http://www.sacos.co.jp/ 9641 サコス 瀬尾 伸一 (セオ シンイチ) サコス株式会社社長 受注額は予定より少なかったものの原価率改善で大幅増益 ◆決算概要 取締役 石川 忠 当社は、建設業界および一般産業界に機械のレンタルを行い、営業地域は首都圏、関西圏、中部圏の 3 大都 市圏に特化している。連結子会社としては、土木・建築工事用の仮設電気設備工事を行う(株)新光電舎があり、2 社で連結を形成している。 当社の主なユーザーである建設業界は、中期的には東京オリンピックやリニア新幹線などの大きなプロジェクト があり、需要増が見込まれるが、2015 年 9 月期は、公共事業投資が縮小し、建設工事費や資材費が高止まりして いたため、民間の設備投資も様子見となり、当初計画ほど売上が伸びなかった。しかし、首都圏の大型ターミナル 駅改良や JR 東日本の地震対策、外環道、関西圏では新名神高速道路の工事を受注し、一定のボリュームは確 保できた。 このような中、当社は環境に影響されない強い企業体質を構築するため、第 1 に都市部の工事にターゲットを絞 り確実に受注に結びつけるよう取り組んだ。第 2 に、IC タグによる商品管理などへの ICT 活用と、5S 活動による職 場環境の合理化・効率化を進めた。第 3 に、レンタル価格の適正化と原価意識の向上に努め、増益につなげるこ とができた。当社はレンタル会社であり、貸与資産をどれだけ充実できるかが大きな課題である。当期の購入額は、 当初は前期以上の購入を計画していたが、前期および前々期と比べて減少し、19 億 35 百万円となった。ただし、 投下資本の期末保有高は 235 億 73 百万円で、前期からほぼ 5%(11 億円)伸び、レンタル基盤を広げることがで きた。回収率と稼働率は前期および前々期には及ばず、これは 2016 年 9 月期の課題である。 売上高は前期比 3.7%増の 153 億 52 百万円となり、種類別では主力の土木が若干減少したが、鉄道、建築、 設備が増加した。項目別では、自社機レンタル収入、他社機レンタル収入、修理や運送などの付帯収入、中古建 設機械の販売は、いずれも前期を上回った。しかし、大型工事用電気設備工事が一巡したため、子会社の工事売 上だけは減少した。売上総利益は 7.7%増の 62 億 56 百万円で、粗利率は前期の 39.2%から 40.8%へ改善した。 これは、資産購入が少なく原価が低減したことと、他社機レンタルや修理や運賃などの外注費用の見直しで原価 率が向上したことによる。これにより、販管費は 2%増加したものの、営業利益は 28.5%増の 15 億 63 百万円、経 常利益は 30.1%増の 15 億 70 百万円、当期純利益は 39.6%増の 9 億 51 百万円となった。 貸借対照表は、総資産が 140 億 82 百万円で、前期残高より 4 億 72 百万円増加した。これは主に現預金が増 加したことと、毎年、営業所の設備をリニューアルまたは新設しているために有形固定資産が増加したことによる。 負債合計は 62 億 77 百万円で、2 億 69 百万円減少した。内訳は、買掛金残高の減少が 1 億 50 百万円、有利子 負債の減少が 1 億 26 百万円であった。当期は社債と借入金で 5 億円を調達し、既存の借入金を返済・償還したた め、有利子負債残高は 17 億 73 百万円に減少した。純資産は 78 億 5 百万円で、7 億 41 百万円増加した。自己資 本比率は前期の 51.6%から 55.1%に上昇し、総資産回転率は 1.14 回から 1.11 回になった。 キャッシュフローについては、営業活動によるキャッシュフローで 10 億 74 百万円を獲得した。貸与資産の購入 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 や法人税はあったが、当期純利益や減価償却の増加により、ここ数年で最も資金が増加した。投資活動によるキ ャッシュフローは、事業所の新設および改修などに伴い 2 億 71 百万円を支出した。財務活動によるキャッシュフロ ーは、償還、返済、配当金により 4 億 17 百万円を支出した。現預金の残高は 19 億 94 百万円となり、有利子負債 を上回り、9 月末現在では実質無借金である。2016 年 9 月期は、売上高 162 億円、経常利益 16 億円を目標に設 定している。 ◆事業概況 社長 瀬尾 伸一 昨年は建設市場が活況を呈し、業界の株価が上がるなど、上げ潮の状況であった。しかし当期は、資材や人件 費の高騰や大手ゼネコンの請負金額の見直しでブレーキがかかった。今後は、工事の規模や地域が 2 極化する と思われる。当社が主力市場としている首都圏では、中小規模の案件は延期・中止になり、1 件当たりの規模が大 きくなると予想される。したがって、建設投資の金額は伸びるが出件数は減少する。地方は全体的に厳しい状況に なると考えている。 このような中、当社は、中長期的目標である売上高 200 億円、経常利益 20 億円を達成するために、過去 2 年間 「鉄人化経営」に取り組んできた。具体的には、前期に東京支店を設立し、社長の直接指揮によるマーケットの把 握と政策の迅速な実行を進めている。また、ICT の活用と 5S の推進によって商品管理と経営効率の向上を図った。 これにより一定の成果は上げることができた。たとえば経常利益率は当社がこだわっている指標であるが、この 5 年間で 1.9%から 10.5%まで改善した。これをさらに進めるためには、首都圏マーケットへの対応力向上とリソース 集約が必要である。 