信頼性試験・不揮発性メモリ評価装置

表1出力 02.6.18 1:59 PM ページ 1
特集:
信頼性試験・不揮発性メモリ評価装置
技術レポート
Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの信頼性に及ぼす要因
1
技術解説
不揮発性メモリの動向と評価装置
7
トピックス
高周波エレクトロマイグレーション評価システムのご紹介
13
技術レポート 02.6.18 10:49 AM ページ 1
技術レポート
Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの信頼性に及ぼす要因
青木 雄一* 田中 浩和* 片柳 寛子**
Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの使用にあたって、温度サイクル試験と高温放置試験を行い、
接合強度による信頼性評価を実施した。今回は接合強度劣化要因の調査のため、
Sn-3.5Ag-0.75CuとSn-2Ag-0.75Cu-3Biについて解析を行った。解析方法は、はんだ組織およ
び接合界面合金層変化を、SEMによる組織観察、EPMAによる元素分析で行った。その結果、
はんだ組織の変化は、Ag3Snのネットワーク構造が変化する。また、信頼性試験後の強度劣
化は、合金層の異常成長と関係することがわかった。
1. はじめに
表2 信頼性試験条件
試験項目
試験条件
近年、鉛フリーはんだの接合信頼性に関する研究が多数
温度サイクル試験
−40℃/125℃
(各30分)
、2000サイクル
報告されており1)∼6)、Sn-Zn系はんだなどの実用化に関する
高温放置試験
125℃、2000時間
報告も行われている。当社においても、Sn-Ag-Cu系の鉛フ
リーはんだを対象として、製品の鉛フリーはんだ化を推進
してきた。これに先立ち、評価基板によるQFPパッケージ
3. 結果と考察
について、温度サイクル試験と高温放置試験後の接合信頼
3-1 接合強度
性を確認した。その結果については、すでに過去のエスペ
ック技術情報(No.23、24号)で報告してきた。本報告では、
接合強度の試験結果を図1に示す。Sn-Pbめっきと
それに加えて、鉛フリーはんだの界面組織と接合強度に着
Sn-2Ag-0.75Cu-3Biの組み合わせでは、温度サイクル、高温
目し、強度低下の要因を解析したので報告する。
放置いずれの試験でも時間経過にともない、強度が著しく
低下した。一方、Pdめっきにおいては、はんだの種類によ
る強度の大きな違いはなかった。
2. 実験方法
接合強度試験後の破断形態を図2に示す。多くの試料は、
リードとはんだの接合界面からの剥離で破断するが、
Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの接合強度が、信頼性試験後
Sn-2Ag-0.75Cu-3BiとSn-Pbめっきの組み合わせでは、高温
に低下する要因を調べた。はんだ材料と、信頼性試験条件
放置、および温度サイクル試験後に、ランドとはんだの接
を表1、2に示す。比較する試料として、総合的に優れてい
合面から剥離するものが多く見られた。これは強度測定値
たSn-3.5Ag-0.75Cuと、融点を下げるために用いた
からも推察されるように、高温放置、温度サイクル試験に
Sn-2Ag-0.75Cu-3Biを分析対象とした。部品めっきの種類は
よるSn-2Ag-0.75Cu-3BiとSn-Pbめっきの強度低下と関係が
Sn-Pb(Sn-10Pb)めっき、Pd(パラジウム)めっきの2種
あると考えられる。
で行った。
評価基板は、内部をディージーチェーン接続した100ピ
3-2 Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの実装後のはんだ組織
ンタイプのQFPパッケージを実装したものを用い、温度サ
Sn-Pbめっきにおける、Sn-3.5Ag-0.75Cu、Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi
イクル試験(冷熱衝撃試験器 TSA-100S-W、エスペック製)
、
についてSEMによる微細組織観察を行った。試験前後の微
高温放置試験(恒温器 PHH-200、エスペック製)を実施
細組織の変化を図3に示す。Sn-Ag系鉛フリーはんだでは、
した。接合強度については、評価基準としてSn-Pb共晶は
Ag3Sn粒子がSnを網目状に取り巻くネットワーク構造を形
んだを用いた。接合強度試験方法は基板に対して、角度45
成することが知られているが、いずれの試験でも試験経過
度にて一定速度(20mm/min)で引っ張り、破断時の最
にともない、Ag3Snのネットワーク構造は初期と比較する
大荷重を測定した。
と崩れはじめ、粒状のAg3Sn相が目立つようになっている
表1 はんだ材料
はんだ材料(mass%)
ことが確認された。Ag3Snは高温放置されても容易に粗大
融点(℃)
Sn-3.5Ag-0.75Cu
216∼220
②
Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi
205∼218
造の微細組織が粒状成長することも報告されている 2)。し
③
Sn-37Pb(基準)
183
かしながら本試験結果で見られるクラックのほとんどは界
*技術開発本部 信頼性研究室 **エスペック環境試験技術センター株式会社 宇都宮試験所
1
化しないが1)、温度サイクル試験によってネットワーク構
①
面から発生しており、粒状のAg3Snの影響は少ないと考え
られる。
エスペック技術情報 No.30
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10
強度(N)
8
リード
6
はんだ
4
Sn-3.5Ag-0.75Cu
ランド
Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi
2
Sn-37Pb
0
0
500
1000
1500
2000
サイクル数
(a)
リフロー後(初期)
(a)温度サイクル試験(Sn-Pbめっき)
10
リード
強度(N)
8
6
4
ランド
Sn-3.5Ag-0.75Cu
はんだ
Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi
2
Sn-37Pb
0
0
500
1000
1500
2000
サイクル数
(b)温度サイクル試験2000時間後
(b)温度サイクル試験(Pdめっき)
図2 Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi(Sn-Pbめっき)の接合強度試験後の破断形態
10
強度(N)
8
6
4
Ag3Snのネットワーク構造
Sn-3.5Ag-0.75Cu
Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi
2
(a)Sn-3.5Ag-0.75Cu 初期
(d)Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi 初期
(b)Sn-3.5Ag-0.75Cu
高温放置2000時間後
(e)Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi
高温放置2000時間後
Sn-37Pb
0
0
500
1000
1500
2000
時間(h)
(c)高温放置試験(Sn-Pbめっき)
10
強度(N)
8
6
Ag3Sn
4
Ag3Sn
Sn-3.5Ag-0.75Cu
Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi
2
Sn-37Pb
0
0
500
1000
1500
2000
(c)Sn-3.5Ag-0.75Cu
温度サイクル2000サイクル後
(f)Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi
温度サイクル2000サイクル後
時間(h)
10μm
(d)高温放置試験(Pdめっき)
図3 Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの微細組織の変化
図1 接合強度の試験結果
エスペック技術情報 No.30
2
技術レポート 02.6.18 10:49 AM ページ 3
3-3 接合界面合金層の成長
ても比較的成長が加速しており、Sn-3.5Ag-0.75CuとSn-Pb
はんだとCuパッドの接合界面について解析を行った。
Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだの接合界面は、Sn-Pb共晶はん
だと同様に、SnとCuによる合金層が形成される。図4に合
金層のEPMA*1(JXA-8100:日本電子製)分析結果を示す。
合金層はCu6Sn5とCu3Sn の2重層であり、信頼性試験により
めっきとの組み合わせによっても、合金層は成長しやすく
なることを示唆する。
温度サイクル試験では、ひずみストレスにより強度低下
の要因となり、試験中に破断を引き起こす可能性がある。
一方、高温放置試験では機械的ストレスがないため、試験
中に破断する可能性は低いが、振動などの要因によっては
合金層が成長したことを確認した。
機械的ストレスになることも報告されている5)。
7
Cuリード
Sn-Pbめっき
(温度サイクル)
合金層厚さ
(μm)
6
はんだ
Cu6Sn5
Cu3Sn
Sn-Pbめっき
(高温放置)
Pdめっき
(温度サイクル)
5
Pdめっき
(高温放置)
4
3
2
2000h
Cuパッド
500h
1
Sn ― 10 μm
1000h
250h
0
(a)Snマップ像
0
10
20
30
40
50
試験時間の平方根(√h)
(a)Sn-3.5Ag-0.75Cu
7
Sn-Pbめっき
(温度サイクル)
6
合金層厚さ
(μm)
Cu6Sn5
Cu3Sn
Cu ― 10 μm
Sn-Pbめっき
(高温放置)
Pdめっき
(温度サイクル)
5
Pdめっき
(高温放置)
4
3
2
2000h
(b)Cuマップ像
1000h
1
図4 Sn-Pbめっき
(Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi 高温2000時間後)の合金層マップ像
250h
0
0
合金層の成長は、はんだの接合信頼性に大きな影響を及
30
40
50
(b)Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi
時間経過により成長した合金層の層厚は、平坦な状態で成
図6 接合界面合金層の成長速度
長せずに、図5に示すように不均一に成長する。これは、
ている3)。そこで、層厚を画像処理により平均化した。そ
20
試験時間の平方根(√h)
ぼす。そこで合金層の層厚を測定し、経時変化を調べた。
液相からの凝固過程における成長の寄与によると報告され
10
500h
3-4 接合界面の元素分布
の結果を図6に示す。なおグラフ上の温度サイクル試験の
図6からわかるように、Sn-Pbめっきにおける合金層の成
経過時間は、1サイクル=1時間としてプロットしている。
長は高温放置が要因として影響すると考えられる。また、
Pdめっきでは、合金層の成長は時間の平方根にほぼ比例
Sn-2Ag-0.75Cu-3BiとSn-Pbめっきの反応層が著しく成長し
関係にあり、拡散律速 *2 と考えられる。一方、Sn-2Ag-
たことから、その要因を調べるため、Sn-Pbめっきの
0.75Cu-3Bi とSn-Pbめっきの合金層は著しく成長していた。
Sn-3.5Ag-0.75Cu、Sn-2Ag-0.75Cu-3Biについて、初期と高温
この原因は、Sn、Pb、Bi三元素による低融点共晶組成に近
放置試験125℃2000時間についてEPMAによる分析を行った。
4)
くなるためと報告されているが 、 Sn-3.5Ag-0.75Cuについ
結果を図7(p.4)
、図8
(p.5)
に示す。
合金層
(a)初 期
(b)2000サイクル後
合金層
(c)2000時間後
図5 Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi合金層の成長の様子
3
エスペック技術情報 No.30
技術レポート 02.6.18 10:49 AM ページ 4
Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi
Sn-3.5Ag-0.75Cu
はんだ種類
Cuリード
反射電子像
(SEM像)
はんだ
CP ― 20 μm
Cuパッド
CP ― 20 μm
Pbマップ像
Pb ― 20 μm
Pb ― 20 μm
Bi ― 20 μm
Bi ― 20 μm
Biマップ像
界面合金層
Snマップ像
(拡大)
Sn ― 10 μm
Sn ― 10 μm
Pb ― 10 μm
Pb ― 10 μm
Bi ― 10 μm
Bi ― 10 μm
Pbマップ像
(拡大)
Biマップ像
(拡大)
図7 Sn-Pbめっきにおける初期の元素分析マップ像
エスペック技術情報 No.30
4
技術レポート 02.6.18 10:49 AM ページ 5
Sn-3.5Ag-0.75Cu
はんだ種類
Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi
Cuリード
反射電子像
(SEM像)
はんだ
CP ― 20 μm
Cuパッド
CP ― 20 μm
界面のPb濃化層
Pbマップ像
Pb ― 20 μm
Pb ― 20 μm
Bi ― 20 μm
Bi ― 20 μm
Sn ― 10 μm
Sn ― 10 μm
Biマップ像
Snマップ像
(拡大)
界面のPb濃化層
Pbマップ像
(拡大)
Pb ― 10 μm
Pb ― 10 μm
Bi ― 10 μm
Bi ― 10 μm
Biマップ像
(拡大)
図8 Sn-Pbめっきにおける高温放置試験2000時間後の元素分析マップ像
5
エスペック技術情報 No.30
技術レポート 02.6.18 10:49 AM ページ 6
図7に示すように、Sn-3.5Ag-0.75Cu、Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi、
どちらのはんだも初期では合金層が薄く、Pbは一様に、は
んだ中に分布している。しかし、図8に示すように、高温
放置試験2000時間後では、合金層がいちじるしく成長し、
Sn-2Ag-0.75Cu-3Bi接合部のPbが合金層界面に濃化層*3を形
成している。これは合金層がSnの化合物であり、成長にと
もなって界面近傍のSnを奪っていくために、Pbが濃化す
ると考えられる4)。Biは3%で添加量としては少量ではあるが、
図7、8からわかるように、BiはPbとともに濃化層を形成し
ていると思われる。したがって、Sn-Pb-Biの低融点共晶組
成に近い組成になり1)、高温放置試験によって液相が生じ、
合金相が著しく成長したと考えられる。Sn-3.5Ag-0.75Cuでは、
Biが存在しないために、合金層界面にPbの濃化層はそれほ
ど目立たない。また、接合信頼性においては、界面に存在
するBiが応力吸収を阻害し、界面への応力集中を高める作
用から6)、いっそうの強度低下をもたらすことも考えられる。
4. 結論
Sn-Ag系鉛フリーはんだに対して、温度サイクル試験と
高温放置試験を行い、接合信頼性における要因を解析した
結果、以下のことがわかった
1)Ag3Snのネットワーク構造が高温放置の効果によりやや
崩れかけており、粒状のAg3Sn相の変化が大きく見られ
るが、はんだ強度には影響を及ぼしていない。
2)高温放置によって界面合金層の成長を加速することが
でき、Pdめっきについては、時間の平方根にほぼ比例
関係となり、拡散律速に成長していた。一方、
Sn-2Ag-0.75Cu-3BiとSn-Pbめっきの組み合わせでは、合
金層が著しく成長するため、温度サイクル、高温放置
試験ともに顕著な強度低下を示した。
[用語解説]
*1. EPMA( Electoron Probe Microanalyzers)
電子線を試料に照射すると、元素に固有な波長を持
つ特性X線を発生する。これを検出することで、元
素分析を行う。特に、波長分散型では微細かつ高感
度な分析が可能。
*2. 拡散律速(diffusion-controlling)
化学反応などの速度過程が、物質の拡散速度によっ
て支配される状態をいう。
*3. 濃化層
本報告では、金属の拡散または粗大化などによって、
単一元素の濃度が増した層を示す。
〔参考文献〕
1)菅沼克昭、中村義一:
「Sn-Ag共晶はんだとCuの接合界面の微細組織と強度」
、日本金属学会誌、59、P.1299-1305、
(1995)
2)荘司郁夫、森 史成、藤内伸一、山下 勝:
「Sn-Ag系Pbフリーはんだを用いたマイクロ接合部の熱疲労組織」
、エレクトロニクス実装学会誌4〔2〕
、
P.133-137、
(2001)
3)菅沼克昭:
「鉛フリーはんだ付け技術」、工業調査会、(2001)
4)今村武史、藤井俊夫、廣瀬明夫、小林紘二郎:
「Sn-Ag系鉛フリーはんだを用いたQFPの継手強度に及ぼす界面反応の影響」
、Mate2001、P.481-486、
(2001)
5)青木雄一、田中浩和、浜野寿之:
「複合環境試験によるはんだ接合部評価方法の検討」、第15回エレクトロニクス実装学術講演大会、P.183-184、
(2001)
6)中原祐之輔、二宮隆二、松永純一、竹本 正:
「Sn-3.5Ag-3In-xBiはんだの機械的性質と接合強度」
、Mate99、P.341-346、
(1999)
エスペック技術情報 No.30
6
技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 7
技 術 解 説
1
不揮発性メモリの動向と評価装置
矢野 功* 荻野 亮一*
情報インフラの充実やPDA(Personal Digital Assistance)など携帯情報端末の応用分野が
拡大している。これらのトレンドに向けて半導体メーカの開発競争も一層熾烈になっている。
中でも電源が無くなっても記憶内容を保持できる不揮発性メモリに関する関心は高く、各
種メモリが開発されている。不揮発性メモリの試験装置には、自由度の高い評価機能と高
速処理が望まれている。当社では、不揮発性メモリの研究開発から量産までの試験、検査
用の装置を提供しているので紹介する。
1. はじめに
2. 不揮発性メモリの動向
移動型情報機器の応用分野が広がり、不揮発性メモリに
不揮発性なら電源を入れて機器の状態を保持しておく必
対する関心が高まっている。実用化で先行しているフラッ
要がないため、未使用時はオフにして消費電力を抑えられ
