのことから、研究の実施体制及び支援・推進体制が適切に整備され、機能していると判断する。
A-1-② 研究活動に関する施策が適切に定められ、実施されているか。
中期目標及び中期計画に基づき、教育研究評議会、教授会、研究委員会等において研究活動に関する具
体的な施策が検討され、実施されている。講座横断的施策の一つとして平成 15 年度よりプロジェクト研究
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京都府立医科大学
員制度を導入し、複数の講座間で研究領域の垣根を越えた共同研究を活発に展開している。また、中央研
究室の活性化と多面的な活用を図るための施策として、学内外の研究者による大学院中央研究室共同研究
プロジェクトセンター制度が平成 18 年度から導入されている。
大学間連携に関しては、同一法人内にある京都府立大学と連携して、平成 21 年度より「地域関連課題
等研究支援費」
、
「若手研究者育成支援費(教員、研究者)
」
、
「若手研究者育成支援費(大学院生)
」
、さらに
京都工芸繊維大学を加えた3大学連携として「3大学連携研究支援費(共同研究)
」等の支援制度が整備さ
れ、法人の選考委員会等の選考を経て、当該大学分として、各々、7件、4件、2件、1件が採択されて
いる。
産学公連携活動の中での共同研究推進に関しては、中期計画に「産業界等からの共同研究・受託研究等
の件数を、中期目標期間中に 10%以上増加させる」としていることから、平成 20 年8月に産学公連携戦
略本部を設置し、その下にリエゾンオフィスと知的財産オフィスを配置し、関連諸規程を整備している。
平成 20 年度より産学公連携戦略本部付の特任教授を配置し、平成 21 年度からは学外TLOとの委託契
約を締結し、積極的展開を図るための施策を開始した。一方、平成 15 年以来、産業界からの寄付を得て開
設する寄附講座の誘致に努めており、平成 22 年6月現在で6件の講座が運営されている。
研究活動に関する施策のうち、法令遵守や研究倫理に関する状況としては、教職員倫理規程、医学倫理
審査委員会規程等を定めており、さらに平成 21 年度には研究活動上の不正行為防止に関する規程を策定、
施行している。利益相反に関しては利益相反ポリシー等を定めている。また、知的財産に関しては知的財
産ポリシーを定め、その中で職務発明は原則機関帰属としていることから、外部委員からなる職務発明審
査会において承継に関する審査を実施し、知的財産の積極的活用を図っている。また、公的研究費の適正
な管理に関する規程を策定し、公的研究費の適正使用の徹底に努めている。
個別の大学院科目に対する教育研究費については、府からの運営費交付金で予算措置され、科目ごとに
基本額、実習費、大学院生数、研究生数等から算出された配分額を交付し、研究者の研究環境の整備に努
めている。
さらに、平成 21 年度には「大学連携研究者データベース(RIS)
」を構築し、個々の研究者の研究状
況を全学的に把握するシステムの運用を開始している。このシステムでは当該大学のみならず、大学間連
携を推進する京都府立大学及び京都薬科大学の研究者の研究活動についても閲覧を可能にし、異分野融合
的な研究連携や外部評価を支援する体制を整えている。なお、今後はさらに進んで、研究者の業績や大学
院生の学位論文等を一元的に収集・蓄積・保存し、学内外に情報発信できる大学学術リポジトリの構築を
行い、大学の説明責任の履行や産学公連携・社会貢献の一環として研究成果を広く一般公開することとし
ている。
これらのことから、研究活動に関する施策が適切に定められ、実施されていると判断する。
A-1-③ 研究活動の質の向上のために研究活動の状況を検証し、問題点等を改善するための取組が行われているか。
中期目標、中期計画及び年度計画に基づき、法人の評価委員会による年度ごとの研究活動の状況の検証
と問題点を改善するための取組が行われており、定期的に外部評価を受けることによって研究活動の点検
評価を実施している。
