DCS 更新における設計上の留意事項と事例 -千葉(工)エチレン装置における更新事例- 山本 一三、福永 健二、内藤 雄治(出光興産(株)) 川村 宏、塚原 敏夫(出光エンジニアリング(株)) 要旨 昭和 60 年の千葉(工)エチレン装置の稼動と同時に運転を開始した分散型制御システム (DCS)も 18 年を経過した。この間の IT 技術の著しい進展を受け、システム維持に必要な 旧型部品の確保が困難な状態となってきたことから DCS の更新を計画し、平成 15 年4月の SDM で完了した。本稿では更新経緯、システム構成、および更新で考慮した項目などにつ いて報告する。 1.はじめに マン・インターフェース部および制御部CPU、 昭和 58 年の出光石油化学㈱千葉工場・エチレン装 ②入出力装置、の二段階に分離して更新する計 置の建設着手と同時に設計製作が開始され、昭和 60 画とした。 年から稼動を開始した分散型制御システム(DCS)も ■平成12/08~平成12/12 更新計画見直し 18 年を経過した。この間に新型 DCS も次々に開発さ 最新のDCSに使用されている入出力装置を、 れてきた。そして、昨今の IT 技術の著しい進展を受 エチレン装置で使用している旧型のDCSでも利 け、CRT は高解像度化、ハードディスクは大容量化 用できるような互換性のある入出力装置の開 が進む中で、 システム維持に必要な 18 年前のこれら 発をメーカに要求した。これが実現すれば入出 部品の確保が困難な状態となってきた。そこで、 「基 力装置の更新は一斉に行う必要がなくなり、ス 本的にはシステムを使い切るが、部品供給に不安を テーション単位で必要に応じて更新すること 持つ機器は更新する。 」 の観点から DCS の更新を計画、 が可能となり、実質的な先送りができる。この 平成 15 年4月の SDM で更新を完了したので、 その経 開発がメーカの協力で実現したため、当初計画 緯、システム構成、および今回の更新で考慮した項 を見直し、①ヒューマン・インターフェース部、 目などについて報告する。 ②制御部CPU、③入出力装置、の3段階に分割 した更新ケースについて検討を行った。この結 果、今回の更新では、部品供給(CRT、ハード 2.更新計画経緯 ■平成11/07~平成11/12 ディスク)に不安を有するヒューマン・インタ 更新計画検討 ーフェース部のみ更新することとし、コスト低 出光石油化学㈱千葉工場に設置された横河 減(当初計画より30%減)を図った。 電機製のCENTUM-V更新計画の一環として、大 なお②の制御部CPU更新は平成23年以降とし、 規模システムであるエチレン装置の更新計画 故障の推移や予備品状況を考慮しながら、その を検討した。コスト低減の観点から、システム 時期を検討していくこととした。また③の入出 全体を一括更新する手法は採用せず、①ヒュー 力装置更新は、先に述べたように互換性が確保 1 図-1 更新後の計器室内 されたことから、現段階では更新計画に計上し 植などアプリケーション・ソフトウェアをエチ ていない。ただし、寿命延長対策として今回の レン課および出光エンジ技術部による社内設 SDM時にプリント基板の洗浄のみを実施した。 計製作とすることで設計を開始した(外注コス ■平成13/10 詳細設計開始 ト低減60百万円) 。 外注コスト低減のため、グラフィック画面や ■平成15/04 更新工事完了 BASIC言語、FORTRAN言語によるプログラムの移 メッセージ・データベース・ メッセージ・データベース・ パッケージ パッケージ L/T TriRe 運転支援システム 運転支援システム (Exapilot) (Exapilot) L/T TriRe H/T Pilot 01.41 01.42 HUB1 エンジニアリング用 ノートPC 直長 HIS V PHD L/T Pilot PJT DB SERVER 01.43 HUB2 現BT転用 259 2.59 TPHC TPHC PHD エンジニアリング用 ノートPC エンジニアリング用 ノートPC 現BT転用 158 1.58 直用(現BT移設) 現BT転用 157 1.57 257 2.57 新設 発電機監視 盤 ENG HIS HIS HIS CRT H/L共用 HIS HIS HIS CRT CRT HIS HIS CRT HIS HIS LPCKIT/Z LPCKIT/Z LPCKIT/Z LPCKIT/Z LPCKIT/Z LPCKIT/Z LPCKIT/Z LPCKIT/Z 261 262 260 263 264 164 163 162 161 2.61 2.62 2.60 