17121023.pdf http://www.japanservo.co.jp/ 企 業 6585 日本サーボ 堀 江 昇 (ホリエ ノボル) 日本サーボ株式会社社長 モータのインテリジェント化で市場を創出 ◆会社概要 当社は資本金25億円で、日立グループの持株比率が57%であり、連結売上高311億円のうち海外売上比率 が44%、海外生産比率が65%である。主要製品は小型精密モータである。当社の売上は2001年で底を打ちV 字回復をしてきた。2005年度の中間期売上高は145億96百万円であり、下期は165億円を予定している。純 利益は上期5億47百万円の赤字であった。当社の製品は材料比率が非常に高く、原材料の急激な値上げが上期 の赤字につながった。特に大口顧客である事務機メーカ向けのモータは約半分を中国で生産しているが、主要 材料の電磁鋼板が中国で前年比120%以上の値上がりをしたことによる。一方で事務機メーカは低価格競争が 激しくなっており、例えばカラーのA4レーザビームプリンタは国内メーカが6万~9万円台なのに対し、韓国 メーカは3万円を切る値段で発売している。このため当社への価格要求も厳しくなっており、原価低減が売価 下落に追いつかなかったことも上期の赤字に影響した。下期については製品ベースで上期の赤字を解消する予 定であるが、開発センター構築のために遊休工場敷地を売却しているのでそれが上乗せになり、通期で12億 円の黒字になると見込んでいる。 小型モータはハードディスクドライブやDVDプレーヤなどで使われるが、当社はインテリジェントモータ と呼ばれる価格の高いニッチ市場向け製品を作っており、世界市場における当社のシェアは0.4%、金額ベー スでは2%である。当社のインテリジェントモータは通信・ストレージ・サーバ市場向けの強制急冷用ファン・ ブロア、事務機器・産業機器市場向けのステップモータ、カラーコピードラム向けブラシレスDCモータ等で あり、これらの分野で30~40%のシェアを持っている。 当社が取り組んでいる市場は事務機器市場、通信・情報機器市場、医療機器市場があり、新規重点分野とし て新規家電市場、産業機器市場、自動車関連市場がある。特に自動車関連市場については、2年前から協業会 社である山洋電気㈱と当社のエンジニアが日立グループの自動車事業部で共同開発を行っている。 事務機器市場には、従来の角形より性能の良い丸形ハイブリッドステップモータ、薄型ブラシレスモータ、 ファン、ブロアを供給している。 通信・情報機器市場では、携帯電話の基地局向けのモータを供給している。基地局内部は環境が変化しても 性能が劣化しないように恒温層になっており、このため冷却方法も空冷から液冷に変わりつつある。液冷にな るとファンやブロアの数が減るので当社にとっては深刻な問題となる。このため今後は液冷を戦略製品として 育てていく予定である。 医療機器市場では、当社の持つ低騒音の3相ステップモータ技術が、患者の移動が可能な小型自動注射器 (シリンジポンプ)等の医療機器で強みを発揮している。人工透析装置の血液ポンプでも高い評価を得ている。 新規家電市場では、特に冷蔵庫において静音という特性を持つブラシレスモータが使われるようになり、当 社の技術が役立っている。また製氷スピードを上げるための2サイクルアイスメーカを開発し、海外メーカに 供給している。 産業機器市場では、例えばウエア搬送ロボットにおいて、関節をエンドレスで自在に回転させるために当社 ステッピングモータが使われている。当社は、微細な動きが可能となるように信号線を使わない制御方法を開 発した。このようなロボットアームは産業機械のさまざまな分野に応用されるだろうと予想している。自動車 関連市場でも、他の分野と同様にモータのインテリジェント化が進んでいる。自動車は従来の油圧制御から電 子制御に変化しており、1台に100~200個のモータを使用している。このうち8~9割はブラシ付きモータで あるが、寿命が短くノイズが発生することからブラシレスモータが採用されるようになった。これによりすべ てのモータをLANによって制御できるようになる。今後このようなLANによる小型インテリジェントモータ の分散制御は、家電等の他の分野にも波及していくだろうと思う。 ◆将来に向けたコアコンピタンスの確立 当社は、携帯電話、DVD、ハードディスクドライブ等の大口標準品市場からは撤退し、カスタム系または セミカスタム系の市場を事業ドメインにしている。またモータだけでなくモータをユニット化し複合システム といった応用製品を志向していく。そのためにはインテリジェントモータの市場を創出する必要がある。新し 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。 い市場の一つがクーリングソリューションであり、日立はパソコンで液冷を実現した。スーパーコンピュータ やサーバと違って自然放熱や空冷が主流だったパソコンの世界で液冷を実現したことは画期的である。