1 防犯カメラシステムの設計基準の考え方

金融機関等防犯カメラシステムの設計基準・解説
1 防犯カメラシステムの設計基準の考え方
1-1 本基準の意義
本基準は、平成 16(2004)年 1 月 30 日に当協会が策定した「金融機関店舗に設置する防犯
カメラの性能基準」
(以下、平成 16 年基準)に対し、昨今の技術革新による防犯機器の性
能向上や犯罪の傾向などを考慮しつつ金融機関等に設置する防犯カメラシステムが満足す
べき機能を追加し、改正したものである。
平成 16 年基準は、タイムラプスビデオと代替する形で防犯機器市場に広く流通し始めた
デジタルレコーダを使用して、NTSC 信号方式のアナログ防犯カメラ映像を記録する前提で
基準化している。現在のデジタルレコーダと比較して、平成 16 年当時の機器は、記録期間・
記録性能共に低いものであった。そのため、平成 16 年基準では、記録期間や記録性能より
も画角、及び画質の定量化に重点をおいたものであった。
昨今の技術革新により、高画素(メガピクセル)カメラが出現したことで記録画像が大
幅に高解像度化し、また、デジタルレコーダの記録媒体であるハードディスクの大容量化
によって記録期間の長期化が進み、記録性能も向上した。
平成 20(2008)年 10 月に当協会は、防犯機能・防犯性能が犯罪抑止・犯罪発生後の対処・
追跡に関する犯罪検挙等の用途に効果的に機能する、と認められる機器について RBSS 基
準への適合を認定する「RBSS(優良防犯機器認定制度)」を開始した。高解像度化やネット
ワーク化への対応も関係する RBSS 基準を改正している。
しかしながら、平成 16 年基準は改正が行われることなく現在に至り、防犯機器の技術革
新による新しい防犯機器に対応できていないばかりか、最近登場した新しいタイプの犯罪
(スキミング等)への対応も不十分であった。
本基準は、RBSS 基準を満足した機器の使用を要求することで技術的な側面を担保すると
同時に、実際の金融機関等の店舗を想定した防犯部位ごとに詳細な機能を要求することで、
新しいタイプの犯罪にも対応できる効果的な防犯カメラシステムの構築を目指している。
防犯カメラシステムは主に、犯罪抑止(犯罪企図者に犯行を思い止まらせる)
、環境改善
(従業員の安心感を増やす)、早期解決(事件や事故状況の撮影で解決を早める)、再発防
止(記録画像を確認して防犯上の弱点減らす)の 4 つの役割がある。
本基準を参考にしていただき、防犯カメラシステムを金融機関等の従業員の一員として役
立てる考えを持っていただけることを期待している。
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金融機関等防犯カメラシステムの設計基準・解説
1-2 本基準での改正項目
平成 16 年基準と本基準との比較表を表 1 に示す。本基準では、平成 16 年基準に防犯部
位を追加したうえで、防犯部位別の性能を詳細に要求している。
表 1 平成 16 年基準との比較表
項
目
平成 16 年基準
本基準
3 部位
6 部位
(店舗フロア、窓口、CD コーナー)
(窓口、夜間金庫・通用口、外周・駐車場、
ATM、営業室、ロビー・出入口・応接室)
共通の性能を要求
各部位に必要な性能を要求
RBSS 基準適合品の利用
-
RBSS 共通機能を要求
RBSS 高度機能の要求
-
防犯部位ごとに要求
高画素カメラの対応
-
防犯部位ごとに要求
防犯機器の運用
-
留意事項として要求
新しいタイプの犯罪への対応
-
防犯部位ごとに要求
チェックリスト
-
新規作成
防犯部位数
防犯部位別の性能
また、本基準では新しいタイプの犯罪や防犯カメラシステムに発生しがちな問題に対応
できる防犯カメラシステムの構築を目指しており、以下の性能を要求している。
表 2 犯罪や問題への対応表
犯罪や問題
要求する性能
備考
立てこもり
設置場所以外からの映像監視
スキミング
ATM 周辺の高画質(メガピクセル)録画
参照:
暗証番号入力盗撮
ATM 周辺の高画質(メガピクセル)録画
3-4 運用
長時間の停電
防犯設備の電源を必要時間分確保
メンテ不備
定期的な清掃、保守、部品交換
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1-3 本基準の構成と記載内容
本基準の構成は、図 1 のとおりである。
金融機関等防犯カメラシステムの設計基準
防犯部位別設計基準
運用に関する留意事項
図 1 本基準の構成図
本基準は、
「防犯部位別設計基準」と「運用に関する留意事項」で構成している。防犯部
位別設計基準は、金融店舗を 6 つの防犯部位に分割し、部位別に防犯機器に必要な機能を
規定している。運用に関する留意事項は、防犯カメラシステムの運用に必要不可欠な運用
基準に盛り込むべき内容について記載している。
なお、本基準で使用している主要用語は 1-4 主要用語に、参考文献や法令は 附属書 K) 参
考文献、に記載している。
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1-4 主要用語
新しいタイプの犯罪
従来、金融機関等の店舗で発生する犯罪は、強盗の類が多かった。しかし、官民一体と
