WHITE PAPER 成功するマネージド ITサービス 適切なサービスを適切なプロバイダへ アウトソーシングするための鍵 成功するマネージドITサービス 目次 5. 貴社の経営は健全ですか。 概要 3 はじめに 3 ものですか。 6. 貴社のデータセンタの設備はどのような 7. 施設を見学させてもらえますか。 8つの重要な注意事項 − マネージドITサー ビスを採用する前に 4 8. 貴社の顧客 5 社の関係者と話せますか。 9. インフラストラクチャの一部を他の IT 1. IT サービスから始める 2. アウトソーシング戦略を立てるときにはビ ジネスと IT の両方が参加する 3. IT サービスの戦略的価値を評価する 4. 正直に評価する 5. 新しい IT サービスの要件を評価する 6. IT サービスの要件を考慮する 7. IT サービスの相対的コストを評価する 8. IT サービスの「ポータビリティ」を評価 する マネージドITサービス・プロバイダの選択: 鍵となる10項目の質問 6 1. サービス・カタログを見せてもらえます か。 サービス・プロバイダにアウトソーシングし ていますか。 10. 契約書とサービスレベル・アグリーメン トを見せてもらえますか。 サービス・プロバイダとの間に良好な関係を 9 築くための5つの鍵 1. 短期の「トライアル」から始める 2. コミュニケーション、役割、サービス定義、 およびプロセスを形式化する 3. IT サービスの具体的な要件および定義か ら始める 4. 強固なサービスレベル・アグリーメントを 結ぶ 5. サービスのステータスの更新をオンデマ ンドで受け取る 2. 実績はありますか。 3. 我が社を担当する通常時の連絡係は誰で すか。 4. どのような種類の移行サービスを提供し ていますか。 2 まとめ: 成功の土台を築く 11 成功するマネージドITサービス 概要 地方の店舗であれ国際的企業であれ、電子メールからERPへのアーカイブに至るまでビジネスに外部の しかし、マネージド・サービス分野 マネージドITサービス・プロバイダを利用する傾向が強まっています。 の勢いと成長にもかかわらず、アウトソーシングのタイミングを決定するのは簡単ではありません。この 文書では、アウトソーシングの意義、 プロバイダの選択基準、および適切なアウトソーシング関係を築く ための基本手順について、実用的なガイドを提供します。 IT サービスを外 部のサービス・ プロバイダへ移 すことが大きな メリットとなるこ ともありますが、 その関係がうま くいかなかった 場合には膨大な コストが無駄に なる可能性もあ ります。時間、 資金、そして顧 客も失ってしまう 可能性があるの です。 はじめに 組織は何年にもわたり、 さまざまな理由で外部のマネージドITサービス・プロバイダに依存するという決定 を下してきました。 しかし、今日のクラウドをめぐる大々的な宣伝、目まいがするほど膨大な数のサービス とサービス・プロバイダ、および長期にわたるコスト削減の圧力を受け、ITアウトソーシングへの移行の勢 いがかつてないほど広まっています。 ただし、その決断が簡単というわけではなく、簡単とはほど遠いのが実情です。マネージドITサービスの世 界に長年身を置いてきた私は多くの成功談を耳にしていますが、悲惨な話も数多く聞いています。 小規模な再販業者が、著しい成長を続けるITアウトソーシング市場の一端に加わろうと、必要な専門技能 もなしにマネージドITサービス・プロバイダに鞍替えするものと予想されます。新たな企業を引きつけた いと思えば、サービス・プロバイダはこれまで見たこともない技術の管理に挑戦することになるでしょう。 現在、 オンプレミスで内部ソーシングされているどのITサービスについても、開発、管理、およびホスティ ングを外部のプロバイダに委託できるといっても過言ではありません。ITサービスを外部のサービス・プ ロバイダへ移すことが大きなメリットとなることもありますが、その関係がうまくいかなかった場合には膨 大なコストが無駄になる可能性もあります。時間、資金、そして顧客も失ってしまう可能性があるのです。 ほとんどの組織で、 さまざまなITサービスが外部または内部で管理されており、 これらのサービスは常に 評価および再評価がなされています。