中田 春奈(16-1、ニジェール、小学校教諭)

ニジェール共和国の教育現場における活動
∼ 人々の生活 現場の実態を知って 自らの活動を知る ∼
中田
春奈
(16-1,ニジェール,小学校教諭,南あわじ市立北阿万小学校教諭)
1
ニジェール共和国の概要
(1)
国の位置・国土・気候
ニジェールは、西アフリカに位置する内陸の国である。
国土の3分の2を砂漠(サハラ)が占め、北部は乾燥した地域で、南部は6月∼10
月が雨季で多湿となるサヘル地域が広がる。乾季の1月ごろは大気が非常に乾燥し、
砂嵐が見られる日も多い。4月∼5月は気温が非常に高くなり、最も暑い時には 50∼
60 度にまで上がる。
ニジェール共和国
写真1 サハラ砂漠
図1
アフリカ大陸地図/
外務省ホームページ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/niger/data.html
「アフリカ」より
(2)
国の概要
面
積
126.7 万k㎡(日本/37.7 万k㎡)
人
口
1026 万人(日本/1億 2733 万人)
人口密度
8人/k㎡
首
都
ニアメ(42 万人)
政
体
共和制(元首:タンジャ・ママドゥ大統領)
時
差
−8時間
通
貨
CFAフラン(※アフリカ14カ国で使われる通貨単位)
言
語
民
族
宗
教
フランス語(公用語)・ハウサ語・トゥアレグ語
など
ハウサ族 56%・ジェルマ族 22%
他、トゥアレグ族・フラニ族・プール族
75%以上がイスラム教
平均寿命
男子
15 歳以上人口の成
人非識字率
85.7% (
他
46.9 歳
男子 78.2%
など
キリスト教・伝統宗教
/
/
女子
など
50.1 歳
女子 92.9%)
(1997 年)
全世界 162 カ国中、161 番目。(2001 年)
(※人間開発指標/HDI:UNDP(国連開発計画)が、
人間開発指標
平均寿命・教育(成人識字率と総就学率)・一人当たりの
GDPの3つの側面から算出した人間開発尺度のこと)
34%(2000 年)
初等教育の就学率
(※世界でも最低水準。家庭の経済状況、女子教育への理
解不足、伝統的価値観による。)
<参考資料>
・外務省ホームページ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/niger/data.html
・J IA Bulletin 2004 年10月号
海外レポート
ニジェール事情
(鈴木敏彦
著/2004.10)
・フリー百科事典
(3)
人々の生活
∼
ウィキペディア(Wikipedia)
私が感じたニジェールの人々の生活
ニジェール共和国は、世界でも最も貧しい国の中のひとつである。UNDP国連開
発計画(2001 年)の人間開発指標では、162 カ国中 161 番目に貧しい国とされている。
(日本は 11 位。)平均寿命・識字率・就学率、その他、物質的な豊かさで比較すると、
日本とは対極にある国と言える。そんな国であるから、一般的生活レベルの人々は決
して裕福な暮らしをしているとは言えない。
・物の量や種類は、日本とは比べ物にならないほど少ない。
・生計を立てるための仕事が少ない。
・自給自足するにしても、乾燥した砂の大地。農作物を育てるには過酷な環境。
・家族は大家族。(女性は、平均8人の子どもを出産。
イスラム教は一夫多妻制。)
このように、経済的にも生活環境的にも、決して恵まれているとは言えないニジェ
ールの 人々 であっ たが 、彼等 から 悲壮感 や絶 望感を 感じ ること はほ とんど なか った。
(私個人の感じ方である。)反対に、多くの家族や親戚とともに支え合いながら生活し
ている彼らから、人間らしい心のあたたかさや、心の底から湧き出るような明るさを
分けてもらったように感じている。
仕事がなくても焦ることなく、昼間から道端で
おしゃべりやお茶を楽しんだり、何をする訳でも
なくただボーっとしたりしている人々はたくさ
んいる。話を聞くと「親戚の中に一人でも収入を
得る人がいれば何とかなる」とのこと。物やお金
は十分に無くても、自分のおかれた条件や環境の
中でのんびり構え、大家族や親戚どうしで助け合
写真2
ニジェールの子ども達
いながら生活しているニジェールの人達から、私
は人間としてのたくましさや力強さを感じた。
2
活動の要請内容と現場の実態
(1)
配属先 および 活動の要請内容
「受入希望調査票」記載の「配属先」・「活動の要請内容」等は以下の通りである。
①
配属省庁
基礎教育識字省/Ministère de l
Éducation de Base et de l
Alphabétisation
(※日本の「文部科学省」にあたるか?)
②
勤務先
マラディ初等教育監督局
IEB/Inspection d
communauté urbaine de Maradi
Enseignement de Base 1 de la
(※「教育委員会」にあたるか?)
マラディ県内の幼稚園・小学校・視聴覚障害者学校・孤児院を管轄し、同学校の
運営管理、教諭の指導等を行っている。予算状況は非常に厳しい。
③
要請理由
ニジェール共和国では 85 年より教育の質の向上を目的として生産実習活動を導入
しているが、予算・人員・施設が不足する中、小学校ではフランス語、算数、地理
等
最低限の教科だけを教え、生産実習活動についてはあまり実施されていないの
が現状である。したがって、この分野を活性化する人材が望まれている。
④
期待される業務内容・求められる技術の範囲
マラディ市内の小学校を巡回し、小学生を対象に図工、音楽、体育、家政等の生
産実習教育の授業を実施する。すべての分野において、設備や道具が不足している
現状の中、創意工夫と柔軟性が必要とされる。また、共に授業を担当することによ
り、現地教諭に対しても同分野教育の指導法について、助言、指導することが期待
される。
(※生産実習活動=APP(Activités Pratiques Productives)「総合学習」に近
いか?)
