第8回宇宙開発委員会 議事録 1. 日 時 平成14年2月27日(水)13:58~16:09分 2. 場 所 文部科学省別館11階宇宙開発委員会会議室 3. 議 題 (1) H-IIAロケットの余剰打上げ能力の活用について (2) 民生部品・コンポーネント実証衛星(つばさ)の初期運用段階報告につ いて (3) H-IIAロケット試験機2号機の打上げ結果について (4) 「高度情報通信ネットワーク社会の形成に向けた宇宙通信の在り方に 関する研究 会」最終報告について (5) その他 4. 資 料 委 Space at Surrey ; Micro-Mini-Nano-Satellites for Affordable Access to 8-1-1 Space 委 商業打上げにおけるピギーバック衛星の考え方について 8-1-2 委 8-2 民生部品・コンポーネント実証衛星(つばさ)の初期運用段階報告につ いて 委 8-4 「高度情報通信ネットワーク社会の形成に向けた宇宙通信の在り方に 関する研究会」最終報告のポイント 委 宇宙開発の現状報告 8-5-1 委 第7回宇宙開発委員会議事要旨(案) 8-5-2 5. 出席者 宇宙開発委員会委員長 井口 雅一 宇宙開発委員会委員 川崎 雅弘 〃 栗木 恭一 〃 五代 富文 英国サリー大学教授 サー・マーティン・スウィーティング 株式会社ロケットシステム総務部長 蟹江 良秀 宇宙開発事業団理事 古濱 洋治 〃 三戸 宰 理事 総務省総合通信政策局宇宙通信政策課課長 野津 正明 〃 課長補佐 本間 祐次 研究開発局宇宙政策課長 芝田 政之 〃 北村 武紀 調査国際室係長 6.議事内容 【井口委員長】 それでは、全員お集まりですので、第8回の宇宙開発委員 会を始めます。 本日は、ピギーバック衛星の考え方について、サリー大学のサー・マーティ ン・スウィーティング先生にお話を伺うことにしております。最初に、サー・ス ウィーティング教授のご紹介を簡単にさせていただきます。 先生は、1979年から英国初のマイクロ衛星の開発を開始されまして、現 在までに合計20基の小型衛星を開発し、製造し、打ち上げ及び運用を行っ てこられた、サリー宇宙センターのチームを率いてこられました。 それから、1985年に、衛星技術を学術研究機関から産業界、商業市場 に移転するために、学内企業のサテライト・テクノロジー・リミテッドを設立し、 代表取締役として、110名以上の企業スタッフと、年間売り上げ1,600万ド ルにまで成長した同社に責任を持っておられます。また、2002年の英国王 室新年爵位授与式において、女王陛下からサーの称号を授与されておりま す。 それでは、先生、よろしくお願いします。 【スウィーティング】 どうもありがとうございます。おしりを向けていて、申し わけございません。お許しください。 私のプレゼンを始めさせていただく前に、まず、きょうはご招待いただきま して、このような機会をいただきまして、ありがとうございました。それから、 お部屋を見渡しますと、昔からよく知っているお顔とか、私たちが何をしてい るかということを既によくご存じの方もいらっしゃいますので、もう一度私の 言うことに耳を傾けていただきまして、ありがとうございます。ですが、私たち が実際にイギリスのサリー大学で何をしているか、小型衛星についてどんな ことをしているかということをご存じない方もいらっしゃると思いますので、簡 単に説明させていただきたいと思います。 【井口委員長】 中断してすみませんが、先生のお話を伺う時間が30分とい うことですので、もう直接英語で、我々はそのまま聞かせていただこうと思い ますが……。 【スウィーティング】 わかりました。何か質問がありましたら、そのときにどう ぞ。少し大きめの声で、ゆっくりしゃべることにします。 サリー宇宙センターは、英国の東南部、ロンドン近郊に位置しており、もっ ぱら宇宙研究に特化した施設として、小型のミニ(mini-) 、マイクロ(micro-)、 およびナノ(nano-) 衛星、並びにそれらの応用技術の開発に当たっていま す。また大学としては、宇宙訓練にも力を注いでおり、学問訓練と並んで実 地訓練であるノウハウ移転の分野においても活動を展開しております。とは いえ、残念なことに、英国政府から宇宙技術研究のための資金援助がない ので、サリー大学は、みずからが開発した技術の産業移転を目的として、 1985 年に民生用の分離独立会社(a commercial spin-off company) を設立 しました。したがって、私どもの施設は、通常では見られないような学問活動 と商業活動との相乗効果を有しており、この建物の中には、ざっといって 136 名の専門技術スタッフ、約 40 名の学問スタッフ、そして約 120 名の大 学院生が収容されています。 次に活動領域について簡潔に説明しますと、扱っているのは重量が何トン もの大型の衛星ではありません。ただし実際のところ、必ずしも小型のもの ばかりではなく、時として大型のものもあります。私どもが狙いを定めている 領域は1キログラムから 50 キログラムのミニ、マイクロ、およびナノ衛星で、 過去 21 年間に合計 20 基の衛星を打ち上げました。これらの小型衛星は、 すべてサリー大学外の組織からの資金提供を受けており、こうした活動を支 える資金援助は政府からは一切ありません。上述のように、昨年までの過 去 20 年間に 20 基の衛星を打ち上げましたが、現在は7基が製作中という 状態です。 衛星の設計、組立て、打上げ、さらには打上げ後の衛星の運用まで、その すべてを当該センターで行っています。組織構成をあえて国際的なものにし ているのは、この領域についてのプログラムがごく最近まで英国にはなかっ たからです。本部は英国のサリーに置いているものの、合弁会社(joint venture companies) は北京とワシントン、また代表事務所(representative offices)はトゥールーズとモスクワにそれぞれ置いています。 会社の概要をもう少し詳しく述べますが、学問活動と密接に関係させて学 内企業を運営しているのは、珍しいと言わなければなりません。私どもは私 企業です。つまり政府からの、この場合は英国政府ですが、資金援助を一 切受けない企業です。こうしたことから、私どもの組織は極度に競争的で、 かつ小型衛星という目標に完全に特化しているという特徴を持っているわけ です。 上述のように、企業としての設立が 1985 年、スタッフ数が約 140 名、売上 高は 1,500 万ドル( 今年度は 2,000 万ドルに増加の見通し) 、そして輸出 収益においては1億ドル以上の収益を上げています。現在の注文受入帳の 金額は約 1,500 万ドルですが、最終的な売渡し額は 3,500 万ドルとなる予 定です。会社の株については、95 パーセントを大学が、そして残り5パーセ ントを私自身が保有しています。これが私どもの会社の概要です。 どのような活動かというと、私どもの専門分野はマイクロ衛星だったわけで す。1978 年に活動を開始し、ですからもう 24 年になりますが、低コストのマ イクロ衛星プラットフォームを開発してきました。注文から 12 カ月後に発射 するという考え方に立っています。寿命は非常に長く、実際に私どもが2番 目に打ち上げた衛星は、明日で 18 年目を迎えます。このように手頃な方法 で宇宙へアクセスできるというのが、私どもの根本的な考え方です。 一体的な電子システムを装置に導入しているので、飛行証明済みプラット フォームおよび旧来からの航空電子工学を用いることによって、非常に高速 での応答が可能です。私どもは、1980 年代初期の伝統的なマイクロ衛星に 代わる新しい考え方として、モジュラー設計プロセスを採用しました。その結 果、新しい技術および新しいペイロードに対して直ちに対応することができ ます。 小型衛星の設計や組立ての費用を安価に抑えようする場合に重要なこと は、打上げについても費用を掛けないということです。これらの衛星を、以下 に示すロケットの二次ペイロードとして打ち上げてきました。すなわち米国の デルタ(Delta) 、欧州のアリアン(Ariane)、および旧ソ連のツィクロン (Tsyklon) 、ゼニット(Zenit) 、ドニエプル(Dnepr) 、コスモス(Cosmos)という ロケット、また最近では再び米国のアテナ(Athena)ロケットですが、これらは、 飛行任務において二次ペイロードとして小型衛星を用いるという、10 本の民 生用の打上げ業務契約の中に含まれているものです。 一例を申し上げましょう。マイクロ衛星がここにあって、リング上に取り付け られています。アリアン・ロケットのリングでは、小型衛星は主衛星の真下に 収容されています。主衛星が軌道に射出される場合、ペイロードは予備ス ペースに保持されていますが、それらは二次活動を行うために射出されま す。しかし、ロシアのロケットの場合は違っていて、ロケットはここで、宇宙飛 行体はここです。ロシアの衛星は非常に頑丈な造りなので、母船としての宇 宙飛行体に衛星を直接取り付けることが可能です。2つの衛星が軌道に押 し出された後に、マイクロ衛星は母船の宇宙飛行体から押し出されます。 打上げ後のコストをできるだけ抑制するよう努めています。衛星は 1 時間 半で地球を1周しますが、宇宙センターの追跡ステーションは1日におよそ 150 の通過を観測しています。しかしながら、飛行制御ステーションはこの ようになっていて、これを見て多くの訪問者ががっかりします。通常は高度 に自動化されているため人員は配置されていないからです。実際のところ、 軌道上の 14 の衛星の運用を、たった1人の担当者で行っているわけで、他 の監視活動についてはすべて自動化されています。例えば、軌道上にある 衛星の概要がここにありますが、英国上空を通過する際に私どもはこれら の衛星と交信するわけです。 衛星は、電子メールおよび別の種類の蓄積交換(store and forward) の通 信技術を備えた遠隔地と、特定の用途に基づいた通信を行っています。私 どもは、搭載コンピュータを使って、マップの作成ないし無線通信トラフィック の監視を行うことができます。ここに見えるように黄色は活発に動き、青色 は動いていませんが、これらを使って活動マップを作成することができます。 通信に関するプランニングやサーベイランスも、これに基づいて行われます。 私どもは、軍事目的の衛星も数多く組み立ててきました。2基のマイクロ衛 星のうち、1基はフランス用、具体的にはフランス国防省用であり、もう1基 は、昨年打ち上げた米国用の衛星です。後者は研究技術実験のための衛 星であり、米国のアテナ・ロケットの二次ペイロードとして打ち上げられたも のです。飛行目的は操作および軍事研究のためであり、打上げは成功でし た。 自動制御を行う場合に大事なのは、宇宙空間の気象状況、とりわけ宇宙 放射線環境を理解することです。太陽の活動が穏やかなときは、地球を取 り巻く放射線帯( 訳注;ヴァン・アレン帯) はこのようになり、また太陽の活 動が活発なときは、放射線帯はこのようになります。後者の場合には、影響 を受けてコンピュータの状態に狂いが生じて、位置計算ができなくなったりし ます。 私どもは、小型衛星を通じた経験を、多くの宇宙開発における発展途上国 に付与しており、それによって最近ではシンガポール、マレーシア、中国、そ して現在ではアルジェリア、トルコ、ナイジェリアが宇宙への第一歩を踏み出 しています。学問訓練および実地訓練の両方を組み合わせたプログラムを 実施しており、その範囲は、ミッションの分析から、打上げおよび衛星やペイ ロード等の運用にまで及んでいます。チリ空軍のチームは私どもの下で2年 間の訓練を受けました。そして、その過程で自分たちの衛星を組み立て、チ リに帰国後は宇宙関係の国立機関を創設しています。これは完全なノウハ ウ移転の例で、この中には単なる工学的技術だけではなく、管理的技術つ まり約 15 カ月間の構成部品の詳細やソフトウェアも含まれています。これら を持ち帰り、チリ空軍のチームはみずからの衛星を開発しました。 中国において、私どもは、学問研究を含む 25 年間という期限限定の合弁 会社を設立しました。この会社は我が国の首相の支援に基づいて設立され たもので、ここで中国最初のマイクロ衛星の設計および組立てを行い、2000 年6月に打上げを行いました。現在この会社では、私どもと共同で中国科学 技術委員会用の衛星を組み立てています。 マイクロ衛星のほかに、それより大型のミニ衛星を私どもは有しています。 この衛星の重量は 300 キログラムでペイロードも大きくなります。女王陛下 がこれを視察に来られたことがありました。残念ながら、私どもは陛下の帽 子をお取りすることはできませんでしたが、コートはお取りすることができま した。 この衛星を使って、新しい能力を開発するために地球監視や地上交信を 行っていますが、これに掛かる資金はすべて会社が負担したもので、政府 からの資金は全く含まれていません。打上げの費用を安価に抑えるために、 ロシアの大陸間弾道弾を転用しています。つまり、ここに6つの弾頭があり ますが、これを除去してその上部に私どもの衛星を載せました。ここに見え るのが、旧ソ連のサイロから出ているミサイル発射台で、ミサイルは圧縮ガ スで射出され、地上約 40 メートルに達したところでエンジンがスタートします。 発射されたものが軌道に入っていくのが見えますね。これがミニ衛星専用の 発射台ですが、それ以降、このミサイルで我々自身および他国用の4基の マイクロ衛星を打ち上げました。非常に能力の高いミサイルで、161 回の打 上げでそのすべてに成功しました。ここに見えるミサイルは 1977 年の製造 で、燃料を満タンにして打上げ準備完了の状態を保っていました。 ミニ衛星用の衛星プラットフォームは、軌道上での衛星の操作能力も含め て、より大きなペイロードの搭載を可能するため、マイクロ衛星の航空電子 工学を使っています。