TOPICS 第10 回 ICTP(塑性加工国際会議) 参加報告 岐 阜 大 学 吉 田 佳 典 1.はじめに 第10回 ICTP(International Conference on Technology of Plasticity、塑性加工国際会議)が、2011 年 9 月 25 日から 30 日までの 6 日間に渡り、ドイツのアーヘン にて開催された。アーヘンはドイツ最西部のノルトラ イン・ヴェストファーレン州に属し、ベルギーおよび オランダ国境に接している。温泉地としても知られ、 有名なアーヘン大聖堂を擁する。会議は町の北東部に 位置する Eurogress Aachen にて盛大に開催された。 本会議は故工藤英明博士が主催した第 1 回(東京、 1984 年)から 3 年ごとに、ドイツ(シュトゥットガル ト)、日本(京都)、中国(北京)、アメリカ(コロン バス)、ドイツ(ニュルンベルグ)、日本(横浜)、ベ ローナ(イタリア)、慶州(韓国)と各国持ち回りにて 冒頭に Hirt 教授から開会の挨拶があり、次いでアー ヘン工科大学学長 Ernst Schmachtenberg 教授から歓 迎の挨拶がなされた。その後、ドイツ学術振興会会長 の Matthias Kleiner 教授、本会議諮問委員会委員長の 木内学教授から挨拶がなされた。 そして、本会議の恒例行事である日本塑性加工学会 精密鍛造国際学術賞贈賞式が執り行われた。王志剛教 授(岐阜大学、日本)の司会で、2 名の受賞者が発表され、 中村保教授(静岡大学、日本)、Jean-Loup Chenot 教 授(パリ国立高等鉱業学校、フランス、写真 3)が登 壇し、日本塑性加工学会会長の石川孝司教授(名古屋 大学、日本)から賞牌と金メダルが贈られた。また受 賞記念講演が開催された(写真 4)。 開催されており、今回は第 10 回目である。50 カ国か ら 700 名以上の参加があり、塑性加工分野における最 大規模の会議となっている。今回はドイツ塑性加工協 会(German Metal Forming Association)が 主 催 し、 Gerhard Hirt 教授(アーヘン工科大学、ドイツ、 写真 1) および A. Erman Tekkaya 教授(ドルトムント工科大、 ドイツ、写真 2)がホストをつとめた。 写真 3 精密鍛造国際学術賞受賞者 Jean-Loup Chenot 教授 写真 4 中村保教授受賞 講演の様子 2.2 基調講演および一般講演 9 月 26 日(月)から 29 日(木)まで、基調講演およ び一般講演が行われた。基調講演は連日大ホールにて 下記の 8 件が行われた。 1)D. -Y. Yang 教 授(KAIST、 韓 国 ):Innovation 写真 1 チェアマン Gerhard Hirt 教授 写真 2 チェアマン A. Erman Tekkaya 教授 2.会議概要 and Creativity in Metal Forming 2)N. Bay 教授(デンマーク工科大学、デンマーク) : Trends and Visions in Metal Forming Tribology 3)J. M. Allwood 教授(ケンブリッジ大学、イギ 2.1 歓迎レセプション・オープニングセレモニー リス):Steel and Aluminium in a Low Carbon 9 月 25 日(日)18:30 から歓迎レセプションが開催 4)E. Oñate 教授(バルセロナ大学、スペイン) : され、翌 9 月 26 日(月)の午前 9:00 からオープニン グセレモニーが挙行された。 Future Advances on Finite Element Methods and Particlebased Methods for Metal Forming Processes Vol.52(2011)No.12 SOKEIZAI 63 TOPICS 表 1 一般講演発表件数(受賞講演および招待講演含む) Session Paper Category Total Hot Forging(1 ∼ 3) Optimization in Hot Forging Cold Forging Various Incremental Forging 15 5 5 5 Forging 30 Sheet Forming(1 ∼ 3) Deep Drawing(1 ∼ 2) Deep Drawing Optimization Springback Hot Stamping(1 ∼ 2) Stretch Forming Bending Leveling & Sheet Bending Roll Forming & Bending Spinning Sheet Forming of Graded and Composite Matgerials 15 10 5 4 10 4 5 5 5 5 4 Sheet Forming 72 Damage: Bulk Forming Damage: TRIP and High Strength Steel Sheets Forming Limit Diagrams Failure Analysis in Sheet Metal Forming FLD of Aluminium & Magnesium 5 5 4 5 5 Damage and Failure 24 Micro Bulk Forming Microforming: General Microforming: Stamping Microforming: Deep Drawing Semi-Solid Forming Thermo-Mechanical-Processing Powder & Foam Processing Polymer Processing Plastic Deformation of Structure Tool Surface Tools & Machines Special Topics 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 4 Special Topics 59 Rolling(1 ∼ 5) Cross Rolling(1 ∼ 2) Profile Rolling Ring Rolling Hot Extrusion(1 ∼ 2) Wire & Tube Drawing(1 ∼ 2) Spinning & Flow Forming ECAP & High Strain Extrusion 25 9 5 5 9 10 4 5 Rolling, Extrusion, Drawing 72 Sheet Bulk Forming(1 ∼ 2) Impulse Forming(1 ∼ 2) Shear Cutting(1 ∼ 2) Fine Blanking & Shearing Tube Hydroforming(1 ∼ 2) Sheet Hydroforming(1 ∼ 2) Asymmetric Incremental Forming(1 ∼ 