沖縄医報 Vol.39 No.12 2003 生涯教育コーナーを読んで単位取得を! 日本医師会生涯教育制度ハガキによる申告( 5 単位) 日本医師会生涯教育制度は、昭和 62 年度に医師の自己教育・研修が幅広く効率的に行 われるための支援体制を整備することを目的に発足し、年間の学習成果を年度末に申告 することになっております。 沖縄県医師会では、自己学習の重要性に鑑み、本誌を活用することにより、当制度の さらなる充実を図り、生涯教育制度への参加機会の拡大と申告率の向上を目的に、新た な試みとして、当生涯教育コーナーの掲載論文をお読みいただき、各論文の末尾の設問 に対しハガキで回答(ハガキは本巻末にとじてあります)された方には日医生涯教育講 座 5 単位を付与することに致しております。 つきましては、会員の先生方のより一層のご理解をいただき、是非ハガキ回答による 申告にご参加くださるようお願い申し上げます。 なお、申告回数が多い会員、正解率が高い会員につきましては、粗品を進呈いたしま す。ただし、該当者多数の場合は、抽選とさせていただきますので予めご了承ください。 広報担当理事 下地武義 生涯教育 の設問に 答える ●掲載論文を読み 設問に答える ハガキ で回答 ●県医師会に ハガキで回答する 5 単位 付 与 + ●回答いただいた方に 日医生涯教育講座 5単位付与 −81(1095) − 粗 品 進 呈 ●抽選で粗品進呈 沖縄医報 Vol.39 No.12 2003 生涯教育 特発性側弯症の手術成績 琉球大学医学部 整形外科 新 垣 勝 男、當 眞 嗣 一、金 谷 文 則 琉球大学 保健管理センター 高 良 宏 明 那覇市立病院 整形外科 屋 良 哲 也 【要旨】 近年、脊椎インストゥルメンテーションの発達により、脊柱変形に対する十分 な矯正が可能となってきた。当科では平成 8 年より Isola 法を導入し、脊柱変形の 矯正手術を行っている。今回、Isola 法による特発性側弯症の手術成績を調べた。 対象は Isola 法で後方矯正固定術を行った特発性側弯症の 23 例で男性 6 例、女性 17 例であり、手術時年齢は平均 15.9 歳、術後経過観察期間は平均 2 年 11 ヵ月であ った。 側弯 Cobb 角は術前平均 56.1 °が術後平均 15.8 °となり、矯正率は平均 72.3 %で あった。手術時間は平均 7 時間 23 分、術中出血量は平均 2,000ml、輸血量は平均 1,421ml で、6 例に平均 800ml の同種血輸血が必要であった。在院日数は平均 38 日 であった。術後合併症が 4 例(17.4 %)に発生したが、インストゥルメントの破 損や脊髄麻痺などはなかった。 【はじめに】 近年、脊椎インストゥルメンテーションの 発達により、脊柱変形に対する十分な矯正が 可能となってきた。当科では平成 8 年より Isola 法 1)を導入し、脊柱変形の矯正手術を 行っている。今回、Isola 法による特発性側 弯症の手術成績を調べた。 特発性側弯症は側弯症の約 8 割を占め、思 春期の女子に好発する。成長期に側弯が進行 することが多く、側弯 Cobb 角が 50 ゜を超え ると成長終了後も進行することが多い。側弯 Cobb 角が 40 ゜程度から洋服の上からでも脊 柱変形が目立つようになり、より高度になる と心肺機能にも影響してくる。このため早期 【対象と方法】 発見、早期治療が重要である。一般的には側 対象は Isola 法で後方矯正固定術を行った 弯 Cobb 角が 25 ゜前後から装具療法を開始し、 特発性側弯症の 23 例で男性 6 例、女性 17 例 成長終了まで行う。しかし、装具療法の効果 である。CD 法 2)による術後に側弯が再発し は脊柱変形進行の予防であり、脊柱変形を矯 た 1 例を除き、22 例は初回手術であった。手 正するためには手術が必要となる。 術時年齢は 11 歳〜 27 歳(平均 15.9 歳) 、術後 −82(1096)− 沖縄医報 Vol.39 No.12 2003 生涯教育 経過観察期間は 4 ヵ月〜 6 年 1 ヵ月(平均 2 年 治癒した。インストゥルメントの破損や脊髄 11 ヵ月)であった。手術適応は側弯の Cobb 麻痺などはなかった。 