GaN/AlGaN界面における 2次元電子ガス層の電位分布観察

GaN/AlGaN界面における
2次元電子ガス層の電位分布観察
R-1
冷却FIBと高分解能高感度ホログラフィー技術を用いて, 基礎
GaN/AlGaN界面に形成される2次元電子ガス層を観察 研究
技術の
ポイント
GaN半導体は、次世代のパワーデバイス、光デバイスとして期待されている
良好な特性を示すデバイスを設計・作製するためには、GaN/AlGaN界面に
形成される2次元電子ガス(2DEG)層の直接観察が重要である
目 的 電子線ホログラフィー法を用いて、GaN/AlGaN界面に形成される2次元電
子ガス層(2DEG)による電位分布を明瞭に観察するとともに、Al濃度を変化
させた時の電位分布の変化も計測する
背景
成果
(1) 冷却FIB + 低加速Arイオンミリングを用いたTEM試料作製法と
位相シフト電子線ホログラフィー技術を用いて、GaN/AlGaN界面に
形成された2次元電子ガス層による電位分布を明瞭に可視化
(2) Al濃度が大きくなるに従いキャリアの量が多くなり、2次元電子ガス
層による電位変化も大きくなることを観察
GaNデバイスにおけるナノスケールの電位分布計測技術が確立
θn
(10-6 – 10-4 rad)
(a)
(c)
GaN
参照波
Ti
(f)
界面
物体波
AlxGa1-xN
X = 0.20
GaN
Phase [rad]
試料
AlGaN
0.11 rad
Ti
8 nm
11 nm
(g)
(d)
界面
AlxGa1-xN
X = 0.25
GaN
Phase [rad]
x
点P
ホログラム
θn
0.21 rad
Ti
12 nm
(b)
15 nm
(e)
2DEG
(h)
界面
AlxGa1-xN
X = 0.30
GaN
Phase [rad]
0.28 rad
19 nm
24 nm
(a) ホログラムの撮影
(b)位相再生方法
期待される
適用分野
(c)GaN/AlXGa1-XN (X=0.25)のTEM像、(d)ホログラム,(e)再生位相像,
(f)再生位相像のラインプロファイル(X=0.20), (g) (X=0.25), (h) (X=0.30)
GaNを用いた次世代パワーデバイス,光デバイスの開発
謝 辞: 本研究は、トヨタ自動車(株)からの委託研究として実施したものである
担当者: 山本和生/共同研究者: (トヨタ自動車(株)) 後藤安則、櫛田知義
Ti
エッチピット法によるGaN単結晶の
転位検出と分類技術の開発
強酸化剤を添加したアルカリ溶融エッチングによるGaN
単結晶転位の検出と分類
技術の
ポイント
R-2
基礎
研究
背景
GaN単結晶における種々の貫通転位(刃状、らせんおよび混合転位)を全
て検出・分類する技術が結晶成長や素子不良解析に重要である。低コスト
かつ広い面積に実施可能な技術が強く求められている
目的
GaNにおける刃状、らせん、及び混合転位を簡易に分類する化学エッチン
グ技術を開発し、分類の確かさを透過電子顕微鏡(TEM)を用いて検証する
成果
・実験方法:
(1) GaNのGa面に3種類の転位に対応したエッチピットを形成するエッ
チング法の開発に成功した
(2) エッチピット直下の転位部分をFIBで抽出し、TEMを用いて転位構
造を評価した
(3) 同一場所のエッチピット像とCL像(カソードルミネッセンス)とを比較
し、転位の電気的特性を評価した
化学エッチング(KOH+Na2O2溶融液)、レーザー顕微鏡、SEM、TEM(LACBED法)
エッチピット像とCL像の比較
期待される
適用分野
参考文献
(a) エッチピットのOM像 (b) CL像; (c)エッチピットのSEM像
GaN転位の分類・評価
GaN(バルク・エピ膜)成長条件最適化
GaNパワーデバイス故障解析
GaN転位低減と
パワーデバイス
故障原因同定
Y. Yao, Y. Ishikawa, et al., Superlattices and Microstructures (2016) accepted
特許出願: 2015-091760
謝 辞: 本研究は、科学技術振興機構(JST)愛知地域スーパークラスタープログラムにて実施したものである
担当者: 姚永昭、石川由加里、菅原義弘、横江大作/共同研究者: (山口大学)岡田成仁、只友一行
技術の
ポイント
化学エッチングによるダイヤモンド
単結晶表面の平坦化技術の開発
R-3
アルカリ溶融液を用いた化学エッチングでダイヤモンド
単結晶表面を短時間で平坦化する
基礎
研究
背景
究極なパワー半導体材料であるダイヤモンドは高硬度且つ化学的安定性
が高いため、研磨加工の低効率が問題になっている。前工程のダメージ層
を取り除き、ウエハ表面を短時間で平坦化する技術が強く求められている
目的
ダイヤモンド単結晶表面を短時間で平坦化する化学エッチング法を開発す
る
成果
・実験方法:
(1) ダイヤモンド単結晶表面を高速エッチングする高温KCl+KOH溶融
液の開発に成功し、(001)表面のエッチレートは2μm/hを達成した
(2) 処理したダイヤモンド表面の平坦性が大幅に向上(Ra=0.087μm)
化学エッチング KCl:KOH=60:1、約1100℃
表面形状観察・粗さ計測 レーザー顕微鏡
ダイヤモンド単結晶ウエハエッチング前後の比較
(a)表面、処理前、 (b)表面、処理後、 (c)裏面、処理後
期待される
適用分野
参考文献
ダイヤモンドウエハの作製・加工
ダイヤモンド表面ダメージ層の除去
宝飾品の加工・表面処理
処理前後表面のレーザー顕微鏡像
(a) 処理前、 (b) 処理後
パワー素子用ダ
イヤ基板加工の
簡略化・低コスト
Y. Yao, Y. Ishikawa, et al., Diamond and Related Materials 63 (2016) 86-90
特許出願: 2014-259658
担当者: 姚永昭、石川由加里、菅原義弘
共同研究者: (産業技術総合研究所)山田英明、茶谷原昭義、杢野由明
技術の
ポイント
NaOH蒸気エッチングによる
SiCウエハの混合転位検出と分類
R-4
NaOH高温蒸気を用いた化学エッチングでSiC結晶の
c+a混合転位を判別
基礎
研究
背景
貫通転位は、SiCパワーデバイス故障の要因となる。しかし、刃状、らせん、
及び混合転位のそれぞれの悪影響はまだわかっていない。低コスト且つ短
時間で各種転位を分類する技術が強く求められている
目的
SiCにおける刃状、らせん、及び混合転位を簡易に分類する化学エッチング
技術を開発し、分類の確かさを放射光X線トポグラフィーを用いて検証する
成果
・実験方法:
(1) SiCのSi面に3種類の転位に対応したエッチピットを形成するNaOH
高温蒸気エッチング法の開発に成功した
(2) 複数のgベクトルを用いた放射光X線トポグラフィー(XRT)で混合転
位とらせん転位を判別し、種別ごとの転位分布を得た
(3) 同一場所のエッチピット像とXRT像とを比較し、 NaOH高温蒸気エッ
チング法の転位分類の精度を検証した
化学エッチング (NaOH蒸気、約1000℃)、X線トポグラフィー (KEK-PF、BL-3C)
エッチピット像とXRT像の比較。(a) エッチピッ
ト像 (b)-(d) X線入射方向によるXRT像の変化
期待される
適用分野
参考文献
混合転位に含まれる刃状成分の方向判別
SiC転位の分類・評価
SiC(バルク・エピ膜)成長条件最適化
SiCパワーデバイス故障解析
SiC転位低減と
パワーデバイス
故障原因同定
Y. Yao, Y. Ishikawa, et al., Materials Science Forum 858 (2016) 389-392
謝 辞: 本研究はトヨタ自動車(株)からの委託研究として実施したものである
X線トポ測定はKEK-PFの産業利用にて実施したものである(BL-3C、課題番号2014I002)
担当者: 姚永昭、石川由加里、菅原義弘/共同研究者:(トヨタ自動車(株))旦野克典、(KEK)高橋由美子、平野馨一
透過電子顕微鏡を用いた
GaN/Si結晶の欠陥構造評価
技術の
ポイント
R-5
GaN/Si結晶の平面抽出および大角度収束電子線回折
法を用いた欠陥構造の精密解析
基礎
研究
背景
GaN結晶はその優れた物性(高耐圧・高速・低損失・高温動作など)からSiの
代替材料として期待されているが、デバイス特性を劣化させる多種多様な
欠陥が結晶内に数多く残留する
目的
GaN結晶内の転位や積層欠陥を正確に抽出し、その欠陥構造を電子顕微
鏡技法を用いて精密に解析することで、デバイス特性を劣化させるキラー
欠陥とその構造との関係を明らかにする
成果
(1) 集束イオンビーム(FIB)加工技術を用いて、歪GaN層の平面抽出によ
る欠陥評価を可能にした
(2) GaN/Si結晶内の欠陥構造解析に暗視野法、大角度収束電子線回折
(LACBED)法などを適用し、対消滅を伴う転位反応を証明した
(a)
(f)
対消滅を伴う転位反応
(b)
(g)
平面試料
(c)
(d)
エピ成長
方向
(e)
