ITIC 2014 - 2015 グローバル・サーバー・ ハードウェアおよび サーバー

INFORMATION TECHNOLOGY
INTELLIGENCE CONSULTING
ITIC 2014 - 2015 グローバル・サーバー・
ハードウェアおよび
サーバー OS 信頼性レポート
2014 年 5 月
© Copyright 2014, Information Technology Intelligence Consulting (ITIC) Corp. All rights reserved.
本書に引用されている製品および社名は各企業または商標権保持者の商標または登録商標です。
概要
IBM サーバーは 6 年連続で最も信頼性が高く、Cisco UCS が躍進、HP の信頼性
は改善し、x86 サーバーの信頼性は Intel Xeon Processor E7 v2 チップにより飛
躍的に向上
14 種類のサーバーと 11 種類のサーバー・ハードウェア仮想化プラットフォームを比較した結果、
最も信頼性が高く、アップタイム (連続稼働時間) が長いと評価されたハードウェアは、6 年連続
で IBM サーバーでした。サーバー・ハードウェア当たりの計画外ダウンタイム 5.25 分に相当す
る 99.999% の可用性を達成した IBM サーバーは過半数の 58%。対する HP サーバーは 46%、
Oracle サーバーは 40% でした (資料 1 参照)。
これは 2014 グローバル・サーバー・ハードウェアおよびサーバー OS 信頼性調査の最新結果
です。調査は 2014 年 3 月から 4 月にかけて、独立機関の ITIC により世界各国 600 社を超え
る組織の経営陣および IT 管理者を対象に実施されました。ITIC による 6 回目の年次グロー
バル・サーバー・ハードウェアおよびサーバー OS 信頼性調査の結果から、サーバー・ハード
ウェアとサーバー OS 固有の (本来的に備わる) 信頼性がさらに進化していることがわかりまし
た。一方で、外部要因により信頼性が大きく左右されることも確認されました。
特に際立ったのが、対象者の 44% が信頼性に対する最も大きな脅威として「人為的ミス」と挙
げていることです (資料 2 参照)。このほかの主な要因としては、サーバー OS のバグや不備、
IT 部門の人員不足と過重労働、ハードウェアの老朽化により現行の高度な物理および仮想
ワークロードに対応できないことが挙げられます。サーバー・ハードウェアの不安定さが信頼性
を弱めているという回答は 18% でした。
代表的なハードウェア・プラットフォームの中で、4 時間を超える計画外停止が 0% だったのは
IBM System z Enterprise ハイエンド・エンタープライズ・メインフレーム・クラス・サーバーだけで
した。一方、Dell と HP は共に高い顧客満足度を獲得していますが、4 時間を超える計画外ダ
ウンタイムの発生率は Dell PowerEdge と HP ProLiant が最大でした。具体的には、Dell
PowerEdge システムが約 13%、HP ProLiant が 10% でした。もっとも HP サーバーについては、
全体的な信頼性が 2013 ITIC 調査と比べて 7% 改善しています。HP ハードウェアの可用性は
競合する Oracle サーバーより高く、Oracle サーバーは前年並みまたは若干下回りました。
Cisco Systems, Inc. の Cisco Unified Computing System (UCS) サーバーは今回の ITIC 信頼
性調査ではじめて調査対象となりましたが、(一部のカテゴリーで) HP と同等または上回るアッ
プタイムを実現し、IBM サーバーに次ぐ高信頼性サーバーの地位に躍進しました。調査対象
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者の半数 (50%) が、Cisco UCS サーバーの可用性は年間 99.999% を達成していると回答して
います。
また、22 nm テクノロジーに基づく最新の Intel 製 Xeon Processor E7 v2 チップ・ファミリーを使
用すると、超高負荷のワークロードにも対応でき、新型 x86 ベース・サーバーのパフォーマンス
と信頼性が飛躍的に向上することもわかりました。このほか、以下の調査結果が得られました。
•
•
•
•
基幹業務用ハードウェア、OS、主な業務用 (LOB) アプリケーションについては、
2012-2013 年調査の 67% を上回る 79% の企業が 99.99% 以上のアップタイムが必
須であると回答しています。
Cisco、IBM、Apple、HP は、(この順序で) 高い顧客満足度評価 (製品の機能、信頼
性、サービス、サポートについて) を獲得しました。
約 31% の企業はハードウェアのフェイルオーバーも冗長性対策も行っていません。
また、12% はハードウェア障害発生率の記録もしていません。
セキュリティーの問題がシステムとネットワークの全体的な信頼性に悪影響を及ぼす
と回答した人が 46%、セキュリティーはアップタイムには影響しないと回答した人が
32% でした。
資料 1. 可用性が最も高かった IBM ハードウェア
2014 年は IBM ハードウェアが 99.999% 比率、総合アップタイム、
可用性比較のトップ、HP の信頼性は改善
58%
46%
50%
49%
40%
99.999%
40%
99.99%
99.9%
10%
5%
HP
2%
IBM
Oracle
Copyright © 2012 ITIC All Rights Reserved
出典: ITIC 2014
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はじめに
この調査では、主要なサーバー・プラットフォーム 14 種類とサーバー OS ディストリビューション
18 種類、サーバー・ハードウェア仮想化レイヤー 11 種類を比較しています。さらに、サーバー
とオペレーティング・システムに固有の信頼性に正または負の影響を及ぼす基本的要因につ
いて調べました。システムの計画および計画外のダウンタイムに大きな影響を及ぼす外部要因
についても徹底的に調査しています。
本レポートでは、以下の主要な指標に基づきシステム固有の信頼性を定量化・定性化しました。
•
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•
•
•
自動および手動によるパッチ管理
Tier 1、Tier 2、Tier 3 ヘルプデスク要請と停止時間の割合
サーバーおよびサーバー OS 固有の信頼性
定期的システム保守、アップグレード、パッチ適用のための計画停止によるシステム利
用不可
セキュリティー上の不備や脆弱性が発生した場合に、何時間で危険を回避するための
パッチを適用できるかなど、セキュリティー問題による影響の大きさ
仮想化その他の高い計算処理能力を必要とするワークロードへの対応に、サーバーの
不適切な構成や規模設定が及ぼす影響
