A/特集/クボタ 99.11.16 10:34 AM ページ 35 機器組み込みに適したラインセンサカメラ デジタル方式「DS-1000」の活用法 株式会社 クボタ 電子技術センター 北野 紳一・園田 秀二 クボタコンプス株式会社 小林 弘嗣・松田 美奈子 1. 開発の経緯 ラインセンサ素子の動向は、大きな市場である スキャナやコピーの撮像素子として、より高速・ 機器組み込み用として、他のラインセンサカメラ にないユニークな特長を持つ。 以下、本稿ではこのDS-1000の概要・特長をご紹 介する。 高画素の方向に進んでいるが、ラインセンサカメ ラを検査装置などに組み込んで使用する場合、必 ずしも満足できるカメラが市場に供給されている わけではない。 2. 米の異物選別機「米奉行」への搭載 「米奉行」は、米の中に含まれる被害米(虫な そうしたなか、当社が開発したモノクロデジタ どの被害によって変色した米)や石、ガラスなど ルラインセンサカメラ「DS-1000」は、クボタの製 を取り除く装置で、精米工場などで使用される 品である米の異物選別機「米奉行」 (写真1)に搭 (写真2) 。1機につき3t/hの処理能力。ユニット連結 載することを目的に設計・開発されたものである。 方式になっており、写真1は4連結されたタイプで、 12t/hの処理能力がある。 写真2 選別後の米の良品/不良品 2.1 選別の仕組み 図1に選別の仕組みを示す。ホッパから振動フ ィーダに供給された米は、平面シュータを流れ (写真3) 、シュータ下部で一層に整列する。この面 状の米がセンシング部を通過するときに、前後の 写真1 米の異物選別機「米奉行」 ラインセンサカメラDS-1000が異物を感知し、異物 November 1999︱ 35 A/特集/クボタ 99.11.16 10:34 AM ページ 36 に対応したエアノズルにタイミングを合わせて排 除信号を出し、異物を排除する。 センシングポイントには、背景に米と同じ明る さの反射板があり、米が流れたときと流れていな いときは、カメラの出力は米の明るさを出力する。 米より明るい、あるいは暗い異物が流れたときに それを異物と判断し排除する(図3) 。 図1 選別の仕組み 図3 センシングの原理 センシングポイントでの米のスピードは約3m/s。 幅250mmの平面シュータを1,024画素のCCDライン センサで監視し、縦0.6×横0.25mmの分解能で、米 1粒あたり50∼100回のセンシングを行う。3t/hで処 理しているため、米粒に換算すると1時間に1億5千 万粒の米を選別していることになる。 2.3 「米奉行」の応用 米奉行は白米、玄米、もち米の選別ができ、そ 写真3 米の流れ の他の農産物への適用として各種穀物類や豆類に も展開している。また工業原料、材料への展開と して、プラスチックペレットやチップ部品への適 2.2 センシングの原理 用を検討している。 平面シュータのすぐ下にラインセンサカメラが 前後に2個配置され、面状に流れる米の表側と裏側 を監視している(図2) 。 3. DS-1000の概要と特長 3.1 概要 外観を写真4に示す。DS-1000は最大走査周波数 10kHzの1,024画素モノクロデジタルラインセンサ カメラで、画像データの出力は8ビット、10MHzの デジタル出力になっており、信号の劣化を気にす ることなく画像データの取り込みが行える。また、 機器組み込み用として設計されており、とくに検 査装置などに組み込まれるカメラとして、以下の 特長を有している。 なお、表1にDS-1000の仕様を示す。 図2 センシング方法 36 ︱eizojoho industrial A/特集/クボタ 99.11.16 10:34 AM ページ 37 る。そこで、DS-1000では特殊な照明を必要としな いよう、感度の高いカメラとして設計し、 100V/lx・secを実現している。また、感度とノイズ レベルはトレードオフになるが、デジタル出力方 式を採用し、ノイズレベル2LSB以下を実現した。 