<海外研修の実施に際して> 全国科学館連携協議会 事務局 日本科学

<海外研修の実施に際して>
全国科学館連携協議会
全国科学館連携協議会(以下
事務局
日本科学未来館
秋田
博文
連携協と略す)の事務局として一年の行事の中で、最も大き
な事業の中のひとつが海外科学館施設調査研修である。事務局の担当として一から海外研修を
企画するのは初めてであり、いつ、行き先はどこにしよう?行き先が決まった後、公式訪問を
行う館員とのアポイントはどのように取ったら良いのか?など分からないことがたくさんあり、
どうしたら良いのかと考えたことは事実である。それでは順を追ってどのように海外研修を成
立させていったのかを書いてみたいと思う。
1.時期について
例年、航空運賃が安価であると思われる 11 月∼12 月にかけて開催をしている。(昨年は 11
月 11 日∼21 日)しかし、今年に限っては、
①私が ASIMO 理科授業の主担当をしており、HONDA 技研株式会社との取り決めにより、
ライセンスを持ったオペレーター2 名での運用が義務である。従ってそのうちどちらか 1
名に何かあった場合、ライセンスを持っている私がサポートする義務があり、例年の日程
では能代エナジアムパーク、出雲科学館での授業開催が決まっていたため、サポートメン
バーとして長期に海外に行くことが不可能であった。
②上野の国立科学博物館を事務局とする全国科学博物館協議会(以下
全科協と略す)の研
修が例年 1 月中旬頃開催されるため、時期的に近いのを避ける。
③11 月では研修に行った実績のある北米も欧州も気候的に厳しい。
上記①∼③の条件を加味してまだ寒さの緩い 9 月末∼10 月上旬が好ましいと判断した。
2.行き先について
北米、欧州を 1 年おきに交互に訪問しており、昨年はアメリカのニューヨーク、ボストン。
カナダのトロントの訪問を行ったため、今年は欧州に決定した。
欧州の中でも全科協が行き先をイギリス国内としていたため、競合するのを避け、定番と
なっているロンドン科学博物館を外した。10 年前に前所属である科学技術館において全科協
の欧州海外研修(イギリス・ロンドン、フランス・パリ、ドイツ・ミュンヘン)参加時に公
式訪問したのが、ロンドンでは科学博物館、自然史博物館。パリでは自然史博物館、ラ・ヴ
ィレット、発見の宮殿。ミュンヘンではドイツ博物館であった。その経緯からもロンドン以
外での欧州の定番であるラ・ヴィレット、ドイツ博物館は外せないと考えた。私個人として
は、自身の行きたい場所、みんなが希望する場所に行くことが必要であり、海外科学館のよ
りよい事例調査が行える館を訪問するのが義務である。従ってより良い調査ができるための
事前調査を行った。
その結果、パリではモーターショー、ミュンヘンではオクトーバーフェスト(世界最大の
ビール祭り・・・このようなイベントにはその国民性や文化・風習を理解する上では欠かせ
ないものであり、個人的にはビールを飲むためだけでも参加してみたい。)の開催時期であり、
世界中から観光客が集まってくる。そのためホテルが混み合い、通常より高価な価格設定を
行っている。日本科学未来館(以下
未来館と略す)から参加費の補助を行ってはいるが、1
人でも多くの参加者を得るためには、初期の設定費用をなるべく抑えなければならない。そ
のため、残念ではあるが、ミュンヘンはホテルが高く、郊外での宿泊を考慮しても断念せざ
るを得なくなったためドイツ博物館への研修は見送りとなった。
帰国は参加者の疲労と荷物の移動等を考慮し、直行便を利用することが望ましいというエ
ージェントさんの意見から、今回利用の日本航空ではアムステルダム、パリ、フランクフル
ト、ロンドン、ローマなどから研修地も考慮し、帰国便の選択を行った。その結果パリには
ラ・ヴィレット。アムステルダムには国立科学技術センター(NEMO)が存在するため、候
補とした。
連携協の平成 18 年度(6 月 28 日開催)の総会において会長が毛利
田
衛未来館館長より石
寛人未来館総館長に交替した。以前にチェコ共和国の親善大使を歴任された経緯から、
街自体がユネスコ世界遺産として登録されている「黄金の街」首都プラハの国立科学技術博
物館を推薦された。また「未来館ではさまざまな分野に波及するこの先端科学技術の営みを
人間の知的活動という視点から捉え、私たちを豊かにする文化の一つとして社会全体で共有
することを目指しています。(未来館ホームページより)」
∼科学を文化に∼ 「文化」とは広義に音楽も芸術も含まれており、その「音楽と芸術の都」
オーストリアの首都ウィーンでは科学はどのように捉えられているのかに興味があった。過
去にもウィーンの科学館・博物館を訪問したことがなく、ある意味まだ調査がなされていな
い場所でもあり、奇しくもモーツアルト生誕 250 周年にあたる年であることからこの機会に
旧市街が世界遺産であるウィーンの自然史博物館、国立科学技術博物館を公式訪問の候補と
した。このような経緯より、チェコ共和国・プラハ、オーストリア共和国・ウィーン、フラ
ンス共和国・パリ、オランダ王国・アムステルダムを訪問地として決定した。
3.日程・金額について
9 月下旬∼10 月初旬を目安としたが、出発日の確定、訪問順等をアレンジしなくてはなら
ない。従ってここからはエージェントの協力と、相見積にて最も安く、事務局の要望通り(ま
たはそれに近い)の会社を選定しなくてならない。出発日に関しては日本発土・日の運賃が
割高となるため、平日の月曜日 9 月 25 日とし、行程は 10 日間(昨年度は 11 日間)とした。
10 日間に 4 都市を効率良く周り、公式訪問をこなす。過去の参加者からも各都市で自由研修
時間が欲しいというニーズが多くあった。確かに私が参加した全科協の研修でも各都市に自
由研修日が一日ずつ設定されており、ゆとりを持ち、尚かつ公式訪問以外の館にも訪問する
ことができた。移動に関しては航空機、列車、バスなどを利用し、ホテルは 3 つ星でも 5 つ
星でもこだわらないが、綺麗で快適であること等。これらの意見を 3 社のエージェントに話
し、日程の確定および金額の設定を行った。
A社は昨年利用した実績を持ち、B 社は過去に利用した実績を持つ。C 社は全く初めてで
はあった。A 社はパリでのモーターショーの関係でホテルが混み合って、高く、予約が取り
にくいとの理由で、私が指定した日程を変更した挙げ句、かなり法外な金額であった。
B 社は当初一番安価な見積もりを出してきた。しかし、いろいろと 3 社以外のエージェン
トの方などに話しを聞いてみると、利用するホテルなどあまり綺麗ではないホテルであると
いう意見を聞いた。また見積金額の中に燃油チャージが含まれていなかったという点もあっ
た。C 社は欧州内でのエージェントはどこの社であるとか、様々な情報をこちらに流し、移
動手段、ホテルを変えれば、もう少し金額が下げられるかもしれない。などの案も丁寧に調
べてもらい、金額も一番安価であったため、C 社を選定した。従って行程の中で、睡眠時間
