Ethernet バイパスによるトラフィック分散手法の提案

Ethernet バイパスによるトラフィック分散手法の提案
Ethernet Bypass Method for Load Balancing of Spanning Tree on Ethernet Network
三角真 1
山岡克式 1
Makoto MISUMI
Katsunori YAMAOKA
東京工業大学 1
Tokyo Institute of Technology
はじめに
Ethernet において,Ethernet フレームのループ防止
を目的とした木構造のネットワークを作成するために,
STP (Spanning Tree Protocol) IEEE 802.1D が広く利
用されている.しかし,STP は,一つの Layer 2 ネット
ワークに 1 つしか木構造のネットワークを作成出来ない
ため,トラフィックの集中する迂遠な経路を取る通信が,
発生する可能性がある.
そこで,本研究では,単純な機能しか持たない Ethernet
Switch により構築された Ethernet 網を対象として,STP
で構成された木構造のネットワークには用いられず,待
機状態となっている Link を,特定の通信の迂回路とし
て有効活用することで,トラフィック負荷分散を実現す
る,Ethernet Bypass を提案する.
2 Ethernet における経路制御の問題点
小規模な STP ネットワークトポロジを示した図 1 にお
いて,Node a と Node c が通信するとき,Link Z は STP
により作成された木には用いられず,待機状態であるた
め,迂遠な経路を通ることとなる.このとき,Ethernet
Switch B で輻輳が発生すると,Link Z に十分な帯域が
有ったとしても,Node a と Node c の間で,通信に必要
な帯域を確保できない.
これに対し,Ethernet において,STP を利用しない経
路設定手法として,Tagged-VLAN や,Ethernet フレー
ムを Ethernet でカプセル化することによって,フロー毎
に経路を設定する手法が提案されている [1].しかし,こ
れらの両手法とも,通信網内の全ての Ethernet Switch
が,これらの機能を有している必要があり,またこれら
の機能を有する Ethrenet Switch は一般に高価である事
から,既存のネットワークに対する導入は容易でない.
3 提案手法
以上をふまえ,本研究では,Tagged-VLAN 等の機能を
持たない,単純な Ethernet Switch を用いて構築された
Ethernet 網において,ある選択したノード対の通信に関
して,STP によって構成された木に採用されず,待機状
態となっている Link を,迂回路として利用する Ethenet
Bypass を実現するために,迂回路に挿入する (図 2),以
下の機能を有する EBN (Ethernet Bridge Node) を提案
する.
• Bypass 対象ノードの ARP テーブルの操作.
1
• IP パケットの Ethernet アドレス変換.
図 1 STP によって作成されたネットワーク例
図 2 EBN の設置例
EBN で実現される,これらの挙動を,図 2 において,
Node a から Node b にパケットを送信する例を用いて
説明する.
EBN は,EBN p1 側に接続された Node a と,EBN p2
側に接続された Node c の通信を,Ethernet バイパスを
通して行うよう,Table of Bypass targets に設定されて
いる.この時 EBN は,EBN の p1 から Node a 宛に,
送信元 IP アドレスが Node c で,送信元 MAC アドレ
スが EBN の p1 を意味する,ARP 応答を送信する.す
ると,Node a の ARP テーブルにおける Node c の IP
アドレスは,EBN p1 の MAC アドレスに対応付けられ
る.同様の事を,EBN p2 と Node c 間で行い,Node c
の ARP テーブルにおける Node a の IP アドレスを,
EBN p2 の MAC アドレスに対応付ける.
この結果,Node a から送信される Node c 宛の IP パ
ケットは,宛先 MAC アドレスが EBN p1 宛となるた
め,Ethernet Switch A では,p2 ではなく, EBN p1 の
接続されている p3 に転送される.この,Node a が送
信したパケットが EBN に到着すると,EBN は,宛先
MAC アドレスを Node c の MAC アドレスに,送信元
MAC アドレスを EBN p2 の MAC アドレスに書き換
え,EBN p2 に送出し,Node c に到達する.このように
して,EBN の指定したノード間の通信のみを,EBN 経
由でバイパスすることが可能である.
以上の制御により,単純な Ethernet Switch を用いて
構築された Ethternet 網において,トラフィック負荷の
分散が,実現可能である.
4 まとめ
本稿では,トラフィックの分散を目的とし,Ethernet
で STP によって待機状態におかれている Link を有効
活用して,Ethernet Bypass を実現する,EBN を提案し
た.今後,提案手法の実装と評価,及び,EBN から擬似
ARP 応答を送信するタイミングに関しての検討を行っ
ていく予定である.
参考文献
[1] IEEE802.1Qay, “ Provider Backbone Bridge Traffic
Engineering ”,
http://www.ieee802.org/1/pages/802.1ay.html