地球画像カメラを搭載していますが、それらはすべて 民生用の既製の構成部品から成っていますが、その理由はミッションのコス ト低減のためです。このマイクロ衛星の打上げの総コストは、ここに見える 地球監視カメラを含めて 1,000 万米ドルでした。改良赤外線を使って 32 メー トル解像のマルチスペクトル画像が可能です。ロンドンを訪れたことのある 人ならわかるでしょうが、テムズ川のほとりにミレニアム・ドームがあります。 改良赤外線のほかに別の6つの帯域を使うことで、点在しているスポット宇 宙飛行体に匹敵するマルチスペクトル画像を得ることができます。32 メート ル解像とはどのようなものか、農業について見てみますと、例えば、ここに 見えるように、ポルトガルのリスボン付近の田畑で収穫を始めている光景が 判別できるわけです。 南米に目を転じると、ジャングル内部まで見えます。例えば、森林伐採の 様子や、ジャングル深部で栽培している不法作物の様子を監視することが できます。加えて、10 メートル解像の全色感光の画像装置を使えば、これも 先ほどと同様、サリー大学で開発した民生用の既製カメラを使っていますが、 非常に小さなコストで高解像の画像を得ることができます。こうした画像は、 5年前にはスポット衛星や類似衛星によってしか得られなかった画像レベル です。コストも 100 分の1になっています。 もちろん日本を見ることもできます。ここに大阪が見えますが、マルチスペ クトル・データが鮮明でないのは、この地区が完成された都会であるという 理由によります。がしかし、全色感光データを使えば、港外の船舶まではっ きり見えます。今のところ、こうした画像の質は、より大きなミッションの際に 使われる画像の質ほど良好ではありませんが、それに掛かるコストは 100 分の1で済みます。これによっても、小型衛星の能力が了解できると思いま す。 アムステルダムのスキポール空港を見てください、マルチスペクトル・デー タと全色感光データを組み合わせることで、その自動車道の交通の流れを とらえることができます。ここでも私どもの小型衛星の能力がおわかりでしょ う。9月 11 日のテロ事件についても、私どもは被災地の状況を独自に把握 していました。 小型衛星が最も大きな影響を与えるのは、どのような分野でしょうか。コン ステレーション(constellation; 組織的な配置) がそうだと私どもは考えてい ます。その理由は、衛星へのアクセスを増やしたいということであれば、衛 星の数を今よりも増やすことが必要であり、安価なコストとすることが必要だ からです。 最初のコンステレーションは、毎日 32 メートル、26 メートル、12 メートル、 および4メートルの画像を提供する7カ国の共同作業による高能力かつ機 敏なシステムということになります。それを使えば、被災地に対して返送画 像を迅速に与えることができます。例えば、ここに見えるようにカンボジアの 洪水にしても、あるいは地震による損傷にしても、高解像の全色感光データ を使って被災地の様子を監視することができます。こうした画像は、24 時間 以内にコンステレーションによって私どもの下には届きます。7カ国の共同 作業というのは全く新しい試みで、それぞれの国が各衛星を所有しているも のの、操作は共同で行います。かくして、災害監視および救済のための使 い勝手のよいコンステレーションを、私どもは初めて手に入れることができ、 7カ国でコンソーシアム(consortium;共同組織) を形成しコンステレーション の管理に当たるわけです。最初の衛星は今年9月に打ち上げる予定です。 このことは、民生用の地球監視コンステレーションへの道を開きました。私 どもは、ドイツと共同で農業データについての類似システムの開発作業に当 たっていますが、このシステムを使えば、6メートルの解像度でヨーロッパ全 体を網羅することができます。以上のことから、小型衛星がいかに開発途上 にあるかが理解できると思います。 現在、英国国防省(MOD) のための高解像度で高性能のマイクロ衛星の 作業に当たっていますが、これは 2.5 メートル解像の全色感光画像を提供し、 実際に操作する人間が直接に制御できるもので、そのコストは 2,000 万米ド ル以下というものです。このことは、地球監視の能力において劇的な変化が 生じたことを示しています。地球監視に限定するのではなく、この小型衛星 は、例えば西アフリカの VSAT 端末装置と交信するといった、対地静止 (geostationary) 通信を行うミニ衛星用として開発中です。現在、サリー宇宙 センターで製造しており、2004 年にプロトン・ロケットで打ち上げ予定です。 最も小さな尺度を有しているのがナノ衛星です。これは本当に小さい飛行 体で、その重量は5~6キログラムしかありません。ここにあるのが完全な 形ですが、3軸の制御、通信、GPS 航法、および推進力を持っており、また 地球画像探査カメラを装備しています。これは、鉛筆一本のサイズで衛星を 動かすロケット・モーターです。搭載モジュールはまさに組み替え式で組み 立てられます。ここにあるのがその衛星で、指がこのぐらいですから、その 大きさがおわかりだと思います。 この衛星は既に打ち上げられ軌道上にありますが、最初に行ったのはロ シアの衛星の観察です。地球画像カメラを使って、軌道上でロシアの衛星の 写真を1枚撮っています。ここに見えるのは、私どもの衛星のカメラ側のアン テナです。 私どもは非常に興味深い実験をしましたが、そのことから軌道上で衛星を 操作できることがわかりました。推進システムを使って衛星を上昇や下降さ せ、さらには中国の衛星とランデヴーさせたりしました。つまり、これらの小 型衛星で軌道上での観測を十分に行えるということです。私どもが、非常に 低コストの推進システム、ハイブリッド・モーター、二元推進(bi-propeller)モ ーター、および電気的レジストジェット(resisto-jet) 推進力を開発しなければ ならないのは、これらの小型衛星を宇宙の深部まで飛ばすことを考えている からです。衛星を地球から離して月の軌道上に載せる予定ですが、これは 大きな挑戦です。そのためには、惑星間でのミッションを完遂する低コストの プラットフォームといった、効果的な新製品の開発が必要です。そうなれば、 宇宙科学者はより多くの実験を行うことができ、また低コストの分だけ、より 革新的な科学面でのペイロードを刺激することにもなります。最初の任務は 月面の調査となるでしょう。 私どもは、重量が約1キログラムから 50 キログラムまでの範囲の小型衛 星、つまり強化型のマイクロ衛星およびミニ衛星を持っていますが、これら の衛星は、宇宙空間においてまさに一つの革命を引き起こしています。その 活動はすべて NASA( 米国航空宇宙局) のカタログに載っています。ナノ衛 星の用途は、軌道上での衛星の観察にあると考えていますが、マイクロ衛 星は地球画像の能力を高め、またミニ衛星は1メートル解像の全色感光画 像とともにペイロードの増加を可能にしています。 私どもは、すべての組織を対象とするプラットフォームに基づいて衛星のミ ッションの範囲を広げてきました。プラットフォーム上で展開されたものもあ るし、また拡張されたものもあります。例えば、2つのペイロードを一群として 運搬するもの、これは ESA(欧州宇宙機関) による水星へのミッションでした。 要するに、小型衛星は、その能力が過去数年間で飛躍的に向上したおか げで、今ではより馴染みのあるものになってきています。独自の市場を生み 出していて、あたかも宇宙開発におけるパーソナル・コンピュータのようにな っています。小型衛星が完全に大型衛星に置き代わることはないでしょうが、 それでも、従来まで大型衛星が占めていた市場を徐々に浸食しています。 これらの衛星によって、地球上で活用する民生用の先進的技術を開発す ることができます。新しい技術が、軍事的ハイテクの分野というより、むしろ レジャー市場や国内市場に対応して急速に開発されています。私どもはこ れらの技術を使用して、市場での優位性を得ようと思っています。 私どもは、衛星の価格を 20 分の1に抑えて、その打上げの成功率を 80 パ ーセントとすることを狙っています。ただし、ここは関心のあるところでしょう が、リスクを大幅に増加させないようにします。これまでの飛行任務の成功 率は全体として 90 パーセントですが、これをさらに高めようとすれば当然、 価格も上昇します。興味深い事実として申し上げると、80 パーセントを超え ようとすれば価格は急速に上昇します。 大事なのは、打上げ計画から衛星を軌道に載せるまでのしっかりとした運 営スケジュールを立てること、そして宇宙参入への敷居を低くすることです。 小型衛星は、コンステレーションにおいて、これまで述べてきたような有利さ を持っており、以前であれば独力で宇宙にアクセスできるのは6カ国しかな かったわけですが、現在では、それ以外の多くの小規模国に対して自立的 な宇宙へのアクセス能力を与えています。これは大きな変化であって、個別 ユーザーは、国家目的であれ商業目的であれ、手頃な形で宇宙へアクセス することができます。飛行任務は、特定の条件に応じて容易にカスタマイズ されていて、それによって、以前であれば実行可能ではあっても費用が高額 であったミッションに対して、実用的な解決を得ることができます。小型衛星 は、全く新しいビジネスチャンスを数多く生み出しており、また新しい技術や 新しい思考に刺激を与えています。さらにいえば、私どもが、これまで述べ たような任務をいかに効率的な方法で管理していくのか、これも大きな変化 といえるでしょう。 皆さん、どうもありがとうございました。活動のあらましについて約 30 分に わたってお話ししましたが、およそはおわかりいただけたと思います。 【井口委員長】 どうもありがとうございました。大変魅力的というよりは、刺 激的なお話に、エキサイトしております。 少し時間をいただいて、質問をさせていただきたいと思います。 【五代委員】 私も、実は2カ月前に、スウィーティング教授のサリー大学並 びにその企業を見ました。すべての施設も拝見し、話も聞きました。イギリス まで行かなくても、そういう組織や設備を日本の大勢の方に今日ここで聞い ていただけたということは非常に重要だと思っています。 まず、数十から数百キログラムぐらいの衛星というのは、いろんなことがで きるということ。それから、もう一つ、コンステレーション、複数の衛星を有機 的に活用するということが非常に宇宙活動を盛んにするという、この2つに 私は非常に感激しました。そしてそれを実行されたということが重要だと思っ ています。 それで、伺いたいのは、世の中に最高級の大型衛星もあるわけですが、 それと比べたときに、こういうスモールサットという小型衛星は、性能的に言 うと何%ぐらいのところまでカバーできるのか。それと同時に、一体何%ぐら いのお金で実現できるのかという、そういう大体の目安を教えていただけれ ばと思うんですが。 【スウィーティング】 難しい質問ですね。それは、宇宙へのアプローチの重 要なポイントだと思います。宇宙へのアプローチには2通りあります。一つは、 特定の目的を達成するため、それに必要なだけの資金を投入するというも の、もう一つは、投入できる資金量を決め、それによって何を達成しようとす るのかを決めるというもので、これらは根本的に異なっている方法です。ま ず最初の方法では、重要であるのは成果だけであって、資金の問題は二の 次です。私どもが作業に当たっている分野とは正反対の方向で、私ならこう 言いたいですね、「限られた資金しか持ち合わせていない。達成できる最大 のものは何であるか」、そして「その最大のものは、実際に発注者が欲して いるものに対してどれだけ近づいているか」と。 既に何度か述べたように、私どもが達成できているのは、発注者が欲して いるものの 80 パーセント、コストの 20 パーセントに相当する部分です。発注 者はこう言うかもしれません、「いや、80 パーセントでは十分ではない。望ん でいるものの 95 パーセントは達成してもらいたいものだ」と。一般的にはそ れは可能ですが、コストも 95 パーセントとなります。それは、個別のケース によっていくぶん異なってくるので、おおまかな指針ということです。 重要なポイントは、前にも言ったように、現時点での技術進歩というのは、 ハイテク分野で起こっているのではなく、まさにハイテク分野は過去 20 年間 には軍事その他の活動によって進められてきたわけですが、今や消費者主 導の部分で起こっているということです。技術を進歩させる力は、スポット3 衛星よりもプレイステーションの方にあるわけです。ですから、プレイステー ションを活用することが大事です。つまり、すべてを再考案するのではなく、 これまでのさまざまな国内製品の開発によって蓄積されてきた技術を活用し、 それを宇宙向けに改良することが大事なのです。その場合には、いくらか特 別に手を加えたりすることも必要となるでしょう。これが私の回答ですが、お わかりいただけたでしょうか。 【川崎委員】 先ほど言われたミッションについてもっとお聞きしたいのです が、20 基の衛星の中では、どのようなタイプのミッションが一番多いのです か。通信ですか、それとも軍事目的ですか、あるいは別の……。 【スウィーティング】 それぞれ混ざっていますね。それを説明するには、関 連の図を見ていただく方が一番早いと思います。手短かに説明します。 まず最初の 10 年間は、他の何よりも通信に集中していました。通信は技 術進歩によって推進されていたわけです。この 10 年間にどのような衛星が あったかを具体的に見てみますと、最初の2個は研究衛星です。次の3個 は欧州宇宙機関のペイロードを運んでいます。そして順に列記すると、韓国、 フランス宇宙局、米国、再び韓国、ポルトガル、フランス軍、チリ空軍、タイ ( これはミニ衛星で研究用です) 、フランス軍となります。さらに、これはチリ 用の研究衛星です。そしてマレーシア、米空軍用です。 