シュメモリでは、セル構造を簡素化して低コスト化を図る
る。このことは環境にもやさしいことにつながる。また、
*1
ためにMONOS構造 への転換や大容量化のための多値化
パソコンのインスタントオンが実現できるなど機器の利用
技術、高速書込みのためのセル構造の提案などが相次いで
形態が向上し、応用範囲の拡大が期待できるため、さらな
いる。
る市場規模の拡大が見込める。さらに、ロジックとの混載
フラッシュメモリ以外の新しい不揮発性メモリ分野とし
が容易であればワンチップ化によって性能が一気に向上す
てFeRAM、MRAM、OUMなどの開発競争が激しくなって
る。メモリがDSPやマイクロプロセッサと同じチップ上で
いる。
通信でき、広帯域化と高性能化を達成できる。さらに、メ
*2
FeRAMではHigh-K と呼ばれる新しい材料を用いるため、
モリをチップ上に集積すると低電圧、低消費電力になる。
素材の評価としてTDDB(酸化膜経時破壊)試験の必要性
これらの結果1μW当りのMIPS値で3∼5倍改善できるとい
がある。また、不揮発性メモリとして、何回の書き換えが
う報告がある。これらがDRAM並みの性能、価格を実現で
できるかを評価するエンデュランス試験、データの書き換
きれば4兆円を超える巨大なマーケットが発生する。
わりがないかを評価するディスターブ試験、データリテン
従来の半導体不揮発性メモリとしては、MROM、
ション試験などの評価が重要とされている。これらの基礎
PROM、UV-EPROM、EEPROMが使われていた。これらは、
評価は、テスターを用いて行われるが品質管理としての多
TAT(Turn Around Time:データの書き換えに要する時間)
数個評価において安価な評価装置が望まれている。
が長く、高速動作、低コスト、大容量といった市場ニーズ
当社では、不揮発性メモリの研究開発段階の素材評価装置、
に応えられるものではないため用途が限られていた。
品質管理としての多機能高速処理が可能な評価試験装置、
近年フラッシュメモリの低コスト、大容量化などもあり、
そして大量デバイスの検査装置をラインナップしている。
携帯電話、デジタルカメラ、デジタル録音機、MP3の音楽
表1 各種メモリの機能比較
不
フラッシュメモリ
読み出し
メ
モ
リ
揮
MRAM
OUM
発
性
メ
モ
リ
SRAM
DRAM
中
速
高
速
高
速
高
速
中
速
速
中
速
高
速
高
速
高
速
中
速
不揮発性
あ
り
中
間
あ
り
あ
り
な
し
な
し
リフレッシュ
不
要
不
要
不
要
不
要
不
要
必
要
セル面積
4∼8F2
論理回路との混載
低電圧動作
動作電流
実用化
製造・研究
メーカ
速
性
低
書き換え回数
高
発
書き込み
集積度
中
揮
FeRAM
20F2
多値化技術に期待
悪
20F2
い
期
待
10F2
大
期
待
40F2
大
悪
10F2
い
限界に近い
105∼6
1012∼15
1015
1013
制限なし
複雑→MONOSで改善
可
可
可
可
可
可
可
10mA以上
10mA以上
10∼80mA
不
可
限
10∼100mA
実
あ
り
10mA以上
用
富士通・日立・東芝
三菱・シャープ
サムソン
インテル・AMD
界
小容量で実用
富士通・日立・東芝・松下
NEC・ローム・サムソン
インフィニオン・ラムトロン
TI・ハイニックス
開
発
中
IBM・インフィニオン
モトローラ・NEC
サムソン・HP
開発中 2005年
インテル・STマイクロ
エレクトロニクス
実
制限なし
限
用
複
雑
界
あ
実
NEC・サイプレス
東芝・日立
など
り
100mA
用
ラムトロン・ハイニックス
サムソン・インフィニオン
*計測・テストシステム事業部 システム技術部
7
エスペック技術情報 No.30
技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 8
録音など用途が急速に拡大している。この傾向は、携帯機
② NOR型フラッシュメモリ
器に対するさらなる機能性能向上の期待感を生み、そのキ
書き込み(電子の注入)は、ホットエレクトロン(シ
ーデバイスとして不揮発性メモリが注目されている。
リコン表面から酸化膜へのエネルギー障壁を越える
不揮発性メモリには、低コスト、大容量、高速アクセス、
ことができる電子)によって行う。消去は、FN(Fowler
書き換え耐性、低消費電力、ロジックとの混載のしやすさ
Nordheim)電流によって行う。書き込み電流が大き
などが期待されている。表1に各種メモリの機能比較を示す。
いため1バイト単位での書き込みしかできない。
ランダムアクセスが可能なため、従来はコード記憶
(1)
フラッシュメモリ
用としてEPROMの置き換えやパソコンのBIOS記憶
①フラッシュメモリとは
電気的に書き換え可能なEEPROM(Electrically
Erasable and Programmable Read Only Memory)を
一括消去にして高集積と低コストを実現したもので、
利用範囲が広がっている。
フラッシュメモリセルは、図1に示すようにCG(Control
Gate:制御ゲート)
とシリコン基板との間にFG(Floating
Gate:浮遊ゲート)を設けた2重ゲート構造からな
るMOSトランジスタである。FGの電荷の蓄積量に
よってメモリセルに電流を流し始めるCGのしきい値
電圧が異なり、論理データを記憶することができる。
FGに電子を電気的に注入、もしくは放出した後で電
源を切っても、FG内の電子は保持されるため、不揮
発性メモリとなる。
FGへの電荷の蓄積方法やセル構成によって各種フラ
ッシュメモリがある。表2にNOR型とNAND型/
AND型の比較を示す。
用として用いられていたが、携帯電話への用途が急
拡大している。
消去・書き込み速度が遅いため改善提案がなされて
いる。また、セル構造から、大容量化の限界が見え
てきたので、MONOS構造などセル構造の見直しも
行われている。
③ NAND型/AND型フラッシュメモリ
消去・書き込みともFN電流によって行い、書き込み
電流が小さく、複数バイトの同時書き込みが可能で
ある。ランダムアクセスはできないが、書き込み・
消去速度が速く、大容量が容易である。ファイルメ
モリ用途として、音楽録音、デジタルスチルカメラ、