2.63 2.64 1.64 1.63 1.62 1.61 H/T系 COPCV L/T系 COPCV 91 92 OPC OPC レーザープリンタ カラープリンタ EXAOPC EXAOPC V ヒューマン・インターフェース(H/T系) ヒューマン・インターフェース(H/T系) 271 CDFSV CDFSV H/T系 L/T系 41 61 24.31 20.3 1 バスコンバータ バスコンバータ272 バスコンバータ バスコンバータ172 ACB41 ABC11D ABC11D 237 2.37 24.30 AFS10D 217 2.17 置針STN P V-net V-net 171 ACB41 234 2.34 21.27 ABC11D 235 2.35 22.28 ABC11D 236 2.36 23.29 V ヒューマン・インターフェース(L/T系) ヒューマン・インターフェース(L/T系) AFS40D H/T系 P 201 2.01 制御ステーション 制御ステーション ↑仕切り板取付 V ACB41 ACB41 ABC11D ABC11D 133 1.33 2.33 ABC11D 134 1.34 17.27 ABC11D 135 1.35 18.28 136 1.36 19.29 ABC11D 137 1.37 20.30 AFS10D YCB14 9 AFS20D L/T系 101 117 1.17 1.01 置針STN ↑仕切り板取付 ↑側板既設転用 J CFCD2 CFCD2 CFCD2 CTBC2 CFCD2 CFCD2 CFCD2 CFCD2 CFCD2 CFCD2 CTBC2 CFCD2 CTBC2 CFMS2 #1000 #1100 #12 00 #1000 #1300 #14 00 #1500 ~150 0 #1600 #1800 #2000 #1600 #2300 #9000 H/T系 #190 ~200 #900 0 0 0 1 21.01 8 23.07 2 21.02 3 21.03 4 5 22.04 6 22.05 7 22.06 9 23.08 10 23.09 11 12 24.10 13 計装盤 14 24.11 20 CFCD2 CFCD2 CFCD2 CTBC2 CFCD2 CFCD2 CFMS2 CFCD2 CTBC2 CFCD2 CFCD2 #3000 #3000 #4000 #5000 #5300 #5400 ~500 #600 0 0 #7000 #7300 #8000 #6000 #8500 #9000 L/T系 ~800 0 #6300 #2700 #2600 #1700 #270 #28 0 #280 0 0 0 34 35 36 15 20.13 20.14 24.13 21 BRHV J CTBC2 CFCD2 CFCD2 CFCD2 CFCD2 CFCD2 BRHV 22 17.01 23 17.0 2 24 17.03 26 18.0 5 27 18.06 P H/T系 L/T系 既設制御ステーション 既設制御ステーション 更新対象外 25 18.04 図-2 システム構成図 2 28 19.07 29 19.08 30 31 19.09 32 20.10 33 20.11 J HIS KILL SW HIS CRT CRT HIS HIS CRT KILL SW HIS HIS LPCKIT/ Z LPCKIT/Z LPCKIT/ Z LPCKIT/Z LPCKIT/Z LPCKIT/Z 2 63 2 .6 3 2 64 2 .64 1 64 1 .64 1 63 1 .63 1 62 1 .6 2 1 61 1 .61 ~ ~ ~ ~ ~~ ~ ~ ~~ ~~ ~ ~~ HUB ~ ~ ~ ~ HUB ~ 2 60 2.6 0 ~~ ~~ ~~ 2 62 2 .62 H/L 共用 HIS ~~ 2 61 2 .61 CRT ~ HIS LPCKIT/Z ~ HIS LPCKIT/Z HUB 現BT転用 2 59 2.59 直長 HI S H /T系 COP CV L/T系 COP CV 91 92 ~ ~ 新設 発電機監視 盤 HUB 現BT転用 1 5 8 1.58 PJ T DB SERVER ENG HIS ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~~ ~~ H/ T カラ ーフ ゚リンタ レーサ ゙ーフ ゚リンタ TriRe エ 直 用(現BT移設) 現BT転用 1 57 1.5 7 2 5 7 2.5 7 O PC O PC L/T TriRe HUB ~ ~ H/T Pilot L/T Pilot イ HUB IDE130 ウ HUB ア HUB 図-3 ネットワーク構成図 ①OS 3.