「フッ化物応用の総合的研究班」 監修 2009年2月

知っていますか? フロリデーション
「フロリデーション」という言葉をはじめて耳にする方もいらっしゃると思います。
この言葉を日本語に要約すると「水道水フッ化物濃度調整」という意味になります。
フロリデーションは、自然の状態でも水に含まれているフッ素を、人の歯の健康、
むし歯予防に役立つように、水道水中のフッ化物濃度を調整する方法です。
すでに実用化している国は 61 か国。フッ素の含まれた飲み水により、
4億人以上がむし歯予防の恩恵を受けています。
Do you Know
Fluoridation?
鏑川水系の水には 0.1ppm 程度のフッ素が含まれていますが、
フロリデーションを実施する場合には 0.7 ∼ 0.8ppm にフッ化物濃度を調整します。
(ppm は 100 万分の 1、微少含有量の単位)
フロリデーションは効果的です。
フロリデーションは公平な方法です。
子供から大人まで高いむし歯予防効果(40∼60%)をあげ
老若男女、その他の差を問わず、歯の健康に取り組む余裕
ることができます。このプログラムが導入され継続される
のない人、障害を持つ人などすべての人のむし歯予防に役
と、水道水を飲食に利用するだけで、生涯にわたってむし
立ちます。だれでも、小さな努力で、確かな効果を得ること
歯予防ができます。さらに、フッ化物配合歯磨剤、フッ化物
ができる平等・公平な方法です。
洗口などの局所応用と併用すると、相乗効果が期待できま
す。
フロリデーションは安全です。
フロリデーションは推奨されています。
フロリデーションは、WHO(世界保健機関)、FDI(国際歯科
連盟)など、世界の専門機関により推奨されています。また
フロリデーションは、科学的根拠に基づいた最良のむし歯
国内では、日本歯科医学会、日本口腔衛生学会など学術団
予防法であり、1945年に米国で1946年にカナダで開始さ
体により支持されています。厚生労働省は地域の要請に応
れてから60年以上の実績があります。多くの科学的研究が
えて技術支援を表明しています。
きちんと行われ、安全性が確認されています。
下仁田町保健センターにある「フロリデーションモデル装
フッ素は自然界のあらゆる物の中に含まれています。私た
置」は、厚生労働省科学研究班の技術支援を受け、平成17年
ちは太古の昔から、毎日フッ素を食べたり飲んだりしてき
に完成しました。
「フロリデーション水」を気軽に体験でき
ました。フッ素は、私たちの骨や歯の健康にとって、大切な
ますので、ぜひお試しください。無味無臭で飲食物の味な
自然からの贈り物なのです。
どにも全く影響しないことがわかります。
フロリデーションは経済的です。
さあ、私達もはじめよう。
一人当たり年間の平均費用は約60円(50セント)と格安で
富岡甘楽歯科医師会は、最も優れた公衆衛生的なむし歯予
す(米国の1人当たりの費用を準用)。これを日本に当ては
防法であるフロリデーションを、富岡甘楽地区に普及さ
めると、1本のむし歯の平均治療費がおよそ5,000円です
せ、地域全体のむし歯を減らしたいと考えています。その
ので、1本分の治療費で生涯にわたるむし歯予防ができる
ためには、まず適切な情報を十分に提供し、住民の皆様の
ことになります。
理解と賛同を得ることが前提になります。
フロリデーションは簡単です。
普段の生活を継続するだけでむし歯を予防することがで
今後もフロリデーションについて科学的な根拠のある情
報を継続的に提供していきたいと思いますので、皆様のご
支援をよろしくお願いいたします。
きます。
むし歯予防のために特別な努力を必要としません。
監修 厚生労働科学研究「フッ化物応用の総合的研究班」
発行 ㈳富岡甘楽歯科医師会 群馬県富岡市七日市 640-1 TEL 0274-62-1706
富岡甘楽地区で
乳歯のむし歯が大幅に減少した
理由。
知りたい理由は
内面に掲載!!
