報道資料 2009年6月23日 株式会社KDDI研究所 携帯電話屋内対策用フレキシブル漏洩同軸ケーブルの開発について ~携帯電話サービスの屋内エリアの対策~ 株式会社KDDI研究所(埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:秋葉重幸/以下、KD DI研究所)は、携帯電話の電波の届きにくいビル内などの屋内対策に適した、フレキシ ブル漏洩同軸ケーブルを開発しました。 フレキシブル漏洩同軸ケーブルは、屋内対策用無線基地局または無線レピータ局用とし てケーブル自体から電波を効率よく放射する一種のアンテナです。従来の漏洩同軸ケーブ ルと比較して、可とう性(曲げ性能)が優れるために工事の利便性が向上し、また、屋内 対策用のアンテナと比較してもきめ細かく不感地エリアを対策することが可能となります。 これまで、漏洩同軸ケーブルは、主に新幹線や高速道路のトンネル内での携帯電話エリ ア対策として用いられてきましたが、漏洩同軸ケーブルで電波の放射に寄与する外部導体 上のスロット部分が銅管で構成されたていたため、非常に固く可とう性がありませんでし た。そのため、複雑な配線が必要となるビルやマンション等の屋内対策には不向きで、ほ ぼ直線である一部のトンネルのみに利用されてきました。さらに、従来の漏洩同軸ケーブ ルは、非常に太いタイプのケーブルを除き、利用できる周波数帯域幅が狭く、携帯電話で 用いられる 800MHz 帯と 2GHz 帯を同時にカバーすることが困難でした。 KDDI 研究所では、このような課題を解決するため、漏洩同軸ケーブルの放射に寄与する スロット部分を構成する銅管の代わりに、編組線(細い導線を編み込むことによって給電 線を実現する手法)を採用し、さらに片打ちという手法を応用しました。同軸ケーブルは、 本来、シールド性能を得るため、交差しながら編みこむ手法をとりますが、方打ちという 片側のみで巻いていく手法を採用することにより、意図的に電波を漏らすことが可能とな ります。この片打ちにより優れた可とう性を維持しながら、銅線の片打ち編組の本数及び 編組ピッチを最適化することで 800MHz 帯から 2600MHz 帯までの広帯域化を実現するこ とに成功しました(図 1 にその構造を示します) 。 よって、従来では曲げにくくケーブルの設置工事が困難であった複雑なビル物件等に対 して、このフレキシブル漏洩同軸ケーブルを導入することにより、LAN ケーブルを這わす ような簡便な設置工事で、複数の周波数帯域をカバーした携帯電話サービスの屋内対策が 可能となります。KDDI 研究所では、携帯電話サービスのエリア品質を向上させるべく、さ らなる研究開発を進めてまいります。またすでに東京都千代田区のビル屋内対策にて本フ レキシブル漏洩同軸ケーブルを用いた au サービスを開始しております。また、本フレキシ ブル漏洩同軸ケーブルの製造は日立電線株式会社が担当いたしました。 図 1 フレキシブル漏洩同軸ケーブルの構造 表 1 フレキシブル漏洩同軸ケーブルの主な仕様 項 目 特性インピーダンス(Ω) 仕様 50±5 減衰量(dB/m) 0.31 結合損失(dB) 70以下 定在波比(V.S.W.R) 1.5以下 概算仕上り外径(mm) 約10 曲げモーメント(N・m) 0.7 特性は800MHz帯のもの。従来の銅管タイプの曲げモーメントは3.8N・m フレキシブル 漏洩同軸ケー ブル 施工例 従来品の可とう性 フレキシブル漏洩同軸ケーブルの可とう性 図2 フレキシブル漏洩同軸ケーブルの施工例と可とう性比較例
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