(a) FIBによる平面抽出領域の模式図, (b) 複合
転位の暗視野像, (c)~(e) LACBEDパターンお
よび導出されたg・b=nの関係式, (f) 対消滅を伴
う転位反応の模式図, (g) LACBED法の模式図
期待される
適用分野
参考文献
SiC、GaN、Diamondなどの次世代
パワーデバイス用半導体の欠陥評価
低欠陥密度の半導
体材料開発に貢献
Y. Sugawara et al., AIP Advances, 6, 045020 (2016).
謝 辞: 本研究は、科学技術振興機構(JST)愛知地域スーパークラスタープログラムにて実施したものである
担当者: 菅原義弘、石川由加里/共同研究者:(名古屋工業大学)渡辺新、三好実人、江川孝志
エアロゾルデポジション法により形成
したアルミナ膜の集合組織評価
極点測定とその後の結晶方位分布解析により、アルミナ
膜の集合組織を定量評価
技術の
ポイント
背景
目的
R-6
基礎
研究
エアロゾルデポジション(AD)法により形成したアルミナ膜は、表面エネル
ギーが小さく化学的安定性に優れる底面に優先配向する傾向にあるが、底
面配向度と成膜条件の関係は明らかでない
AD法により形成したアルミナ膜について、X線回折による正極点測定とそ
の後の結晶方位分布解析により、膜の底面配向度に及ぼす成膜因子を抽
出する
成果
(1) AD法を用いて形成させたアルミナ膜の底面配向度を(0001)面の
体積率で定量的に評価した結果、膜厚の増加に伴い底面配向度
が低下した
(2) AD成膜時の基板への粒子衝突速度を増加させることにより、
(0001)面を主成分とする集合組織が形成された
α-アルミナ膜のXRDパターン
α-アルミナ膜断面のTEM像
Al-Y2Ti2O7基板 アルミナ膜
強度 / a.u.
a-アルミナ
Al-Y2Ti2O7(基板)
20
100 nm
(006)
40
30
50
2q / deg.
70
60
θ-2θプロファイルから底面配向度の評価は困難!
底面配向度とAD成膜条件の関係
衝突速度(m/s)
650
650
100
膜厚(μm)
0.2
1.5
0.2
常圧焼結体
(比較)
(0001)体積率 (%)
32
24
29
1.4
(1 1 2 15)
体積率 (%)
22
17
35
1.7
(0001)
極点図
期待される適用分野
参考特許
・耐環境性膜
80
・切削工具、摺動部材
特願2014-131393 「結晶配向セラミックス積層材料及びその製造方法」
謝 辞: 本研究の一部は、JST-ALCA(先端的低炭素化技術開発事業)として実施したものである
担当者: 田中誠、北岡諭/共同研究者: (横浜国立大学)長谷川誠、(岐阜大学)吉田道之、櫻田修
高温におけるAl系酸化保護膜の
物質移動機構
R-7
酸素透過法と酸素トレーサー法の併用により、酸化物膜
中の物質移動を定量的に評価・解析
技術の
ポイント
基礎
研究
背景
航空機エンジン等の高温過酷環境下で使用される耐熱部材の長期使用を
可能にするには、優れた酸化保護膜の付与が不可欠であるが、部材の使用
限界把握や耐久性向上に不可欠な膜中の物質移動機構は明らかでない
目的
酸化保護膜のアルミナ、ムライトについて、膜中の粒界拡散係数に及ぼす
高温の酸素ポテンシャル勾配(dµO)の影響を解明する
成果
(1)電気化学的手法を用いずに、 高温dµO下に曝された酸化物膜の輸率を
決定する手法を構築(アルミナ膜:電子伝導、ムライト膜:イオン伝導)
(2) 「酸素欠陥濃度が小」のアルミナ膜の場合は、dµO印加により形成される
膜厚間の“電場”によって、PO2(hi)表面近傍の酸素の粒界拡散係数が低
下。一方、 「酸素欠陥濃度が大」のムライト膜の場合は、dµO印加による
“電場”形成にも関わらず酸素の粒界拡散係数は一定
世界で初めて酸化物膜の物質移動に及ぼすdµOの影響を定量的に示した
O-Dgbd
実測値
dmO≠0
dmO=0
O-Dgbd
実測値
アルミナの粒界拡散係数の膜厚方向分布(1600℃)
dmO≠0
dmO=0
ムライトの粒界拡散係数の膜厚方向分布(1600℃)
期待される ①環境遮蔽性、構造安定性に優れる酸化物膜の開発
適用分野 ②電気化学的手法を用いない(使用条件を模擬した)高温輸率の測定
参考文献
[1] T. Matsudaira, et al., J. Am. Ceram. Soc., 96, 3243 (2013) DOI: 10.1111/jace.12420
[2] S. Kitaoka, et al., Proc. ICACC 2016, Daytona Beach, Florida, USA (2016).
謝 辞: 本研究は、JSPS科研費「新学術領域研究ナノ構造情報(25106008)」、総合科学技術・イノベーション会議の
SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「【革新的構造材料】」(管理法人:JST)、並びに、文部科学省委託
事業ナノテクノロジープラットフォーム(プロジェクト番号12024046)の一環として実施したものである
担当者: 松平恒昭、北岡諭、小川貴史/共同研究者: (京都大学)中川翼、(東京大学)柴田直哉、幾原雄一、竹内美由紀
耐環境性Ybシリケート膜の
物質移動機構解明
技術の
ポイント
背景
目的
成果
R-8
基礎
研究
高温酸素透過法により、酸素ポテンシャル勾配下に曝さ
れたYb2Si2O7膜の物質移動機構を解明
SiC/SiC複合材料は、次世代航空機エンジン用高温部材への適用が検討
されているが、高温の酸素と水蒸気を含む燃焼環境下における酸化と減肉
を防止する耐環境性保護コーティング(EBC)が不可欠である
耐水蒸気揮散性に優れるEBC候補材のYb2Si2O7に対し、使用環境を模擬
した高温の酸素ポテンシャル勾配(dµO)下における膜中の物質移動機構を
明らかにする
(1) 高温dµO下における多結晶Yb2Si2O7膜中の物質移動は、酸素の低酸
素分圧(PO2(lo))側への粒界拡散と、Ybの高酸素分圧(PO2(hi))側への
粒界拡散によって支配される
(2) 高温dµO(PO2(hi)/PO2(lo)=104/10-9Pa)の付与により、Yb2Si2O7膜の酸
素の粒界拡散性は“膜厚間の電場形成”により抑制される
世界で初めて高温dµO下のYb2Si2O7膜中の物質移動機構を定量的に解明
PO2(hi)
表面
供試材:多結晶Yb2Si2O7膜
測定温度:1400℃
PO2(lo)=10-9
酸素ポテンシャル勾配あり
PO2(hi)=105 Pa
流束 (mol s-1)
10-14
O
10-15
Yb
5 mm
10-16
PO2(hi)
表面
10-17
酸素ポテンシャル勾配なし
10-18
10-19
0
0.2
0.4
0.6
0.8
膜厚さ比
Yb2Si2O7膜中の酸素とYbの流束
期待される
適用分野
1.0
5 mm
Yb2Si2O7膜断面の18O濃度分布
(SIMS,1400℃×2h)
高温における環境遮蔽性と構造安定性に優れるEBCの設計
謝 辞: 本研究は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「【革新的構
造材料】(管理法人:JST)」、及び、文部科学省委託事業ナノテクノロジープラットフォーム(12024046)
の支援を受けて実施したものである
担当者: 和田匡史、松平恒昭、川島直樹、北岡諭、高田雅介/共同研究者:(東京大学)竹内美由紀
技術の
ポイント
次世代航空機エンジン用耐環境性
コーティングプロセスの開発
R-9
ダブル電子ビームPVD法により組成と組織を制御した
複合酸化物コーティングを形成
基礎
研究
背景
次世代航空機エンジン用SiC/SiC材料の耐久性向上に不可欠な保護膜の
性能(環境遮蔽性、耐熱衝撃性)は、膜の組成・組織に強く依存するため、
これらの因子を精密に制御可能なコーティング技術の開発が必要である
目的
ダブル電子ビームPVD法を用いて、保護膜候補材のYbシリケート膜の組
成・組織の同時制御を可能にする
成果
構成酸化物種の平衡蒸気圧が大きく異なるYbシリケートに対して、2種類
のターゲット(Yb2O3とSiO2)を独立に溶融蒸発させること等により、Ybシリ
ケート膜の組成制御(Yb2Si2O7、Yb2SiO5)、組織制御(緻密質・多孔質)を
可能にした
SiO2
Yb2O3
ダブル電子ビームPVD
成膜装置の模式図
Yb
10-8
YbO
10-16
3
4
5
6
1/T (10-4 K-1)
7
Yb-Si-O系の平衡蒸気圧の
温度依存性
期待される
適用分野
10
220
SiO
SiO2
100
Intensity / a. u.
