一般児童における不登校傾向の実態調査について

福山大学こころの健康相談室紀要
第7号
一般児童における不登校傾向の実態調査について
柿原未佳子1・龍谷由希2・谷本智佳1・藤田彩香1・樋町美華2
1
2
福山大学大学院人間科学研究科
福山大学人間文化学部心理学科
キーワード:不登校傾向,機能分析モデル,児童
はじめに
不登校はいまなお大きな教育臨床的課題である。平成23年度の文部科学省児童・生徒の問題行動等生徒指導上の
諸問題に関する調査によると,不登校を理由とした長期欠席者は小学生で22,622名,中学生では94,836名であり,
いまだ増加の一途をたどっている。さらに平成23年度文部科学省学校基本調査によると,小学校において理由別長
期欠席者の割合は「病気」での欠席よりも「不登校」の割合が多く占められている。このように不登校に関しては
文部科学省において様々な調査が行われている。しかしながら,調査の多くで用いられている不登校の定義は「何
らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,登校しない,あるいはしたくともできない状
況にあるため年間30日以上欠席した者のうち,病気や経済的な理由による者を除いたもの」とされており,年間の
欠席が30日に満たない児童が対象とされてることは多くない。森田(1991)は不登校ではない児童・生徒の中には
登校はしつつも「学校に行きたくない」と感じている者の存在や欠席が年間30日に満たないまでも比較的欠席が多
い者の存在を指摘している。さらにこのような状態を示す児童・生徒は,実際に登校出来ているものの学校生活を
楽しむことができていない可能性があり,不登校の前駆的症状として「不登校傾向」を有していると考えられると
指摘している。また,保坂(2000)は中学生になって不登校にいたる子どもたちの中には,小学校段階から「不登
校傾向」を有している児童・生徒がいることを指摘している。以上のことから,不登校への対策には欠席日数が年
間30日以上ではない児童・生徒などについても視野に入れた調査・研究が必要であると考えられる。
そもそも不登校児童・生徒数の増加に伴い不登校については,その様相を様々な角度から捉え調査・研究がおこ
なわれるようになってきている。例えば,不登校行動の維持に関しては,機能分析モデルを用いてさまざまなアセ
スメントに基づき,分類が行われるようになっている(Kearney & Silverman,1993)
。機能分析モデルの中で,不
登校行動の維持要因は機能と呼ばれ,1)ネガティブ感情を喚起する刺激の回避(avoidance of stimuli that provoke
negative affectivity ; ANA)
,2)不快な対人/評価的場面からの逃亡(escape from aversive social and/or evaluative
situation ; ESE)
,3)重要な他者から注目を得る(pursuit of attention from significant others ; PA)
,4)具体的
な強化子を求めること(pursuit of tangible reinforcement outside the school setting ; PTR)といった4種類が想定
されている。最初の2つの機能は,負の強化によって学校での不快な状況を回避するために不登校行動が維持され
ているものであり,後者の2つの機能は,正の強化によって学校よりも快適な報酬となる状況を求めるために不登
校行動が維持されているものであると定義されている。さらにKearney & Silverman (1996)は過去に分類されてき
た不登校の様々な概念を包括し,不登校行動(school refusal behavior)を「子ども本人が学校に出席することを
拒むこと,または1日を通して授業に出続けることができないこと」と定義している。この定義には、完全に学校
を休む行動をはじめ,学校に登校していても授業を休む,または休みたいと嘆願することといった行動も含まれる。
よって,
「不登校行動」という語は,完全に学校を休んでいる状態の者が示す行動だけでなく,学校に登校してい
る子どもが示す行動までを含んだ連続的な概念として捉えることができると指摘している(土屋・細谷・東條,2010)。
このことから,
「不登校行動」の定義は森田(1991)で指摘されているような登校に対してネガティブな意識を持
っていたり,欠席が多いと指摘している「不登校傾向」と類似の概念と考えることができる。しかしながら,この
ような登校している児童を対象に不登校行動について検討している研究はまだ少ない。例えば,土屋ら(2010)は