3) Profile Bending 8 8 8 5 8 8 15 5 Special Sheet Forming Processes 65 Flow Curve(1 ∼ 2) Flow Curve Determination by Hydraulic Bulging Flow Locus Mechanical Properties(1 ∼ 2) Mechanical Properties of HSS Microstructural Properties(1 ∼ 2) Microstructural Modelling(1 ∼ 2) Crystal Plasticity Kinematic Hardening Texture Modelling 10 5 5 10 5 10 9 5 3 5 Materials and Microstructural Modelling 67 Joining(1 ∼ 2) Joining by Mechanical Methods Friction Stir Welding 10 5 5 Joining 20 45 Poster Session Poster Session 454 64 SOKEIZAI Vol.52(2011)No.12 45 454 TOPICS 5)K. Roll 博士(ダイムラー、ドイツ) :Numerical Modeling in Sheet Forming: Industrial State of the Art 6)M. Ernst 博 士( シ ュ ー ラ ー、 ド イ ツ ):Servo Forming is more than a Trend 7)W. Z. Misiolek 教授(リーハイ大学、アメリカ) : Modelling of Microstructure Response to Deformation Parameters in Selected Metal Forming Processes 写真 5 アーヘン大聖堂での オルガンコンサート 写真 6 次回組織委員長 石川孝司教授 8)星野倫彦准教授(日本大学、日本):New Extrusion of Variable Cross Section Shape and た。また次回(第 11 回)の開催地が名古屋であること Curved Frame が発表され、次回オーガナイザーの石川教授から開催 一般講演について、今回は 650 以上のアブストラク 地についてのプレゼンテーションがなされた(写真 6)。 トの提出があり、採択されたものは学術誌 Steel Re- また 9 月 26 ∼ 29 日にかけて毎日アーヘンガイドツ search International あるいは Proceeding に掲載され、 アーが、さらにマーストリッヒ、ボンおよびアイフル その論文数は前者において 191 論文、後者では 241 で 山への日帰りバスツアーが日替わりで催された。 あった。研究内容は塑性加工に関する関連トピック 9 月 29 日(木)夕方にはフェアウェルパーティーが にて極めて広範にわたり、一般講演は 9 会場にて平 Lenne Pavilion にて行われた。 行に行われた。セッションのカテゴリーは Forging、 Sheet Forming、Damage and Failure、Special Top- 2.4 工場見学 ics、Rolling・Extrusion・Drawing、Special Sheet 9 月 30 日(金)には工場見学が 6 コースに分かれて Forming Processes、Materials and Microstructural 行われ、合計で約 270 人が参加した。用意されたコー Modelling、Joining に分けられ、合計で 87 セッショ スは下記の通りで、大規模に行われた。 ンが執り行われた(表 1)。講演数は、受賞講演を含む Tour 1 Seissenschmidt AG および IUL - Dortmund 口頭発表が 409 件、ポスター講演が 45 件で合計 454 Tour 2 ThyssenKrupp Steel Europe AG および Koda 件であった。Rolling 関連の発表が 39 件と多く、今も 尚多くの研究が行われている。また、軽量化のニーズ Stanz- und Biegetechnik GmbH Tour 3 V&M Deutschland GmbH および Adam Opel AG を受けた研究も多く見受けられ、FLD of Aluminum Tour 4 Ford-Werke GmbH および Rothe Erde GmbH & Magnesium お よ び TRIP & High Strength Steel Tour 5 SMS Meer および ThyssenKrupp Nirosta Sheets が開設された。また新たな技術として Sheet Tour 6 SMS SCHUMAG および Hydro Aluminium Bulk Forming および Impulse Forming がそれぞれ 2 Deutschland セッションずつ行われ、今後の発展が期待される。ま 例えば Tour 1 のド た、Asymmetric Incremental Forming が 3 セッショ ルトムント工科大学見 ン設けられ、合計 15 件の講演があった。材料モデリ 学では、異種金属接合 ングおよび材料試験に関連する研究も多く、その数は 鍛造、形材の 3 次元押 14 セッション、67 講演であった。板材成形関連の講 通し曲げ、インクリメ 演は合計で 137 件と突出していた。 ンタルフォーミングお また 9 月 27 日(火)夕方には 45 件のポスター発表 よび電磁成形などの が行われ、平行して学術誌 Journal of Materials Pro- 最新研究事例が紹介 cessing Technology セッションが開催され、論文執 された(写真 7) 。 写真 7 ドルトムント工科大学 見学の様子 筆および査読ガイダンスが催された。 さらに 9 月 28 日(水)の最初には故 Kurt Lange 教 授(シュトゥットガルト大学、ドイツ)の追悼セッショ ンが行われた。 3.まとめ 本会議は大規模であったにもかかわらず、全体に わたって極めて良好に運営され、成功裡に閉会した。 2.3 付帯行事 Hirt 教授および Tekkaya 教授ら両チェアマンはじめ 9 月 26 日(月)夜にはアーヘン大聖堂にてオルガン 多くの運営スタッフに心より謝意を表す。また、次回 コンサートが厳かに開催された(写真 5)。 は 2014 年に名古屋で開催される。震災を乗り越えて 9 月 27 日(火)夜にはバンケットが開催された。その 盛会となることを心より祈念する。 中でベストポスターセッションの表彰式が執り行われ Vol.52(2011)No.12 SOKEIZAI 65
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