サーバー仮想化の信頼性
ベンダーのテクニカル・サービスとサポート、関係資料の有無
人為的ミス
IT スタッフの過重労働と人員不足
サーバー・ハードウェアの老朽化による信頼性への影響
統合と相互運用性の問題
本レポートでは、さまざまなサーバー・ハードウェア、サーバー OS、仮想化プラットフォームの
信頼性を比較し、アップタイムの動向を追跡するため、過去の ITIC 調査で収集したデータも利
用しています。調査結果は、適切な情報に基づき、各企業の事業内容と予算に応じて購入、
管理、アップグレード判断を行うための極めて重要な信頼性指標となります。
データと分析
1990 年代半ば頃は、サーバー当たりのダウンタイム約 88 時間に相当する、アップタイム 99%
でも許容されていました。しかし、「常時稼働中」のネットワークが当たり前となった今日では、
99% どころか 99.9% の可用性であっても、とうてい許容されません。昨今は企業のみならず、
エンドユーザー、顧客、取引先、供給業者までも、いつどこからでもデータ・リソースにアクセス
できる 24 時間無休の環境を当然に期待します。最新の ITIC 信頼性調査結果によると、主な
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業務用 (LOB) サーバーの信頼性ついて最低限の許容レベルを 99.99 % 以上とした回答者は、
昨年調査の 67% に対して、今年は全体の 3 分の 2 を超える 74% に達しました。
アップタイムの許容指標は、サーバー当たりの年間ダウンタイム 8.76 時間、4.38 時間、52.56
分に各々相当する 99.9%、99.95%、99.99% でした (表 1 参照)。また最新の ITIC 調査により、
600 社を超える対象企業の 25% が 99.999% レベルの非常に高い信頼性を必要としていること、
つまり、サーバー当たりの計画外ダウンタイムを年間わずか 5.25 分に抑えなければならないこ
とも明らかになりました。99.999% の信頼性を必要とする企業が 11% だった昨年より倍以上増
加しています。さらに 5% の企業は、ダウンタイム数秒に相当する 99.999% を超える信頼性が
必要だと回答しています。
表 1: 信頼性 / アップタイム対照表
可用性 %
年間のダウンタイム
90%
36.5 日
95%
18.25 日
97%
10.96 日
98%
7.30 日
99%
3.65 日
99.5%
1.83 日
99.8%
17.52 時間
99.9%
8.76 時間
99.95%
4.38 時間
99.99%
52.56 分
99.999%
5.26 分
99.9999%
31.5 秒
99.99999%
3.15 秒
月間のダウンタイム*
72 時間
36 時間
21.6 時間
14.4 時間
7.20 時間
3.60 時間
86.23 分
43.8 分
21.56 分
4.32 分
25.9 秒
2.59 秒
0.259 秒
週間のダウンタイム
16.8 時間
8.4 時間
5.04 時間
3.36 時間
1.68 時間
50.4 分
20.16 分
10.1 分
5.04 分
1.01 分
6.05 秒
0.605 秒
0.0605 秒
ITIC ではサーバーのシステム停止について、Tier 1、Tier 2、Tier 3 を以下のように定義してい
ます。
•
Tier 1: 軽度であるものの、発生すると煩わしい停止を指します。通常このようなインシデント
は、ネットワーク管理者が対処することで 30 分未満でユーザーへの直接的影響を解決でき
ます。Tier 1 インシデントは通常サーバーの再起動 (ローカルまたはリモート) により解決で
き、データの消失を伴うことはほとんどありません。Tier 1 停止には、誤ってサーバーの電源
コードを抜いたり、ごく短時間の簡単なアップデートを適用したケースが含まれます。
•
Tier 2:サーバーが 1 ~ 4 時間停止する中度のインシデントを指します。Tier 2 の問題を解
決するには、複数のネットワーク管理者の関与が必要となる場合があります。ほとんどの場
合、社内エンドユーザーのネットワーク作業を中断させる必要があり、停止したエクストラ
ネット上のデータにアクセスしようとした取引先、顧客、供給業者にも影響する場合がありま
す。データが消失する可能性があり、何らかの修復が必要になります。
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•
Tier 3:最も深刻な重度のインシデントです。サービス利用不可の期間、システムを利用す
る企業の関連ユーザーと IT 部門による修復にかかる時間が 4 時間を超える停止が Tier 3
となります。Tier 3 停止では、ほぼ例外なく複数のネットワーク管理者が問題の解決に当た
る必要があります。データが消失し、システムが損傷する可能性が高いと考えられます。
Tier 3 停止の長期化が恐ろしいのは、営業機会の損失と信用の失墜につながることです。
Tier 3 停止は作業用重機で電源コードを切断するなど人為的に発生する場合も、長時間
の停電、台風や洪水などの自然災害により発生する場合もあります。さらに、外部からのセ
キュリティー侵害 / ハッキング、IT 部門がベンダーから必要なテクニカル・サポートを受けら
れない場合、軽度の停止でも修復できない場合にも Tier 3 停止となります。
ダウンタイムは程度に関わらず事業運営を妨げます。たとえ数分間でも計画外のサービス停止
が生じると、瞬く間にネットワーク運用が中断され、エンドユーザーの生産性が低下し、事業に
悪影響を及ぼします。1 ~ 4 時間の Tier 2 停止、または 4 時間以上の深刻な Tier 3 停止が発
生すると、重大な営業機会の損失、信用の失墜、訴訟リスクを招く恐れがあります。金融機関、
証券取引所、保険、医薬、法務など、膨大なデータ処理を基幹業務とする業界では、15 分、10
分でも、わずか 5 分のサービス中断であっても、何億円もの損失が発生する可能性があります。
ピーク時や極めて重要な取引の実行時にシステム停止が発生したとしたら、その影響は計り知
れません。小規模事業者 (SMB) や中堅・中小企業 (SME) もまた脆弱性があり、大企業と同様
にリスク回避が重要です。SMB と SME は人材、リソース、資金にあまり余裕がないことが多い
ため、中度の Tier 2 や重度の Tier 3 停止に対する耐久力がない可能性があります。最悪の場
合、事業を継続できなくなることもあるでしょう。
テクノロジーの進歩、人為的ミス、アップグレード・サイクルの遅れ
繰り返しになりますが、ITIC の調査結果は、14 種類の主要なサーバー・ハードウェアと 18 種
類のサーバー OS のほぼすべてについて、全般的に固有の信頼性とアップタイムが年々向上
していることを示しています。同時に 2014 年 ITIC 信頼性調査では、さまざまな外部要因がシ
ステムのダウンタイムと総合的な可用性に直接影響しているケースが多いこともわかりました。