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小学生を対象に不登校行動を検討した結果,不登校行動は男子よりも女子の方が平均得点が高いことを示し,学校
に通っている小学生が最も示しやすい不登校行動では,学校へ行くよりも他のことが楽しいからという理由による
内的不登校行動であることを明らかにしている。しかしながら,土屋ら(2010)の先行研究では,年齢による違い
などは見ておらず,まだまだ検討の余地はあると考えられる。
一方,不登校を引き起こす原因は直接的,間接的に多くの心理的・社会的要因がからみ非常に複雑になっている
が,不登校の直接的なきっかけとしては,友人関係をめぐる問題といった学校環境における人間関係上の問題が全
体の約20%を占めると指摘している(久能・長谷川,2001)。実際に学校生活に適応できない児童は,学級の中に
身をおきながらも孤独感や疎外感などの不適応感を抱いていることが指摘されている(吉川・高橋,2008)。これ
らの指摘より,児童・生徒が比較的長い時間を過ごし,友人や教師などの多くの対人関係からなる学校生活に上手
く適応できている,もしくは学校生活に児童自身が満足して過ごしているかどうかが重要な視点になると考えられ
る。しかしながら,欠席が30日満たず,登校している児童が示す不登校行動についてはまだまだ明らかにされてい
るとは言い難い。また,不登校の原因として学校生活上の問題が指摘されているが,実際には不登校傾向を示す児
童も同様に学校生活上の問題を抱えているかについては明らかにはされていない。よって,本研究では①一般児童
における不登校傾向の実態を明らかにすること,②不登校傾向を示す児童の欠席状態について明らかにすること,
③不登校傾向と学校生活満足感の関連について明らかにすることの3点を目的とする。
方 法
調査対象者 地方公立小学校 13 校に通う小学 4 年生から小学 6 年生,計 1643(有効回答率 91.6%)名である。
なお,分析対象は,それぞれの目的で人数割合が異なるため,分析ごとに文中内に明記した。
調査期間 2012 年 7 月 1 日~2012 年 10 月 31 日
調査材料 (1)不登校行動の測定:不登校傾向の測定に日本語版 School Refusal Assessment Scale-Revised for
Japanese Attendance at School:SRAS-R-JA 登校児用(土屋・細谷・東條,2010)を用いた。SRAS-R-JA は,
「ネガティブ感情を喚起する刺激の回避(ANA)」
,
「不快な対人/評価場面からの逃避(ESE )」
,
「注意獲得(PA )」
,
「具
体的な強化子を求めること( PTR )」の 4 つの下位尺度全 20 項目からなり,得点を合計して点数が高いほどそれぞ
れの因子が表している傾向が強いとされている。回答は 5 件法(
「まったくない(1 点)
」~「いつもある(5 点)
」
)
。
(2)欠席相当日数:国立教育政策研究所生徒指導研究センター(2003)と同様に欠席日数と,遅刻早退のそれぞれ
の日数を半日分の欠席として加算したものを欠席相当日数とした。本研究では許可がもらえた場合にのみ,1ヶ月
の期間を指定し,その1ヶ月間における児童の欠席回数・遅刻回数・早退回数について,それぞれ回答を求めた。
(3)学校生活の測定:学校生活の測定には井場(2009)によって作成された小学生用学校生活の質(Quality Of
School Life : QSL)質問紙を用いた。QSLは「友人関係の質」
,
「学級風土の質」
,
「自尊感情」
,
「教師関係の質」
,
「学習意欲の質」の5つの下位尺度全15項目からなり,回答は4件法(
「まったくあてはまらない(1点)
」~「よくあ
てはまる(4点)
」
)
。なお,本調査では児童が学校生活上で経験する「友人関係」
,
「学級風土」
,
「教師関係」
,
「学習」
の4下位尺度12項目のみ使用した。
教示 これから学校生活についてのアンケート用紙を配ります。このアンケートは始めてください。の合図があ
るまで中を見ないでください。このアンケートは,あなたの学校生活について答えてもらうものです。学校の成績
には関係ないので,思っていることを正直に答えてください。また,友達と話し合ったりせずあなたの思っている
ままに答えてください。まず,表紙に書いてある学年・組,性別を書いてから中の質問に答えてください。それで
は始めてください。
調査手続き あらかじめ上記の教示を書いたプリント1枚と各クラス人数分のアンケート用紙を封筒に入れ,各