首都圏における主な工事としては、東京・名古屋間で 5 兆 4 千億円の設備投資と言われる中央リニア新幹線、 大泉から東名 JCT 間で 1 兆 3 千億円と言われる東京外かく環状道路、首都高速道路株式会社が 2020 年までに 完了する予定としている首都高速羽田 1 号線の架け替えがある。鉄道関連では、現在進行している渋谷、新宿、 東京の大規模ターミナル駅の改良工事や品川・田町間の山手線新駅がある。また首都圏の直下型地震耐策工事 として、山手線などのインフラの耐震化工事が継続している。オリンピック関連工事は来年 2 月から春にかけて出 てくると予想される。 このような大規模案件の 80%が東京中心部に集中するため、これをどのように受注するかが大きな課題である。 このため、東京地区マーケットに対する機構を改革した。これまで当社は、競合他社と同様に、地域密着型の多店 舗展開を行っており、5 百~1 千坪の土地を借りて商品をストックし、営業、フロント、技術員を配置していた。これ は、迅速にサービスを提供できる反面、大規模化した市場では、案件毎に経験と実績のある営業担当者を配置で きないケースが発生する。また、フロントの手配能力も人によって個人差があるため、失注の可能性があり、分散 化することでコストがかさむというデメリットもある。このため、首都圏営業を集約して首都圏中央営業部を設立し、 営業、フロント、技術のベテランやスペシャリストを集中配備した。経営効率については、従来の整備拠点に加えて 新たに土地を取得して羽田機械センターを建設する予定である。これは、敷地 1 千坪で、小物のオリジナル商品を 中心に都内の顧客に提供するためのヤードとする。また、従来型の商品から競争力の高いオリジナリティのある 商品に投資をしていく。 このような集約においては、ICT を積極的に活用していきたい。従来、IC タグやタブレットを使って合理化してき たが、さらに進めて車両運行管理システムやセンター間の常時スカイプ通信システムを導入する。当社が扱う商 品は、大きいものや重たいものが多く、安全に配慮しなければならないが、いかに空車の時間を少なくするか、効 率よく商品を納品・引き取りするかが顧客満足度のバロメーターになる。運送管理システムにより車両の現在位置 や状況をリアルタイムに把握することで、ドライバーとセンターおよびセンター間で実務をスムーズに進められるよ うにする。 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 SNP とは、「サコス・ニュー・プロダクト」の略であり、名古屋にあるコンサルタントの OJT ソリューションズ社と提 携してトヨタ流の改善を導入した計画の名称である。機械を管理し良好な状態に保つためには、技術職の経験と 知識、作業の効率化がキーポイントとなるため、この SNP 計画により収益力アップと他社との差別化につなげてい く。技術職は前期 114 人、当期 119 人、今期は 123 人を予定しており、1 人あたりの整備台数は前期 848 台、当期 888 台と増加してきた。今期の目標は 926 台である。当社が費用負担している出庫中の機械に対する巡回などの メンテナンス費用については、業務を視える化することでコストを圧縮した。ゼネコンでは管理業務が多くなり、機 械関連の職員がかなり減っている。そのため、少々のトラブルでもレンタル会社任せにすることが多い。トラブルの 傾向を分析し対策を講じていくことで、当社は現場に出向く技術系職員の回数を減らし、なおかつ顧客の満足度を 高めるよう工夫している。レンタル資産については、当期は手持ち資産でまかなえたため購入額が減少したが、こ のままでは将来の収益に悪影響が出てくる。今期以降はメリハリのある投資を続けていきたいと考えており、その 分、利益は若干低めに設定している。 配当金は、この 3 年間で 4 円、5 円、6 円であったが、今期についてはさらに 1 円増配の 7 円を予定している。 ROE も重視しており、前々期 6.7%、前期 9.7%、当期 12.3%と順調に上昇してきた。成長性とのバランスがあるた め、13.5%を最適の数字だと考えており、今期はその数字を目指したい。株主優待については、昨年、当社オリジ ナルのミニチュア重機を発表した。当社のレンタル業は一般の人にはわかりにくい部分があるので、当社の事業 運営を理解してもらえるような工場見学の機会を作りっていきたいと考えている。 ◆質 疑 応 答◆ 販管費はどのような項目を低減したのか。 工場のメンテナンス費用が減少し、実際に人員の数は増えているが、1 人当たりの労働時間数は増えていない。 当社には番号を付与して管理している機械が約 5 万点あり、毎朝、手作業による在庫の確認をしていた。以前は 技術員がヤードに入って在庫表が出来るまで 1 時間半くらいかかっていたが、現在は 15~30 分以内で終わるよう になった。余った時間は整備に充当することができるので、残業が少なくなり効率が上がる。ハンディターミナルで、 ヤード内の機械をすべて読み込むことで、現場から戻ってきた機械の管理も格段に向上した。 (平成 27 年 12 月 4 日・東京) *当日の説明会資料は以下の HP アドレスから見ることができます。 http://www.sacos.co.jp/ir/kessan_setumei_pdf/ir20151204.pdf 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。
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