結局、組織はアウトソーシングを行う決定を下す前に、宣伝に惑わ されずに自社のリソース、ニーズ、および目標を客観的に注意深く検討する必要があります。ITサービス のアウトソーシングを検討している経営幹部がアウトソーシング戦略を立てる際、考慮するべき主な注意 事項を以下に示します。 3 成功するマネージドITサービス 8つの重要な注意事項 − マネージドITサービスを採用 する前に 1. ITサービスから始める ビジネスとITが置かれた状況と、アウトソーシングで得られるチャンスを高次元でまとめて把握するため には、社内のITグループが会社に提供しているサービスの検討から始めることが重要です。既存の部門、 スタッフの上下関係、役割などを無視することは困難ですが、ITサービスをビジネスの観点から捉えてみ データベース管 ると、ITが会社をどのように支えているかについて貴重な展望が得られます。たとえば、 理などの作業を見るのではなく、そのデータベースやインフラストラクチャの他の部分に依存するビジネ ス・サービスを見直すことから始めます。この見直しは重要です。結局のところ、たとえデータベースの アップタイムが99.999%でも、そのデータベースに依存するビジネス・サービスのパフォーマンスが許容 投資先、アウト ソーシングの意 義、アウトソー シングの対象を 判断するには、 まず、金銭面か ら検討するのが 重要です。 できないレベルであれば、 ビジネスにとって実際の役には立たないからです。 2. アウトソーシング戦略を立てるときにはビジネスとITの両方が参加する 最終的な決定が、ITのアウトソーシングであっても、内部リソースへのさらなる投資であっても、あるいは 現状維持であっても、 ビジネスのリーダーとITのリーダーが両方ともアウトソーシング戦略の最前線に参 加することが重要です。基本的に、経営幹部は重要なビジネス目標とITがそれにどう貢献できるかについ て話し合う必要があります。 さらに、既存のITサービスをビジネスの観点から評価する必要があります。投資先、アウトソーシングの意 義、アウトソーシングの対象を判断するには、 まず、金銭面から検討するのが重要です。会社のERPシステ ムに関連する収益はいくらでしょうか。もし電子メールがダウンしたらどれだけの収益が失われるでしょう (企業間取引)サイトの場合、週末のダウンタイム か。その答は組織によって大きく異なるでしょう。B-to-B がビジネスに与える影響はそれほど問題ないでしょう。これに対して大規模なオンライン小売業者の場合 は、パフォーマンスがわずかに低下するだけでも買い物かごの放棄につながり、その日の収益に重大な影 響を及ぼす可能性があります。ITサービスのパフォーマンスをビジネスの観点から見ることにより、正し いITアウトソーシングの決断を正しい理由で下す準備が整います。 3. ITサービスの戦略的価値を評価する 組織は次に、ITサービスの戦略的価値を評価する必要があります。会社にとって事実上ユーティリティで あるサービスもあれば、 ビジネスの競争力向上につながる差別化に重要な役割を果たしているサービス もあります。こうした観点から各サービスを見ることで、アウトソーシングできるサービスと、内部でソーシ ングしたままにする必要があるサービスとを区別できます。 4. 正直に評価する 提供されるサービスそれぞれについて、IT部門とビジネス部門の両方がパフォーマンスを正直に調べる うまくいっていないのはどの分野ですか。ここで 必要があります。IT部門はどの分野で成功していますか。 重要なのは、厳密なメトリクスと、 より主観的なユーザおよび利害関係者の意見の両方を考慮に入れるこ とです。メトリクスによってどのようなパフォーマンスが示されても、ユーザの定着度と満足度が高けれ ば、アウトソーシングはリスクを伴う可能性があります。 「壊れていないなら修理するな」 という格言に反す ることになり、ユーザが有料のサービスを積極的に使いたい場合には問題となる可能性があります。反対 に、パフォーマンスのメトリクスが良好なのに満足度が低い場合には、そのサービスをアウトソーシングす るためのサポートを受ける方がはるかに容易かもしれません。 4 成功するマネージドITサービス 5. 新しいITサービスの要件を評価する 長期的なITアウトソーシング戦略を策定する際には、 ビジネスに必要な新しいサービスや将来のサービス について考慮することが重要です。