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クラス担任に配布し,そこに記された通りにアンケートの実施をしてもらった。
倫理 本研究は対象校の学校長の許可を得ており,福山大学学術研究倫理審査委員会の承認を受けて実施してい
る。
結 果
1. 不登校傾向の実態調査について
SRAS-R-JAの全ての項目に回答の得られた1643名(有効回答率91.6%)を分析対象に一般児童における不登校
傾向の合計得点及び下位尺度得点の平均得点(標準偏差)を算出した。その結果,合計得点は36.20(11.90)点,AN
Aは7.95(3.52)点,ESEは6.95(2.62)点,PAは10.30(4.16)点,PTRは11.00(4.88)点であった。
さらに児童が示す不登校行動について明らかにするため,クラスター分析を行った。その際,SRAS-R-JAはカッ
トオフ得点が定まっていないため上記の算出した平均得点+1SD以上を示す,突出した特徴を示した502名を抽出
し,どのような不登校行動の機能を有しているのかを明らかにした(Fig. 1)
。その結果,分類された機能の特徴は,
全ての機能が高い群(87名)
,PAのみ高い群(117名)
,PTRのみ高い群(181名)
,ANA+ESE+PAが高い群(7
名)
,PA+PTRが高い群(64名),ANA+ESEが高い群(46名)であった。
全機能高
1%
ANA+ESE高
14%
PAのみ高
37%
PA+PTR高
20%
ANA+ESE+PA高
2%
PTRのみ高
26%
Fig. 1 不登校行動機能別割合
次に,児童が感じやすい不登校行動を把握するためにそれぞれの項目について検討を行った。その結果,項目平
均が高い項目は「平日(月曜から金曜)に学校に行かずに,家以外のところで何か楽しいことをしたいと思うこと
がどれくらいありますか(m=2.63)
」
,
「平日(月曜から金曜)に学校に行かないで,学校とはちがったこと(友達
と遊んだり,外に遊びに行くなど)をしたいと思うことがどれくらいありますか(m=2.55)
」
,などであった。一
方,項目平均が低い項目は「友達が少ないから学校を休みたいと思うことはどれくらいありますか(m=1.27)
」
,
「学校のみんなと話すのがつらくて学校を休みたいと思うことはどれくらいありますか
(m=1.38)
」
などであった。
2. 不登校傾向の性差・学年差について
SRAS-R-JAの全ての項目に回答の得られた1643名を対象に性別と学年によって,不登校行動の機能に違いが認
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められるかを検討するため,性別×学年の2要因の分散分析を行った(Table1)。その結果,全てにおいて交互作用は
認められなかった。そのため,主効果の検定を行ったところ,合計得点およびPTRを除く全ての下位尺度で性別の
主効果が有意であり,PTRを除く全てにおいて女子の得点が男子の得点よりも有意に高かった(合計:F(1,1637)
=12.13,p<.01,ANA:F(1,1637)=7.73,p<.01 ESE:F(1,1637)=8.88,p<.001 PA:F(1,1637)=66.96,p
<.001)
。さらに,PAおよびPTRにおいて学年の主効果が有意であり,PAにおいては4年生・5年生の得点が6年生
よりも有意に高く,PTRにおいては6年生の得点が4年生よりも有意に高いということがそれぞれ明らかになった(P
A:F(2,1637)=7.50,p<.001 PTR:F(2,1637)=5.30,p<.01)
。
Table1 不登校行動の2要因の分散分析の結果
平均(標準偏差)
主効果
交互作用
男子(N =807) 女子(N =836) 4年生(N =523) 5年生(N =579) 6年生(N =541)
ANA
ESE
PA
PTR
SRAS-R-JA合計得点
7.71( 3.50) 8.19( 3.53)
6.75( 2.67) 7.14( 2.56)
9.45( 3.94) 11.11( 4.21)
11.23( 5.15) 10.78( 4.59)
35.14(12.07) 37.22(11.67)
7.95( 3.61)
6.91( 2.76)
10.72( 4.48)
10.55( 4.82)
36.13(12.27)
8.07( 3.64)
7.10( 2.64)
10.41( 4.18)
10.93( 4.69)
36.51(12.27)
7.84( 3.28)
6.82( 2.47)
9.77( 3.76)
11.51( 5.10)
35.94(11.15)
性別
学年
7.73 **
8.88 **
66.96 ***
3.77 n.s.