(※体育=EPS(Éducation Physique))
(2)
隊員の配属先での位置づけ
要請内容にあるように、活動形態は「学校巡回型」である。したがって、
「一校指定
型」の勤務時間貼り付け状態とは異なり、授業時間限定の「ゲストティーチャー」的
な立場である。
そのため、授業実施までに、いかに授業案や教材を準備し、学級担任に理解を得ら
れるように説明、依頼するかで、現地教員との共同作業として成り立つかどうかが決
まってくる。
(3)
①
教育現場の実態
学校の設備・教材・教具等について
市内の学校によって差異はあるが、基本的には砂
地の校庭、教室以外に特別な教育設備はない。教室
内に、黒板と4∼5人がけの長椅子、それに合わせ
た長机が設置されているだけのところが多い。学級
によっては、植物の茎を編んだもので壁や屋根を作
っていたり、机や椅子がないために砂地の上に座っ
写真3
教室の様子
写真4
教室の様子
て学習しているところもある。教科書については、
4∼5人の児童に1冊の割合で使用している状況
である。
指導案や教材もほとんど皆無に等しいので、教
材・指導案・カリキュラムづくりの段階から取り組
む必要があった。(児童の各家庭の経済状態は厳し
いので、教材購入のための集金も必要最低限度しか
行っていない。)
②
現地教員の技術レベル
学校現場の教員の指導技術のレベルは、著しく差があるように感じられた。生活
の糧を得るための仕事と割り切って働く教員(大部分)と、自らの意欲と熱意に基
づいて教職に携わる教員(ごく少数)に分かれていたるめである。
③
教職員のストライキ
∼
大幅に遅れた新年度のスタート
ニジェールの教育現場は、7月∼9月の3ヶ月間の長期休業を経て、10 月から新
年度が始まる。
「新年度は、準備の遅滞や教員のストライキのため、すぐには授業が
開始されないかも・・・」との話は聞いていたが、まさか3ヶ月も遅れるとは予想
もしなかった。授業が始まったのは、なんと翌年1月からであった。3ヶ月間も学
校で授業が行われなかったのである。
長期間に渡って授業が行われなかった大きな理由は、教職員のストライキが続行
されたためである。政府に教職員組合側の要求を通すため、3ヶ月もの間抵抗した
とのこと。2004 年は、大統領選挙など大規模な選挙が行われたため、政府の関心は
すべて選挙活動に注がれた。そのため、政府が教職員組合との交渉になかなか立ち
会ってくれなかったこともストライキが長引いた原因のひとつであったようだ。
長期ストライキが終わってからも、教職員組合の会合のため、あるいは、労働条
件改善を祈る イスラムのお祈り のために授業が行われない日がしばしばあった。
CM2(6年生)になっても、
「自分の考えをノートに書く」ことはもちろんのこ
と、
「自分の名前を書く」というごく基本的なことさえできない児童が多くいる。そ
のような現状の中で、教員自身が児童の学習機会を奪ってしまうという現実。
け
れども、教員側の立場からすると、給与は支給されているものの決して裕福だとは
言えない生活で、何とか労働条件や生活の状態を良くしたいと願っている。悪い労
働条件の中、教師としての熱意と理想だけではやってはいけない現実があった。
教育活動を充実させていくこと以前に、社会全体の問題が大きいことを確認す
る出来事であった。この現実をしっかり見つめないことには、いくら教育の理想を
掲げて現場に入ったとしても活動が空回りしてしまう。ニジェールの教育現場、さ
らには、ニジェールの人々が抱える社会の問題を知った上で活動を考えていく必要
があることを強く感じた。
④
APP・EPSの実施状況
APP(Activités Pratiques Productives/生産実習活動)は、1985 年に新教育
プログラムの一環として導入され、それから 20 年経過しているにも関わらず、実際
にはほとんど行われていないというのが実際の姿であった。ニジェールの国立教育
研究所(INDRAP)は、APP実施の問題点として、以下の4点を指摘してい
る。
1.APPの活動道具や教材購入の経費が確保できない。
2.教員に対するAPPの研修不足により、教員にノウハウがない。
3.保護者・教員ともに、APPの重要性に対する理解が不足している。
4.成績表にAPPの項目がないため評価につながらず、教員側の教えるモチ
ベーションが低い。
EPS(Éducation Physique/体育)についても同様、運動が十分にできる場所、
教材や教具、教員に対する研修会等の不足から、ほとんど実施されていない状態で
あった。
上記の問題点に加え、私個人として以下のことを感じる。
日本の学校現場でも言えることであるが、すでに現場で働く教師が、まったく新
しい教科や活動について研修し、それらの知識や技術を身につけることは、非常に
労力を要することである。
ニジェールでAPPが導入されたように、日本では 2002 年に「総合的な学習」が
導入され、完全実施にいたるまでに1∼2年間の移行・試行期間が設けられた。学
校現場は日々の授業のみならず、職員会議や研修、放課後のクラブ、教材研究、そ
の他の事務処理等々で非常に多忙である。それら日常の仕事に加え、
「総合学習」…
「国際理解」
(英会話)・「福祉教育」
(ボランティア学習)・「環境教育」
(エネルギー
教育)・「情報教育」・「地域や学校の特色を活かした学習」等、新しい分野を開拓し
ていかなければならなかったのである。
私が考える範囲で、新しい教科や活動が導入された場合に現場の教師がすべきこ
とは、おおまかに以下の4点と考える。
1.新しく導入する分野の「知識」や「情報」を得る。
2.「カリキュラム」・「授業案」・「教材」等を仮に作成する。
3.教える為に必要な「教育技術」を身につけ、実際に行い、その方法や内容
を改善する。
4.実施後の反省に基づき、カリキュラムを再度検討し改善する。
普段の仕事だけでも大変であるのに、これらのことを並行して行わなければなら
ないとなると、教員にかかる負担は非常に大きいものとなる。総合学習が導入され
た時、ほとんどの教員達が「これから先、これらのことを消化していけるのだろう
か?」と不安に思ったに違いない。
このような状況の中で、教員は大きく3つのタイプに分かれるように感じる。
「こ
れから教職現場で必ず必要であるから積極的に学びたい」、
「できる範囲で学びたい」、
「できる教員に任せたい」の3つのタイプである。
ニジェールの学校現場も日々の仕事は忙しく、仕事と家庭生活との両立を求めら
れる主婦の教員が多い点では、日本の現場と類似するところがある。そんな中、
「で
きる範囲で学びたい」
「できる教員に任せたい」という教員が多数いるという現実は
分かり得るところである。
3
現場での活動のポイント
(1)
活動のポイント
ニジェールにおける学校現場の実態をふまえた上で、活動のポイントを以下のよう
に設定した。
①
少ない予算・設備・教材をもとに、APP・EPSを実施・普及する方法を考
える
②
(APPにおいて)ニジェールの子ども達にとって、生活の基礎・基本となる
学習内容を厳選する
③
理想と熱意を持って教職に就く現地教員を見つけ、ともに活動を展開する
(2)
活動のポイント設定の理由
①
少ない予算・設備・教材をもとに、APP・EPSを実施・普及する方法を考
える
ニジェールの学校現場は、マラディのような大都市の学校でも、教育設備や教材・