新しいサービスは、その性質によってはマネージドITサービス・プロバ イダのサポートを受けるのに理想的な候補となる可能性があります。この決定を下すときには、いくつか の疑問について考えることが重要です。たとえば、要求されたサービスを他の部門やグループが利用する 可能性はありますか。もしそうであれば、人員とインフラストラクチャに投資して、社内でそのサービスを 管理するのが得策でしょう。 その一方で、管理チームは既存のチームの現状に基づいて新しいサービスを検討する必要があります。 既存チームに必要な専門知識があるかどうか、ない場合は専門家を新たに雇う必要があるのか、 といった ことを検討しなければなりません。新しいサービスを最初から外部のMSPと連携して開始することで、必 要な専門技能とインフラストラクチャの開発にかかるコストを回避でき、後になってサービスをマネージ ドITサービス・プロバイダへ移行する場合にかかる潜在的コストと労力も回避できます。 6. ITサービスの要件を考慮する 各ITサービスの要件はそれぞれ大きく異なる場合があり、その違いがアウトソーシングが有益かどうかに 大きく影響することがあります。基本的に、経営幹部はサービスの要件が社内の機能にどう適合するかを 考慮する必要があります。考慮すべき基本的な要件を以下に挙げます。 • 稼働の時間枠と可用性: サービスによっては99.999%のアップタイムが必要ですが、営業時間外に長 いバックアップ時間帯を設けても大丈夫なサービスもあります。サービスを24時間365日サポートす るということは、1人のサポート・エンジニアが常に電話に出られる状態で待機していることを意味しま す。そのエンジニアが不機嫌に対応したり眠っていたりしてはならないことは言うまでもありません。 このようなサポートは専用のNOCを持つサービス・プロバイダに任せるのが適切でしょう。 • アクセシビリティの要件: あるITサービスに、本社で働いている従業員だけがアクセスできるようにす るか、それともリモート社員、パートナー、およびサプライヤもアクセスできるようにするかを決める必 要があります。前者のシナリオでは、おそらくアクセス制御の管理は簡単でしょう。後者の場合は、 SaaSや他のクラウド・サービスが理想的な候補になるでしょう。 • セキュリティとコンプライアンスの要件: サービスのセキュリティ要件は何でしょうか。それは法規制 の範囲でしょうか。これらはアウトソーシングを検討するときの基本的な問題ですが、必ずしも明確で はありません。たとえば、セキュリティおよび規制ポリシーを遵守するために社内に専門技能とインフ ラストラクチャを備えている組織の場合、潜在的リスクを考えるとアウトソーシングの見込みはほぼあ りません。一方、企業が新たな要件に対応したいと望んでいる場合は、 コンプライアンスの達成や維 持、規制監査のサポートなどに必要となる社内スタッフやインフラストラクチャに投資するよりも、実 証済みの能力を備えたサービス・プロバイダを利用する方がはるかに費用対効果が高くなる可能性が あります。 • スケーラビリティの要件: パフォーマンスの要件は安定していますか、それとも大きく変動しています か。会社はストレージの拡大や、処理要求の対応に絶えず苦労していますか、それとも常にキャパシ ティに余裕がありますか。パフォーマンス要件を満たすのに苦労している場合は、外部のサービス・プ ロバイダ、特にクラウドベースの仮想化された従量制サービスを利用することで、たいてい大きな利 益と柔軟性を得られます。 5 成功するマネージドITサービス 企業が新たな要 件に対応したい と望んでいる場 合は、コンプラ イアンスの達成 や維持、規制監 査のサポートな どに必要となる 社内スタッフや インフラストラク チャに投資する よりも、実証済 みの能力を備え たサービス・プ ロバイダを利用 する方がはるか に費用対効果が 高くなる可能性 があります。 7. ITサービスの相対的コストを評価する サービスはいくつものITチームと多様な技術に依存しているため、大抵、特定のサービスの本当のコスト を測定するのは難しいものです。また、1つのサービスでたびたびシステムの停止が発生する事実や、関 係サポート・スタッフが受ける時間のかかる非常事態訓練は、毎月の経費報告書には記載されないかもし れませんが、多大なコストがかかっていることを意味します。