私どもは現在、全体で約 35 台の地球監視カメラを飛ばしていますが、ここ からここまではもっぱら初期の通信用です。それ以降は地球監視の方にも 力を注いできましたが、その理由は、国内カメラ製品の発達によって、つまり 電子カメラということですが、高品質の画像を提供することができるようにな ったからです。1990 年代初期には、こうした技術はまだ成熟していませんで した。 【川崎委員】 顧客は、時には外国政府であったり外国の民間企業であった り、あるいはまた、もちろん国内企業であったりしたわけですね。 【スウィーティング】 そうです。さまざまな顧客がいます。純粋な民間企業は 少なく、その多くは、軍事関連であれ科学関連であれ、政府等が資金を出し ている外国の公的機関です。そして、軍事目的以外の飛行任務については、 民間資金も構成要素として入っているところがほとんどです。 【川崎委員】 最後の質問ですが、ミニ衛星の目的は、例えば、特定の機能 について宇宙で実証実験をすることですか、それとも、宇宙活動における新 しい研究開発の将来的な方向を示しているものですか。 【スウィーティング】 両方です。その最もよい例が地球監視です。今ここに 示した画像は2年前の飛行時のものですが、今年打ち上げる飛行では画像 はずっとよくなります。このデータを、現在の地球監視システムのデータと比 べてください。衛星のコストは 20 分の1から 50 分の1ぐらい違っています。 これは何を意味しているかというと、今では個々の小規模国でも独自の地 球監視衛星を打ち上げることが可能になったわけで、センサーを調整すれ ば、砂漠地域でもジャングル地域でも、あるいはその他の地域でも、衛星か ら見通すことができます。これが5年前に出現したアプリケーションです。 もう一方の側面は、研究用に使っているということです。先ほどの講演で は 30 分という時間の制限があったので、これには触れませんでしたが、例 えば、私どもはクレジットカードほどのサイズの衛星について研究していま す。これは、雲の中でも整合性のとれた通信を行い、一つの大きな衛星を 効果的に形成します。この研究プログラムは現在進行中で、ほぼ2年後に は最初のプロトタイプができ上がります。これは、衛星が一つもない場合や 雲が多い場合を見据えて研究しているものです。 【川崎委員】 ありがとうございました。研究成果に大変驚いています。 【栗木委員】 あなた方の活動が、それは大変に優れた特徴を持っています が、全くの民間資金で運営されていることがわかりました。その意味で、将 来的に政府との関係はどのようなものになるのか知りたいですね。衛星を 打ち上げる場合、第三者に対して信頼性という問題が出てくると思いますが、 その信頼性を担保するのは、打上げ者なのですか、それとも国家なのです か。 【スウィーティング】 いろいろと興味深いことがありました。私どもが英国で 最初の2基の衛星、すなわち 号と 号を打ち上げたとき、政府は民間組 織が衛星を打ち上げるなどと夢にも思っていなかったわけです。もちろん、 それについての法律も全然ありません。2つ目を打ち上げ、さらにもっと打ち 上げる予定があることを彼らが知ったとき、議会で法制定をめぐっての議論 があり、ついにはアウター・スペース・ロー・アクト(Outer Space Law Act; 宇 宙空間法) が制定されました。これは何を意味しているかというと、打ち上 げ者である私どもには、すべての打上げ者についてそうですが、政府に対し て打上げを通知する責任があること、そして政府は私どもにその許可を与え るということです。許可を得るには、私どもは、第三者責任保証によって宇 宙飛行体の打上げが担保されていることを示す必要があります。そこで、国 連にもジュネーブの規制機関などにも十分な形で通知しましたが、唯一の 難しい条件は、私ども自身あるいは顧客、そのいずれかが適切な第三者責 任保証を得ていることを、私どもが示さなければならないということでした。 最初の質問に戻りますが、活動は昨年までは完全に英国外の資金によっ て行われていました。昨年になって初めて、英国はこの活動にいくらかの資 金を出すことを決めたわけです。それも 50 パーセントだけなので、残り 50 パ ーセントについてはどこからか求めなければなりません。例えば、今私ども がナイジェリア、アルジェリア、英国国防省と一緒に進めているプロジェクト には、英国国防省が 50 パーセント出資しています。したがって、残りの 50 パーセントの資金拠出先を探さなければなりません。これは昨年の話です が、こんなことは初めてです。 【井口委員長】 先生のところは、こういうイメージを売って商売、ビジネスを する。つまり、宇宙で得られた情報を利用することによるビジネスというほう はあまり多くないんですか。 【スウィーティング】 それはビジネスの主たる目的ではありません。公的資 金に頼らずに、しかも目的を絞ってやってきましたが、それが私どもが完全 な宇宙での能力を発展させることができた理由です。今までは、地球監視デ ータを商業的に売り出してはきませんでした。7カ国で災害監視コンステレ ーションについてのコンソーシアムを形成しましたが、これによって参加国は 災害に関するデータを利用できるようになります。幸いなことに、災害は毎 日、世界のどこかで起こっているわけではありませんが、24 時間以内に災 害の画像を手に入れるようにしたいと思っています。 しかし、これとても衛星の能力の5パーセントにしかすぎません。他の 20 パ ーセントぐらいは国家規模の地図作成として、また残りのパーセンテージは、 それら7カ国すべての商業市場において、規定された合意に基づいて活用 されています。コンステレーションの主たる動機は災害を監視することです が、第二の目的としてはデータの商業的活用の方途を探ることです。ドイツ のために行われる次のミッションは、純然たる商業目的です。ドイツ政府お よびドイツ民間企業が資金を出し、ドイツでの農業に関する業務データを提 供することになっています。このように全くの商業的な取り組みです。 【井口委員長】 もう一つ伺いたいんですが、我々は、世界でピギーバック衛 星という、何か制度というか、カテゴリーがあって、ピギーバック衛星という のは、例えば学生がつくった、非常に安いサテライトを簡単に打ち上げると か、しかもロケットのほうは非常にディスカウントして打ち上げてくれるという ような制度があるような気がしていたんですが、先生の今のお話を伺うと、 先生のは別に今言ったようなピギーバック衛星と呼ぶ必要もないし、先生は スモールサテライトというような言い方をしておられたし、例えばいろんな国 のロケットで打ち上げる傾向がありますが、そういうロケットにはピギーバッ ク衛星という特別なカテゴリーの打ち上げ制度というか、そういうものはある んでしょうか。 【スウィーティング】 NASA と特別の関係があった最初の2つの衛星以外は すべて、個別かつ手製の打ち上げです。それ以後のアリアンでの打ち上げ は、すべて標準的な商業契約でした。現在では少し変わってきましたが、当 時はこれらの衛星を6つまでリング上に据えることができたわけで、そのリン グのコストはほぼ 100 万ドルでした。そこで2個や6個に分割するなどして、 多くの衛星を載せるという単純なものでした。 商業契約もありましたが、それは基本的に大型衛星のものと同じ契約内 容です。同じような契約にサインし、同じような利益を与えなければならなか ったわけです。アリアン・スペース社は私どもを重要な取引先とみなしており、 応分の責任を負うことを明確に求めています。彼らはそれぞれの責任の部 分を注視しています。これは完全な商業契約であって、学生割引などという ものはありません。実際のところ、こうしたアリアン・スペース社の方針は、 彼らの心から出たものではなくて、彼らの頭から出たものだと私は考えてい ます。というのは、アリアン・スペース社は、小型衛星を現在組み立てている 国は、10 年後には大型衛星を組み立てる国になると見ているからです。そ れらの国が打上げの巨大な存在になったときに、アリアン・スペース社のマ イクロ衛星のような位置に導き入れることで、当該国が同社に戻ってくること を考えているわけです。これが市場プロセスというものです。同社は、当該 国を学生か何かのように甘やかしているのではなくて、取引相手として見て います。ロシアについても全く同様です。つまりキログラムごとの支払いにな ります。 【井口委員長】 NASA についてはどうですか。 【スウィーティング】 NASA は、この種の宇宙能力を開発してきてはいませ ん。それが、1981 年に最初の2つの衛星を NASA と共同で打ち上げた理由 ですが、あれから 20 年後の昨年に、再び私どもが NASA と共同で打ち上げ たのは、軍事的ペイロードという理由からです。NASA は、米国以外では打 ち上げることはできなかったのです。その際に、NASA の衛星を使わなかっ たのは、それらが5倍のコストと非常に高価であり、また打ち上げの時間調 節という点で非常に緩慢で信頼性に欠けていたからです。 例えば、7つのマイクロ衛星のミッションは5年間遅れました。1年で設計し 組み立てなければならないとすれば、それでは間に合いません。したがって、 米国の打上げ市場は二次的かつ小規模なので、私どもには全く魅力があり ません。先ほどの質問では、ピギーバック衛星という考え方ではなく、小型 衛星という考え方であるのかどうかを言っておられました。ロシアのミサイル を見てみれば、それは必ずしもピギーバックではなく、1つのクラスターとし て小さなペイロードを6つ持っています。そしてピギーバックは必ずしも安価 であるとは限らないのです。高価でないかもしれないけれども、かといって 必ずしも安価であるとは言えません。 【井口委員長】 ほかに、いかがですか。 【川崎委員】 1つ、今メンションされた中で、Outer Space Law というのをちょ っとおっしゃったと思うんですが、Outer Space Law の全体像について、何か 資料は、どこで入手できるか教えていただければありがたいんですが。 【スウィーティング】 わかりました。2つあります。1つは国連の宇宙条約 (Outer Space Treaty)で、資料は広範に利用できます。もう1つは英国の国 内法(U.K. law)で、英国の責任において衛星の打上げを管轄しています。 【川崎委員】 私が興味があるのは英国の国内法の方ですが。 【スウィーティング】 それは英国宇宙センター(British National Space Center) から資料を入手できます。お望みであれば、公共情報ですから、私 は喜んで提供を受けるべく連絡して差し上げます。 【川崎委員】 ありがとうございます。 【井口委員長】 ほかは、よろしいですか。 【五代委員】 1つだけ。これからの予測ですけれども、主に小型衛星でしょ うけれども、コンステレーション技術というもののこれからの発展、応用性に ついて伺いたいんですが、どのようにお考えでしょうか。 【スウィーティング】 現時点で私どもが研究の重点としているのは、非常に 小さな衛星を別にして、編隊飛行(formation flying)に関するものです。小型 衛星が万能というわけではありませんが、それがこの衛星の利点です。もし、 直接家庭向け放送を行うとかハッブル型(Hubble-type) 望遠鏡で宇宙深部 画像を見るといったように、大きな開口部が必要であるならば、大型衛星を 使わなければなりません。しかし、質問者が言われたような用途であれば、 小型衛星の方が有利です。低コストということは、数多くの衛星を持つことが 可能だということです。地球監視にとってもまた通信の提供にとっても有利 であるし、同一地域の上空通過までの期間も短縮できます。 私どもが重点的に取り組んでいるのは、衛星の能力向上、コンステレーシ ョンの低コスト化、連続的に地球監視を行うための多くの衛星の編隊飛行で す。今後、非常に小さなピコ衛星(picosatellites)が開発されるようになると、 編隊飛行技術が必要になるでしょう。開口部の散在的な配列の場合には、 非常に精確な位置取り(positioning) と方向取り(pointing)の能力が必要にな ります。この種の編隊飛行が今、非常に求められています。 【井口委員長】 ほかはよろしいですか。 それでは、ほんとうに刺激的なお話をありがとうございました。我々は、日 本こそが小さくて、安くて、しかも性能のいい、機能の高いものをつくるのが 得意だと思っていましたら、もうその考えも変えなければいけないかというよ うな、非常にショックを受けました。ほんとうにきょうは大変貴重なお話をあり がとうございました。 【スウィーティング】 お招きいただき、お話しする機会を与えてくださって、あ りがとうございます。最後にこれだけは言いたいのですが、過去 20 年の経 験から申しますと、政府が私どもに対してなすべきことの中で最も大事なこ とは、資金援助をしないということです。これはちょっと普通ではないように 聞こえると思いますし、私どもはスタートした直後には政府に資金援助をし てもらいたいとも思いました。しかし、そうはせずに何とかサバイバルの方途 を探ったわけです。つまり、一生懸命に革新的なアプローチを模索しなけれ ばならないということです。今まで言おうか言うまいか躊躇していましたが、 このことは学ぶところの多い教訓だと思います。 【井口委員長】 それこそ一番重要なコメント、きょうのお話だったと思います。 産業界の人たちにそのまま伝えたいと思います。 【川崎委員】 あなた方には資金面での有能さがあったからでしょうね。 【スウィーティング】 私は、今回は産業界の人たちに会わないで、すぐに帰 国しようと思っています。別の観点から申し上げますと、私どもが 90 パーセ ントの成功率を持っていることは言及に値すると思います。ということは、逆 にいうと 10 パーセントの失敗率があるわけです。失敗するのはどんなときで も愉快なものではありませんが、重要なのは、100 パーセントの成功率であ れば、もう学ぶ必要がないということです。