病期分類演習(肺)(解答、解説) 《 肺 》 <症例 1> 胸部 CT 検査:左肺下葉に 3cm の腫瘍。リンパ節転移なし。CT ガイド下針生検:腺癌。 術前検査にて遠隔転移なし。左下葉切除術施行。 【病理報告】下葉に 3.5cm の腺癌。郭清リンパ節への転移なし。 cTNM T 1b N 0 M 0 Stage IA pTNM T 2a N 0 M 0 Stage IB c 進展度 410:限局 p 進展度 410:限局 解説:左下葉切除術施行前までを「治療前」の情報として抽出します。 cT・・・3cm の腫瘍。周囲への浸潤、肺内転移の情報なし。 cN・・・術前検査にて所属リンパ節転移なし。 cM・・・術前検査にて遠隔転移なし。 pT・・・下葉切除術後の病理組織報告書より下葉に 3.5cm の腫瘍。 周囲への浸潤、肺内転移の情報なし。 pN・・・郭清リンパ節への転移なし。 pM・・・特に記載がないので、cM の情報を用いる。 c 進展度・・・T1bN0M0 なので、「410:限局」。 p 進展度・・・T2aN0M0 なので、「410:限局」。 病期分類演習(肺)(解答、解説) <症例 2> 胸部 CT 検査:右中葉に 3.5cm の腫瘍あり。右肺門リンパ節に転移を認める。 気管支鏡下細胞診で腺癌と診断される。諸検査より、遠隔転移なし。右中葉切除術施行。 【病理報告】高分化型腺癌。S4 に 4cm の腫瘍があり臓側胸膜への浸潤を認める。 肺門リンパ節に転移あり(2/5)。切除面への癌の浸潤(-) cTNM T 2a N 1 M 0 Stage IIA pTNM T 2a N 1 M 0 Stage IIA c 進展度 420:所属リンパ節転移 p 進展度 420:所属リンパ節転移 解説:右肺中葉部分切除術施行前までを「治療前」の情報として抽出します。 cT・・・右中葉に 3.5cm の腫瘍。周囲への浸潤、肺内転移の情報なし。 cN・・・右肺門リンパ節に転移あり。 cM・・・諸検査より、遠隔転移なし。 pT・・・切除術後の病理報告より、S4 に 4cm の腫瘍、臓側胸膜への浸潤あり。 pN・・・肺門リンパ節に転移あり。 pM・・・特に記載がないので、cM の情報を用いる。 c 進展度・・・T2aN1M0 なので、「420:所属リンパ節転移」。 p 進展度・・・T2aN1M0 なので、「420:所属リンパ節転移」。 病期分類演習(肺)(解答、解説) <症例 3> 胸部 X 線で左上葉に陰影あり。胸部 CT にて左 S3 に 5cm の腫瘍を認める。左 S4 にも 2cm の 腫瘍を認める。同側縦隔リンパ節に転移を認める。 肺癌と診断され、放射線療法と化学療法施行。 cTNM T pTNM T 3 手術なし N N 2 手術なし M M c 進展度 430:隣接臓器浸潤 p 進展度 660:手術なし又は術前治療後 0 手術なし Stage IIIA Stage 手術なし 解説: 放射線療法と化学療法施行前までを「治療前」の情報として抽出します。 cT・・・左 S3 に 5cm、左 S4 に 2cm の腫瘍。(同一肺葉内に散在する腫瘍結節) 他に周囲への浸潤の情報なし。 cN・・・同側縦隔リンパ節に転移あり。 cM・・・遠隔転移に関して記載なし。 pT・・・観血的治療を行っていない。 pN・・・観血的治療を行っていない。 pM・・・観血的治療を行っていない。 c 進展度・・・T3N2M0 なので、「430:隣接臓器浸潤」。 p 進展度・・・観血的治療を行っていないので、「660:手術なし又は術前治療後」。 病期分類演習(肺)(解答、解説) <症例 4> 胸部 X 線にて、左肺下葉に結節あり。CT にて腫瘍径 3.5cm、臓側胸膜への浸潤が認められる。 左肺内リンパ節に腫大があり、転移と診断される。術前検査にて、遠隔転移なし。 左肺下葉部分切除術施行。 【病理報告】高分化腺癌。S8 に 4cm の腫瘍。腫瘍の一部は壁側胸膜まで浸潤している。 肺内リンパ節(#13)、縦隔リンパ節(#9)に転移を認める。 cTNM T 2a N 1 M 0 Stage IIA pTNM T 3 N 2 M 0 Stage IIIA c 進展度 420:所属リンパ節転移 p 進展度 430:隣接臓器浸潤 解説:左肺下葉部分切除術施行前までを「治療前」の情報として抽出します。 cT・・・3.5cm の腫瘍。臓側胸膜への浸潤あり。肺内転移の情報なし。 cN・・・CT にて左肺内リンパ節に転移ありと診断。 cM・・・術前検査にて遠隔転移なし。 pT・・・切除術の病理組織診断より、4cm の腫瘍、壁側胸膜への浸潤あり。 pN・・・肺内リンパ節(#13)転移→N1、縦隔リンパ節(#9)転移→N2。進んでいる N2 をとる。 