下の資料 2 に示すように、人為的ミス、IT 部門の過重労働と人員不足、仮想化、クラウドの拡
張、BYOD などの複雑な新しいテクノロジーを拙速に基幹システムで採用したことなどが例とし
て挙げられます。
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資料 2 「人為的ミス」をダウンタイム要因のトップに挙げた企業が 4 割、「OS の不備」を上回る
2014 年サーバー HW と OS プラットフォームの信頼性とダウンタイムに
最も悪影響を及ぼしたと考えれる問題は何か (該当するものすべてを選択)
44%
人為的ミス
OSサーバー OS のバグ / 不備
33%
IT 部門の人員不足 / 過重労働
30%
サーバー・ハードウェアの老朽化 / 性能不足
22%
18%
不安定なサーバー・ハードウェア
サーバー OS の老朽化により新機能を実行できない
16%
15%
統合と相互運用性の問題
15%
ベンダーによるパッチの提供が遅すぎる
14%
資料不足
14%
セキュリティー上の不備
BYOD
13%
不明 (記録していない)
12%
10%
構成が複雑すぎる
9%
ベンダーの技術サポートが不十分
IT 管理者が研修を受けていない
8%
8%
重要なアプリケーションのサポートがない
7%
その他
モバイル
2%
注: 2014 年調査では、「人為的ミス」
が 2013 年の「サーバー OS のバグ /
不備」を上回り、信頼性を損なう要因
の 1 位になりました。
3 位は「IT 部門の人員不足 / 過重労
働」となり、「不安定なサーバー・ハード
ウェア」を上回りました。
Copyright © 2012 ITIC All Rights Reserved
出典: ITIC 2014
サーバー・ハードウェアについては、企業が意図的にサーバーを 4 年、5 年、場合によっては
6 年以上もアップグレードなしで使い続けていれば、計画外の停止が急増することは言うまでも
ありません。ベンダーのテクニカル・サービスとサポート、必要な資料をすぐ参照できること、既
知の問題点とセキュリティーの脆弱性のフィックス / パッチも、システム停止を回避するには不
可欠であり、さもなければ問題が悪化または長期間に及ぶ可能性があります。
重要な信頼性の傾向
数々の重要な調査結果の中でも、特に注目すべき点を以下に示します。
•
基幹業務用ハードウェア、オペレーティング・システム、主要な業務用 (LOB) アプリケー
ションについては、2012-2013 年調査の 67% を上回る 79% の企業が最低でも 99.99%
以上のアップタイムが必須であると回答しています。
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•
2013 年の 26% を上回る約 28% の企業が手動でのパッチの適用に 1 時間以上費やし
ていますが、最大だった 2011 年の 40% からは大きく下がっています。
•
4 分の 3 を超える 77% の IBM AIX ユーザーと 69% HP UX ユーザーがサーバー
OS の再起動は、計画的再起動、システム・リソースの追加や再構成を含めても「まった
くない」または「ほとんどない」と回答しています。これに対して、計画的保守作業でサー
バーを再起動する必要性が「ほとんどない」または「まったくない」と回答した Oracle
Solaris ユーザーは半数割れの 49%、Windows Server ユーザーは 45% でした。
•
サーバー OS の信頼性:サーバー OS については、OS 固有の不備に由来する計画外
の停止時間が少ない順に、IBM AIX v 7.1、Red Hat Enterprise Linux 6、HP UX、SUSE
Linux Enterprise 11、Ubuntu v 12.04、Windows Server 2012 R2 という結果となりました。
最も信頼性が高い IBM AIX v 7.1 を Power Systems で実行した場合、サーバー当たり
の年間平均ダウンタイムは約 8 分で、Tier 1、Tier 2、Tier 3 停止による総合的ダウンタ
イムが最小となりました。IBM に肉薄する 2 位が Canonical Ltd の Ubuntu v 12.04 で、
カスタマイズして実装する方法が主流になってきています。サーバーの年間ダウンタイ
ムは平均 12 分でした。その次は Red Hat Enterprise Linux 6.5 (IBM Power Systems 版
もあります)と Microsoft Windows Server 2012 R2 が、計画外年間ダウンタイム 12.5 分で
並んでいます。トップ 5 の最後は SUSE Linux Enterprise 11 (IBM Power Systems 版も
あります) で、計画外サーバー OS のダウンタイムが 13 分弱でした。
•
約 3 分の 1、26%の企業がハードウェアのフェイルオーバーも冗長性対策も行っていま
せん。また、12% はハードウェア障害発生率の記録もしていません。
•
約 45% がサーバー・ハードウェア内蔵の冗長性機能のみを使用して、高可用性およ
びフェイルオーバーの保護対策としています。
•
過半数の 51% が、主な業務用 (LOB) サーバーの導入から 2 ~ 4 年経過していると回
答しています。このうち 30% は LOB サーバーの導入から 2 ~ 3 年、21% は 3 ~ 4 年
経過しています。サーバー導入から 4 年、5 年、さらには 5 年以上経過しているという回
答も 21% ありました。
•
顧客満足度:製品、サービス、サポートの点で顧客から高く評価されたのが、Dell (75%)、
IBM (73%)、Cisco (70%) です。Oracle の顧客満足度は今回も最下位でした。テクニカ
ル・サービスとサポートについては、「極めて良好」または「非常に良好」という評価はわ
ずか 47% でした。ITIC 2013 調査時点からは 2% 改善していますが、3 年連続で
Oracle の顧客満足度が最下位という結果になりました。約 14% のユーザーが Oracle の
テクニカル・サービスとサポートを「不十分」または「やや不十分」と回答しています。
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プロセッサー・テクノロジー
サーバーの良し悪しは構成部品抜きには語れません。メモリーと CPU はどちらの性能が不足
しても性能をフルに発揮することはできません。繰り返しますが、サーバーのアップタイムと可用
性を最大限に高めるには、ベースとなるプロセッサー・テクノロジーもアプリケーションとワーク
ロードに最適な組み合わせとすべく相応の投資が必要です。マイクロプロセッサー市場の 90%
を占めるトップの Intel と AMD (Advanced Micro Devices) は、プロセッサーの技術改善を常に
続けています。
たとえば、最新の Intel Xeon Processor E7 v2 は信頼性の強化を目的として設計されています。
