野生生物犯罪につながる買い物をしないようにしよう買い物と生物多様性 ① 野生動物の密猟や森林の違法伐採で、地球の自然が失われています。そして知らないうちに日々の買い物を通じて、そのような野生生物犯罪に手を貸してしまっているかもしれません。象牙違法木材・木製品密猟した象牙はアフリカの武装集団の資金源に、そして密輸によって国際犯罪組織の利益になります。そのため国連をはじめとする国際社会が、密猟・密輸防止に力を注いでいます。日本国内での象牙製品の購入は違法ではありません。しかしアフリカの密売人が携帯電話で取引をする現代では、日本での需要もアフリカでの密猟と無関係ではいられません。また象牙は死んだゾウから得られることを忘れないでください。熱帯木材の国際取引は、森林に生息する野生動物にとっても脅威です。日本は合板の多くをマレーシア、インドネシア、中国から輸入しています。マレーシア、インドネシアの森林に生息するオランウータン、アジアゾウ、スローロリス類などは生息地の喪失が絶滅の脅威となっています。違法伐採は、野生生物の問題だけではありません。森林で暮らしていた地域住民にとっては生活の基盤が失われてしまいます。国際刑事警察機構（INTERPOL）の報告書によると、違法伐採により地域住民が低賃金での労働を強制されたり、暴力が振るわれたりしています。そして違法伐採された木材かどうかは流通の段階では見分けがつかないため、リスクの低い犯罪として犯罪組織や政治の腐敗の温床になっています。また違法伐採された木材の輸入国として、中国、ヨーロッパ諸国、米国、日本が挙げられています。とくに中国は自国の消費の増加だけでなく、アジア近隣諸国やアフリカから違法伐採した木材を輸入して木製品に加工し、ヨーロッパ諸国、米国、日本に輸出していると報告書は指摘しています。参考：国際刑事警察機構世界銀行『CHAINSAW PROJECT An INTERPOL perspectiveon law enforcement in illegal logging』p7-8 p22 http://www.illegal-logging.info/sites/default/files/uploads/WorldBankChainsawIllegalLoggingReport.pdf アフリカゾウ珍しいペットスローロリス類は東南アジアの森林に生息する夜行性のサルです。森林伐採や密猟のために絶滅の危機にあります。そのため 2007 年 9 月 13 日からワシントン条約で附属書Ⅰに記載され、国際取引が原則禁止になりました。日本の「種の保存法」では、附属書Ⅰに記載される動植物の違法取引は、5 年以下の懲役または 500 万円以下の罰金、法人の場合は 1 億円以下の罰金です。オランウータン海外旅行のおみやげしかし違法取引をしなくても、犯罪にかかわってしまうことがあります。それは海外旅行先で動物と記念写真を撮る「フォトプロップ」です。この撮影用にスローロリスが密猟されています。そして撮影した「かわいい」スローロリスの写真をインターネットで公開することで、国境を越えて「わたしも写真を撮りたい」「飼いたい」という需要を生み出してしまいます。自分が飼っているスローロリスの写真を公開しても同じように需要につながってしまいます。スンダスローロリススローロリスは生きたぬいぐるみではなく、絶滅の危機にある野生動物であることを多くの人に知ってもらう必要があります。海外で食べるものうろこをもつ哺乳類・センザンコウは食材や伝統薬として珍重されています。アジアに 4 種、アフリカに 4 種が分布し、そのすべてが IUCN（国際自然保護連合）レッドリストの絶滅危惧種で、生息数が減少しています。 IUCN の種の保存委員会センザンコウ専門家グループは「センザンコウは現在、世界で最も違法フカヒレが高価で取引されるサメ※も、取引が盛んに行われている哺乳類で、この 10 ワシントン条約で国際取引が規制されていま年で捕獲された野生のセンザンコウの数はす。アメリカでは州法でフカヒレの所持や販売を 100 万を越えている」と警告しています。禁止している州もあります。インドサイクロサイシュモクザメまた中国では公式晩さん会などでのフカヒレの提供を禁止しています。民間ではペニンシュラホテルなどがフカヒレの提供をやめ、香港のキャセイパシフィック航空はフカヒレの貨物輸送を中止しています。海外旅行での食事が野生生物犯罪やトラブルにならないよう注意が必要です。 ※ 附属書Ⅱ：ヨゴレ、アカシュモクザメ、ヒラシュモクザメ、シロシュモクザメ、ウバザメ、ホホジロザメ、ニシネズミザメ、ジンベイザメ。日本はこれらの種を条約の対象外とする「留保」にしていますが、海外でおみやげなどとして買い、旅行先の出国ゲートで捕まる場合があります。センザンコウ参考：Evidence of declines in sharks fin demand China,2014, WILDAID http://wildaid.org/sites/default/files/resources/SharkReport_Evidence%20of%2 0Declines%20in%20Shark%20Fin%20Demand_China.pdf 認定特定非営利活動法人野生生物保全論研究会 ( JWCS) 武蔵野市特定非営利活動法人補助金交付事業税関で密輸が発覚する品物で多いのが野生動物を使った伝統薬です。トラの骨、サイの角、クマの胆嚢などが含まれた伝統薬が高価に取引され、絶滅のおそれのある動物を密猟する原因になっています。このほかにヘビの皮を使った楽器、は虫類の革を使った財布やバッグ、絶滅のおそれのあるアロエを使った化粧品などが多く税関で差し止められています。これらは違法とは知らずに、海外旅行のお土産として日本に持ち込んでしまう場合がありますので、注意が必要です。参考：税関ホームページワシントン条約 http://www.customs.go.jp/mizugiwa/washington/washington.htm 〒180-0022 東京都武蔵野市境 1−11−19−102 Tel＆Fax: 0422-54-4885 URL: http://www.jwcs.org Twitter: JWCSJWCS 2015.10 デザイン・土肥優子 Ⓒ JWCS