pM・・・特に記載がないので、cM の情報を用いる。 c 進展度・・・T2aN1M0 なので、「420:所属リンパ節転移」。 p 進展度・・・T3N2M0 なので、「430:隣接臓器浸潤」。 病期分類演習(肺)(解答、解説) <症例 5> 胸部 CT 検査:右肺上葉に 5cm の腫瘍を認める。同側肺門リンパ節に腫大があり、転移と 考える。胸水を認め、細胞診検査施行。胸水細胞診:ClassV(扁平上皮癌)。 化学療法施行。 cTNM T pTNM T 2a 手術なし N 1 M 1a Stage N 手術なし M 手術なし Stage c 進展度 440:遠隔転移 p 進展度 660:手術なし又は術前治療後 IV 手術なし 解説: 化学療法施行前までを「治療前」の情報として抽出します。 cT・・・右肺上葉に 5cm の腫瘍。周囲への浸潤、肺内転移の情報なし。 cN・・・同側肺門リンパ節に転移あり。 cM・・・悪性胸水あり。 pT・・・観血的治療を行っていない。 pN・・・観血的治療を行っていない。 pM・・・観血的治療を行っていない。 c 進展度・・・T2aN1M1a なので、「440:遠隔転移」。 p 進展度・・・観血的治療を行っていないので、「660:手術なし又は術前治療後」。 病期分類演習(肺)(解答、解説) <症 例 6> 80 歳 男性 <現病歴> 2008 年から、高血圧症とうっ血性心不全にて、当院循環器科にて加療されていた。 2014 年末から全身倦怠感が増悪。1 月 12 日定期受診した際の胸部 X 線で心不全増悪とそれに 伴う胸水と診断。入院で酸素投与と利尿剤増量で加療され、胸水は著減したが、右中葉に腫瘤 陰影が認められたため、精査目的で呼吸器科に 1 月 18 日対診・転科。 <経 過> 2015 年 1 月 20 日 2015 年 1 月 24 日 2015 年 1 月 30 日 2015 年 2 月 1 日 2015 年 2 月 3 日 2015 年 3 月 5 日 cTNM T pTNM T 胸部 CT 施行。右 S4 の胸膜直下に最大径 30mm の辺縁が不整な腫瘤を 認めた。臓側胸膜への浸潤が認められる。 縦隔などのリンパ節腫大は認めないが、少量の右胸水を認めた。 酸素投与下で局麻下胸腔鏡を施行。胸水は血性で、中下葉間胸膜に胸 膜結節を認めた。 胸水採取と、胸膜結節での生検を施行。 胸 水 細 胞 診 Class Ⅳ 。 胸 膜 結 節 生 検 で は poorly differentiated adenocarcinoma と診断。 PET-CT で右中葉に加えて、右肺門、気管分岐部に集積を認め、リンパ節 転移と考えられた。年齢も考慮して、化学療法が予定された。 CBDCA、PTX の 2 剤併用療法開始。 胸部CTで著明な増悪はなく、残り 3 クールの外来での施行を予定して、在 宅酸素療法を導入されて退院。 2a 手術なし N 2 M 1a Stage N 手術なし M 手術なし Stage c 進展度 440:遠隔転移 p 進展度 660:手術なし又は術前治療後 IV 手術なし 病期分類演習(肺)(解答、解説) 解説: 化学療法施行前までを「治療前」の情報として抽出します。 cT・・・胸部 CT より右 S4 に最大径 30mm の腫瘍を認めた。臓側胸膜への浸潤あり。 他に浸潤所見や肺内転移所見なし。 cN・・・PET-CT より右肺門と気管分岐部にリンパ節転移を認める。 cM・・・胸膜結節は、生検で「癌」と診断。このことから、胸膜に転移していると考える。 pT・・・観血的治療を行っていない。 pN・・・観血的治療を行っていない。 pM・・・観血的治療を行っていない。 c 進展度・・・T2aN2M1a なので、「440:遠隔転移」。 p 進展度・・・観血的治療を行っていないので、「660:手術なし又は術前治療後」。 病期分類演習(肺)(解答、解説) <症 例 7> 55 歳 男性 <現病歴> 2012 年 11 月 B 町のがん検診を受診し、胸部 X-P の異常を指摘された。12 月 25 日精査のた め、A 病院を受診。同院で 12 月 28 日胸部 CT を施行され、左肺門に 40×35mm の腫瘤を認 めたため、当院紹介。 <経 過> 2015 年 1 月 6 日 2015 年 1 月 8 日 2015 年 1 月 10 日 2015 年 1 月 18 日 2015 年 1 月 20 日 2015 年 2 月 18 日 2015 年 2 月 25 日 2015 年 3 月 8 日 当院呼吸器科初診。 胸腹部 CT、頭部MRI施行。肺門リンパ節と一塊となったS1+2 の腫瘤を認 める他、縦隔リンパ節、他臓器への転移所見は認められなかった。 