12.13 ***
0.55 n.s.
1.50 n.s.
7.50 ***
5.30 **
0.23 n.s.
0.46
0.18
1.86
0.77
0.63
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
Note. ANA=avoidance of stimuli that provoke negative affectivity, ESE=escape from aversive social and/or evaluative situation.
PA=pursuit of attention from significant others, PTR=pursite of tangible reinforcement outside the school setting.
SRAS-R-JA =School Refusal Assessment Scale-Revised Japanese Version for Attendance at School, n.s. =not sigh nificant.
**p <.01 ***p <.001
3. 不登校傾向と欠席相当日数の関連ついて
不登校行動の得点が高い者の欠席相当日数について明らかにするため,
SRAS-R-JAの全ての項目に回答が得られ,
かつ1ヶ月の欠席日数に関しての項目全てに回答が得られた916名を対象に不登校の機能分類ごとにおける欠席相
当日数の検討を行った。その際分析対象者が異なるため,再度不登校傾向の合計得点及び下位尺度得点の平均得点
(標準偏差)の算出,およびクラスター分析を行った。その結果,合計得点は37.18(12.20)点,ANAは8.29(3.67)
点,ESEは7.08(2.60)点,PAは10.44(4.26)点,PTRは11.37(4.97)点であった。ここでも,カットオフ得点が定
まっていないため,算出した平均得点+1SD以上の突出した特徴を示した218名を対象にどのような不登校行動の
機能を有しているのかを明らかにした。分類された機能の特徴は,ANA+PAが高い群(60名)
,PTRのみ高い群(5
9名)
,PA+PTRが高い群(37名),ANA+ESE+PTRが高い群(32名)
,全ての機能が高い群(21名)
,ANA+ESE
+PAが高い群(9名)であった。さらに,それらの特徴を示した群ごとに欠席相当日数の割合の検討を行った(Fi
g. 2)
。その結果,1ヶ月の欠席相当日数を3日以上と回答しているものの割合は,ANA+PAが高い群が33.0%と一
番高く,次に全部の機能が高い群が20%とであることが示された。
ANA+ESE+PA高群
11.1
20.0
全部高い群
12.6
ANA+ESE+PTR高群
欠席割合
PA+PTR高群
PTR高群
ANA+PA高群
10.8
8.5
33.0
0
10
20
30
40
Fig.2 群別における欠席相当日数(3日以上)の割合
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4. 不登校傾向と学校生活の関連について
不登校行動と学校生活の関連について検討するため,SRAS-R-JAの合計得点および各下位尺度得点とQSLの合
計点および各下位尺度得点について相関分析を行った(Table2)。その結果,SRAS-R-JAの合計および各下位尺度得
点とQSLの合計および各下位尺度得点の間には有意な負の相関があることが明らかとなった(r=-.10~-.40,
p<.001)
。
Table2
ANA
ESE
PA
PTR
SRAS‐R-JA合計
SRAS-R-JAの各下位尺度得点とQSLの各下位尺度得点の相関
友人関係の質
-0.25 ***
-0.31 ***
-0.12 ***
-0.15 ***
-0.40 ***
学級風土の質
-0.40 ***
-0.39 ***
-0.23 ***
-0.28 ***
-0.24 ***
教師関係の質
-0.20 ***
-0.19 ***
-0.10 ***
-0.32 ***
-0.40 ***
学習意欲の質
-0.20 ***
-0.22 ***
-0.11 ***
-0.31 ***
-0.27 ***
QSL合計
-0.35 ***
-0.37 ***
-0.19 ***
-0.36 ***
-0.27 ***
Note. ANA=avoidance of stimuli that proovoke negative affectivity, ESE=escape from aversive social and/or evaluative situation
PA=pursuit of attention from significant others, PTR=pursite of trangible reinforcement outside the school setting
SRAS-R-JA =School Refusal Assessment Scale-Revised Japanese Version for Attendance at School, QSL=Quality Of School Life
***p <.001
考 察
本研究では,①一般児童における不登校傾向の実態を明らかにすること,②不登校傾向を示す児童の欠席状態につ