更新の概要 安価で汎用性のあるWindowsマシンを採用 図1は「更新後の計器室内」 、図2は「システム構 したが、従来の DCS インターフェースと違和 成図」である。今回の更新範囲は前項で述べたよう 感を生じないように運転操作用キーボード に、 CRTやハードディスクなど既に製造中止されてい を接続した。これによりキー配列を含め、従 る有寿命部品を含むヒューマン・インターフェース 来と同等の操作感覚による運転が可能とな 部に限定して更新を実施した。主な機器の概要と更 った。 新に際しての変更点を説明する。 ②台数 (1) ヒューマン・インターフェース 通常ボードマンは操作を頻繁に行う場合、 図2に記載されているHIS(Human Interface 1人で2台の操作端末を使用している。そこ Station)はヒューマン・インターフェースとして、 でボードマン1人あたりに操作端末として エチレン装置の操作監視機能の中心機器である。ま 2台(図2で HIS と記載:主モニター) 、ア た、CRT(実際は液晶ディスプレィ)と表示されてい ラーム監視用に1台(図2で CRT と記載:副 る機器はHISと一体となり、HISに接続されたキーボ モニター) 、計3台の端末を割当てた。この ード、マウスで操作ができる。すなわち、1台のキ 利用方法について 4.オペレーションの一例 ーボード、マウスで、2台のディスプレィを使った で説明する。またスタートアップ、シャット オペレーションが可能となり、アラーム発生時の画 ダウンは4名のボードマンで対応するため、 面展開に効果を発揮している。実際の使用方法は② 以上を4セット、その他に管理者用、直長用、 および4.オペレーションの一例で説明する。 3 0 エンジニアリング用を設置した。 (グレード3警報表示兼用) ③運転支援システムとのシングルウィンドゥ化 ・ドライヤーシーケンス操作キー、状態表示 運転支援システムである Exapilot の JOB ・分解炉シーケンス操作キー、状態表示 画面を HIS 上で表示可能とし、通常の運転操 ・ガスタービン操作キー、状態表示 作と運転支援システムとの統合を図った。こ (2) その他 れにより、どの HIS からも Exapilot の操作 ①メッセージ・データベース・パッケージ が可能となった。図3「ネットワーク構成図」 従来は操作履歴やアラームの内容はプリ および図4「HIS による運転支援システム表 ンターに出力し、媒体を紙としてアラーム情 示例」参照 報を保存していた。しかし、これでは解析に ④液晶ディスプレィの採用 有効に活用できないばかりか、用紙切れや紙 従来の CRT から、目にやさしく、照明設備 詰りの問題を起こす等の理由からプリンタ の反射等の影響が少ない液晶ディスプレィ ーを廃止した。その代替としてアラーム情報 を採用した。 をハードディスクに蓄積できるメッセージ ⑤ハードウェアスイッチの廃止 管理ツールを設置した。このツールにより、 信頼性向上と保守用部品の削減を図るた 発生したアラーム、操作履歴等を長期間保管 め、以下のハードウェアスイッチおよび表示 するとともに、検索機能を活用して、これら 灯を廃止し、ディスプレィ上のソフトウェア の解析効率向上を図ることが可能となった。 スイッチで代替した。 ②バスコンバータ ・グラフィック画面表示要求キー 従来システムは分解炉および高温蒸留部 図-4 HIS による運転支援システム画面の表示例 4 門である H/T 系、圧縮および低温蒸留部門の ジック構築用に制御ステーション(FCS)を L/T 系と制御バスが分離されていたが、更新 新設した。 後はバスコンバータにより上位制御ネット また更新により、BASIC 言語、FORTRAN 言 ワークである V-net に接続し統合した。これ 語を処理している機器を撤去するため、下記 により、いずれのディスプレィからも操作監 機能を実現する代替機器として新設FCS の有 視が可能となった。しかしボードマンの役務 する SEBOL 言語を活用した。この SEBOL 言語 分担明確化の観点からH/T 系あるいは L/T 系 への移行については、社内設計製作で対応し、 から他系の監視は可能であるが操作は不可 外注コストの低減を図った。 とした。ただし、運転操作上必要なループは ・分解炉チャージ系調節弁上下限値自動設定 例外的に両系から操作可能とした(例:フレ ・Nox/Sox 排出量・6%Nox 濃度設定値演算 アー系スモークレススチーム量の制御) 。