欧州債務問題の進捗状況 - ニッセイ アセットマネジメント

F i n a n c i a l M a r k e t R e v i e w | 2011年7月4日
vol.47
欧州債務問題の進捗状況
9ギリシャの8月末までの国債償還・利払いに関する資金繰りには目処が立ち、目先のデフォルト(債務不履行)リスクは後退。
9但し、ギリシャの2012年の国債市場復帰(中・長期債を発行しての資金調達)は困難であり、2015年までに総額2,000億ユーロの資
金不足となる計算。今後、追加金融支援とウィーンイニシアティブ型措置※を組み合わせた対応がなされよう。
【 図表①:ギリシャの追加財政緊縮策の骨子 】
●6月30日にギリシャ議会は、賛成155票、反対138
票で追加財政緊縮策(図表①)を可決しました。これ
により、昨年5月にギリシャと国際通貨基金(IMF)・
欧州連合(EU)が合意した期間3年総額1,100億
ユーロのギリシャ支援金のうち、120億ユーロ相当の
送金が実施される運びとなりました。このため8月末ま
でに予定されている国債償還・利払いに関する資金
繰りに目処が立ちました。従って、目先8月末までの
デフォルトリスクは後退しました(図表②)。
28 3億ユーロの財政緊縮計画( 201 2~20 15年)
財政赤字を20 11年はGDP比7.5 %に抑え、2 014 年までに3%以下とする
●歳入増加134億ユーロ
・レストラン・バー等の付加価値税を9月に13%から23%に引き上げ
・所得税「連帯税」:給与所得者に1~5%の上乗せ税率
30歳以上の納税者の所得税の最低課税対象所得水準は1万2千ユーロから
8千ユーロに引き下げ
・暖房油増税
・不動産課税強化
●歳出削減148億ユーロ
・公務員給与削減8億ユーロ(退職金・公務員採用削減等)
・保険福祉費削減
20 15年までに500 億ユーロの国有資産売却・民営化計画(2 011~12年に15 0億ユーロ)
●主な売却対象資産
・アテネ国際空港、電力公社、石油公社、ガス公社、国鉄、ギリシャ通信公社
ギリシャ郵政公社、ギリシャ郵便銀行、ギリシャ道路公団、ギリシャ自動車工業
アテネ水道公社、カジノ・モンパルナス、ギリシャ公共競馬
国営宝くじ事業等
20
11
/7
/1
5(
財
20
務
11
省
/7
証
/1
券
9~
)
20
25
11
(利
/7
払
/2
い
2(
)
財
務
省
証
20
券
11
)
/8
/2
0(
国
20
債
11
)
/1
2/
19
(
国
20
債
11
)
/1
2/
29
(国
20
債
12
)
/1
/1
1(
国
20
債
12
)
/3
/2
0(
国
債
)
●2011年3月に発表されたギリシャの資金調達計画
【 図表②:今後のギリシャ国債等の償還・利払い予定 】
によれば、ギリシャは2012年に中・長期国債の発行を
(億ユーロ)
160
145
再開し、市場から資金調達をする計画になっていま
120億ユーロの送金決定により
140
8/20までの償還等のデフォルトは回避された模様
120
す。しかし現状では、2012年の市場復帰は困難で、
100
2015年までに総額2,000億ユーロ規模の資金不足と
66
80
52
60
なる計算になります(図表③)。このためEUとIMFに
28
40
24
16
12
20
0.16
よる追加支援の獲得がデフォルト回避に向け不可欠
0
な状態です。ギリシャのパパンドレウ首相は「追加支
援について昨年5月(1,100億ユーロ)と同規模が必
要になる」との見通しを示しています。追加の支援枠
を獲得することや、既存の1,100億ユーロから、支援
を受け続けるには3ヵ月に一度の頻度で財政緊縮計 【 図表③:ギリシャの資金調達計画:IMF2011年3月 第三次レビュー 】
画の達成状況に関する審査を受け、これをクリアする 90 (10億ユーロ)
総額
IMF
ことが条件であるため、ギリシャの資金調達は依然と 80
約2,000億
支援
ユーロ
70
して綱渡り状態が続くことになります。
EU支援
60
●今後のギリシャ支援は、追加支援枠の獲得に加
え、ウィーンイニシアティブ型措置※を組み合わせた
対応が予想されます。これに対し、格付け会社各社
はウィーンイニシアティブ型措置をデフォルト相当と
評価しており、今後の動向が注目されます。
50
中・長期
国債発行 26.7
40
30
37.9
67.2
70
2013年
2014年
2015年
短期国
債発行
20
10
0
2011年
2012年
※ウィーンイニシアティブ型措置
主要民間債権者(銀行)がギリシャ向けエクスポージャーの維持
【 図表④:欧州債務国向け支援額と支援資金枠 】
に自発的に同意して、償還期限を迎えるギリシャ国債の大部分
(億ユーロ)
9,000
の借り換え(ロールオーバ-)が担保されるという枠組み。
(※1)EFSFの支援可能額は現在の最大約2,500億ユーロ
2009年のハンガリー救済では、約8割の債券がこの措置で借り換 8,000 から最大約4,400億ユーロに拡大(6/20EU財務相会合で正式合意) 最大約7,500
えされている。
7,000 された数字を反映
●ギリシャを含むアイルランド、ポルトガル等欧州債
務国の資金繰りに万全を期すセーフティーネット(安
全網)を整備するため欧州行政サイドは支援資金の
枠を拡大しました。具体的には欧州金融安定ファシリ
ティー(EFSF)の支援枠が従来の最大約2,500億
ユーロから最大約4,400億ユーロ拡大されました(図
表④)。
6,000
E F SF
(最大約4,400)
(※2)二国間融資分の223億ユーロを除いている
5,000
追加支援
1,100? E F SM
(約600)
4,000
3,000
IMF
(約2,500)
2,000
1,000
0
627
アイルランド※2
2010/12合意分
780
1,100
ポルトガル
ギリシャ
2011/5合意分
2010/5合意分
資金枠※1
出所:図表はIMF、欧州中央銀行(ECB)、ブルームバーグ、各種報道のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成
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