角が 50 °以上、または 45 °以上で成長期のも のとし、術前の左右側屈 X 線像で側弯 Cobb 【症例供覧】 角が 40 ゜未満まで矯正されない 4 例には前方 症例 1 : 6 歳時に Cobb 角 31 ° ( Th5 − Th12) 解離術を併用した。全例、術前に 500ml 〜 の側弯症を認め、装具療法を開始した。皮膚 1,600ml(平均 1,126ml)の自己血を準備した。 のトラブルなどで装具療法が上手く行かず、 これらの症例で術前後の側弯 Cobb 角、側弯 11 歳時に Cobb 角 60 ° (図 1 − a)まで進行し後 矯正率、手術時間、出血量、輸血量、在院日 方矯正固定術と胸郭形成術を行った。術後 数、術後合併症について検討した。 Cobb 角は 12 °となり、肩・肩甲骨の高さ、 ウエストラインもほぼ左右対称となっている 【結 果】 (図 1−b) 。 側弯 Cobb 角は術前 47 °〜 78 ° (平均 56.1 °) 症例 2 : 13 歳時に Cobb 角 55 ° ( Th11 − L3) が術後 4 °〜 35 ° (平均 15.8 °)となり、矯正率 の側弯症を認め、手術を勧めたが希望せず。 は 55 %〜 91 %(平均 72.3 %)であった。手 18 歳時に Cobb 角 78 ° (図 2 − a)まで進行し、 術時間は 4 時間 50 分〜 11 時間 30 分(平均 7 前方解離術を併用した後方矯正固定術を行っ 時間 23 分)であった。術中出血量は 414ml た。術後 Cobb 角は 20 °となり、ウエストラ 〜 4,185ml(平均 2,000ml)であり、輸血量は インもほぼ左右対称となっている(図 2−b) 。 500ml 〜 2,800ml(平均 1,421ml)で、6 例で 400ml 〜 1,600ml(平均 800ml)の同種血輸血 【考 察】 が必要であった。在院日数は 21 日〜 73 日 (平均 38 日)であった。術後合併症は椎弓根 スクリューによる神経根障害が 1 例で再手術 により椎弓根スクリューをフックに入れ替え ることで治癒した。無気肺が 1 例、気胸 1 例、 術創表層感染が 1 例でいずれも保存的治療で ハリントンインストゥルメンテーション 3) の出現により脊柱変形の矯正手術は飛躍的な 進歩を遂げた。その後、固定性や三次元的な 矯正を向上させるため、種々の脊椎インスト ゥルメンテーションが開発されている。手術 法は後方法 1)2)3)と前方法 4)に大別され、特 −83(1097) − 沖縄医報 Vol.39 No.12 2003 生涯教育 発性側弯症では広範囲の矯正が必要なために 手術時間の延長や死腔の増大が原因としてい 後方法が選択されることが多い。また、最近 る。今回の症例では合併症が 4 例 17.4 %に発 5) では胸腔鏡を用いた手術法 も開発されてい 生しており、1 例 4.3 %は感染であった。脊 るが手技上の問題や安全性がまだ確立されて 柱変形に対する手術の際に最も心配されるこ いない。 とは脊髄麻痺であるが術中の脊髄モニタリン Isola 法は Asher ら 1)の開発した ISOLA スパ グや wake up test を行うことで脊髄麻痺など イナルインストゥルメンテーションシステム の重篤な神経合併症は認めなかった。また、 を用いた後方矯正術であり、脊柱変形に対す 輸血合併症は認めなかったが 6 例(27 %)で る三次元的な矯正が可能となっている。鈴木 同種血輸血を行っており、回収式自己血輸血 6) は Isola 法を用いた特発性側弯症の後方矯 なども考慮する必要がある。 正術で Cobb 角の平均値が術前 63.9 °、術後 側弯症の手術は手術時間、出血ともに多く、 20.2 °となり、矯正率は 71.2 %と報告してい 侵襲の大きな手術である。しかし、術後の外 る。私たちも鈴木と同様な矯正率を得ている。 来通院などで患者本人の表情が明るくなって 一方、沢本 7)は CD 法 2)(Cotrel-Dubousset イ いることが多く、術前の体幹変形に対する劣 ンストゥルメンテーションを用いた後方矯正 等感の強さが推測され、手術による効果はバ 術)で Cobb 角の平均値が術前 54.0 °、術後 ランスの良い体幹の獲得だけではなく、精神 26.0 °となり、矯正率は 51.7 %と報告してい 的な健康も取り戻すことができると考えられ る。