アスファルト系下葺材を使用した屋根の防露性に関する評価

1387
日本建築学会大会学術講演梗概集
(関東) 2006年 9 月
アスファルト系下葺材を使用した屋根の防露性に関する評価
正会員
正会員
アスファルトルーフィング下葺材
換気
防露性
屋根断熱
1. はじめに
4.3
木造戸建て住宅において、二次防水ラインの役割と
してアスファルト系下葺材を敷設した屋根は、長年の
使用実績がある。一方で、住宅の高断熱高気密化に伴
い、各部位の防露性能について着目されることが多く
なってきている。これまで、屋根の葺き替え工事や建
物の建て替え工事の際の解体調査によってアスファル
ト系下葺材を使用した屋根では防露性能に関して特に
問題が起きていないことが確認されているが、実験で
詳細に検討された例は無い。
2. 目的
屋根用化粧スレート瓦
10
アスファルトルーフィング 940
野地板;構造用合板 12mm
5
た る き 30mm ( 通 気
押出法ポリスチレンフォーム3種 55mm
たるき
石膏ボード 9.5mm
図1 試験体断面
エアチャンバー
外気条件
エアチャンバー
室内条件
試験体
押出法ポリスチレン
フォーム、
エアコンディショナー
エアコンディショナー
試験体は図1の屋根断熱仕様とした。下葺き材には
アスファルトルーフィング 940 を用い、上下の中央1
箇所に重ね部 100mm を設けた。屋根葺き材は、住宅屋
根用化粧スレートを用いた。住宅屋根用化粧スレート
は重ね部の隙間が大きい粘土瓦等に比べて結露に対し
ては危険側の条件になると考えられる。
屋根勾配は、5寸勾配が勾配屋根全体の約4割と最
も高い割合を占めるため、5寸勾配を採用した。
断熱材は、屋根断熱仕様の場合、ほとんどが発泡プ
ラスチック系であり、その中でも一般的に使われてい
る押出法ポリスチレンフォーム3種の 55mm 厚を採用
した。
通気層は断熱材の室外側に厚さ 30mm 程度設けるこ
とが望ましいとされていることから、たるきで 30mm
の通気層を設けた。
4. 試験の概要
100mm 厚
図2 装置概要(恒温恒湿室)
外気条件
室内条件
風速計
図3 装置概要(界壁の勾配屋根試験体)
表1 室内外気の温湿度条件
室内
装置
図2,3に装置の概要を示す。2つの異なる恒温恒
湿室の界壁に、勾配屋根試験体を設置し、その周囲は
100mm 厚の押出法ポリスチレンフォームで区切った。
4.2 温湿度条件
通気条件
通気層下端を開放し、上端2箇所からの吸気により
通気を行った。通気層内での一般的な風速はおおよそ
0.1m/s とされており、試験体中央に設置した風速センサ
ーで風速 0.1m/s に制御した。
そこで、解体調査以外に実験室サイズのモデル評価
として、住宅金融公庫工事仕様に則った屋根構成を作
成し、室内外を想定した温湿度の促進環境下で、アス
ファルト系下葺材を使用した屋根構成の防露性能に関
する評価を行う。
3. 試験体
4.1
○山崎肇*
古市光男**
4.4
温湿度は促進させた環境とするため、表1に示す定
常条件とした。(外気温度;Ⅲ地域相当)
外気
温度
湿度
温度
湿度
15℃
70%
−1.5℃
制御不能(なりゆき)
評価方法
図4に示す試験体の各位置・各層間に、温度、湿度
センサーを設置した。また、野地板下層の合板の表裏
面には結露センサーを設置した。
野地板下層の合板表裏面の湿度及び結露センサーの
値から、結露の有無を判断した。
YAMAZAKI Hajime, FURUICHI Mitsuo
Evaluating the Liability to Occurrences of Condensation in
Pitched Roof Assemblies with Bituminous Underlayments
―793―
16
上
100
室内側 合板上
室内側 合板中央
室内側 合板下
外気側 合板上
外気側 合板中央
外気側 合板下
14
12
910
温度(℃)
10
中
8
6
4
2
0
0
100
455
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
下
13
14
15
経過日数(日)
16
455
14
図4 センサー設置
室内側 石膏
外気側 石膏
外気側 断熱材
通気層 空気
外気側 下葺き
屋根表面
12
5. 結果
8
6
4
2
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
13
14
15
経過日数(日)
図6 各層の温度
100
90
80
70
60
50
40
室内側 合板上
室内側 合板中央
室内側 合板下
外気側 合板中央
外気側 合板下
30
14
20
室内温度
外気温度
12
12
-2
相対湿度(%)
16
温度(℃)
10
図5∼8に各層の温度,湿度のグラフを示す。
図5室内・外気の相対湿度のグラフで、室内側相対
湿度が約 70%で安定した時点を評価試験の開始時点と
した。試験開始後2週間にわたって各層の温度はほぼ
一定値を示し、野地板合板上下の相対湿度も 70%以下
で増減を繰り返している。
野地板合板表裏面の湿度(図7)及び結露センサー
(図8)の測定値の推移から、継続的にも結露の発生
はないといえる。(結露センサーは初期設定 2.5V で、
5V になると結露を示す。)
10
0
10
0
温度(℃)
12
-2
1
2
3
4
5
6
8
7
8
9
10
11
12
13
14
15
経過日数(日)
図7
6
4
合板表面相対湿
5
室内側 合板上
室内側 合板中央
室内側 合板下
外気側 合板上
外気側 合板中央
2
4
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
結露センサー(V)
-2
経過日数(日)
100
室内湿度
外気湿度
90
3
2
80
1
相対湿度(%)
70
60
0
50
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
経過日数(日)
40
図8 合板表面結露センサー
30
20
10
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
経過日数(日)
図5 室内・外気の温湿度
6. 考察と今後の課題
標準的な屋根断熱仕様の屋根構成では、アスファル
トルーフィング下葺材を使用した構成で防露性能とし
て問題のないことが、実験室サイズの促進環境下でも、
実際の現場の解体検証と同様に確認できた。
今後は天井断熱仕様についても同様な実験を行い、
防露性能の評価を行う。
謝辞
本研究を進めるにあたり、ご指導をいただきました東
海大学の石川廣三教授、ならびに実験実施に当たりご協
力いただきました(財)建材試験センター品質性能部環
境グループの皆様に深く感謝いたします。
[参考文献]
1) 計算又は実験の結果による温熱環境(結露の発生を防止する対策)に関するガイドラ
イン
(住宅性能評価機関等連絡協議会 H16.4.15)
2) 建物外皮における結露防止のためのガイドライン
(第6回日加住宅 R&D ワークショップ公表初版 H.156.4)
3) 平成 14 年度住宅・建築主要データ調査報告−戸建住宅編((財)住宅金融普及協会)
4) 木造住宅工事仕様書(解説付)平成 17 年改訂(全国版)((財)住宅金融普及協会)
*,** アスファルトルーフィング工業会
*,** Asphalt Roofing Manufacturers’ Association
―794―