ただし、各サービスの相対的コストをより現 実的に評価できれば、外部サービスの利用によって見込まれるコスト削減をより的確に評価できるように なります。 8. ITサービスの「ポータビリティ」を評価する サービスのポータビリティを現実的に評価することが重要です。そのサービスでは独自に開発したアプリ ケーションが使用されていますか。アプリケーションとサービスの相互依存関係はどうなっていますか。標 準的な技術が随所に導入されていますか。それらのサービスのサポートはどの程度型にはまった繰り返し になっていますか。これらの要因のいくつかは、外部のマネージドITサービスを利用しない理由になるこ とがあります。一方、特別な専門技能を必要としないコモディティ化したプラットフォーム上で稼働する サービスは、外部サービスへの移行に非常に適しています。 アウトソーシングするサービスを決めたら、次のステップは適切なサービス・プロバイダを見つけることで す。次のセクションでは、自社に適したマネージドITサービス・プロバイダを選択するための鍵について説 明します。 マネージドITサービス・プロバイダの選択: 鍵となる10項目の質問 企業は、その技術の一部のホスティングや管理を外部のマネージドITサービス・プロバイダへアウトソーシ ングしようと考えるとき、運用上および財務上の大きなメリットを得られると期待しています。 しかし、それ らのメリットがどこまで実現されるかは、選択したマネージドITサービス・プロバイダの人材と能力に大き く依存します。 マネージドITサービス業界で何年も過ごしてきて、一部の企業ですが、ITサービス・プロバイダの選択プロ セスに対してぞんざいなアプローチをとることに何度も驚かされてきました。一部の管理者は、 まるで靴 を買うかのようなプロセスとして見なし、 「試してみてだめなら別のを試せばいい」 とでも考えているよう です。 しかし、 このアプローチには大きなリスクがあります。サービスの移行、役割と手順の定義、およびア ウトソーシングしたITサービスの立ち上げには、大きな先行投資が必要です。さらに、サービス・プロバイ ダの失策が、 データや顧客を失うことも含めて重大なリスクを招く可能性もあります。 これが、候補のベンダを前もって、時間をかけて徹底的に調査することに大きな価値がある理由です。ア ウトソーシング関係の失敗によるコスト増と頭痛の種を取り除き、同じプロセスを再び開始するための時 間と労力を回避することにより、企業は意図したメリットを最大限に活かしてより早く利益を得ることがで きます。 ITアウトソーシングの会社は多く、優秀な会社もあればそうでない会社もあります。また、ある企業にとっ て適したサービス・プロバイダが別の企業にとっても最適であるとは限りません。企業が新しいマネージド ITサービス・プロバイダを探すプロセスをガイドする上で、企業の経営幹部が候補のITアウトソーシング会 社に尋ねる一連の質問について以下で説明します。 6 成功するマネージドITサービス 1. サービス・カタログを見せてもらえますか。 マネージドITサービス・プロバイダのサービス・カタログにはそのベンダに関する多くの情報が記載されて いるため、自社に対するベンダの適合性を評価する手始めとしては最適です。まず (そして当然のことで すが)、 カタログに記載されているサービスがアウトソーシングしたいと考えているITサービスに合致して いるか確認する必要があります。サービス・カタログは次に、そのベンダが提供するサービスがどのように 形式化されているかについて多くの情報を与えてくれます。たとえば、ベンダが提供しているサービスと 機能の概要が記載されているはずです。サービスが階層化されている場合は、階層が上がった場合の各 料金と受けられるサービスを明確に知っておく必要があります。 サービス・カタログは、所定のサービスを効率的に提供する組織を顧客に持つサービス・プロバイダという よりは、短期的な売上目標を達成するために、必要に応じて新しい機能を追加するといった万能的なサー ビス・プロバイダを見つける簡単な手段でもあります。サービス・プロバイダが約束どおりのサービスを提 供できるかどうかを評価するためにも、サービスの重点がどこに置かれているかを調べてください。とは 言うものの、将来別の種類のサービスを追加で提供できるITサービス・プロバイダを必要とする場合もあ ります。 