JIFT ワークショップ「プラズマ輸送のジャイロ運動論的シミュレーション」

JET における運動量輸送に関する実験結果が de
Vries
(EFDA)と Parail(UKAEA)から紹介され,トロイダル
インフォメーション
運動量輸送係数とイオン熱輸送係数の比較や,エッジプラ
ズマにおける粒子輸送に対するリップル磁場の効果等の研
究結果が報告された.また,吉田・鎌田(原子力機構)は
■会議報告
JIFT ワークショップ「プラズマ輸送のジャイロ運
動論的シミュレーション」
JT-60U における運動量輸送の実験結果について発表し,
トロイダル運動量輸送係数とイオン熱輸送係数の比が,
JET の結果より大きくなることや,トロイダル運動量の圧
洲鎌英雄,渡邉智彦(核融合科学研究所)
力勾配依存性等を示した.また,トカマクとヘリカル系プ
ラズマにおける運動量輸送の違い,粘性に対する磁場配位
表記ワークショップは,プラズマ輸送のジャイロ運動論
の効果について,居田(核融合研)により解説がなされ,理
的シミュレーションや理論解析に関する最新研究成果の発
論・実験研究者の間で活発な議論が行われた.
表と討論により,プラズマ輸送機構の物理的理解を深める
電場・ゾーナルフローに関するセッション(#)では,強
ことを目的として,2007年9月24日〜25日の2日間,東京
電場エッジプラズマを記述するジャイロ運動論的方程式の
大学柏キャンパス高温プラズマ研究センターにおいて行わ
高精度化に関する研究発表が河村(京大)よりなされ,ま
れた.これは,ジャイロ運動論的シミュレーションに関す
た洲鎌(核融合研)は,イオン・電子温度勾配(ITG・ETG)
るワークショップとしては,2007年1月にカリフォルニア
モードにより駆動されるゾーナルフローの時間発展に対す
大学サンディエゴ校(UCSD)において行われたワーク
る衝突効果のジャイロ運動論的解析およびシミュレーショ
ショップ「イオンおよび電子温度勾配駆動輸送のジャイロ
ン結果を示した.
運動論的シミュレーション」に続く2回目のものである.
セッション(#)に引き続き,吉田(東大)により,シ
今回のプログラムは(!)ジャイロ運動論的シミュレーショ
アーフローの存在するプラズマ中の波動と不安定性に関す
ンの最近の進歩(2件),(")運動量輸送に関する理論と
る特別講演が行われた.理論的観点から,シアーフローが
実験(7件),(#)電場とゾーナルフロー(2件)
,
($)多
もたらす非エルミート性等の数学的複雑さや物理現象の多
階層物理・ジャイロ流体シミュレーション(3件)の4つ
様性を,シュレディンガー方程式や流体方程式の例を挙げ
のセッションと特別講演(1件)から構成され,各セッショ
ながら解説し,シアーフロー・プラズマが,数学・理論物
ンの最後に30分の討論時間が設けられた.日本側からは1
1
理の根本的難問に係わる研究対象の一つであることを聴衆
件,米国側から2件,また欧州から(米国側からの招待に
に認識させた.
よる)2件の発表があった.
ジャイロ流体シミュレーションに関するセッション($)
最初のセッション(!)では,ジャイロ運動論的シミュ
では,矢木(九大)が負磁気シアートカマク ITG 乱流のジャ
レーション研究の現状について,前回 UCSD でのワーク
イロ流体シミュレーションを行い,最小安全係数磁気面近
ショップに引き続き,井戸村(原子力機構)および渡邉(核
傍における内部輸送障壁の形成および崩壊現象を見いだし
融合研)から報告があった.井戸村は global delta-f粒子コー
た.李(京大)は Ronsebluth-Hinton 残留ゾーナルフローを
ド(GT3D)と保存的計算スキームを取り入れた global full
ジャイロ流体モデルで再現するための経験則的クロー
-f Vlasov コード(GT5D)を用いたトカマクイオン温度勾配
ジャーモデルを導いた.石澤(核融合研)は磁気島とドリ
(ITG)乱流シミュレーション結果の比較を行い,Vlasov
フト波乱流の相互作用に対する新しい理論モデルを紹介
コードによるエネルギー保存精度の改善を示し,ゾーナル
し,ドリフト波乱流による新古典テアリングモードの安定
フロー減衰のベンチマークテストの計算例も紹介した.ま
化について述べた.
た渡邉は flux-tube delta-f Vlasov コード(GKV)を用いたヘ
今回の2日間のワークショップを通して,ジャイロ運動
リカル系プラズマのITG乱流・ゾーナルフローシミュレー
論・ジャイロ流体乱流シミュレーション,運動量輸送の理
ションによって,LHD 内寄せ配位に対応するヘリカル磁場
論・実験,電場・ゾーナルフローのジャイロ運動論的解析
でゾーナルフローの増大に伴って乱流イオン熱輸送係数が
に関する最新の研究成果について有益な情報交換を行うこ
低減することを示した.トカマク・ヘリカル系プラズマ乱
とができた.また,ワークショップ2日目には,昼休みの
流シミュレーションに関する二人の講演は,参加者にジャ
時間を利用して,東京大学柏キャンパス内にある RT‐1プ
イロ運動論的シミュレーション研究の着実な進歩を印象づ
ラズマ実験装置の見学ツアーが実施され,講演・討論と共
けた.
に,理論・シミュレーションおよび実験研究者間の交流を
今回,米国側の強い要望により,運動量輸送に関する理
深めるのに役立った.今回は米国側の希望により東京近郊
論と実験のセッション(Ⅱ)が設けられた.ジャイロ運動
でのワークショップ開催となった.東京大学柏キャンパス
論を用いた運動量輸送の理論が Hahm(PPPL)と McDevitt
高温プラズマ研究センター内の会議室の提供・準備等で多
(UCSD)から紹介され,磁場曲率によってポテンシャル揺
くのご協力をいただいた小川雄一教授,吉田善章教授なら
動の磁力線方向波数スペクトルの対称性が壊されることに
びに古川勝准教授に,深く感謝の意を表する.
より運動量ピンチが生ずる可能性が論じられ,また準線形
(原稿受付:2007年11月9日)
理論による異常運動量輸送の解析的表式等が示された.
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