失敗をするたびに、もっと多くを 学び、もっと早くに学ぶことが必要なわけで、それが結果として技術を進歩さ せることになります。 実際には 10 パーセントの失敗率というのは、おそらく素晴らしい数字でしょ うが、それがなければ進歩はありません。宇宙は非常に苛酷な環境であっ て、時として問題が生じるのは避けられません。それが私どもの技術を加速 させるのであって、目標レベルが低かったり常時 100 パーセントの成功率 であれば、技術進歩はありません。技術を進展させるときにはトラブルはつ きもの、これは当たり前の話です。 【井口委員長】 日本の場合、トラブルのかなり多くが、半分以上が、いわゆ るヒューマンエラーということなんですが、その10%のエラーというのは、や っぱりそういったたぐいのものですか。 【スウィーティング】 問題点は2つありますが、簡単に説明します。1つは、 科学についての不適切な知識と分析のために起こるものです。私どもが2 基の衛星を打ち上げて、その1基にスイッチを入れたとき、すべてのガスが 放出せずに、送信機が白熱電球に変わったので、その衛星を放棄しました。 もう1基の衛星は2日後に作動して回復しました。もう2日待てば、すべて回 復したかもしれません。これを教訓として、私どもは新しい型に設計変更し ましたが、これは科学的知識の問題です。 2つ目は、このような宇宙飛行体を、必ずしも同一の衛星ではなく類似の 衛星という意味ですが、どこに配置するかという問題です。私どもの衛星は、 打上げ後の3カ月間はロシアの衛星の傍に置かれていましたが、そのとき 爆発ボルトの供給について連絡ミスがあることがわかりました。私どもは、 彼らが爆発ボルトの供給を連絡していると思っていたのに対して、彼らは、 私どもがそうしていると思っていたのです。いくぶん混乱していました。結局、 私どもが「オーケー、それはこっちでやります」と言って、ボルトの供給を行っ たわけですが、私どもとしても、これらのボルトを点火させる衛星の能力に ついて十分な理解に欠けていたということです。 テストを1回行って、うまく作動することを確認しました。しかし、問題が縁 にあることに気づきませんでした。5回テストすれば、おそらく発見できたで しょう。5回必要なうち2回は行ったけれども、3回まではやっていなかったの です。そして、そのまま打ち上げた結果、衛星が分離せずにくっ付いたまま の状態になりました。原因は、衛星の縁があまりに狭かったからですが、こ れは何が問題かというと、もっぱらヒューマン・インターフェースの問題という ことになります。 【川崎委員】 それらは互いに愛し合っているのですね。 【スウィーティング】 そうです。それらは今でも一緒のままです。たぶん結婚 したのでしょうね。 【井口委員長】 どうもありがとうございました。 それでは次に、同じ商業打上げにおけるピギーバック衛星の考え方につ いて、株式会社ロケットシステムの取締役総務部長蟹江さんにお話を伺い ます。 【蟹江】 それでは、お手元に資料を用意してありますので、この資料に基づ いてお話ししていきたいと思います。タイトルが「商業打上げにおけるピギー バック衛星の考え方」ということで、いかにも一般的な名称になっております けれども、これはロケットシステムがいわゆる一般の商業衛星を打ち上げる と同時にピギーバックを打ち上げる際の考え方についてということについて まとめてございます。 かつ内容は、基本的な考え方というのをお示ししているにとどめておりまし て、実際にそのピギーバックを打ち上げるに際しては、いろいろ契約の問題、 あるいは技術的なインターフェースの問題、あるいは保険の問題と、具体的 なお客さんとの折衝が出てまいりました。その部分については、その都度、 ネゴシエーションという形でやらざるを得ないということでございますので、 御了解いただきたいと思います。 目次はちょっとスキップしていただいて、いきなり内容に入りたいと思いま す。 まず、ピギーバック衛星の基本的な定義ということで、ちょっと簡単にまと めてございます。ここでは、ペイロード搭載率、いわゆるロードファクター、い わゆるロケットの最大打上げ能力に対するペイロードの重量に余裕があっ て、かつスペース的に余裕があるという場合にフェアリングの片隅に搭載す るペイロードであるというふうに考えました。そのままこのピギーを載せない ならば、その打上げ能力そのものが捨てられてしまう、いわゆるむだになる というものを有効に活用する、そういった衛星を打ち上げるというのをピギー バック衛星というふうに解釈しております。 それで、次の3ページ目でございますが、しからばこのピギーバック衛星の 打上げの際の基本的な考え方はどうかということでございますけれども、私 どもといたしましては、商業衛星打上げと同時に、ピギーバック衛星を打ち 上げることを拒むものではありません。拒むものではないという否定的な表 現になっているのですけれども、これは、御説明しましたように、あくまでも プライマリーのサテライトのお客さんの意向に大変沿うところがございます ので、我々ロケットシステムだけの判断では、これを打ち上げられるかどう かというようなことが判断できない部分がございますので、ちょっとこういっ た後ろ向きなというとちょっとおかしいですけれども、そんな表現をさせてい ただきました。 それで、その打上げの条件でございますけれども、まず先ほどいいました ように、主衛星のお客さんからあくまでもピギーバック衛星を搭載するという こと、同意を得られる必要があるということが1つ。それから2番目は、やは り主衛星のミッションの遂行の妨げにならないこと、あくまで主衛星が第一 優先ということでございます。具体的に言いますと、打上げ日の問題がござ います。往々にしてロケット打上げ日が遅れる場合もございますが、主衛星 が原因で遅れる場合には、その遅れた分に従っていただきたいということと、 逆に指定された打上げ日にピギー衛星のほうが間に合わなければ、これは ピギー衛星を載せないまま打ち上げてしまいましょう、というようなことでご ざいます。 それから3番目ですけれども、やっぱり契約責任が明確であること、これは ちょっと後で若干詳細に触れたいと思います。 それから4番目としては、技術的にやはりピギーバック衛星側で極力独立 していること、いわゆるクリーンインターフェースといいますか、クリアインタ ーフェース、そういうことをお願いしてやっているということです。 それから、5番目がやはり、事故等に対応した場合の保険というのが当然 かかってまいりますので、応分の保険をやはりピギーバック衛星のほうにも 御負担をお願いしたいということでございます。基本的にはその5つの前提 を満たせば、我々はピギーバック衛星を打つという意向でございます。 それから次に、先ほど申し上げましたように、契約的な観点からということ で、ちょっと中身に触れていきたいと思いますが、まず1番目が契約責任と いうことでございます。 一般的に、これは契約の、何の契約でもそうだと思 いますが、商業衛星を打ち上げる場合においては、やはり契約責任といた しましては、いわゆる権利義務、これがバランスをしている必要があるという ふうに考えております。当然のことだと思いますが、ピギーバック衛星につ いても同様な考え方をとっていきたい。また特に私どもは民間企業であると いうことから、この辺の契約責任については、次のようなものにしたいという ことを考えております。 ロケットシステム及びピギーバック衛星のお客さん、ともに権利義務を負う という形にしたい。すなわちロケットシステムは打ち上げの責任を負うという ことと同時に、お客はやはり支払いの責任を負うということでございます。先 ほど、スウィーティング先生がおっしゃいましたように、あくまでコマーシャル ベースのコントラクトという形でとっていきたいということでございます。 この場合、問題になりますのは、お値段をどうするかという問題が当然出 てまいりますけれども、1つの考え方としては、プライマリー、主衛星とピギ ーバック衛星との重量比で1つの打上げ価格を配分するというような考え方 がとれるというふうに思います。具体的な例で申し上げますれば、プライマリ ーな衛星が例えば4トン、4,000キログラム、それからピギーバック衛星が 100キログラム、いわゆる40対1ぐらいの重量比であれば、それでかつト ータルの打上げ価格が100億ということであれば、ピギーバック衛星側に 約2億4,000万ほどを打上げの費用として御負担願いたいという考え方で ございます。これはあくまで1つの考え方でございますので、実際には、ピギ ーバック衛星を打つ場合には、先ほど打上げ日とかいろいろ制約がついて まいりますので、その辺はやはり、お値段はその都度その都度契約によっ てネゴして、ディスカウントする場合もあるだろうし、ということですけれども、 決してノーコストで打つというようなことはしないと考えております。 それから契約と言う面では、別の考え方が1つあります。お互いにバラン スがとれているということからすれば、お互いに責任を持たないで、要する にただで打ち上げるというような場合が出てくると思いますけれども、まあ、 ロケットシステムとしては、そういうやり方はやりたくない、そういったものは 契約とは言えないというふうに考えておりますので、あくまでコマーシャルの コントラクトで考えていくという考え方でございます。 それからもう一つは、事故等の不法行為が起こった場合、責任の問題でご ざいますが、普通は、この前アリアンスペースから御説明があったかと思い ますが、宇宙コミュニティという場におきましては、通常、賠償請求権の相互 放棄でやっております。すなわち、クロスウェーバーと称しているのですけれ ども、どっちに責任があろうとも、相手に求償しない。自らの被害については 自らが責任を負うという形でございます。これはどうしてそういうことがとれる かを下に書いてございますが、1つは打ち上げてしまうと、なかなかどっちが 悪いか原因の究明が難しいからです。それから、いろいろ訴訟という問題が 出てきます。そういたしますと、ちっとも次の打上げが先に進まないというこ とでございます。 それから、相手の損害までを見越して保険をかけるということは、参加して いる会社の全部が保険をかけなきゃいけない。膨大な保険になるというよう なことを避けるという申し分があります。 それからもう一つ3番目は、打ち上げる際には、いろいろ大きい会社ばか りではなくて、小さい会社も混じっていて、1つのチームで打ち上げたわけで すけれども、例えば小さい会社がロケットを壊してしまったといった場合には、 膨大な損害になって、それまで補償しろというふうに言われたときに、その 小さい会社ではとてもではないけれども、負担をしきれないという場合が出 ていります。そういたしますと、結局、小さい会社でも、こういった宇宙世界 産業界にコミットできる能力がありながら、そういった理由でコミットできなく なる。あるいは宇宙産業界が逃げていってしまう、というようなこともあると いうふうに考えています。したがって、ここは相互放棄をとってみたいという ふうに考えております。 それからもう一つは、プログラムを技術的な観点からということでございま すが、大きくは次の3つぐらいが条件として必要ではないかなと考えており ます。1つは、いわゆる搭載バス機器及び搭載方法、分離機能等を標準化 したいということでございます。それから、搭載打上げに関しては、やっぱり 最小のインターフェースでもって飛びたい。それからやはり、2号機のときも そうだったかもしれませんけれども、打上げの成功、失敗の定義をあらかじ めはっきりさせておきたいということでございます。まあ、3番目は、いろいろ 定義はやりようがあると思います。例えば、分離の信号をロケットから出した ということであれば、それでもってロケット側は成功と見なすという話だとか、 あるいはピギーバック衛星とロケット側とをつないでいるコネクターが外れた という信号が出れば、それをもって成功とすると、いろいろ考え方はとれると 思いますが、いずれにしてもその辺は、何をもっていわゆる成功か失敗かと いうことをはっきりさせていきたいということでございます。 それからなお、参考までに書いてございますが、商業衛星の打上げ契約 の場合は、通常はいわゆる打上げまで、打上げの定義にもいろいろござい ます、固体ブースターの点火をもって打上げというのか、あるいはリフトオフ をもって打上げというのか、あるいはメインエンジンがついた段階において 打上げというのか、これはビークルごとによって、いろいろ違いますけれども、 ここまでを打上げとしまして、商業打上げの契約の責任範囲は、基本的に はここまでなのです。打ち上がってしまったら、今度は契約履行上の責任は、 ビークル側にはありません。そこのところを、打ち上がった以降衛星を切り 離すまでの間、当然リスクがあります。その間に失敗する場合もございます。 軌道に乗らないというような場合もございます。そこのところはどうしている かというと、そこは、それぞれのお客さん、また衛星サイドが、自分のところ のリスクがあると考えたら自ら責任をかけるということで、ここのところは逃 げておきます。それで担保していくというような形になっているということでご ざいます。 それから、最後に保険の問題でございますけれども、ピギーバック衛星に ついても主衛星と同様に、付保していただきたいということでございます。保 険については、大きくは3種類ございます。打上げ前の保険、これはいろい ろ衛星をロケットに組みつける作業のときに、例えば衛星側のミスでロケット を壊してしまったとか、逆に、ロケットサイドのミスで衛星を壊してしまった、 打上げ前に関しての物損に対する、それから再打上げ保険というのは、先 ほど言いました打上げから分離まで、この間に、最終的に衛星が軌道投入 できなかったというような場合に、お客さんがもう一度打ち上げてほしいと言 う要求を出してくる場合があります。それに対応した保険という意味です。