小容量ハードディスクの置き換えなどの用途が広が
っているが、さらなる低価格化が期待されている。
(2)MRAM
MRAM
(Magneto resistive Random Access Memory)は、
不揮発性で低電圧動作、高い書き換え耐性、DRAM
並みの高速性と高集積化が期待できるメモリとして
注目されている。MRAMではトンネル磁気抵抗(TMR:
CG
tunneling magneto-resistance)効果を示すトンネル
ソース
ドレイン
ソース
ドレイン
リセルとして用いる。これは磁化方向によって抵抗
FG
n+
n+
接合(MTJ:magnetic tunnel junction)構造をメモ
n+
n+
値が大きく変化する原理を利用している。書き込み
では磁化の有無によって抵抗値を制御し、読み出し
P
P
初期状態
書き込み状態
図1 フラッシュメモリのデータ保持
表2 NOR型とNAND型/AND型の比較
NOR型
NAND型/AND型
メリット
・ランダムアクセスが速い
・書き込み、消去が速い
デメリット
・書き込み、消去が遅い
・ランダムアクセスが遅い
・バイト毎の書き込みができない
コードメモリ用途
用
途
携帯電話・ゲーム
従来のEPROMの置き換え
ファイルメモリ用途
音楽配信 MP3
デジタルカメラ、
ビデオ
では磁化抵抗による電流値によって ' 1 'と ' 0 'を判定
する。
TMR素子*3は微細化しやすく、DRAM並みの高速性、
書き換え耐性が期待できる。MR比(抵抗値の変化量)を
大きくできる材料やセル構造の開発に注力されてい
る段階で、2005年頃には実用化されると言われている。
(3)FeRAM
DRAMのキャパシタは、微細化に伴い、蓄積電荷量が
小さくなり、限界が見えてきている。そこでHigh-Kと
呼ばれる高誘電率を持つ素材が注目され、FeRAMとし
て期待されている。現在の技術ではセルの微細化が難
しいという課題がある。
当面はメモリカードやゲームへの応用が考えられる。
(4)OUM(Ovonic Unified Memory)
光ディスクの記録原理を半導体メモリとして応用した
もので、書き込みでは印可する熱の制御によって結晶
とアモルファスに状態を変化させることで抵抗値が変
化する。読み出しは、電流変化によって ' 1 'と ' 0 'を判定
する。2005年の実用化が目標になっている。
エスペック技術情報 No.30
8
技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 9
3. フラッシュメモリの故障モードと評価技術
3-1 エンデュランス試験
3-3 Vt分布測定
エンデュランス(データ書き換え耐性)は、書き込み/
セル毎の電荷蓄積量を全セルに対して測定することで、
消去の繰り返し動作に対して何回まで正常にデータを書き
セルの劣化状態を把握する。センスアンプの比較電圧を外
換えできるかを試験するものである。セルのしきい値電圧
部から制御できるテストモードを備えたデバイスにおいて、
Vtが、電気的な書き換えのストレスによって変化してしま
比較電圧を変化させて、読み出しデータが' 0 'から' 1 'に変
うことにより書き換えができなくなる。この評価試験には、
化するビット数を電圧毎に積算することで分布をとる。
下記の2種類がある。
図3にVt分布測定例を示す。
(1)E/W
(Erase/Write)
サイクル試験
フラッシュメモリの書き換え回数は、10 6回程度である
が、MRAMなどでは、10 15回となる。サイクル毎にダ
書込
ミー時間があると試験時間が大幅に増大してしまうので、
消去
試験装置としては、無駄のない高速書き換えのサイク
ビ
ッ
ト
数
ル試験のできることが望まれる。
(2)動作時間測定
フラッシュメモリの書き込み/消去動作は、デバイス
内部の制御回路によって規定のしきい値電圧(Vt)に
なるまで繰り返しの動作を行う。
この動作時間は、チャージ動作の繰り返し回数で決ま
りセルの劣化によって長くなる。この書き込み/消去
1.5
2.5
4.0
6.0
電圧(V)
時間を測定すればセルの劣化特性を把握することがで
きる。図2に時間測定例を示す。
図3 Vt分布測定例
3-4 バッドブロック管理
NAND型/AND型フラッシュメモリでは、多数のブロッ
10
クに分割しての消去・書き込みが可能なようになっている
動
作
時
間
(S)5
が、歩留まり向上のため規定した不良のブロック数以下で
あれば良品としている。この不良ブロックはフラッシュメ
モリ制御ソフトにより、良品ブロックと入れ替えて利用す
ることになる。
0
1
10
2
10
3
10
4
10
5
10
E/W回数(回)
品質評価においては、バッドブロックが規定した数量以
下であることを判定し、不良ブロックには、アトリビュー
トエリア(予備のメモリ)に良否情報をインプリントでき
図2 セクター消去動作の時間測定例
3-2 ディスターブ試験
3-5 過消去
消去/書き込みは、BL(Bit Line)とWL(Word Line)
FGにある電子をFN電流で放出する場合に、過剰な放出
によって選択されたセルに対して行われる。しかし、BL
が行われるとFGに正孔(正電荷)が残ることになり、し
とWLに接続された選択セル以外にもバイアス電圧が印加
きい値電圧Vtが変化してしまい、正常な書き込みができな
されることで、電子トンネルなどのトラップが発生してし
くなる。
きい値電圧Vtが変化してしまい、選択セル以外のセルのデ
9
る機能が必要になる。
ータが書き換わってしまう。
3-6 データリテンション
WLとBLへの印加電圧を外部から制御できるテストモー
FGから電子の抜けが起こることで、データが変わって
ドを備えたデバイスにおいて、印加電圧を制御してデータ
しまう。この要因としては、セルへの高電圧印加による
の変化を評価する。
FGの帯電やゲート酸化膜の欠陥がある。
エスペック技術情報 No.30
技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 10
4. 試験装置の紹介
4-3 フラッシュメモリテスト装置(RBM-F3)
フラッシュメモリを主体にしたメモリ対応の量産用モニ
不揮発性メモリの試験に対応できる当社装置を紹介する。
4-1 半導体パラメータ自動評価システム