学内での検証・改善等の取組として、研究開発センターでは6つの研究ユニットについて、年度末に実
績報告を求め、基礎・臨床講座横断的な研究連携とその成果、学術講演会による成果の公開等、状況を把
握し問題点等の改善の取組を行っている。また、科学研究費補助金については、申請を積極的に奨励し、
申請書の作成、執行、成果報告書までを研究支援室が厳しく点検し、問題点があれば助言して改善を図る
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京都府立医科大学
システムを整備している。
研究者1人当たりの科学研究費補助金獲得額が4年連続全国大学中 10 位以内で
あることは、この改善システムが有効に機能している結果である。さらに、こうした取組を通じて、研究
者に対し、査読付きの学術誌、特にインパクト・ファクターの高い学術誌への投稿を促すようにしている。
中期計画では、
「各教員は科学研究費を含む外部資金申請を年1件以上行う」としており、当該大学で
は、その申請状況や採択状況を点検し教授会等で公表するなど、各教員に積極的な申請を促している。
こうした取組に加えて、大学としての研究活動や研究者個々の研究活動の状況については、
『業績集特
報』
、
『京都府立医科大学雑誌』
、
『京都府立医科大学看護学科紀要』等の冊子やウェブサイト等、様々な方
法で公開しており、学内外からの検証が可能である。
これらのことから、研究活動の質の向上のために研究活動の状況を検証し、問題点等を改善するための
取組が行われていると判断する。
A-2-① 研究活動の実施状況から判断して、研究活動が活発に行われているか。
当該大学の主な組織の研究活動の実施状況は以下のとおりである。
大学の目的の一つに、国際的に通用するレベルの研究を行い、それらを世界に発信するという点がある。
この方針に基づいて当該大学独特の工夫を交えた努力を行っており、その研究面での工夫は、以下のよう
にまとめることができる。
① 最終的に臨床にも応用しうるような研究を行っている。
② 個人の努力だけにとどまらず、大学全体のシステムとしても、1教室当たりに対する豊富な教員数や
十分な教育研究費の確保に努めてきた。これにより、リスクが高くとも本質的な研究に邁進でき、仮に
すぐに結果が出ずに外部資金が獲得できなくとも教育研究費を有効に使うことで、国際誌に論文が掲載
されることや再度大型研究費の獲得を目指すことを可能としてきた。このように、当該大学では、個人
の努力と大学の十分なバックアップがあって、コンスタントに研究成果を生み出すことに成功し、同時
に多額の研究費の確保に成功している。
③ 当該大学の研究に関する考え方として、常に国際的に通用し、しかも高い発展性の見込める「見識の
高い研究」を目指している。
こうした当該大学の強みを、大学院重点化や法人化といった変革の時代を迎えても常に堅持してきた。
当該大学では競争的外部資金の獲得については、中期計画に「各教員は科学研究費を含む外部資金申請
を年1件以上行う」としているため、担当の特任教授を配置するなど大学として各教員に積極的な申請を
促し支援している。平成 21 年度には科学研究費補助金等の公的な競争的外部資金について、対象研究者
325 人中 311 人が申請を行ったが、1人1件申請の目標達成を目指して更に取組を進めている。
当該大学における教員1人当たりの論文数、1論文当たり被引用数、教員1人当たりの被引用数は、そ
れぞれ、18.25、4.97、90.65 である(
「大学ランキング(朝日新聞社)
」
、平成 22 年版)
。なお、看護学科
及び保健看護研究科においては、最近5年間の論文数は年間平均 27.2 件(うち英文 2.6 件)であるが、同
じく最近5年間の口頭発表数は年間平均 184.8 件(うち国際学会 25 件)で、特に平成 20 年の口頭発表(298
件)
はそれまでの 133~156 件という水準のほぼ倍に伸び、
今後、
論文として公表されることが期待できる。
これらのことから、研究活動が活発に行われていると判断する。
