ローマ帝国と円形闘技場 民族学考古学専攻 廣瀬友哉 <卒業論文目次> 第一章 第一章 第二章 はじめに はじめに ローマ帝国の円形闘技場に関する研究史及び研究課題 第二章 ローマ帝国の円形闘技場に関する研究史及び研究課題 1.ローマ帝国の円形闘技場に関する研究史 1.ローマ帝国の円形闘技場に関する研究史 a)Golvin による円形闘技場のデータ集成 a)Golvin による円形闘技場のデータ集成 b)渡辺道治による円形闘技場の長軸・短軸の比率の研究 b)渡辺道治による円形闘技場の長軸・短軸の比率の研究 2.研究課題 2.研究課題 第三章 研究手法 第四章 円形闘技場の離心率の分析 第五章 円形闘技場離心率の考察(第四章の考察) a)円形闘技場の分布 b)地域毎の円形闘技場の形状の比較 c)コロッセオ(ローマの首都)からの距離と 円形闘技場の形状の関係 d)円形闘技場の建設年代と円形闘技場の形状の関係 e)真円形の円形闘技場(アウトレイヤー)の分析 第六章 結論 a)円形闘技場の分布 第七章 後註 b)地域毎の円形闘技場の形状の比較 第八章 参考文献 c)コロッセオ(ローマの首都)からの距離と円形闘技場の 形状の関係 d)円形闘技場の建設年代と円形闘技場の形状の関係 e)真円形の円形闘技場(アウトレイヤー)の分析 <はじめに> 本研究は、古代ローマ帝国に特徴的な建造物である円形闘技場を研究対象とすることで、 ローマ帝国属州の多様性を解明することを目指すものである。円形闘技場はローマのコロ ッセウムに代表されるローマ帝国の娯楽用建築物であり、2000 年のときを越えて尚遺構と して完形に近い姿を留める円形闘技場は、広大なローマ帝国の領土支配を包括的に分析す るにあたって歴史資料として魅力的なものである。 ローマの帝国属州に関する研究課題として円形闘技場がふさわしい理由には、円形闘技 場がローマ帝国起源であること、すなわちローマ帝国及びローマ文化の典型と考えられる ことが挙げられる。ローマ帝国の娯楽用建築物としては①円形闘技場(amphitheatre)、② 円形劇場(theatre、odeon)、③競技場(stadium、circus)、が存在する)円形劇場、競技場 がギリシア由来のものであるのに対し、円形闘技場だけはローマ独自のものである(Welch 2003)。このため円形闘技場を研究対象にすることから、ローマ帝国及びローマ文化を包括 的に研究することが可能になるのである。 円形闘技場を通じてローマ帝国全土を俯瞰することはその資料の多さから容易ではない。 本研究が表をなでただけで終わる可能性は否めない。しかしそのためにほとんどの学者が 手をつけていないこともあり、研究題材とする価値は充分にあるであろう。 <結論> 円形闘技場、円形劇場、競技場の分布により円形闘技場が多く分布する西側の円形闘技 場文化圏、円形劇場があまり存在しなく円形劇場や競技場が多く分布する東側の非円形劇 場文化圏に分けることができる。そしてこの二極化を作り出した要因は語圏の違いである と結論付けた。西側と対応するのはラテン語文化圏、東側と対応するのはギリシア語文化 圏となる。円形闘技場の分布から語圏の範囲を示すことができた。円形闘技場の建造には その他の要因が関係してくると思われる。 首都ローマから離れれば離れるほど円形闘技場は楕円形のものだけではなく真円形状の ものも建設されるという傾向があった、すなわち首都ローマから遠くなると円形闘技場の 形状は多様性を帯びるようになっていった。同様に円形闘技場の形状を、①ローマの首都 からの距離、②属州に組み込まれた時期、③建設年代毎に、もしくは①、②、③を絡めて 言及したところ、ローマ帝国が属州を拡大するにつれ円形闘技場の形状に多様性が認めら れるようになったのだ。しかしながらイタリア本土でも円形状の円形闘技場が建築されて いる。それは Lucus Feronia のものであり、劇場の舞台のようなものを併設していた。こ れに限らず円形状の円形闘技場は劇の舞台を要しているものが多い。 円形闘技場の形状は属州毎の文化、円形闘技場の仕様、属州統治、円形闘技場の建築技 術など様々な要因が関係してくるはずだが、ローマ帝国を象徴する円形闘技場の形、数が その属州毎の性質を体現してくれていることは興味深い。円形闘技場を調べることで様々 な文化、言語、民族を抱えるローマ帝国の地域性をより深く知ることができるはずである。 <引用参考文献> Bomgardner-D.L 2000 “The Story Of The Roman Amphitheatre” Routledge publishing Golvin-J.C 1988 “L’Amphitheatre Romain:Essai sur la Theorisasrion de sa Forme et de ses Fonctions” France Gros.Pierre 2002‘L’architecture romaine:du debut du IIIe siècle av.J.-C.a la fin du Haut-Empire’ France Sear.Frank 1998‘Roman Architecture’ Routledge publishing Welch-K.E 2003 “The Roman Amphitheatre:From its Origins to the Colosseum” Cambridge University Press publishing Wilding.Roy 2005 “Roman Amphitheatres In England And Wales” 4 Corners publishing Wilmott.Tony 2008 “The Roman Amphitheatre In Britain” The History Press LT publishing 島田誠 1999 『コロッセウムからよむローマ帝国』 講談社 南川高志 2003 『海のかなたのローマ帝国』 講談社選書メチェ 渡辺道治 2003 「ローマ時代の円形闘技場」 『地中海学会月報258』 渡辺道治 1994 「ローマ時代の円形闘技場の規模および長軸と短軸の比率について」 『日本建 築学会大会学術講演梗概集 p1207-1208』 円形闘技場 、競技場 円形劇場 図 1.円形闘技場、円形劇場、競技場の分布と語圏の対応 表 1.円形闘技場アレーナの離心率の標準偏差と属州に組み込まれた時期との関係 0.077717367…ヒスパニア(~BC188) 0.080224194…イタリア(~BC188) 0.11767079…ガリア、ゲルマニア(~BC44~14) 0.127207226…北アフリカ(~BC188~BC44~117) 0.132176635…ブリタニア(~117) 0.140048957…パンノニア(~BC44~117) 離心率 1 アレーナの離心率/コロッセオからの 距離 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 ブリタニア イタリア 0.4 ガリア パンノニア 0.3 ヒスパニア 0.2 ギリシア、オリエント 北アフリカ 0.1 0 0 500 1000 1500 2000 2500 図 2.アレーナの離心率とコロッセオからの距離の関係 図 3.舞台が併設された円形闘技場 3000 (km)
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