したがって、提供されるサービスの幅広さと、それが将来の潜在的ニーズにどのように適合するか を評価することも重要です。 2. 実績はありますか。 企業が最も避けたいことは、経験の浅いサービス・プロバイダを採択することです。必要なのは、アウト ソーシングしたいサービスについて長年の直接的な経験を持つITサービス・プロバイダです。その分野の 経験を持つ自社のスタッフに詳しい質問をさせて、サービス・プロバイダの回答から技術面と運用面で十 分な経験を有しているかどうか確認してください。 さらに、サービス・プロバイダが長期的なニーズに対応できるかどうか、できるならその対応方法も評価す る必要があります。未来は誰にも正確には予測できませんが、技術面とスケーラビリティの面で新たに生 じると思われる要件を検討してください。現時点で最適のサービス・プロバイダを見つけることが最も重 要ではありますが、自社とともにITサービス・プロバイダが成長して自社のビジネスへの適合性が高まれ ば、そのITサービス・プロバイダとの長期的な関係を通じてより多くの価値を実現できます。 3. 我が社を担当する通常時の連絡係は誰ですか。 誰もが次のような経験をしたことがあるでしょう。営業の段階ではベンダの代表者たちがやって来てその ベンダのすばらしい実践的知識と経験を披露します。 しかし、いったん契約が締結されると彼らはまったく 姿を現さなくなり、経験の浅いチームが自力で道を切り開かなくてはならなくなるのです。これは、本当の 意味で成功が人々の能力にかかっているITサービス・プロバイダの世界では特に壊滅的です。 したがって、通常時の連絡係となる人を特定して面接し、顧客管理と技術サポートについて話し合うこと が不可欠です。これは面接試験として扱い、 コミュニケーションに対する彼らのアプローチ、彼らの経験、 および彼らの構成を詳しく理解してください。彼らの当該サービス・プロバイダでの在職期間と、その市場 セグメントでの在職期間を確認してください。 4. どのような種類の移行サービスを提供していますか。 アウトソーシングするサービスの種類によっては、内部から外部のサービスへの移行に多大な労力が必要 となります。ITサービス・プロバイダはどの程度の支援を提供しますか。自社チームの責任範囲はどこまで で、 どこからがベンダの責任範囲ですか。サービスが完全に導入されるまでに必要なリード・タイムは通常 どのくらいですか。全体的なサービス・コストに含まれるのはどのサービスで、その都度料金を支払う必要 があるのはどのサービスですか。的確な予測を立てるためには、 この時点で明確で正直な情報を得ること が重要です。それにより、ベンダをよく理解できます。この最初のプロセスに対して1回限りの取引ではな く長期的な関係を築くためのアプローチをとるベンダを選んでください。 7 成功するマネージドITサービス サービス・プロ バイダが最高の サービスを提供 するには、自動 化、高機能、お よび機敏性が重 要であり、その 多くはプロバイ ダが備えるイン フラストラクチャ の高度化から生 じます。 5. 貴社の経営は健全ですか。 ITサービス・プロバイダと連携して長期にわたり価値を享受するには、そのプロバイダの長期的な生存能 力が鍵となります。まず最初に、数字を確認します。利益、営業キャッシュフロー、 リソースの使用状況、 キャッシュフロー、および長期債務を確認してください。ただし、数字だけに頼ってはなりません。過去数年 間に見られた市場の暴落から学んだことがあるとすれば、それはどのような数字も信用できないというこ とです。ここで必要なのは健全な懐疑主義です。ベンダの主張が本当にしてはできすぎるように感じるこ とはありませんか。もしそうなら、そのとおりかもしれません。 「過去の成果は将 生存能力のもう1つの鍵は実績です。どの投資信託の目論見書にも書いてあるように、 来の業績の保証にはなりません」が、長年の実績はやはり考慮すべきです。もし過去5∼10年間にわたっ て実績を上げてきたとしたら、その会社は適切に運営されていると考えられます。 最後に、顧客ベースを確認します。1社の顧客からの収入がそのサービス・プロバイダの収入の大部分を 占めてはいませんか。また、その顧客ベースが自社のビジネスにどのように適合するかも調べる必要があ ります。