教具が不足している状態である。また、教育現場で活用されるべき予算も、実際に
は現場で生かされていないことが多い。このような状況の中、実施の容易さや活動
継続の可能性を考えるならば、出来るだけ少ない予算や教材で実施可能なテーマを
選択する必要があった。
②
(APPにおいて)ニジェールの子ども達にとって、生活の基礎・基本となる
学習内容を厳選する。
教員のストライキ等で、フランス語や算数等の基礎・基本の教科の学習時間が大
幅に減っている状態であった。それら基礎・基本の時間を削って APP を実施するの
であれば、その内容も厳選していく必要がある。ただ単に、
「楽しい体験の時間」と
いうのではなく、生活をより良くするための知識や技術(生活の基礎・基本)を学
ぶ時間にしたいと考えた。
このような考えのもと、まず取り組みたいと考えたテーマが「衛生教育」・「環境
教育」・「食教育」等である。これらは、ニジェールで暮らすほとんどの人達に共通
する「健康により良く生活するために必要な学習」であると言える。
③
理想と熱意を持って教職に就く現地教員を見つけ、ともに活動を展開する
生計をたてるための仕事と割り切って働く教師が多い中、ニジェールの子どもの
教育に理想と熱意持って働く教師を見つけることは難しいように感じる。けれども、
少数ではあってもそのような人材は確かにいる。理想と熱意を持つ現地教員を見つ
け、ともに活動を進めることができるかどうかによって、任国での活動が軌道に乗
るか、あるいは、任国を去った後も活動を継続してもらえるかどうかが決まってく
る。
実際のAPPの授業を例にすると、子ども達の教育に関心のない教員とともに授
業を行った時は、児童の反応も非常に鈍く、伝えたいことも思うように伝わらない。
反対に、熱意ある教員が伝えたい内容を理解した上で授業を行った時は、児童の目
の輝き方が変わってくる。学習にも深まりが出てくる。同じ 30 分の授業であっても、
教員の資質やモチベーションによって児童が得るものは大きく変わってくることを
実感している。
また、モチベーションの高い現地教員に、研修の機会を提供することも大切であ
ると感じている。JICAのプロジェクト主催のAPPの研修会に、APPに関心
の深い教員2名に参加してもらったことがあった。私の配属先はマラディ初等教育
監督局で、本来ならば、カウンターパートである初等教育監督局長(日本で言うな
らば、「指導主事」にあたるか。)に参加を依頼するのが筋である。けれども、行政
機関と学校現場では業務内容が大きく異なるので、監督局の職員が研修会に参加し
ても、持ち帰った内容を行政の現場で生かせる可能性は低い。よほどニジェールの
教育に熱意を持って仕事に取り組んでいるか、APPに興味・関心がある人でなけ
れば、研修内容を学校現場まで伝達することは難しいように思う。幸いにも、AP
Pの研修会に参加した教員達は非常にモチベーションが高く、研修した内容を同勤
務校の教員達に報告する機会を自主的に持ったとの報告を受けている。
ひとつ注意すべき点は、現場の教員に研修会等の参
加を依頼する際は、配属先である行政機関に必ず承諾
を得てから話を進めるということである。この順序を
間違えると、今後の活動に支障をきたす可能性がある。
実際にこの順序を間違えて、活動がしにくい状態にな
った先輩隊員がいることも事実である。
4
写真5
配属先の同僚
具体的な活動とその効果
任期中の活動を分類すると、大きく3つとなる。
(1)
APP に関する活動
任期中におけるAPPに関する活動の概要は、以下の通りである。
①
マラディ市内の教育現場の把握と授業実施校の選択
②
活動テーマの選択と授業案・教材等の作成
③
授業の実施と授業案の改善
④
授業案・教材(配布用)の準備と印刷
⑤
APP に関するラジオ番組の企画と実施
⑥
教員養成学校おける APP の活動紹介と 教材・資料の提供
⑦
教員の研修会(CAPED)置ける APPの活動紹介と 教材・資料の提供
⑧
Échange
(現地教員とともに実施)
Culturel Jeunes MARADI ‒ JAPON
à Maradi
2006
(ニジェー
ル国内の「青少年活動」隊員や現地教員とともに開催した任地での祭典)における
APPの学習発表
以下に、各活動の詳細と その教育効果および、改善すべき点を記述する。
①
マラディ市内の教育現場の把握と授業実施校の選択
・
現場の把握と授業実施校の選択
活動の形態が「学校巡回型」であるため、まずは活動を行う学校の選択から始め
なければならなかった。マラディ市内には 35 校の公立小学校と、9校の私立学校が
ある。その1校1校を巡回し、学校の授業、教員、児童の様子を観察し、ニジェー
ルの教育現場の実態を把握することから始めたいと考えていた。しかし、前述のス
トライキが3ヶ月間続いたため、公立小学校の巡回を思うように進めることができ
ないという結果となった。けれども、現場の実態を把握しないことには活動の計画
も立てられず、今後の見通しもつかない。したがって、まずは、授業を年度初め(10
月)から開始している私立学校を訪問し、施設環境を見たり、授業を参観したりす
ることから始めることとなった。それとともに、教育現場に精通した公立小学校の
現地教員から現場の実態や問題点等を聞くことで全体を把握しようとした。
私立の学校によって、教員の労働条件や設備環境等は格差があるようである。ミ
ッション系の学校は設備環境も比較的調っているが、私立でも個人経営の学校は、
砂地の校庭、教室以外は特になしと言った感じである。
APPの実施状況については、私立、公立にかかわらずほとんど取り組まれてい
ない状態であったが、私立は公立よりも比較的設備や環境等が調っている学校が多
いので、出来るならば条件の悪い公立で授業を実施したいと考えていた。しかし、
公立校教員のストライキのため、赴任当初のAPP実施校は必然的に私立校からと
なった。APPの実施状況については私立も公立もゼロに近い状態であったので、
その点では私立からの選択も良しとするべき
か。
ストライキが明けて最初に活動を依頼した小
学校は、マラディ市に古くからある大規模校
(École Centre)。この学校での活動を依頼した
大き な 理由 は 、「教 育 に対 し て熱 意が あ り、 A P
Pに興味・関心を持つ教員がいた」ということで
ある。教育に対して熱意のある教員がいることほ
写真6
ミッション系の市立小学校
ど、活動を軌道に乗せていく上で心強いものはな
い。2004 年度は、ストライキによる授業時間激
減のため、フランス語・算数等の基礎・基本の教
科の授業時間確保が先決でAPPの実施は困難
ではないかと推測した。けれども、実際には、A
PPの授業実施を学校長や担任に依頼すると、卒
業試験を控えるCM2(日本で言う6年生)にお
いても、実施の承諾を得ることができた。このよ
うなことから、現場教員は全くAPPに関心が無
写真7:砂地の校庭
い訳ではなく、学習の機会や条件が整えば実施し
たいと考えている感触を受けた。APP実施の重要性や有用性を現地教員や各家庭、地
域の人々に理解してもらえたならば、普及の可能性は確かにあるように感じる。
・
時間割の調整
2004 年度勤務していた École Centre は、各クラスの時間割がほぼ同じであった。
ほとんどのクラスは、
(実際に実施しているかどうかは別にして)午前、午後の最後
の時間を APP にあてていた。朝からずっと教師の話を聞き、黒板の内容を写し取る
