C M Y K グローバルな金属フローの評価− 金属の社会蓄積量及び リサイクル率 経済発展は、金属の使用と深くかかわっているが、金属需要の増加は、資源量に対し、常に圧力が かかっていることを意味している。社会に蓄積されてきた金属は、巨大な地上鉱山の役割を果たすこと ができる。リサイクルは、金属需要増加による悪影響を緩和し、経済成長のポテンシャルを確保する方 法である。金属に関わる報告書の最初の2つである『金属の社会蓄積量:科学的総合報告書』と『金属 のリサイクル率:状況報告書』において、UNEP持続可能な資源管理に関する国際パネルは、地上鉱山 の問題について取り上げる。 経済発展と金属使用 経済の発展は、金属の利用と深く結びついてい の銅鉱山でも、その半分しか生産できない。我々 る。20世紀中には、社会で金属の多様な用途が急 は、これを「地上鉱山」または「都市鉱山」と呼んで 速に広がった。建設物における鉄鋼、航空機におけ おり、原材料の生産に果たす役割は、ますます増大 るアルミニウムなどの大量使用に加え、液晶画面に している。そこで、金属リサイクルの強化が必要とさ おける特殊金属インジウムの使用にみられる革新 れている。 的技術により、ますます多様な金属が使用されるよ うになった。金属は、我々の周囲の至るところに存 金属の社会蓄積量 在し、経済の土台をなす重要な素材のひとつである。 金属には無限の用途があるが、建設、輸送、電気・電 20世紀を通じ、金属使用は増加し続けたため、金 子機器、宝飾品という4つの主要分野があることは 属の蓄積は地下から地上の社会での使用へと大き 明らかになっている。金属需要の伸びは特に新興国 くシフトした。このようなシフトは、社会、経済、環境 では顕著だが、先進国でも需要が増えている。した 面での問題を提起しており、これらの問題は、金属 がって、採掘活動は拡大しており、それに伴う環境 の社会蓄積量とその寿命を定量化することによって 影響も増大してゆく潜在的可能性がある。リサイク とらえられなければならない。たとえば、建設物で ルはこれらの影響を緩和する方法のひとつである。 の銅の寿命は平均25∼40年であり、その後、金属は たとえば、中国最大の地域公営団地では、年間100 採取されるのを待つことになる。 万トンの銅のリサイクルが可能であるが、中国最大 米国における銅の使用中蓄積量は、1932年の1人 M Y 当たり73kgから1999年には238kgへと増加した。 きい。 リサイクル率向上の機会が提示されており、 世界平均では1人当たり50kg(2000年)である。先 それらを実施すれば、循環経済の確立に役立つで 進国の1人当たり蓄積量と発展途上国のそれとの あろう。 比較を元に推計すると、世界の全人口が先進諸国 と同レベルで金属を使用するのであれば、世界の 教訓と喫緊の課題 WWW.UNEP.FR/SCP/RPANEL 金属の使用中蓄積の必要量は、現存量の3∼9倍に のぼることが示唆されている。本報告書では、5種 社会において増加しつつある金属の蓄積は、巨 類の金属の使用中蓄積量に関する合理的に詳細 大な地上鉱山の役割を果たしうる。 このポテンシャ な情報を提供し、他の19種類の金属についても、 ルを活用すれば、一次供給源からの金属採掘の削 抜け落ちもあるものの有用と思われる情報を提供 減に役立つ。 これは、資源利用を経済成長から切り している。人 間 社 会 にある蓄積量に関 する情報 離すことにも役立つであろう。 しかし、 これらの金属 ギャップを埋めることで、将来需要に応えるための の蓄積量とそのリサイクルの潜在的可能性の大き 金属リサイクルの潜在的可能性について重要な情 さにはかなりのデータの不足があり、その不足を埋 報を提供する。 こうした増加する金属の蓄積のリサ めなければならない。多くの金属のリサイクル率は イクルによる利用は、将来、金属の重要な供給源に 低い。自動車や電子機器など消費者向け商品では なると期待される。 物質の循環はオープンであることが一般的である。 したがって、 これらの商品群には、特に注意を払う 金属リサイクル率 必要がある。 リサイクル率はリチウムなどの特殊金 金属には、本来の性質としてリサイクル可能であ クルの基盤整備が必要である。 こうした発展には、 るという長所がある。そこで、金属を原則として繰り 研究開発、経済的インセンティブ、能力開発などの 返し使用することで、バージン素材の採掘と比較し 政策手段による支援が必要である。地上鉱山の十 て、エネルギーを節約し、環境への悪影響を最小化 分なポテンシャルを利用し、適切なグローバルな基 できる。 盤整備によって物質サイクルの環を閉じることは、 本報告書では、金属のリサイクルに関するさまざ グリーン経済を確立し、持続可能な開発を担保する まな指標を定義し、 これに関連するリサイクルプロ ために不可欠である。 属では、特に低く、 これらについては、適切なリサイ セスの諸側面を検討し、各種のリサイクル率につい て現在の情報を提供する。作業部会は、鉄や白金な 詳しいお問い合わせは、こちらへ: ど限られた数の金属についてのみ、使用済みリサイ Guido Sonnemann、資源パネル事務局 クル率が50%を超えていると述べている。 リサイク UNEP DTIE、持続可能な消費と生産(SCP)部門 ル率は低いことが多いが、改善のポテンシャルは大 [email protected] UNEPの資源パネルは、天然資源の持続可能な使 グローバル金属フロー・グループは、6分冊の評 用、および特にそのライフサイクル全体にわたる環 価報告書シリーズにより、金属のリサイクルと、循環 境への影響に関する、政策的関連性のある科学的 経済の確立を推進している。 これらの報告書とは、 な評価を、中立的で整合性のとれた権威ある立場 社会における金属ストック、 リサイクル率、環境に から提供することを目指して設立された。 また、経済 及ぼす影響、地質学的ストック、将来需要、およびク 成長を環境劣化から切り離す方法についての理解 リティカルメタルである。 を深めるための貢献を目指している。 環境省仮訳 K Scientific Advice: Öko-Institut e. V. | Design: www.3fdesign.de | Photos: iStockphoto.com | Front 1 © James Whittaker | Front 2 © oneclearvision | Front 3 © Marco Hegner | Front 4 © Milos Peric | Front 5 © DNY 59 | Back 1 © Huchen Lu | Back 2 © Dieter Spears | Back 3 © Jeannette Meier Kamer C
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