分圧 (Pa)
Yb2O3の融点 SiO2の融点
110
Ybシリケート膜のSEM像
: Yb2Si2O7
: Yb2SiO5
(110)配向型
Yb2Si2O7膜
Yb2Si2O7膜
20
Yb2SiO5膜
40
60
80
2q / degree
Ybシリケート膜のX線回折図形
・燃焼温度の高温化と部材冷却ガス削減による航空機エンジン
燃費とCO2排出量の大幅削減
・環境遮蔽性と耐熱衝撃性を併せ持つ多機能コーティング
謝 辞: 本研究は,総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)
【革新的構造材料】(管理法人:JST)によって実施した
担当者: 横井太史、山口哲央、中平兼司、松田哲志、北岡諭、高田雅介
第一原理計算による
Ybシリケート膜の電子特性解析
R-10
第一原理計算、及び電子エネルギー損失分光を用いて
Ybシリケートの基礎的電子特性を解明
技術の
ポイント
基礎
研究
背景
次世代航空機エンジンの耐熱部材として期待されるYbシリケート膜の酸化
挙動を把握するため、第一原理計算を活用することが期待される。しかし、
構造設計の基礎的知見であるYbシリケート(Yb2Si2O7)単体の材料特性も、
未だ十分にわかっていない
目的
Yb2Si2O7の結晶構造、及び電子状態に関する第一原理計算を実施し、
STEMを用いた電子エネルギー損失分光(EELS)測定結果と比較する
成果
(1) 希土類元素Ybを含むYb2Si2O7の第一原理計算により、バンドギャッ
プ近傍の理論EELSスペクトルが得られた
(2) モノクロメータSTEMを用いた高エネルギー分解能EELS測定により、
Yb2Si2O7のEELSスペクトルが得られた
(3) 計算・実験EELSスペクトルの比較から、バンドギャップ値、及びYb4f 軌道に関係する特徴的な電子状態の存在が明らかになった
・手法: 第一原理PAW法(ABINITコード)、収差補正STEM-EELS
Yb2Si2O7
(実験)
Yb
SiO4
Yb-4f軌道
Yb2O3
(計算)
Yb2Si2O7
(計算)
電子状態密度
EELSスペクトル強度
Yb2O3
(実験)
Energy [eV]
Yb2O3、及びYb2Si2O7のEELSスペクトル(実験と計算)
期待される
適用分野
欠陥状態、拡散シミュレーションによる
酸素遮蔽性の解析
Yb2Si2O7の電子状態密度
耐酸化性向上設計
への貢献
参考文献: T. Ogawa et al., Phys. Rev. B 93 (2016) 201107(R).
謝 辞: 本研究は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム) 「革新的構造材料」
(管理法人:JST)、及びJSPS科研費「新学術領域研究ナノ構造情報(25106008)」の一環として実施したものである
担当者: 小川貴史、小林俊介、和田匡史、加藤丈晴、北岡諭/共同研究者:(大阪大学)吉矢真人
第一原理計算によるk-Al2O3型
強誘電体の分極反転経路解析
R-11
原子レベルでの理論計算により、k-Al2O3型強誘電体の
構造相転移のメカニズムを解析する
技術の
ポイント
基礎
研究
背景
従来の強誘電体はペロブスカイト型構造中の酸素八面体の変位に伴い、
構造相転移が起こっている。新たな相転移機構を有する材料を探索するこ
とは、強誘電材料開発の発展のための重要な課題の一つである
目的
第一原理計算を用いて強誘電体であるk-Al2O3型結晶構造の中心対称構
造と構造反転相転移機構を明らかにする
成果
(1) k-Al2O3型強誘電体の相転移機構として安定構造(空間群:Pna21)
からO層のせん断に伴い各カチオンサイトの配位数が変化する、中
心対称構造(Pbcn)を経由する相転移機構が示唆される
(2) この反転機構における分極反転の起こりやすさ(ポテンシャル障
壁)はPbTiO3よりも低く、十分に起こり得る妥当な機構であると考
えられる
従来のペロブスカイト系強誘電体と異なる特殊な構造変化による
強誘電体である可能性を示唆
・手法:第一原理計算(VASPコード、PAW法)
200
4配位
(黄)
c
a
b
Pna21
P = -Ps
6配位
(青)
O
Pbcn
P=0
カチオン
初期位置
(赤点線)
Pna21
P = +Ps
Relative Energy [meV/f.u.]
カチオン
k-Al2O3型構造の結晶構造(Pna21)と
その分極反転における中心対称構造(Pbcn)
期待される
適用分野
参考文献
k-Al2O3
Sc2O3
150
In2O3
100
Ga2O3
50
e-Fe2O3
0
1
Pna21
(P=-Ps)
2
3
4
Pbcn
(P=0)
NEB Image Number
5
Pna21
(P=+Ps)
k-Al2O3型構造の各組成における
ポテンシャル障壁
ペロブスカイト型構造以外の新規強誘電材料の開発
[1] R. E. Cohen , et al. , Nature 358 (1992) 136.
謝 辞 : 本研究は、JSPS科研費25106008の一環として実施したものである
担当者: 小西綾子、森分博紀/共同研究者:(東京工業大学)濱嵜容丞、安井伸太郎、伊藤満
Bi-Te系熱電材料における
基底状態の構造探索と電気特性
技術の
ポイント
R-12
第一原理計算を用いて熱電材料であるBi-Te系固溶体
の構造を明らかにし、電気特性を評価
基礎
研究
背景
熱電材料として活用されているBi2Te3は不定比組成をとることが知られてい
る。状態図では複数の規則相の存在が報告されているが、その構造および
電気特性は不明である
目的
第一原理計算とクラスター展開法により固溶状態の探索を行う。得られた
安定構造および準安定構造のバンドギャップを系統的に計算することで、
電気特性への影響を調べる
成果
(1) BiTeおよびBi2Te3以外にBi4Teという基底構造、Bi7Te8、Bi5Te7など
の準安定構造が見つかった
(2) バンド計算の結果、BiTeおよび Bi2Te3以外の構造ではバンドギャッ
プのない金属的なバンド構造が見られた
(3) 準安定構造のXRDシミュレーション結果はBi2Te3のXRDパターンと
類似しており、副生成物が微量の場合XRDによる定量は困難
→半導体としての性能を得るためには厳密な化学量論組成での合成
が必要
・手法: 第一原理PAW法(VASPコード)
2
2
Bi2Te3: バンドギャップ0.14eV
1.5
1
1
0.5
0
0
-0.5
-1
BiTe
バンドギャップ:
0.10 eV
Bi2Te3
0.14 eV
Energy (eV)
-1
-1.5
-2
-2
2
2
Γ
L
B
Z Γ
X FP
Z LP
Bi4Te5: バンドギャップなし
1.5
1
1
0.5
0
0
-0.5
-1
-1
x in Bi(1-x)Tex
クラスター展開法により得られた約16万
構造の形成エネルギー
期待される
適用分野
-1.5
-2
-2
H
A L MK
Bi2Te3および準安定構造Bi4Te5のバンド構造
Γ
M
固溶状態の探索およびバンドギャップ
などの電子特性の評価
担当者: 設樂一希、桑原彰秀
K
ΓA
L H
新規機能性固溶体
材料の開発
技術の
ポイント
背景
目的
成果
アルミネートゼオライト強誘電体の
相転移機構解析
R-13
アルミネートゼオライト強誘電体Ca8[Al12O24](WO4)2の
強誘電体相転移機構を第一原理計算を用いて解明
基礎
研究
多くの強誘電体はぺロブスカイト型結晶構造を有しているが、非ぺロブスカ
イト構造での強誘電体が開発できれば、材料探索の自由度を大きく拡張で
きると期待されている
アルミネートゼオライト強誘電体Ca8[Al12O24](WO4)2は強誘電体として低い
誘電率により焦電センサーなどへの応用が期待されているが、その相転移
機構の詳細は解明されていなかった。高精度な実験と第一原理計算を連
携させることにより本物質の相転移挙動を解析する
(1) 第一原理分子動力学計算によりアルミネートゼオライト強誘電体
Ca8[Al12O24](WO4)2の有限温度での構造変化をシミュレーション
(2) 結晶構造解析と第一原理分子動力学計算の結果から、本物質の
相転移機構が、高温域でランダムな回転運動をするWO4が低温相
で秩序化することによって生じる秩序-無秩序型相転移であること
を明らかにした
Ca8[Al12O24](WO4)2の結晶構造図.