E7 v2 チップは高速インメモリー分析処理に対応し、大量のデータ・セットを管理できる拡張性
と I/O 性能を大幅に加速する機能があります。信頼性仕様の名にふさわしく、最新の Intel
Xeon Processor E7 v2 ファミリーには、プロセッサー、ファームウェア、ソフトウェア層を統合し、
サーバーの連続運用を支える致命的エラー診断、障害阻止、自動回復機能を持つ「Intel Run
Sure テクノロジー」が組み込まれています。また、Xeon Processor E7 v2 チップには、メモリー・
サブシステム内のデータの整合性を強化する「Intel Resilient Memory テクノロジー」も搭載され
ています。
サーバー・ハードウェアとベースとなる Intel および AMD プロセッサーのシナジー効果により、
従来のモデルと比べてパフォーマンスを平均 20% から 30% 向上でき (ワークロードと構成によ
り異なります)、電力の消費量を 15% から 25% 削減できます。部門別や出張所などの小規模
サーバーであれば、デュアルコア・プロセッサーのパフォーマンス、速度、応答時間でも十分か
もしれません。しかし、主力の LOB サーバーで、デジタル音声、動画、高密度ファイル形式の
データを大量に扱うアプリケーションを運用する場合は、まったく不十分でしょう。高度な計算能
力を必要とし、基幹業務に関わるワークロードには、さらに強力で高度な 4 または 8 ソケットの
プロセッサーが必要です。
ITIC が対象者に直接聞き取り調査を行ったところ、特に最近のプロセッサー・テクノロジーに関
連するパフォーマンスと信頼性の向上について、非常に有益な証言が得られました。同様に、
Intel の Xeon E7 および E7 v2 プロセッサー・ファミリーも信頼性、可用性、保守性 (RAS) を目
的に設計され、データ集約型の基幹アプリケーションの実行に適しています。Intel Xeon
Processor E7 ファミリーは 32nm Intel プロセス・テクノロジーを採用しています。このテクノロジー
は、4 または 8 ソケット構成で最大 10 コア、ハードウェア・スレッドは 20 まで拡張できます。Intel
Xeon Processor E7 および E7 v2 製品ラインの基板には RAS 機能セットが全面的に用いられ、
すべてのプロセッサー、メモリー、I/O データ・パスでエラーの検出、修復、阻止、回復が可能と
なっています。こうした機能すべてが組み合わさることで信頼性が強化され、ガイド機能によりシ
ステム停止の可能性を事前に察知し、未然に防ぐことができます。数年来 Intel は Xeon
processor E7 RAS 機能セットの拡張を続けてきました。Intel の説明によると、RAS は「ハード
ウェアとソフトウェアのベンダーが、基板からアプリケーション展開、サービスに至るまで、全面
的な信頼性を実現できる高レベルの RAS 層を構築するための」堅牢なプラットフォームとなりま
す。Intel Xeon Processor E7 および E7 v2 製品は、連続自己モニタリング、自己修復機能を持
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ちます。自己修復機能では、既知のエラーについて能動的および受動的な修復が可能で、将
来のエラー発生を抑えることができます。
高度なワークロードに対応し、信頼性を最大限に高めるには、サーバーの適切な更新または
アップグレードが推奨されます。
信頼性に関わる現実の状況
最新の ITIC 調査結果では、ハードウェア・テクノロジーよりも人為的要因の方が信頼性に (特
に悪い意味で) 大きな影響を及ぼしていることを明確に示しています。調査結果によると、シス
テムの信頼性が低下する主な要因として、サーバー・ハードウェアの老朽化または性能不足と
並び、構成と管理に関連する人為的ミス、IT 部門の過重労働や人員不足、IT 管理者のスキル
不足が指摘されています。
4 時間を超えるダウンタイムの比率が最も高かったのが Dell PowerEdge Server の 13% で、HP
ProLiant システムが 10% でした。計画外ダウンタイムが 4 時間を超えるというのは、文字通りに
読むとショッキングな数値です。しかし、調査結果を詳細に分析すると、4 時間を超える計画外
のダウンタイムは Dell PowerEdge と HP ProLiant サーバーに固有の信頼性もしくは不安定さが
原因というよりも、エンドユーザーの行動パターンが大きく影響していることがわかりました。Dell
ユーザーの約 60% と HP ProLiant ユーザーの 53% がサーバーのアップグレードも補強もせず、
計算集約型ワークロードに合わせた適正サイズへの拡張もしないまま、4 年、5 年、6 年、さらに
はそれ以上も使い続けていると回答しています。対照的に、アップグレードも補強もせず 4 年
以上サーバーを使い続けている IBM System x または IBM Power Systems ユーザーは 21%
のみ、Cisco UCS ユーザーは 26% に過ぎません。技術力で見ると、旧 Sun Microsystems プ
ラットフォーム、現在の Oracle x86 と Oracle SPARC サーバーで、年間計画外ダウンタイムが 4
時間を超えたのはサーバー当たり各々わずか 6% と 4% です。しかし、55% のユーザーがアッ
プグレードをせずに 4 年、5 年、6 年と Oracle サーバーを使い続けているというのが現実です。
IBM System z Enterprise や HP Integrity といったハイエンドのエンタープライズ・システムは、こ
れとはまったく別クラスのサーバーです。強力かつ堅牢なハイエンドのシステムは、通常技術力
の高い管理者によって詳細に管理および保守されています。
サーバー・ハードウェアを 4 年以上、容量の限界まで使い続けるには、ベンダーから最高レベ
ルのテクニカル・サービスとサポートを受けなければ難しいと考えられます。問題にすばやく対
応し、代替パーツをすぐに準備でき、必要な資料をすぐに参照でき、既知の問題やセキュリ
ティーの脆弱性のフィックス / パッチをすぐに適用できれば、システム停止を抑えることができる
でしょうが、そうでなければ問題の悪化と停止時間の長期化は避けられません。
信頼性では後塵を拝する Dell が常に高い顧客満足度を獲得しているのは、最高レベルのテク
ニカル・サポートのおかげとも言えます。また、Dell がテクニカル・サービスとサポート部隊を米
国内に戻したことも大いに貢献しています。ITIC の自由記述欄には、Dell と Oracle のユー
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ザーの多くが、サーバーのクラッシュは、現在のワークロードには非力の旧式サーバーを使っ
ていた自分たちに責任がある、というコメントを残しています。ベンダーが提供する最高レベル
