焼却灰中の重金属溶出抑制技術に係る調査 報 告 書 平成20年3月14 日 (社)日本下水道協会技術部技術第三課 日本上下水道設計株式会社 目 次 1 目 的...............................................................................................................................................................1 2 関連する法制度について .......................................................................................................................2 3 2.1 重金属のリスク ................................................................................................................................2 2.2 下水汚泥焼却灰の法的位置づけ ..........................................................................................2 重金属溶出抑制技術 ...............................................................................................................................5 3.1 対策技術の概要 .............................................................................................................................5 3.2 下水道及び一般廃棄物等における事例 ............................................................................9 3.2.1 下水道分野 ................................................................................................................................. 9 3.2.2 一般廃棄物分野 ..................................................................................................................... 14 3.2.3 汚染土壌中の重金属溶出抑制技術 ............................................................................. 15 3.2.4 底質の処理・処分等 .............................................................................................................. 19 3.2.5 メーカーヒアリング .................................................................................................................. 21 2 1 目 的 焼却灰の資源化には表 1.1 に示すように種々の方法があるが、焼却灰および再生製 品の有効利用時に想定されるリスクには以下の 2 要因が考えられる。 ・溶出による環境汚染 ・人の直接摂取 本業務では、特に、下水道分野などにおける焼却灰中の重金属溶出抑制技術につい て各都市における取り組み状況、研究開発状況等を文献調査及びメーカーヒアリング により整理したものである。 なお、添付資料-1 に収集した文献の概要を示す。 表 1.1 分 類 熱処理 焼却灰の主な利用用途 製 品 レンガ、タイル、陶 管など 特 徴 ・焼却灰をそのまま、あるいは粘土等と混ぜて焼成する。 ・製品コストや引き取り先確保が課題である。 ・リンや塩素などが障害物質となる。 セメント原料化 セメント ・セメント会社により価格や引き取り量が依存する。 ・本利用方法は、セメント工場の立地特性により決まる。 コンクリート二次 ブロック、ヒューム 製品 管、マンホールなど ・コンクリート二次製品の材料として使用されている。 ・製品利用促進のための仕組みが必要である。 ・焼却灰を土壌(+石灰)と混合し活用する。 改良土、埋戻材、 土壌混合・土木 土質安定剤、路盤 ・横浜、名古屋、福岡などで実施されている。 資材 材など ・利用量が多いが、安全性(重金属溶出)に不安が残る。 1 2 関連する法制度について 2.1 重金属のリスク 重金属は、比重が 4 を超える金属類(金、白金、銀、水銀、クロム、カドミウム、 鉛、鉄など)の総称であるが、対策の対象とする物質は、土壌汚染対策法における『第 二種特定有害物質(重金属等)』の 10 物質を指す。同法では他に、揮発性有機化合物 (VOC)11 物質を第一種特定有害物質、農薬等 5 物質を第三種特定有害物質と規定して いる(表 2.1 参照)。 土壌に含まれる有害物質が人に摂取される経路には、『①有害物質を含む土壌を直 接、口又は皮膚から体内に取り込む経路(直接摂取によるリスク)』と、 『②土壌中の 有害物質が地下水等に溶出し、当該地下水等を飲用することにより体内に取り込む経 路(地下水等の摂取によるリスク)』の 2 通りが考えられ、第二種特定有害物質につ いてのみ、①の経路(直接摂取リスク)に着目した土壌含有量基準が定められている。 焼却灰を再生物の原材料として利用する場合、VOC(第一種特定有害物質)は処理 工程(焼却等)で概ね除去されており、農薬等(第三種特定有害物質)は、原則とし て流入経路からの混入が尐ないと考えられることから、重金属等(第二種特定有害物 質)に関して検討を行う必要がある。 