ベジェ曲線学習のためのeラーニング教材

2010 年度 情報教育センター 課題研究
ベジェ曲線学習のためのeラーニング教材
中井治彦 京都光華高等学校教諭
〔はじめに〕
ベジェ曲線・Bスプライン曲線・ナーブス曲線などの描画ツールは、今やごくありふれ
たツールであり、コンピュータグラフィックス系のソフトウェアに限らず、オフィス系の
ソフトウェアにも標準的に用意されているツールである。しかしながらせっかくのツール
も利用する人は少なく、宝の持ち腐れとなっているのが現状であろうと思われる。そこで、
この研究では、身近な所に有るにもかかわらず埋もれたままになっている曲線ツールにス
ポットを当て、学習者の情報活用能力の範囲を広げるための教材作成を行なった。
〔目的〕
この研究によって開発された教材を学習することによって、学習者は、ベジェ曲線・B
スプライン曲線・ナーブス曲線などの描画ツールを自由に制御し、自在に描画することが
可能になり、その結果、PCを利用した文書作成や表計算、プレゼンテーションなどにお
いてよりビジュアルで豊かな表現能力を身に付けることができるようになると期待できる。
さらに、この教材によるトレーニングは、DTP、CAD、3D-CGのモデリングなど
に発展させていくための基礎を築くトレーニングにもなるので、この教材を学んだ学習者
は将来それらの分野でもスムーズに学習を進めていくことができるようになるであろう。
〔方法〕
(1)教材の中で利用するソフトウェア
教材の中で利用するソフトウェアとしては、幅広い学習環境での学習が可能なように、
身近で安価なソフトウェアを利用した。たとえば、学校教育の現場ではほとんど全ての生
徒用 PC にインストールされているであろうオフィス系のソフトウェアとして、国産の
JUST Suite、開発元がアメリカの Microsoft Office を挙げることができる。JUST Suite で
はワープロソフト一太郎の編集中にグラフィックソフト花子と連携してベジェ曲線を描く
ことができる。Microsoft Office についてもワープロソフト Microsoft Word を編集中に図
形描画ツールを起動させてベジェ曲線を描くことができる。さらに安価で機能のうえでこ
れらのソフトウェアと遜色のないソフトウェアがいくつかある。開発元が中国の Kingsoft
Office や EI Office、開発元が韓国の Think Free Office(てがるオフィス)、元々ドイツで
開発された Star Suite、フリーソフトの OpenOffice.org などがある。KingsoftOffice と EI
Office は機能も操作方法も Microsoft Office と共通である。ThinkFree Office もほぼ
Microsoft Office と機能も操作方法は共通であるがベジェ曲線上の頂点
(アンカーポイント)
の編集についてのは機能は限定されている。Star Suite と OpenOffice.org はほぼ同じ内容
のもので、いずれも Draw という図形描画のコンポーネントが付いていてベジェ曲線を扱
うことができる。これらのソフトウェアはいずれも安価で電気店で入手したりインターネ
ットからダウンロードできるものばかりであり、生徒・学生が自宅で利用するのにも向い
ている。
(2)教材作成のためのオーサリングソフトウェア
上記のソフトウェアはいずれもベジェ曲線ツールの機能を持っているが、その操作方法
を説明した教材を作成するためには、そのためのソフトウェアが別に必要である。そのオ
ーサリングソフトウェアとしては WebDemo の ViewletBuilder6 を採用した。WebDemo
ViewletBuilder6 はPC画面をキャプチャして動画にして Web 上で公開できるようなファ
イルをつくるという機能を持ったソフトウェアである。同等の機能をもったソフトウェア
として Adobe Captivate4 も検討したが、前回の課題研究(2005 年度)では Macromedia
Captivate を使用したので、今回は異なるソフトウェアを使用して両者の違いも確認した
かったのでこちらを使うことにした。
〔結果〕
単純な図形を描いて、そしてそれを自由自在に変形して加工することによって必要な情
報を伝えるにふさわしい形を作り出す。そのような作業が思い通りにできるということを、
動画を見て直感的に理解できるようにと工夫をして教材づくりをした。その結果、ベジェ
曲線による描画をトレーニングすることだけであれば身近で安価なソフトウェアで十分に
練習はできるということが検証できた。
〔補足〕
PC を利用した図形描画の学習という点で上記の研究に関連して、ペンタブレットを利用
した実習を実験的に行なった。高校の放課後の部活の時間に、マンガイラスト部に所属し
ている高校 1 年生と2年生を対象にして、PC のポインティングディバイスの一種であるペ
ンタブレットを使った実習を半年間行なった。ペ
ンタブレットは wacom BAMBOO COMIC を使
用し、ソフトウェアはそれに付属している
IllustStudioMini を使用した。ペンタブレットの
ペンは見た目は実際のペンと似ているのである
が、使用した感触がかなり異なるので最初は違和
感を覚えるようである。しかし部員たちは互いに
教え合ってあっという間に使いこなして実際の
筆やペンを使ったかのような作品を作り上げる
ようになった。このツールについてもイラストな
どを扱う分野においては比較的早い時期から与
えても良いかと思われる。と言っても PC につい
ての理解と基本的な操作方法を身につけている
ことが前提であるので、適切な指導を与えること
が可能な環境であれば早くて中学2~3年生頃
からで、最適なのは高校1~2年生頃からであろ
う。
(右の写真 2 枚はマンガイラスト部の活動風
景である。
)