A-2-② 研究活動の成果の質を示す実績から判断して、研究の質が確保されているか。
当該大学の主な組織の研究活動の成果の質を示す実績は以下のとおりである。
研究は各分野で着実に業績を上げており、その成果の質を示す指標となる受賞や研究資金の獲得状況で
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京都府立医科大学
あるが、この5年間に、医学研究科の教員 55 人に対し、各分野の学会賞あるいは学術奨励賞が授与されて
いる。国内の重要な表彰については、角膜の再生医学研究を通じて Baelz 賞一等賞(平成 18 年度)を受賞
した教員、神経芽細胞種研究に対して文部科学大臣表彰(平成 20 年度)された教員、心筋再生研究によっ
て文部科学大臣表彰
(平成 21 年度)
された教員もいる。
また、
国外の学術団体からの表彰については、
Mortyn
Jones 賞(平成 17 年度)を英国神経内分泌学会から授与され、インターナショナルメダル(平成 21 年度)
を英国内分泌学会から授与された教員、David Easty Lecture 賞(平成 19 年度、英国)及び Castoviejo Medal
(平成 20 年度、米国)を受賞した教員、光を用いた生体計測研究に対して国際組織化学連合及びオランダ
組織化学基金から Piet Van Duijn 賞(平成 20 年度、オランダ)を授与された教員もいる。
過去3年の両研究科の科学研究費補助金の応募件数、採択件数及び採択金額(採択率)は、以下のとお
りである。
・平成 19 年度:応募 427 件、採択 196 件、採択金額 463,580 千円(採択率 45.9%)
・平成 20 年度:応募 462 件、採択 163 件、採択金額 439,810 千円(採択率 35.3%)
・平成 21 年度:応募 389 件、採択 168 件、採択金額 395,138 千円(採択率 43.2%)
科学研究費補助金については、
近年、
教員1人当たりの獲得額は全国大学中の 10 位程度で推移している。
保健看護研究科における科学研究費補助金の採択は、過去3年間5件であるが、これらの研究活動実績
からその質を見ると、看護学研究としてはこの分野自体の歴史が浅いこともあってまだ十分とはいえない
が、他領域との共同研究や国際研究も始まっており、以前はほとんど見られなかった英文雑誌への投稿(平
成 20 年度7件)や国際学会での発表(同 23 件)が確実に増えている。
当該大学は医科大学であることから、臨床と基礎が互いに協力、補完しあって研究を遂行している点が
重要であり、基礎研究ばかりを行っていて臨床からの情報が入らなければ、医科大学の目的である患者に
貢献できる医学的研究を遂行することは極めて困難であり、逆に、臨床研究者が最先端の基礎的情報なく
して、患者に還元し得る研究は不可能である。当該大学ではこの点に考慮し、臨床の大学院生も臨床上問
題となっている点を解決することを目的に、一定期間基礎の教室で研究指導を受けることが多い。その結
果として大学から世界に発信する研究成果として、基礎に立脚した臨床応用研究(トランスレーショナル
リサーチ)が多い。
これらのことから、研究の質が確保されていると判断する。
A-2-③ 社会・経済・文化の領域における研究成果の活用状況や関連組織・団体からの評価等から判断して、社会・
経済・文化の発展に資する研究が行われているか。
当該大学の主な組織の社会・経済・文化の領域における研究成果の活用状況等は以下のとおりである。
研究成果は、ウェブサイトを介して日常的に学外に情報発信するとともに、重要と認められる研究成果
については、大学記者クラブ等を通じてマスメディアに発表し説明している。当該大学の研究が医学とい
う国民の関心が高い分野であることや全国的にも先進的な研究も多いことから、このような活動により新
聞・放送、出版物・雑誌等のメディアで取り上げられる機会が多い。過去5年間に全国紙に 25 件(延べ
76 紙)
、地方紙に 29 件(延べ 42 紙)