形態の学習を続けているので、最後の時間帯は集中力が限界に近づくころである。
したがって、APPのような活動をもってくることで気分転換を図るという意図も
あるのか。
可能であれば、各学年でAPPの時間をずらしてもらい、できるだけ多くの学級
に授業を実施することが望ましかったが、授業実施の依頼をしたのが年度の途中で
あったため調整がうまくいかなかった。したがって、初年度は 1 日に1クラス(1
週間でCM2・5クラスのみ)の授業実施となった。
École Centre での授業がない時間は、他の学校を訪問することとなった。しかし、
学校間の移動は砂地の道を自転車で行くというもの(ニジェールの強烈な太陽の下、
自力で移動するのは大変)。移動に時間と体力を要するため、午前、あるいは午後の
半日の間に2校以上巡回することは厳しかった。
これらの反省から、翌年度は活動校に年度始めから時間割の調整を依頼し、午前・
午後ともに、1校で2∼3クラスの授業が実施できるよう調整した。
②
活動テーマの選択 と 授業案・教材等の作成
APPは、ニジェール従来の理論中心の教育とは異なった、生産的、実践的な学
習である。
APPのねらいは、以下の3点にまとめることができる。
1.児童
の実態や興味・関心にもとづいた教育活動を行い、児童の情操を養
う。
2.生活に生かすことのできる実践的な学習を行い、今後より良く生きていく
ための資質や能力を身につけさせる。
3.地域住民のニーズを反映し、地域に開かれた魅力的な学校を作る。
上記のAPPのねらいをもとに出されたのが、以下の活動領域および実践である。
1.特色ある手工業の習得(裁縫・編み物・かご製品等)
2.農業飼育を融合させた活動、及び養蚕業(肥料作り等)
3.社会文化的な活動、及びスポーツ活動(伝統的な踊り・歌・踊り・劇)
4.科学技術的な分野の手ほどき(リサイクル)
活動領域が広いため、具体的な活動となれば、いくらでも活動を広げていくこと
が出来る。
けれども、前述の通り私自身の活動期間があまりにも短いこと、そして、予算・
設備・教材等の不足を考えるとテーマを絞っていく必要があった。よって、まず取
りかかりとして「人が生きていく上で、一番基本的で大切なこと」、「人がより良く
生きていくために学ぶべきこと」を柱にしてテーマ見つけたいと考えた。ニジェー
ル共和国は、経済的、環境的に決して豊かな国であるとは言えない。その中で暮ら
す人達にとって、
「より良い暮らしを安定させていくための基礎・基本」は大切であ
ると考える。結果、私が選定したテーマは以下の通りである。 (※作成資料 省略)
1.少ない教材・材料で実施可能なテーマ
・音楽活動
・折り紙
2.生活の基礎・基本となるテーマ
・衛生教育
・環境教育
・食(栄養)教育
・裁縫
「2.」の条件で選択されたテーマは、
「1.」の条件も兼ね備えている。隊員が作
成した資料・教材だけで授業を実施し、その後もくり返し活用することが可能であ
るからだ。
「裁縫」については、現地教員から要望があったため授業案を作成した。しかし、
裁縫の実習活動は、毎時間、児童が布・針・糸などの教材を自分で用意しなければ
ならい。毎時間それらを準備できない児童が数名いて、何もできずに見ているだけ
の時間になることもあった。何かを作ったり生産するような活動を行う場合は、材
料の調達方法や活動を支える資金のやり繰りを考えなくてはならない。
本来APPの活動テーマは、児童や現地教員、保護者や地域の人々とともに、児
童の興味・関心や地域の特色を生かすことを考慮して見つけ出すことが理想である
と考える。それら多くの人達にAPP実施の有用性を十分理解してもらい、ともに
テーマを決定することにより、活動を有意義に進め、継続させることができると考
えるからだ。子ども達の教育を支える人達の理解を得たならば、活動のための資金
や材料等も、ある程度バックアップしてもらうことが可能であろうし、児童が活動
の中で学んだことを家庭へ地域へと還元していくことも可能である。有益な点は多
く、最終的に目指すべきところはそこであるように思う。しかし、地域の体制作り
をし、地域の人達を巻き込んだ活動を提案し、材料や教材を揃え、実際に活動を実
施するという全過程を試みるには多くの時間と労力が必要である。一隊員の力と活
動期間だけで達成することは非常に困難である。したがって、本当の意味でニジェ
ールの教育現場に根ざした活動を作り上げていくならば、JICAのプロジェクト
のようなチームを組んで、目指すべき方向性と活動の段階を計画的に定めて取り組
む必要があるか。
③
授業の実施と授業案の改善
・
授業の依頼・実施について
基本的に授業は、隊員がいなくなった後の継続を考えて、現地教員とともに実施
したいことを伝えた。
(職員会議やイスラムのお祈りの間、隊員一人で行うことはあ
ったが。)また、2年目からは、授業の内容について現地教員に理解してもらうため
に、前もって授業案を渡すようにした。あらかじめ授業内容や伝えておきたい事柄
を書面にしておくことで、自身の不十分な語学力を補って必要事項を確認すること
ができるからだ。現場では教員との打ち合わせの時間を持つことが難しいので、こ
の書面をもとに伝える方法はある程度有効であったように思う。けれども、授業案
を直前に現地教員に渡し、内容をよく理解してもらえないまま実施して、学習に深
まりが出ないこともよくあった。教員に内容をよく理解してもらった上で実施した
時とそうでない時の児童の食いつき方と学習の深まり方は大きく違ってくる。した
がって、より良い授業にするためには、少しの時間であっても現地教員と内容やね
らいにつて話し合う時間を持つことが大切であると感じる。授業内容のほか、
「訪問
日時と授業実施クラス」、「引継ぎの意味を含め、原則的に現地教員とともに授業を
実施したいこと」、「授業実施後は、その資料と教材を残すこと」等、自分が伝えた
いと思う大切な事柄は全て文書とともに依頼するようにした。
(依頼事項があやふや
になった場合に、もう一度そこに戻って確認することができるという点でも文書に
よる依頼は有効か。)
・
授業案の改善について
授業案は児童の実態やその反応を想定して仮に作成するが、もとの授業案でうま
くいくことはほとんどない。授業実施後に改善すべき点が数多く見えてくるもので
ある。したがって、授業を実施するたびに現地教員の意見も参考にしながら、授業
案の修正・改善を行っていった。
2年目からは、授業内容や方法をよりニジェールの児童の実態に合ったものにし
ようと、授業実施前・後の児童の意識に関する調査を実施しようと考えた。しかし、
アンケートをもとに調査を試みたが、現地教員自身がアンケートの形式になれてい
ない人が多く、正確に調査することができなかった。もっとよい調査方法を検討し
ていく必要がある。(※アンケート省略)
・
カリキュラムの作成について
衛生教育・環境教育についてのカリキュラムを作成したいと考えていたが、最終
的にそろった学習内容が少なかったため、作成できずに終わってしまった。
(私の任
期中は、作成した授業案を学年やクラスの性格によって多少変えて行った。)
今後、ある程度学習内容が蓄積されたならば、縦(学年)につながるカリキュラ
ムを作成することが望ましいと考える。個人で作成するのは時間的にも内容的にも
難しいので、他任地の小学校教諭と連携して作り上げるのも有効な方法ではないか。
④