そ れから3番目が、いわゆる第三者への賠償ということでございます。基本的 には、1番については、顧客側で付保するというのが基本的です。2番、3番 は、これは、2番はお客の意向によって、お客がそういった打上げから分離 までの間にリスクが発生する、自分のところにリスクがかかるということを判 断すれば、お客さん自身の判断で付保するというのは可能です。それから3 番目は法律で決められている問題でございますので、これは強制的といい ますか、要はかけざるを得ないということでございます。特に、2番、3番、再 打上げ保険、これはピギーバック衛星側で保険をかけないというふうにおっ しゃれば別ですけれども、かけられる場合、それは、ピギーバック衛星側で その保険を負担していただきたいという話です。それから第三者賠償につき ましては、日本の場合、今、200億というのが、一応民間側というか、ロケッ トシステム側での保険金の負担になっていますけれども、それを超える部分 については、国がカバーするといいますか、それに対応した保険、これが両 立できれば、コンマ1%で、200億の保険をかけたとしても2,000万ぐらい ですから、それを主衛星側とピギーバック衛星側でシェアしてもらったらいい ということでございます。 以上でございますけれども、まとめといたしましては、繰り返しになります けれども、あくまでコマーシャルなコントラクトベースでいきたいということで ございまして、いろいろ制約がございますが、結果的には通常の衛星を上 げる場合と何ら変わらないというようなことでございます。それからやはり、 片一方は高価な衛星、片一方は比較的安い衛星ということで、お互いリスク のアンバランスがございますので、やっぱりここは、メインの、プライマリーの 衛星の顧客の意向、これの同意を得るということが大前提であるということ で考えております。 説明は以上でございます。 【井口委員長】 どうもありがとうございます。 それでは、御質問御意見伺ってまいります。 【栗木委員】 クロスウェーバーについてですが、私が知っているNASAがシ ャトル打上げ等で施行しているクロスウェーバーでは、いわゆるプロテクテッ ド・スペース・オペレーション、何の範囲であったらクロスウェーバーするかと いうことがわりに細かく決められております。 こういうこともやはり契約の中では細かくうたって。 【蟹江】 決められております。基本的には打上げ前の状態においても、そ れからいわゆる打上げ後、分離までの間、基本的にはクロスウェーバーの 考えをとっています。 【栗木委員】 それから7ページに、打上げ前の物損に対する云々とありま すが、人損も含むのですか。 【蟹江】 人損も含めています。 【川崎委員】 今の7ページの ですけれども、これは要するに一般法として はないですね、現在。だから、ロケットシステム社の第三者損害負担につい ての付保はNASDAからのトランスファーとしてやっていくということになる わけですね。 【蟹江】 そういうことです。国の法律で一応第三者賠償を付保しなければい けないと、なっています。 【井口委員長】 伺っていて、何もピギーバック衛星という特別な名前をつけ る必要はなくて、要するに小型衛星ですね、きょうのお話もあるし、アリアン スペースでも同じ……。 【蟹江】 同じ話だったと思いますけれども、ですから契約だとか保険だとか、 そういう面では、全く通常と言ってはおかしいけれども、プライマリーな衛星 と同じ考え方である。ただ、先ほど言いましたようにいろいろピギーバック衛 星に対しては制約をつけなければいけない、つけざるを得ないところがあり ますので、その部分についてはやはり、契約上排除する必要があったという ことだと思いますけれども。 【五代委員】 この前、八坂さんが、学生衛星コンソーシアム、ああいう場合 に結局お金が出ない、出しにくい、集めにくいということだった。その辺にや はり、新しい宇宙機関が、例えば宇宙教育とか、宇宙普及とか、何かそうい うカテゴリーか何かをやって、1%か何か知りませんけれども、そういうお金 を持つのだというような何か決まりごとがあればいいでしょうね。そうすれば あとは、単なるそことのコマーシャル契約。 【川崎委員】 もっとひどいことを言うと、スウィーティング先生のお話による と、自分のアイデアが売れないような衛星をつくらないということです。 【五代委員】 だけど、それは、そこまでマチュアしていればいいのですけれ ども、まだ学生プログラムを何とか立ち上げてしてやろうというほうがまずは 先じゃないかと思って。 【井口委員長】 あまり甘やかすのもよくないと思う。 【川崎委員】 過保護はよくないのではないかと思います。 【蟹江】 アリアンスペースさんのピギーに対する考え方は、この前御紹介が あったと思いますけれども、一方、ボーイング、デルタでもロケットを持って いますけれども、この会社のピギーに対する考え方は、商業衛星を打ち上 げるときにはピギーは載せないという考え方をとっています。あくまで例えば NASAの衛星だとか、そういうときに限ってピギーを載せるという考え方で す。それはなぜかといいますと、やはりお金の問題を安くしろとか何とか、そ ういう問題がある。ビジネスの問題があるということと、リスクが収斂してい る。そこを考えた場合に、やはりピギーは載せないという考え方をとっている。 ちょっと若干そこは、アリアンスペースの場合と考えが違う。 【井口委員長】 大体時間がまいりましたので、きょうは本当にありがとうご ざいました。 それでは次に、民生部品・コンポーネント実証衛星(つばさ)の初期運用段 階報告を宇宙開発事業団の古濱理事にお願いいたします。どうぞよろしく。 【古濱理事】 それでは、8-2の資料について御説明いたします。 民生部品・コンポーネント実証衛星(つばさ)の初期運用段階報告でござい ます。 2ページ目を開いていただきまして、これは2月4日にH-IIA試験2号機を 打ち上げたときのものでございまして、最初のクリティカルフェーズにつきま しては、さきの2月6日の第5回の宇宙開発委員会で報告いたしましたので、 きょうはそれ以降の部分について御報告いたします。 3ページにまいりまして、初期段階の運用結果でございますが、(1)のクリ ティカルフェーズは先ほど申し上げましたように、報告いたしました。それは、 4ページに表になってございます。この情報は全部前回御報告したものでご ざいます。 3ページの2、初期の機能確認運用でございまして、2月2日の第5周回目 から、2月13日にかけてミッション機器を含む全搭載機器の機能の確認を 順次行いました。1つずつミッションに火を入れまして、そして性能も確認し たということでございます。 2月12日の第18周目からそれをやったわけでございまして、その結果が 5ページを開けていただきますと、ここに表になっております。 まず、第1項目目の通信データ処理系につきましては、2月2日に入れまし て、テレメトリ、コマンド、測距機能及び周波数等すべての仕様を満たしてい ることが確認できました。 2番目の太陽電池パドル系でございますが、これ も同じ日に正常だということがわかりまして、所定の電力(1.056KW)発生、 (これはキロワットですね、キロが抜けております、失礼しました) それからシャント1の温度がリミットを越えたということがございまして、これ は既に報告してございますが、2月20日に姿勢を太陽と衛星の回転軸がな す角度を、従来の10度から20度にしましたところ、発生電力が15%下がり まして、正常なものになりました。こういったシャントの温度が高いことにつ いては、今後とも継続して原因を調査いたしますけれども、こういった20度 で姿勢を固定して以後実験を続けて、実験には影響がないということが確 認できております。原因については引き続き解明いたします。 それから姿勢制御系でございますが、これも2月4日にチェックいたしまし て、スピン制御、姿勢制御、ニューテーション制御等を正常に実施しました。 ニューテーション制御というのは、コマの回転軸がこのみそすり運動みた いに回転していく、そのことでございまして、それがあるリミット値以上になる と、それを小さくするように制御する、そういったことでございます。 それから推進系につきましてもチェックいたしまして、姿勢制御系と連動し て正常に制御をすることができました。 電源系につきましても、バッテリーの充放電、及び電力制御を確認いたし ました。 それから熱制御系につきましても、所定の温度の範囲内で制御できること を確認しました。 モニターカメラにつきましては、既にパドル展開と伸展マスト展開の写真を 良好に送ってきておりまして、それらが再掲してございますが、7ページに前 回と同じものが出ております。 問題のシャントのところは、太陽電池パドル2のほうの左側の三角形の頂 点のところにあるのですが、写真で見る限り全然問題なく、ラッチが働いて いるということがわかります。 それから次の8ページ目はマスト伸展の図でございまして、前回お示しし たのは、地球が入ってなかったのですが、たまたま8枚撮った中で、1枚だ け早く見るために下ろしておりますが、残りの7枚を時間をかけて下ろしてき まして、その中に地球が入っているのがありましたので、ここに示しました。 非常にインプレッシブルです。ただ、地球の半円の下側のところの白い点は 多分星ではなくて雑音だと思います。ですから、ぽつぽつと黒いところにあ るのは、多くの場合雑音だと思います。でも、非常に鮮明に撮れていて、イ ンプレッシブルだと思います。 それで、3ページ目に返りまして、定常段階への移行ですが、2月14日に 定常段階移行前審査会を開催いたしまして、初期運用結果を審査いたしま した。シャントの高温現象に関して、引き続き検討する必要があるものの、 初期段階から定常段階に移行できると判断いたしまして、翌日の15日から 定常運用に入っております。 主要な説明はそこまででございますが、9ページ、10ページに、どんなデ ータが取れているのかを若干、解析はございませんが御報告いたします。9 ページ目、図2-3太陽電池特性変化のデータ例でございまして、これは3 種類の太陽電池を検査用に搭載しています。メインで使っているバスについ ている太陽電池とは別のものでございまして、一番上の△の赤いところがイ ンディウムガリウム燐と、ガリウムAsのタンデムになったものを示しておりま す。それから緑の丸いところがシリコン用の太陽電池、四角いのがシリコン の普通に使われているものでありまして、左側のほうが開放端で電圧を計 ったもの、これは、最初の日を100として、規格化してあります。右側のほう は、短絡してその電流を計ったものでありまして、これも規格化した値であり まして、相対的な値です。この結果からは、宇宙用のものがよくて、民生が 悪いというようなことは、すぐには判断できませんので、これは環境条件とし ても長時間かけて解析する必要があると思います。こういったデータが取れ ておりまして、これをずうっとフォローしていきます。 10ページ目は、今度はメモリデバイスの誤動作に関する発生の分布図で ございまして、図の2-4、メモリ用半導体デバイスの64メガビットのドラム でして、サンプルが2つございます。この上側の図は地球が書いてありまし て、磁力線が書いてございます。下側の図は、これは横軸が地球の半径を 単位にとってありまして、地球の半径のところがちょうど1でして、半径が6ぐ らいのところに静止軌道があるわけですが、この中で、陽子のフラックスの 強さがこの真ん中の図でカーブになっておりますが、バンアレン帯の内帯の ところで、陽子のフラックスが、ここで言いますとLの値にしまして、1.7か1.8 ぐらいのところでピークになっておりますが、バンアレン帯の内側の内帯に ある電子分布が高いところでして、そういったところで上が磁力線のところに サンプル1が茶色で▲、サンプル2が緑色で●で書いてありますが、こうい ったところでビットの反転が起こったということが観測されております。 内帯近くで非常に緑色のものの発生頻度が高くなっていることが見てとれ ます。これも初期の段階のものでありまして、1年間取りまして、これがどう いった分布になっていっているか、そういったことで、民生部品がどの程度 使えるかということを、放射線の強度とあわせて解析したいと思っておりま す。 以上、最後のページ11ページにまいりましてまとめですが、10日間の初 期運用段階を終えまして、パドル展開等クリティカル機器の展開、及び姿勢 制御等の実施並びにすべての搭載機器のチェックアウトを行いまして、実験 実施に問題のないことがはっきりいたしました。それを確認して定常段階に 移りました。この間、パドルラッチ信号の異常、及び太陽電池パドルのシャ ント温度異常等が発生いたしましたけれども、いずれも衛星運用及び実験 実施には影響するものではないと考えております。今後、1年間実験を実施 したいと考えております。 以上です。 【井口委員長】 ありがとうございます。御質問、御意見はございますか。 これは大変成功裏に運用されていて結構だと思います。だけど、スウィー ティング先生のお話などを聞いていると、これからいかに小さくするか。自動 車でもいろんな重さの車がありますけれども、グラフで横軸に重量をとって、 縦軸に値段をとると、ぴったり比例するのです。だから、小さくし軽くするとい うことは、値段を安くすることと等価であるから。 【川崎委員】 これなどもこれからはスウィーティング先生方式で、だれか半 導体メーカーなり何なりがスポンサーになってもらってやったら……。 【古濱理事】 そういった場合には少し、これはNASDAで初めての、言って みれば中型衛星ですね。だから、非常に期間も短くやりましたし、小型衛星 というわけではないですけれども。 【五代委員】 確かに今までの大型衛星から見ると、中型、小型でもって、打 上げは伸びていますけれども、製作も前よりはわりと短い、まだ自動車の1 年数カ月までは無理ですけれども。金額も確か、従来の衛星の何分の1か にはなっていると思うのですが。こういう方向をもっと進めていただきたいで すね。 