循環器系工学 第11回 エネルギーのリサイクル 国士館大学 理工学部 岸本 健 循環器 工学 ● エネルギーは使い捨てか – – ● 熱エネルギーはエネルギーの最終形 形を変えながら、散逸してゆく「寿命」を持ったも の。 エネルギーを再生すると – – ● 本日の話: エネルギーはリサイクルできる か 温暖化問題は解決するか 再生とは、 regeneration, recovery 生物にはエネルギー再生サイクルがある。 ATPの分解・合成とエネルギー 循環器 工学 ● 分解のエネルギー収支 * ATP+H2O → ADP(アデノシン二リン酸)+Pi(リン酸) ΔG°’ = -30.5kJ/mol * ATP+H2O → AMP(アデノシン一リン酸)+PPi(ピロリン 酸) ΔG°’ = -45.6kJ/mol ● 合成 – 酸化的リン酸化、光リン酸化 ADP + Pi → ATP – 好気呼吸(有酸素運動) 循環器 工学 ATP(アデノシン三リン酸)と ADP(アデノシン二リン酸) リン酸 アデノシン ADPの構造 AMPの構造 アデノシンは生体内で重要な役割をになっている。DNA や RNA の塩基 として遺伝情報のコードに用いられている他、生化学過程でもATPやADP の一部としてエネルギー輸送に関わったり、環状AMPとしてシグナル伝 達に関わったりする。 カフェインによりその作用が抑制される。 ATPの働き 循環器 工学 ATPはエネルギーを要する生物体の反応素過程には必ず使用 されている。ATPは哺乳類の骨格筋100gあたり 0.4 g 程度存 在する。反応・役割については以下のものがある。 * * * * * * * 解糖系…グルコースのリン酸化など 筋収縮…アクチン・ミオシンの収縮 能動輸送…イオンポンプなど 生合成…糖新生、還元的クエン酸回路などなど 発光タンパク質…GFPなど 発電…電気ウナギに見られる筋肉性発電装置 発熱…反応の余剰エネルギーなど 循環器 工学 ● ATPの働き リン酸基の付加はリン酸基転移酵素(キナー ゼ)による ● ATP そのものも RNA合成の前駆体として利用 循環器 工学 ● 筋肉とATP 筋線維はアデノシン三リン酸 (ATP) を消費 し、フィラメント同士がお互い重なり合うよう に引き付け合い収縮する。 ● ● 筋線維は伸展する能力は無い 筋原線維はアクチンタンパク質とミオシンタン パク質が入れ子状になった構造を取る。 循環器 工学 ● 筋肉とATP 運動後の筋肉の疲労は、解糖系の最終生成物で ある乳酸によってもたらされるとの説がある が、医学的根拠は無い。 ● 血液中のグルコースが減少し、筋肉が必要とす る糖が供給されないと脳を刺激して、肝臓に供 給を指令する。 ● ピルビン酸(老廃物)の排出時間を稼ぐため に、代謝機能を低下させる 循環器 工学 ● アクチンとミオシン 筋肉の中のエネルギー源 ● アクチン(Actin)は ● 球形の蛋白質で螺旋状 ● ミオシンとともに筋収縮のエネルギーを作 る ● どの動植物にも存在する。 循環器 工学 TCA回路 (クエン酸サイクル,TCAサイク ル) 糖質 脂質 ブドウ糖 乳酸 タンパク質 グリセリン 脂肪酸 ピルビン酸 酢酸 解糖系 アセチルCoA(コエンザイム) アラニン アスパラギン酸 グルタミン酸 アセチルCoA クエン酸 オキザロ酢酸 シスアコット酸 イソクエン酸 TCA回路 tricarboxylic acid cycle リンゴ酸 オキザロコハク酸 フマル酸 コハク酸 α-ケトグルタル酸 循環器 工学 クエン酸サイクル 循環器 工学 ● ● 代謝過程(解糖系) 解糖系 生化学反応経路の名称 グルコース 分解 ピルビン酸 などの有機酸 含まれる高い結合エネルギーを 生物が使いやすい形に変換 – ● ● ● ● ブドウ糖=グルコース ほとんど全ての生物が持つ 原始的な代謝系とされている。 嫌気状態(無酸素状態)でも起こ る 嫌気呼吸、無気呼吸と呼ばれる 複雑な経路 循環器 工学 解糖反応 C6 H12 O6 + 2NAD + 2ADP + 2Pi 細胞質 グルコース 10種類の酵素 + 4過程以上 ミトコンドリ ア CH3 COCOOH + 2NAD H2 + 2ATP + 2H2 O ピルビン酸 乳酸発酵 NAD ド ADP ATP Pi ニコチンアミドアデニンジヌクレオチ アデノシン2燐酸 アデノシン3燐酸 無機燐酸 乳酸 循環器 工学 脂質の分解 胆汁 乳化 脂肪 膵臓 リパー ゼ 分解 脂肪細胞 トリアシルグリセロール ミトコンドリ ア 脂肪酸 グリセリン β酸化 カルニチン 合成 蓄積 アセチルCoA オキシル酢酸 TCAサイクル エネルギーがなくなったら 循環器 工学 ● ● 飢餓状態 生命維持機能が働く – – ● ● 基礎代謝の維持 タンパク、脂質、糖分の絞り出し 摂取機能 排泄機能 電気(食糧)が供給されなくなったら 循環器 工学 ● 筋肉 – – 平滑筋 横紋筋 ● 赤色筋繊維 - 有酸素運動 酸素を使ってエネルギー源を二教化炭素と水に完 全分解できるので、長時間の運動が可能になりま す。このとき主に脂肪を分解します。 ● ● 白色筋繊維 筋肉の色 – ミオグロビン - 無酸素運動 循環器 工学 循環器 工学 課題 ● TCAサイクルとは、何を生み出すサイクルか ● 急激な運動と恒常的なゆっくりした運動では、 人体のエネルギ供給は異なる。 それぞれの運動に応じて、エネルギー供給源と 供給の方法の差がわかるように説明せよ。 ● ATP, ADP の化学式と持っている化学エネル ギー量を示せ。
© Copyright 2024 Paperzz