世界に誇れるオリジナル製品を作りたい

〜筆者が行く!〜
トラ技ファミリ巡業レポート
筆者:宮崎 仁
このコーナでは,トランジスタ技術の編集記事に執筆実績のある筆者陣が,広告掲載いただいている企業様(ト
ラ技ファミリ)を訪問し,広告誌面では伝えきれない各社の魅力を徹底レポートしていきます.
世界に誇れるオリジナル製品を作りたい
(株)電菱
どんな会社かな ?
電菱は独立型太陽光発電システム(太陽電池モ
ジュール,システム用コントローラ,ディープ・サ
イクル・バッテリ.DC-AC パワー・インバータ)や
各種電源機器の専門商社およびメーカとして広く知
られています.独立型とは,商用電力と接続して給
電を受けたり売電したりする系統連系型とは違っ
て,太陽光だけで完結した地産地消の発電システム
写真 1 現社長の小林さん
です.可搬式装置の電源や,バス停や街路灯など無
写真 2 太 陽 電 池「DC
シリーズ」
人の表示・照明設備に適しています.
1967年の創業で40年を超える歴史をもちますが,
最初から太陽光発電が専門だったわけではなく,いく
つかの転機を乗り越えて発展してきたようです.日暮
ころか,20 年以上にわたる超ロングセラーになっ
里にある本社をお訪ねして,現社長の小林伸一さん(以
た製品もあるといいます.
下,小林さん)にお話をうかがいました(写真1)
.
ただ,大手通信機メーカとは会社の規模でも営業
● 創業と最初の転機
力でも大きな差があり,ブランド力では及ばなかっ
創業者(現社長の父である小林伸吉さん)は計測
たそうです.
器の専門商社に勤務していましたが,1967 年に独
● 第二の転機
立して,計測器商社として電菱を起業しました.創
現在の主力商品である太陽電池モジュールを扱い
業者は元々技術者を志しており,
顧客であるメーカ・
始めたのは,1987 年ころです.サンシャイン計画
工場のさまざまな技術者と接しているうちに,自分
など省エネルギ政策の推進によって太陽光発電への
でもオリジナル製品を作りたいという思いが大きく
関心が高まっていたことと,当時の主力商品だった
ふくらんできたといいます.
モービル無線機の可搬式電源として太陽電池に注目
1976 年に初めてのオリジナル製品として,アマ
したという背景があるそうです(写真 2).
チュア無線のモービル無線機を設計し,製造・販売
1990 年代には住宅用太陽光発電が普及しました
を開始しました.
が,住宅向けビジネスは最終的な施工まで手がけな
このモービル無線機はたいへん好評で,10 年ど
いと成り立ちにくく,多くのメーカが施工業者に変
貌していったといいます.電菱では住宅用には手を
DC
太陽電池
モジュール
充放電
コントローラ
DC
DC-AC
インバータ
ディープ・サイクル
・バッテリ
図 1 独立型太陽光発電システム
AC100V
出さないと決め,独立型太陽光発電システムに注力
して事業を展開したそうです.
1992 年にはオリジナル製品の充電コントローラ
を発売しました.コンパレータでバッテリ電圧を監
トラ技ファミリ巡業レポート
視し,リレーで遮断して過充電を防ぐ簡単なもので
フトウェア技術者として,通信システムや金融シス
したが,好評だったそうです.
テムなど大規模なシステム開発に携わってきたそう
その後もインバータ,バッテリ,バッテリ・チャー
です.
ジャの販売を次々に手がけるようになりました.当
2009 年には,オリジナル製品の第一弾として,
時,海外メーカから MOSFET を用いた高効率イン
LED 電球「L 魂」を発売しました.それまでの LED
バータが登場するなど,インバータや電源機器の性
電球は発光方向が下方向に限られており,白熱電球
能が急速に向上していった時期でした.
とはかなり異なる配光パターンでした.「L 魂」はふ
こうして,同社は独立型太陽光発電システムの専
くらみをもたせた電球型で,全周照明を可能にした
門商社として成長していきました.
ことで話題を集めました.しかし,大手メーカから
● 第三の転機
もスケール・メリットを出した安価な製品が発売さ
2001年に現社長の小林さんが就任しました.まず
れるようになり,ヒット商品としてブレークするま
会社のアイデンティティを見つめ直すことから始め,
ではいきませんでした(写真 3).
「The Ubiquitous Energy Company」と名付けました.
2010 年 に は, 第 二 弾 の バ ッ テ リ・ チ ャ ー ジ ャ
太陽光だけから電力を供給する独立型太陽光発電は,
「PANcharge1k」,第三弾の太陽電池充放電コント
まさにユビキタスなエネルギと言えるでしょう.
ローラ「SolarAmp mini」と,オリジナル製品を相
また,専門商社として同社が果たすべき使命は,
次いで発売し,いよいよメーカとしての道を着実に
太陽電池を利用したシステム・機器を開発したい人
歩み始めています.
のために,使いやすい太陽電池モジュールを供給す
「PANcharge1k」は,12/24/36/48V のマルチ電圧
ることだといいます.同社が需要を的確に予測し,
対応,入力も 100/200V 対応で,これ 1 台あればど
計画的にモジュールを生産・販売することで,経済
こでも使えるという万能の鉛バッテリ充電器です.
的な価格と安定的な供給を実現しています.
「L 魂」は純和風の製品でしたが,海外にも目を向け
そして,小林さんの究極の目標は,再びオリジナ
た製品となっています(写真 4).
ル製品で勝負できるメーカになることだそうです.
「SolarAmp mini」は,自己消費電力を世界最小の
そのために,
どこか一つでも世界一のところがある,
1mA におさえ,悪天候が続いてバッテリが完全放
世界に誇れるオリジナル製品を作り出していきたい
電しても太陽電池からの電力だけで回復充電を開始
と考えています.
できる高信頼性の充放電コントローラです.世界中
のあらゆる場所で,無人の太陽光発電システムをサ
開発体制と最近の製品
ポートし続ける,まさにユビキタスな製品となって
小林さんは社長就任以来,社内で設計技術者の育
います(写真 5).
成を進めてきました.現在は 3 名のスタッフがおり,
今後も,専門商社の使命を果たしつつ,世界に誇
設計力も向上してきたそうです.小林さん自身もソ
れるメーカを目指していきたいそうです.
写真 3 オリジナルの LED 電球
「L 魂」(えるだま)
写真 4 鉛バッテリ充電器「PANcharge1k」
写 真 5 充 放 電 コ ン ト ロ ー ラ
「SolarAmp mini」