いて明らかにすること,③不登校傾向と学校生活満足感の関連について明らかにすることの3点を目的とした。
1.不登校傾向の実態調査について
まず,現在登校している児童がどのような不登校行動を示しているのかを明らかにするため,クラスター分類を
行った。その結果,児童が有しやすい不登校行動の機能としてはPTRやPAを示す児童の割合が高いことが明らかに
なった。さらに,児童が感じやすい不登校行動の機能としては,
「平日(月曜から金曜)に学校に行かずに,家以
外のところで何か楽しいことをしたいと思うことがどれくらいありますか」や「平日(月曜から金曜)に学校に行
かないで,学校とはちがったこと(友達と遊んだり,外に遊びに行くなど)をしたいと思うことがどれくらいあり
ますか」などであった。一方,児童が感じにくい不登校行動の機能としては「友達が少ないから学校を休みたいと
思うことはどれくらいありますか」
,
「学校のみんなと話すのがつらくて学校を休みたいと思うことはどれくらいあ
りますか」などであった。
以上のことから,学校へ通う児童が感じやすい不登校行動の機能としては,学校へ行くより他のことが楽しいか
らという理由による内的不登校行動の割合が高く,友達が少ないから学校を休みたいと思うという理由による割合
は比較的小さいと考えられた。これらの結果は,最も多くの児童において不登校行動を維持している機能は「PTR」
であり,学校外のものに魅力を感じている状態の強さが機能として働いている可能性を示している土屋ら(2010)
と同様に学校での不快な状況を回避する機能よりも,学校よりも快適な報酬となる状況を求める機能がより強く働
いている可能性が本研究においても示されたといえる。
2.不登校傾向の性差・学年差について
本研究において不登校傾向の得点は PTR を除く全ての得点において,男子よりも女子の方が高いことが明らか
になったことから,不登校行動の機能は性別によって異なる可能性を指摘している土屋ら(2010)と同様の結果が
得られたと考えられる。PTR については,項目が学校での活動に非親和的な内容になっているために,学校に対す
る非親和的な不登校行動の機能は性別によって影響を受けないことを示している。以上のことから,本研究でも不
登校行動の機能は性別によって異なることが示されたと考えられる。
また学年の違いにおいては,PA では 6 年生よりも 4 年生・5 年生の得点が有意に高く,PTR では 6 年生が 4 年
生よりも得点が有意に高いということが明らかになった。この結果は,Kearney & Albano(2004)において,不登校
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行動の維持要因には年齢による特徴があり,
「ネガティブ感情の回避」や「家族からの注意獲得行動」といった機能
は低年齢の者に特徴的であり,
「不快な対人場面からの逃避」や「不登校行動の具体的な強化子」などの機能は高い
年齢の者に特徴的であると指摘している。このことから本研究において,不登校行動の機能は年齢によって異なる
可能性があることが示唆された。
3.不登校傾向と欠席相当日数の関連ついて
不登校傾向と欠席日数の関連については,
ANAやESEの機能を持っている児童において比較的欠席相当日数の割
合が高いことが示された。これらの結果より,小学校段階では負の強化によって,学校での不快な状況を回避する
ための不登校行動の機能を有している児童は欠席行動が比較的具体化しやすい可能性が考えられた。
しかしながら,中学校段階での不登校傾向と欠席相当日数の検討を行った中田・土屋・東條(2005)では,PA
やPTRの機能を有している児童は比較的容易に欠席を行動化する傾向があると指摘している。これらのことより,
実際に児童・生徒が欠席を行動化するきっかけとして小学校段階・中学校段階で不登校行動の機能は異なる可能性
が考えられた。
4.不登校傾向と学校生活の関連について
不登校傾向と学校生活との関連については,本研究では多くの不登校の要因として指摘されている様々な学校要
因との関連を検討した。その結果,SRAS-R-JA の合計については,
「友人関係」
「教師関係」などの要因において
「学級風土」
「学習意欲」よりも負の関連を示していた。このことは久能・長谷川(2001)によって,不登校の直
接的なきっかけとして友人関係をめぐる問題といった学校環境における人間関係上の問題を指摘していることから,
不登校傾向を示す児童においても学校環境における人間関係上の問題との負の関連があることが示されたと言える。
さらに,不登校傾向の各機能別では,ANA と ESE については,
「学級風土」の要因において「友人関係」
「教師
間系」
「学習意欲」の要因よりも負の関連を示していた。しかしながら,PA や PTR においてはほとんど負の関連
を示さなかった。以上のことより,不登校傾向と学校生活の間には負の関連が示されたものの,児童が有している
不登校行動の機能により学校生活において感じる不適応感は異なる可能性が示された。
5.本研究の臨床的示唆および今後の課題について
本研究より,小学校段階では児童が示しやすい機能として PA や PTR などの,学校外のものに魅力を感じている