気管支鏡を施行。左上葉分岐周囲の主気管支に不整粘膜を認め 、同部 で TBB を施行。また、B1+2 を閉塞する腫瘤を認め、同部で TBLB、洗浄・ 擦過細胞診施行。 TBLB、TBB 共に、squamous cell carcinoma との結果で、本人・家族に告 知の上、放射線療法を施行した後、縮小傾向があれば手術という方針と なった。 放射線療法(3.0Gy×20 回照射)のため、入院。 胸部CTで 20×15mm と腫瘍の著明な縮小を認めたため、手術を施行する こととなった。 気管支形成術(スリーブ)併用左上葉切除術施行。 経過良好で退院。 ≪病理報告≫ 切除標本には、放射線療法の影響と思われる強い線維化が見られますが、その中に角化を 伴う腫瘍細胞が主体の中分化型扁平上皮癌がわずかに S1+2 に(15×12mm)残存しています。 切除された主気管支にも強い線維化所見を認めますが、腫瘍細胞は認めません。断端はい ずれも陰性です。 リンパ節転移 (#5 0/3、#6 0/2、#7 0/2、#8 0/1、#10 2/2、#11 3/3、#12 1/1) cTNM T 2a pTNM T 術前治療後 N 1 N 術前治療後 c 進展度 420:所属リンパ節転移 p 進展度 660:手術なし又は術前治療後 M 0 M 術前治療後 Stage IIA Stage 術前治療後 病期分類演習(肺)(解答、解説) 解説: 放射線治療施行前までを「治療前」の情報として抽出します。 cT・・・気管支鏡等より上葉分岐周囲に不整粘膜→主気管支浸潤あり(位置的に気管 分岐部から 2cm 以上離れていると考えられる)、B1+2 を閉塞する腫瘍を認めた。 cN・・・胸部 CT より肺門リンパ節と一塊となった腫瘤を認める」 →肺門リンパ節転移と考える。 cM・・・転移に関する記載なし。 pT・・・放射線治療後の手術。 pN・・・放射線治療後の手術。 pM・・・放射線治療後の手術。 c 進展度・・・T2aN1M0 なので、「420:所属リンパ節転移」。 p 進展度・・・放射線治療後の手術なので、「660:手術なし又は術前治療後」 病期分類演習(肺)(解答、解説) <症 例 8> 78 歳 男性 <現病歴> 2015 年 2 月初めの人間ドックで右上肺野の淡い透亮像を認め、精査のため当院紹介。 <経 過> 2015 年 3 月 8 日 2015 年 3 月 9 日 2015 年 3 月 10 日 2015 年 3 月 17 日 2015 年 3 月 18 日 2015 年 4 月 3 日 当院呼吸器科を初診。 胸部 CT 施行。Thin-section CT で右上葉の S3 に、15×15mm 大の境界 明瞭でほぼ円形をした限局性の陰影を認めます。辺縁は比較的平滑で、 内部は 6×4mm 大の高吸収域を認め、辺縁部はすりガラス影を示してい ます。Noguchi TypeC の所見です。わずかな胸膜嵌入像を認めます。 上腹部 CT, 頭部 CT 施行。他臓器への転移は認めません。 手術目的で入院。 右上葉楔状切除術(VATS)施行。 退院。 ≪病理報告≫ Well differentiated adenocarcinoma (LPA) 腫瘍は S3 に存在し、14×13×13mm 大で、腫瘍中心部主体に炭粉沈着、瘢痕形成を認めま す。 組織学的所見では高分化型腺癌で、肥厚した隔壁を伴って主として肺胞置換性(lepidic)に増殖 進展しています。中心周辺には 6×5mm の浸潤部を認め、野口分類では type C に相当する IASLC 分類の lepidicpredominant adenocarcinoma と診断します。 cTNM T 1a N 0 M 0 Stage IA pTNM T 1a N 0 M 0 Stage IA c 進展度 410:限局 p 進展度 410:限局 病期分類演習(肺)(解答、解説) 解説: 右上葉楔状切除術施行前までを「治療前」の情報として抽出します。 cT・・・胸部 CT より右 S3 に 15mm 大の腫瘍を認めた。 cN・・・所属リンパ節転移に関して記載なし。 cM・・・各 CT 検査より他臓器への転移なし。 pT・・・腫瘍径は 14mm。他に反映させる情報はない。 pN・・・郭清を行っていないので、cN を用いる。 pM・・・特に記載がないので、cM を用いる。 c 進展度・・・T1aN0M0 なので、「410:限局」。 p 進展度・・・T1aN0M0 なので、「410:限局」。 *Thin-section CT: 高分解能の薄切 CT
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