、テレビ等に 11 件(延べ 12 番組)等が取り上げられている。例えば、
平成 21 年度では、世界初「緑内障疾患関連 SNPs の同定について」
(平成 21 年 7 月 21 日)や「脳の活性化
を活用した「認知症・脳検診」の実施について」
(平成 21 年 10 月 14 日)をはじめ多くの研究成果が新聞
に掲載されている。このような中で、平成 21 年 11 月に「心血管再生医療チーム」が心血管、心筋再生医
療で先駆的成果を上げたとして地元メディアである京都新聞社から京都新聞大賞「文化学術賞」を受けた
ことは、当該大学研究者に対する社会の評価を示すものといえる。
- 13 -
京都府立医科大学
当該大学が京都府という地方公共団体が設立した公立大学という性格を持つことから、地域貢献は大学
としての使命の重要な柱である。こうしたことから、京都府行政と一体となって、行政への医師・研究者
の派遣、各種審議会等委員としての協力、研究の受託等を行っている。このほか、国や府県、市町村への
審議会等委員への就任、研究の受託等を行っている。特に、政府や京都府の医療関係の審議会委員及び厚
生労働省や学会等が進めている診療ガイドラインの作成に多数参加し国民の健康・福祉に多大な貢献を図
るとともに、
京都府及び府内市町村が抱える行政課題や地域課題に具体的に対応できる研究体制を構築し、
政策提言等シンクタンク機能の強化を図っている。看護学科及び保健看護研究科における高齢者を対象に
した体力・運動に関する研究成果やDLW法による身体活動量評価の結果は、国の介護予防施策や日本人
の食事摂取基準に採用され、高齢者の熱中症予防の研究成果も熱中症予防マニュアルに採用されている。
大学として毎年、公開講座、リカレント学習講座、研究開発センター学術講演会等を開催しており、特
に一般市民を対象とした公開講座は市民からの参加希望が高く、会場が満席になることも多い。こうした
活動の一環として、市民講座や地域文化活動等への当該大学の研究者に対する講師依頼が頻繁にある。平
成 21 年度には、例えば、府立学校へのたばこに関する講演会等、総計 96 件の講師依頼があった。
また、産学公連携戦略本部を中心に、民間企業等への研究情報の提供、技術移転、知的財産の産業化の
推進、
民間企業等との共同研究の促進等に取り組んでおり、
民間企業からの寄附講座設置の申し出も多く、
現在6講座が設置されている。また、看護学科及び保健看護研究科においては、企業との共同研究で、身
体活動量測定装置や筋量測定装置等の開発を進めている。
平成 19~21 年の3年間に、延べ 52 人の教員が文部科学省科学研究費審査委員を務めている。
これらのことから、社会・経済・文化の発展に資する研究が行われていると判断する。
以上の内容を総合し、
「目的の達成状況が良好である。
」と判断する。
【優れた点】
○ 研究者1人当たりの科学研究費補助金獲得額が高い水準にある。
○ Mortyn Jones 賞、英国内分泌学会によるインターナショナルメダル、David Easty Lecture 賞、
Castoviejo Medal、Piet Van Duijn 賞等、国際的に高く評価されている学術賞を受賞した研究者が多
い。
【更なる向上が期待される点】
○ 大学の中核的な研究分野において基礎臨床講座が連携して研究を推進する「がん」
、
「神経」
、
「統合
的再生医科学」
、
「バイオインフォマティクス」
、
「生活支援医療器具開発」
、
「器官形成・制御に基づく
発生医学」の6つの研究ユニットからなる「研究開発センター」により、研究室間連携や共同研究の
推進等の組織的な取組の展開が期待される。
- 14 -
京都府立医科大学
<参
考>
- 15 -
京都府立医科大学
ⅰ
現況及び特徴(対象大学から提出された自己評価書から転載)
1 現況
いる。看護学の理論と実践が学年進行に応じて系統的に
(1)大学名
京都府立医科大学
修得できるよう講義、演習、実習を展開し、専門的で社
(2)所在地
京都府京都市
会のニーズに対応した最新の看護学教育を目指している。
(3)学部等の構成