今後 は、当社としても通信分野など小さいが発熱量が多い装置や一定温度に保持する必要のある装置向けに新しい 冷却システムを提案していく予定である。 お客様の筐体に当社モータを搭載した場合に共振でノイズが発生したり予想どおりに冷却できず間際で設 計変更を強いられることが過去に何度かあった。このため現在では、事前にお客様が予定している筐体と配置 を使って空気の流れや温度分布をシミュレーションし、お客様に対してファン機器組み込みの提案も行ってい る。インテリジェントモータはモータ本体と制御部分(コントローラ・ドライバ)から構成されるが、従来の 構成では使うモータの数だけ配線する必要があった。インテリジェントモータではLANを使って1本の信号線 でn個のモータを制御し、センサからの情報もドライバ経由でなくモータが直接受け取るようになっている。 当社は、これらの戦略的技術や製品を立ち上げるために開発センタ設置構想を立てている。この開発センタ は、従来のように試作のために型を幾つも作る必要がなくコンピュータのシミュレーション技術を使って事前 に評価できるようにする。しかもこれをスーパーコンピュータではなくサーバの小さなソフトウエアで実現す るので、従来では考えられないスピードで製品開発が可能となる。また海外の工場向けでは自動機の少ないラ イン、国内では人件費が高いので自動機を多くしたラインなど、お客様の事情に合わせた量産プロトラインを 供給することもできる。設置場所は当社桐生工場敷地内で2006年上期には稼働を開始する予定である。建物 は5階建てで1階がプロトラインのエリア、上が設計開発のエリアであり、5階はお客様と実際に当社のモータ を使いながら議論し模索できる場にしようと考えている。 当社はインドネシアに2,000人規模のバタム工場、中国には南京近郊に常州工場を持っており、深釧 圻に新し く東莞工場を立ち上げた。これは、この地区に日系事務機メーカが進出しており、その近くでモータを生産す るように要求があったためである。この工場は月産10万個程度である。 販売拠点はヨーロッパ、アメリカ、アジア向けの法人を持っている。当社は、顧客との接点として広告を重 視し、日本産業広告賞(雑誌部門)を4年連続で受賞している。今年の主張は、当社はアナログとデジタルの 合わせ技を持つ会社であるという点である。当社製品は長期間の修練を必要とする巧みの世界(アナログ)で あるが、それだけでは人的資源の効率が悪いので、シミュレーションなどのデジタルエンジニアリングを使っ て若い人も容易にもの作りに参加できることを強調した。 ◆社会的責任を果たす企業を目指して 当社は、社会的責任を果たす企業(CSR)を目指しており、お客様も単なる取引相手ではなく一緒に社会 的責任を果たすパートナと見なしている。このため社内にCSR推進部を設置し、企業価値の向上に役立てて いる。また当社は株主を重視しており、ステークホルダに企業価値の向上と先進企業への変革を約束してい る。その一つの目安として、株価純資産倍率(PBR)は今年9月で1.49にまで上昇している。10月は1.53程 度である。CSRの一部として環境経営にも注力している。今年12月にはRoHS指令に対応して鉛、六価クロ ム等6物質を完全撤廃できる。また2002年に12トンあった桐生工場の最終処分量を5トンまで減らす目標を立 てたが、これは2年で達成することができた。本年は更に少なくする予定であり、海外も含めてグループ全体 で取り組みを徹底していきたいと考えている。 ◆ 質 疑 応 答 ◆ 子会社サーボテクノシステム㈱への貸倒引当金が計上されるということだが同社はどういう状況なのか。 以前五つあった国内製造会社を一つに束ねリストラを実施した結果、資本金90百万円に対して6億50百万円 ~7億円の累損が出た。原価低減で現在は5億円まで減らしたが、資本金との釣り合いがとれないので単体決 算で貸倒引当金を計上した方が良いと会計士から勧告された。下期に計上する予定だが、実際にやるかどうか は今後会計士との話し合いで決める。同社は30百万円程度ではあるが2年前から黒字化し生産量も上がってい る。2008~2009年には累損を解消できる見込みである。 GEやノキアのような海外大口顧客からの受注状況はどうか。 米国におけるGEの冷蔵庫シェアは若干低下しているが、当社の実売レベルには影響していない。今後は新 式アイスメーカを提案して売上を増やす。また米国大手家電メーカのエレクトロラックスやワールプール等に アイスメーカの供給が始まった。間もなく当社の大口顧客となると期待している。ノキアでは現在三つのプロ ジェクトが進行しており、そのうち二つについて間もなく当社に発注することが決定している。 (平成17年11月1日・東京) 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。
© Copyright 2024 Paperzz