【川崎委員】 軌道変更用の予備燃料は持っていないのですね。 【古濱理事】 軌道変更用の予備燃料は持っていません。 【川崎委員】 そうすると、逆にいうと、1年というのも、データはあまり順調過 ぎると壊れるまでやってみるというので、もう1回回すというので、1年……。 【NASDA】 それは、お金との相談でございますけれども。 【川崎委員】 可能性はありますか。 【NASDA】 基本的には……。ただ、放射線が全体的に強いものですから、 バスも含めた設計は1年となっておりますので、その辺がどこまでもつかを 検討しております。 【栗木委員】 シリコンで、太陽電池の出力は、これでレベルオフしそうな感じ ですか。 【古濱理事】 その辺は、ちょっとまだこれは。 【栗木委員】 まだわからない。 【古濱理事】 はい。傾向はこうだということで結論はちょっと出せない。 【井口委員長】 どうもありがとうございました。 次に、H-IIAロケット試験機2号機の打上げ結果について、宇宙開発事業 団の三戸理事に御報告をお願いいたします。 【三戸理事】 すみません、ちょっとかぜをひいているもので、声が小さくて。 【井口委員長】 大体もう前に伺っていることとほとんど同じじゃないかと。 【三戸理事】 では簡単に。 まず第1ページ目をお願いします。ここは、前回の速報でもお話ししていま す。ただ、結果概要のところでは、DASHの件については、変わっておりま す。 次のページ。これは、打ち上げる前にこういった項目について飛行実証す るということで、これらにつきブルーになっておりまして、ごく一部のデータは 欠落していますけれども、ほぼ100%に近いデータが取れています。これ から詳細解析を行っていきます。 3ページ目ですけれども、技術データの取得状況ですが、右側に未取得項 目がありまして、全部で6項目でございます。この中で、一番最初のLE-7 Aエンジン燃焼圧、これは、対策を取っておりませんで、やはり今回のちょっ と秒時は長いですけれども、途中で切れています。それから、技術テレメー タでのSRB-Aとか、あとはSSB、あと、エンジン部の音響等が取れており ます。 1号機と比較すると、1号機は4チャンネルしか取れておりませんが、今回 6チャンネル、ちょっと多いということ、ただ、その2チャンネル分はSSBのと ころから出ております。 では、次でございます。 1号機から2号機へ向けた対策の結果ですが、8項目あります。ただし、こ の中で、先ほど言いましたエンジン燃焼圧のセンサー、それから下から4段 目の第2段エンジンから出た機体振動、これについては対応していません ので、1号機と同様に出ております。それで、この表の中で、赤く塗った一番 上のこれにつきまして、1号機の結果から対策をとりましたが、どうも完全で はなかったようだと。後につきましては、一応、対策は確認、ないしは1号機 と同じ結果になっているということです。 次のページでございます。 特記事項ですが、まず第1段の飛行性能につきまして、これまた1号機と 同じで、やはり推力が低いということで、これにつきましては、今後3号機以 降、ノミナル値を場合によっては下げて計算するということを検討したいと思 います。もちろんどうして地上燃焼試験の結果と差が出るのかということも あわせて検討いたします。 次のページにまいります。 2段の燃焼圧力、先ほどちょっと言及しましたが、これについても絵を御覧 いただきますように、全く同じでございます。これにつきましては、前回で御 説明いたしましたように、LE-5Bの燃焼圧力変動ということで、要するに 燃焼が均一でない、不均一での度合いが多いということで、このような低い 周波数レベルでの振動が出ているわけでございます。 これにつきましては、後号機についてどうするかということですけれども、 現在、ADEOS-II とMTSAT-1Rについては、このような振動があったと きに問題があるかどうかを解析いたしましたところ、両者とも問題ないと、現 在、3号機のDRTS、USERSについて、解析を進めているところでございま す。予測としては、この振動レベルが低い、ただ、長時間だということはあり ますけれども、振動レベルが低いということで、まずは問題ないだろうと考え ております。ただし、エンジンの信頼性を高めるということで、この振動レベ ル逓減策については、現在、検討しておりまして、これを完全になくすような 対策があれば、それを実施していくというふうに考えております。 では、次のページにまいります。 次のページはフェアリング、これは先ほども言及いたしましたように、対策を 打ちました。1号機はどういうふうな原因だったかという違いが箱の中に書 いてありますが、微粉につきましては、ハニカムコア内の残留空気に入って いる水分が、このような真空のところへパッと開いて、気化してこのように白 くなる、ということでございます。もう一つは、シールの接着不良ではがれた。 この下の左側の絵ですけれども、ちょっとひもみたいなのが出ております。 これがシールでございます。それにつきまして、2号機では、ハニカムコア内 の残留空気が出ないような対策を打ちましたが、ところが、今回打上げ後に 回収したフェアリングの調査結果から、やはり、カバーで出ないようにしてい たのですけれども、そのカバーが変形していた。地上試験では変形してなか ったのですが、ということが、やはりハニカムコア内の空気が漏れたというふ うに考えております。それで、まあ、どうして地上試験で出ないのが上に行っ て出るかということで、やはり真空とか温度といった環境をしっかり模擬した 地上試験をしないと、いろいろ問題があるのかなというふうに現在、推定し ておりまして、それを実施する予定でございます。 ということで、まとめといたしましては、一部データが得られないものがあり ましたが、おおむね技術データが得られ、これからの詳細解析に当たって準 備ができたということでございます。 以上でございます。 【井口委員長】 どうもありがとうございます。 御質問、御意見ございますか。 この微粉というのは、原因がはっきりすれば別に出たっていいということも あり得るわけですね。別に恐れることはない。 【三戸】 水蒸気でございますので、それがもし衛星の光学的なセンサーにく っついてしまうと、もしかしたらそれは空気ですので、その中に多少ごみもあ るでしょうから、基本的には水蒸気だと我々は考えていますけれども。やは り出ないほうがベターだということです。 【井口委員長】 それから1号機の打上げが終わった後、専門家の人を招い て、シンポジウムでしたか、開きましたね。 【三戸】 はい。 【井口委員長】 今回はどうされますか。 【三戸】 今回は、1、2号機のまとめた評価ということを宇宙開発委員会で やっていただければいいのかなと思っておりますけれども。現状ではまだ計 画しておりません。 【井口委員長】 そうですか。我々も、1、2号機、これは試験機が2機打上げ を終わったので、その総合評価というものをやったらどうだろうかということ は考えています。もしやるとすれば、いつごろだったら可能ですか。 【三戸】 我々としては一応3月末を目標に、何とか頑張ろうと思っておりま す。 どういう形式でやるかは、また先生方にも相談して、どういう題目を中に入 れるか、例えば、コストだとか、あと、年に何機打てるか、こういったことは総 合システム仕様書に書いてあるのですね、H-IIAというのはこういうロケッ トだと。だからそういったものが例えば試験機ではまだ達成されないけれど も、将来達成される可能性があるのか。場合によっては、達成されないのだ ったら、直さなければいけないということがありますので、純技術的なことだ けでなくて、そういったところも対象にした評価をしていただいてもいいのか なと思っております。 【栗木委員】 おそらく評価のプログラムレベルで、これをずっと何機か上げ ていくようなことも、どこまでがやられて、どこが積み残しになっているか、そ ういうことをここでひとつ締めくくったほうがいいのではないかと思っておりま す。全部終わったとは、おそらくないと思いますので。 【三戸】 まだ2機しか打っていませんから。 【栗木委員】 だから、そこまでで、どうわかったかというような評価になると 思います。 【井口委員長】 よろしゅうございますか。 では、総合評価についてはまた、打ち合わせをさせていただきます。 どうもありがとうございました。 次は、高度情報通信ネットワーク社会の形成に向けた宇宙通信の在り方 に関する研究会の最終報告ができたということで、総務省情報通信政策局 の野津課長さんがわざわざおいでくださいまして、御報告くださいます。 きょうは残念ながら立川委員がおられなくて、本当に核心の議論ができな いのが残念ですけれども、ひとつよろしくお願いします。 【野津】 総務省の野津でございます。先生方にはいつも高い視点から広範 な御指導を賜りまして、この場をかりてお礼申し上げます。それでは、座って 御説明をさせていただきます。 資料委8-4でございます。 高度情報通信ネットワーク社会の形成に向けた宇宙通信の在り方に関す る研究会、このようなものを昨年5月に設立いたしまして、約8カ月間、7回 開催をいたしました。この2月13日に最終報告を取りまとめ公表したところ でございます。座長といたしまして、藤田NTTデータ相談役、委員といたしま して、座長を含めまして26名の学識経験者、産業界、宇宙関係機関の方々 に御参加をいただいております。 この1ページ目にございますように、基本的な目的というのは、IT基本法も 制定されまして、高度情報通信ネットワーク社会形成に向けた通信分野の 宇宙開発の在り方、それから利用の在り方、そういったものにつきまして、 ユーザーニーズを把握した上で、しっかり検討をしてきたということでござい ます。 具体的には、後ほど補佐のほうから詳細御説明いたしますが、これまで宇 宙開発委員の先生方といろいろ必要に応じて御説明させていただきまして、 貴重な意見を賜っておった。そういったところも踏まえまして、いろんな項目 を追加して取りまとめております。具体的には、内外の動向はどうなってい るのだと、特に最近のインターネット等のITに関して、衛星の世界的な活用 状況はどうだと、あるいは国内はどうだといったことも調べております。それ から、主に超高速インターネット衛星と準天頂衛星等、非常に先端的な衛星 につきまして検討しておりますが、その検討の仕方といたしまして、当然な がらニーズの把握、それからアプリケーションのフィージビリティスタディ、ビ ジネスモデル、それから経済の波及効果、支援策等々を検討した上で報告 書を取りまとめさせていただいております。 2枚めくっていただきまして、2ページでございますが、これに関連いたしま して、若干触れさせていただきたいのが、政府のスタンスでございます。1、 政府の取組というのがございまして、項目の2番目に e-Japan 重点計画とい うのが書いてございますが、これについて若干触れさせていただきますと、I T基本法というのができまして、それに基づきまして、IT戦略本部、これは、 内閣総理大臣が本部長で、構成員はすべての閣僚と民間の有識者の方々 でございます。これが13年1月に設置されております。その中で、5年以内 に世界最先端のIT国家となることを目指した e-Japan 戦略が決定されてお ります。 2カ月後の3月に、この戦略を具体化し、政府が迅速かつ重点的に実施す べき220の項目をこの e-Japan 重点計画で示しておるわけでございます。 その中で、文部科学省と総務省の連携してやるべきことということで、超高 速インターネット衛星の2005年打上げということが明記されております。 我々としては、これをいかに具体的に進めていくかという観点も当然盛り込 みまして、検討を行ったということでございます。 それでは、お願いします。 【本間】 宇宙通信政策課課長補佐の本間と申します。僣越ながら中身の細 かい点につきまして、私のほうから御説明をさせていただきます。 報告書の全体構成がお手元の資料の9ページにございます。ちょっと字が 細かいので、全体構成をこれで御説明させていただいた後に、また2ページ に戻りまして、中身を説明していきたいと思います。 報告書全体の構成といたしましては、まず、今、課長から御説明いたしま したように、政府の取組というもので、IT基本法の施行、e-Japan 重点計画 の記述と。 またこういった政府全体の流れを受けまして、総務省といたしまして、IT社 会形成におきまして、宇宙通信はどのようにあるべきかという問題意識から この研究会を開催いたしましたということを述べております。 2点目といたしまして、宇宙通信の現状と動向ということで、宇宙通信のこ れまでの沿革、全体の電気通信、あるいは放送の中での宇宙通信の果たし てきた役割ということを整理するとともに、最近のトレンド、特に利用形態の シフトについて御説明をしているというものです。 また、 で、その分析を踏まえまして、宇宙通信の今後の方向性ということ で、宇宙通信の位置づけ、それから高度情報通信ネットワーク社会の中で 宇宙通信が占めるべき役割というものを6つ整理いたしまして、今後、それ を実現するために必要となる技術ということで、ニーズから導かれる技術と して、インターネット衛星、準天頂衛星というものを導き出しております。 また、この波及効果というものも試算をしております。これを実現するため の課題というものをまた5点抽出した上で今後取り組むべき施策ということ で大きく5項目をまとめると、こういった全体の流れに終わっております。 2ページに戻りまして、ちょっと駆け足でまいりたいと思うのですが、宇宙通 信の現状と方向というところでございます。我が国の宇宙通信、当初は、公 共機関、あるいは電力、ガス、電話通信事業といった公共的なサービスに 用いられてきておるわけでございますが、そもそもは、国が研究開発、BS、 CSシリーズをやってきた過程におきまして、電気通信事業の自由化という ような動きもございました。