また、平成18年度に現代的教育ニーズ取組支援プログ
学部:医学部
ラムに採択された教育プログラムでは、深刻な医師不足
研究科: 医学研究科,保健看護研究科
に悩む北部地域において、医学科と看護学科が合同で地
附置研究所:附属小児疾患研究施設、附属脳・血
域医療の実態とチーム医療を学ぶ実習プログラムを実施
管系老化研究センター、医療セン
し、支援期間終了後も病院実習を継続している。
ター
大学院においては、平成15年(2003年)、医学研究科
関連施設:附属病院、附属図書館
を再編して大学院重点化を行い、研究重視の大学として、
(4)学生数及び教員数(平成22年5月1日現在)
全教員が大学院教育を担当し、研究の高度化と大学院教
学生数:学部960人、大学院275人
育の充実に努めている。大学院中央研究室には大型の先
専任教員数:332人
端的研究機器を整備し、全研究者と学生が活発に利用す
2 特徴
る体制を整えた。また、附置研究センターである大学院
本学は、医学部に医学科と看護学科、大学院に医学研
研究開発センターでは、基礎・臨床講座横断的な研究者
究科と保健看護研究科を有する公立単科医科大学である。
グループによる6つの研究ユニットを設置し、共同研究
明治5年(1872年)に京都東山の山麓、粟田口青蓮院
の推進と研究高度化の体制を整えている。
において療病院として診療と医学教育研究を開始して以
本学の附属病院は、病床数 878 床(平成 22 年 4 月現
来、138年の歴史を誇る我が国で最も古い医科大学のひ
在)、年間延べ入院患者約 25 万人、外来患者約 45 万人
とつである。一方、看護学科も明治22年(1889年)設立
(平成 21 年度)を受け入れ、「特定機能病院」として
の京都府医学校附属産婆教習所を母体とし121年の歴史
高度で専門的かつ安全な医療を提供する一方、「大学附
と伝統を誇っている。京都に西洋医学の教育病院を設立
属病院」として医師や看護師等の養成、新たな治療法の
したいという京都府民自らが、寺院や花街、町衆から寄
開発等(先進医療9件:平成 22 年5月現在)を行って
付を募り病院を建設、運営を京都府が行うという極めて
いる。また、受診しやすいよう総合診療科を設置すると
ユニークな設立の経緯を持つ。以来、10,738人(平成22
ともに診療科を専門別に細分化している。附属施設とし
年3月現在)の卒業生を輩出するなど「世界のトップレ
て小児疾患に関する高度かつ専門的な診断・治療等を行
ベルの医学を府民の医療へ」をスローガンに現在まで教
う小児疾患研究施設(京都府こども病院)と高齢者に多
育研究・診療のあらゆる面で全国でも有数の実績を残し
い脳卒中や認知症の診断・治療等を行う脳・血管系老化
ている。
研究センターを併設するなど、府民に優しい高度で安全
教育面では、医学部医学科の入学定員が100~107人と
な医療の提供に取り組んでいる。
いう少人数の特徴を生かした授業編成で、きめ細かな教
また本学は、開設以来の理念に基づき、地域医療への
育を実施している。モデル・コア・カリキュラムを土台
貢献に積極的に取り組んでいる。その中心は昭和46年
にしつつも、本学開設以来の教育理念や特質、特徴を生
(1971年)に設置した医療センターである。府の医療機
かした独自の医学教育統合カリキュラムを作成している。
関、保健所などの行政機関に継続的に大学から医師を派
6年一貫教育を基本に、医学準備教育を担当する教養教
遣する日本で初めてのシステムであり、平成22年(2010
育、学問体系を基盤とした基礎・社会医学教育、PBL教
年)5月現在、75人を地域保健医療の現場に派遣してい
育を基盤に原則臓器・システムに沿った教育を行う臨床
る。また、関係病院等協議会(加入数119病院)を設立し
医学教育をバランスに留意し実施している。
地域の病院との連携を図っている。
医学部看護学科では、心と技術と知識のバランスのと
れた看護職者を育成するため、1学年から教養教育・専
門基礎科目に加えて看護の基本となる専門教育を行って