Ca-Al-Oが構成するゼオライト骨格構
造の中にWO4四面体が存在している
様子がよく分かる
期待される
適用分野
強誘電体相材料などの有限温度での物
性評価、温度による相転移機構の解明
第一原理分子動力学法に
よる計算結果。図中黄色
の点は酸素イオンの移動
軌跡を示している。低温の
100KではWO4四面体は
安定位置を中心に振動し
ているだけだが、温度上
昇に伴いその振動が激し
くなり、 1100Kでは、安
定点周囲のポテンシャル
障壁を乗り越えて、ランダ
ムな回転運動が始まって
いる事が明確に見て取れ
る。このように本物質の強
誘電体相転移機構が、
WO4四面体の秩序ー無
秩序型強誘電体相転移で
あることが明らかになった
新規強誘電体
の設計創出
謝辞: 本研究は科研費新学術領域研究「ナノ構造情報のフロンティア開拓」での成果である
担当者: 森分博紀/共同研究者: (名古屋大学)谷口博基,前田悠作、(広島大学)森吉千佳子
技術の
ポイント
新規機能性ウェーバー石型
酸化物の理論計算
R-14
ウェーバー石型構造を持つRE3TaO7(RE=La-Er,Y)の
相安定性および電気特性を検討
基礎
研究
背景
近年、優れた酸素イオン伝導体や光触媒などの候補材料として、ウェー
バー石型構造を持つタンタレートが注目されているが、結晶構造の詳細は
まだよくわかってない
目的
ウェーバー石型RE3TaO7(RE=La-Er,Y)の安定結晶構造および電子構造を
検討する
成果
(1) RE
REのイオン半径が小さくなるほど、TaO
のイオン半径が小さくなる小さいほど、TaO6八面体のゆがみが
6八面体の歪みが小さくなり、
対称性が高い
C2221相がより安定になる
減り、C222
1相がより安定になる
(2) La3TaO7の場合、Pnma相が最も安定であるが、他の相とのエネル
ギー差が小さいため、室温では共存する可能性がある
REイオンのサイズによりRE3TaO7の物性が変わる
・手法: 密度汎関数理論(DFT)法に基づく第一原理計算(VASPコード、Phononコード)
Y Tb Eu
・評価: 絶対零度での格子エネルギーの比較
Er Ho Dy Gd Sm Nd Pr
La
0.20
フォノン分散による格子安定性の解析
空間群C2221
空間群Ccmm
E (eV)
0.10
Pnma
基準
0.00
C2221
C2221
Cmcm
Cmcm
Ccmm
Ccmm
-0.10
-0.20
0.95
1
1.05
1.1
1.15
1.2
Ion radius (Å)
RE3TaO7相の格子エネルギー差と
REイオン半径の依存性
TaO6
RE
空間群Cmcm
Energy (eV)
空間群Pnma
Eb = 3.6 eV
Wavevector
RE3TaO7の候補結晶構造
期待される
適用分野
La3TaO7のPnma相のバンド構造
欠陥状態、拡散シミュレーションによる
酸素イオン導電機構解析
電気伝導特性の向
上へ貢献
担当者:クレイグ・フィッシャー/共同研究者:小川貴史、(リール大学)A. Rolle、R.-N. Vannier
第一原理計算による
Ti-V系水素吸蔵合金の特性解析
技術の
ポイント
R-15
Ti-V系合金の組成と平衡水素圧の関係を原子レベルの
理論計算を用いて検討し、知見を得た
基礎
研究
背景
Ti-V系水素吸蔵合金は吸蔵容量が大きいため、燃料電池への応用が期待
されている。しかし、水素を吸収する際の水素圧や反応温度は合金組成に
よって大きく変化し、実験から最適な組成を予測するのは困難だった
目的
Ti-V系合金と水素化物について、第一原理計算を用いて平衡水素圧を計
算する。また、水素化物の体積と平衡水素圧の関係を検討する
成果
1)Ti0.5V0.5、Ti1.0V1.1Mn0.9合金を対象に平衡水素圧を計算し、実験と比較し
た。結果、平衡水素圧の解析で定性的に実験の傾向を再現した
2)Ti-V、Ti-V-Mn合金を対象に平衡水素圧と水素化物の体積の関係を
比較した。結果、それぞれの合金系で体積-圧力の対数が線形関
係にあり、類似の水素吸蔵メカニズムに従うことが分かった
平衡水素圧 (MPa)
平衡水素圧 (MPa)
・手法: PAW法による第一原理バンド計算(VASPコード)
T (K)
Ti0.5V0.5とTi1.0V1.1Mn0.9の平衡水素圧
水素化物の体積 (Å3)
平衡水素圧と水素化物の体積
[1] H. Kim et al., Int. J. Hydrog. Energy 39 (2014) 10546.
[2] Y. Nakamura et al., J. Alloys Compd. 509 (2011) 1841.