2.2 下水汚泥焼却灰の法的位置づけ 1) 焼却灰(発生時、処分時) 下水汚泥焼却灰は、「産業廃棄物」に該当し、その収集運搬、処理、処分等には 許認可が必要となる。産業廃棄物(汚泥)の埋立処分は、通常「管理型処分場」で 行われ、埋立処分基準は次の通りである。すなわち、下水汚泥を埋め立てる場合に は、焼却又は含水率を 85%以下にする必要があり、“廃棄物の処理及び清掃に関す る法律(廃掃法)”に基づき、表 2.1 に示す埋立基準(溶出量)を満足する必要があ る。 2) 有効利用時 焼却灰を「有価物」とし、適切な処置を行ったうえで、土壌改良材等としての利 用(再生利用)が行われる場合がある。下水道事業において発生する焼却灰は「産 業廃棄物」の位置づけであるが、 「有価物」となった時点で、産業廃棄物ではなく、 当該製品(有価物)に関連する法に適合しなければならない。焼却灰あるいは、焼 却灰を含有した土壌を、土壌改良材等として使用する場合には、 「土壌汚染対策法」 で定める基準(含有量基準、溶出量基準)を満足する必要がある。 土壌あるいは汚泥の基準値を表 2.1 に整理する。土壌環境基準(溶出量)及び土 壌汚染対策法に基づく土壌溶出量基準は同値である。 汚泥(焼却灰)を産業廃棄物として埋立処分する場合には、廃掃法に基づく埋立 2 基準(溶出量)のクリアが必要であり、土壌改良材等で有効利用する場合には、土 壌汚染対策法に基づく基準(溶出量、含有量)のクリアが必要となる。焼却灰を混 合したものを再生物として利用する場合には、その混合した状態での含有量、溶出 量が対象となる。 埋立基準値は、土壌溶出量基準値に比べ概ね 10 倍の濃度と基準値が緩くなって いる。なお、両者の溶出量の調査方法は、それぞれ異なる告示で定められており、 調査方法が若干異なることに留意しなければならない。 なお、測定値のオーダーが異なる程の差異は生じないと考えられているが、試験 方法の一元化は今後の課題と考える。 処分 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 埋立基準 再生利用 土壌汚染対策法 含有量基準、溶出量基準 下水焼却灰 図 2.1 対象となる法制度 (参考)溶出試験方法の違い ② 土壌汚染対策法における溶出量試験 土壌採取:表層+0.5mまでの 5 点混合法。 試料作成:採取した土壌を風乾し,中小礫,木片等を除き,土塊,団粒を粗砕した後,非金属製 の 2mm の目のふるいを通過させて得た土壌を十分混合する。 検液 :溶出操作を行って得られた試料液は。3,000rpm,20min で遠心分離した後の上澄み液 を 0.45μm メンブレンフィルターでろ過する。 ②廃棄物処理法における溶出量試験 土壌採取:提示なし。 試料作成:(燃え殻,汚泥又はばいじんの場合)有姿のまま採取し,小石等の異物を除去したもの とする。これ以外の粒径 5mm 以上のものが混在する場合,有姿のまま採取し,粉砕し た後,ふるいで粒径が 0.5mm~5mm となるようにする。 検液 :溶出操作を行って得られた試料液は,1μmGFP を用いてろ過する。 3 表 2.1 土壌の基準値(含有量、溶出量) 土壌 汚泥等 農用地にお 埋立基準 ける土壌中 土壌溶出量 土壌含有量 農用地の土 土壌の汚染 ダイオキシ (廃棄物の 重金属等の 基準 基準 壌の汚染防 に係る環境 蓄積防止に 肥料取締法 ン類対策特 処理及び清 (土壌汚染 (土壌汚染 止等に関す 基準 係る管理基 別措置法 掃に関する 対策法) 対策法) る法律 準とその運 法律) 用 溶出量 溶出量 含有量 含有量 含有量 含有量 含有量 溶出量 区分 物質名 (mg/L) (mg/L) (mg/kgDS) (mg/kgDS) (mg/kgDS) (mg/kgDS) (ng-TEQ/g) (mg/L) (土壌環境基準) 0.02 0.02 0.2 揮発性 ジクロロメタン 0.002 0.002 0.02 機化合物 四塩化炭素 (VOC) 1,2-ジクロロエタン 0.004 0.004 0.04 1,1-ジクロロエチレン 0.02 0.02 0.2 (第一種 0.04 0.04 0.4 特定有害物質) シス-1,2-ジクロロエチレン 1,1,1-トリクロロエタン 1 1 3 1,1,2-トリクロロエタン 0.006 0.006 0.06 0.03 0.03 0.3 トリクロロエチレン 0.01 0.01 0.1 テトラクロロエチレン 1,3-ジクロロプロペン 0.002 0.002 0.02 0.01 0.01 0.1 ベンゼン ※3 カドミウムおよぴその化合物 0.01 0.01 150 5 0.3 重金属等 1mg/kg米 0.05 0.05 250 1.5 (第二種 六価クロム化合物 ND 1 特定有害物質) シアン化合物 ND 50※2 0.0005 0.0005 15 2 0.005 水銀およぴその化合物 (アルキル水銀) ND ND ND 0.01 0.01 150 0.3 セレンおよぴその化合物 0.01 0.01 150 100 0.3 鉛およぴその化合物 0.01 0.01 150 15 50 0.3 ヒ素およぴその化合物 0.8 0.8 4,000 フッ素およぴその化合物 1.0 1.0 4,000 ホウ素およぴその化合物 0.006 0.006 0.06 農薬等 チウラム 0.003 0.003 0.03 (第三種 シマジン 0.02 0.02 0.2 特定有害物質) チオベンカルプ PCB ND 0.003 ND ND 1 有機リン化合物 ND 125 その他 銅 120 亜鉛 500 クロム 300 ニッケル ※1 3ng-TEQ/g 3ng-TEQ/g ダイオキシン類 1ng-TEQ/g ・(※1)ダイ ・(※2)遊離 ・農用地は ・対象は土 ・普通肥料 ・焼却灰・ば オキシン類 シアンとして 水田のみ対 壌自体を対 の公定規定 いじん・スラ 象 象 ・原料は廃 グ等適用 は含有量 の値 備 考 ・(※3)カドミ ・環境庁水 掃法の溶出 ウムは米の 質保全局長 試験を適用 (最右欄) 中の含有量 通達 率を対象 注) 改正肥料取締法(H12.10.1)により,汚泥肥料は「特殊肥料の規定」から普通肥料の公定規格の遵守が必要 ダイオキシン類対策特別措置法(H12.1.15施行)により,焼却施設から発生する焼却灰・ばいじん・スラグ等の含有量規制 土壌溶出量基準,含有量基準:特定有害物質及び指定区域の指定基準(法第5条,規則18条1項別表1,規則18条2項別表2) 埋立基準:基準値=「金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令(S48総理府令第5号,最終改正H15.12.24環境省令第32号) 法令等 4 3 重金属溶出抑制技術 3.1 対策技術の概要 下水道分野等における重金属の溶出抑制技術は、表 3.1 に示すように、概して、薬 品添加法、薬品添加+低温熱処理法、酸又はその他抽出法、及び高温熱処理法に大別 される。