配色がメニューの操作効率に与える影響について

配色がメニューの操作効率に与える影響について
情報学部情報学科
09J5--116 早川 潤一
情報
学部情報学科 横山研究室 09J5
1. はじめに
現在、コンピュータ操作においてメニューは必
須の機能だが、ソフトウェアによっては項目数が
膨大なため目的の項目を見つけるのに時間がかか
ってしまう。そこでメニューに色を付けることで、
操作をより効率的に行うことが出来るのではない
かと考え、疑似的なメニュー付きアプリケーショ
ンを作成し、検証を行った。
アプリケーションを操作してもらい、アンケート
を記入してもらった。
問題は 30 問+終了の計 31 問で、指示に従って
メニューから項目を選びクリック、を繰り返す。
また、それぞれの操作にかかった時間と全体でか
かった時間、指示に対してどの項目を選択したか
を記録している。被験者毎に実験を行うパターン
の順序を変更することで、慣れなどが結果に影響
しにくいようにした。
2. 見やすい配色
色相などを統一することで画面を見やすくする
ことが出来る[1]。また、重要度の高いアイテムの
誘目度を高くすると、エラー率を増大させること
なく効率を高めることが出来る[2]。色が目を引き
付ける度合いを誘目性といい、暖色が高く、寒色
が低いとされている。本研究では、誘目度の高い
オレンジ(255,130,0)と、低いみずいろ(0,200,255)
を選んだ。
3. コントラスト比
JIS X8341-3 で定められている文字色と背景色
の差による文字の見やすさのことで、1~21 の範
囲となる。1:1~21:1 と記述され、図 1 のオレン
ジのように比率が高いほど見やすい配色となる。
「 7.1.4.6 より十分なコントラストに関する達成
基準」では少なくとも 7:1 のコントラスト比、大
きな文字(半角英数字では 18pt または 14pt の太字
以上、日本語を含む場合は 22pt または 18pt の太
字のサイズ)の場合には少なくとも 4.5:1 とされて
いる。実験で使用する色はどちらも 7:1 のコント
ラスト比を満たしている。
図 1 コントラスト比の高いオレンジと低い青
4. 実験
Java の Swing を用いて図 2 のような疑似的な
メニュー付きアプリケーションを表 1 の 7 パター
ン作成し、実験を行った。被験者 12 人に作成した
図 2 実験中の画面
実験中の画面
パターン
標準
交互(暖色)
交互(寒色)
グラデーション
(暖色)
グラデーション
(寒色)
回数で変化
(暖色)
回数で変化
(寒色)
表 1 パターン一覧
説明
標準(灰色)状態のメニュー
交互に暖色で色を付けたメニュー
交互に寒色で色を付けたメニュー
暖色のグラデーションを付けた
メニュー
寒色のグラデーションを付けた
メニュー
2 回クリックすると暖色で色が付く
メニュー
2 回クリックすると寒色で色が付く
メニュー
5. 考察
1.8
1.6
合1.4
割る
す1.2
対に
均1
平
0.8
0.6
パターン
被験者1
被験者2
被験者3
被験者4
被験者5
被験者6
被験者7
被験者8
被験者9
被験者10
被験者11
被験者12
図 3 パターン毎の平均に対する割合
3
(%)
図 3 は被験者毎に全パターンの平均を全体で割
り正規化したグラフで、回数によって変わるパタ
ーンは全被験者ともに比較的安定して操作出来て
いる。1 クリックに平均してどの程度時間がかか
るのかを表している図 4 のグラフでは、回数によ
って変わるパターンは標準のメニューより速く操
作できている。また、すべてのパターンにおいて
寒色が暖色より速く操作できている。図 5 は誤答
率をグラフにしたもので、全パターンにおいて暖
色が高く、寒色が低いという結果となった。
パターンを一つ操作する毎に 3 を基準とした 5
段階評価のアンケートに回答してもらった。図 6
のアンケート結果では、回数によって変わるパタ
ーンの評価が高く、交互のパターンが低い。また、
どのパターンも寒色のほうが目が疲れにくいと評
価されていた。
4
3.5
2.5
率2
答1.5
誤
誤答率
1
0.5
0
パターン
図 5 パターン毎の誤答率
5
4
評3
価2
操作しやすさ
使いたいか
見やすいか
目が疲れるか
1
0
パターン
図 6 アンケート結果
6. まとめ
よく使う項目に色を付けると、効率よく操作す
ることが出来た。また、暖色に比べると寒色の方
が目に負担がかからず、エラー率も低いという結
果を得た。
5.6
5.4
5.2
)
秒5
間
時4.8
均
平4.6
(
7. 今後の課題
平均
4.4
4.2
図 4 パターン毎の 1 クリックにかかる平均
クリックにかかる平均時間
平均時間
今後の課題として、色やパターンの追加や変更、
メニューバーや文字の色の変更、また今回付ける
ことが出来なかった、回数で色が変わるメニュー
への色を消す条件や、音の追加などがある。
引用文献
[1] 坂本邦夫, “画面デザインに向く配色,向かな
い配色,” CQ 出版社, 2012.
[2] 横溝あずさ, 池上輝哉 , 福住伸一, “画面の配
色バランスの作業効率・エラー率への影響の検
証,” 2012.