期待される
適用分野
Ti-V系、Mg系等の多元水素吸蔵合金の開発
謝 辞: 本研究は、NEDOの「水素利用技術研究開発事業」の一環として実施したものである
担当者: 大谷紀子、桑原彰秀、小川貴史、齋藤智浩、佐々木優吉
技術の
ポイント
背景
目的
成果
Li過剰系正極活物質ドメイン境界
におけるLi拡散現象の解明
R-16
第一原理計算を用いてLi過剰系正極活物質中に存在
するドメイン境界近傍でのLi拡散挙動を解明
基礎
研究
Li過剰系正極活物質Li2MnO3-LiTMO2 (TM = Mn, Ni, Co)は高い電位と大
きい容量を有する。しかし、抵抗が大きいために出力密度が低い
Li1.2Mn0.567Ni0.167Co0.067O2において走査透過型電子顕微鏡によって粒内
に確認されたドメイン境界の構造モデルを構築し、界面がLiイオンの移動に
与える影響を第一原理計算を用いて解明する
ドメイン境界に対して垂直方向のLiイオンの移動エネルギーは粒内で
の移動エネルギーと比較して0.1〜0.3 eV程度高くなる。一方で界面に
平行なLiイオンの移動は同程度のエネルギー障壁となる
・手法: 第一原理PAW法(VASPコード)
(a)
(b)
ドメイン境界
0.88 eV
5.5
0.83 eV
粒内
5.0
4.5
4.0
1.01 eV
3.5
0
1.13 eV
界面
5
10
15
20
Formation Energy / eV
Formation Energy / eV
ドメイン境界
5.5
0.87 eV
粒内
5.0
4.5
4.0
3.5
0
Distance / Å
0.90 eV
界面
5
10
Distance / Å
ドメイン境界に(a)垂直および(b)平行な移動方向におけるLiイオンの軌跡とエネルギー変化
参考文献: Nano Lett., 2016, 16 (5), pp 2907–2915
期待される
適用分野
二次電池材料に存在する様々な界面での
電荷担体の移動エネルギーの定量評価
二次電池の
出力特性向上
謝 辞: 本研究は内閣府・日本学術振興会「最先端研究開発支援プログラム(FIRST)」の一環として実施した
ものである
担当者: 桑原彰秀
共同研究者:(産業技術総合研究所)尉海军、周豪慎、(東京大学)肖英紀、栃木栄太、柴田直哉、工藤徹一、幾原雄一
技術の
ポイント
背景
化学溶液法によるLiCoPO4正極膜の
作製と微細構造解析
R-17
LiCoPO4正極材の配向膜の形成挙動と原子レベルの
結晶構造解析
基礎
研究
Liイオン二次電池の電極の積層化を進める上で、Liイオンの拡散方向の異
方性を含めた電極内部の構造設計、結晶性、結晶の粒界や電解質との界
面等、ナノレベルでの微細構造解析が必要である
目的
化学溶液法により作製したLiCoPO4正極膜について、走査透過型電子顕
微鏡を用いて膜配向性、結晶性に着目した微細構造解析を行う
成果
(1) 化学溶液法により作製したLiCoPO4膜は、 Au(111) /Al2O3 基板上で
(210)、(010)に優先配向した膜が形成されていることが分かった
(2) LiCoPO4膜内部の原子構造像をHAADF、 ABF-STEM法により観
察した結果、リチウム脱挿入方位である[010]方向にLiイオンが規則
的に配列していることが確認でき、リチウム脱挿入に有利な方位の
膜形成が可能となった
XRD回析プロファイル
(a) LiCoPO4膜(b)LiCoPO4多結晶粒子
期待される
適用分野
高角度環状暗視野(high angle annular dark
field; HAADF)法によりLiCoPO4膜を [001]方
位から観察したSTEM像では、重い元素であ
るCoとP原子が明瞭に観察できる
①高エネルギー蓄電材料の開発
②積層材料の解析・開発
謝 辞: 本研究は、トヨタ自動車(株)からの委託研究として実施したものである
担当者: 幾原裕美、高翔、菅原義之、クレイグ・フィッシャー、桑原彰秀、森分博紀
共同研究者: (トヨタ自動車(株))小浜恵一、(東京大学)幾原雄一
技術の
ポイント
背景
目的
成果
炭素繊維の強度に及ぼす
過熱水蒸気処理の影響評価
R-18
炭素繊維の引張強度に及ぼす過熱水蒸気処理時の
添加ガス種と繊維表面形態の影響を評価
基礎
研究
CFRP廃材から炭素繊維を回収する方法の一つに、過熱水蒸気(SHS)に
よる樹脂の分解除去がある。SHS処理時に酸素を添加すると,樹脂の除
去が加速されるが,同時に繊維が酸化し強度低下する
PAN系炭素繊維の強度に及ぼすSHS処理時の添加ガス種と繊維表面
形態の影響を評価し、強度低下を抑制するための因子を明らかにする
(1) 700℃のSHSに酸素を添加した場合、繊維表面形態の起伏の大きな
繊維の方が平滑な繊維よりも、強度劣化しにくい
(2) 500℃付近のSHSに窒素とCO2を同時添加した場合、繊維の強度が
著しく向上する
SHS処理において、繊維劣化を極力抑えた処理が可能であり、リサイクル
繊維の品質向上のみならずバージン繊維の高付加価値化が期待される
繊維B
繊維A
破断面
繊維表面
(未処理)
未処理
期待される
適用分野
700℃×20min
処理時間 5min
・CFRPから回収する炭素繊維の品質向上
・CFRPから回収した炭素繊維の再使用によるCFRP製造コスト削減
・CFRP廃材の大幅削減
謝 辞 : 本研究の一部は、NEDO委託事業「未来開拓研究プロジェクト/革新的新構造材料等研究開
発」、経済産業省・戦略的基盤技術高度化支援事業、並びに、「知の拠点あいち」重点研究プロ
ジェクトの一環として実施した
担当者 : 森匡見、和田匡史、林一美、永納保男、北岡諭
光による応力・ひずみセンサの
蛍光メカニズム解析
R-19
応用
研究
応力・ひずみに応じて発光波長を変える新規蛍光材料
Cr添加Sr1-xAl2O4多結晶体における発光機構を解明
技術の
ポイント
背景
「Cr添加Sr1-xAl2O4」が応力・ひずみに応じて大きな発光波長シフトを示す現
象を見出していたものの、その蛍光現象・波長シフトの機構が不明であった
目的
さらなる高感度なひずみ応答性に繋げるべく、「Cr添加Sr1-xAl2O4」の蛍光
機構を明らかにするとともに発光波長シフトの応答メカニズムを解析する
成果
・発光機構: Sr1-xAl2O4中の4配位Alサイトを置換したCr3+による発光
Cr3+のd軌道電子遷移で励起・発光スペクトルを説明可能
850
Cr3+:4配位サイト
9E+07
Emission wavelength (nm)
8E+07
Al3+
Sr2+
O2-
7E+07
6E+07
800
5E+07
4E+07
3E+07
2E+07
750
1E+07
0
700
650
300
350
400
450
500
550
600
Shift in PL wavelength (nm)
・波長シフト: 配位子場(結晶中のひずみ場)の変化に対して、
(1) エネルギー変化の大きいd軌道電子遷移(4T2→2E)
(2) 2つの発光ピークの強度変化による波長シフト促進
0.25
Cr-doped Sr1-xAl2O4
0.20
X = 0.02
0.15
X = 0.05
0.10
X = 0.20
0.05
0.00
U band
従来:Cr-doped Al2O3 R line
0.000
Excitation wavelength (nm)
0.005
0.010
J. H. Eggert et al., Phys. Rev. B, 40(8) (1989)
0.015
Tensile strain (%)
0.020
0.025
Cr添加Sr1-xAl2O4の蛍光現象 と ひずみによる発光波長シフト
Wavenumber (cm-1)
d3 in Td
Y. Tanabe et al., J. Phys. Soc. Jpn., 9 (5), (1954)
4A2
30000
lexc = 370 nm
2A1
4T1
Emission
spectrum
20000
Excitation
spectrum
10000
Wavenumber (cm-1)
E/B
30000
20000
2T2
2T1
t2
エネルギー変化大
→波長シフト大
e
t2
2E
t2
e
4T2
10000
4T2
lemi = 770 nm
配位子場でのd軌道
t2
e
4T1
2E
0
4T1
10 8
6
4
2
0
PL intensity (a.u.)
期待される
適用分野
D/B
0
2
4
6
8
e
0
10
PL intensity (a.u.)