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京都府立医科大学
ⅱ
1
目的(対象大学から提出された自己評価書から転載)
建学の精神
「人にして疾病なるや、学ばんと欲すれば能わざるなり。人に尪羸(注:痩弱)なるや、勉めんと欲すれど
も、亦能わざるなり。学ばず勉めざれば、何を以てその才を殖やし、その家を富まさんや。夫れ、人材乏しくし
て民戸貧しきは、乃ち国の病なり。是の故に、施政の務めはいまだ民の疾病を除きて、その健康を保つより急な
るは有らざるなり。我が府、維新の聖旨を奉じ、つとに種痘術を行ひ、駆疫法を布き、遠く名医を海外より徴
し、以て衛生医薬を改良し、まさに大いに救済するところ有らんとす。(中略)今より後、民の疾病を除きて、
その健康を保つは、難きことにあらざるなり。こひねがわくば、後の政をこの土に為す者、能くその始を思って
その終わりを善くし、敢えてこれを廃墜有ることなく、斯民をして永く明治の皇沢にうるおはしめよ」
これは、Ⅰに記載した本学の前身である療病院の建設を記念して明治 13 年(1880 年)に病院敷地内に建てら
れた療病院碑に刻まれた碑文の一節である。近代国家における保健医療の重要性を謳い、療病院に課された使命
を疎かにしないよう戒めており、本学草創の理念を力強く語るものである。この療病院碑は 100 年を超えた今も
なお、大学門の正面に存置されており、本学で学び、診療に従事する全ての者が日毎に目にし、自らの医学や医
療に対する思いを新たにしている。さらに、附属病院の入り口には碑文の拓本が掲示され、本学建学の精神を宣
言するものとして、大学関係者のみならず患者、府民などにも広く浸透している。
この碑文は本学の設立目的のプロトタイプといえるものであり、その後、医学校、医学専門学校、医科大学と
発展を遂げ設置形態は変遷し、設立目的等の文言はその時代の要請やスタイルに応じて変化してきたが、それら
に底流する目的や理念は常に変わることなく、この碑文の精神を継承するものである。
2
本学の使命
(1) 公立大学法人定款の目的
本学は平成 20 年(2008 年)に公立大学法人として新たなスタートを切ったが、京都府議会の議決を経て作成
された法人定款においては、「京都府における知の拠点として、質の高い教育研究を実施することにより幅広い
教養、高度の専門的な知識及び高い倫理観を備えた人材を育成し、並びに大学や地域の多様な主体と協力・連携
した研究成果等の活用、附属病院における全人医療の提供等を通じて、京都府民の健康増進及び福祉の向上、京
都文化の発信並びに科学・産業の振興に貢献し、もって地域社会はもとより、国内外の発展に寄与することを目
的とする」とされている。これは京都府立の医科大学である本学のアイデンティティーに深く関わる使命であ
り、公立大学法人という新たな器を得て、教育研究と医療を源泉とした地域貢献及び国内外発展への寄与を改め
て確認したものである。また、現在、附属病院内に掲示する病院の理念「世界トップレベルの医学を地域の医療
へ」も、近代の黎明期において社会に医学・医療の礎を築くべく、多くの府民から寄附を受けて療病院が設立さ
れた意義を、現在及び未来に継承しようとするものにほかならない。
3
大学及び医学部の目的
(1) 大学及び医学部の目的
大学及び大学院の学則に定められた目的も、これらと軌を一にするものであり、大学学則においては大学の目
的として「医学及び看護学に関する知識及び技能を授け、有能な医師、看護師、保健師及び助産師となるのに必
要な教育を施すとともに、医学及び看護学の深奥をきわめて、文化の進展と人類の福祉とに寄与することをもっ
て目的とする」としている。
具体的には、現在、中期計画に以下の内容を掲げて、取り組んでいる。
①
生命及び人間の尊厳を基盤に、全人的な医療のための豊かな人間性を培うとともに、医学や看護学の
- 18 -
京都府立医科大学
研究と医療技術の向上に常に取り組む課題探求能力とコミュニケーション能力を有し、人々の健康と福祉
の向上に貢献できる人材を育成する。
②
専門知識はもとより心技体に優れ、国際的視野で物事をとらえ、国際的研究をリードできる人材を育