中に移動ができる手段として寝台列車も活用した。そして次ページの行程となった。
全国科学館連携協議会欧州研修(成田発着)
日数
月 日
1
2006
9/25
(月)
成
田
( モ ス ク ワ
( モ ス ク ワ
プ
ラ
ハ
9/26
(火)
プ ラ ハ 滞 在
9/27
(水)
プ
ラ
ハ
発
ウ ィ ー ン 着
9/28
(木)
ウ ィ ー ン 滞 在
2
3
4
5
6
7
8
9
10
都
市
名
発
)
)
着
時
1
1
1
1
1
6
7
8
間
:
:
:
:
1
1
1
1
便 名
5
0
5
0
J L 4 0 7
O K 5 3 7
摘
要
食事
午後:日本航空にて、モスクワ経由
チェコ・プラハへ
着後:専用バスにてホテルへ
DIPLOMAT PRAGUE CLASS(プラハ泊)
午前:専用バスにて研修
朝:○
(公式研修先)国立技術博物館
昼:
午後:専用バスにてプラハ市内研修
夕:
同上(プラハ泊)
1 8 : 4 0
1 9 : 4 5
O K 6 0 6
終日:各自自由研修
朝:○
夜:空路、オーストリア・ウイーンヘ
昼:
着後:専用バスにてホテルへ
夕:
BELLEVUE CLASS(ウィーン泊)
終日:専用バスにて研修
朝:○
(公式研修先)
昼:
自然史博物館及び国立産業技術博物館
夕:
及びウイーン市内研修
同上(ウィーン泊)
出発まで各自自由研修
9/29
(金)
ウィーン(西駅)発
2 0 : 2 1
パリ(北駅)着
1 0 : 2 2
寝台列車
10/2
(月)
10/3
(火)
10/4
(水)
パ
リ
滞
在
パ
リ
発
アムステルダム着
終日:各自自由研修
0 6 : 5 5
1 1 : 0 5
アムステルダム発
2 0 : 1 5
成
1 4 : 3 0
田
着
夕刻:夜行寝台にてフランス・パリへ
(車中泊)
朝:○
昼:
夕:
午前:パリ着 その後専用バスにて研修
朝:
(公式研修先)
昼:
ラ・ヴィレット(科学産業シティ館)
夕:
午後:パリ市内研修
QUALITY OPERA SAINT-LAZARE CLASS(パリ泊)
9/30
(土)
10/1
(日)
夕:
列
車
タリス 9309
J L 4 1 2
朝:○
昼:
同上(パリ泊) 夕:
朝:列車にてオランダ・アムステルダムへ
着後専用バスにて研修
(公式研修先)
<NEMO>科学技術センター
及びアムステルダム市内研修
VICTORIA CLASS(アムステルダム泊)
朝:○
昼:
夕:
出発まで各自自由研修
夜:専用バスにて空港へ
日本航空にて空路、帰国の途へ
朝:○
昼:
夕:機内
午後:成田着
通関後解散
(機中泊)
朝:機内
4.研修内容・テーマについて
連携協として未来館と共催するべく未来館での運営調整会議等に諮り、参加者への交通費
の補助および調査結果の発表等を行うために、参加者が積極的に研修を進め、主体的に取り
組むため、
「展示手法」、
「運営管理と評価」、
「学習プログラム」等の研修テーマを参加者各人
が選択して研修を行い、テーマ別に報告書を作成する。公式訪問館では館のスタッフと対話
を中心とし、質疑応答やバックヤードツアー等を実施することで単なる見学にしない。その
後公式訪問館に関する見学の事例他の調査結果に関する報告書を作成する。研修成果、調査
結果の普及に関しては、MeSci セミナー等で発表する予定ではあったが、石田会長の日程調
整他の関係で、報告に関しては、2007 年 3 月 4 日(日)∼7 日(水)の平成 18 年度国内科
学館職員研修にて発表(発表は 3 月 5 日の午前中を予定)を行う。また連携協のホームペー
ジにて調査結果を広く周知させるようにすることとした。
5−1.各館への公式訪問準備
その1
各館への公式訪問のアポイントに関しては国際企画グループなどに協力を仰ぎ、未来館へ
の来館経験および知り合いである担当者に電子メールにて連携協の概要、訪問の目的、内容、
日時、人数等を連絡し、回答を待った。また初めて訪問する館、および国際企画グループで
も知り合いの担当者がいない場合には、館のホームページの問い合わせおよび質問等のアド
レスへ連携協の概要、訪問の目的、内容、日時、人数等を連絡し、回答を待った。
欧州への時差が 7 時間であるため、こちらで送信したメールを担当者が内容を確認するま
でに 1 日はかかると思われ、その後対応する担当者を決定し、内容を検討、そして回答する
手はずで進めてもらい回答をいただけるものと思っていたところ、なかなか回答が来なかっ
たため、2度目の連絡を行った。
それでもなかなか回答がこなかったため、再度メールを送信した。最初に回答がきたのが
チェコ・プラハの国立技術博物館であったが、訪問希望日はすでに 9 月 12 日からの館内改修
にはいっているとのこと、今更日程も変更できなかったため、訪問館の変更を検討が一瞬を
よぎったが、メインホールはまだ改修に入っていないので見学・案内は可能であるとの回答
であり、ホッとひと安心した。
ウィーンの自然史博物館、産業技術博物館からも回答がきて、概ねこちらの希望通りの日
時で大丈夫とのアポイントをとることができた。このように公式訪問館のアポイントが取れ、
研修日程がひとつづつ埋まって行くことが何よりであり、担当として責任をひとつ果たせた
安堵感があった。
しかし、そんなこともつかの間で、ラ・ヴィ
レットからの回答は、担当者は「私ともう1名
の担当者は訪問希望日の勤務が休みで、対応は
できないので、別の日にして欲しい。また私と
もう1名の担当者は耳が聞こえません。」とい
うことで私は非常に困惑した。けれども公式訪
訪問時の館の正面玄関前、このため裏口から入場
問の日程を遂行するためには、別の担当者にお願いをするしかないため、その旨のお願いを
することとした。
NEMO に関しても当初 10 月 2 日(月)に訪問をお願いしていたところ、
「月曜日は公的な
休館日であるので、対応は難しい。」という回答のため、翌日の 3 日に変更することとなった。
この件に関しても、すでに月曜日の公式訪問の予定で告知してあったため、参加者の方に迷
惑をかけてしまった。ここでお詫びを申し上げます。このように公式訪問のアポイントが、
如何に難しいことなのかということを思い知らされた。
下記はプラハ国立技術博物館に送信した訪問のお願いの例です。
RE: Visit to your institution by Japanese museum staff
To whom it may concern,
I am writing to you from the National Museum of Emerging Science and Innovation, or
Miraikan, in Tokyo, Japan. Our institution houses the secretariat for JASMA, the Japan
Association of Science Museums.