この他、重金属汚染土の汚染対策工法には土壌洗浄法、植物活用法などもあ る(表 3.3 参照)。 表 3.1 手法 重金属溶出抑制技術比較表 詳細手法 消石灰添加混合 薬品添加 薬品添加+低温熱処理 酸又はその他抽出法 高温熱処理 下水道分野における事例 キレート添加混合 仙台市、東京都、横浜市、名古 屋市、福岡市などで単体及び 数種の薬剤による混合実験・実 証試験検討 鉄化合物+低温処理 東京都で実験実証試験検討 消石灰+水熱処理 東京都で実験実証試験検討 酸、電気や微生物による抽出 研究機関による実験 溶融スラグ化 多くの都市で実績あり 溶融球状化 現時点で実績なし 鉄化合物添加混合 1) 薬剤添加法 薬剤を添加して有害重金属の溶出抑制を行う方法である。薬剤には、ヒ素やセレン を対象とした場合、消石灰、塩化第二鉄、硫酸第二鉄等の無機系薬剤と、キレート樹 脂の有機系薬剤がある。 無機系薬剤を添加する方法は、水処理におけるヒ素除去にも使用される方法であ り、ヒ酸カルシウム、亜ヒ酸カルシウム、ヒ酸鉄、亜ヒ酸鉄などの水に難溶性の化合 物として沈殿除去するものである。 キレート樹脂を添加する方法は、重金属イオンと強力にキレート結合することによ り各種重金属イオンを除去する方法で、単一の物質を選択的に分離抽出することがで きる。 5 薬剤 混 合 機 焼却灰 図 3.1 製品 薬剤添加法の概要 (参考)キレート キレートとはミネラルイオンが 2 分子から 3 分子のアミノ酸で挟まれた状態を指します。このアミノ酸キレ ートを AAC と言います。そして吸収率が高くなるようミネラルをあらかじめキレートしておくことをキレー ト製法と言います。キレートの仕組みはカルシウムやマンガン、鉄、亜鉛などのミネラルで確認されています。 2) 薬品添加+低温熱処理法 鉄化合物+低温熱処理 例えば、焼却灰に硫酸第一鉄とチオ硫酸ナトリウムを溶液として添加し、150~ 200℃で加熱する方法(焼却炉廃熱を活用)がある。 熱源 焼却灰 P P 薬液 Fe 薬液 Na 図 3.2 排ガス処 理設備へ 加 熱 混 合 機 製品 「鉄酸化物+低温熱処理」法の概要 6 消石灰+水熱処理 本処理方法は、汚泥中のシリカ分と添加剤中のカルシウム分を水熱条件下で反応さ せることにより、ケイ酸カルシウム(トバモライト)を合成し、物理的に安定した強 度の高い結晶に成長させ、重金属類をこの結晶中に閉じこめることにより溶出を抑え るものである。 消石灰ポッパ 焼却灰 水 図 3.3 混 合 機 オ ー ト ク レ ー ブ 製品 「消石灰+水熱処理」法の概要 ヒ素及びセレンの溶出抑制には、消石灰を添加する方法が多く行われているが、単 なる消石灰添加処理に比べ、重金属類を確実に封じ込めることができ、水熱固化品は 長期にわたって安定であり、強度も大きいという特徴がある。但し、150~300℃飽和 水蒸気圧の条件下で 20 時間程度処理する必要があり、設備費、維持費ともに高価と なる。 水熱処理によって土粒中のシリカ分(SiO2)と添加剤中の石灰分(CaO)が反応し、トバ モライト結晶が発生します。このとき、溶解した重金属イオンも捉え、封じ込めます。 水熱処理 図 3.4 「消石灰+水熱反応」法による反応 3) 酸又はその他抽出法 汚泥に硫酸を加え,りん,金属を溶出させ,アルカリ添加・pH 調節することにより 分別回収する方法や電気化学的に汚泥中の重金属を分離する方法などがある。 金属成分回収は、重金属の無害化の観点からは効果的であるといえるが、焼却灰を 直接利用する技術ではないこと、回収鉱石の量及び価格(価値)面での課題がある。 7 図 3.5 酸・アルカリ抽出法の概要 図 3.6 電気化学的分離法の概要 4) 高温熱処理法 環境省では、平成9年1月28日付け衛環第21号部長通知「ごみ処理に係るダイ オキシン類の削減対策について」において、ごみ焼却施設の新設に当たっては、焼却 灰・飛灰の溶融固化施設等の設置を原則として設置することを指導している他、平成 10年3月26日付生衛発508号部長通知「一般廃棄物の溶融固化の再生利用の実 施の促進について」により、一般廃棄物の溶融固化物の再生利用に関する指針を示す など、溶融スラグの有効利用を促進する取り組みを行ってきている。 ちなみに 2003 年度の下水道及び一般廃棄物溶融施設からの発生スラグのうち 58% が再利用されていて、現状では土木資材に限定されている 46)。 溶融方式は既に確立された技術といってよいが、施設建設費が高価であること、有 効利用率が伸びないという問題点がある。 文献 46)坪井、座間(社)日本産業機械工業会“熔融スラグ再資源化への動き” 第27回全国都市清掃研究・ 事例発表会講演論文集 2006.2 8 熱源 焼却灰 図 3.7 灰 溶 融 炉 排ガス処理 設備へ 水 破 装 置 製品 (灰溶融) 高温熱処理法の概要 3.2 下水道及び一般廃棄物等における事例 添加剤を使用した重金属の溶出抑制技術に関する事例(実証試験等)を列挙すると、 以下のとおりである。 3.2.1 下水道分野 下水道における焼却灰中の重金属抑制技術の現状を表 3.2 に示し、主な取り組み事 例を以下に示す。現状では、当技術の開発レベルは室内実験、実証試験段階にある。 なお、下水汚泥焼却灰の重金属溶出では、とりわけセレン、ヒ素を問題にしている ところが多い(東京都 4)5)6)、横浜市 31)36)、名古屋市 27)、仙台市 2)3))。 