(AMM-1000:写真1)
ターバーンイン装置。NAND型、AND型では、16個同時測
定を実現し、高速モニター試験が可能である。バッドブロ
ック制御をハードウェアで行うことで高速処理を実現して
いる。また、インプリント制御、マスターROMなどの機
現在、フラッシュメモリのトンネル酸化膜はSiO2(シリ
能もあり、テスターでは時間のかかる試験をバーンイン装
コン酸化膜)を使用している。0.1μm以降のプロセスで
置に移管できる性能・機能を有しており、テストコストの
はこのトンネル酸化膜厚は10Å以下となり従来のシリコン
削減が可能である。
酸化膜ではリーク電流が増大し使用できなくなる。酸化膜
に変わる高誘電率膜の新材料を大量に評価する必要がある。
AMM-1000では、最大200チャンネルの一括評価が可能
であり、大量のTDDB(酸化膜経時破壊)評価を安価に短
時間に行うことが可能である。
4-4 ウェーハバーンイン装置(WBD-03)
DRAM、SRAMなどのメモリにおいて量産ラインに導入
されている。今後は,フラッシュメモリのバーンインにも
利用が拡大されようとしている。バッドブロック制御にも
対応可能である。
携帯機器用のスタックタイプのフラッシュメモリでは、
カスタム対応品が増えており、パッケージ後ではテストコ
ストの増大が問題になっている。解決策として、ウェーハ
バーンインへの移行が強まると予測される。
写真2にWBD-03のシステム外観を示す。
テストヘッド
プローバ
P8XL
UF200S
写真1 TDDB評価システム(エスペック製 AMM-1000)
4-2 フラッシュメモリE/Wサイクル試験装置
(RBM-F2)
バーンインテスタ
写真2 ウェーハバーンイン装置(エスペック製 WBD-03)
1993年に初号機を開発して以来、NAND型、AND型、
NOR型、SPIシリアル、I 2 C シリアル、各種フラッシュカ
ード、エンベデットタイプなど、さまざまなフラッシュメ
モリの評価技術と、各社への納入実績に基づくノウハウが
蓄積された装置である。
5. 不揮発性メモリ評価装置
(新製品 RBM-F25シリーズ)
フラッシュメモリの評価では、エンデュランス試験とし
て、消去、書き込みの時間を測定してセルの劣化特性を評
本装置は、フラッシュメモリやFeRAMなどの不揮発性
価する。また、セルごとのしきい値(Vt)分布測定を行う
メモリやシステムLSIなどのロジック系デバイスへの混載
ことでも評価する。フラッシュメモリでは、DFT(Design
メモリを対象に、高速に評価試験を行うモニターバーンイ
For Test)の考え方が当初から用いられ、コマンドや高電
ンシステムである。
圧印加によってテストモードを設定することで、容易に評
写真3(p.11)にRBM-F25のシステム外観、表3(p.11)に基
価用のBIST(Built In Self Test)が利用できるようになっ
本仕様を示す。
ている。
エスペック技術情報 No.30
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技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 11
(2)各種システムLSIの試験
最大32MWのベクタデータ発生とモニター機能により、
システムLSIのモニターバーンイン試験を大量かつ
高速に行うことができる。
ベクタジェネレータ*4とメモリパターンジェネレー
タ*5 の両方の機能を持っており、同時に動作するこ
とも可能で、ロジックとメモリの混載デバイスの試
験に対応できる。
JTAG*6機能の利用では、最大10MHzのテストサイク
ルでの試験が可能である。
マスターROM機能を用いて、TOC動作のデータを転
送することができ、柔軟なベクタデータ発生機能に
より、BISTに対応することが可能である。
図4に評価対象デバイスを示す。
不揮発性
メモリ
EPROM
EEPROM
写真3 不揮発性メモリ評価装置(エスペック製 RBM-F25)
表3 RBM-F25基本仕様
項
目
仕
フラッシュ
メモリ
MRAM
様
最大テストサイクル
10MHz、
オンザフライ30
電源装置
2/オプション4
電源電圧
1∼10V/10A、1∼13V/5A
ドライバch数
114ch/オプション4ch 内モニター数64ch
ドライバ電圧
VIH:1∼6V、VIHH:1∼13V/4ch
OCP,OVPクロックエラー検出
あり
ベクタメモリ
64ビット×標準8MW、最大32MW
同測数
8/4個
アドレス発生
32/28
データ発生
16
フラッシュカード
MMC、SD、ATA
メモリスティック
スマートメディア
特長・用途:
携帯・ゲーム
ランダムアクセス
NOR型
NAND型
AND型
FeRAM
特長・用途:
MP3、DSC、DVC
大容量・低価格
高速ブロック読み出し
シリアル型
OUM
システムLSI
(BIST、BOST、TOC)
図4 評価対象デバイス
(3)フレキシブルな構成
進歩の著しいデバイスに対応するために、PG基板の
システムLSIでは、多様なベクタデータの発生機能とク
パターン発生機能・制御機能およびドライバ基板の
ロック信号発生機能でテストを行い、モニター機能により
制御機能をフィールドでバージョンアップすること
テスト結果を判断することが可能である。
が可能である。
フラッシュメモリでは、複雑なアルゴリズムを発生でき
ドライバ基板には,自由度の高い2MBのワークメモ
るパターン発生機能と高速なバッドブロック管理機能など
リがあり、評価試験のデータ保存として利用可能で
により、テスターでのテスト機能の移管が可能である。ま
ある。これらにより、未知のデバイスの評価試験に
た、FeRAMやMRAM、および新しく開発される不揮発性
柔軟に対応できる。
メモリのテストに対応できるように、拡張性と柔軟性をコ
現状では、書き込み・消去の時間測定、バッドブロ
ンセプトとして開発した装置である。この装置の特徴を説
ック管理、Vt分布測定、フェイルビット数カウント
明する。
などをハードウェア制御で高速に実現している。
(1)各種フラッシュメモリのE/Wサイクル試験
(4)評価試験と量産試験
NOR型・NAND型・AND型など、各社各様のフラッ
RBM-F25は、1枚1ゾーン構成で、各種評価試験を高
