1 オーストラリア 1. - 外国産業財産権侵害対策等支援事業

オーストラリア
1.侵害対策に携わる行政、司法、仲裁機関の名称
A.行政機関
(1) オーストラリア知的財産局
(IP Australia)
オーストラリア連邦政府の工業、観光、資源省(Department of Industry, Tourism and
Resources)に所属し、同省大臣直属の実質的に独立した機関で、知的財産法および同制度
の運用等に携わる唯一の政府機関である。
オーストラリア知的財産局は、特許部、意匠部、商標部によって構成され、各々の知財の出
願審査、権利の付与、異議申立、商標登録の取消審判等の業務を行っている。この機関は、
著作権に関する業務は行っていない。
知的財産権の登録の無効、取消手続きに関しては、知的財産局と裁判所がシェアーをし、両
者で行っている。
(Department of Australian Attorney General)
(2) オーストラリア検事総長事務局
著作権に関する業務は、この事務局において制度の運用が行われている。
現在、著作権法の改正が予定されており、この事務局を中心に改正作業が進められている。
B.司法機関
(1) 裁判所の構成は次の通りである。
民事裁判所
第一審裁判所 ─ Federal Court(連邦第一審裁判所)又は、
Supreme Courts of States / Territories(州上級第一審裁判所)
控訴裁判所 ── Full Federal Court(連邦控訴裁判所)又は、
Full Supreme Court(州上級控訴裁判所)
最高裁判所 ── High Court of Australia(オーストラリア連邦高等裁判所)
刑事裁判所
第一審裁判所 ─ Courts of States / Territories at different levels(管轄の州裁判所)
控訴裁判所 ── Depends on the first Court(管轄の控訴裁判所)
最高裁判所 ── High Court of Australia(オーストラリア連邦高等裁判所)
(2) 知的財産権(著作権を含む)の侵害に対する控訴及びその抗弁として提起されるか又は単独
に提起される IPR の無効、取消を求める訴訟、商標法に規定された取消事由および不使用に
基づく商標登録取消の訴、並びに意匠登録の効力に関する訴などは、第一審連邦裁判所(一
人の裁判官により審理)
、または州第一審裁判所において審理、判断が行われる。
オーストラリアにおいては、連邦裁判所の裁判官の方が広範で長期に亘る経験と知識をもっ
ているため、連邦裁判所への訴が多いようである。
(3) 第一審裁判所の判決に対し、控訴をする場合には、控訴裁判所(Full Federal Court)に控訴
することができるが、控訴裁判所では3人の裁判官の合議体によって審理されている。
(4) 控訴裁判所の判決に対し更に控訴する場合には、日本の最高裁判所に相当する High Court of
Australia に控訴し、その判決が最終審となる。
(5) オーストラリア知財局による IPR の出願審査等に関する決定について控訴する場合には、連
邦裁判所である Administrative Appeals Tribunal(行政事件控訴裁判所)に対して行う。
IP Australia における特許、意匠、商標に関する異議申立の決定に対しては、連邦裁判所に
対し不服申立をすることができ、これに対する控訴は、3人の裁判官によって審理される
Full Federal Court に対して行う。
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C.IPR の執行に携わる機関
(1) オーストラリア連邦警察
(Australian Federal Police ─ AFP)
知的財産権の侵害に対するアクションは、その権利者、専用実施権者(又は専用使用権者)
および商標の場合、商標法に規定されている Authorized user が提起することが許されてい
る。一般的に商標権や著作権の侵害や模造品に対しては、刑事訴追をすることが多く、オー
ストラリア連邦警察が州警察の協力を得て効果を挙げている。
警察による取締は、IPR の関係団体、例えば、映画、ビデオ著作権者の団体であるオースト
ラリア映像、テレビ事務局(Australian Film and Television Office)などの協力と圧力を受
け、また民事事件としてよりも費用的に安価であることにより刑事訴追の方法がよく活用さ
れている。シドニーやメルボルンなどの都市では模造品に対する刑事訴追手続きは、通常下
級裁判所(magistrate)で審理され、罰金刑などが課せられる。
(2) オーストラリア税関
(ACS ─ Australian Customs Service)
模造品の水際取締りは、商標法および著作権法の規定により税関に付与された差止めの権限
に基づいて行われる。
オーストラリアでの現状は、商標権者または著作権者による事前の申立に基づき、税関がこ
れらの貨物を侵害品と判断したときに水際での差止め手続きをとることによって取締りが行
われる。税関による差止めの期間は、10 日間とし、この間に侵害の確認手続きが完了しない
限り、差止めが解除され通関される。
2.IPR 侵害および模造品排除のための関係法令および手続きの流れ
(1) 関係法令
1900 年 特許法(the Patents Act, 1900)
1995 年 商標法(the Trade Mark Act, 1995)
意匠法(the Design Act)
著作権法(the Copyright Act)
1974 年 取引表示法(the Trade Description Act, 1974)
(2) 登録商標権、意匠権、特許権、著作権の侵害に対する民事訴追手続き。
侵害の証拠入手
侵害者に対し侵害の中止及び念書を要求する警告書発送
侵害者念書の提出を拒否
必 要 に 応 じ 、 Anton Piller
Order の申請をする。
連邦裁判所又は州上級裁判所に対し
侵害差止め、損害賠償請求、不当な
利益の認定を求める訴の提起。
被告の応訴(侵害否認)
。
特許権の無効、商標権の無効取消、
意匠権の取消などの抗弁。
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判決。
原告勝訴の場合は主張を容認し、費用
負担を決定する。
被告勝訴の場合は原告の主張を容認せ
ず、費用の原告負担の決定をする。
民事訴訟提起の要件として、IPR の存在を必要とする。
緊急の場合、本訴による最終審理を終ることなく、仮処分の決定を受けることが出来る。
仮処分申請についての保障金を積むことなく、警約書をもって代えることができる。
(3) 刑事訴追の流れ
IP の権利者、またはこれらを代表する団
体による告発。
警察による捜査
裁判所に対し、捜査結果の情報開示、
捜索令状の申請
侵害品の存在する場所の警察による捜索と
侵害品等の押収。
警察による侵害者に対する起訴と刑事法廷
への呼出し。
刑事事件として、事実の概要書を被告に
送達。
判決
被告による応訴の検討
控訴
(連邦裁判所又は
州上級裁判所)
法廷での審理(Hearings)
3.IP 侵害、模造品の取締りに携わる民間団体
(i) Australian Film & Video Security Office, Mona-Vale.
映画およびビデオの著作権者の権利保護のための団体。
(ii) Business Software Association
P. O. Box 2318, Stawberry Hills, NSW, 2012.
コンピュータ・ソフトウェアの著作権者を保護する団体。
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