CD 法と比較すると、種々の脊椎インス 手術の意義は大きいと思われる。 トゥルメンテーションの長所を取り入れ、後 から開発された Isola 法の方が矯正率では優 【まとめ】 れている傾向にある。脊柱側弯症手術では創 1. Isola 法で後方矯正固定術を行った特発 感染、神経合併症、呼吸器合併症、上腸間膜 性側弯症の 23 例を検討した。 動脈症侯群、偽関節やインストゥルメントの 2. 側弯 Cobb 角は術前平均 56.1 °が術後平 6) 脱転・破損などが主な合併症である。鈴木 均 15.8 °となり、矯正率は平均 72.3 %で は合併症発生率は Harrington 法では 6 %にす あった。 ぎないが Isola 法では 12.4 %と有意に高く、 3. 術後合併症が 4 例(17.4 %)に発生した −84(1098) − 沖縄医報 Vol.39 No.12 2003 生涯教育 が、インストゥルメントの破損や脊髄 麻痺などはなかった。 【参考文献】 1) Asher MA, Strippgen WE, Isola spinal implant Q UESTION! 次の問題に対し、ハガキ(本巻末綴じ)でご 回答いただいた方に、日医生涯教育講座 5 単 位を付与いたします。 system;principles, design, and applications, In: An HS, Cotler JM eds. Spinal instrumentation, Williams & Wilkins, Boltimore, 1992 PP325− 352. 2) Cotrel Y, et al:New universal instrumentation in spinal surgery. Clin Orthop, 277:10− 23, 1988. 3) Harrington PR: Treatment of scoliosis; Correction and internal fixation by spine instrumentation. J Bone Joint Surg, 44(A):591 − 610, 1962. 4) 庄野泰弘、金田清志:脊柱変形に対する instrumentation 設問)特発性側弯症について誤っているもの を選んで下さい。 a. 思春期の女子に多い。 b. 側弯が高度になると心肺機能に影響が でる。 c. 側弯の Cobb 角が 50 °以上は手術の適応 となる。 d. 矯正手術は脊髄麻痺が多い。 Kaneda anterior scoliosis system (KASS)の応用、脊椎脊髄、11:301− 308, 1998. 5) 江原宗平ら:胸腔鏡を利用した脊柱前方矯正固 定術-体外矯正・体内固定術、ECIF system −, 脊 C 柱変形, 17:110− 112, 2002. 6) 鈴木信正:脊柱変形に対する instrumentation Isola 法, 脊椎脊髄, 11:293− 298, 1998. 7) 沢本 毅:脊柱変形に対する instrumentation 特発性側弯症に対する CD instrumentation, 脊椎 脊髄, 11:289− 292, 1998. 著 者 紹 介 琉球大学医学部整形外科 新 垣 勝 男 生年月日: 昭和 40 年 5 月 4 日 出身地: 沖縄県那覇市 出身大学: ORRECT NSWER! A 1.論文:「 人工膝関節置換術後の大腿骨顆上 骨折の治療経験」 問題:TKA 術後の大腿骨顆上骨折に対する手 術療法の長所はどれですか。 1) 侵襲が少ない。 2) 困難な大腿骨の形状の保持。 3) 偽関節や可動域制限を来し易い。 4) 強固な内固定。 5) 正確な大腿骨の形状が得られる。 6) 感染の危険性。 正解 (4)と(5) 琉球大学医学部 平成 2 年卒 専攻・診療領域 整形外科、脊椎外科 ORRECT −85(1099) − NSWER
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