ヒ素・セレンの増加要因としては、脱水工程における凝集剤が石灰系から高分子系 に変わってきたこと、集塵方式が「サイクロン+乾式EP」から「ガス冷却塔+バグ フィルタ」方式に変わってきたこと等が考えられる。 1) 薬品添加 ①仙台市の事例(消石灰添加+鉄化合物添加) 温泉排水を受け入れている下水処理場におけるヒ素対策として、水処理方法および 汚泥処理方法について検討されている。 水処理過程においては塩化第二鉄によってヒ素を沈殿除去し、発生する余剰汚泥を 集約処理する場合にも、その焼却灰に 2.0%程度の消石灰を添加することで溶出を基 準値以下に抑制できるとしている。 文献 2) 渋谷 奈保:“焼却灰からのヒ素溶出抑制方法の検討”、第 38 回下水道研究発表会講演集、(社)日本下水 道協会、2001 年 (仙台市下水道公社) 文献 3) 阿部 喜美、永野 操、相澤 義直:“ヒ素処理対策に向けた水処理および汚泥処理の検討”、第 40 回下水 道研究発表会講演集、(社)日本下水道協会、2003 年 (仙台市) 9 ②福岡市の事例 (消石灰添加+鉄化合物添加) 下水汚泥焼却灰を軟弱地盤上の道路舗装における、サンドイッチ舗装工法の拘束層 を構築する土質安定剤(Fe 石灰)として活用することを目的に行ったもので、Fe 酸 化混合物に、下水汚泥焼却灰と消石灰とを混合し水硬性を緩和した土質安定剤として 活用するものである(Fe25%+消石灰 60%+焼却灰 15%)。 石灰系安定剤を土に混合することによって処理土が硬化するのは主として土中の 粘土鉱物やコロイドを構成している非晶質物質(SiO2、Al2o3 等)が石灰と反応して 珪酸石灰水和物及びアルミン酸石灰水和物などが形成されるためである。この水和物 が結合材となって処理土に強度を与える。 供試した焼却灰は、高分子系脱水ケーキと石灰系脱水ケーキを 50:50 で混合し焼 成したものであり、石灰系安定処理土の工学的特性の改善が可能である。 また、金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を満足した。 文献 33)友田、工藤;福岡市における下水汚泥焼却灰の土質安定剤への利用について、下水道協会誌 Vol.33、No.404、 1996/10 注)サンドイッチ舗装工法は、軟弱な路床上に遮断層として砂層を設け、この上に粒状路盤材、貧配合コンクリ ートまたはセメント安定処理による層を設け、この上に舗装する工法です。 ③名古屋市の事例(消石灰添加+鉄化合物添加) As、Seの溶出抑制策として、焼却灰への薬剤添加、脱水工程へのポリ鉄(ポリ 硫酸第二鉄)添加、水処理施設へPACを添加したときのAs、Se溶出抑制効果に ついて報告している。 焼却灰への消石灰やポリ鉄など鉄系薬剤の添加結果では、消石灰1%、ポリ鉄3% 程度の添加でAs、Seとも土壌環境基準以下となり溶出抑制効果が確認できた、 しかし、酸性雤を考慮した pH=4 での試験ではポリ鉄 5%の添加で土壌環境基準以 下にすることができたが、消石灰添加の場合は満足する結果が得られなかった。 文献 27)加藤、林;下水汚泥焼却灰からのヒ素及びセレン溶出抑制策について 下水道協会誌 Vol.27 No.103 2004/3 ④横浜市の事例 (鉄化合物添加) 酸化鉄系環境浄化剤としての吸着剤(A剤)及び還元剤(B剤)を用いた重金属溶 出抑制試験を行い、有効性が確認できた。原灰セレンの溶出量が 0.3mg/l 程度であっ ても薬剤を 5.5~6.0%程度の添加及び含水比 70%程度の条件にすれば、環境基準値以 下になるとしている。 文献 36) 西山寛(横浜市環境創造局) 酸化鉄系環境浄化材を利用した焼却灰中の重金属不溶化処理技術の検討 第 42 回下水道研究発表会講演集 (2005 年) 10 2) 薬品添加+低温熱処理 ①東京都の事例 (鉄化合物+低温処理) 焼却灰の有効利用において、現在、溶出基準は明確に定められていないが、尐なく とも埋立基準は満たすこと、さらに利用用途によっては直接に土壌と接触する可能性 があることを考慮して、土壌環境基準を満たすことを目標とした。この場合、一部の 焼却灰では、特にヒ素とセレンについて土壌環境基準を上回る溶出がみられる場合が あるため、焼却灰からヒ素およびセレンの溶出抑制技術が開発された。方法は、焼却 灰に硫酸第一鉄とチオ硫酸ナトリウムを溶液として添加し、150~200℃で1時間加熱 する方法である。 この方法によると、ヒ素を 10~20mg/kg 含有し、溶出試験では 0.5~0.6mg/L 溶出す る各種の焼却灰は、いずれも土壌環境基準である 0.01mg/L 以下に抑制されている。 このときヒ素は鉄への吸着により不溶化されて、セレンはSe(Ⅳ)が鉄により吸着・不 溶化されているとともに、鉄による不溶化効果が弱いSe(Ⅵ)に対しては、チオ硫酸ナ トリウムが加熱時に還元剤として作用することにより、Se(Ⅵ)がSe(Ⅳ)に還元され、 鉄による吸着・不溶化が促進されていると推測されている。 文献 4) 坂本 達哉、小出 典宏、野邑 尚史:“鉄系薬剤による下水汚泥焼却灰からのヒ素とセレンの溶出抑制方 法”、第 39 回下水道研究発表会講演集、(社)日本下水道協会、2002 年 (東京都、(㈱)クボタ) 文献 5) 坂本 達哉、小出 典宏、野邑 尚史:“薬剤添加と加熱処理による下水汚泥焼却灰からのヒ素とセレンの 溶出抑制方法”、第 40 回下水道研究発表会講演集、(社)日本下水道協会、2003 年 (東京都、(㈱)クボタ) 文献 6) 杉山 佳孝、坂田 晃治、野邑 尚史:“下水汚泥焼却灰からのヒ素とセレンの溶出抑制技術の実用開発”、 第 41 回下水道研究発表会講演集、(社)日本下水道協会、2004 年 (東京都(㈱)クボタ) ②東京都の事例 (消石灰+水熱処理) ヒ素、セレンの溶出抑制には消石灰を添加する方法が多く行われてきたが、消石灰 を添加する方法では、酸性雤などによる長期安定性が懸念される。 東京都では、オートクレープを用いた水熱反応処理による抑制効果を調査してい る。水熱反応臨界点(375℃、22MPa)以下の高温・高圧条件の水を使う反応である。 焼却灰中のシリカ分と消石灰中のカルシウム分を水熱条件下で反応させることで、ケ イ酸カルシウムを合成し、物理的に安定した強度の高い結晶に成長させ、重金属をこ の結晶中に閉じ込めることにより溶出を抑えるものである。 