dデジタル出力方式 DS-1000は外部からの基準クロックと走査信号に より制御され、8ビットのデジタルデータと同期ク ロック、同期信号が出力される。これらの回路は CCDラインセンサや入出力コネクタと同一の基板 写真4 デジタルラインセンサカメラDS-1000 上に実装されており、コンパクトかつ低コストを 実現している。 仕 様 DS-1000 画素数 使用センサ データ速度 走査周波数 感度 感度不均一性 A/D分解能 A/D変換直線性 ノイズレベル 偶奇のばらつき レンズマウント 外形寸法 動作温度 デジタル入力電圧 デジタル出力電圧 アナログ出力信号 電源入力 1,024画素(14μmピッチ) ラインCCDセンサ 最大10MHz 最大10kHz 100V/lx・sec 最大10% 8ビット ±1/2LSB以下 2LSB以下 2LSB以下 Cマウント W120×H120×D36.5mm 0∼45℃ クロック(最大10MHz)、スタート信号 データ(8ビット)、クロック、同期信号 ビデオ出力、同期信号 +5V、±15V 表1 DS-1000の仕様 表2に入出力の内容を示す。クロック、データ 信号などのインタフェイスはすべてRS422となっ ている。したがって、本ラインセンサカメラは機 器組み込み用として開発されたが、市販のデジタ ルカメラ対応PC入力ボード(利用可能な機種につ いてはお問い合わせください)での画像入力も可 能となっている。 また、デジタル信号出力のほかにモニタのため のアナログ出力、同期出力機能も備えている。 信号名 属性 内 容 CKIN IN DS-1000を制御するための基準クロック入力 STIN IN 走査信号 DATA7..0 OUT イメージ出力信号 CKOUT OUT 上記出力データに対するクロック信号 SYNCOUT OUT 有効画素開始を示す同期出力 +5V IN 制御系電源 +/-15V IN アナログ系電源 表2 DS-1000のインタフェイス 3.2 特長 a光軸方向にコンパクトな設計 装置に組み込む場合、どうしても光軸方向の距 f低コスト 離が長くなり、装置全体の寸法が大きくなりがち エリアセンサカメラの価格の低下は目を見張る である。そこで、DS-1000では光軸方向の距離をで ものがあるが、ラインカメラは総生産台数が少な きるだけ短くできるように、カメラ本体を薄く設 いこともあり、価格も高価である。DS-1000では、 計した(奥行き36.5mm) 。 機器組み込み用に必要な箇所以外において、可能 な限りのコストダウンを図り、デジタル出力であ s高感度・低ノイズ設計 りながら178,000円という低価格を実現した。 工場のラインに設置される場合は照度の高い照 明を施すことはさほど困難ではないが、機器組み 込みの場合は種々の条件から問題になる場合があ g信頼性の高い実績 DS-1000は平成10年4月発売以来、 「米奉行」への November 1999︱ 37 A/特集/クボタ 99.11.16 10:34 AM ページ 38 搭載を中心に、延べ500台以上販売し、高い実績と 信頼性を持っている。 4. おわりに 当社では、モノクロラインセンサカメラDS-1000 のほかに、3CCDデジタルラインセンサカメラ 「DL-1024-3」 (写真5)も製品化している。クボタ、 クボタコンプスの戦略としては、カメラを搭載し た検査装置、製造装置の開発を今後とも継続し、そ れに必要なカメラを順次開発していく考えである。 写真5 3CCDデジタルラインセンサカメラDL-1024-3 今回ご紹介したDS-1000は、ラインカメラを必要 としているすべてのユーザに満足いただける製品 というわけではない。しかし、対象としているもの のスペックさえあえば、非常に使いやすいセンサと してユーザにご提供できることと確信している。 38 ︱eizojoho industrial ☆クボタコンプス! 3 06-6232-0611 6 06-6232-0619 ☆!クボタ 電子技術センター 3 03-3245-3595 6 03-3245-3592
© Copyright 2024 Paperzz