シュメモリに対応したE/Wサイクル試験を大量か
速に行う。RBM-F25XはN枚1ゾーン構成の量産試験
つ高速に行うことができる。
に対応している装置である。操作性、テストプログ
RBM-F2装置の上位互換で、RBM-F2装置のバーンイ
ラム作成は共通であり、評価試験から量産試験まで
ンボード、テストプログラムを利用して評価試験を
対応できる自由度を持っている。
さらに高速に行うことが可能である。
図5,6にシステム構成図を示す。
バッドブロック管理機能、Ready/Busy信号制御機
能により、効率的な試験が可能である。また、マス
ターROM機能により、大量のROMライタとして出
荷時のデータを書き込むことが可能である。
11
エスペック技術情報 No.30
技術解説1 02.6.18 11:28 AM ページ 12
チャンバー
サーバ
パソコン
WIN-NT
プリンタ
UPS
Ethernet
S/C
パソコン
WIN2000
RS-232C
3台 max
C/C
T/U ♯1
PG
ドライバ
電源
IEEE
1394
T/U ♯32 max
PG
ドライバ
電源
図5 評価用システム構成図 RBM-F25
チャンバー8台 max
プリンタ
UPS
サーバ
パソコン
WIN-NT
Ethernet
S/C
パソコン
WIN2000
♯1
PG
RS-232C
PG
*1. MONOS構造(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)
♯1
♯32 max
ドライバ
ドライバ
FG(Floating Gate:浮遊ゲート)構造では、小型化
電源
電源
しようとすると欠陥が発生してこれ以上の微細化に
IEEE
1394
♯8 max
[用語解説]
C/C
♯1
♯32 max
ドライバ
ドライバ
電源
電源
対応できない。そこで、電荷蓄熱部をFGから窒化膜
に変更したMONOS構造が注目されている。メモリセ
ルの小型化、製造工程削減などの利点がある。
*2. High-K
電荷蓄積量が大きい素材。強誘電体メモリ素材とし
図6 量産用システム構成図 RBM-F25X
(5)自己診断機能
DUT電源の電圧出力や電流測定機能、波形出力、モ
てはY1、PZTなどがある。小型化できるとともに、
不揮発性の利点がある。
K=
1
4πε0
ε0=誘電率
ニター機能、メモリチェックの自己診断が特別な診
断ボートなしに可能で、定期的な診断が、容易に短
時間で実現できる。
(6)バーンインチャンバーの集中管理
1台のホストコンピュータで、最大8台のバーンイン
チャンバーを集中管理することができる。
*3. TMR素子(Tunneling Magnet Resistive)
強磁性体層の間に絶縁膜を成膜したもの。片方の磁
性体の磁化方向を変更することで、抵抗値が変化する。
(書き込み)電流を流して電圧の大小で ' 1 '、' 0 'を判断
する。抵抗値変化が大きい素子が必要となる。
*4. ベクタジェネレータ
6. まとめ
ロジックデバイスをテストするためのランダムなパ
ターンを発生させる。
不揮発性メモリでは自由度が高く、高速な評価装置が望
まれている。大量の評価データを高速処理でき、また新た
な機能にも対応できる柔軟性、拡張性を考え、お客様のご
要望に最適な装置開発を行い提供したいと考えている。
*5. メモリパターンジェネレータ
メモリデバイスをテストするための各種パターンを
発生させる。
*6. JTAG(Joint Test Action Group)
4本の制御信号と1本のモニター信号からなり、シリ
アルデータでデバイス内部のレジスタを制御して機
能試験を行い、試験結果のモニターで良否判断する。
BIST、DFTの考え方の浸透で注目されている。
〔参考文献〕
1)「MRAM技術 基礎から応用まで」
、サイペック㈱
2)日経マイクロデバイスセミナー、
「不揮発性メモリ技術最前線」、(2001.12)
3)日経マイクロデバイス、
(2002.2,3)
4)日経エレクトロニクス、
(2001.2,9)
5)半導体産業新聞、
「新たな段階を迎えたフラッシュメモリの全貌」、(2001.7)
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2. エレクトロマイグレーションの現象と
高周波の要求
エレクトロマイグレーションは、LSI配線などの微細配
線に対して電流を印加すると、配線材料である金属原子が
高周波エレクトロマイグレーション
評価システムのご紹介
石川 稔* 遠山 恵一**
電流により電流方向に移動するという現象です。金属原子
の移動による配線の断線や、移動した原子による隣接する
配線とのショートというような故障が発生します。エレク
トロマイグレーションを発生させる要因は、配線の電流密
度が高いことであり、温度が高いと加速されます。配線の
微細化に伴い、配線の電流密度が高くなってきているため、
この評価は重要なものとなってきました。
1. はじめに
実際には、LSIは非常に速いパルス周波数で動作してい
ます。しかし、ストレスとしてACパルス電流での評価は
集積回路の信頼性を評価する手法の一つとして、高温、
これまであまりされておらず、DC電流印加での評価がほ
高電流密度のストレス印加状態で配線の寿命を加速試験す
とんどでした。ACパルス電流印加では両方向に原子の移
る「エレクトロマイグレーション評価試験」があります。
動が起るため、DC電流印加より寿命が延びると考えられ
エレクトロマイグレーション評価システムは、温度スト
ていますが、最近のさらなる微細化、高密度化、高速化の
レス印加部、電気的ストレス印加部および計測部を組み合
要求によりAl配線からCu配線への移行、多層配線、Low-K
わせて、多数個のサンプルを一度に評価できるようにした
膜(低誘電率膜)の使用など、プロセスの変化により、実
信頼性評価システムです。
動作に近いという観点からの評価が求められています。新
当社では、エレクトロマイグレーション評価システムと
しいプロセスで使われる絶縁膜が放熱を妨げ、配線の自己
して、DC評価専用のAEM-D100、AC/DC両用のAEM-1000
発熱により、熱に起因する故障が発生しないか、また多層
のラインナップがありましたが、
「より高速なパルス電流」
配線により、絶縁膜がキャパシタとして働き、不具合が発