In September 2006 a team of JASMA members will be traveling to Europe to visit
scientific institutions and museums there. This team would like to visit your institution
on Tuesday, September 26, from 10:00 a.m.
If possible, we would like to arrange short question-and-answer session with an officer
there. If we could ask for around 30 minutes of your time to learn about your approach to
scientific exhibits and science education, we would greatly appreciate it.
The JASMA team will consist of 11 members representing museums across Japan. We
look forward to touring your museum, and we hope you will be able to help us arrange an
interview session for us.
I apologize for writing with this request on short notice, and I look forward to a reply at
your earliest convenience.
Respectfully yours,
Hirofumi AKITA
JASMA Secretariat
National Museum of Emerging Science and Innovation
http://miraikan.jst.go.jp/index_e.html
6.参加募集および参加者の選定
公式訪問館へのアポイントをとりながら、連携協加盟館への参加者の募集を行う。6 月 29 日
の総会では行き先の予告はしていたが、正式な告知は日程が決まり、金額が確定し、運営調整
会議に諮り、各参加者へいくらの補助を出せるかが決定してからということになる。その上で
募集を行い、どのテーマを中心に調査するのか等申し込みを提出してもらうこととした。その
結果日本科学未来館からは事務局 2 名を含む 6 名の参加、船の科学館さんから 2 名、大洗わく
わく科学館さんから 1 名、きっず光科学館ふぉとんさんから 1 名、盛岡市子ども科学館さんか
ら 1 名の合計 11 名の参加者が下記になり、調査研修の開催が決定した。
井上
徳之、秋田
(上記 6 名
博文、森田
菜絵、森田
由子、松原
志緒、池城
かおり
日本科学未来館)
健一(左記 2 名
鈴木
浩司、東条
飯島
一敬(大洗わくわく科学館
山口
晋(盛岡市子ども科学館)
中村
正憲(きっず光科学館ふぉとん)
5−2.各館への公式訪問準備
船の科学館)
館長)
その2
公式訪問のアポイントの次は、公式訪問時の質疑応答の時間を無駄なくするために、事前に
質問を送信することになった。そのため、各館への質問を参加者に事前にお願いをして、各館
の担当者へ質問をしたいことなどを募った。下記は参加者の東条さんの質問を例とした。
(原文
のまま)
《視察博物館についての確認事項》
1.
設立年月日:
2. 国立/私立の区分
3.
本施設のみの運営か。それとも他にも運営している施設があるか。
4. 年間予算の総額はどれくらいか。
本施設の年間予算額(2006 年度):
運営している施設の合計の年間予算額
運営者は誰か(NPO 組織に運営させていないか)
5.
主な収入先
国の補助金:
入館料:
レストラン収入:
売店収入:
個人/企業寄付金: その他:
6.どのような組織体系で運営されているのか。
組織図
総職員数/ボランティア数/その他(派遣職員、アルバイト)
7. 年間入館者数:
人
・そのうち常設展・企画展のどちらが多いか。
・入館者のうち多い年齢層は、1.
代、2.
常設展:
代、3.
8.
入館者の平均見学時間はどれくらいと思われるか。
9.
展示場の面積はどれくらいか。
10.
開館時間/休館日の有無/入館料
入館料:大人
開館時間:
人
企画展:
人
代
休館日の有無:
、こども(何歳から何歳までか)
年間予算に占める入館料収入の割合:
11.
年間の広報はどのようにされているのか。
広報予算:
12.
周知方法:(ex:新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等)
年間の企画展数
常設展と企画展(特別展)の対比
常設展とは:(ex:館として所有している展示物を年間通して展示)
企画展とは:(ex:その年度における周年記念事業等)
大きなものを年 1 回するのか。或いは大きな企画展は何ヵ年に 1 回の割合で行うのか。
企画展の規模はどれくらいのものか。
《企画展の規模(金額、準備期間、委託の有無、主催者の参画割合)
》
13.
ボランティアガイドの活用状況について
・
ボランティアガイドの育成はどれくらいの期間をかけてどのような方法で行うのか。
・ ボランティアガイドにかかる年間経費はどれくらいか。また、掛かる経費はどのような経
費か。(ex:給与、食事費、交通費等)
・
ボランティアを採用する上で注意する点は何か。
・
ボランティアの平均年齢は何歳か
・
ボランティアの登録者数
14. 作成パンフレットの言語数
15. 会員制度の有無/会員の特典/会費
16. 学校教育とのコラボレーション事業は何かありますか。
・
どのような方法で実施しているのか。
(館の学芸員が学校に行って子供たちに教える方法又は学校が年間行事の実施場所の一つ
として館を使用するのか)
・ 学校と博物館とは何らかの協力関係にあるのか(日本では学校教育の中で博物館の活用と
いうことは殆んど無い。博物館等の名前すら聞くことがない)
17.
アニュアルレポートを作成されていますか。
作成している場合、どのように活用されていますか。
18.
博物館の運営上、特に気をつけていること。
19.
展示テーマや展示物、展示手法等を選択する際に、それらが多くの人々に評価されるか否
かの調査(マーケティング)はどのように行っているか。
例)模型(小さい模型、実物大、ポイントの部分においては拡大模型等)での展示、PC
でのバーチャルや実物を展示する等。
20. 来館者の声や意見、反応をどのように拾い上げ博物館運営にフィードバックさせているか
例)アンケートや解説用PCの作動回数、ホームページにおけるアクセス件数、来館者と
話をするインタープリターの感触等
21.
貴国の子供は展示機器をおもちゃにしないか。またおもちゃにするのであれば他の見学者
の見学に支障をきたすのではないかと思われるが、どのようなポリシーで対処をしているか。
22. 子供にも理解できる展示解説をどのようなポリシーで工夫しているか。
例) 子供にも理解できるレベルでの解説の用意や体感型展示、インタープリターによる
解説(インタープリターへのマニュアルや訓練を含む。)等
23.
目・耳・手足等にハンディキャップのある方(外国人を含む)に展示解説面や施設整備面
についてどのようなポリシーで対応しているか。
例)展示解説面においては音声ガイドの常備や映像においてはテロップなど視覚的にも理
解可能な展示。施設面においては車椅子やベビーカーの貸し出しといったバリアフリ
ーに対するポリシー。
24.
その他展示手法等においての成功例や失敗例などをご教示いただきたい。
LIST OF QUESTIONS
The following items are examples of information we would like to know about your institution.
Depending on time, we may not be able to cover all of these questions. If you have written
materials that cover some of this information, we would be happy to receive a copy of those
materials and save our time with you for other discussion.
1. When was your institution founded?
2. Is your institution public or private? What organization manages the institution? (Is this
organization run on a nonprofit basis?)
3. Does the managing organization handle only this institution, or are there other facilities under its
control?