そのサービス・プロバイダが自社の主要な競争相手をクライアントとしているのは必ずしも望まし くありませんが、規模、業種、 またはビジネス・モデルの点で自社と似た顧客との経験を積んでいれば、そ の経歴は強力なセールス・ポイントになります。 6. 貴社のデータセンタの設備はどのようなものですか。 この分野で重点を置くべき問題と考慮事項は、アウトソーシングされるITサービスの性質によって大きく 異なる場合があります。高い次元では、ITサービス・プロバイダが備えている高度な能力を測定すること が重要です。たとえば、高度なパフォーマンスとスケーラビリティが要求される場合、ベンダのインフラス トラクチャは仮想化によってトラフィックの急増をより効率的に処理できるでしょうか。ベンダに別のサー ビスの提供を要求することにした場合、ベンダは必要な追加のキャパシティをどの程度迅速にオンライン にできるでしょうか。レポートが重要な場合、 レポートはどのように作成されるのでしょうか。Excelを使っ て手作業でレポートを編集するのでしょうか。簡単にカスタマイズできる自動化されたレポートが用意さ れているのでしょうか。サービス・プロバイダが最高のサービスを提供するには、自動化、高機能、および機 敏性が重要であり、その多くはプロバイダが備えるインフラストラクチャの高度化から生じます。 7. 施設を見学させてもらえますか。 この質問への回答が「いいえ」だった場合は、ほかのプロバイダを探し始めるべきです。マネージドITサー ビス・プロバイダがその施設内を自由に見学させてくれない場合、そのプロバイダはおそらく何かを隠し ています。ITサービス・プロバイダの施設を見学してわかることは限られていますが、そこで働く人々や彼 らがインフラストラクチャをどのようにセットアップしているかについて情報を得られます。サーバ・ラック のそばを通り過ぎただけでは、それらのサーバにパッチが正しく適用されているかどうかも、サーバが最 適の状態で稼働しているかどうかもわかりません。 しかし、サーバが何を実行しているかや、サーバが温度 と湿度が調整された良好な環境に置かれているかどうかはわかります。施設の見学は、セキュリティと可 用性を確保する手段を確認する上でも良い機会です。 8. 貴社の顧客5社の関係者と話せますか。 マネージドITサービス・プロバイダの顧客と話すことは、おそらく何より重要なステップです。これは、他の すべての質問に対するサービス・プロバイダの回答が正確で率直なものであるかどうかを検証するため の重要な手段です。質問に率直に回答しているというプロバイダの主張を顧客は裏付けていますか。顧 客が経験してきたアップタイムの状況は、ベンダが実施した取り組みと合致していますか。また、顧客の契 約期間も確認してください。ここでも、長年の実績には大きな意味があります。 8 成功するマネージドITサービス 最終的には、 これらの顧客企業の関係者が話すことを信じる必要がありますが、顧客がそのサービス・プロ バイダのビジネスに投資していたり、回答に影響する可能性がある利害関係がベンダとの間に存在して いないかどうか確認してください。 9. インフラストラクチャの一部を他のITサービス・プロバイダにアウトソーシングしていますか。 ITアウトソーシングが広く普及している今日、ITサービス・プロバイダが運用の一部を外部のプロバイダに アウトソーシングすることは十分あり得ます。ただし、その事実をあらかじめ知っておくことが重要です。 最も望ましくないことは、問題が発生したときにさまざまなITアウトソーシング会社の間で責任のなすり 合いが始まることです。ベンダが外部のITサービス・プロバイダを利用している場合は、アカウンタビリ ティ、エスカレーション・プロセス、および責任を明確にしておく必要があります。さらに、ベンダのベンダに ついても、その所在地、採用の際にどのような審査が行われたか、そして連携が何年間続いているかを調 べてください。 10. 契約書とサービスレベル・アグリーメントを見せてもらえますか。 新しいマネージドITサービス・プロバイダの採用を考えている場合は、早い段階で、 これから結ぼうとして いる契約を確認する必要があります。どのような義務が生じるかを説明してもらってください。ITサービ ス・プロバイダとの契約に署名して数週間後に、その契約を打ち切ろうとしたらどうなるでしょうか。