状態の強さが不登校行動の機能として働いている可能性が示された。しかしながら,実際の欠席との関連を検討す
ると ANA や ESE などの,
学校での不快な状況を回避する強さが不登校の機能として働いている場合により欠席を
行動化しやすい可能性が示された。実際に,中田ら(2005)では ANA や ESE の要素を持つ児童は欠席行動が慢
性化する可能性があると指摘している。そのため,登校している児童においても不登校のきっかけとして働く前に
早期発見が重要になってくると考えられる。
最後に本研究の限界点として,今回は実際の不登校行動の具体的な指標として1ヶ月の欠席・遅刻・早退を用い
たが,1年間を通しての回数ではないため,正確な不登校行動の指標として用いるには限界が考えられる。そのた
め,今後の課題としては,調査の際に年間の欠席相当が30日に満たないまでも多い児童を対象に不登校行動の機能
について検討を重ねていく必要があるといえる。
引用文献
保坂 亨(2000)
.学校を長期欠席する子どもたち長期欠席・不登校から学校教育を考える.東京大学出版社.
井場朱紗美(2009)
.小学生用学校生活の質(QSL)質問紙の作成.福山大学人間文化心理学科卒業論文(未公刊)
.
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-ects. Behavior Modification, 28,
28 147-161.
福山大学こころの健康相談室紀要
Kearney, C.A., &
第7号
Silverman, W.K.. (1993). Measuring the function of school refusal behavior. The
SchoolRefusal Assessment Scale. Journal of Clinical Child Psychiatry, 22,
22 85-96.
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school refusal behavior. Clinical Psycology-Science and Practice, 3, 339-354.
国立教育政策研究所生徒指導研究センター(2003)
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日本心理学会第69回大会発表論文集,248-249.
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36,107-118.
36
吉川栄子・高橋 宗(2008)
.学校ぎらい感情と友だちタイプとの関連 聖泉論叢,16
16,75-88.
16
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第7号
Investigation of actual conditions to school refusal in the general child
Mikako Kakihara , Yuki Tatsutani , Chika Tanimoto , Ayaka Fujita , Mika Himachi
The purpose of this study was thease three points. ①Clarity the school refusal action of general child from functional analysis
poive of view. ②Clarity the days absent from school according to the function of the school refusal action. ③Clarity it about
association between school refusal and the school life.The participants were 1643 primary school (807 boys and 836 girls) .The
function of the school refusal action was measured by using The School Refusal Assesment Scale-Revised Japanese Version for
Attendance at School(SRAS-R-JA) . The general child showed the function of the school refusal action such as PA and PTR.
And more, the scoring average of SRAS-R-JA except PTR was higher in a girl than a boy. PA was high in a sixth grader, and
fourth grader and fifty grader were high in PTR.As for the tendency to school refusal of general child, aweak negative-correlation
was accepeed between the school life.
(指導教員;樋町美華)