ヒ素は消石灰添加率 5%、セレンは 10%以上であれば環境基準値を満足することを 確認した。 文献 28) 杉山、北村;水熱反応による焼却灰の重金属類溶出抑制技術、第41回 鋼環境ソルーションとの共同研究) そのほか以下のような取り組みも行われている 11 下水道研究発表会講演集 (神 3) 酸又はその他抽出法 ①三重保険環境研究所 (酸・アルカリによる抽出) 下水汚泥焼却灰から,酸・アルカリを用いたリン,金属等の資源回収技術の経済性 向上の可能性として,浸漬式重力ろ過装置を用いた実験を行っている。 酸(硫酸),アルカリ(炭酸カルシウム,水酸化カルシウム)を使用し,リン回収,重 金属除去回収を行い,回収物のろ過分離処理を試行した。排水の再利用が可能である ことを確認した。 文献 21)高橋正昭,佐来栄治,市岡高男,早川修二,加藤進(三重県科学技術振興センター);下水汚泥焼却灰からのリ ン,金属回収技術(Ⅳ)-浸漬式重力ろ過装置を用いた簡易処理の試行例-三重保険環境研究所(環境部門)年報 第 1 号(通巻第 20 号) (2000 年) ②北海道立工業試験場 (酸浸漬-電解法による抽出) 下水汚泥をコンポスト利用等する上で障害となる重金属元素を対象に,酸浸漬-電 解法で汚泥からの重金属除去試験を行い,酸濃度,電極材質,攪拌速度,処理時間な どの条件を検討した。 Cu,Cd 陰極を用いて,逐次電解をすることにより,Cu で 80~90%,Cd,Pb で 50 ~70%,Zn で 15~25%程度の除去が得られた。 文献 19)田恵一,高橋紀道ら(北海道工試,エヌケーケープラント建設㈱) 電解法を用いた下水汚泥からの重金属除去技 術に関する研究 北海道立工業試験場報告 No.301 4) 焼却炉の運転管理 ①東京都の事例 重金属酸化物の気化温度に着目し、高温で集塵する重金属類の低含有焼却灰と、低 温で集塵する重金属類の高含有焼却灰を分離して回収することで、焼却灰を無処理の まま資源化利用できないか検討している。 焼却炉メーカー工場内実験炉にて、燃焼温度を制御した実験を行い、そのままの状 態で土壌環境基準を満足する焼却灰の回収が期待できることが判明した。 なお、重金属類を高含有しているバグフィルタ灰については、セメント添加するこ とで、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づく埋め立て基準(砒素、セレン とも 0.3mg/l)を満足したとしている。 文献 29)片岡、長塚、宮本;高温集塵技術による汚泥焼却灰の高品質化、下水道協会誌 Vol.43、No.527、2006/09 12 表 3.2 下水道における焼却灰中の重金属抑制技術の現状 消石灰等(CaO) 鉄系 加熱処理等 チオ硫 水酸化 セメント 硫酸第 塩化第 ポリ硫酸 酸ナトリ ナトリウ 消石灰 固化材 一鉄 二鉄 第二鉄 ウム ム 従来 法 消石灰 セメント 薬剤 添加 鉄系 鉄系併用 水熱反応 1~3% - - - - - - - - 0.5%以 上 - - - - - - - - 3% - - - - - - - - 1%以上 - - - - - - - - ○ - - - - - - - 水熱反応 OK 酸性雤条件で As,Seが溶出 ヒ素クリア(埋立 基準) ヒ素クリア(埋立 基準) As,Seクリア(環 境基準) 一般的な無害 化措置の一つ 酸性雤条件で Se溶出がや不 安定 文献No 実施 調査範囲等 23) 東京都, クボタ 2) 仙台市 消石灰:0.01~2.0% 3) 仙台市 0~3% 27) 名古屋 消石灰:0~1.3% 10) - 各種セメント剤あり 4) 東京都, クボタ 東京都, クボタ - - 3~5% - - - - - As溶出 - - 3~5% - - - - - - OK - - - - 6~10% - - - - ヒ素抑制 2) 仙台市 ポリ鉄:3~20% 27) 名古屋 ポリ鉄:0~5% 4),23) - - - - 3%~ - - - - As,Seクリア(環 境基準) 2%以上 - - - 6% - - - - 各項目クリア 2) 仙台市 ポリ鉄:6%+消石灰:1.25~3.05% - pH>10でヒ素再 溶出 2) 仙台市 ポリ鉄:6%+NaOH:0.1~2.5% - - - 6% - ~0.7% - マグホワイト「非化学当量マグネシアセメント」(独)農業工学研究所開発 1) 重金属吸着剤(水和酸化鉄成分)+重金属還元剤 32) 横浜市 石灰系安定材(酸化鉄を主成分とする超微粉Fe酸化混合物,消石灰) 33) 福岡市 キレート剤 加熱処理 連続試験・ 酸性雤条件 溶出試験結果 - 他 加熱 各項目クリア - - - - 3~5% (7日放 置) 3% - - - - OK Cd溶出の可能 4),23) 性 - OK - - - 1% - 150℃ - 150~200℃, 1hr OK 200℃ OK - - 3~5% - - - - 1.5~2% - - 1% 10% - - - - - 10%~ 200~400℃, 30~60min - 0.9~ 1.5% - 35) - 165℃,20hr OK 16MPa,200℃ As,Seクリア(環 ,20hr 境基準) 13 5),23) OK(効果も持 5) 続) OK,実プラント 6) で実証 - 22) 28) 金沢市, 金沢舗装 東京都, クボタ 東京都, クボタ 東京都, クボタ 東京都, クボタ 東京都, 神鋼 東京都, 神鋼 実運転 消石灰5~15%,反応熱155~ 180℃,反応時間10~40hr 消石灰:5~15%,180~200℃,5~ 20hr 3.2.2 一般廃棄物分野 ゴミ焼却の飛灰については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」で「特別管理 一般廃棄物」に指定され、厚生労働省による4つの方法のいずれかを実施しなければ ならないことになっている。 ・セメント固化法 ・溶融法 ・薬剤添加法 ・酸又はその他抽出法 これらの指定方法の中では、セメント固化法が最も多く行われているが、その後、 2002~2003 年度にダイオキシン特別措置法の施行、重金属の無害化などの観点から数 多くの溶融施設が竣工してきており、スラグ生産量が大幅に伸びてきている。 