授業案・教材(配布用)の準備と印刷
6月下旬から9月下旬までの約3ヶ月間の長期休業を利用して、これまでの授業
案・教材をまとめ大量生産(印刷)する作業を行った。
(隊員支援経費による)
れらは、学校の教員や教員養成学校の生徒に提供するためのものであった。
こ
作成
した資料は、以下の通りである。
<作成資料の詳細>(※作成資料の詳細
/
省略)
●APP sur l
Hygiène
衛生教育
・Leçons d
Hygiène/衛生教育指導案(第 1 時∼第8時)
・Azizu et Naziru(Conte)/「手洗い」の大切さに気づくための物語
(※旧隊員の資料を一部修正し作成)
・Microbes∼Kwayoyin Cuta(Explication,Images)/「ばい菌」についての知
識を得るための教材
・Lavage des Mains(Explication,Images)/「手洗い」の必要性とその方法
について学習する教材
(※ドッソ学校保健グループ作成の資料を参考に一部修正して作成)
・Coupe des Ongles(Explication,Images)/「爪切り」の必要性とその方法
について学習する教材
・Lavage des Habits(Explication,Images)/「衣服の洗濯」の必要性と
そ
の方法について学習する教材
・Pensée par les Images(Explication,Images)/衛生的な生活の大切さに気
づくための教材
・Lavez-vous les mains ! (Chant)/「手洗い」を呼びかける歌
(※11-2 斉藤由紀子隊員
作成の歌を一部修正)
・Moyen de Lavage des Mains (Chant)/「手洗い」の方法を身につけるため
の歌
・ Changer mes Habits (Dessin)/衛生教育の内容に結びつけた簡単な図工教
材
・Tamponner∼Emlevez-vous les Microbes!(Peinture et Traveux)/(同上)
・Tournoyer l
image∼Lavez-vous les Mains!(Peinture et Traveux)/(同
上)
●APP sur la Musique
/音楽
・♪Enchanté/自己紹介の歌
・♪Au revoir/終わりの歌
・♪Chantons le Chant/授業はじめの歌
・♪Wakar Iché/低学年向けの歌(ハウサ語)(※旧隊員作成の歌に「ダンス」を追
加)
・♪mes Amis de 10 personnes !/♪ma Famille de 10 personnes !/低学年向
けの数の歌
・♪Bisashen Ibrahim/低学年向けの歌(ハウサ語)
(※旧隊員作成の歌に「歌の説
明」を追加)
・♪Multiplication/掛け算の歌(かけ算1∼9の段までを覚えるための歌)
・♪Lavez ‒ vous les Mains !/♪Ku wanke hannuwan ku/手洗い啓発の歌(衛
生教育)(※11-2 斉藤由紀子隊員
作成の歌を一部修正)
・♪Lavez ‒ vous les Mains !/♪Ku wanke hannuwan ku/ダンス振付の説明
・♪Moyen de Lavage des Mains/手洗いの方法を覚える歌(衛生教育)
・♪ma Ville Propre !/衛生的な生活環境作りを呼びかける歌(環境教育)
・♪Traverser la Route/交通安全の歌
・♪Tu connais APP?/APP 啓発のための歌
・♪Chanson d
・♪3 Groupes d
・♪l
APP/APP5つの領域の各活動を紹介する歌
Aliments/3色食品群の歌(食・栄養教育)
Exercice ∼ Jeux avec un petit Piano/ピアニカの練習方法の説明
★上記の曲と歌を収録したカセット
●APP sur le Pliage
/折り紙
・Explication sur le Pliage/折り紙の紹介とその効用
・Activités de Pliage/折り紙の折り方
⑤
APPに関するラジオ番組の企画と実施
ニジェールの人達の生活の中でラジオは無くてはならないものである。高価なテ
レビを持たない家庭の人々はラジオから多くの情報を得ている。
(もちろん、テレビ
がある家庭の人達も。)家の中や道端で休んでいる時も、仕事をしている時も、町を
歩いている時でさえも、ラジオを片手に聞いている姿が見られる。このような人々
のラジオとともにある生活を見て、それをうまく活用して APP についての情報を発
信したり、啓発活動を行なったりすることは大変有効な方法であると考えた。
番組は同僚の教員とともに企画し、2005 年 11 月から 2006 年2月までの毎週日曜
日の1時間、マラディ市のローカルなラジオ局(Radio
Anfani)と契約して行った
(隊員支援経費による)。
構成員は、私、同僚の教員、ラジオ局の職員、そしてマ
ラディ市内の子ども達である。放送全期間の計画、毎回の
番組構成は私が行ったが、その他は役割を分担して番組を
組み立てた。
おおまかな役割は、以下の通りである。
・司会
→
ラジオ局の職員
・APPの情報提供や啓発
・APPの歌の紹介
→
・歌・詩・お話等の発表
写真8:ラジオ番組の様子
→
現地教員
隊員
→
子ども達
この番組は、子どもと大人(教員・児童の保護者・地域住民)の両方を対象とし
て内容を設定した。内容は、APPの情報提供や啓発だけでは内容が硬くなりすぎ
て視聴者が減ると考えたので、その間あいだに「APPの歌の紹介」や、
「子ども達
の歌・詩・お話の発表」等を組み入れた。
大人を対象にした放送は比較的多いが、子どもを対象にした放送はあまりない。
しかも、地域の子ども達が出演しているということで、視聴者は予想以上に興味を
示してくれたようだ。
番組の強力な助人は、同僚の現地教員であった。その教員は、JICAのプロジ
ェクト
École pour tous
主催の研修会にも参加しており、APPについて大変興
味・関心を持ってくれている。その同僚が積極的に番組の運営に協力してくれたの
である。子ども達の出演については、保護者の了承が必要である。したがって、そ
の同僚があらかじめ10名ほどの子どもの保護者にあたってくれ、子どもの出演者
を集めることができた。(※ラジオ番組の計画・放送の詳細資料省略)
ラジオ番組を企画する上で改善点をあげるならば、以下の2点である。
1.ハウサ語の放送を企画する。
私の企画した番組は、主にフランス語で行った。フランス語による放送となると、
教員など十分な教養がある人達には内容が理解できても、子どもや多くの大人達に
は難しい内容となる。したがって、全ての人達に分かりやすい番組にするにはハウ
サ語で行った方が良いと考える。
2.視聴者からの質問を受け付けるコーナーを設ける。
発信者側から一方的に情報等を提供するだけではなく、視聴者側の質問や意見を
聞くことも大切である。それにより、人々はどれだけ APP に関心があり、何に疑問
を抱いているかなどが分かってくるからだ。また、発信する側と受け取る側の相互
のやり取りがなされたならば、視聴者はさらに興味・関心を持って聴くことができ
るように思う。
その企画を実行する場合、APPのことをよく理解して積極的に推進していく意