4. What is the size of your annual budget? For example, what is the institution’s operating budget
for fiscal 2006? If the organization runs more than one facility, what is its total annual operating
budget?
5. What are your major sources of income? If possible, can these be broken down by category?
• National or other public support:
• Visitor fees:
• Restaurant income:
• Shop income:
• Individual/corporate donations:
• Other:
6. What form does your organization take in the management of the institution? (Please provide an
organization chart if available.) What are the total numbers for your entire staff, your volunteer
staff, and other workers (dispatched workers, part-timers, etc.)?
7. What is your annual number of visitors? If possible, can you break this number down into
visitors to your permanent exhibits and your special events?
8. How long does an average visitor spend here?
9. What is the total area of your exhibit space?
10. Please provide details about your operations:
• Hours of operation
• Days facility is closed
• Admission fees for adults, children (what age range?)
• Percentage of yearly budget covered by admission fees
11. Tell us about your publicity activities. How much do you budget per year for PR? What
channels do you use (newspapers, magazines, TV, radio, etc.)?
12. Please tell us about your specially planned events:
• How do they differ from your permanent exhibits?
• How do you define permanent exhibits (those available for a full year, etc.)?
• How do you define special events (commemorative events, etc.)?
• Do you carry out special events each year, or once every few years?
• What scale are your special exhibits or events in terms of budget and time for preparation? Do
you outsource any related tasks? Do you have special sponsors?
13. Tell us about your use of volunteer guides:
• How long do you train these guides? What training methods do you use?
• How much do you spend a year on these guides and their training? What sort of expenses are
there (salary,1 food and drink, transportation, etc.)?
14. How many languages do you produce your visitor literature in?
15. Do you have a membership system? What do members gain from joining? How much does
membership cost?
16. Do you work in concert with the school education systems?
• What sort of collaboration do you carry out with schools? (Do you send institution curators to
schools to instruct students there? Do schools send their students to your institution as part of
their educational programs?)
• Do you have ongoing cooperative relationships between your institution and schools? (In
Japan schools make very little use of museums in their programs. Museums—even their
names—come up very rarely in instruction.)
17. Do you publish an annual report? If so, how do you put it to use?
18. What in particular do you pay attention to in your management of the institution?
19. When deciding on the themes for your exhibits and your methods of exhibition, do you perform
any marketing surveys to determine whether they will be received well by visitors? For example,
do you seek public input when deciding whether to build physical exhibits, such as small or
1
Volunteers だったら「給与」はおかしいと思います。
life-size models, or to use virtual computer environments?
20. How do you collect feedback from visitors and put it to work in the management of your
institution? For example, do you perform visitor surveys? Do you count how many times a
computerized exhibit is operated per day? Do you keep track of the hit count on your website?
Do you collect feedback from the museum staff who interface with visitors?
21. Do children from your country tend to treat exhibits like toys? If so, does this ever interfere with
the visits of your other guests? Do you have a policy in place to deal with this?
22. What sort of approach do you take to making explanations easy for children to understand?
For instance, do you prepare child-friendly texts to accompany exhibits? Do you install
hands-on displays for kids? Do you have special manuals or training to prepare museum staff to
deal with young visitors?
23. For visitors with disabilities of some sort (including visual, aural, or physical disabilities, or
linguistic barriers, as in the case of foreign visitors) do you have a special approach to making
their visits to the institution easier? For instance, do you offer audio guides to the exhibits for
foreigners and people with sight disabilities? Are there subtitles on your video displays for the
hearing-impaired? Is your institution barrier-free with respect to wheelchairs and child carriers,
and do you have these items on hand to lend to visitors?
We do not expect to get through all this material during our short visit, but any data you can offer
on the above points will be most welcome. If you have any other interesting information to
share—methods that have worked especially well for your facility, or problems you have faced in
your operations—please let us know! We look forward to meeting with representatives of your
institution.
7.参加者事前説明会
今回研修の選定業者となった㈱塚原観光旅行センターの担当者
会 9 月 19 日(火)13:00∼日本科学未来館
富江
久さんより事前説明
7 階交流サロンにて開催した。
研修に際しての諸注意や、参加者の事前顔合わせおよび各参加者の調査テーマ選定、レポー
ト作成館の選定を行った。
皆、一様に真剣な表情で事前の説明を聞く
㈱塚原観光旅行センター 担当者 富江 久さん
各テーマおよび報告書担当館は各参加者の報告書を参照。
8.研修実施
・はじめに
∼出発の空港にて∼
昨年の海外研修において事務局が 40 分以上
遅刻し、参加者一様に迷惑をかけたことを昨年
度の参加者に深くお詫び申し上げるとともに、
以後そのようなことが無いように気をつけると
いうことで、今年の空港集合は、利用航空機の
出発時刻の 2 時間前の午前 9 時 15 分であった。
私は事務局として参加者を迎える責任と、今回
の手配会社の担当者富江さんも空港へ見送り他
いよいよ出発。しかし、この後、予期せぬ出来事が・・・
最後のお世話をして下さることになり、7 時には成田空港に到着した。流石に朝眠かったが、
そんなことは言っていられない。やはり集合時間の 1 時間前から続々と参加者の方々が空港
に到着してきた。全員集合とともに、各自チェックインカウンターでチェックインをし、出
国準備となる運びであるが、8 名のチェックインが終わり、私のチェックインの番の時、JAL
の係員から意外な言葉を聞くこととなった。
「モスクワでの乗り継ぎ時間が 1 時間半未満なの
で、プラハまで荷物が届かない可能性があることをご了承下さい。」とのことであった。やは
り、こういった研修や、団体旅行などではこういったアクシデント(まだアクシデントでは
ないが・・・。)はつきもので、過去にも前職場の科学技術館時代に私が友の会で企画したオ
ーロラツアーにおいて、雷雨による悪天候でこれから離陸するはずであった航空機が約 2 時
間飛ばなかったことがあった。フライトアテンダントが配った水に、某大学の M 先生が免税
店で買ったウイスキーを入れて飲み始めた。私もお裾分けをいただき、他の参加者も同様。
その後しばらくすると酔いも手伝い、我々の一角がやたら騒がしくなった。おかわりの水を
もらいウイスキーを入れるところを見られると、
「免税品なので、それ以上飲んだら逮捕され
ますよ!」という脅しを受けた。
「逮捕するといっても成田署が来るのか?バンクーバー署が
来るのか?どっちなんだろ∼。」などと屁理屈を言っていたことを思い出した。そうこうして
いるうちに富江さんが JAL の係員に「そんな事言ったって、きちんとそういった事情を考慮
して JAL 側が予約の OK を出したのではないか?」とクレームを付けたが、「モスクワの乗
り継ぎの航空会社が違うので、我々は関知できない。」と JAL の係員も引かない。
「最初に荷
物を下ろせるようにドアの側に置くようにできないか?」と富江さんもプロとして徹底抗戦。
「そのようなサービスは一切行っておりません。」
と JAL の係員もその場を丸く収める気などない
ような対応だった。荷物が届かないのも困るが、
このままのやり取りが続いても仕方ない。とりあ
えずチェックインして、あとは半日後のモスクワ・
シェレメチェボ空港にて荷物の乗り継ぎがきちん
と行われるか、祈るしかないようだ。とりあえず、
手荷物で 1 日分の着替えは入れてある参加者もい
た。やはり‘日本の常識は世界の非常識と言われ
る程、海外に行けば何が起こるか分からないため、
乗り継ぎのシェレメチェボ空港にて、我々の荷物
が運ばれて来るのか見ていましたが、出発の飛行
機が遅れたため、荷物も無事に乗り継ぎに成功!