なお、最近の一般廃棄物分野における焼却灰再生利用における研究動向によると、 溶融や焼成による重金属の固定化技術に係る事例が多いが、薬剤による重金属溶出抑 制技術に係る事例は尐ない。 以下情報として古いが、(文献 45)に記載された一般廃棄物処理におけるばいじん処理 技術や再生品利用状況に関するアンケート調査および文献調査された結果を以下に引用 する。 ・溶融方式は、既に確立された技術となっている。しかし、施設建設費が高価である という問題点がある。 ・焼却灰のセメント原料化については比較的処理費用も安くセメントとして利用用途 も広く、実用化され始めている。ばいじんの再生利用については、費用が焼却灰より も高価なり、また有害物質も多いことから、再生利用に関しては改良が必要であり、 いずれも汎用品とするためには、脱塩素処理が必要となる。 ・金属成分回収も実機レベルにあるが、金属成分回収は、重金属の無害化の観点から は効果的であるといえるが、ばいじん、焼却灰を直接利用する技術ではないため、他 のダイオキシン分解技術が必要である。また、回収した鉱石は、鉛と亜鉛の含有量が 高くなり、商品としての価値が低くなってしまう場合がある。さらに非鉄製錬所まで の輸送コスト、回収鉱石の量及び価格(価値)を考慮すると、導入可能な施設は限られ ることが想定される。 ・焼結固化、分別・分級は、実証機レベルであり、加圧成型は下水汚泥での実績はあ るが、ばいじん等としては実証機レベルである。焼結固化は溶融方式と同様に高価な 技術であり、実機として採用される場合はコスト面の改良が必要である。分別・分級 は安価な技術であり、今後技術が確立し、再生製品の有効利用が実証されれば実現性 が高い。加圧成型は処理実績がなく、処理費用、施設建設費も高価であり、コスト面 の改良が必要である。 (文献 45) 平成 12 年度 焼却灰等処理状況調査報告書 2001 年 3 月 財団法人廃棄物研究財団 14 3.2.3 汚染土壌中の重金属溶出抑制技術 重金属で汚染された土壌の処理技術には、表 3.3 に示すような封じ込め、不溶化、 浄化及び掘削除去等の方法が数多く提案・実用化されている。 また、添付資料-2には社団法人 土地改良建設協会ホームページに示された会社 別の土壌浄化対策工法を示す。 表 3.3 重金属汚染土の汚染対策工法 工法名 土壌洗浄法 熱 処 理 溶融固化 不溶化・固化 電気的分離 ファイトレメディ エーション 措置の種類 概 要 掘削除去 汚染土壌を掘削した後、水や温水または特殊な水溶液で洗浄し汚染物質を土 粒子から分離する。分離した汚染物質は粘土分などの微細粒子に吸着される 部分と水溶液に移行する部分とに分かれる。微細粒子に吸着された部分は分 級操作により粒子ごと選別回収し別途処理する。 掘削除去 汚染土壌を800~1200℃程度の高温で処理し、汚染物質を揮散させるもので ある。加熱炉としてロータリーキルン、流動床炉、溶融キルンなどが使用され る。処理温度が高温であるため水銀、砒素、カドミウム、亜鉛、セレン、鉛を揮 散させることが可能である。これらの物質はガス側に移行するので排ガス処理 が必要である。 掘削除去 汚染土壌中に電極を挿入し通電することによりジュ-ル熱を発生させ、汚染物 (難分解性物質、重金属類およびこれらの複合汚染物)を分解、気化あるいは 土壌に封じ込める。封じ込められた汚染物質はガラスマトリックスにより固定化 される。溶融中は土壌からガスが発生するので、オフガスとして回収し処理す る。溶融部は1600~2000℃になるため冷却後は黒曜石に似たきわめて安定な ガラス固化体になる。 その重金属等の特性に応じて選定された化学薬剤を混合して汚染物質の溶 解性、移動性を低下させ、地下水への溶出を基準値以下にする方法である。 不溶化埋め戻 固化は汚染土壌にセメント等の固化剤を混合し、一体化した構造とする。汚染 し・掘削除去 物質と固化剤との間の化学反応により一体化させる場合と、固化剤に汚染物 質を取り込ませ機械的に一体化させる場合がある。 原位置浄化 地盤に電極を設置し、土壌中の間げきを水で満たした状態で直流電流を流す と、電気分解、電気泳動、電気浸透の各現象が起きる。電気泳動現象を応用 し、土壌中の汚染物質を移動させ除去する方法である。汚染物質のうち六価ク ロム等の陰イオンは陽極方向へ、鉛等の陽イオンは陰極方向へ移動する。 原位置浄化 ファイトレメディエーションは、効果により次のような分類がされている。● 植物 により対象物質を除去する、植物吸収、植物蒸散など● 植物により対象物質 を移動させないようにする、植物安定化、根圏ろ過など● 植物により対象物 質を分解する、植物分解、根圏分解など。このほか、ポプラ、柳などの水分吸 収を利用し、地下水の拡散を抑える利用方法もある。 (社)土壌環境センター 表 3.4 は、シーリングソイル協会により作製された汚染土壌からの重金属溶出抑制 技術の不溶化・固化技術である。 物理的固化法,地化学的固化法及び化学的固化法の3つに大別し、物理的固化法と しては,セメント固化法,ガラス固化法などがあり,地化学的固化法には,水熱反応 固化法,ベントナイト工法,シーリングソイル工法,アパタイト工法などがあり,化 学的固化法には,消石灰,硫酸第二鉄,塩化第二鉄,キレート剤等の薬剤を添加する 15 方法について紹介している。 これらの各抑制技術から、特に、セメント及びセメント系固化剤による固化法、水 熱反応固化法、アパタイト工法、薬剤添加法について概要を述べる。 1) 物理的固化法(セメント及びセメント系固化剤) セメントのアルカリ性を利用して金属などを不溶性の水酸化物することや吸着・置 換による固定および物理的封鎖によって金属などの溶出を抑制する方法である。 溶出抑制剤としてのセメントが汎用品であるために,他の方法と比較して安価な処 理方法とされている。 セメント系固化剤としては,セメントにさらに溶出抑制の目的の金属を捕捉するよ うなキレート剤を添加してあるものが市販されている。 本調査で使用したシュタインは,捕捉されている成分が明らかにされていないが, セメント系固化剤である。 2) 地化学的固化法 ①水熱反応固化法 本処理方法は,汚泥中のシリカ分と添加剤中のカルシウム分を水熱条件下で反応さ せることにより,ケイ酸カルシウム(トバモライト)を合成し,物理的に安定した強 度の高い結晶に成長させ,重金属類をこの結晶中に閉じこめることにより溶出を抑え るものである。 