成する。
③
地域保健・医療の重要性を認識し、地域医療への使命感を持った医療人を育成する。
④
「世界トップレベルの医学を地域の医療へ」の理念の下、高度先進医療及び先端医学研究を推進する
とともに、基礎研究、臨床研究、保健看護研究等を通じて、地域医療や地域社会における健康の維持増進
に貢献する。
(2) 医学科の目的
「生命及び人間の尊厳を基盤に豊かな人間性と創造性を培い、高度の医学知識、技術など医師としての総合
的な能力を有し、人々の健康を守り医学の発展に貢献できる人材を育成する」としている。
(3) 看護学科の目的
「生命及び人間の尊厳を基盤に豊かな人間性と創造性を培い、高度の専門知識や技術など看護専門職として
の総合的な能力を有し、看護学の発展及び保健医療と福祉の向上に貢献できる人材を育成する」としている。
4
大学院の目的
(1) 大学院の目的
大学院学則において、「学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめて、文化の進展に寄与するこ
とを目的とする」としており、現在、中期計画に以下の内容を掲げて、取り組んでいる。
(2) 医学研究科
①
医学研究の多様化、学際化に対応するため、自律的な課題探求能力を備え、個性的かつ卓越した人材を
育成する。
②
博士課程においては、入学早期から研究マインドを涵養するシステムを導入し、高度先進医療を推進す
る医師及び先端医学研究を展開し得る医学研究者を育成する。
③
修士課程においては、医学以外の学問を学んできた背景を持つ学生に対し、医学の基礎的教育を体系的
に提供し、個々の特性を活かした医学研究の学際的展開を図り得る研究者、技術者及び地域で活躍する
「健康科学プロフェッショナル」を育成する。
(3) 保健看護研究科
①
京都府内をはじめ、国内外で保健・医療・福祉領域における健康福祉増進の指導的役割を担える、高度
な保健看護実践能力を有した保健看護の専門職を育成する。
②
保健医療等の分野において、学際的展開を図り得る保健看護の研究者及び広域的な指導力を発揮できる
高度な専門職業人を育成する。
5
達成しようとする基本的な成果
以上のように、京都府民との深いつながりによる地域社会への貢献を揺るぎない基盤としつつ、
①
人を育てることを基本として、高度な専門知識と幅広い教養を備え、他者の立場に立って考えること
のできる温かい心を持った保健医療の専門家を養成すること
②
研究を大切にし、世界トップレベルの研究を行い、研究に基づく最先端医療を行うこと
③
質の高い、患者に優しい医療を行うこと
が本学の達成しようとする基本的な成果である。
これらに向けて、他大学とも連携しながら「ヘルスサイエンスの総合化」を推進し、療病院設立以来、本学に
求められてきた使命を着実に達成し、府民や社会からの確かな信頼を未来に継承していく。
- 19 -
京都府立医科大学
ⅲ
選択的評価事項に係る目的(対象大学から提出された自己評価書から転載)
選択的評価事項A「研究活動の状況」に係る目的
本学は、建学以来 130 年以上にわたって京都府の医療活動の中核を担ってきた歴史を踏まえ、「世界のトップ
レベルの医学を府民の医療へ」をスローガンとして、基礎と臨床が協力・補完しながら、世界に発信できる成果
を目指して研究活動に取り組んでいる。
公立大学法人の中期目標では、「研究に関する目標」として次の点を掲げている。
(1) 研究水準及び研究の成果等に関する目標
ア
目指すべき研究の方向・水準
(ア)目指すべき研究水準・目標
a基盤的研究や学際研究における高い水準の研究活動を推進するとともに、その成果の実践的研究(臨床
研究)や地域を対象とした研究への総合的展開を進め、教育や地域貢献に反映する。
b 学界において高い水準の研究を展開するとともに、学外有識者の意見・評価を積極的に聴取し、研究の
水準・成果の検証を行う。
(イ)研究内容等
大学として取り組むべき基盤的研究とともに、大学の特性を活かした研究領域を定め、重点的・戦略的な