のテクニカル・サービスとサポートにより、信頼性が大幅に向上し、システムの可用性が高まると
考えられます。テクニカル・サービスとサポートは、良くも悪くも他社との差がつきやすいと言え
ます。顧客サイトで問題が生じたときにベンダーがどれだけ迅速、効率的、かつ効果的に対応
できるかが、固定客の獲得、アップグレードや新しい装置とソフトウェアの購入、特定製品の導
入拡大、サービス契約更新の決め手となります。
IBM の非常に堅牢な信頼性
ITIC がグローバル・サーバー・ハードウェアおよびサーバー OS 信頼性調査を開始して以来、
大企業ユーザーが IBM ハードウェアの信頼性に 6 年連続で最高評価を与えたことは、技術
的卓越とハードウェア・プラットフォームの堅牢性を裏付けています。IBM の非常に堅牢な信頼
性は、過去 6 年間の一貫性の高いテクニカル・サービス、サポート、セキュリティー、顧客対応と、
企業としての総合的な安定性も反映しています。これとは対照的に、競合他社は経営上の問
題が生じたり (HP)、M&A による移行により (Oracle の Sun Microsystems 買収) 安定性を欠い
ていました。
IBM ハードウェアは、信頼性、安定性、パフォーマンス、顧客満足度でクラス最高位を維持して
います。しかし、これは偶然ではありません。IBM は常に包括的な製品のロードマップと戦略を
明確に示し、策定し、実行してきました。S&P Capital IQ によると、IBM は研究開発 (R&D) 支
出で (Cisco Systems、Intel、Microsoft と共に) 常にトップ 10 入りを維持しています。2013 年の
IBM の R&D 支出は 62 億ドル。30 億ドルを支出したライバル HP の 2 倍以上、50 億ドルを支
出した Oracle よりも 19% 上回ります。IBM は顧客満足度でも非常に高いレベルを維持してい
ます。
セミコンダクター分野では、Intel の R&D 支出が突出しています。2013 年の Intel の R&D 支
出は過去最大の 106 億ドルに達しました。Intel の R&D 支出は、34 億ドル支出した最大のライ
バル Qualcomm、28 億ドル支出した Samsung の 3 倍を超えています。
Intel の R&D 投資のかなりの部分が、最新のプロセッサー・ファミリー、Intel Xeon Processor E7
v2 の信頼性の改善に向けられています。E7 v2 チップは高速インメモリー分析処理に対応し、
大量のデータ・セットを管理できる拡張性、I/O 性能を大幅に加速する機能があります。信頼性
仕様の名にふさわしく、最新の Intel Xeon Processor E7 v2 ファミリーには、プロセッサー、
ファームウェア、ソフトウェア層を統合し、サーバーの連続運用を支える致命的エラー診断、障
害阻止、自動回復機能を持つ「Intel Run Sure テクノロジー」が組み込まれています。また、
Xeon Processor E7 v2 チップには、メモリー・サブシステム内のデータの整合性を強化する
「Intel Resilient Memory テクノロジー」も搭載されています。
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重要度の高い Tier 2 および Tier 3 の 1 ~ 4 時間またはそれ以上のサーバー停止発生率が最も
低かったのが IBM サーバーでした。IBM System x、System z、Power Systems i & p サーバーは、
1 ~ 4 時間以上のサーバー・ハードウェア当たりの年間ダウンタイムが最低の平均 4% でした。
これに対して、HP サーバーは平均 6%、Oracle サーバーは平均 8% です (資料 3 参照)。
資料 3. 1 ~ 4 時間以上の年間サーバー・ダウンタイム発生率が最も低かった
IBM ハードウェア
2014 年ベンダー・プラットフォーム別 1 ~ 4 時間以上の
年間サーバー・ダウンタイム発生率
8%
6%
4%
IBM
HP
Oracle
注: 1 ~ 4 時間以上の年間サーバー・ダウンタイム発生率は、IBM System x、System z、Power
Systems i & p サーバーの平均 4% が、Oracle xS6、SPARC、HP ProLiant、Integrity サーバーと
比較して最低でした。
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出典: ITIC 2014
また、IBM System x、System z Enterprise、Power Systems i & p サーバーは、1 ~ 40 分と 41 分~
4 時間の年間ダウンタイム発生率でも、十数種類の主要なハードウェア・プラットフォームの中で最
低でした。なお、ハードウェア固有の不備に起因する計画外のダウンタイムが 0% だった主力サー
バー製品は IBM System z Enterprise システムだけでした (資料 4 参照)。
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資料 4. 1 ~ 4 時間以内の年間サーバー・ダウンタイム発生率が最も低かった
IBM System z Enterprise
各サーバー・プラットフォームで、過去 12 か月間に発生した
4 時間以内の計画外ダウンタイム (2014)
40 分以下
Dell PowerEdge Servers
41 分 ~ 4 時間
63%
HP ProLiant Servers
24%
76%
HP Integrity
84%
IBM System x
14%
13%
94%
IBM System z
5%
98%
IBM Power System i, p
2%
94%
Oracle x86
77%
5%
15%
Oracle SPARC
84%
13%
Cisco UCS
86%
11%
Toshiba Magnia
81%
Fujitsu Primergy
79%
Fujitsu Primequest
82%
Fujitsu SPARC
86%
16%
19%
15%
10%
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出典: ITIC 2014
調査結果によると、IBM System x、IBM Power Systems i & p サーバーは、4 時間を超える長
時間の年間ダウンタイム発生率がサーバー当たり わずか 1%、x86 ベースのハードウェア・プ
ラットフォームの中で最低でした (資料 5 参照)。一方、Dell PowerEdge x86 の 4 時間を超える
年間ダウンタイム発生率は 13%、HP ProLiant システム は 10% でした。対象者からの聞き取り
とコメントによると、旧型 Dell PowerEdge の割合は 60%、旧型 HP ProLiant の割合は 53% に上