「備えあれば憂いなし。
」を実感することになった。
・チェコ共和国
編
世界一のビール消費量を誇る同国。到着後はホテルの近くでその恩恵に預かり、翌日に残ら
ない程度にして、公式訪問に出発することとなった。ホテルで通訳のハドリチカさんの巨大な
体に遭遇し、チェコ人が日本語を喋る違和感を感じ、しかしなかなか流暢な日本語に感心しな
がら、バスに乗り込み、国立技術博物館へ出発した。到着すると正面玄関の階段が取り壊され
るのを目の当たりにすると、やはり何とも言えない気持ちになった。
以前この館には 2001 年 9 月下旬、そうニューヨークの同時多発テロの後に、個人旅行で立
ち寄ったことがあり、また来てみたいと思っていた所である。特に印象に残っていたのが実物
の展示が多かったこと。やはりドイツ連邦共和国にも近い、そのため隣国が侵攻してくるなど、
科学技術の発展が、軍事産業的な意味合いが強かったような印象を受けていた。しかし、以前
は解説をじっくり読んだ訳でもなく、案内をしていただいた訳でもない、なので今回その謎解
きができることは個人的にも楽しみにしていた。4 ヵ国共民族・宗教等が違う(下記表 1 参照)
表 1 今回訪問した国の民族・言語・宗教の比較
国
名
チェコ共和国
人
種
公
用
チェコ人 94%、その チェコ語
他スロバキア人、
語
宗
カトリック
無信仰
教
26.3%、
58.3%
ロマ人等
オーストリア共和国
主としてゲルマン民 ドイツ語
カトリック約 78%、
族(外国人約 75 万
プロテスタント約 5%
人、ウィーンには約
28 万人
フランス共和国
オランダ王国
ケルト人、ゲルマン民族
フランス語
カトリック 62%、イスラ
(フランク系、ノルマン
ム教 6%、プロテスタン
系)などの混血
ト 2%、ユダヤ教 1%
ゲ ル マ ン 系 オラ ンダ人
オランダ語
キリスト教(カトリック
81 % 、 ト ル コ 出 身 者
32 % 、 プ ロ テ ス タ ン ト
2.2%、スリナム出身者
22%)
2%、モロッコ出身者
1.9%
他(2005)
(出展:外務省ホームページ他)
ため、それが科学技術を伝えるという考え方、方法などに違いが生じるのではないか、また違
いがあるとすれば、どのような違いが生ずるのかという観点で調査を進められればと思う。
戦争、産業革命をはじめとする歴史的背景が科学技術の発展に対して、いろいろな影響を及ぼ
していることが考えられる。そう考えると世界史を勉強しておけば良かったと考えても後の祭
りであるため、この機会にそういったことも学び、その国家のこと、歴史、文化を理解するこ
とで、科学技術に対してもより理解が深まるのではないかと思われる。各館の詳細に関しては
各担当者の報告を読んでもらい、私は大まかに自分の考えや、感じたことを報告できればと思
っている。
チェコの国立技術博物館では、実物展示を通して、産業技術の歴史を伝えること、実物展示
はその歴史的な時間経過を重要視していること。我が国では汚れていたり、破損していたりす
るものは、きちんと清掃、修復を行わないと展
示として来館者に見せられないという考え方は
存在しない、実物をありのままの姿で展示する
という考え方が成り立っている。また実機をい
つでも作動できるようにメンテナンスも怠らな
いなど、展示を見学しただけではその考え方な
どは理解できないものであった。私が一人の見
学者としてだけ訪れた時には、「きっと動かない
ものを並べただけではないか。」という浅はかな 通訳のハドリチカさんの解説を熱心に聞きました。
考え方しかできなかったのも事実であった。やはり展示物つまりモノを置いてあるだけでは難
しく、そこに人が介することにより、その展示
物が生かされてくるものだと考える。今回展示
物の説明を行ってくれたアーノスト・ネツメス
カルさんはバイクの専門家であり、彼の知識を
持ってすれば、博物館で勤務するよりも街中の
バイク屋で勤務した方が賃金を多く貰えるが、
収入のためではなく、心底バイクが好きである
と同じくらい、博物館が好きで、そこに勤務す
ることに誇りを持っている。
(本人談)説明から
も彼の意志の強さを感じたのは私だけではない
ネツメスカルさんは誠実で実直そうな人柄でした
であろう。
すべて昔は市民のために活躍していた実機で、その偉大さを感じます
質疑応答も含め、2 時間たっぷりと館内を案内していただきました
館の全景はこのようになっています
・オーストリア共和国編
オーストリアの首都はウィーン。2006 年はモーツアルト生誕 250 周年を迎え、日本人の観光
客も増加しているとのこと、市街地も世界遺産となっており、音楽、芸術好きな人にとっては
堪らない街である。そのウィーンの街に存在する国立産業技術博物館と自然史博物館を 1 日に
2 館訪問することとなり、ハードな日程ではあったが、そこは研修であるので、きちんと調査
をしなくてはならない。苦労してアポイントを取ったのであるから。
ガイドさんの粋な計らいで、少し時間が早いので
国立産業技術博物館の近く(徒歩 7,8 分)
に存在するシェーンブルン宮殿に立ち寄ることができた。世界遺産に登録され、この宮殿を見
るためにウィーンの街を訪れる人も多い離宮であり、年間約 40 億という世界一収益のある宮殿
でもある。我々は宮殿内を見たい気持ちを抑え、国立産業技術博物館へ向かった。
エントランスで挨拶をし、館内案内をワル
ター
ター・スゼヴェラさん(左写真左から 3 番
目
目の長身の方)にしていただいた。
開館は 1903 年ともう 100 年以上経過して
いる
いる。1999 年にリニューアルをしているこ
おとから
とから、私が以前に訪れた 2001 年にはリ
ニューアル
ニューアルされていたことになり、どこか
で聞いた
聞いたフレーズではないが、運営が国から
民間へ移行されたのもこの年からであると
のこと。てっきり私はオーストリアの国営
の
まずはエントランスで挨拶を交わし見学をスタート
の館であるとばかり思っていました。規模
はとてつもなく大きく、コレクションは数知れない。実はあまりの規模の大きさに翌日の自由
研修日にシェーンブルン宮殿を訪れた後に、また国立産業技術博物館を訪れた位です。子ども
達も楽しめる直接参加体験型の展示が、この写真のワルターさんの奥側の階段を登った右側の
部屋がそのようになっていました。
我々の見学時にも多くの小学生で賑わ
っていた。その他科学技術の変遷から
先端科学技術までと多岐に渡っていた。
実物の溶鉱炉もあり、その大きさい来
館者は圧倒されるであろう。音楽の街
らしく楽器の展示も充実していた。そ
の楽器の中でもピアノだけは空調の効
いた部屋に展示されており、この辺り