ま ・大型圧縮機関連べき乗演算 た管理者用および直長用オペコンからは両 ・連続ブロー量 PH/PL 自動設定 系の操作監視が可能である。 ・一部特殊通信機能 ③制御ステーション ④通信インターフェース(EXAOPC) (1)⑤で述べたようにハードスイッチ廃止 業界標準である OPC により、上位計算機 に伴い、ガスタービン操作盤に設けられたガ TPHC とのデータ授受を行うシステムとした。 スタービン制御用の操作キーや表示灯も DCS に移行することとしたが、このための制御ロ 図-5 (1) マルチウィンドゥ画面例 5 図-5 (2) マルチウィンドゥ画面例 れによる動作不良解消のため光学式マウスを採用し 4.オペレーションの一例 た。 (1)操作性の検討 (2)アラーム監視と操作の一例 旧型 DCS では1画面に1枚のグラフィックやトレ 既に述べたように信頼性および保守性向上の観点 ンド画面、チューニング画面など、必要な画面は CRT から画面表示要求のためのハードウェア・スイッチ 全面に表示されるフルスクリーン画面にて操作監視 をソフトスイッチに置換えた。実際の設計に際して を行ってきた。今回の更新システムでは、Windows は、このことが従来のオペレーションに違和感を与 パソコンでなじみの深い1画面に複数の種類の画面 えることのないように考慮したが、その具体例を図 が表示できるマルチウィンドゥが可能となり、フル 6「アラーム発生時の画面展開」に示す。 スクリーン、マルチウィンドゥの表示を使い分ける アラームが発生するとグレード 3 警報画面上の該 ことが可能となった。 そこで運転面からの検討結果、 当部分が警報音とともに点滅、点滅部分をクリック ①トレンド画面は複数のトレンドグループを同時に することにより、運転操作用 HIS へ警報データを含 表示したい、②グラフィック画面も関連するグラフ むグラフィック画面あるいは運転支援システム画面 ィックやトレンド画面等を複数表示、必要に応じて の表示が可能であり、ワンタッチで警報の確認およ 切替えて使用したい、などの理由からマルチウィン び操作の必要な画面へ展開できる。またグラフィッ ドゥによる表示も採用することとした。図5「マル ク画面は運転中にも操作や監視性向上の観点から チウィンドゥによる画面表示例」参照 PV 等のデータ表示追加変更が実施されるが、これら また Windows の操作性を有効に活用するため、マ の改造が自動的にグレード 3 警報監視画面に反映さ ウスによる操作を中心としたが、マウスボールの汚 6 れるよう考慮し、グラフィック画面変更時の効率性 み込んだ形で製作し、 現地工事の工期短縮を図った。 と容易性を実現している。今回の更新においては、 これにより、撤去から据付を完了し電源投入まで一 このグレード 3 警報画面とすべてのグラフィック画 週間で実施することができ、この後のテスト工程も 面(約 200 枚)を社内設計製作とすることで対応し 順調に進めることができた。 た。 運転面からは、マルチウィンドゥの採用により、 多くのデータの確認がウィンドウの切替えで連続的 に可能となり操作監視性の向上に寄与している。ま 5.おわりに たExapilot とDCSのシングルウィンドゥ化により、 今回の更新工事は当然のことながら、 SDM期間内に DCSの関連画面で調整しながらExapilotの操作も同 終了させることが条件であり、ループテストやイン 時に可能になるなど、操作のためのボードマンの移 ターロックテスト等を考慮すると更新に必要な工事 動も不要となり、 負担軽減に貢献することができた。 期間は約10日間であった。このため、既設盤の改造 今後も同型DCSの更新が行われていくことになるが、 を最小限とする必要からヒューマン・インターフェ 更なるコスト低減と工期短縮に、今回の経験を活か ースの設置に関しては、 メーカ標準デスクではなく、 していきたい。 従来の旧型DCSのコンソールに新しいHISを組み込む こととした。しかし、組み込みを現地工事にて実施 すると改造期間を要することから、メーカ工場で組 グレード3 グレード3警報監視画面 警報監視画面 常時、副モニターへ表示 グラフィック画面 グラフィック画面 主モニター Exapilot Exapilot 操作監視画面 操作監視画面 主モニター 副モニター上の表示灯部分 のクリックにより該当グラ フィックを主モ ニターへ表示 Exapilot 代表警報 Exapilot Exapilot 状態監視画面 状態監視画面 直接表示も可能 主モニター 図-6 アラーム発生時の画面展開 7
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