作成日時:2014年6月10日 実験プロトコル 題名 文責 「ペン型」電動ピペット:pipettyによる細胞コロニーのピックアップ 小此木 1. 概要 「ペン型」電動ピペット:pipettyはピペッティングや吸引-排出をペン持ちで行えるユニークな構造を持 つ。これまでのマイクロピペットチップを用いた細胞コロニーピックアップにおいて、直径1mm以下の細胞 コロニーをチップ先端で突いて引き剥がすことは、ピペットを握り持つため細やかな動きができず困難で あった。 今回、従来のピペットではできなかった細やかな動きを「ペン型」電動ピペット:pipettyを用いることで実 現し、細胞のピックアップを簡便に行う方法を紹介する。 2. 背景 性質が均一な細胞を回収する方法として細胞コロニーピックアップがある。この方法は細胞の形状の差 異を位相差顕微鏡により識別し、その特徴的な形状をもつ細胞コロニーをマイクロピペットチップやスク レイパーなどを用いて培養皿より引きはがして回収する方法である。この方法は特殊な器材や試薬を必 要としないことから研究者に広く用いられている。特にマイクロピペットチップを用いて細胞を引きはがす 方法は、実験室が予てより所持する器材を利用するためその手軽さが利点である。 マイクロピペットチップを用いた細胞コロニーピックアップは、そのチップをマイクロピペットに装着して 行われる。そのため、 マイクロピペットを握り持ちした状態で直径1mm以下の細胞コロニーをチップ先端 で突いて引き剥がすのが困難であった。また、マイクロピペットをペン持ちして細胞コロニーを剥がした場 合は、その後マイクロピペットを握り持ち直す必要があり、持ち直している間に剥がれた細胞コロニーを 顕微鏡の視界から見失うことがあった。 弊社が開発した「ペン型」電動ピペット:pipettyはピペッティングや吸引-排出をペン持ちで行えるユニー クな構造を持つ。そのため、従来のマイクロピペットではできなかった「ペン持ちして細胞コロニーを剥が し」と「持ち替えずに引き剥がした細胞コロニーの吸引回収-播種」ができる。今回、その細胞コロニーの ピックアップ方法を紹介する。 3. pipettyを用いるメリット ・ ペン持ちができるので細胞ピッキングがしやすい - 従来の握り持ちでは作業がしにくい 培養液の持ち込みが定量的 ・ - 手動で細胞を吸引した場合、細胞と共に持ち込まれる培養液の量が実験ごとにまちまち 4. 細胞コロニーピックアップの対象 ・ 遺伝子を導入した動物細胞の安定発現株の樹立 ・ ES-iPS細胞など幹細胞の培養における形態による分化-未分化細胞の選抜 ・ 培養中に突然変異した細胞(多核化など)と正常細胞をふるい分け 5. 実験方法:細胞のピックアップ 1 2 3 4 5 細胞培養皿をCO2インキュベーターから取り出し顕微鏡ステージに設置する 20μ L容量pipettyにチップを装着し、顕微鏡を見ながらチップの先で細胞コロニーを細かく何度 かつつく コロニーが遊離し始めたらチップの先をコロニーの近傍におき、pipettyの吸入吐出ボタンを 押して吸い取る 培養液を注いだ新しい培養皿を用意し、チップの先を培養液中につけ、pipettyのの吸入吐 出ボタンを押して細胞コロニーを排出する ピックアップを終了した培養皿と細胞コロニーを排出した培養皿をCO2インキュベーターに戻す 図1. pipettyの外観 図2. pipettyを用いた細胞コロニーのピックアップの様子 a) ペン型電動ピペット:pipettyを用いた細胞コロニーのピックアップの様子 b) チップ先端で培養皿上の細胞コロニーを引き剥がしている様子 c) 細胞を引き剥がされて浮遊している細胞コロニー ◎ 実験条件の詳細 ・ 細胞株:Hep2細胞(ヒト喉頭がん由来細胞) ・ 培養器:3.5cmシャーレ ・ 器 具:pipetty 20μ L容量(MSIC01-01-20) チップの外径0.6mm ・ 流 量:6.5μ L/sec (吸引量 20μ L分) 6. 試薬と実験機材 ○ 機材 品名 企業名 型番 備考 pipetty 20μ L容量 20 チップ 培養倒立顕微鏡 対物レンズ (倍率:5x, 20x) アイカムス・ラボ アイカムス・ラボ ニコン社 ニコン社 MSIC01-01-20 MSIC03-01-20 ECLIPSE TS100 TU Plan Fluor ペン型電動ピペット チップの外径0.6mm 位相差型 備考 ○ 試薬-消耗品 品名 企業名 型番 DMEM High Glucose Fetal calf serum PBS Streptomycin sulfate salt penicillin G sodium salt hydrate セルカルチャーディッシュ 35mm Sigma Sigma 和光純薬工業 Sigma Sigma BD D5796 CR1211 0607P-A102X S6501-50G 13752-5G-F 353001 株式会社アイカムス・ラボ ・ 東京営業所 ・ 盛岡本社 〒130-0026 東京都墨田区両国1-8-4 両国坂本ビル 708号室 〒020-0857 岩手県盛岡市北飯岡一丁目8番25号 TEL:019-601-8228 FAX:019-601-8227 ・ e-mailアドレス ・ URL [email protected] http://www.icomes.co.jp/
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