メルジェス 24 の今(2014 年メルジェス 24 クラス世界選手権レポート) 日本メルジェス協会 石黒建太郎 1993 年に販売開始されたメルジェス 24。 今年で 21 年目を迎え、日本でもメルジェス 24 を知っていらっしゃる方は数多いと思われ ます。 しかし国内ではおそらく 15 艇ほどしか存在せず(昨年の協会登録艇は 10 艇)、知られてい る割に実際に経験された方は非常に少ないでしょう。 そのようなメルジェス 24 ですが過去には 7 回ほど全日本選手権がおこなわれ、2009 年よ り〈スリーボンド〉がイタリアを主戦場として活動開始、2011 年世界選手権では〈エスプ リ〉がコリンシアンディビジョン優勝、さらに 2012 年世界選手権では〈マンマユート〉が 総合 7 位入賞となりました。 世界で活躍するチームが徐々に増えつつある中、昨年 9 年ぶりに〈Japan Melges Week〉 として全日本も復活しています。 昨今、キールボートの世界ではスピンネーカーではなくジェネカーを主流とするボートが 増加傾向にありますがメルジェス 24 は 21 年前からジェネカー快足ボートとして時代を先 駆けて君臨しており、驚きに値します。 日本ではようやくジェネカーボートがちらほら見られるようになり、そのような意味で比 較的手頃にスピードを楽しめるメルジェス 24 が再注目されているのかもしれません。 そしてメルジェスボートにはアウディ・メルジェス 20、メルジェス 24、メルジェス 32 の 3 クラスが存在し、ほぼ同じコンセプトの基に成り立っていますがメルジェス 24 だけ唯一 大きく違う点があり、それはプロセーラー乗員制限を設けていません。 2014 年世界選手権にはメルジェスパフォーマンスセールボート CEO のハリー・メルジェ ス、シドニー五輪 470 級金メダリストのネイサン・ウィルモット、2013 年モス級ワールド チャンピオンのボラ・グラリ、そのほかクリス・ラーソン、チャーリー・マッキーなどな ど世界的に“超”がつくプロセーラーが多数参加していましたがそのプロたちが自由にヘ ルムスマンで参加でき、また全員プロでも構いません。 その代わり誰でも参加できるオープンディビジョンの他にコリンシアンディビジョンとい うクラスが設けられ、チーム全員が ISAF クラシフィケーションのグループ 1(ISAF にセ ーリングが職業ではない証明書を発行してもらう)であればこのクラスに登録、純粋にア 1 マチュアセーラーのみで競い合うことの出来るシステムが存在します。 ただしスタートは一緒です。プロ軍団にアマチュアだけでどこまで戦えるのか?も楽しみ のひとつです。 またプロセーラーたちは普段ビジネスとしてセーリングに関わっていますがこの時ばかり はリラックスムードで純粋にセーリングをエンジョイしており、これもまたメルジェス 24 の魅力でないでしょうか? その楽しさ満点のメルジェス 24 の 2014 年世界選手権(1 月 20 日~2 月 2 日・オーストラ リア、ジーロング)に〈スリーボンド〉(松永鉄也ヘルム)とコリンシアンディビジョンと して〈エスプリ〉(長橋誠ヘルム)の 2 チームが参戦しました。 メルジェス 24 クラス創設 21 年目にして初めてのアジア・オセアニア地域での世界選手権 開催。先ほど申し上げた名だたるプロセーラーの他にイタリアの強豪チーム〈ブルームー ン〉、〈アウディ〉、〈アルテア〉の他、コリンシアンクラスで本当に良いのか?と疑ってし まうエッチェル級ワールドチャンピオンのキャメロン・マイルズがヘルムの〈ロジャー・ ザット〉など計 27 チームが参加です。 またこのクラスのもうひとつの魅力、必ずと言っていいほど良い風が吹くロケーションが 毎年選ばれ、このジーロングも期待を裏切りません。 世界選手権の前哨戦としてオーストラリア選手権が直前に開催されましたが 2 大会合計で 22 レースを予定し、実際に 21 レースを消化、ほとんどのレースが 14 ノット以上の風速の 中、おこなわれました。 温暖かつ良い風に恵まれる場所。日本のように「風が弱くてレースが消化できない!」と 悩む必要は皆無です。 まずは前哨戦のオーストラリア選手権。 〈スリーボンド〉がネイサン・ウィルモットを抑え込んでの総合 5 位となりました。