り、Dell PowerEdge と HP ProLiant のシステム停止の多くは、4 年以上アップグレードも交換も
せずに旧型システムを使用し続けていることが原因と考えられます。
さらに詳細に研究を進めると、Dell PowerEdge と HP ProLiant はいずれも 2 ~ 3 年までであれ
ば、4 時間を超えるダウンタイムの発生率が 3% と大幅に低く、信頼性が高いことがわかりまし
た。
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資料 5. x86 サーバーの中で 4 時間を超える長時間の計画外年間ダウンタイム発生率
が最も低い IBM System x サーバー
各サーバー・プラットフォームで過去 12 か月間に4時間以上の
計画外ダウンタイムが発生(2014)
Dell PowerEdge x86…
13%
HP ProLiant Servers
10%
Oracle x86
6%
Oracle SPARC
4%
Fujitsu SPARC
4%
Toshiba Magnia
3%
Fujitsu Primequest
3%
HP Integrity
3%
Cisco UCS
2%
Fujitsu Primergy
2%
IBM Power System i, p
1%
IBM System x ***
1%
IBM System z
0%
注: 2014 年 1月、IBM は System x86 サーバー・
ハードウェアを Lenovo に営業譲渡すると発表しました。
2014 年中に売却完了予定です。
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Cisco UCS が躍進、HP の信頼性は改善
Cisco UCS サーバーの信頼性も非常に高く、86% が年間ダウンタイムが 40 分以下だったと回
答しています。また、Cisco UCS は顧客満足度も高く、「極めて良好」または「非常に良好」と回
答したユーザーが 70% にのぼります。
数年来、周知の深刻な経営上の問題に見舞われていた HP は、ようやく改善の傾向が見えて
きました。2013 年 ITIC 信頼性調査では、パーツの交換に時間がかかり過ぎる、サポートに連
絡してもその場では問題を解決できない、といったユーザーの不満の声が聞かれました。しか
し今年の HP 製品の機能、テクニカル・サービスとサポートの顧客満足度評価では、「極めて良
好」または「非常に良好」と回答したユーザーが 65%、「良好」が 23% だったのに対して、「不十
分」または「やや不十分」という回答はわずか 3% でした。
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サーバー仮想化の信頼性
主要なテクノロジーの中でも、特に仮想化はネットワークの信頼性に極めて大きな影響を及ぼ
します。今では中規模から大規模の企業のうち 3 分の 2 という大多数が、主力の基幹アプリ
ケーションとワークロードで仮想サーバーを利用しています。Windows Server 2008 R2 HyperV を搭載した IBM Power VM、Cisco UCS、Dell サーバーが最も信頼性の高いハードウェア仮
想化プラットフォームのトップ 3 です (資料 5 参照)。VMware は仮想化市場のリーダーですが、
1 ~ 10 分のサーバー当たり計画外年間ダウンタイム割合を見ると、VMware vSphere は中順位
の 54% で、HP UX Virtualization Continuum の 52% を上回る程度でした。1 ~ 10 分のサー
バー当たり計画外年間ダウンタイム割合で予想外だったのは、VMware を搭載した Dell
Virtualization システムが 54% なのに対して、Microsoft Hyper-V を搭載した Dell
Virtualization システムが 60% だったことです。
資料 6. 仮想化システムで高い信頼性を示した IBM Power VM、Cisco UCS、Dell
過去 12 か月にサーバー・ハードウェアの仮想化層で発生したダウンタイム
(該当するものすべてを選択)
Cisco UCS
62%
23%
7% 4% 4%
Stratus ftServer
61%
25%
11% 2%
1%
VMware/vSphere
Oracle VM Server for SPARC
Oracle VM Server for x86
54%
49%
HP ProLiant iVirtualization
Dell virtualization w/Windows
Server 2008 Hyper-V
Dell virtualization w/VMware
Windows Server 2012 Hyper-V
1 ~ 10 分
11 ~ 20 分
17%
17%
52%
IBM Power VM
HP UX Virtualization
Continuum
23%
20%
25%
63%
52%
42%
20%
25%
18%
1 ~ 2 時間
2 ~ 4 時間
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15
16%
15%
2%3%
6%3%5%
13%
24%
51%
31 ~ 50 分
18%
24%
54%
1%
3%
10% 2%3%
26%
60%
2%4% 8%
19%
24%
3%3%
4%2%
3% 3%
8% 4% 4%
4 時間超
Apple、Microsoft、高度にカスタマイズされた Linux OS 環境では、
現在も計画停止が問題となる
IT 部門が OS をオフラインにしてアップグレード、パッチの適用などの保守作業を行う計画停
止は、OS によっては今でも問題となります。OS 固有の不安定さが原因でオフラインになるわけ
ではありませんが、利用できないことには変わりなく、ネットワーク運用が中断され、ユーザーの
生産性に支障が生じます (資料 6 参照)。定期的アップグレードや保守作業を行うための計画
再起動を含む、サーバー OS を再起動する頻度の質問は、さまざまな OS の組み込み管理機
能の有無と OS がオフラインで利用不可となる時間に注目した質問です。
この点でも、際だつ優位性を示したのが IBM の AIX OS です。システム・リソースの追加や再
構成のための計画再起動を含めて、サーバー OS の再起動にかかる時間は IBM サーバーが
最小でした。サーバーの再起動が「ほとんどまたはまったくない」と回答した HP 管理者が 69%、
Oracle 管理者が 49%、Windows 管理者が 45% だったのに対して、IBM 管理者は 4 分の 3 を
超える 77% にのぼりました。Windows Server 2008/2008 R2 と Windows Server 2012/ 2012R2
サーバーの再起動時間が最も長く、15% が システム・リソースの追加または再構成のために、
Windows OS を毎週または毎日再起動していると回答しました。もっとも、ITIC 2013 信頼性調