思がある現地の人に協力してもらう必要があるか。
(語学面でも、番組をより良いも
のにしていくという面でも、強力な助人となってくれることは間違いない。)
⑥
教員養成学校おける APPの活動紹介と 教材・資料の提供
現場の教員は多忙であり、日々の仕事に加えて新しいものを学んでいくためには
時間と労力が必要である。したがって、近い将来教師になるために学ぶ学生達にA
PPの知識や情報、資料を提供する方が、教育現場での波及効果をねらえるのでは
ないかと考えた。このような考えから、小学校現場での活動と並行して、教員養成
学校での活動計画・準備も行うこととなった。
教員養成学校で授業を行うにあたり、授業の内容や流れを準備していたが、実際
にはそのように行うことは出来なかった。(※授業詳細資料省略)
その大きな理由は、2005 年新年度が始まってからすぐに授業が開始されなかった
こと(学校が入学試験の結果を紛失したため、学生が入学できなかったとのこと。)
と、学生のストライキが決行されたこと(政府からの奨学金が未払いだったとのこ
と)があり、授業実施の十分な時間が確保できなかったためである。また、授業を
行った時の学生の反応を見て授業の内容や方法を多少変えていくこととなった。
小学校でのAPPの実施については、あらかじめ授業案を現地教員に示すことに
より、現地教員とともに授業を行うことができた。けれども、教員養成学校では私
自身の語学力がないと授業が成立しない。授業の方法は、主に模擬授業形式で行っ
たものの、やはり語学力がないとその進行は難しい。したがって、毎回授業で言う
べきことをある程度まとめて授業に挑むこととなった。
語学力も十分でないのに、よく教員養成学校での授業に挑んだものだと自分でも
思う。肩肘を張ることなく、何でも挑戦してみることができるのは、やはり何でも
大きな心で受け止めてくれる人が多いニジェールという国であるからか。
⑦
教員の研修会(CAPED)おける APPの活動紹介と 教材・資料の提供
学校現場でAPPの活動を紹介する時間を取り、改めて全職員に集まってもらう
ことは難しい。けれども勤務時間中に設定された研修会であれば、多くの教員が集
まった中で活動を紹介することが可能である。マラディ市では、3∼5校で1つの
グループを作り、年に何回か教員の研修会を行っている。
(各学校の校長や教育行政
機関の指導主事も参加。)その機会を活用して、私が行ってきた活動をいくつか紹介
させてもらった。
活動の紹介の仕方であるが、各学校や教員に対して APP の資料を配布するだけで
は、その後、授業の実施につなげていくことは難しい。したがって、模擬授業のよ
うな形で具体的な活動モデルを教員に示し、それを見てもらった教員の学校に、そ
の活動を説明した資料・授業案・教材等を提供する方法をとった。
ただ残念に思うのは、この研修会での活動紹介を始めたのが活動の終盤だったた
め、あまり多くを紹介することができなかったことである。後任の方については、
ぜひこの機会を大いに生かしていただきたい。
⑧
Échange
(※CAPED 詳細資料
Culturel Jeunes MARADI ‒ JAPON à Maradi 2006
省略)
におけるAP
Pの学習発表
このイベントは「青少年活動」の隊員が各隊員の任地で開催する、日本人ボラン
ティアとニジェールの人々の文化交流を目的とした祭典である。任期の最後に、私
が活動するマラディ市でも、この祭典を行うことになった。
(イベントの計画・準備・
運営は同僚の教員と行った。「青少年活動」隊員の隊員支援経費による。)
このイベントの中で、私がAPPを実施した小学校の児童(École Centre ‒ CM
2,Classe de non-voyant=盲学級)がAPPの歌の発表を行った。また、EPS
を実施した小学校の児童とは、イベントに向けて「よさこいソーラン」の踊りを練
習し、本番では各任地から集まった隊員と一緒に踊ることができた。(「よさこいソ
ーラン」の節は、ニジェールの伝統的な音楽の雰囲気と少し似ているところがあり、
この曲が好きになった子どもも何人かいた。)子ども達にとっては、学習発表の大変
良い機会であったし、心に残る経験となったようだ。また、マラディ市の人達に対
してもJOCVのニジェールでの様々な活動を知ってもらう機会となったことが良
かったように思う。
イベントの準備、当日の会の進行等については、様々な問題が起こった。計画し
た通りには決していかないのがニジェールであるし、とんでもないハプニングが起
こるのもニジェールであることを、身をもって学んだ気がする。問題やハプニング
が続出する中、最後まで何とか終えることが出来たのは、ひとえに各任地から集ま
ってくれた隊員がそれぞれの技術を駆使して支え
てくれたからである。(事務所調整員やJICAの
運転手まで協力してくださった)陰で表で支えてく
ださった方々に心から感謝したい。(※イベントの
計画・運営の詳細省略)
(2)
EPSに関する活動
任期中におけるEPSに関する活動の概要は、以下
写真9
ニジェール相撲
の通りである。
①
マラディ市内の教育現場の把握と授業実施校の選択
②
活動案・教材の作成
③
授業の実施と活動案の改善(現地教員とともに実施)
④
授業実施校へ資料と教材の引継ぎ
以下に、各活動の詳細とその教育効果、および改善すべき点を記述したい。
①
マラディ市内の教育現場の把握と授業実施校の選択
学校によって多少差異はあるが、EPSを実施するための十分な広さの校庭がな
い、校庭があってもたくさんの木が植えられている、教材・教具はほとんど無い、
というところは多い。そのような条件や環境の中で、実施可能な活動を考えなけれ
ばならなかった。
授業実施校につては、新年度が始まってから3ヶ月間教職員組合のストライキが
行われたため、EPSの活動に関しても私立の学校からのスタートとなった。
(私が
EPSを実施した学校は私立2校のみ。APPの活動に重きをおきたいと考えたた
め。)
ある私立学校ではEPSを実施していたが、教師は鞭を片手に授業を行っていた。
(EPSの活動に限らず、教室の中でも鞭を使う教師は多い。)ニジェールの子ども
達は、日本の学校の児童のように「まっすぐ順番に並ぶ」ことや「すばやくキビキ
ビと動く」ことに慣れていない。(その大切さを指導されていないからか。)
よっ
て、児童が指示通りに動かない場合には、教師が鞭を飛ばして動かすことになる。
その鞭に反応して児童は恐ろしくすばやく動くという感じだ。鞭をもってしか児童
の秩序を保つことができないというのは悲しいことである。けれども、私自身、鞭
を使うことに対して抵抗と違和感を覚えながらも、そこまで踏み込んで現地教員と
話をすることができなかった。
②
活動案・教材の作成
APPと同じく教材・教具がほとんど無いに等しい状態である。校庭があっても、
砂地なのでゲームを行うためのラインを引くことさえ難しい。このようなことを考
慮して考えたのが、以下の活動である。(※活動の詳細資料省略)
●跳ぶ運動∼馬跳びなど
・Sauter
●ゲーム運動
・ Pierre, Ciseaux, Papier ∼ Match du plus
∼ジャンケンを使った
ゲーム
・Saute ‒ Mouton
fort !
・Pierre, Ciseaux, Papier∼Train !
・Pierre,Ciseaux,Papie∼Hadari
●走る運動∼走る運動各種
Mutané !