蛍光のメカニズム と 発光波長のシフト要因
2つの発光強度変化
→波長シフトを促進
・ 光によるワイヤレスでの物理量(応力・ひずみ等)のセンシング
・ 蛍光材料の新物質探索 と 光分野の新規応用
参考文献 / 特許
特願2012-270369 「構造物の歪・応力計測方法及び歪・応力センサ」
特願2012-270379 「構造物の歪・応力計測方法及び歪・応力センサ」
謝 辞: 本研究は、中部電力(株)からの委託研究として実施したものである
担当者: 奥原芳樹/共同研究者: (中部電力(株))南原健一、渡邊泰孝
耐水蒸気性ガス分離膜用
メソポーラス中間層の開発
技術の
ポイント
Ni添加γ-Al2O3メソポーラス中間層をポストシンタリング
により優れた耐水蒸気性を付与
R-20
基礎
研究
背景
二酸化炭素と水を原料に太陽エネルギーでプラスチック原料等基幹化学品
を製造する革新的技術の一環として、水素を高効率で分離するガス分離膜
の開発において、耐水蒸気性を有した分離膜が必要とされている
目的
ガス分離膜(分離活性層/中間層/多孔質支持基材)の開発において、中間
層の耐水蒸気性を安定させることで分離活性層の安定性を向上させる
成果
・水熱合成条件を制御することにより、細孔径分布の変化を抑制
・実用レベルの耐水蒸気性を付与
水蒸気暴露前後の細孔径分布変化
耐水蒸気性を付与する微構造組織
期待される
適用分野
特 許
・ガス分離用中間層
・液体分離用中間層
・触媒単体
・ナノバブル発生用基材
特許第5430089号
特願2015-253380
謝 辞: 本研究は、NEDO「グリーンサスティナブルケミカル基盤技術開発~革新的触媒~」の一部として
実施したものである
担当者: 佐藤功二、永野孝幸/共同研究者: (ARPChem)久保美和子
分離膜低欠陥成膜手法の開発
技術の
ポイント
R-21
水素透過率と水素選択透過性を同時に向上させること 実用化
ができる低欠陥成膜手法を開発
研究
背景
水素+酸素混合ガスは爆鳴気であり、爆発限界以下まで分離精製する必
要があるが、分子径差が小さく、透過率と選択性の両立が困難であった
目的
分離膜の成膜時間を短縮して膜厚を薄くし、且つ分離活性層の欠陥生成を
抑制する
成果
(1) 水素透過率と水素選択透過性を同時に向上
(2) 必要な処理は分離膜合成前の水素還元処理のみ
(3) ゼオライトと同等以上の低温水素透過率を実現
変換効率 =
熱媒体の集熱量
照射光エネルギー
Mo+SiO2
Ag
167 nm
水素/酸素分離膜の構造
水素/酸素分離膜の断面TEM像と成膜手法
分離膜欠陥抑制のメカニズム
期待される
適用分野
特許
酸化物系分離膜の合成
特許6430089、特願2014-283864、特願2014-283865
謝 辞 : 本研究は、NEDO「グリーンサスティナブルケミカル基盤技術開発~革新的触媒~」の一部として
実施したものである
担当者:永野孝幸、佐藤功二、山田恭子、石川由加里/共同研究者: (ARPChem)久保美和子
環境電子顕微鏡による
金ナノ触媒の反応サイト可視化
技術の
ポイント
R-22
環境電子顕微鏡を用いたガス反応中その場観察により
触媒反応が起こる活性サイトの可視化・解明
基礎
研究
背景
バルクでは不活性な金も、ナノサイズにして金属酸化物に担持することで
COやプロピレンの酸化等の工業的に有用な反応に対して非常に高い活性
を発現する。しかし、その反応メカニズムは解明されていなかった
目的
反応ガス雰囲気下での動的観察が可能な環境セル電子顕微鏡を開発し、
金ナノ触媒で起こるプロピレン選択酸化反応をその場観察する。触媒反応
での生成物(プロピレンオキサイド)の発生場所を電子顕微鏡で捉えること
により反応サイトを特定する
成果
(1) 隔膜型の環境セル電子顕微鏡を開発し、最大2気圧までのガスを
導入出しながら触媒反応をその場観察できるシステムを構築した
(2) 反応生成物(プロピレンオキサイド)が、金と酸化チタン担体との
接合界面周囲で発生することを動的に捉えた
(3) 金/担体の界面周囲が反応サイトである事を明らかにした。これは
化学的手法での予測を裏付ける結果である
反応サイト
開発した環境セル電子顕微鏡の概略図
期待される
適用分野
触媒反応その場観察TEM像
(
部に生成物が出現)
および明らかになった反応モデル
触媒の反応メカニズムの直視解析
反応の阻害要因・活性劣化機構の解明
触媒性能の向上
新材料の設計創出
謝 辞: 本研究は、文科省「科研費(基盤C;#25390078)」および「ナノ材料科学環境拠点(GREEN)」の一環として
実施したものである
担当者: 川﨑忠寛、吉田要/共同研究者: (名古屋大学)石田高史、丹司敬義
酸化・還元雰囲気下における
貴金属触媒挙動のその場観察
技術の
ポイント
R-23
環境電子顕微鏡を用いガス環境下での触媒反応過程を
ナノスケールで直接観察し、知見を得た
基礎
研究
背景
白金ナノ粒子を担持した炭素材料は燃料電池の電極触媒などとして利用
されている。それらにおける貴金属使用量の削減には担持法の改良や
長寿命化がもとめられている
目的
酸化・還元雰囲気下で貴金属ナノ粒子の触媒反応挙動をその場観察によ
り明らかにする
成果
(1) 貴金属触媒は炭素のガス化反応を促進しナノチューブ表面を移動
しながら浸蝕することが明らかとなった
(2) 貴金属触媒粒子はガス種と貴金属種に応じてナノチューブへの異
なるぬれ性を示すことが明らかとなった
・試料: 貴金属ナノコロイド水溶液と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)との物理的混合
・評価: 環境電子顕微鏡によるその場観察(日立ハイテクH9500)
試料温度:~450℃,酸素分圧:~2 Pa,水素分圧:~0.5 Pa
100 nm
Pt(酸素雰囲気下)
環境電子顕微鏡試料室
(差動排気システム)
100 nm
Rh(酸素雰囲気下)
100 nm
Pt(水素雰囲気下)
100 nm
Rh(水素雰囲気下)
触媒反応中(〜450℃)の貴金属粒子の
MWCNTへのぬれ挙動比較
期待される
適用分野
① 貴金属触媒の反応過程解明
② 触媒反応による新規カーボン材料創成
謝 辞: 本研究は、名古屋大学超高圧電子顕微鏡施設との共同研究として実施したものである
担当者: 吉田要、佐々木優吉/共同研究者: (名古屋大学)荒井重勇、田中信夫
技術の
ポイント
背景
構造規定剤を使用しないで作製した
ベータ型ゼオライトの結晶成長
R-24
ベータ型ゼオライトを形成する結晶ポリタイプ(BEAと
BEB)の形成状態を統計的に評価した
基礎
研究
構造規定剤を用いずにゼオライトを合成する方法は、経済的に有用である
とともに、構造欠陥が少なく耐使用環境性に優れたゼオライトを作製する方
法として期待されている
目 的 2種類の結晶ポリタイプ(BEAとBEB)から成るベータ型ゼオライトをモデル材
料とし高分解能TEM法を手段として、2種類のポリタイプの分布状態を評価
することで、構造規定剤を用いないゼオライト合成における結晶成長の特
長を解明する
成 果 (1) BEAとBEBは出現割合に差があった(BEA:BEB=45:55)
(2) BEAとBEBの分布状態は、統計的に期待される出現分布に一致した
(3) 観察した結晶は、最も出現確率の高い状態(エントロピーが最大とな
る)で形成された
⇒化学平衡状態を保ちながら結晶成長した⇒∴欠陥構造が少ない
・モデル材料:構造規定剤を用いないで合成したベータ型ゼオライトの粉末 ・評価:高分解能TEM法
期待される
適用分野
参考文献
・自動車排ガス触媒をはじめとする各種触媒
・化学プロセスにおける各種分離操作(分離膜)
Y. Sasaki, Y. Suzuki, C.A.J. Fisher, T. Ikeda, K. Itabashi and T. Okubo,
Micropor. Mesopor. Mater., 225 (2016) 210-215
謝 辞 : 本研究の一部は、JSTにおける戦略的創造研究推進事業(CREST)の支援を得て得られたものである