は音楽を通した科学の進歩がうかがえ
る。館内は特に展示解説員は存在しな
いが、団体の子どもたちには教育普及
高校生団体に対するツアーの様子
担当の職員がツアー形式で展示の解説を行っていた姿も見受けられた。地下には昔の炭坑を再
現した展示もあり、実際に時間決めによるツアーを開催している。来館者はヘルメットをかぶ
り炭坑に入っていく臨場感を体験できることで人気を博している。また展示フロア内の一部を
貸し出しすることで、収入の一部にしているなど日本の一部の科学館のような収益部門も存在。
家電製品の歴史の実物をオブジェの様に展示
次回特別展「自動車」の展示の準備
会議室における質疑応答は時間がオーバーするほどしっ
巨大な展示は迫力が違います
かりと回答してもらいました
ウィーンには自然史博物館が存在するが、同様の建物が同様に存在している。これは美術史
美術館でブリューゲルやルーベンスのコレクションで人気の高いところでもある。残念ながら
なかなか時間がないこともあり、見学したことがないので、次の機会には必ず行きたいと思う。
道路を挟んで自然史、美術史の博物館とコの字の形を形成するようにミュージアムクオーター
が存在し、レオポルト美術館や近代美術館をはじめ、チルドレンズミュージアムまで様々な集
合体として存在し、芸術が好きな人には堪らない街である。以前ここを訪れた6年前にはまだ
建設途中であったため、見学することはできなかったが、ぜひまた次の機会にでも訪れてみた
いものである。
自然史博物館に関しては欧州の博物館らしく、まずはコレクションの多さに圧倒される。こ
れはプラハの国立博物館を自由研修の時に訪れた際にも感じたことではあるが、鉱石のコーナ
ーにはもの凄い数の鉱石がこれでもか!と陳列されている。昆虫の標本他も同様である。すべ
てをきちんと見学してはおそらく一日では足りないであろう。博物館好きには堪らない場所で
ある。午前中もみっちりと見学を行い、昼食を取る時間もままならなかったが、ガイド兼通訳
の倉重さんの機転により、昼食もきちんと街中でとることができた。そして午後また濃密な時
間を過ごすことができた。私が特にお願いした訳ではなかったが、館長であるベルント・レッ
チュさん(生態学博士、ウィーン大学教授、ザルツブルク大学教授)が何と館内案内をするこ
とであった。館長はとても情熱的で、館内の展示にも非常にこだわりを持っている。館長に就
任した後、駄目だと思われる展示は入れ替えさせたり、
撤去させたそうである。そして博物館は分野別に展示
を陳列させるだけではなく、先端的な展示を入れるこ
とにも拘りをもっている。そういった熱意が伝わって
きた。その集大成がミクロテアーターであり、トン
ボの幼虫であるヤゴがユスリカの幼虫(赤虫)を食
しているところがライブで見られる。食したヤゴの
口の動きなども克明に見られました
食道から胃にかけて赤くなってゆく様子が見えるのが何とも生々しい。CCD カメラを通した映
像がこのように見られるのが、何とも新鮮に映った。
欧米ではとても多い野生のミツバチを館外から館
内の取り込み、実際に野生に近い状況で飼育し、館
内で巣の内部が見られるようにする。子ども達にと
っては新鮮なことであろう。実際にこの様子を見る
ことは難しいと思われる。それにしても日本ではほ
とんど見かけない。やはりこれも文化の違いなので
しょうか。
そういえば、博物館の建築物は昔の宮殿であった
りする場合も多く、建物の内部の造作物も芸術的な
ものが多く存在しました。やはりこれも芸術の街な
らではであり、オーストリア・ウィーンならではの
科学を文化にといったところなのでしょうか。質疑
自由に外を行き来します。刺される心配はなし
応答もミュージアム内のカフェで行うなど、やはり
ここがウィーンであり、あのザッハートルテ発祥の地であることがうかがえる。館長さんのご
厚意で建物の屋上に上がり、一番景色の綺麗な場所で記念撮影をしたことが、今回の研修のハ
イライトであったことはいうまでもない。きっともう2度とそこに足を踏み入れられることは
無いかも知れない。そう考えると尊い時間であり、経験であると思われる。予定の2時間は軽
くオーバーし、館長さんが館内の特に見せたい展示をピ
ックアップしていたが、それでも3時間は優に超えてし
まい、バスを待たせてあった倉重さんの携帯電話がドラ
イバーから何度もかかってきていた。申し訳ない気持ち
もあったが、あれだけの館長の情熱が伝わってきている
以上止める訳にはいかなかった。またぜひ来たいという
私の申し出に、
「ぜひ、また来て下さい。その時は連絡し
て下さい。」と言われて嬉しかったし、また会ってみたい
方であり、今回の研修はレッチュ(写真左)さんのおか
げで参加者の満足度も高くなった。これだけ博物館を一
日歩き回ると夜のホイリゲでの食事と出たての新白ワイ
ンと食事が美味しかったことは言うまでもありません。
・フランス共和国編
フランスといえば農業国のイメージが強い。現に以前 10 年前に全国科学博物館協議会(全
科協)の海外科学館研修に参加した時は、ユーロスターでロンドンからパリに移動する際に、
フランス側の景色に緑が多く、農作物などを作っている車窓の風景に目を奪われた気がする。
その後 1998 年にフランスでサッカーワールドカップが開催された時も、私は日本の 3 試合を
応援にフランス国内(トゥールーズ、ナント、リヨン)はおろかフランスの周辺国を周遊し
たこともあった。TGV に乗ってボルドーを経由し、トゥールーズに向かう際の車窓もとにか
く緑が多かった。やはりフランスは農業の国なんだということを強く思った。そんなフラン
スイコール農業というイメージを打破し、フランスにおける科学技術の普及を目的としたシ
ラク大統領の科学技術政策の集大成がこの科学産業都市であるとのこと。その昔は畜殺場で
あった場所の跡地であるそうだ。驚くのがその規模。年間予算約 200 億円に、職員が約 1,000
名と相当な人、金である。であるからモノも充実しているかと思えば、私の記憶が確かなら、
10 年前に研修で行った時に比べると常設展示が減った気がする。オープンスペースが増え、
そのスペースで特別展、企画展などを半年∼2年などの期間を変えて開催しているようであ
る。日進月歩で進歩する最先端科学に対応するためには、仕方のない措置であるかもしれな
い。常設展示にしてしまえば、更新が予算的にも、内容的にも更新が難しい部分があり、日
本の科学館でも非常に泣きどころになってしまっているのも事実である。ロンドンサイエン
スミュージアムでもウェルカムウィング構想で日進月歩に最先端科学に展示を対応させるた
めに、展示更新を頻繁にできる建物を作るという話しを聞いたが、現状はどうであろうか。