FLUORIDATION NEWS
フッ化物を利用した予防対策の実施により
乳歯のむし歯は大幅に減少しました
フッ化物利用を組み合わせた対策が実施されています。平成5年
度までには、全市町村でフッ化物を利用した乳歯の予防対策を開
100
むし歯保有者率
(%)
90
80
76.0
始しました。
70
その結果、平成3年度以前には80%近かった むし歯保有者率が、
60
平成18年度には17.2 %まで減少しました(右上グラフ)。
また、
平
50
62.4
78.3
78.8
63.7
63.8
74.3
62.8
富岡甘楽
76.4
群馬県
73.0
60.6
67.9
58.8
57.0 57.0
55.1
50.3 48.7
46.1
44.6
48.0
40.7
38.5 37.7
米国の水道水フロリデーション実施率(2006年)
水道水フロリデーションは、20世紀における十
析しました。その結果、適性にフッ化物濃度が調
大公衆衛生業績の1つとして、CDC(米国疾病予
整された水道水の給水人口の割合は、1992年の
防管理センター)により認証されています。米国
62.1%から2000年の65.0%になり、さらには
でのフッ化物利用の普及拡大は、ここ60年間の
2006年で69.2%に拡大した一方、州によって
むし歯の発生並びにその重症化の減少に大きく
は相当な地域格差が認められました。
適正な水道
貢献してきました。水道水フロリデーションは、
水フロリデーションの給水人口率が低い州の公
地域全体にフッ化物を供給するために、公平で
衆衛生局や政策決定者は、
むし歯予防のために公
経済効果の高い手段です。
共給水システムのフロリデーションの推進につ
健康アメリカ2010では、
適正にフッ化物濃度が
いて、
一層の努力を行う必要があります。
調整された水道水の給水人口を75%以上にす
(訳:福岡歯科大学講師 晴佐久 悟 先生)
NPO日F会議通信 №25(2008年10月発行)より引用
成3年以前には1人平均約5本あったむし歯が、平成18年度には
40
0.60本まで減少しました(右下グラフ)。
30
むし歯罹患状況の改善は、充実した口腔衛生指導による保護者の
20
におけるフロリデーションの研究報告について
10
ニューヨーク(1965年開始)、ロサンゼルス
意識の変化、
フッ化物歯面塗布による
「歯質強化」
、
家庭でのフッ化
更新と改訂、並びに健康アメリカ 2010の目標
(1999年開始)、
シカゴ(1956年開始)、
ヒュース
0
の到達状況を検証するために、50州およびコロ
トン(1982年開始)、
フィラデルフィア(1954年
ンビア特別区(ワシントンDC)の1992年から
開始)などの米国の10大都市は、すべてフロリ
2006年までのフロリデーションデータを分
デーションが実施されています。
物利用の普及による「エナメル質の再石灰化の促進」
「歯垢中の酸
42.7
39.6
33.8
30.5
35.8
33.4 33.2
28.7
30.5 29.7
26.6
28.0 28.3
ることを目標の1つにしています。CDCは、米国
22.7
18.5
62年 63年 元年 2年
3年 4年
5年
6年 7年
8年
17.2
9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年
産生能の抑制」
などの相乗効果の結果だと考えています。
永久歯のむし歯予防対策としては、フッ化物洗口の普及をめざし
ています。
フッ化物洗口は、
昭和61年度に甘楽町立の4幼稚園で開
始され、平成4年度から管内4市町村の保育園、幼稚園に急速に普
1人平均のむし歯数(本)
及しました。
平成20年7月末現在、
富岡甘楽地区の保育園・幼稚園・
幼児園31園中の30園で、
4,5歳児1,172名がフッ化物洗口を実施
5.43
5
5.11
4.91
5.00 4.99
4.61
しています。希望者が対象ですが、実施率は毎年95%を越えてい
4
3.50
ます。また、管内のすべての保育園、幼稚園、幼児園で、園児と保護
者を対象に
「歯科衛生士による巡回歯科保健指導」
が実施されてい
ます。学齢期の対策は不十分ですが、幼稚園、保育園で実施されて
3.63
3.59 3.57
3.31
るむし歯予防の効果は富岡甘楽地区でも実証されています。しか
し、
現状では恩恵を受ける対象が限られています。
などの多くの専門機関の推奨により、むし
2億1000万人 →4億500万人(2006年)
・フッ化物添加食塩
400万人