担当者: 佐々木優吉、クレイグ・フィッシャー
共同研究者: (愛知県)吉田陽子、(東京大学)板橋慶治、大久保達也、(産業技術総合研究所)池田卓史
技術の
ポイント
酸化物セラミックスの
レーザー焼結技術開発
R-25
セラミックスの積層造形(3Dプリンター)の基盤となる
レーザーを用いた高速焼結技術
基礎
研究
背景
セラミックスは、樹脂や金属と異なり、溶融凝固で部材を製造することが
不可能なため、積層造形の実現には新たなプロセス技術開発が必要
目的
レーザー積層造形の基盤となるレーザー焼結の要素技術開発
(1)セラミックス粒子を高密度に充填した層を形成する技術
(2)セラミックス粒子充填層を高効率でレーザー加熱する技術
成果
(1) 粒子充填密度90%以上の粉末粒子層を形成する技術を開発
(2) 10秒間のレーザー照射により、厚み300ミクロンのアルミナ粒子層を
焼結できる技術を開発
新技術
原料粉を均一かつ緻密に充填
従来技術
充填密度 90~93%
処理時間 5分
開発技術
(割れなし)
新技術
特許出願済み
短時間のレーザー焼結プロセスを開発
レーザー150W、10秒照射で300ミクロン厚
高純度アルミナ
表面
断面
300ミクロン厚試料の
底部まで焼結している
特許出願済み
期待される
適用分野
・従来法では困難な複雑形状セラミックス部材の製造
謝 辞: 本研究は、内閣府/NEDO 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的設計生産技術開発 高付加価値
セラミックス造形技術の開発」で実施したものである。
担当者:木村禎一、末廣智
金属塩アルコール溶液を原料とした
静電噴霧CVDプロセスの開発
技術の
ポイント
静電噴霧を用いて金属塩アルコール溶液を原料供給
し、レーザーを援用することでZnO膜の成膜に成功した
R-26
基礎
研究
背景
通常、熱レーザーCVDは基板をレーザーで加熱し、原料ガスを供給す
ることにより成膜を行う。原料には反応性が高い有機金属化合物が用
いられるが、原料コストが高いことが課題である
目的
金属塩アルコール溶液を原料とした静電噴霧レーザーCVDによるセラ
ミックス膜の成膜プロセスを開発する
成果
金属塩アルコール溶液を原料とし静電噴霧を原料供給としたレーザー
CVDにより結晶性ZnO膜を合成した
成膜速度:5~10 μm/h
(002)配向, 微構造:針状晶または柱状晶
*有機物添加により微構造制御可能
(a)
(b)
(c)
(d)
レーザーを援用した静電噴霧CVDの模式図
期待される
適用分野
関連特許
静電噴霧レーザーCVDによるZnO膜
(a) レーザー照射なし(b)80W (c) 80W表面
(d)80W:有機物添加
大気圧下でのCVD低コストプロセス
特許: 2016-10285, 2015-61593
担当者: 末廣智、木村禎一、高橋誠治
粒子の充填・成形に関する
シミュレーション手法の開発
成形シミュレーションの研究・開発を着手。粒子の発生と
充填、型内でのプレスによる粒子再配列を模擬
技術の
ポイント
R-27
基礎
研究
背景
JFCCで販売している焼結シミュレーションでは、成形体の各種情報をシミュ
レーション入力値として与える必要がある。しかし一軸プレス成形時の密度
ムラ等の成形体における重要な情報を実測するのは困難である
目的
成形時の密度ムラ等の情報を得るため、DEM(個別要素法)を用いた成形
シミュレーションの研究・開発を着手。初期粒子の発生や粒子の充填、少数
粒子でのプレス成形模擬などの基礎的な検討を実施
成果
(1) 初期粒子を任意の正規分布で発生させ、それら粒子を型内へ重力
により充填していく過程をシミュレーションすることが出来た。粒子
間の付着力の有無により、充填が異なる様子を表せた
(2) 上側片押しまたは上下両押しのプレス成形により、型内へ充填した
粒子が圧密していく様子を、二次元上でシミュレーションすることが
出来た
粒子の発生
正規分布N(μ、σ2)に従う粒径分布
※粒径分布あり
青:粒径小、赤:粒径大
重力
※各粒子に
ランダムな擾
乱速度
粒子の充填後
左:付着力なし、右:付着力考慮
期待される
適用分野
圧密解析事例
左:初期配置、 中:上面押し、 右:上/下面押し
成形から焼結まで含めた一連
の製造プロセス行程における
シミュレーション適用化
セラミックス製造プロセ
スの最適化や問題解
決の高効率化
担当者: 野村 浩/共同研究者: ((株)中電シーティーアイ)青木英彦、(東北大学・JFCC)松原秀彰
骨修復用高生体活性
酸化チタン粒子の開発
酸素を僅かに含む窒素中での熱処理により生成される
酸化チタン粒子は、高い水酸化アパタイト形成能を発現
技術の
ポイント
R-28
基礎
研究
背景
骨セメント(アクリル系高分子重合型医療用接着剤)に混合する骨材としての
酸化チタン粒子には、高い生体活性能が望まれる
目的
酸化チタン粒子自体の表面機能を積極的に制御するという視点から、生体
活性能を向上させることを検討する
成果
(1) TiO2前駆体を極微量の酸素を含む窒素中(PO2=10-13 Pa)で熱処理し
て得られたルチル型TiO2粒子は、水酸化アパタイト(HAp)形成に対し
て優れた活性を有する
(2) TiO2粒子のTi4+がTi3+に還元し、さらに酸素空孔が生成するために、
粒子表面が負に帯電することが、HAp形成能向上に寄与していると
考えられる
HAp被覆率
(1)TiO2前駆体:TiCl4 + 4NH4OH → TiO2 + 4NH4Cl + 2H2O (2)造粒:スプレードライで数mmに造粒
(3)熱処理:ロータリーキルン炉1073 K, 窒素雰囲気(PO2 = 10-13 と104 Pa), 1073 K×6 h
浸漬時間(日)
TiO2粒子上でのHAp被覆率と擬似体液
7日間浸漬後の断面SEM-EDS
TiO21)およびTi粒子2)のゼロ電荷点とHAp形成機構
期待される
適用分野
参考文献
生体活性骨セメント(人工膝関節・股関節・椎体等)、骨補填材
(1) M. Hashimoto, S. Kitaoka and H. Kanetaka, submitted.
(2) M. Hashimoto, S. Kitaoka, S. Muto, K. Tatsumi et al., J. Mat. Res. 31 (2016) 1004.
謝 辞: 本研究は、JSPS科研費25420767の助成を受けたものである
担当者: 橋本雅美、北岡諭/共同研究者:(東北大学)金高弘恭
BaTiO3薄膜中のナノドメイン
構造観察
技術の
ポイント
10ピコメートル以下の高精度変位計測技術により
BaTiO3薄膜中のナノドメイン構造観察に成功した
R-29
基礎
研究
背景
高温領域で動作可能なキャパシタとして期待されているエピタキシャル
BaTiO3薄膜中のドメイン構造は未だ解明されていない
目的
走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いてBaTiO3薄膜中のTiイオンとBaイオ
ンの変位量を計測しドメイン構造を明らかにする
成果
(1) 高速スキャン法によりイメージドリフトを減少させ、さらに得られた
像を30枚積算することでSNの良いHAADF STEM像を取得
(2) 得られたHAADF STEM像から各陽イオンサイトにおける変位解析
を実施した結果、BaTiO3薄膜中では非常に微小なナノドメイン構造
を形成していることを明らかにした
(3) このナノドメインはBaTiO3薄膜特有の構造であり、基板からの拘束
による歪みを緩和するために形成されたと推察される
・手法: 高速スキャン積算法*、 高角度環状暗視野走査型透過電子顕微鏡法 (HAADF STEM法)
高速スキャンによるHAADF STEM像
取得のイメージ図
高速スキャンによるHAADF STEM像と変位解析による
TiイオンとBaイオン変位マップ
*K. Kimoto et al., Ultramicroscopy, 110 (2010) 778-782.