ヒ素の溶出抑制には,消石灰を添加する方法が多く行われているが,単なる消石灰 添加処理に比べ,重金属類を確実に封じ込めることができ,水熱固化品は長期にわた って安定であり,強度も大きいという特徴がある。但し,150~300℃飽和水蒸気圧の 条件下で 20 時間程度処理する必要があり,設備費,維持費ともに高価となる。 ②アパタイト工法 本処理方法は,汚泥中の有害な重金属を水に溶けない鉱物結晶「アパタイト」に変 化させ,外部に漏れないよう固定・無害化する方法である。 代表的なアパタイトとしては,水酸化アパタイトCa5(PO4)3OHがある。 置換された同形構造アパタイトも,鉱物結晶としてのアパタイトの基本特性をもっ ており,化学的溶出抑制処理と異なり,酸性からアルカリ性の広い範囲で溶出しない ばかりでなく,非常に硬い鉱物結晶となって安定化する。また,セメント固化に比べ, 処理対象物の特性も変化しないという特徴がある。 アパタイトはカルシウムとリンの化合物を意味するが,例えばマグホワイトはこの アパタイト系の溶出抑制剤であり,カルシウムの替わりにマグネシウムをリンと化合 させたものである。 16 3) 化学的固化法(薬剤添加) 薬剤を添加して有害重金属の溶出抑制を行う方法である。 薬剤には,ヒ素を対象とした場合,消石灰,塩化第二鉄,硫酸第二鉄等の無機系薬 剤と,キレート樹脂の有機系薬剤がある。 無機系薬剤を添加する方法は,水処理におけるヒ素除去にも使用される方法であ り,ヒ酸カルシウム,亜ヒ酸カルシウム,ヒ酸鉄,亜ヒ酸鉄などの水に難溶性の化合 物として沈殿除去するものである。沈殿除去した汚泥の処分方法が大きな課題であ る。 キレート樹脂を添加する方法は,重金属イオンと強力にキレート結合することによ り各種重金属イオンを除去する方法で,単一の物質を選択的に分離抽出することがで きる。 17 表 3.4 汚染土壌中の重金属溶出抑制技術比較事例 工法区分 工法名・使用物 質 対象物質 物理的 セメント固化法 固化法 (高炉セメント) 重金属一般 原理・効果 概算工費 (m3当たり) 普通ポルトランドセメンより 安価 安価だが、改良後の初期 1万円以下 セメント固化にとも 強度が低い なう固定化 セメント固化法 高炉セメントと比較してpH 値が高い (普通セメント) 重金属類 ガラス固化法 特徴 ダイオキシン類 1.有機・無機の汚染物質 が混在する複合汚染にも 高い 対応可能 超高電圧流で汚染 2. 処理後はガラス固化体 土壌を溶融・ガラス となり減容効果が大きい 5万円以上 (約65%) 固化体にする 総合評価 1.高アルカリ土となり植栽 が制限される 2. pH値が10を超えると砒 素・鉛など再溶出する 3. 強度が上がりすぎて重 機工作が困難 1. 高エネルギーを要しな がら溶融固化効果は極め て局所的 2. 実証試験段階でほとん ど商業実用化していない 3. 固化すると土地の再利 用が制限される PCB 放射性廃棄物等 地化学的 水熱反応固化法 中温度・中高圧で ケイ酸カルシウム結晶中 ケイ酸カルシウム結 に固定化して安定 晶中に固定化 ベントナイト工法 吸着機能により固 定化 固定化法 重金属一般 シーリングソイル 工法 アパタイト工法 化学的 カドミウム 硫化ナトリウム 固定化 鉛、水銀 六価クロム 硫酸第一鉄 1.土壌形質が粒状個体 に大きく変化する 2.常設処理装置までの移 動運搬費が必要 混合量が多くなると土壌 性状が異質になる 1.鉱物が持つ機能を組み 吸着・イオン交換等 合わせ短期的および長期 反応を経て珪酸塩 的な固定化 鉱物中に固定化 2.最終的に珪酸塩鉱物が 形成され長期安定 1. 8年の施工歴と各地公 共事業の実績を持つ 2. 処理後も物理的・化学 的に土壌の特性を有する 燐灰石は高~中温多湿 比較的高価 1.公共事業の実績を持つ 燐灰石結晶中に固 の気候風土で分解しやす 2.処理後も物理的・化学 定化 3~4万円 い 的に土壌の特性を有する 1.複合汚染の場合、複数 安価 の薬品による相互反応に 難溶性の硫化物を 悪臭をともなう硫化水素が 十分留意する 生成 発生する 2. 他の汚染物質の溶解 1万円以下 性を増加させる場合があ る 3. 化学反応により、分離・ 無毒性の三価クロ 酸化反応により六価クロム 分解など他の浄化工法が ムに還元 に戻る場合がある 利用できない場合がある 重金属との錯塩を形成し ている場合は適用が困難 次亜塩素酸ナトリ シアン ウム 酸化分解 重金属との錯塩を形成し ている場合は適用が困難 硫酸第二鉄 砒素 難溶性の砒酸鉄を 砒酸鉄生成後に硫酸イオ 生成 ンが大量に残留する 塩化第二鉄 砒素 難溶性の砒酸鉄を 砒酸鉄生成後に塩素イオ 生成 ンが大量に残留する 重金属一般 キレート化合物を形 化学反応が瞬時に起こ 成し固定化 り、取り扱いが難しい キレート剤 1.5万円前 後 吸着機能のみで固定化 効果が比較的小さい 難溶性塩を生成 シアン 比較的安価 4. 化学反応が可逆的に 進行して再溶出する場合 がある 高い 4~5万円 ※概算工費は3,000m3程度を対象としていますがサイト条件や汚染度合いによって異なります。 出典)シーリングソイル協会ホームページ 18 1. 薬剤が高価なため処 理費が高くなる 2. 適用条件により施工品 質が一定しない 3.2.4 底質の処理・処分等 底質の環境基準は、2006 年 12 月現在ではダイオキシン類 (150pg-TEQ/g) のみが定 められている。底質の環境基準以外には底質暫定除去基準として水銀と PCB が定め られているのみである。 なお、表 3.5 に、底質のダイオキシン類対策工法概要を示す。 表 3.5 手法 底質のダイオキシン類対策工法概要 対策工法の種別 浚渫除去 掘削除去 処理 締切+浚渫(掘削) 固化処理 工法の内容 締切なしで底質を除去する浚渫(掘削)工法 汚染区域を鋼矢板等で仕切って除去する締切掘 削工法である。締切工法には締切後固化処理を 施し掘削除去を容易にする方法もある。 