少なくともフランスでは上記の対応であり、日本はかなり遅れてしまっていると言わざるを
得ない。
フランスは単年度予算ではない(3ヵ年程度)ため、日本と比較すると中期的な
計画を持って展示の計画や、特別展、企画展の計画ができるということも聞いた。そのあた
りもかなり日本より恵まれている気がする。
「こどもの国」などは 3-5 歳、5-12 歳に分かれ、予約制として、利用は 2 時間までで、必
ず親子で一緒に展示を体験することになっている。これらは集中力の持続する時間がそうで
あり、親は子に科学的事象を伝えるが、親も子どもから学ぼうという姿勢からである。どち
らにしてもデザインが華やかで、子どもの科学展示室としても素晴らしい印象を受けた。
貸し出しのカッパが可愛い。親子で水遊び学習
立派なワークショップスペースもあり、デザインも美しい
地下にある職業訓練ルームや図書ルームなどが存在し、様々な利用者が利用できることに
なっている。職業訓練の受付、転職・起業などのアドバイスも行うなど、多岐に渡る利用者
のニーズに応えることができるようになっている。
自由研修の日曜日には「発見の宮殿」を訪れた。ここも 10 年前に訪れた時には実験を見せ
るスペースがたくさんあり、科学の基礎を学ぶには良いところだなという印象を受けた。展
示も大幅に替わってはいない。当時もそんなに新しい感じは受けなかったが、頻繁に特別展・
企画展を開催している印象を受けた。我々が訪れたときには「ゴリラ」と「生命の起源」の
を開催していた。
このような実験演示スペースが多数存在
特別展「ゴリラ」の人との骨格比較
フランス・パリ市内に存在している「ラ・ヴィレット」と「発見の宮殿」は、どちらも直
接参加体験型ではありますが、それぞれ館の存在意義に関しては、多少違った方向性を感じ
る。
「パリ自然史博物館」が日本でいうと「国立科学博物館」。
「発見の宮殿」が「科学技術館」。
「ラ・ヴィレット」が「日本科学未来館」といったところでしょうか。それぞれ、
「自然科学・
自然史」。
「産業技術」。
「最先端科学」というように3館での役割分担がなされている。
(来館
者にはその役割の違いが伝わっていないし、伝える必要もない気がしますが・・・。)古くか
ら文部省の管轄で運営されてきた「発見の宮殿」が、学校の教育指導要領に則したカリキュ
ラムに合わせた、科学の基本原理に則したプログラムを志向しているのに対して、文化省と
技術開発省の管轄で運営されている「ラ・ヴィレット」は、科学技術の発展や最先端の科学
技術の情報に重きをおいている印象を受ける。
予算規模やスタッフ数などは明らかに「ラ・ヴィレット」が規模として圧倒している感は
否めない。今回の研修でも本来は「発見の宮殿」も公式訪問館としても候補に上げたが、滞
在時間、日数から判断すると、どちらかを選択することになり、
「ラ・ヴィレット」を選択す
ることになった。フランスも国家として、最新の科学情報を世界に発信するという存在目的
である「ラ・ヴィレット」の方に、多くの予算を投入しているようです。日本でも同様の科
学技術政策がありますが、先端科学の理解増進にもう少し力を注ぐと同時に、予算をつけて
も良いのでは?と思うのは私だけではないはずです。
「ラ・ヴィレット」は、科学館・映像ホール・図書館・職業訓練センター・国際会議場・
博覧会場・音楽ホール・遊技スペース・緑地公園などが年々整備されてきており、パリ市民
の憩いの場所として、これらの施設が一体となることで、市外からも幅広い年齢と階層の来
園者を集めている。それと同時に我々のようなフランス以外の国の日本をはじめ韓国・中国・
中近東・南米等を対象に展示コンサルや展示販売活動を推進し、科学技術展示において国内
はもとより国際的にも指導・助言を行っている。それぞれの館が、独自の活動を推進し、存
在感を示すことで共存は可能であるはずで、国民に対しても日々進歩していく科学技術に対
する多様なニーズに応えるべく、科学技術の理解増進に重要な役割を果たすと思われる。
・オランダ王国編
オランダという国名を聞いて連想するものは?マリファナ。飾り窓。ミッフィー・・・。自
由な国または秩序の乱れた国、何か怖い国・・。人それぞれであろう。私は 2002 年の日韓ワー
ルドカップの開催される前の 2 月にオランダサッカリーグ・エールディビジの観戦に訪れたこ
とがある。諸事情でオランダ滞在の予定が、エジプトまで足をのばすことになり、KLM オラン
ダ航空でカイロから早朝にスキポール国際空港到着した。ホテルの場所をインフォメーション
の若い女性に聞いて、列車で約 15 分アムステルダム中央駅に到着。そのままインフォメーショ
ンで教えてもらった場所へと向かったが、該当するホテルがない。何だよ、オランダ人ってい
い加減。と思った。日曜日の朝はアムステルダムのダム広場周辺でも人通りがほとんど無い。
やっと一人若い男性を見つけ、ホテルの場所を聞いた。すると彼はホテルまで一緒に来てくれ
るという。その間、サッカーの話題で盛り上がった。サッカーの試合はアヤックスのホーム・
アレナでアムステルダムからメトロで 15 分程の場所であった。もちろん彼はアヤックスのサポ
ーターであるという。しかし、私の目的はその対戦相手。つまりアウェー、ロッテルダムのチ
ームであるフェイエノールトである。ご存じ小野伸二が在籍し、チームの中心選手となってい
た時期である。彼は「小野は上手い!きっと彼は日本ではスーパースターだよね!!」と微笑
んでくれた。何だ、オランダ人って優しいな。と先ほどの事などすっかり忘れてしまった。
しかし、そんな思いもすぐに打ち砕かれてしまう。スタジアムの最寄り駅へ到着すると、いき
なり爆音。そして発煙筒が・・・。私の周囲はすべてアヤックスのサポーターだ。改札口を抜
けるとサポーターが騒ぎ出した。何が起きたのか?駅に入線してくる列車を見ると列車の方か
らも何か騒いでいるのが見える。ロッテルダムから来た列車だ。列車からアヤックスのサポー
ターに向かってフェイエのタオルを掲げ、中指を立てて挑発をしている連中が多数。その挑発
に乗るかのように中指を立て返し、相手を罵倒する応援歌を歌うアヤックスサポーター達。う
わー。想像を絶する激しさ。オランダ人って怖いな∼。しかし、これから何が起こるのかとワ
クワクしたことも事実である。もちろんフェイエのユニフォームなどは着れるはずがない。前
置きが長くなったが、オランダの国の人たちはいろいろな顔を持っている。
短いオランダ滞在ではあったが、トランジット
の間にも<NEMO>科学技術センターには立ち寄
った。印象としては対象年齢があまり高くない直
接参加体験型の展示が多い印象を受けた。そうか