期待される
適用分野
ドメイン構造制御による
強誘電体材料開発
・キャパシタの小型化
・非鉛系強誘電体の開発
謝 辞: 本研究は、(独)日本学術振興会研究活動スタート支援の一部として実施したものである
担当者: 小林俊介 共同研究者: 加藤丈晴、(東京大学・JFCC)幾原雄一、(名古屋大学・JFCC)山本剛久
コロイダルシリカスラリーを用いた
サファイア基板の精密研磨評価
技術の
ポイント
背景
目的
成果
R-30
異なる面方位のサファイア基板を用いた化学機械研磨
(CMP)特性の温度および荷重依存性を評価
基礎
研究
光学的、化学的、機械的に優れたサファイアは、特殊窓材やLED用基板に
用いられる。サファイア基板には原子レベルの平坦性が求められるが、化
学的に安定で、硬脆材料であるサファイアの精密研磨には長時間を有す
る。また、基板面方位によって研磨速度が大きく異なる
c面とa面のサファイア基板を用いて、コロイダルシリカスラリーを用いた
CMPを行い、CMP特性の温度および荷重依存性を評価し、研磨挙動を比
較・検討する
(1) a面の研磨速度はc面の約1/2と低いが、c面、a面ともに、研磨速度
と温度との間にはアレニウスの関係が認められ、同じ研磨メカニズ
ムであることが示唆された
(2) c面とa面では、同じ研磨条件下において、研磨活性点の数が異
なっていることが示唆された
サファイア基板CMP特性評価方法
c面およびa面基板研磨速度と
温度の逆数の関係
期待される
適用分野
c面およびa面基板研磨速度の
荷重依存性
c面およびa面基板CMP後の表面観察
結果(白色光干渉顕微鏡)
・LED用および特殊窓材用サファイア基板の精密研磨
・硬脆材料のCMPメカニズム解明
謝 辞: 本研究の一部は,JSPS科研費 15K05750の助成および(公財)大倉和親記念財団の助成を受けて
行われたものである
担当者: 川原浩一、鈴木俊正
技術の
ポイント
高温・外部磁場印加による
ネオジム磁石の磁壁移動観察
R-31
高温における外部磁場印加にともなうネオジム磁石内
の磁区構造変化の動的観察・解析技術の確立
基礎
研究
背景
ネオジム磁石は電気自動車などの次世代自動車に用いられる永久磁石で
ある。しかし、使用環境温度の上昇と共に保磁力が低下する。使用温度近
辺での微細組織と磁区・磁壁構造との相関を動的観察することで、保磁力
発生あるいは保磁力低下に関する知見を得ることは重要である
目的
高温における保磁力向上のための外部磁場印加にともなうネオジム磁石
内の磁区構造変化の動的観察・解析技術の確立
(1) 高温では、磁場強度が20mT以下で磁壁が移動し、粒界がピン止
めサイトとして働く
成果
(2) 磁場印加方向と磁壁移動方向によってピン止め強さが異なる
外部磁場方向:着磁方向と同じ方向
磁壁1
0 mT
8.8 mT
@225oC
13.2 mT
15.4 mT
17.7 mT
磁壁2
磁壁2は粒界にピン止めされ、磁壁1( 示す磁壁)のみが移動する
⇒磁壁2のピン止めサイトに比べ、磁壁1のピン止めサイトはピン止め力が弱い
外部磁場方向:着磁方向と反対方向
磁壁1 0mT
-6.6mT
1 μm
@225oC
-8.8mT
-13.2mT
-15.4mT
磁壁2
磁壁1は粒界にピン止めされ、磁壁2( 示す磁壁)のみが移動する
⇒磁壁1のピン止めサイトに比べ、磁壁2のピン止めサイトはピン止め力が弱い
期待される
適用分野
参考文献
1 μm
・耐熱性磁石の開発
・自動車用モーターの評価
T. Suzuki, et al., Mater. Res. Soc. Symp. Proc., 1754, opl.2015.585 (2015)
T. Suzuki, et al., MRS Advances , 1, 241-246 (2016)
謝 辞: 本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業未来開拓研究プログラム
「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」で実施したものである
担当者:鈴木俊正、川原浩一、鈴木雅也/共同研究者: (産業技術総合研究所) 尾崎公洋、高木健太
局所加熱法による材料および
硬質膜の熱損傷特性の評価
R-32
材料表面にレーザー照射することで金属相を含む材料
中に応力を発生させ、塑性変形させる
技術の
ポイント
応用
研究
背景
種々の非定常熱環境で使用される材料中の応力場は複雑であり、従来の
物性試験だけでは材料の熱損傷を予測することは困難である。非定常熱
環境下で使用される材料の評価方法が求められている
目的
レーザー加熱により発生する応力場を利用して、実用材料の設計に役立
つ熱損傷特性の評価手法の確立を目指す
成果
低エネルギーでレーザー照射することで金属相を塑性変形させる。こ
れにより、材料(サーメットなど)および硬質膜の熱損傷特性を評価で
きることを示した
・モデル材料: (Ti,Mo)(C,N)-Ni、SUS、硬質膜
・実験条件:レーザー加熱
・評価:AE
基材:SUS440C
硬質膜:TiN
Specimen size: 8mm×8mm×0.2mm
Irradiation: 0.1sec, once
45W
照射後TiN表面
照射時間:0.1sec
出力:65W
照射回数:20
Ti(C,N)-Mo2C-Ni系 サーメットの損傷
(中心温度と塑性変形・クラック発生)
(同心円状にクラック発生)
・ 工具材料(切削工具など)の熱損傷評価
・ 金属材料の熱損傷評価
・ 金属材料上の硬質膜の熱損傷評価
期待される
適用分野
参考文献
繰り返し照射による硬質膜の損傷
松田, 松原, 粉体及び粉末冶金、Vol62, No9, 485-490 (2015).
担当者: 松田哲志
FIB-SEMを用いた超電導層の
3次元構築
技術の
ポイント
超電導層の3次元構築結果から高い超電導特性を有す
る理由とその超電導層の成長モードを解明
R-33
基礎
研究
背景
磁場中で高い臨界電流(Ic)値を有するREBa2Cu3Oy(REBCO, REはY、Gd、
Eu、Sm、Nd等)超電導線材の開発には、超電導層の厚膜化と、人工ピン止
めセンターのナノサイズ均一微細分散が必要であるが、厚膜化とともに、 Ic
値が飽和し、その増大が抑制される問題があった
目的
異なる条件で、レーザ蒸着(PLD)法により人工ピン止めセンターとして
BaHfO3 (BHO)ナノロッドを分散させたGdBCO層およびEuBCO層の成長メ
カニズムを検討する。77 K、3 Tにおいて、GdBCO層およびEuBCO層の Ic値
は、それぞれ、85 A/cm、141 A/cmであった
成果
(1) GdBCO層およびEuBCO層の大部分はc軸配向結晶(母層)で構成
され、その内部のナノロッドの形状および分布に大きな差は無い
(2) 母層と方位が異なる超電導粒子は超電導層の膜厚増加とともに体
積割合が増加し、厚膜化によるIc値が飽和する原因の一つである
(3) 通常のPLD法による超電導層成長モードは気相-固相(V-S)モー
ドであるが、本研究で紹介したEuBCO層の成膜では、酸素分圧、
成膜温度を制御し、超電導層の結晶成長表面に定常的に形成し
た液相(Ba-Cu-O)を介した気相-液相-固相(V-L-S)モードの成
長を実現させ、母層と方位が異なる超電導粒子形成を抑制し、超
電導層の厚膜化に伴った高Ic 特性を得ることに成功した
・手法: 連続断面SEM像によるGdBCO層(V-Sモード)およびEuBCO層(V-L-Sモード)の3次元構
築
(a)
(b)
(a) GdBCO層および(b) EuBCO層の3次元構築結果。■は母層と方位が異なる超電導粒子、 ■は
Ba-Cu-O、Ba-OもしくはCu-O、 ■はGd2O3、 Eu2O3もしくはBaHfO3、 ■は空隙、 ■はCeO2を示す
期待される
適用分野
超電導線材の
微細構造解析
高磁場中で高い超電導特性を発現する
超電導線材のプロセス開発支援
謝 辞:本発表の成果は、経済産業省の委託及び、日本医療研究開発機構(AMED)の支援により実施した
担当者:加藤丈晴、横江大作、吉田竜視、平山司/共同研究者: (産業用超電導線材・機器技術研究組合)衣斐顕
(現 産業技術総合研究所)、吉田朋(現 (株)フジクラ)、和泉輝郎(現 産業技術総合研究所)、塩原融
人工ソーラ光源による
太陽熱レシーバの効率評価
R-34
集光した太陽光を熱に変換するレシーバ(集熱管)の
実用化
変換効率を定量測定できるシミュレータ・評価法を開発 研究
技術の
ポイント
背景
集光型太陽熱システム(高温熱源による発電・化学プロセス応用)などに
て、光を熱に変換するレシーバの効率「絶対値」評価法が確立されていない
目的
人工光源による光入力エネルギーおよび熱媒体の熱出力エネルギーを定
量測定できるシステムを構築し、レシーバの光→熱変換効率を評価する
成果
(1) 世界水準レベルの太陽光吸収膜をもつレシーバ部材を形成
(2) レシーバ(4000mm×70mmf)に線集光させる人工光源+高温熱媒体を
循環させる集熱量測定系からなる「太陽熱シミュレータ」を構築
(3) 光→熱変換効率の「絶対値」を世界で初めて評価可能に
Mo+SiO2
53 nm
Mo+SiO2
45 nm
Ag
167 nm
変換効率 =
100
substrate
線集光 光源
熱媒体の集熱量
照射光エネルギー
光学的理論効率
80
実測した変換効率
60
集熱量←温度上昇DTより測定
40
20
0.0
照射光エネルギー分布
100
中心角 (o)
80 nm
変換効率 (%)
SiO2
5.0
50
10
15
0
20
-50
25
30
-100
レシーバ
0
0
100
500
150
1000
1500
2000
2500
長さ方向(mm)
200
o
3000
3500
250
35
4000 kw/m2
300
熱媒体温度 ( C)
期待される
適用分野
参考
特許
太陽熱(発電・産業熱利用)のレシーバ性能評価
⇒ レシーバ開発支援・プラントシステム設計支援
⇒ 再生可能エネルギーの普及促進に貢献
特願2014-057518 「太陽熱レシーバの集熱効率測定用の擬似太陽光照射装置と
その光照射強度分布測定装置、及びこれらを利用した集熱効率測定方法」
謝 辞 : 本研究は、「新エネルギー等共通基盤整備促進事業(経済産業省からの委託事業)」の一部として
実施したものである
担当者: 奥原芳樹、黒山友宏、伊岐見大輔、横江大作、加藤丈晴/共同研究者: ((株)豊田自動織機) 則武和人