査で Windows を毎週または毎日再起動していると回答した 24% に比べると改善しています。
パッチの適用やシステム・リソースの再構成のたびに Windows サーバーをオフラインにしなけ
ればならないことは、企業ユーザーにとって大きな弱点です。
資料 7. パッチの適用やアップグレードのための計画 OS 停止は今もネットワーク運用
の中断要因
2014 年エンタープライズ・サーバー OS の
計画ダウンタイム / システム利用不可の比較 (月間時間数)
IBM AIX
Red Hat Enterprise Linux
HP UX
0.09
0.18
注 ITIC は、パッチの適用、アッ
プグレード、定期的保守を含む
あらゆる作業を計画ダウンタイ
ムと定義しています。
サーバー OS のダウンタイムに
より業務が中断され、サーバー
自体もオフラインとなる場合が
あります。
0.39
SUSE Linux Enterprise
0.44
Ubuntu
0.55
Windows Server 2012
0.76
Oracle Solaris
1.26
Windows Server 2008
1.27
Apple Mac OS 10.7
1.28
Debian
1.54
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結論と推奨事項
ITIC 2014 - 2015 グローバル・サーバー・ハードウェアおよびサーバー OS 信頼性調査では、
すべてのサーバー OS プラットフォームが高い信頼性を持つという結果が得られました。 その
中でも特に信頼性の高いサーバー OS のトップ 4 は、IBM AIX 7.1 OS、Ubuntu 12.04、HP UX
11i v3、Red Hat Enterprise Linux v 6.5 でした。サーバー・ハードウェアの信頼性も同様に年々
向上しています。各社の主力システム固有の信頼性の高さは、IBM Power Systems i & p サー
バー、HP Integrity、Fujitsu Primergy、Fujitsu SPARC の順でした。
サーバー・ハードウェアとサーバー OS プラットフォームについては、信頼性と安定性に自信を
持てる製品を使用する必要があります。この点、ITIC 2014 -2015 グローバル・サーバー・ハード
ウェアおよびサーバー OS 信頼性調査ではテクノロジーの進歩が明確となり、安心できる結果
が得られました。但し、確かに先進テクノロジーは信頼性の向上に不可欠ではありますが、それ
がすべてではありません。
ベンダーには、信頼性の高い製品を提供するだけでなく、最高レベルのテクニカル・サービスと
サポートの提供も求められます。一方、自社の IT 部門に適切な人員を配置し、必要なトレーニ
ングを実施して IT 管理者を認定するのは顧客企業の責任となります。最大限のアップタイムを
実現するには、サーバー・ハードウェアを適切にアップグレードし、更新を怠らず、高度のデー
タ集約型ワークロードにも、物理、仮想、クラウド環境にも対応できるようにする必要があります。
システム統合、相互運用性、パッチ管理、資料の文書化も非常に重要です。サーバーの構成
が今現在のタスクと要件にも不足しているとしたら、業績への悪影響は避けられないでしょう。
自社のサービス・レベル・アグリーメント (SLA) を監視し、求められる信頼性レベルを常に維持
する必要があります。基準に達していなければ、その原因を突きとめ、必要な改善措置を取りま
す。
信頼性は組織にとって最も重要な指標の 1 つです。組織のエンドユーザーや外部顧客に関わ
るため、信頼性が向上すれば技術および事業上のリスクが低減し、逆に信頼性が低下すれば
リスクが高くなります。サービス・レベル・アグリーメント (SLA) を維持できるかどうかは、サー
バーの信頼性、アップタイム、管理性によって決まるため、これらの項目が、どのサーバー OS
プラットフォームまたは各コンポーネントの組み合わせが最も適しているかを判断するための重
要な指標として使用されます。
ビジネス継続性を維持し、エンドユーザーの生産性を高めるには、サーバー・ハードウェアと
サーバー OS の信頼性とアップタイムの最大化が必須です。現在では 74% の企業が 99.99%
のアップタイムを必須と回答しています。システムの正常な稼働を維持するため、必要なパッチ、
アップデート、セキュリティー・フィックスを随時適用し、サーバー・ハードウェアとサーバー OS
を適宜交換、改造、更新することが求められます。一方、最適なパフォーマンスを実現するため
の現実的な推奨構成を提示するのは、サーバー・ハードウェアとサーバー OS ベンダーの責務
です。ベンダーの責務としては、パフォーマンスに影響する可能性のある既知の不適合があれ
ば全力を尽くしてパッチ、フィックス、アップデートをタイムリーに提供し、顧客に通知することも
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重要です。また、交換パーツの提供に問題または遅延が生じる場合には、顧客に誠実に報告
する必要があります。
時間は貴重です。わずか数分のダウンタイムであっても、多額のコストが発生し、社内の業務を
急停止させる可能性があります。ダウンタイムにより、顧客、供給業者、取引先との関係が悪く
なることもあります。信頼性が欠如により信用をなくし、営業機会を失うことさえあります。
提言
主要な LOB サーバー・ハードウェア、サーバー OS、アプリケーションのアップタイムと信頼性を
計測することを強く推奨します。具体的なアップタイムと信頼性の統計値を認識することで、
個々のプラットフォームの基準が明らかになります。ハードウェアとソフトウェアに固有の信頼性
や不備を正確に査定するのにも役立ちます。そうすることで、統合と相互運用性、パッチや
フィックスの欠如、ISP や通信事業者に関連する問題、自然災害や人為的災害を原因とする不
可抗力のシステム停止といったその他の問題に起因するダウンタイムを切り分け、比較検討す
ることができます。
その結果、ダウンタイムの総量と、ダウンタイムの発生による事業部門、IT 部門、エンドユー
ザーの生産性への影響を正確に査定するメカニズムを策定できます。信頼性を計測するメカニ
ズムは、外部の取引先、顧客、供給業者への影響の計測にも応用できます。
最大限のアップタイムと信頼性を実現するには、以下の方策を推奨します。
•
構成、使用状況、パフォーマンス・レベルを定期的に分析し、検証する:そうすることで、
現在のサーバーとサーバー OS 環境で最大の信頼性を実現できるかどうかを判断でき
ます。
•
アップデート時期を先延ばしせず、迅速にサーバー・ハードウェアの更新とアップグレード
を実施して、より高度なデータ集約型および仮想化ワークロードに対応できるようにする:
サーバー・ハードウェア (スタンドアロン、ブレード、クラスターなど) とサーバー OS は、
表裏一体の関係にあります。どちらも最高のパフォーマンスを実現するには、今現在だ
けでなく将来のワークロードにも対応しうる堅牢なサーバー・ハードウェアが必要です。