打ち切 りの理由として認められるのはどのような理由ですか。払い戻しはありますか。 また、 どのような種類のサービスレベル・アグリーメントが実施されているかも確認する必要があります。 サービス・プロバイダはどのような種類の約束をしていて、サービスレベルが決められた値を下回った場 合は何が起きますか。これにより、契約に定められた条項だけではわからない、そのITサービス・プロバイ ダが自らの従業員や義務をどのように大切にするかということも推測できます。 あるITサービス・プロバイダを選ぶことに決めたら、次のセクションを読んで、ITアウトソーシングを最大限 に成功させるための関係構築の指針を得てください。 サービス・プロバイダとの間に良好な関係を築くための 5つの鍵 企業は、マネージドITサービス・プロバイダの利用を開始したときに、それまで内部のITグループを通じて 管理されてきた多くの日常的な作業の統制を手放すことになります。 しかし、新しいマネージドITサービ ス・プロバイダと契約を交わしても、それは始まりに過ぎません。以下で説明する5つの指針に従って、新た に採用するマネージドITサービス・プロバイダとの間に良好な関係を築く準備を整えてください。 1. 短期の「トライアル」から始める 採用候補者を面接するときには多くの質問ができますが、仕事を始める前にその人がどの程度有能かを 実際に知ることは困難です。それはサービス・プロバイダが相手の場合も同じです。 したがって、ITアウト ソーシング会社を選択する際には適正な評価を行うことが非常に重要となります。 9 成功するマネージドITサービス ただし、ITサービス・プロバイダが徹底的な審査をパスした場合でも、比較的小さく短い仕事(30∼90日 程度)の契約から始めるという方法を推奨します。それにより、そのマネージドITサービス・プロバイダが自 社に適しているかどうかを直接確認することができます。契約が小さいからといって、アウトソーシングを 始めるために要する投資が減るわけではありません。新しいサービスをマネージドITサービス・プロバイダ に展開するためには計画、労力、および時間が必要です。それでも、何かの理由でITサービスが期待に応 えられない場合に備えて口実を用意しておくことは重要です。長期の契約に拘束されると、誤った選択に よるコストが悪化するだけです。 2. コミュニケーション、役割、サービス定義、およびプロセスを形式化する 「良い塀は良い隣人を作る」 ということわざの教訓は、マネージドITサービスとの間に効果的な関係を確 立する際にも当てはまります。サービス、役割、および責任を明確に区別することは不可欠な基盤です。そ の区別を主観的意見、憶測、および当て推量に任せると、誤解、 ミス、およびチャンスの取り逃しを招く可 能性が高くなります。提供されるのはどのようなサービスで、提供されないのはどのようなサービスです か。問題が報告された場合に対応するのは誰で、その人が対応できない場合に次の連絡先となるのは誰 プロセスの詳細 ですか。マネージドITサービス・プロバイダとの良好なパートナーシップを実現するには、 な文書化、役割の確立、およびアカウンタビリティの明確化が不可欠です。 3. ITサービスの具体的な要件および定義から始める 同様に、ITサービスのレベルについてあいまいな部分があってはなりません。あるビジネスまたはサービ スにとって許容範囲のパフォーマンスが別のビジネスまたはサービスにとっても適切であるとは限りませ ん。あるITサービスのアップタイム要件は、別のITサービスのアップタイム要件とは異なるでしょう。これ が、両方の組織のための強固な基盤として、期待と要件に関する共通の理解を確立することが重要な理 由です。許容できるアップタイムはどのようなものでしょうか。サービスがダウンした場合、その問題への 対応とステータスの更新が行われるまでどのくらいの時間がかかりますか。さらに、特にパフォーマンス が重要なアプリケーションの場合、会社はそれまで社内でホスティングしていたサービスに基づいてパ フォーマンス・ベンチマークを確立し、外部でホスティングするようになったサービスを的確に評価できる ようにする必要があります。 4. 強固なサービスレベル・アグリーメントを結ぶ サービスレベル・アグリーメントは、約束、期待、および要件が形式化される場であり、マネージドITサービ ス・プロバイダが積極的にかかわる形で形式化されます。