・la Course1∼3
リレーなど
●ゲーム(ボール)運動
∼サッカー・ドッヂボール
・le Football∼les Exercices
・ le Football Simple (sans limitation de
terrain)
・le Football (dans le terrain limité)
・le Ballon du Chasseur1∼3
・le Ballon du Chasseur∼les Explications
③
授業の実施と活動案の改善
活動の方法を分かってもらえるように、活動の説明をフランス語と図で表したも
のを作成し、事前に現地教員に渡すようにしていた。その資料をもとにしながら、
現地教員の協力を得て授業を実施した。
活動案については、あらかじめ活動の全
体をイメージして作成しても、実際に児童を前にして試みるとうまくいかないこと
が多い。
「 試みては修正」の作業をくり返して最終的な活動案を作成した。けれども、
これらもあくまで案である。実施する学校の児童の実態や現地教員の指導力によっ
て、内容を臨機応変に変えていく必要がある。
④
授業実施校へ資料と教材の引継ぎ
EPSを実施した学校に、これまでの活動をまとめた資料とバレーボールを提供
することで引継ぎとした。
(活動で使用したボールには、マーカーで「NIGER/JAPON」
と書き、ニジェールと日本の国旗を描き加えた。ボールは、バレーボール隊員から、
活動で使わなくなった物を譲り受けた。)
(3)
ニジェールと日本の児童間の交流 に関する活動
交流に関する活動の概要は、以下の通りである。
①
「世界の笑顔のためにプログラム」における 日本の小学校への楽器収集と郵送
の依頼・それら楽器の活用
②
マガタカルダ小学校 と 南あわじ市立北阿万小学校児童間の交流
③
岡山県米来小学校児童との交流
以下に、各活動の詳細と その教育効果を記述したい。
①
「世界の笑顔のためにプログラム」における 日本の小学校への楽器収集と郵送
の依頼・それら楽器の活用
何度も記述しているが、APPで活用できる教材・教具ほとんど皆無に等しい。
したがって、
「世界の笑顔のためにプログラム」において、下記のような概要で楽器
の収集・郵送を依頼した。
支 援 依 頼 南淡町立北阿万小学校
校
申請品目
「ソプラノリコーダー」
「鍵盤ハーモニカ」
「タンバリン」
受領対象
ニジェール・マラディ圏内の小学校
使用目的
マラディ圏内・小学校の巡回授業,APP(生産実習活動、特に音楽活動)に
おいて使用。
活用効果
音楽活動で利用できる楽器がほとんど無い状態である。これらの楽器を用い
ることで活動の幅が広がり、児童の情操教育に役立つことが期待される。
楽器は主に盲学級の児 童の音楽 活 動で活用 し た。
マラディ市の普通規模の小学校では、1学級 50
人以上の学級がほとんどである。全く楽器を扱った
ことのない児童 50 人に演奏方法の指導をすること
は大変難しい。現地教員の協力のもと、よほど工夫
されたシステムによって指導しなければ大混乱す
る こと が 予 想 され る。( 現地 教 員 も 、ほ と ん ど その
扱 い方 を 知 ら ない。)
私自 身 、 そ のよ う な 条 件で
児童を指導する力量がないと判断したので、少人数
写真 10:日本から送られてきた
楽器を手にした子ども達
の学級(盲学級)でそれらの学期を活用することに決めた。盲学校の児童は目が見
えにくいというハンディキャップがあるが、初めての楽器に挑戦して演奏できたと
いう経験が、少しでも各自の自信に変えることができたらという願いもあった。
ピアニカには、
「ド・ミ・ソ」の位置が分かるように、鍵盤上にボンドで点の印を
付けて使用した。
私の任期最後の頃には、簡単な曲(♪Enchanté)が吹けるようになり、 Échange
Culturel Jeunes MARADI ‒ JAPON à Maradi 2006
(「青少年活動」隊員と現地教
員等と協力して企画・運営した地域の文化交流イベント)では、マラディ市のたく
さんの人達の前で発表するという経験を得ることができた。当日は、緊張のためか
うまく吹くことができなかった児童もいたが、イベントが終わってからも引き続き
練習し、私の学校訪問最後の日に、もう一度その成果披露をしてくれた。私にとっ
ては最高の贈り物であった。一生懸命に練習したことは、児童の心の中に頑張った
プラスの経験として残るに違いない。
②
マガタカルダ小学校と南あわじ市立北阿万小学校児童間の交流
交流の発端は、マガタカルダ小学校の校長より、
「ニジェールと日本の子ども達の
間で交流をしたい。」との依頼を受けたことであった。交流を開始したのは、私の任
期が残り1年足らずとなった頃であり、手紙や写真の交流については各校とも1回
ずつ行ったのみであった。思うように交流が進まなかったが、たった一度の文通で
はあっても、ニジェールの子ども達にとっては心に残る出来事となったようだ。ま
た、北 阿万 小学校 では 、「 ふれ あ い集会 」で ニジ
ェールのことについて学んだ後、児童会で文房具
を集め、マガタカルダ小学校の児童に郵送したく
れた 。( 実 際には 、そ の贈り 物は うまく 現地 に届
かず、また日本に戻ってきてしまった。再度郵送
してマガタカルダ小学校に届くのに1年以上か
かっている。)(※交流計画の詳細省略)
この交流を通して、問題点がいくつかあるよう
写真 11:手紙を手にした児童
に感じた。以下にまとめたい。
・ニジェールと日本の生活レベルや環境等に大きな差がある。
(例:ニジェール
→
郵便料金が高い。そのためのお金も調達しにくい。
郵便物は、私書箱を設置している人しか受け取れない。インターネット
を使える環境が限られている。)
・ニジェールと日本の学校現場での教育活動への取り組み方に差がある。
(例:ニジェールの教育現場
→
年間の指導内容は決められているようで
あるが、いくらでも融通がきく。
日本の教育現場
→
各教科等の年間指導計画が綿密に立てられてお
り、ほぼその通りに進められる。その中で、年度途中から交流の時間を
捻出することは難しい。
→
それでも敢えて交流の機会を作るならば、総合学習の時間に「国際
理解」をテーマとして、あるいは学級活動のひとつとして行うことが可
能性か。)
③
岡山市・米来小学校児童との交流。
交流のきっかけは、ニアメの郵便局で出会った現地教員から「日本の小学校から
送られて来るはずの荷物がなかなか届かない。」と話を聞いたことが始まりであった。
交流先は岡山の米来小学校。かつて、その現地教員の所属するNGOのメンバーの
1人がJICAの研修で米来小学校を訪問したことから交流が始まったらしい。
「手
紙のやりとりをするにも、お互いに共通言語がないので交流することが難しい。仲
介役になってもらえたらうれしいのだが・・・」との話を受けて、交流メンバーの
一員となった次第である。
米来小学校の児童は、ニジェールの教員との交流をきっかけに、総合学習の時間
にニジェールのことについて学習するようになったようだ。夏休みには、ニジェー
ルの子ども達に何か贈り物をしようとチャリティーバザーを行い、その収益金を送
るという活動を行っていた。私自身は、その送り先の確認や収益金のより良い活用
方法の相談、伝達事項をそれぞれに伝えるなどした。また、私がとらえたニジェー
ルの姿ではあったが、米来小学校5・6年生の児童に「ニジェール通信」を送った
り、総合学習の時間に出された質問に答えたりした。
(伝達手段は、自宅の電話回線
によるインターネット。)そして、帰国後は実際に米来小学校に訪問し、5・6年の
児童に通信では伝えきれなかったニジェールのことをお話する機会をいただいた。
不思議なめぐり合わせで、交流の中の一人に入れていただくことになった。縁あ
って出会えた人達である。帰国後の慌しい生活の中では、時に心の余裕を無くして
しまうこともあるが、出会えたたくさんの人達とのつながり忘れず大切にしていき