→9700万人
・フッ化物錠剤
2000万人
→1500万人
・フッ化物洗口
2000万人
→1億人
・フッ化物歯面塗布
2000万人
→3000万人
群馬県
中 で広く普及しています 。19 9 0 年から
2000年までの10年間にも各種フッ化物
3.08
応用法の利用者は確実に増加しています。 ・フッ化物配合歯磨剤 4億5000万人 →15億人
2.66
2.22
2.33 2.26
2
2.10 2.00
1.79 1.80
1.58
1.65
1.32 1.39
1
1.15 1.13
1.02
1.44 1.39
3年 4年
5年
6年 7年
8年
1.07
0.76
0.60
9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年
98.9
98.7
96.2
95.8
95.1
95.0
95.0
94.6
93.8
93.7
92.4
91.7
90.9
89.7
89.3
88.9
87.6
84.6
82.9
79.7
79.6
78.1
77.7
77.0
73.6
73.6
73.5
72.9
72.0
69.8
69.2
65.1
64.4
62.9
59.5
59.1
58.7
56.1
54.3
54.0
50.9
42.6
40.4
36.4
31.3
31.3
27.4
27.1
22.6
8.4
20
オーストラリアのフロリデーション実施状況(2005年)
フロリデーション実施率は約76%、
首都特別地域は100%実施
います。
とが重要だと考えています。フロリデーションが実施されれば、子供から高齢者まで給水地域で生活する住民すべてが、生涯を通じ
ダーウィン
1972 0.6 ppm
※クイーンズランド州のブリスベン(人口
約182万人)で、2008年12月にフロリ
デーションが始まりました。
今まで遅れ
フロリデーションは、1964年から1970年代に
かけて都市部を中心に急速に普及しました。
首都
キャンベラ(人口約33万人 1964年開始)やシド
ニー(ニューサウスウェールズ州の州都 人口約
434万人 1968年開始)、
メルボルン(ビクトリア
西オーストラリア州
92%
パース
1968 0.8 ppm
が指摘されていたところ、州の普及計
画によれば、
2012年までに州人口の約
下仁田町では、平成15年度から18年度まで4年連続で、財団法人8020推進財団から歯科保健活動助成の交付を受け、関係諸団体が
富岡市の友好都市アルバニーがある西オースト
ラリア州では、人口の約92%がフロリデーショ
ン の 恩 恵 を 受 け て い ま す 。州 都 パ ー ス で は
1968年からフロリデーションが開始され、
富岡市の友好都市
アルバニー
95%がフロリデーションの恩恵を受け
クイーンズランド州
<5% ※
ニュー・サウス・
ウェールズ州
92%
ビクトリア州
77%
アデレード
1971 0.9 ppm
ることになります。
ブリスベン
non-flouridated
南オーストラリア州
90%
州の州都 人口約381万 1977年開始)などの6つ
の州都を含む都市部で広く実施されています。
フレット「フロリデーション」、平成17年度には厚生労働省科学研究班の技術支援を受けた「フロリデーションモデル装置」が完成
北部準州
70%
1953年にタスマニア島の一地域で開始された
てむし歯予防の恩恵を享受できるようになります。
連携しフロリデーションの実施をめざした啓発活動を継続してきました。その結果、平成16年度には日本口腔衛生学会監修のリー
100
参考資料 http://www.nhmrc.gov.au/publications/synopses/eh41syn.htm
と調整されているフッ化物濃度を示しています。
衛生的なむし歯予防対策であり、各種フッ化物利用の原点でもあるフロリデーションの実施を視野に入れた活動を継続していくこ
80
ションの普及率が連邦全体で約76%になって
ション普及率と、
州都のフロリデーション開始年
今後、富岡甘楽地区においては、遅れが目立つ学齢期のむし歯予防対策を充実する必要があります。そのためにも、最も優れた公衆
60
オーストラリアでは、2005年のフロリデー
右の地図は、首都特別地域と各州のフロリデー
生涯を通じたむし歯予防対策を確立するために
40
オーストラリアのフロリデーション実施状況
1.12
0.65
62年 63年 元年 2年
1.17
100.0
99.8
0
Br Dent J.191:480, 2001.