この宇宙通信というものは、電気通信、あるいは 放送のインフラという中でも、非常に広域性を有しておるという国際的なサ ービスが可能であるというような特性があることから、電気通信事業は、昔、 外国の資本が日本でサービスする場合に、外資規制というものがあったの ですけれども、衛星に関してはそれがいち早く撤廃された、あるいは国際映 像放送というものも制度的に可能になった、というように他のインフラに先が けて規制の改革が行われている。また、通信放送の融合に資するということ で、先導的な役割をこれまで果たしてきておりまして、CS放送の実現などで 国民生活の向上にも非常に寄与してきたというようなインフラとなっておりま す。利用形態につきましては、従来公共利用が中心だったのでございます けれども、近年インターネットの大変な普及、またそのIT技術の活用というこ とから、衛星におきましても、ITベースの通信というものが非常に増えてきて おりまして、いわゆる衛星インターネットというサービスが出てきております。 この結果、従来あまり衛星を使っていなかった金融とか物産とか、最近、日 常的に見かけるようになりましたコンビニエンスストアのレジや、ファミリーレ ストランとかファストフードのお店で、いろいろ映像が流れておるというような ものがありますけれども、そういった新しい利用形態というのができておると いうことでございます。 放送に関しましても、放送のデジタル化が衛星でいち早く進んでおりまして、 多チャンネル統合化が進んでおる、また測位もGPSの利用ということで、幅 広く衛星利用が進んでおるというものでございます。 衛星インターネットに関しましては、2ページの一番下のところでございま すけれども、現在、地球局数でいくと約4万ということで、非常に普及を見せ てきておりまして、新しいサービスもできておる。 3ページでございますが、海外でも広く普及してきておりまして、航空便向 けの衛星インターネットサービスなどという新しいサービスの計画も進んで おります。また、新しい衛星のシステムといたしましては、新たに、例えば携 帯電話などの周波数を使った広帯域の衛星システムを構築して、グローバ ルなブロードバンドのサービスを提供していくというような動きが複数出てき ております。 また測位に関しましても、米国のGPS以外に、欧州がガリレオ、中国が北 斗というようなものを計画をしておるというところでございます。 また、研究開発の体制でございますけれども、各国とも国際競争力の強化 を図るという観点から、宇宙通信に関する研究開発プロジェクトを強力に推 進しております。 また、欧州におきましては、近年、宇宙通信の分野の予算を2倍近くに増 額しておりまして、また、統計的に見ますと、衛星の製造の分野での国際シ ェアも向上しておるというように国の費用が非常に意味を持つ分野であると いうことがわかっております。 外国でとられております手法といたしまして、全部国がやるというよりは、 官民の連携をいかにやっていくかというところにどうも鍵があるようでござい まして、研究開発衛星をテストベッドとしまして、いろいろ民間を交えた実験 をやっていく、あるいは研究テーマを民間から募集する、はたまた官民で共 同開発をしたり、商用衛星に国のミッションを載せて実証する、こういったよ うないろいろな手法が取り入れられておるところでございます。 章で、宇宙通信の今後の方向性でございますけれども、宇宙通信の位 置づけでございますが、地上網も一方では非常に伸展してきておるという中 で、宇宙通信はどうなのかといいますと、宇宙通信の地上網に対する大き な特徴としましては、同報性、あるいは世界の3分の1をカバーできるような 広域性がございますので、そういった部分で、例えば同報型の通信は衛星 が担って、1対1の通信は地上が担うというように、相互に補完する関係で 全体として経済的なネットワークを構築するものであると。また、そういった 経済的な観点からだけではなくて、例えば対災害性などの観点から、衛星 以外のインフラでは果たし得ない役割というのもございまして、将来的にも 維持されていく必要がある基盤的な通信インフラであるというふうに位置づ けを行っております。これに基づきまして、宇宙通信の果たすべき役割とい うことで、6つ分類しております。 1つは、コンテンツのマルチキャスト配信ということで、その同報性を生かし た通信サービスというものが、今後衛星の担うべき方向性として重要になる。 それから2点目といたしまして、移動体サービスでございますが、特に、地 上の携帯電話等のサービスの場合には、面的にカバーしていきましても、1 00%ということにはなかなか至りませんので、地上を補完する、あるいは航 空機、船舶などに対する移動体通信サービスの提供ということで、例えば準 天頂衛星を用いました面積カバレッジで、100%の通信サービスというもの も実現が期待されるということでございます。 3点目は、国際インターネット網の整備でございます。我が国におきまして は、IT社会形成ということで、光ファイバーをはじめとしました多様な通信イ ンフラの促進を国の全体の政策として取り組んでおるところでございますけ れども、周辺諸国に関しましては、インフラの未整備地区が多い、これに対 しまして、直ちに国際インターネットのサービスを提供することができるとい う観点から、衛星というのは非常に重要であるというふうに位置づけており ます。 4ページの にまいりまして、国内におきましても、例えば離島等の本土と の中継ネットワークの回線の高速化が難しいというような部分につきまして は、やはり衛星の果たすべき役割がある。これを用いまして、情報格差を早 期に是正するというようなことが期待されるということであります。 5つ目といたしまして、測位の提供でございます。これも準天頂衛星を用い て、補正情報を送るなどということによりまして、高い精度の測位サービスが 可能となるというもの。 6つ目がインターネット網の高信頼化でございますが、これは地上と衛星 を組み合わせることによりまして、インターネットの全体の高信頼化が生ま れるというように整理をしております。 研究会の報告書の本文では、この6つの分野でそれぞれいろいろなアプリ ケーションの例を例示しておりまして、そこから、必要となる技術というのを 抽出しております。このページの真ん中のところに、いろいろ高速大容量化 とか、柔軟な回線設計とか書いてございますけれども、こういったものを効 率よく実証していくためには、超高速インターネット衛星、及び準天頂衛星 の研究開発及び軌道上立証が必要であるというように取りまとめております。 これらの衛星の研究開発及び将来実用化された場合の経済波及効果と いうものも、宇宙開発の関係ではなかなか今までなかったかなと思うのです が、この取組について、ちょっと試算をしてみました。超高速インターネット 衛星につきましては、まず直接効果、間接効果、誘発効果という3種類の指 標があるのでございますけれども、宇宙開発事業団で超高速インターネット 衛星、総予算、衛星側で例えば300億円という経費の見積もりに対しまして、 その開発期間、5年間でどれだけのいろんな産業への波及があるか、その 波及を全部積み上げていったときの経済効果というのを直接効果と呼んで おります。これは、300億円に対して、789億円ということで、2.5倍強の経 済波及効果があるということです。考え方といたしましては、衛星を製造す る場合に、電気とか機械とか、いろいろな製造業あるいは研究開発そのも のに対して、ほかの産業へお金が流れていくわけでございまして、そこの従 業員の方々の給料とか消費とか、そういうふうにどんどんお金が波及してい くということで、経済効果を出しております。 間接効果というのは、将来インターネット衛星が実用化されて、そこで提供 される通信サービス、あるいは機器の製造による市場でございます。これは、 インターネットであるということで、電子商取引の市場も含んでおりまして、そ の結果、2010年時点での1年間の経済効果ということで、間接効果は2兆 7,997億円と、こういう数字になっております。 5ページの上で、誘発効果でございますが、これは間接効果からまたお金 が流れていくことによりまして、産業連関でさらに経済効果が出るというもの で、約6兆円というものでございます。 準天頂衛星につきましては、まだ衛星の形がはっきりしておりません。事 業団におきましても、あと、総務省の通信総合研究所におきましても、基本 的な研究の段階でございますので、国内の自動車向けの通信サービス業 に限定して試算を行いまして、その結果、1年当たりということですけれども、 普及率に依りまして、200から1,100億円程度の市場があるであろうという ことです。当然これにまた誘発効果に相当するもの、あるいはこれを介しま した二次的なサービス市場というものも出てくるわけですが、今回は算定の 対象としておりませんので、インターネット衛星との直接の比較はできない わけであります。 アプリケーションのフィージビリティ・スタディということで、国内の離島向け に衛星と無線LANを組み合わせてインターネットサービスを提供するという ような場合について、事業が成り立つかどうかということもやってみまして、 結果、一定の加入数があれば月額4,000円程度のサービスができるという ようなビジネスモデルの検証もやっております。また、衛星の測位に関しまし ても、準天頂を使った測位システムというものについて、どの程度の精度が 出るかということをやってみまして、GPSとの組み合わせで2倍近い精度と、 また仮に単独で運用したとしても、実用的な精度がでるということが地上検 討でわかっております。 5ページの下の部分、第4章、宇宙通信の課題ということで、5つの課題が 今後あるというふうにまとめております。1つは技術的課題で、新技術の確 立ということでございまして、情報通信あるいは宇宙開発というものが、技術 革新の原動力であることから国がしかるべき技術開発を先導すべきである ということでございます。 2点目が市場の課題でございますが、アプリケーションというものも研究開 発に平行してやっていかないと、仮に有効な技術であったとしても、それが 認知されないと使われない、あるいはユーザーというのはどの程度あるかと いうのが不透明であると、事業者が二の足を踏んでしまう、というようなこと から、アプリケーション実験等をやっていく必要があるでしょうということでご ざいます。 3点目が時間的課題でございまして、サービスのタイムリーな実用化でご ざいます。仮にすぐれた研究開発成果でありましても、市場の投入のタイミ ングを逸してしまうと、結局、ほかの技術にとってかわられるということが生 じてしまいます。また、これは衛星に特有の話でございますけれども、周波 数とか軌道というのは外国と調整しつつ使っていくということですから、早期 にきちんとした対応を国際的にもやっていかないと、結果的に使えないとい うことが出てまいります。したがいまして、宇宙開発にはどうしてもリスクが 大きいのでございますけれども、計画の遅延につながるようなリスクをなる べく排除した形で推進することが必要であるということでございます。 6ページにまいりまして、4点目、経済的課題でございます。これは、端的 に申しますと、現在の衛星の通信コスト、あるいは地球局コストが非常に高 いという問題点が指摘されておりますので、このコスト低減を図っていく取組 みが、特に地球局側について大事であるということでございます。 5点目は国際的課題で、これは先ほど申したことと重複になりますが、周 波数、軌道の確保が大事であるということでございます。 第 章、今後取り組むべき施策で、これも5つという項目にまとめておりま す。 1点目が研究開発の推進ということで、超高速インターネット衛星、それか ら準天頂衛星システムの研究開発が重要である。特にインターネット衛星に つきましては、e-Japan で2005年打上げというものがうたわれております ので、このためには2003年度に開発の段階にフェーズアップしていくこと が必要であるというものでございます。 準天頂につきましても、第4世代の携帯電話、あるいは超高速インターネ ット衛星のもう一つとしております実用化時期を考えますと、やはり2010年 ごろの実用化というものを目指していくべきだろうと。これから逆算してまい りますと、2007年度ごろの軌道実証を1つの目標として、この研究開発の フェーズとしては、2003年度のころに開発研究に着手することが必要では ないかというように御提言をいただいております。 7ページにまいりまして、その他の基盤技術ということでは、衛星からの光 通信技術とかミリ波とか、その他4トンバスの技術とか、今後さらに新しい技 術の環境も必要だということを言っております。 それから高度な衛星利用の開拓につきましては、国際的なアプリの開拓と いう意味で、国際共同実験、それから国内におきましては、条件不利地域 における衛星利用に向けた取組み、それからインターネット網の高信頼化、 こういうふうに民間の取組みだけではなかなか進まないような部分について、 国が取り組んでいくべきであるということを挙げております。 それから新たな研究開発手法の確立でございますが、これは、タイムリー な実用化のためには軌道上実証機会の拡大が必要であるということをまず 1点目に報告書では述べております。これまでの通信関係の実証衛星、推 進系の不ぐあいによりまして、10年間の空白が生じているような状態でござ いますので、今後は本日のこの委員会の議題にもございましたけれども、ピ ギーバックとか小型衛星とか、商用衛星相乗りとか、多様な手段を平行的 に用いて実証手段を拡大していくことが現実的であろうというふうに御提言 をいただいております。 2点目といたしまして、研究開発成果を実用化につなげる方策でございま すけれども、これは、かつてはCS、BSは実用衛星を国が民間と共同で開 発していくというやり方があったわけですが、現在は研究開発衛星のみを考 えるという形になっております。