2 ローレンツ収縮と時間膨張 2.1 ローレンツ収縮 全てのものが既に知られているものから説明がつくのであれば、それは新しい理論になり得 ない。どこかで論理の飛躍が必要となる。我々の相対論の展開の道筋では、ローレンツ収縮が 新しい論理である。電磁気学を記述する Maxwell の方程式を解くと、動いている電子の等電位 面は速度 v の運動の方向に 1 − v 2 /c2 だけ縮んでいる(図 2.1 参照)。物質の重要な構成要素 である電子が縮んでいるなら、物質全体も縮んでいるはずである。 図 2.1: (a) 静止電子による等電位面、(b) 動いている電子による等電位面 静止している棒の長さを 0 とすれば、速度 v で動いている棒の長さ は v2 = 1 − 2 0 c (2.1) と見える。これは動いている物差しで計ったものではなく、静止している物差しで計っている ことに注意。動いている物差しは既に短くなっているから、それで計ってもなんら長さに変化 はない。もし変化があるとすれば、その慣性系が絶対静止系に対してどの速度で動いているか が分かることになり、絶対静止系が存在することになる。 動いている物体は短く見えるというローレンツ収縮は、Michelson-Morley の実験が不成功に 終わった理由を説明できる。その実験では同じ長さ L1 = L2 = L0 のアームを用いた。しかし 静止座標系(エーテルに固定した座標系)から見れば、L1 = L0 1 − U 2 /c2 であり、L2 = L0 であるから、時間差 Δt は 1 1 1 2L1 2L2 2L0 1 =0 Δt = − = − c 1 − U 2 /c2 c c 1 − U 2 /c2 1 − U 2 /c2 1 − U 2 /c2 となり、干渉縞が観測されなかったのは当然である。 1 2.2 時間膨張 ピンボール時計を定義する。その時計はパソコンのゲームにあるように、0 だけ離れた上下 の2枚の板の間をピンボールが往復する。ただしここで用いられているピンボールは光である。 このピンボール時計を用いて、静止している時計と、動いている時計は時間の進み方が異なる ことが示せる。まず静止している時計では、往復の時間は 20 /c である.次にこの時計を速度 v で動かせて、動いているピンボール時計で光が1往復する現象を静止座標系から眺める。静 止座標系の時計では1往復するのに時間 t かかったとしよう。1往復の様子は図 2.2 のように 表されるから、当然次のような関係式が成り立つ。 1 1 AA = vt, A B = 0 , AB = 20 + v 2 t2 . 2 4 AB を光速 c で進むから、 ct = 2AB = 2 となり、 t= 1 20 + v 2 t2 4 1 20 c 1 − v 2 /c2 が導かれる。しかし 20 /c は静止した時計の時間(時計と共に動いている座標系で計った時間 と同じ)であるから、静止座標系から見たら動いている時計はゆっくり進むように見える。言 い換えれば、動く時計の時間は膨張する。 図 2.2: 速度 v で動くピンボール時計 2
© Copyright 2024 Paperzz