2.41
2.85
0
世界のフッ化物利用 1990年→2000年
・フロリデーション
歯予防のための各種フッ化物利用は世界
3.00 3.02
3
世界保健機関(WHO)、国際歯科連盟(FDI)
富岡甘楽
4.04
いるフッ化物洗口などの効果により、
12歳児のむし歯も県内他地
区よりは少なくなってきました。
以上のように、
フッ化物利用によ
世界におけるフッ化物利用の状況 (1990年と2000年の比較)
富岡保健福祉事務所管内 3歳児健診の結果
6
ワシントン D.C
ケンタッキー州
イリノイ州
ミネソタ州
ノースダコタ州
ジョージア州
インディアナ州
バージニア州
サウスダコタ州
サウスカロライナ州
メリーランド州
テネシー州
アイオワ州
ウェストバージニア州
ミシガン州
ウィスコンシン州
オハイオ州
コネチカット州
ノースカロライナ州
ロードアイランド州
アラバマ州
ミズーリ州
メイン州
テキサス州
フロリダ州
ニューメキシコ州
デラウェア州
コロラド州
オクラホマ州
ニューヨーク州
ネバダ州
ネブラスカ州
アメリカ全体
カンザス州
アーカンソー州
ワシントン州
アラスカ州
マサチューセッツ州
バーモント州
アリゾナ州
ユタ州
ペンシルバニア州
ミシシッピ州
ニューハンプシャー州
ルイジアナ州
ワイオミング州
モンタナ州
アイダホ州
オレゴン州
カリフォルニア州
ニュージャージー州
ハワイ州
Populations Receiving Optimally Fluoridated Public Drinking Water --- United States, 1992̶2006
(CDCホームページ http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5727a1.htm)
富岡保健福祉事務所管内 3歳児健診の結果
富岡甘楽地区では、
乳歯のむし歯予防対策として、
健診と歯科保健
指導の充実に加えて、フッ化物歯面塗布(フッ素塗布)と家庭での
米国の水道水フロリデーション状況
メルボルン
1977 1.0 ppm
シドニー
1968 1.0 ppm
キャンベラ
ACT 1964 1.0ppm
首都特別地域
100%
フロリデーションを実施
タスマニア州 83%
年間1人平均砂糖摂取量と12歳児の1人平均むし歯数
ホバート 1964 1.0ppm
しました。平成19年度からは、富岡甘楽歯科医師会が主体になり、2年連続で歯科保健活動助成金の交付を受け、管内市町村の住民
0.8ppmにフッ化物濃度が調整されています。
12歳児のむし歯数(本)
砂糖摂取量
(年間 Kg)
を対象にした啓発活動に取り組んでいます。
日本(1999年)
2.4
19.2
アルバニーでもフロリデーションが実施されて
オーストラリア(1998年)
0.8
53.1
います。
米国(1994年)
1.3
33.5
日本は米国やオーストラリアと比較して砂糖の摂取量が少ないのにもかかわらず、12歳のむし歯が多くなっていました。