しかしながら、これは、競争が進展しており ます電気通信分野におきましては、国が基盤的な研究開発をやって、実用 化は民間がやるということは当たり前の姿でございます。したがいまして、 情報通信分野で一般的に行われておる実用化のための手法というものを 宇宙開発に取り入れていくということが方向性であろうと、具体的には民間 のインセンティブを高めるやり方として公募研究、委託研究、あるいは実用 化に際しましての事業リスクを低減するということから、研究開発にはとどま りませんで、財投出融資による金融支援、あるいは制度の整備といったもの も必要であるというふうな御提言をいただいております。 8ページ目が、ア プリケーションの開拓方策でございますけれども、これは、国の研究開発衛 星を米国の普通衛星のように、テストベッドとしてさまざまな実験を行ってい く。この際に地上設備の負担というのが結構大きいと思われますので、実験 参加者に対して、これを国が共同利用施設として整備するとか、アプリケー ション開発に対して競争的資金をやはり国が提供するとか、これも電気通信 分野の研究開発には存在する手法でございますので、そういったものも一 案であろうと。 また、新たな宇宙開発機関との関係でございますけれども、宇宙開発事業 団は、NAL、ISASと統合されて新しい機関となるわけでございますけれど も、そもそも宇宙開発事業団は電波研究所の人と予算を継承して通信放送 衛星の研究開発に今まで取り組んできたという責務がございますので、引 き続き情報通信分野においての総合的な研究所である通信総合研究所と 密接に連携して、情報通信分野の宇宙開発を充実強化していくことを期待 するというふうに報告では述べられております。 4点目といたしまして、コストの低廉化でございますが、これは行政のとり 得る環境づくりということでは、地球局、あるいは通信プロトコルの標準化を やっていって、たくさんの数の地球局が出るような環境を整備していく。それ が最終的にはコストの低減につながっていくであろうということの御提言を いただいております。 また、最後に、周波数・軌道の確保に関しましては、特に準天頂衛星が、 国際電気通信連合の無線通信の総会WRC-03というものが来年あるの でございますけれども、そこでの議題の1つになっている関係から、準天頂 衛星の周波数共用に関します基準の作成につきまして、積極的に取り組む べきであるというふうに述べられております。 以上、長くなりましたけれども、御説明でございます。 【井口委員長】 どうもありがとうございました。 御質問、御意見、よろしいですか。 【川崎委員】 私はニューカマーだから言いやすいのですが、2号機以降、要 するにこれは衛星の寿命としては8年とか10年なのですが、それ以降はど ういうふうにやられるおつもりですか、引き続き、若干でも国の金を入れてや るという考え方でしょうか。 【野津】 インターネット衛星とか、準天頂衛星とか……。 【川崎委員】 ええ、準天頂、両方ともですが。 IT衛星と言われているものはどうなのですか、i-Space ですね。 【野津】 準天頂につきましては、この報告書で御提言をいただいた範囲で は、とにかくこの衛星を本当に使えるのか、開発実証してみようということで、 できるだけ早く、15年度ぐらいには開発研究に入ったらどうかということをい ただいております。 当然、実用化というのは目標としておりますが、そこにつきまして、例えば 国がどこまで、民間がどこまでというところまでは、この報告書の中では、準 天頂の整備をしておりません。 【川崎委員】 もう一つ伺いたいのですが、中身としての何が新技術要素とし て衛星につぎ込まれることになるのかというのが……。 【野津】 準天頂衛星でございますか。 【川崎委員】 準天頂の場合。 【野津】 準天頂衛星につきましては、インクリネーション45度ないし75度の 3万6,000キロのほうのもの、これにつきましては、やはり熱設定が違う、そ れから、日の当たり方が違いますので、場合によっては、パドルの2軸制御 ないしバッテリーの高効率化といったことも必要になるかもしれません。そこ は現段階では軽々に事業団としては詰めきれない。ただ、メーカーの中で、 そういったことが必要になる可能性は指摘をしております。 もう一つ、通信分野でございますが、これは例えば、いろいろな周波数を つぎ込むことに依ろうかと思いますが、Kバンドでかなりシャープなビームを 地上にフットプリントとして落としますので、重量の関係その他で、非常に大 きなKバンドアンテナをメッシュの細かいフレキシブルパドル、折り畳み型の アンテナを積み込む、それは、ETS-8でかなり粗いSバンドの18メートル のアンテナを今、開発中でございますが、それと全く鏡面精度が違って高い ものを開発しなければならないだろう。 あとは、ちょっと恐縮ですが、お手元の一番上から2枚目に羅列をしており ますが、その他の通信プロトコルが、静止衛星で固定ITSにいくと若干違い ます、それから静止衛星との周波数の共用技術と、その他もろもろございま す。あと、当然ながら、衛星が動いて、なおかつ地上体も動きますので、回 線の切り換えの技術が要るといったようなこともございます。 【本間】 1ページの2の準天頂衛星の技術開発項目に今、書かれているも のが、報告書の中では、もう少し細かい説明がございますけれども、列記を されている項目がございます。 【川崎委員】 私は、今のところ、昔のCSだとかBSのような形でのイメージ が、この後続機として、今の段階ではなかなか難しいのかどうかわかりませ んけれども、そのあたりは総務省さんは、今、一生懸命利用拡大のための 融資制度であるとか、その他いろいろやられているので、期待はしているの ですが、そっちが見えないと、やったきりとなるのはいかがかなあというのが 私の心配ですけれども。 【野津】 融資制度につきましては、たびたび御説明を申しておりますが、政 策投資銀行で、民間が衛星を打ち上げて完成施設を持つというのに対して、 政策金利3で、40%まで融資ができるといったような制度がございます。こ れは、別に準天頂であろうが、どんな衛星であろうが、日本でやる場合はそ れが対象になりますので、そこは御安心をいただきたいと思います。 【川崎委員】 だから、無理に軌道のものにしなくても、どんどんいったら用 が足せるのかどうかという、その辺とのトレードオフがはっきり……。 【野津】 軌道の話でいいますと、静止軌道が非常に混んでくるというのも当 然ございます。でも、もう一つ、移動体で面積カバレッジを100%にしようと いたしますと、日本の場合、静止軌道からだと仰角45度になります。したが いまして、ビル陰、山陰、いろんな地域で、使えない部分が出てくる。そうい たしますと、例えば静止衛星で、移動体衛星音声放送その他データ放送を やろうとした場合に、ギャップフィラーと言って、陰のところに衛星の電波を 受けて地上で再送信するような形が要りますので、なかなかそれでは究極 的に日本全国津々浦々どこでも移動体通信ができるようにはならないので はないかと、そういったことで、準天頂衛星の技術開発をして、実用機がそ の技術開発をもって、安くつくることになれば、民間のほうで十分事業化が できるのではないかなと、我々はこのように期待をしておるところでございま す。 【本間】 ちょっと違う観点の報告をさせていただきますと、準天頂衛星は日 本の産業界で非常に期待しておるのですが、日本に固有の現象というわけ ではなくて、WRCとさっき申しましたけれども、世界無線通信協会でも、ほ かの国もこのまま静止衛星の周波数と軌道が逼迫してしまったときのブレ ークスルーになる道と、あるいは移動体での衛星通信としての新しい技術と いうことでこれを認めていこうという動きがございます。仮にこういった振り込 みが全くなされないと、今の周波数と軌道が逼迫してしまうと、既存の事業 者さんが、これはマーケットが決める話ですけれども、料金がどんどんつり 上がっていってしまう、売り手市場になってしまうというようなことが、電気通 信サービス、特に衛星みたいに最大のときに、これしかないというようなサ ービスを安定的に提供していくとか、それから市場の競争を活性化していく とかいう観点から、望ましいことではないだろうか。ですから、広い意味では、 市場を活性化して、本当のユーザーが求めているサービスを廉価に提供し ていくためには、新しい軌道とか周波数を開拓していく取組み、これは民間 のインセンティブの話ではありませんので、国が率先してやっていく。また、 ほかの国との……。 【井口委員長】 すみません、大分時間が過ぎているものですから、簡潔に お願いします。 【本間】 はい。衛星に関しては、ほかの国とのリソースの取り合いがありま すので、いち早くつばをつけた国がそれをものにできるということがあります。 【五代委員】 大体そういうお話というのは、前からわかっておりまして、ここ に立川委員が今週、来週おられないのですが、最大のユーザーであり、マ ーケットとかビジネスとかということをお考えになる委員に、やっぱりコメント というか意見を私は伺いたいと思います。ですから、事務局から幾つか御説 明があって、それで立川委員のコメントをぜひ伺いたいなと思っているので すけれども。 それからもう一つは、さっきいろんな御説明のときにありましたけれども、 技術的課題は、基本的にあまりないと思います、今、伺っていると。今まで 伺ったのも多少は今までの技術の少し先ぐらいか……。国は今、非常に限 られた予算で非常にきついわけですが、もしそんなに必要で、ユーザーが 多いならば、さっきからお話が出ていますけれども、そんなにいいのだった ら、お金をほかから持ってくるということはないのでしょうか。というのが、私 の率直な意見です。 というのは、この国が分担すると、当然この2005年とか2007年とかとい うのが延びますよね。今までのパターンだと延びてしまいますね。延びると、 本当にそのときにマッチするかという話になると思のです。ですから、こうい う産業化 商業化というのは、やっぱり時間との勝負ではないか、ドッグイヤ ーですから。ですから、それだったらできるだけ早くやる。だけどそれができ るのかなと、予算とか……、技術はあまりないと、私は思っていますから。 【栗木委員】 よしんば技術があったとしても、これがもし6機とか何か上げる のだったら、技術的には1機で実証はできるわけですね。何も6機上げなけ れば、技術実証が……。お互いに相関を持っているわけではないと思いま す。 【野津】 今、御指摘の点は、当然研究会の中でも、いろいろ我々も先生方 に御検討いただいている中で、当然実証機ということになると、1機か2機。 これは当たり前でございます。また、あと、開発要素が、パーツコンポーネン トによって、どの部分が大きい、どの部分が小さいというのは、例えば時計 だとか、さっきのアンテナだとか、あるいは地上で移動体につける非常に小 さなアンテナとか、そういったものが多い。あとは、その他、若干の改良でい ける部分も当然ございます。そういったものが混在しておりますので、そこの お金の負担を、官民、どのように分担していくかというのは、当然ながら、こ ういったプロジェクトを最終的に我が国の宇宙開発としてやっていくというこ とを、宇宙開発委員会でお決めになる際に、経費の関係の分担というのも 御審議いただくのかなと、私自身はそのように思っております。 【井口委員長】 ほかにいかがでしょうか。 よろしいですか。 では、どうもありがとうございました。 それでは、その他に移らせていただきます。宇宙開発の現状報告、大分延 びましたので、最初の国内活動は省略していただいて。 【北村】 それでは、国外の部分、海外部分につきまして、駆け足で御紹介 いたします。先週の水曜日20日ですけれども、ESAのアルテミスでござい ますが、現在、高度3万1,000キロのパーキング軌道に乗りまして、いろい ろなソフトウエア上のチェックですとか、いろいろなことをやっておりましたが、 これを、イオンエンジンを使いまして、軌道を上昇させるというフェーズを開 始いたしました。 イオンエンジンの特徴といたしましては、推力が弱いということがございま すので、実際には徐々に徐々に高度を上げていくというやり方になりまして、 今年の夏ごろに、静止軌道の軌道位置まで上昇するという予定になってお ります。これまでの化学燃料の使用の状況ですけれども、既に95%使用し ておりまして、この残量でいきますと、静止軌道まで上がった段階から、さら に5年から7年程度の運用が可能だろうというふうにESAは言っております。 それから、21日でございますけれども、アメリカのアトラス3Bというロケッ ト、これは新型のものでございます、ロッキードマーチン社がつくっておりま すロケットでございますが、こちらの初打上げが行われまして、成功されて おります。 このアトラス3Bというものですけれども、現在、開発中のアトラス5、非常 に大型のロケットになりますが、こちらの内容と、85%ほど共通になってお りますので、これによりまして、アトラス5の打上げに向けた見通しがかなり 立ったのではないかという観測になっております。 それから23日でございますけれども、アリアン4の打上げが行われており ます。こちらはインテルサットの打上げに無事成功しております。これで67 回目の連続成功という形になっております。 それから、25日でございますけれども、ロシアのほうで、軍事衛星の打上 げがございました。比較的低軌道に軍事用の偵察衛星を投入しております。 こちらの詳細につきましては、さすがに軍事衛星でございまして、あまり入っ ておりませんが、打上げには成功したという情報でございます。 以上です。 【井口委員長】 何か御質問ございますか。 よろしゅうございますか。それでは最後に、前回の議事要旨を御確認、後 ほどお願いいたします。 以上で、第8回の宇宙開発委員会を閉会にいたします。 ありがとうございました。 ── 了 ── (研究開発局宇宙政策課)
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