と思えば動物や奇形児の胎児の標本などがあった
り、民族の話があったり、そんなに大きな館では
ないが、展示の分野が多岐に渡るものだった。果
たして 5 年が経過してどのように変化しているの
か?以前は実験室がガラス張りになっており、白
衣を着た可愛い子どもたちが印象的で思わず写真 エントランスの前のベルヌーイの定理を利用した展示で遊ぶ池城さん
に納めたことを覚えている。それ以外は記憶も曖昧なので、とりあえず、初めて訪れるような
気持ちで館内を見た。ガイドさんの説明の中に、オランダは薬物や売春などの行為を犯罪であ
るから駄目だと規制しても、水面下で行う人間は必ずいる。そうなるとかえって取り締まりが
できなくなる。従って、ある程度まで規制を緩和し、自己責任、自己判断の下において行動し
なくてはいけない国(どこの国もそうではあるが、特にオランダでは・・・。)である。
そうした国民性が展示に反映しているかといえば、
10 代の真実という展示があり、いわゆる「性教育」
の展示がある。これがいかにも自己責任の国オラン
ダらしい。日本でこのような展示があれば、親は眉
性に関する部屋の外観
をひそめ、文部科学省などに抗議がいくであろう。
ただ、日本でも性の乱れが問題になっている昨今、
ただ、規制するだけで包み隠したがる日本でも、社
会教育施設として、性教育をする必要性にも迫られ
る可能性は出てくるため、一考の余地があるかも知
れないが、やはり、日本では難しいであろう。
体位を人形で解説してある展示
左の写真が以前に子どもたちが白衣を
を
着用して実験を行っていた実験室となっ
いる。このようにどのスペースもあまり
大きくなく、こじんまりとした印象を受
け、子どもたちにとっては指導者の話を
丁度聞きやすいのではないかという印象
を受けた。
展示室内にある実験室で、白衣は貸し出し
ご対応いただいた Mr. Jan Willem Overdijk
事前に送った説明にも丁寧に回答していただきました
NEMO での質疑応答もとても有意義なもので、とてもしっかりと我々の質問にしっかりと回
答していただいた。質疑応答後も館内に残り、ワークショップなどに参加する参加者もいたほ
ど、幅広い年代の来館者が、受け身ではなく、自ら探求することで科学的な思考をできるよう
にするという館のコンセプトを実践していた。私はこの後、すぐ隣りにある海洋博物館に行き、
海洋国オランダの海洋技術の歴史を学んで、動物園にも足を運んだ。何と動物園内にプラネタ
リウムが存在していて新鮮な感じを受けた。プログラムの中身は見ていないが、ここら辺りも
非常にオランダらしい感じを受けた。その他にもオランダには国立博物館(現在改装中 2008
年まで)があり、レンブラントの「夜警」やフェルメールの名画数点が見ることができる他、
ゴッホ美術館なども存在し、美術館が好きな人にも堪らない場所になっている。
9.まとめ
今回の研修の私の考えは、芸術と科学であり、芸術が文化として根付いている街、また街自
体が世界遺産である場所に存在する科学系博物館がどのような活動をしているか。また民族・
宗教の違いによる科学に対する考え方、伝え方はどのように違っているか。などを考えてみた。
これはあくまで私個人の私見であるが、芸術が文化として根付いている街にはしっかりとした
科学が根付いていたということ。街自体が世界遺産である街の景観は、しっかりとした技術者
の指示の元で作られており、基礎的な科学原理をしっかりと理解された背景があるのではない
かということが考えられる。その国が歩んできた歴史的な背景などが展示物に反映されている。
民族・宗教の違いによる科学に対する考え方は、ほとんど違いが感じられなかった。科学を
伝える手法も違いは感じられなかった。共通して言えることは、ものだけをみても感じ取れな
いことが、人を介することにより、より科学が伝わるということ。未来館のコンセプトにもあ
る「ものより人」ということが実感できたということ。
私がとても印象に残っているのがアムステルダムでのこと、ぶっきらぼうであまり感じの良
くない感じのガイドさんが、国立博物館でフェルメールの絵画などの解説を始めた時に、もの
凄く感情移入をして、懇切丁寧な説明をしてくれた。美術に疎い私でも、その絵の作者の背景、
絵画の細かな状況などが読み取れるような解説をしてくれた。本当に絵が好きなんだなという
のが伝わってきた。展示を解説するには、そのもの自体を自分がしっかりと好きになること、
きちんと調べ、知識を深めること。詳しくない人に理解をして貰えるにはどうすれば良いかを
考え、相手をそのものに引き込めるような話し方を極めること。など、書いてしまえば簡単な
ことのようではあるが、そう容易ではないということである。今回公式訪問で訪れた館は以前
すべて展示を見学したが、実際に話を聞いて、違った解釈をしていたところもあった。またよ
り理解が深まるところもあった。見学も大切であるが、話しを聞くことも重要である。最近は
海外の科学館視察研修などをやる意味をあまり感じないという意見も聞くが、そんなことはな
い。単なる見学であれば今の時代だれでもできるのであるが、スタッフの話を聞ける機会は、
連携協の海外研修ならではだと思われる。未来館をはじめとする科学館職員は国内でも海外で
も自身の勤務する以外の館をもっといろいろと見る必要があるのではないか。見て、感じて、
聞くことでいろいろなことも分かってくる部分もあるのではないかと思う。今回の研修を通し
て自分が分かった気になっていただけだということも分かり、より理解を深める、今回の調査
した結果をどう周知させ、どう自身の館の運営他に反映させるかということも重要になってく
ることと思われる。また今回の研修の参加者が集まって、海外研修の成果が研修からかえって
どう反映されているかを話し合う機会を設ける予定である。
今回の研修は紆余曲折があり、途中で面倒になり開催を諦めようと思ったこともあった。し
かし、そこで諦めてしまっては何にも得られなかった。本当に今は行って良かったということ。
今回参加して下さった方々に、楽しくて、有意義な時間を共有させていただいたことに大いに
感謝いたします。またこのような研修を企画し、参加することを許可していただきました上に、
私の不在中に業務他で多大なる迷惑をかけました連携・成果普及グループをはじめとする日本
科学未来館のスタッフの方々にも深く感謝いたします。またこのような有意義な海外科学館調
査研修が開催できるように、私もいろいろと情報を得て、より効果的な研修が行えるように、
また日々精進して参りたいと思う次第です。ぜひ、機会がありましたら、参加していただき、
有意義な時間を共有したいと思いますので、何とぞ宜しくお願い申し上げます。