のご要求にお応えするため、この度「高周波エレクトロマ
生しないかなどの懸念に対して、実使用に近いACパルス
イグレーション評価システム AEM-HF」を開発いたしまし
電流による検証がより必要となっております。
た。(写真1)
3. 特長
本システムには、次のような特長があります。
①ストレスとして、最速20MHzのACパルス電流の印加が
可能です。Duty比を、10∼90%まで10%単位で可変でき
ます。
②電流源はTEG(Test Elements Group:サンプル)毎に独
立しています。チャンネルごとに電流源をカスタムIC化
することにより、高機能化と小型化を同時に実現してい
ます。
③試験毎に、ACパルス電流、DCパルス、DC定電流スト
レスが選択可能です。
④ダイレクトヒートボード(DHB)方式を採用しています。
ヒートボードをTEG上面に接触させ試験温度を与える方
式です。350℃までの試験が可能であるため、Cu配線に
対応した評価が行えます。
DHBチャンバー
コントロールラック
⑤AC用電流プローブをTEGソケット下部に装備し、実際
に印加されている電流の波形確認が容易に行えます。
(チ
写真1 高周波エレクトロマイグレーション評価システム(エスペック製 AEM-HF)
ャンバー1台につきプローブ1台装備)
⑥従来の当社システムの操作性を踏襲しています。アーキ
テクテャー・操作性については、可能な限り従来システ
ムを踏襲し、当社従来システムをお使いのお客様に、違
和感の感じさせないシステムになっています。
*計測・テストシステム事業部 システム技術部
** 同 システムインテグレートグループ
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4. 高周波エレクトロマイグレーション評価システム
110%
105%
95%
4-1 システム仕様と構成およびブロック図
本システムの主な仕様を表1に、ブロック図を図1に示し
10mA
ます。
表1 主な仕様
型
式
AEM-HF
ソフトウェア
OS:Windows NT
ACパルス電流印可範囲
0.1mA∼30mA(正負側とも)
電流値の設定分解能
3mAレンジ:0.01mA(10μA)
30mAレンジ:0.03mA(30μA)
ACパルス周波数
100kHz∼20MHz(最小パルス幅25ns)
設定Duty比範囲
10%∼90%(10%レンジの設定)
その他ストレス電源
DCパルス定電流・DC定電流(オプション)
測定精度
±0.2%(印可電流1mA/100Ω測定時)
試験TEG数
10もしくは20TEG(DHBチャンバー1台)
チャンバー3台まで増設可能
試験温度範囲
+70∼+350℃(温度分布±7℃:+350℃時)
電源電圧設備
AC200V 20A(DHBチャンバー1台)
AC100V 15A(コントロールラック部)
DHBチャンバー
システム外法 システム
コントローラ部
10ns
20ns
40ns
50ns
公称値
許容差
許容差は上下対称
f=10MHz、Ⅰ=±10.0mA、R=100Ω 純抵抗
図2 波形の仕様例
W1066×H 670×D 745mm
10mA
W 530×H1800×D1100mm
・Windows NTは米国マイクロソフト社の登録商標です。
50ns
システムコントローラ部
ホストPC
・試験管理ソフト:ユーザ・インタフェース
・統計処理ソフト:データ処理
f=10MHz、Ⅰ=±10.0mA、R=100Ω 純抵抗
図3 実測波形
メジャーメント・コントローラ
GP-IB
・試験スケジュール管理
・測 定
・チャンバー制御
PMS-CA
パターンジェネレータ
電圧計(マルチメータ)
直流定電流発生器
(
TEGボード部のソケット上に抵抗器を取り付け、電流プローブを使用
してオシロスコープで波形データを取得したものです。
(
4-3 留意していただきたいこと
高周波電流でエレクトロマイグレーション評価を行う場
合、TEGの作りこみには注意が必要です。交流を印加する
E-BUS
DHBチャンバー
ため、ストレス電流は、TEGのインダクタンス成分または
キャパシタンス成分の影響を受けます。最近のプロセスで
ヒートボード
は、多層配線構造、絶縁膜などが、TEGの設計仕様によっ
TEGボード:
20ソケット
(20CH)
ては、インダクタンス成分またはキャパシタンス成分の発
生する可能性があり、試験目的に応じてそれらを考慮する
スキャナー
ことが必要です。
CH20
CH1
5. おわりに
今回、電流ストレスでACパルス電流、それも20MHzとい
図1 システムブロック図
う高周波のストレスが印加できる装置をご紹介しました。
関連システムとして、350℃の高温下で、Low-K膜の絶縁劣
4-2 ACパルス電流出力波形
化特性を評価することができるLow-K膜絶縁劣化特性評価
システム(BTS)も開発いたしました。Low-K膜の評価に、
実際の電流出力波形について、図2に波形の仕様、図3に
ぜひご利用ください。
実際の測定波形を示します。
これからもお客様のご期待にお応えできる「物作り」を
展開してまいりますのでご期待ください。
●お問い合わせ先
最寄りの当社営業所まで、お気軽にお問い合わせください。
エスペック技術情報 No.30
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表4出力 02.6.18 11:08 AM ページ 1
エスペック技術情報
・発行日……2002年7月1日発行(年4回発行)
・発 行……エスペック株式会社
大阪市北区天神橋3-5-6 〒530-8550
●本誌に関するお問い合わせは
エスペック株式会社「エスペック技術情報」編集室まで
お申し付けください。 TEL.06-6358-4511
FAX.06-6358-5505 Eメール http://www.espec.co.jp/mailto.html
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http://www.espec.co.jp/
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・本誌は再生紙および大豆油インクを使用しています。
C 2002 ESPEC CORP.
⃝
ETRJ030