本調 子ではない様子でしたが松永鉄也、吉田雄悟のオリンピアンコンビに笹木哲也、川西立人 が脇をがっちり固め、イタリアから来たニコラス・ビアンキがタクティシャンでまとめる チームはさすがの一言です。 逆に対照的であったのは〈エスプリ〉。初日は〈スリーボンド〉と共に良い位置につけてい ましたが徐々にほころびが出てしまい、後半は他艇との接触によるリタイヤ、マークルー ムの争いによる審問となるも失格と総合 11 位に甘んじました。 〈エスプリ〉は長橋誠、田淵靖浩、森田栄納介、石黒建太郎(筆者)の元 470 セーラーに J/24 クラス強豪チーム〈月光〉の中山遼平が乗り込むチームです。 2 そして待ちに待った世界選手権。 毎日 13 時 30 分スタート予定と大変遅い時間から始まります。なぜなら遅い時間である方 が決まって良い風に恵まれるからです。 この世界選手権からボラ・グラリ率いる〈ウエストマリン・リギン〉、イタリアの〈アルテ ア〉が登場と大会のレベルがまた一段アップします。 そのレベルアップしたレースで〈スリーボンド〉、 〈エスプリ〉ともに初日は 10 位前後の順 位となり苦戦します。 2 日目になり、〈スリーボンド〉は徐々に復調気配を見せますが〈エスプリ〉はリコール解 消、スタートでのケースによる 720 度回転でさらに調子を下げます。 3 日目は〈スリーボンド〉が Z 旗掲揚のスタートでリコールするなどどうしても上位に浮き 上がれず、 〈エスプリ〉は第 1 上マークをシングルで回航するなど良いところを随所に見せ ますがフィニッシュまで維持できず。 4 日目も両チームともに初日から同じような状況が続き、ついに最終日の 1 レースを残すの みとなりました。 残り 1 レース、最後に一矢報いたいところですが風弱く、スタートリミットの 15 時を迎え 今大会が終了。 栄えある優勝はイタリアの〈ブルームーン〉で 2001 年に続き 2 回目の優勝です。あのスピ ードには誰も勝てないのではないか?と思わせていたハリー・メルジェス率いる〈スター〉 を見事抑え切っての素晴らしい優勝でした。 そして日本チームは〈スリーボンド〉総合 10 位、 〈エスプリ〉総合 15 位およびコリンシア ン 4 位となり大苦戦して終わったと言えます。 2 チームそれぞれ事情が違い、一概にはなかなか言えませんがボートを素直に、そして気持 ちよく走らせるためのヘルム・トリム・タクティクスが噛み合っていなかったのだろうと 推察します。 根本的な事でありますが各々が高い技術を持ち合わせていたとしても上手く融合できなけ れば生かすことができないと痛切に感じました。 それがキールボートの難しさであり、またワンデザインレースの難しさではないでしょう か。 また今大会の全体的な印象と言えばまずスタートでした。日本の 2 チームがリコールを経 験しましたが全レース、スタートラインが狭いためにゼネリコを繰り返し、毎回リコール 有りでのスタートでした。次に 13 時 30 分第 1 レーススタートでも毎日 3 レースをこなす ことが出来るコンディションの良さ、さらにテンポよく進行する実に効率的な運営が印象 3 的です。個人的にはあまりに良いテンポで少々疲れましたが。 最後に大会イベントではありませんがメルジェス 24 ディーラーであるメルジェスアジアパ シフィック主催の BBQ パーティが開かれ、ハリー・メルジェス、ネイサン・ウィルモット やボラ・グラリたちと肉を食しながらクリケットなどのゲームに興じる、など海でも陸で も皆で楽しむメルジェス 24 のイベントは最高の一言です。 以上で 2014 年メルジェス 24 クラス世界選手権のレポートとなりました。 日本メルジェス協会はまだ生まれたばかりの団体ですがこのような「素晴らしいロケーシ ョンで素晴らしいレースをし、仲間たちと夜まで楽しむ」を目指し、より多くの人たちと つながっていきたいと考えます。 11 月には逗子マリーナで〈Japan Melges Week〉を開催予定であり、ここから世界チャン ピオンへの道が開けていくことを切に願うばかりです。 ぜひ皆様からの一報をお待ちしております。 日本メルジェス協会サイト:http://jpmelges.com/ お問合せ:[email protected] 4
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