ただし、私の経験によれば、SLAがITアウトソーシ ング関係において成功を実現する潜在能力を発揮しないことがよくあります。効果的なSLAの公式で本を 埋め尽くすこともできますが、 ここでは頭に置いておくべき高度な概念をいくつか紹介します。 • 重要性を持たせる: 基本的に、SLAにはSLAが満たされなかった場合のサービス・クレジットに関する条 項を含めるべきです。 • 現実的になる: 人はよく99.999%の信頼性について話しますが、それは必要でしょうか。何より、それ は現実的な要件でしょうか。さまざまな理由で(その一部はサービス・プロバイダが制御できる域を超 えています)、それは現実的とは言えないでしょう。たとえば、膨大な数のサービスがオンラインになっ ているため、インターネット接続と帯域幅は常に必要です。 しかし、マネージドITサービス・プロバイダ がインターネット・サービス・プロバイダのパフォーマンスを制御できるとは限りません。 • プロバイダを実際のアカウンタビリティと結び付ける: SLAは、実際のアカウンタビリティをITサービ ス・プロバイダと結び付ける助けとなる必要があります。これは困難かもしれませんが、膨大な数のイ ンフラストラクチャ・コンポーネントが相互に接続されているため、人々に自分が実際に制御できるメト リクスの責任を取らせる必要があります。 10 成功するマネージドITサービス • 手段をビジネスに適合させる: 最後に、あるインフラストラクチャ・エレメントのアップタイムが100% であると報告されているにもかかわらず、パフォーマンスの問題によって業績が損なわれる状態が続 く場合は、誤った手段が使用されています。ビジネスに実際に影響を及ぼすメトリクスとSLAを照合し てみてください。 5. サービスのステータスの更新をオンデマンドで受け取る どのようなSLAまたは他の契約が交わされているかにかかわらず、アウトソーシング先のマネージドIT サービスのパフォーマンス・ステータスをいつでも必要なときに入手できる必要があります。たとえITアウ トソーシング会社が修正の責任を負っている場合でも、問題に気付くのが早ければ早いほど、その問題が 目標に及ぼす影響をより効果的に軽減できます。 実績を積んだマネージドITサービス・プロバイダの多くは、モニタリング対象のインフラストラクチャのリ アルタイム・ステータスを表示するポータルへのオンライン・アクセスをクライアントに提供しています。 このようなサービス・プロバイダは、自動化されたレポートとアラートも提供します。この種の機能はサー ビス・プロバイダとの関係に必須の透明性をもたらし、それにより、 インフラストラクチャが最適の状態で 稼働していること、そうでない場合はその問題を迅速に見つけられることを、会社の経営陣が確信できま す。 まとめ: 成功の土台を築く 人生で大切な他のあらゆることと同様に、ITマネージド・サービス・プロバイダとの間に効果的な関係を築 くことは簡単ではありません。特に、基本技術がめまぐるしく変遷する今日のIT環境においては、ITアウト ソーシング会社を利用することで多大な利益が得られますが、それらの利益は保証されているわけでは ありません。上記の原則を適用することで、 このITアウトソーシング関係から即時的および長期的なビジ ネス上のメリットを得られるチャンスを最大化することができます。 詳細については、ca.com/nimsoftをご覧ください。 CA Technologies(NASDAQ:CA)は、複雑な IT 環境の管理と保護 に役立つ IT 管理ソリューションを提供し、俊敏なビジネス・サービス をサポートします。CA Technologies のソフトウェアと SaaS ソリュー ションを活用することで、データセンタからクラウドにわたって革新 を加速し、インフラストラクチャを変革し、データとアイデンティティ を保護できます。 CA Technologies に関する詳細については www. ca.com をご覧ください。 Copyright © 2012 CA.無断複写・転載を禁じます。One CA Plaza, Islandia, N.Y. 11749. 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