年々アプリケーション・サイズが増大し、仮想サーバー数も比率も拡大しています。主な
業務に使用する基幹アプリケーションを稼働し、いくつものインスタンスをホストする仮想
サーバーには、特に堅牢なサーバーが必要です。予算が許す限り最もパワフルなサー
バー構成を選択すべきでしょう。4 年、5 年、6 年とサーバーを更新することなくハード
ウェアを酷使していれば、障害が発生するのも当然です。
•
正式な SLA を採用する:サービス・レベル・アグリーメントを定めることで、許容可能なパ
フォーマンス指標を定義できます。少なくとも年一回はベンダーおよび顧客と共に、条
件に準拠しているか検証してください。
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本書に引用されている製品および社名は各企業または商標権保持者の商標または登録商標です。
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•
方策を確定し、信頼性とパフォーマンスの指標を監視する:コンポーネント、システム、
サーバー・ハードウェア、デスクトップ / サーバー OS、セキュリティー、ネットワーク・イン
フラストラクチャー、ストレージとアプリケーションのパフォーマンスの計測は必須です。
計画ダウンタイムと計画外ダウンタイムの記録を取ってください。
•
サーバーとサーバー OS の信頼性とダウンタイムを定期的に計測する:システム停止と
その原因の正確な記録を残します。重大性と長さに応じて Tier 1、Tier 2、Tier 3 のよう
に分類し、適任の IT 管理者がシステム停止時の復旧対応を詳細に記録します。この詳
細記録には、復旧活動の詳しい説明、問題解決方法の特定、復旧までの時間、そのイ
ンシデントに関わったスタッフ・メンバーを含めます。また、復旧までに要した金銭的コス
ト、経営、運用、エンドユーザーへの物理的な影響も列挙します。このような記録は問題
が再発したときの貴重な資料となります。また、信頼性に関わる問題の阻止または削減
に大きな効果があり、IT 部門、エンドユーザー、顧客の貴重な時間を無駄にしなくて済
みます。
•
計画外ダウンタイムのコストを計算する:重大性の低い Tier 1 停止については平均コスト
を算定しますが、重大性の高い計画外の Tier 2 および Tier 3 インシデントについては、
詳細なコスト査定を行います。問題解決とその影響により生産性を喪失した IT 部門とエ
ンドユーザーの賃金、事業への影響の換算額を把握することが非常に重要です。また、
経営幹部と IT 管理者は、信頼性に関わるインシデントにより企業としての信用が毀損し
ていないか、訴訟問題となっていないか、顧客、取引先、供給業者に影響を及ぼしてい
ないか (どれだけ費用が発生したか) についても注意を払い、営業損失額と営業機会の
損失をできる限り金銭換算して把握する必要があります。
•
ベスト・プラクティス項目を策定する:最高技術責任者 (CTO)、ソフトウェア開発者、エン
ジニア、ネットワーク管理者、部門管理者は、現在使用している製品および今後導入を
検討する製品について、十分に習熟する必要があります。ベンダーが提供するハード
ウェア、ソフトウェア、アプリケーションの互換性対応一覧を確認し、準拠します。
•
IT 管理者の研修と認定を行う: 目先の支出を惜しんで、巨額の損失を被らないように注
意してください。IT 部門全員の認定費用と時間を捻出できなければ、経験のある適任
者をリーダーとして研修を受けさせ、そのリーダーが他の IT スタッフを教育します。
•
定期的に資産管理検査を実施する:必要に応じて、年次、半期、または四半期ごとに資
産管理検査の予定を組みます。これにより、ハードウェアとソフトウェアの対応を維持で
き、ライセンス契約の各種条件に準拠しているかを確認できます。これらはすべてネット
ワークの信頼性を強化する施策です。
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調査方法
ITIC 2014 - 2015 グローバル・サーバー・ハードウェアおよびサーバー OS 信頼性調査は、
2014 年 3 月から 4 月にかけて、独立機関により世界各国の 550 社を超える組織の経営陣お
よび IT 管理者に対して Web 上で実施されました。質問項目には選択方式と自由記述方式
の回答が含まれます。ITIC では客観性を損なわないように、いかなる企業からも資金提供を
受けず、調査対象者には一切謝礼を支払っていません。また、ITIC アナリストは数十人の調
査対象者に直接面談し、Web 調査の検証および否認の確認を行うと共に、体験談の聞き取り
も行いました。体験談からは、企業が直面する短期、長期のさまざまな事業上および技術上
の課題について、広範な深い知見が得られました。ITIC は認証および追跡メカニズムを採用
して改ざんを防止し、同一実体による複数回答を禁止しています。
調査対象者の内訳
あらゆる規模、全業種の企業を調査対象としています。対象企業には、社員数 50 人未満の小
規模事業者 (SMB) から 10 万人以上の大企業まで含まれます。
あらゆる規模のセクターから均等に抽出し、回答者の 33% が社員数 1 人から 100 人の SMB、
30% が社員数 101 人から 1,000 人の中堅・中小企業 (SME)、残りの 37% が社員数 1,001 人
から 10 万人以上の大企業となっています。調査対象業種は 49 にのぼり、回答者の約 84%
が北米企業、16% が欧州、アジア、オーストラリア、ニュージーランド、南米、アフリカ全域の
20 か国以上にまたがる多国籍企業です。
付録
本レポートに挙げた各種 ITIC 統計および調査の一覧とリンクを示します。
ITIC Web サイトと調査データおよびブログ・ポストのリンク:
http://itic-corp.com/blog/2014/02/iticknowbe4-security-survey-56-of-corporations-have-noproactive-response-plan-to-deal-with-byod-security-hacks/
http://itic-corp.com/blog/2013/07/one-hour-of-downtime-costs-100k-for-95-of-enterprises/
http://itic-corp.com/blog/2011/04/itic-2011-reliability-survey-users-give-ibm-aix-v7-windowsserver-2008-r2-highest-security-marks/
http://itic-corp.com/blog/2011/02/itic-reliabiity-survey-oracle-users-anxiousangry-over-servicesupport-slippage/
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