底質に固化材を添加して固化処理する方法 固化処 側面をコンクリート鋼矢板等で底部の不浸透層ま 原位置処 理 締切+固化処理 で締切遮断した後、固化処理により汚染底質か 理 +コンクリート被覆 らのダイオキシン類の溶出を防止し、上部をコン クリート等で被覆する封じ込め工法 覆砂 底質の上に汚染してない良質の砂を覆砂する方 法 引用)河川、湖沼等における底質ダイオキシン類対策マニュアル(案)平成17年3月 国土交通省河川局河川環境課 (参考) 底質の処理・処分等に関する指針について 公布日:平成 14 年 8 月 30 日 環水管 211 号 (都道府県知事・政令指定都市市長・中核市市長あて環境省環境管理局水環境部長通知) これまで、水銀、PCB 等の有害物質により汚染された底質の対策については、「底質の処 理・処分等に関する暫定指針」(昭和四九年五月三〇日付け環水管第一一三号環境庁水 質保全局長通知。以下「暫定指針通知」という。)により対策に係る留意事項の周知を行って きたところであるが、 今般、「ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準 についての一部を改正する件」(平成一四年七月二二日環境省告示第四六号)により、ダイ オキシン類対策特別措置法(平成一一年法律第一〇五号)第七条の規定に基づくダイオキ シン類による水底の底質の汚染に係る環境基準が定められたことから、水銀、PCB に加えダ イオキシン類に汚染された底質対策を主眼とした見直しを行い、新たに別添のとおり「底質 の処理・処分等に関する指針」として取りまとめたので通知する。主な変更点は、監視のた めに行う調査において簡易分析方法の適用を追加するとともに、工事方法として、しゅんせ 19 つ及び掘削並びに封じ込めに加えて無害化を追加したことである。 ①しゅんせつ及び掘削 しゅんせつ又は掘削を行う場合には、底質の性状、当該水域の地形、海象、流況及び漁 期、漁況等の地域の特性に応じて、第二に定める諸監視基準が維持できる範囲内で、作業 時間、作業期間、作業速度等の要素についても十分配慮しつつ工事を行うものとする。 ②封じ込め 工事着手前の調査で、地下水の水質調査結果が環境基準値に適合していない場合、原 則、封じ込めによる処分を行うことはできないものとする(周辺と遮断する場合を除く。)。ま た、採用にあたっては当該水域の地形、流況等の地域の特性及び今後の地形改変の可能 性に留意の上判断するものとする。 ③無害化 実用化に向けた研究開発の過程にある方法であり、採用に当たっては試験施工等により 性能等について確認すること。 ④除去底質の搬出、処理及び処分 除去底質を搬出する場合、搬出中に除去底質が周辺に飛散等しないようにするとともに、 除去底質の搬出先において、周辺環境に対策対象物質による汚染を拡散させることのない よう除去底質からの汚染の除去又は適正な処分を行うこと。 なお、船舶から海洋投入処分を行う場合には、海洋汚染防止法によることになるので留 意すること。 20 3.2.5 メーカーヒアリング 焼却灰中からの重金属溶出抑制技術に関して、下水道分野で実証試験まで行ってい る(株)クボタと神鋼環境ソリューション(株)、及び薬剤開発を行っているミヨシ 油脂(株)のヒアリング結果を下表 3.6 に示す。概して、下水道分野における当技術 の開発状況は、実験、実証試験レベルにある。 なお、実証試験を行っているクボタ、及び神鋼環境ソリューションの技術は東京都 との共同開発であり、公開された文献資料に記載された内容以上の情報入手はできな かった。 表 3.6 メーカーヒアリング ㈱クボタ 処理剤名称 特 徴 硫酸第一鉄+ チオ硫酸ナトリウム+加熱処理 ・汚泥焼却灰に硫酸第一鉄とチオ硫酸ナトリウム を水溶液として添加、混合し、150℃程度で加熱 することにより、セレンや砒素の溶出を抑制する。 ・酸性雤の影響下でも、長期に渡り、溶出抑制効 果が持続する。 熱源 加 熱 混 合 機 焼却灰 フロー P P 薬液Fe 薬液N a 排ガス 処理設 神鋼環境ソリューション㈱ ミヨシ油脂㈱ 消石灰(水熱反応) 無機系薬剤(キャンビ) ・汚泥焼却灰に消石灰・水を添加し、混合・造粒 ・ホウ素、フッ素、六価クロム、ヒ素、セレンなどの 後、高温高圧条件化で養生し、焼却灰表面にト アニオン朱に対して良好な固定化性能を発揮す バモライト結晶(5CaO・6SiO2・5H2O)を形成して、 る。 ・吸着や凝集作用を持つ 安定な無機系基材を母材とし、重金属の溶出を As、Seの溶出を抑制。 ・トバモライトは焼却灰中のシリカ分(SiO2)と添加 防止する。 した石灰分(CaO)が水和反応により生成する。 消石灰ポッパ 備へ 混 合 機 焼却灰 製品 ・設備は、主にキルン式加熱機と薬液貯留・供給 設備、処理灰貯留設備で構成 ・定量フィーダにより焼却灰を加熱機に送る過程 で薬液が添加され、加熱機内で混合されるととも に、加熱処理が行われる。 設備、添加量 ・土壌環境基準以下を達成するための薬剤の添 等 加量は、硫酸第一鉄水溶液約3%、チオ硫酸ナト リウム水溶液約1% 水 オ ー ト ク レ ー ブ 焼却灰 製品 P 製品 混 合 機 薬液 ・原料焼却灰に消石灰10%・水50%を添加し、混 合・造粒した後に150℃~200℃の飽和蒸気を満 たした圧力容器(オートクレーブ)で10~20時間養 生。 ・設備は、混合・造粒用のミキサー、水処理するため のオートクレーブ、原料・添加剤・処理品の貯留設 備、搬送用コンベア等から構成。 ・処理対象物に対して、薬剤を0.5~3.0wt%程度 と適当量の水を加え混合する。 ・混合後、数日から数週間養生することで更に効 果が増す。 ・薬剤添加量は、実サンプルを用いた試験により 決める。 ・ヒ素溶出濃度0.1mg/lに対して1.0wt%程度の 添加が目安(環境基準0.01mg/l以下)。 ・セレン溶出濃度0.1mg/lに対して1.0wt%程度の 添加が目安(環境基準0.01mg/l以下)。 ・実証試験に先立ち各種の室内実験が行われて ・実験室レベルの実験2?/日、小規模プラント180 実験室レベル いる。 ?/日が行われている。 実績(実験を ・東京都下水道局葛西水処理センターにおいて ・東京都下水道局葛西水処理センターにおいて 含む) 実証実験処理能力は焼却灰1.2トン/日 (運転期 実証実験処理能力は焼却灰90㎏/日 (運転期 間:平成15年10月~平成16年3月) 間:平成17年7月~ 平成18年1月) 21
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