なった犯罪総合抑止対策によりそれらは減少したが、最近は犯罪の傾向に変化が出てきた。
本基準が想定する新しいタイプの犯罪とは、カード偽造を行うためのスキミングや暗証
番号の盗撮、立てこもり、指定口座に振込みを促す詐欺等の犯罪をいう。
インストアブランチ
インストアブランチとは、ショッピングセンターやスーパーマーケット等のストア(店
舗)の中に設置してある金融機関等の店舗をいう。開放的なレイアウトの店舗が数人で運
営されており、住宅ローン相談などの特定目的に絞った店舗が多い。
映像
本基準においては、デジタルレコーダに記録される前の防犯カメラが出力した信号を映
像と記述する。
共通機能
共通機能とは、RBSS において認定対象の防犯機器に対して要求する防犯機能・防犯性
能のうち、全ての機器が満足しなければならない機能・性能をいう。
画像
本基準においては、防犯カメラが出力した信号をデジタルレコーダに記録したもの、ま
たはその記録を再生したものを画像と記述する。
機械室
機械室とは、ATM の背面にあるメンテナンス用の部屋をいう。
金融機関等
金融機関等とは、金融取引に関する業務を営む組織のことで、狭義では預貯金取扱金融
機関(都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合など)のみを指すが、広義には保険会社
や証券会社、信販会社などの金融機関関連企業も含めることが多い。
本基準においては「広義の金融機関」を「金融機関等」と記述する。
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警備委託業務用機械装置
警備委託業務用機械装置とは、警備業者等が扱う機械警備において、警備先と警備業者
等を通信回線で接続し、遠隔地から状態を確認するための装置をいう。
高度機能
高度機能とは、RBSS において認定対象の防犯機器に対して要求する防犯機能・防犯性
能のうち、場所や条件によって使わなければならない選択事項になる機能・性能をいう。
コンビニ ATM
コンビニ ATM とは、金融機関等がコンビニエンスストア内に設置した ATM をいう。
自動機器室に設置された ATM とは異なり、単体で設置されることが多い。本基準におい
ては、設置場所がコンビニエンスストア以外でも、自動機器室と機械室の無い ATM をコン
ビニ ATM と記述する。
自動機器
自動機器とは、ATM(現金自動預け払い機)や両替機の総称をいう。
自動機器室
自動機器室とは、金融機関等の店舗において ATM や両替機を設置する専用のコーナーや
専用の部屋をいう。
デジタルレコーダ
デジタルレコーダとは、防犯カメラの映像信号をリアルタイムでハードディスクに記録、
再生する装置をいう。
本基準においては、主にテレビ放送を記録する民生用のデジタルレコーダと区別するた
め、デジタルレコーダ(防犯用)と記述する。
防犯カメラ
防犯カメラとは、防犯に資するカメラの総称をいう。大きく分けてアナログタイプの防
犯カメラ、ネットワークタイプの防犯カメラ、及び HD-SDI タイプの防犯カメラがある。
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防犯カメラシステム
防犯カメラシステムとは、防犯カメラ、デジタルレコーダ(防犯用)、及びその他の装置
からなる、防犯に資するカメラシステム全体の総称をいう。
防犯部位
本基準においては、金融機関等の店舗敷地内において、屋内・屋外や室内・室外では区
分しにくい「防犯対象の存在する空間」を総称して防犯部位と記述する。
無人店舗
無人店舗とは、ATM や両替機などの自動機のみで運用を行う店舗をいう。コンビニエン
スストアに設置された ATM とは異なり、自動機器室と機械室がある。設置場所が無人かつ
自動機器室と機械室のある ATM を意味する。
有人店舗
有人店舗とは、一般的な金融機関等の店舗をいう。ショッピングセンターやスーパーマ
ーケット等のストア(店舗)の中に設置してある金融機関等の店舗(インストアブランチ)
とは区別する。
優良防犯機器認定制度
RBSS(Recognition of Better Security System)の項目を参照。
FISC の安対基準
FISC の安対基準とは、公益財団法人 金融情報システムセンター(FISC: The Center for
Financial Industry Information Systems)が策定する「金融機関等コンピューターシステム
の安全対策基準・解説書」をいう。
金融機関業務や取引決済機能を支える金融機関等の情報システムの安全対策の拠りどこ
ろとして広く活用されている。
RBSS(Recognition of Better Security System)
RBSS(優良防犯機器認定制度)とは、当協会が一般の方々の安全・安心に寄与するこ
とを目的に、防犯機器に必要とされる機能と性能の基準を策定し、その基準に適合した機
器を「優良防犯機器」と認定することにより、優良な防犯機器の開発と普及促進を図る自
主認定事業をいう。認定された機器を RBSS 機器という。
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