たいと思っている。
5
今後の活動の課題と可能性
(1)
今後の活動の課題
私が考える範囲でのニジェールの教育現場における今後の活動の可能性を以下にま
とめたい。
①
歴代隊員の優れた活動や実践をうまく活用する(横の連携)
②
ICAの教育プロジェクトから発信される情報や資料をうまく活用する(縦の
連携)
③
AP P やE PS の 学習 内容 を 改善 ・補 充 し、 さら に 内容 を再 編 成し てC I(1
年生)からCM2(6年生)まで縦につながるカリキュラムを作成する
④
教員の研修会やラジオ放送を活用してAPPを普及、継続させていくための基
盤作りをする
⑤
(可能であるならば)後任として、現場経験のある現職教員の派遣を依頼する
⑥
ニジェールの子ども達の教育について真剣に考える意欲と熱意のある人材を探
し、自分の活動についての理解を得、ともに活動を展開していく
(2)
①
各課題の詳細説明
歴代隊員の優れた活動や実践をうまく活用する(横の連携)
現職隊員の活動期間は、新規に開始してその活動の成果を出すにはあまりにも短
い期間である。私自身1年9ヶ月(現地語学後訓練、教職員のストライキ、学校の
長期休業等の期間を除くと実質1年5ヶ月ほどか。)の活動期間、活動のテーマを探
すところから始まり、授業案・教材等を作成し、現地教員とともに授業を実施し始
めたところで任期が終了してしまった。
このようなことから、隊員は活動を全くのゼロから開始するのではなく、歴代隊
員の良い実践をうまく活用しながら、自分なりの活動を作り上げていくことがベタ
ーではないかと考える。私が作成した活動案や資料・教材等についても改善すべき
点が多いが、これから赴任される方にはそれをたたき台として、その方自身の経験
やユニークな発想を生かした活動を取り入れ、より良い形に変えていっていただき
たいと考える。
取りくんだ活動や実践は自分だけのものとどめず、同任国(広くは、同じ言語圏)
の教育現場に携わる隊員(APPについては、小学校教諭に限らず、その活動に関
わる「果樹」・「植林」・「青少年活動」・「家政」等の隊員 )と共有し、横とのつなが
りの中でさらに良いアイデアを探り、実践を深めていくことができるのではないか。
この横の連携をうまく生かした活動により、ニジェール全体の教育活動をより良い
方向へ進めていくことができるのではないか。
②
JICAの教育プロジェクトから発信
される情報や資料をうまく活用する(縦の
連携)
ニジェールではJICAのプロジェクト
École pour tous
が活動を展開していた
が、そこから発信される情報をうまく活用
すべきではないか。隊員のレベルでプロジ
ェクトと同じ活動をめざすのは予算・環
境・条件的に厳しいと言えるが、そこから
写真 12
JICAプロジェトのマーク
写真 13
プロジェクト主催の研修会
得た情報は、これからの活動の中で有益な
ものになることは間違いない。ニジェール
の国が目指すべきAPPの方向性や成功し
た具体的実践例を示してくれているので、
その情報を積極的に取り入れて活用してい
くことが大切であると考える。
短い期間で一隊員に出来ることは限られ
ている。しかし短い時間であっても、縦横
の連携をうまく取りながら活動していくこ
とで、活動の幅や可能性を大きく広げるこ
とが出来ると考える。
③
APPやEPSの学習内容を改善・補充し、さらに内容を再編成してCI(1
年生)からCM2(6年生)まで縦につながるカリキュラムを作成する
私が作成した授業案や教材は、各学年で多少内容や方法を変えたものの同じ内容
を実施するにとどまった。今後は、実施した内容をたたき台として改善・補充をく
り返し、縦につながるカリキュラムを編成していく必要がある。
カリキュラムを作成するには、計画・試行・改善・再試行…を何年間かかけてく
り返し、より良いものに仕上げていく必要がある。時間を要する作業なので、一隊
員がその全ての過程を成し遂げることは難しい。よって、達成できなかった部分は、
問題点や改善すべき点をできるだけ明確にして後任に引き継ぐ必要があるように思
う。その引継ぎがうまくできるかどうかによって、完成までの期間やより良い物が
出来るかどうかが決まってくる。
④
教員の研修会やラジオ放送を活用してAPPを普及、継続させていくための基
盤作りをする
APPを実施、普及、継続させていくためには、その活動を支える人々(現地教
員、児童の保護者、地域の人々等)に理解と協力を得る必要がある。
その基盤作りとして、以下の方法をあげたい。
1.教員の研修やラジオ放送を通して、APP 実施の有効性や重要性を教員や各家庭、
地域の人々に呼びかける。
2.APP実施後の児童の良き変容を、教員や各家庭、地域の人々に知らせる。
成果が見えにくい地道な活動ではあるが、本当の意味でAPPの普及・継続を考
えるならば、このような人々の精神的な下地を作る活動が不可欠であると考える。
⑤
後任として、現場経験のある現職教員の派遣を依頼する
後任を要請するにあたって、可能であるならば「小学校での実務経験が3年以上」
あることを希望した。その理由は、授業案を数多く作成し行った経験、カリキュラ
ムの作成に携わった経験等がある教員の方が、長期的な見通しを持って活動を計画
し、内容を深め広げることができるのではないかと考えたからだ。また、多くの学
年での指導経験がある方が、その発達段階にあった指導内容や方法を取り入れるこ
とが可能でないかと考える。
日本とニジェールの現場の状況は大きく異なるので、日本での現場経験がニジェ
ールでも通用するとは限らない。けれども、日本の現場で児童と向き合い、試行錯
誤しながら教育活動を行ったという経験と自信が、ニジェールでの活動の中での大
きな支えとなるという事実は否定できない。
⑥
ニジェールの子ども達の教育について真剣に考える意欲と熱意のある人材を探
し、自分の活動についての理解を得、ともに活動を展開していく
APPやEPSを普及、継続させるためには、その活動について関心と意欲を持
つ現地教員の協力が不可欠であることを強く感じる。私自身は、幸運にもそのよう
な熱意ある教員に出会うことができた。彼らに理解と協力を得ることができたから
こそ、活動を前に進めることができた。それらの教員のサポートなしに全期間の活
動は成り立たなかったと言ってよい。
配属先の行政機関(私の場合、マラディ初等教育監督局)であっても、現場の小
学校であっても、APPの活動に関わる他の場所であっても、まずは、その活動の
場で核となる人(ニジェールの子ども達の教育について真剣に考える意欲と熱意の
ある人材)を見つけることが大切であると考える。幅広く多くの教員に対してAP
Pの授業を実施したり、資料を提供したりする方法が一般的であるが、その場合何
よりも多くの予算が必要である。たとえ、予算が十分に整い多くの人達に情報や資
料を提供できたとしても、よほど教育に対して熱意があり、APPに興味・関心が
ある人でなければ、そこで得たものを今後に生かしていくことは難しいとも考える。
したがって、各活動の場で核となる人を見定めて、その人達に積極的に働きかけて
いった方が、結果的にはしっかりとしたAPPの土壌を固めることができるのでは
ないかと考える。
APPの活動を理解し、ともに活動してくれる人が少数であっても良い。核とな
る人が実践し成果を出した時、その事実を見たまわり人達は必ず良い刺激を受ける。
少数であっても確かな人材がまわりに与える影響や波及効果は大きいのではないか。
写真 13
教室で子ども達と
※引用・参考資料
・外務省ホームページ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/niger/data.html
・J IA Bulletin 2004 年 10 月号
海外レポート・ニジェール事情
彦著/2004.10)
・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
(鈴木敏