研究を推進する。また、地域社会の要請等に対応するため、組織の枠組みを超えた先端的・学際的研究を
推進し、地域における「知の拠点」にふさわしい研究力を向上させる。
イ
研究成果の地域への還元
(ア)府市町村が抱える行政課題や地域課題に具体的に対応できる研究体制を構築するとともに、政策提言な
どシンクタンク機能の強化を図る。
(イ)研究成果の開示と積極的な国内外への発信により、文化・福祉・医療・科学・産業の発展に寄与すると
ともに、新産業の創出等に貢献する。
(2) 研究実施体制等の整備に関する目標
ア
研究実施体制等の整備
(ア)学内の既存の研究領域の枠を超えた横断的・学際的な研究分野の開拓を行い、さらに3大学連携をはじ
めとして、国内外の他大学・試験研究機関・行政機関等との連携、民間企業との研究交流の推進や、外
部の優秀な人材の受入れ等ができる柔軟な研究体制の構築を推進する。
(イ)基盤的な研究の確保を図るとともに、重点課題や地域課題、若手研究者育成等に資源の戦略的配分を行
うなど機動的な運営を行う。
イ
研究環境・支援体制の整備
(ア)先端・学際研究など研究の高度化に対応した機能強化と研究支援体制の整備を図るとともに、共同研究
を推進し学内外の研究施設等の有効活用を進め、研究環境の総合的な向上を図る。
(イ)知的財産の創出、取得、管理についての方針を定め、具体化する。
ウ
研究活動の評価
(ア)目指すべき研究水準の実現に関する研究成果や業績などについて、客観的に評価できるよう体制を整備
する。
(イ)研究者がより意欲的に取り組めるよう、評価結果を研究の質の向上につなげる体制を構築する。
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京都府立医科大学
ⅳ
自己評価の概要(対象大学から提出された自己評価書から転載)
選択的評価事項A
研究活動の状況
本学では、研究に関する中期目標として「高い水準の基盤的研究と共に、大学の特性を活かした研究領域の
重点的・戦略的な研究の推進と、地域における『知の拠点』にふさわしい実践的研究(臨床研究)や地域を対象
とした研究への総合的展開」を掲げている。この目標は、
「世界のトップレベルの医学を府民の医療へ」をスロ
ーガンとする伝統と先人の蓄積を踏まえた基礎・臨床医学および関連生命科学の研究活動を通じて、研究者個
人の活動においても各種プロジェクトにおいても基本的に達成されている。
研究の実施体制、支援・推進体制として、教授会において選出された委員からなる研究委員会、大学の中核
的な研究分野において基礎・臨床講座が連携して研究を推進する6つの研究ユニット活動を支援・統括する大
学院附属研究開発センターを中心に、各課題を担当する附置研究センターや委員会等の組織、加えて大学事務
局の研究支援室の設置等、研究支援体制の整備充実を図っている。これらの組織と教育研究評議会、教授会等
が役割分担を行いながら、学内研究助成、大学間連携研究助成、学術講演会助成など研究支援制度を充実させ
ている。
研究者1人当たりの科学研究費補助金獲得額4年連続全国大学中 10 位と、研究者個人が高い水準の研究活動
を実施している。
大学として中核的で特色のある研究分野において世界的な知名度を高めるための研究環境の整備、国際交流
の積極的推進や、若手研究者の研究支援に取り組んでいる。
大学ウェブサイトのほか、出版物・雑誌等メディアを通じて、社会・経済・文化の領域への研究成果の提供を行
うとともに、学会役員、審議会委員および競争的資金の審査員などによる学界や京都府等を対象に社会的貢献
を行い、高い社会的評価を受けている。
産学公連携戦略本部を中心に民間企業等との共同研究を推進しており、寄附講座の開設が進むなど民間企業
等からの本学の研究に対する評価も高い。
今後は、グローバル COE プログラムなどのような高い水準の共同研究と、国内・国際水準の医科学研究リー
ダーの育成体制の整備を大学の重要課題と位置づけ、取り組んでいく必要がある。
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