1 - アクセス空間

慶應義塾大学グローバル COE、情報・電気・電子分野「アクセス空間支援基盤技術の高
度国際連携」リサーチ・アシスタント(博士研究員)の田中雄一(総合デザイン工学専攻・
池原研究室)です。2007 年 11 月 7 日より、グローバル COE 国際インターンシップ制度を
利用して米国・UCSD (University of California, San Diego) の Truong Q. Nguyen 教授
(Video Processing Laboratory(以下 VP Lab.), The Department of Electrical &
Computer Engineering)の元に派遣されております。本稿が第一回目のレポートとなりま
す。まず始めに、事業推進担当者の先生方、また渉外担当の皆様に感謝の言葉を述べたい
と思います。私が学位を取得したのは昨年(2007 年)の 9 月で、11 月からの派遣と言うこ
ともあり皆様には大変ご迷惑をおかけしました。また、快く渡米の許可を下さった池原教
授にも感謝しております。池原研究室のメンバーにもペーパーワークなどで色々ご迷惑を
かけています。本グローバル COERA の皆様、渡航前に素晴らしい壮行会を開催していた
だき、ありがとうございました。
UCSD はカリフォルニア州南端・County of San Diego の La Jolla(ラ・ホイヤ)にキャ
ンパスがあります。La Jolla は風光明媚なことと気候が温暖であることが相まって全米屈
指の観光地・別荘地となっており、全米・全世界から様々な人々が訪れます。当然当地は
高級住宅街としての側面もあり、そのため治安は比較的良いとされています。その分家賃
は他の地域と比べて高くなっていますが…。
今回は UCSD のスクールバスが走っている道路に面した場所にアパートを借りましたの
で、学校に行く分には車(レンタカーです)を使わずに、スクールバスで済ませています。
ガソリンの値段が高い上に、UCSD 敷地内にある、大量にある(ように見える)駐車場も
常に一杯ですので、これは必須の選択ともいえます。実際 VP Lab.の学生も、自転車などを
使って通学しているようです。
今の季節のサンディエゴは雨季に相当し、朝方、もしくは夜に激しい雨が降ることがあり
ます。ただ日中はそんなに降りませんので、傘はそんなに必要ではありません。とはいえ、
サンディエゴの本領はその気候にあると思いますので、早く乾季になってくれないものか
と考えています…。
さて、UCSD は州立大学で、一般的には海洋学、医学、工学の分野で特に実力のある大
学 と さ れ て い ま す 。 私 が 所 属 し て い る 工 学 研 究 科 は 正 式 名 称 を Jacobs School of
Engineering と言います。Jacobs と言う名前の由来は、サンディエゴに本社を持つ IT・通
信関係の大企業、Qualcomm の創業者の Dr. Irwin Jacobs(彼は元 UCSD の Professor で
す)が 1997 年に$15 million の寄付を行ったことによります。彼はまた 2003 年に$110
million(!)の寄付を追加しました。そのせいもあるのでしょうが、研究室の設備は整っ
ており、非常に清潔感があります。現在は School of Engineering に Bioengineering,
Computer Science and Engineering, Electrical and Computer Engineering, Mechanical
and Aerospace Engineering, NanoEngineering, Structural Engineering の六専攻があり、
VP Lab.はその中の ECE Dept.に所属しているということになっています。
私はディジタル信号処理の一分野であるディジタルフィルタバンク、及びそれを用いた静
止画像圧縮の研究を一貫して行ってきております。Prof. Nguyen (FIEEE) は本分野での最
も著名な研究者の一人です。現在は研究室の名の通り動画像処理を中心に研究を行ってい
ますが、その他にも静止画像の超高解像度化などの広い意味でのマルチメディア信号処理
を行っている研究室となっています。VP Lab. には現在十数名の博士課程学生と数名のビ
ジターがおり、Prof. Nguyen は(私を含め)それぞれの学生と週に一度ディスカッション
を行っています。すなわち一週間に一つは何か進展していなければならないわけで、それ
がプレッシャーになると同時に良い刺激となっています。
また、私は 21 世紀 COE の時にも国際インターンシップを利用して VP Lab.に派遣させ
ていただいたのですが、その際に得られた成果が IEEE Trans. on Circuits and Systems—I,
Regular Papers に採録が決定いたしました。また、昨年日本にいる間も Prof. Nguyen と
連絡を取って研究を続けていたのですが、その成果を IEEE CAS Society が主催する中で
最 も 大 き な 国 際 会 議 の 一 つ で あ る 2008 International Conference on Circuits and
Systems (ISCAS 2008)で発表することが決定しました。
こちらに来てからはフィルタバンクの理論・設計よりはむしろその応用に関して研究を進
めています。
今回渡米してから得られた結果の一部を Prof. Nguyen が Local Arrangements
Co-Chair を務め、サンディエゴで開催される 2008 International Conference on Image
Processing (ICIP 2008)へ投稿しました。更に現在の研究を進めており、Journal Paper へ
投稿することができそうな感触をつかんでいます。
先日、毎週金曜日に行われているグループミーティングで発表する機会がありました。一
人当たり半期に一回ほど回ってくる進捗状況報告なのですが、半年に一度と言うこともあ
って一時間ほどの発表が要求されます。VP Lab.にはさまざまな分野の研究を行っている学
生がいますので、基礎理論から発表を始めて提案法まで説明する必要があります。また、
発表中にも質問が多くされるので、しっかりとした下準備をしなければなりません。準備
にはかなり苦労しましたが、何人かの学生が興味を持ってくれたようで非常に良いディス
カッションができたと考えています。私はもうあまり関係が無いのですが、学生には
Doctoral defense の役にも立っているのでしょう。他の学生も非常に分かりやすい発表をし
ていると感じられます。
渡米してから三ヶ月ほど経過し、ようやく数々の申し込みや手続きなどから開放されてき
ました。これからも慢心することなく、研究を進めていこうと考えています。
With Prof. Nguyen @研究室
セミナー開始前の様子
毎週金曜日 10 時から始まります